特許第6379898号(P6379898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6379898光コネクタ、及び、光コネクタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379898
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】光コネクタ、及び、光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20180820BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G02B6/32
   G02B6/40
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-185536(P2014-185536)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-57540(P2016-57540A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】荒生 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐野 知巳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−242339(JP,A)
【文献】 特開平07−261056(JP,A)
【文献】 特開昭59−034507(JP,A)
【文献】 特開2002−372604(JP,A)
【文献】 特開2010−026175(JP,A)
【文献】 特開2005−351918(JP,A)
【文献】 米国特許第08757893(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/32,6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光入出射部と、前記複数の光入出射部を収容するフェルールとを備え、相手方光コネクタと光接続を行う光コネクタであって、
前記複数の光入出射部それぞれは、
第1の光軸を有する導波路部材と、
第2の光軸を有し、一端が前記導波路部材の端部に接続され、他端に前記第2の光軸と直交する入出射面を有するGRINレンズと、を備え、
前記導波路部材の前記端部において、前記第1の光軸に対して前記第2の光軸がオフセットされており、
前記入出射面は、当該入出射面から出射する光ビームの光軸と非直交であり、かつ、当該入出射面に入射する光ビームの光軸と非直交であり、
前記フェルールは、前記相手方光コネクタと光接続を行うためのガイド部を有し、
前記ガイド部は、対称線に対して対称に配置されており、
前記光コネクタと前記相手方光コネクタとの間で、各入出射面に直交しない光軸を有する光ビームの光接続が行われるように、前記複数の光入出射部は前記対称線に対して非対称に配置されている、
光コネクタ。
【請求項2】
前記導波路部材は、シングルモード伝送を行う部材であり、
前記第1の光軸に対する前記第2の光軸のオフセット量は5μm以上である、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記GRINレンズの外径は、前記導波路部材の外径よりも大きい、
請求項1又は2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記導波路部材の外周は、前記GRINレンズの外周の内側に収まっている、
請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記相手方光コネクタは、前記光コネクタと同一構成を有し、
前記ガイド部は、第1ガイド部と、前記第1ガイド部と接続可能な第2ガイド部とを有し、
前記相手方光コネクタに対して上下反転して対向するときに、前記第1ガイド部が前記相手方光コネクタの第2ガイド部と接続し、前記第2ガイド部が前記相手方光コネクタの第1ガイド部と接続する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
請求項3に記載した光コネクタであって、
前記フェルールは、前記相手方光コネクタと対向する前端と前記前端の反対側の後端とを有し、
前記後端には、前記複数の光入出射部の導波路部材を導入する導入穴が開口されており、
前記前端には、前記複数の光入出射部のGRINレンズをそれぞれ収容するための複数の第1穴が開口されており、
前記複数の第1穴の前記導入穴側には、前記第1穴より小径であり、前記複数の第1穴と前記導入穴とをそれぞれ連結し、前記導入穴から導入された前記導波路部材をそれぞれ収容するための複数の第2穴が形成されている、
光コネクタ。
【請求項7】
複数の光入出射部と、前記複数の光入出射部を収容するフェルールとを備える光コネクタであって、相手方光コネクタと光接続を行う当該光コネクタの製造方法であって、
前記相手方光コネクタと対向する前端と前記前端の反対側の後端とを有し、前記後端には、前記複数の光入出射部の導波路部材を導入する導入穴が開口されており、前記前端には、前記複数の光入出射部のGRINレンズをそれぞれ収容するための複数の第1穴が開口されており、前記複数の第1穴の前記導入穴側には、前記第1穴より小径であり、前記複数の第1穴と前記導入穴とをそれぞれ連結し、前記導入穴から導入された前記導波路部材をそれぞれ収容するための複数の第2穴が形成されている光コネクタフェルールと、前記複数の第1穴に前記GRINレンズをそれぞれガイドする治具フェルールとを用意する、第1工程と、
前記治具フェルールに、前記GRINレンズの先端をそれぞれ突出させてガイドする、第2工程と、
前記導波路部材を前記光コネクタフェルールの前記複数の第2穴にそれぞれ挿入するとともに、前記治具フェルールから突出した前記GRINレンズの先端を、前記光コネクタフェルールの前記複数の第1穴に前記前端側からそれぞれ挿入する、第3工程と、
前記GRINレンズの先端と前記導波路部材の先端とをそれぞれ当接させるとともに、前記GRINレンズの先端を、前記第1穴から前記第2穴に縮径する部分にそれぞれ突き当てる、第4工程と、
前記光コネクタフェルールの前記後端側の前記導波路部材それぞれ、及び、前記治具フェルールの後端側の前記GRINレンズそれぞれに曲げを付与する、第5工程と、
前記導波路部材の曲げ及び前記GRINレンズの曲げを確認して、前記導波路部材及び前記GRINレンズを前記光コネクタフェルールに固定する、第6工程と、
前記前端を研磨する、第7工程と、
を含む、光コネクタの製造方法。
【請求項8】
前記第6工程では、前記GRINレンズの曲げの長さが、前記導波路部材の曲げの長さよりも小さい、
請求項に記載の光コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ、及び、光コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバをフェルールに収容して構成された光コネクタがある。光コネクタ同士を接続する際には、例えばガイドピンによって光ファイバ同士の位置決めがなされる。この種の光コネクタとして、光ファイバ同士の位置決め精度を緩和するために、光ファイバ端部にビームを拡大するレンズを配置し、拡大されたビームを介して光接続を行うレンズ付き光コネクタがある。特許文献1には、この種の光コネクタが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の光コネクタは、フェルールの各光ファイバ保持穴において、各光ファイバ端部にGRIN(Graded Index)レンズを配置し、GRINレンズで拡大されたビームを介して光接続を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−300596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、拡大ビームを介して光接続を行う形態では、相手方の光コネクタ端面と間隔をあけた状態で対向させて光接続を行う場合がある。この場合、特許文献1に記載のように、光コネクタ端面における入出射面が光ファイバ及びGRINレンズの光軸に対して直交していると、当該入出射面、及び、相手方の光コネクタ端面における入出射面で反射した反射戻り光が光ファイバに結合してしまい、光学特性を低下させてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、入出射面における反射戻り光に起因する光学特性の低下を抑制することが可能な光コネクタ、及び、光コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光コネクタは、複数の光入出射部と、複数の光入出射部を収容するフェルールとを備え、相手方光コネクタと光接続を行う光コネクタであって、複数の光入出射部それぞれは、第1の光軸を有する導波路部材と、第2の光軸を有し、一端が導波路部材の端部に接続され、他端に入出射面を有するGRINレンズとを備え、導波路部材の端部において、第1の光軸に対して第2の光軸がオフセットされており、入出射面は、当該入出射面から出射する光ビームの光軸と非直交であり、かつ、当該入出射面に入射する光ビームの光軸と非直交であり、フェルールは相手方光コネクタと光接続を行うためのガイド部を有する。
【0008】
また、本発明の光コネクタの製造方法は、複数の光入出射部と、複数の光入出射部を収容するフェルールとを備える光コネクタであって、相手方光コネクタと光接続を行う当該光コネクタの製造方法であって、相手方光コネクタと対向する前端と前端の反対側の後端とを有し、後端には複数の光入出射部の導波路部材を導入する導入穴が開口されており、前端には複数の光入出射部のGRINレンズをそれぞれ収容するための複数の第1穴が開口されており、複数の第1穴の導入穴側には、第1穴より小径であり、複数の第1穴と導入穴とをそれぞれ連結し、導入穴から導入された導波路部材をそれぞれ収容するための複数の第2穴が形成されている光コネクタフェルールと、複数の第1穴にGRINレンズをそれぞれガイドする治具フェルールとを用意する第1工程と、治具フェルールにGRINレンズの先端をそれぞれ突出させてガイドする第2工程と、導波路部材を光コネクタフェルールの複数の第2穴にそれぞれ挿入するとともに、治具フェルールから突出したGRINレンズの先端を、光コネクタフェルールの複数の第1穴に前端側からそれぞれ挿入する第3工程と、GRINレンズの先端と導波路部材の先端とをそれぞれ当接させるとともに、GRINレンズの先端を第1穴から第2穴に縮径する部分にそれぞれ突き当てる第4工程と、光コネクタフェルールの後端側の導波路部材それぞれ、及び、治具フェルールの後端側のGRINレンズそれぞれに曲げを付与する第5工程と、導波路部材の曲げ及びGRINレンズの曲げを確認して、導波路部材及びGRINレンズを光コネクタフェルールに固定する第6工程と、前端を研磨する第7工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入出射面における反射戻り光に起因する光学特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図2図1に示すII-II線に沿う光コネクタの断面図である。
図3図2に示すIII部分を拡大して示す図である。
図4図2に示すII-II線に沿うフェルールの断面斜視図及び一部拡大断面斜視図である。
図5】第1の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
図7】光ファイバ11の光軸L1とGRINレンズ12の光軸L2とのオフセット量に対する反射減衰量の関係を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る光コネクタの製造方法を示すフローチャートである。
図9】、図8に示す光コネクタの製造方法の模式図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図11図10に示すXI-XI線に沿う光コネクタの断面図である。
図12図11に示すXII部分を拡大して示す図である。
図13図10に示すXI-XI線に沿う光入出射部の一部拡大断面図(模式図)である。
図14図10に示すXI-XI線に沿うフェルールの一部拡大断面斜視図である。
図15】第2の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図18】第3の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
図19】本発明の第3の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係る光コネクタは、(1)複数の光入出射部と、複数の光入出射部を収容するフェルールとを備え、相手方光コネクタと光接続を行う光コネクタであって、複数の光入出射部それぞれは、第1の光軸を有する導波路部材と、第2の光軸を有し、一端が導波路部材の端部に接続され、他端に入出射面を有するGRINレンズとを備え、導波路部材の端部において、第1の光軸に対して第2の光軸がオフセットされており、入出射面は、当該入出射面から出射する光ビームの光軸と非直交であり、かつ、当該入出射面に入射する光ビームの光軸と非直交であり、フェルールは相手方光コネクタと光接続を行うためのガイド部を有する。
【0012】
この光コネクタによれば、導波路部材の光軸に対してGRINレンズの光軸をオフセットすることで、導波路部材からGRINレンズに入射する光ビームの光軸をGRINレンズの光軸と異ならせることができる。これにより、容易に、入出射面から出射する光ビームの光軸を入出射面と直交しないようにできる。したがって、入出射面(GRINレンズの他端面)で反射した光が導波路部材の導波路に結合することを低減することができ、入出射面における反射戻り光に起因する光学特性の低下を低減することができる。
【0013】
また、この光コネクタによれば、入出射面と直交しない光軸を有する光ビームを入出射面に入射するときに、当該光ビームを容易に導波路部材の導波路に結合することができる。
【0014】
(2)上記した導波路部材はシングルモード伝送を行う部材であり、第1の光軸に対する第2の光軸のオフセット量は5μm以上であってもよい。これによれば、シングルモード伝送の場合に、入出射面における反射減衰量を十分に抑制することができ、シングルモード伝送用光コネクタへの適用が可能となる。
【0015】
(3)上記したGRINレンズの外径は、導波路部材の外径よりも大きくてもよい。これによれば、導波路部材の光軸に対してGRINレンズの光軸をオフセットしても、導波路部材から出射する光ビームがGRINレンズから外れ難い。また、光コネクタを組み立てる際に、導波路部材を収容する穴のサイズとGRINレンズを収容する穴のサイズとを変えることで、導波路部材とGRINレンズとの端面位置の管理を容易に行うことができる。すなわち、GRINレンズ長の管理を容易に行うことができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0016】
(4)上記した導波路部材の外周は、GRINレンズの外周の内側に収まっていてもよい。これによれば、GRINレンズをフェルールに固定した後に導波路部材をGRINレンズに突き当てて位置決めを行う場合に、導波路部材の端面とGRINレンズの端面とを十分に面当てすることができる。これにより、組み立て工程において、導波路部材及びGRINレンズの欠損を抑制することができる。
【0017】
(5)上記した入出射面は、第2の光軸と直交してもよい。これによれば、GRINレンズの端面及びフェルールの端面を斜めに加工する必要がない。また、複数の導波路部材を多心、多段に配置する場合に、各導波路部材の端面位置及びGRINレンズの端面位置を揃えることが容易である。また、GRINレンズ長のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0018】
(6)上記したガイド部は、対称線に対して対称に配置されており、光コネクタと相手方光コネクタとの間で、各入出射面に直交しない光軸を有する光ビームの光接続が行われるように、複数の光入出射部は上記対称線に対して非対称に配置されていてもよい。
【0019】
この光コネクタ同士で光接続を行う場合、光コネクタ間では光ビームが接続方向に対して傾斜することとなるので、この傾斜に対応するように、一方の光コネクタにおける光入出射部を他方の光コネクタにおける光入出射部に対してオフセットする必要がある。この光コネクタによれば、複数の光入出射部を非対称に配置することで、上記した光入出射部のオフセット配置を実現することができ、一対の光コネクタ間で、各入出射面に直交しない光軸を有する光ビームの光接続を行うことができる。これによれば、上記した光入出射部を多心光コネクタに適用することが可能となる。
【0020】
(7)相手方光コネクタは、上記した光コネクタと同一構成を有し、上記したガイド部は、第1ガイド部と、第1ガイド部と接続可能な第2ガイド部とを有し、相手方光コネクタに対して上下反転して対向するときに、第1ガイド部が相手方光コネクタの第2ガイド部と接続し、第2ガイド部が相手方光コネクタの第1ガイド部と接続してもよい。これによれば、雄コネクタと雌コネクタとの2種類を用意せずとも、同じ形状の光コネクタを用意し、上下反転して接続すればよい。これによれば、低コスト化が可能となる。
【0021】
(8)上記した入出射面は、第2の光軸と非直交であり、第2の光軸は、入出射面から出射した光ビームの光軸と平行であり、かつ、入出射面に入射する光ビームの光軸と平行であってもよい。これによれば、入出射面から出射した光ビームの光軸、及び、入出射面に入射する光ビームの光軸がGRINレンズの光軸と平行であるので、光コネクタに適用する場合に、これらの光コネクタ同士をオフセットなしで対向するだけで容易に光接続が可能となる。したがって、使いやすい光入出射部を得ることができる。また、これによれば、光軸オフセットと端面傾斜とを併用したものであり、端面傾斜量が小さくても、入出射面における反射戻り光に起因する光学特性の低下を十分に低減することができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0022】
(9)上記したガイド部は、対称線に対して対称に配置されており、光コネクタと相手方光コネクタとの間で、各入出射面に直交しない光軸を有する光ビームの光接続が行われるように、複数の光入出射部は上記対称線に対して対称に配置されていてもよい。
【0023】
この光コネクタ同士で光接続を行う場合、光コネクタ間では光ビームが接続方向に対して平行となるので、一方の光コネクタにおける光入出射部を他方の光コネクタにおける光入出射部に対してオフセットする必要がない。この光コネクタによれば、複数の光入出射部を対称に配置することで、一対の光コネクタ間で、各入出射面に直交しない光軸を有する光ビームの光接続を容易に行うことができる。すなわち、上記したように、これらの光コネクタ同士をオフセットなしで対向するだけで容易に光接続が可能となる。これによれば、上記した光入出射部を多心光コネクタに適用することが可能となる。
【0024】
(10)上記したガイド部は、第1ガイド部と、第1ガイド部と接続可能な第2ガイド部とを有し、相手方光コネクタに対して対向するときに、第1ガイド部が相手方光コネクタの第2ガイド部と接続し、第2ガイド部が相手方光コネクタの第1ガイド部と接続してもよい。これによれば、雄コネクタと雌コネクタとの2種類を用意せずとも、同じ形状の光コネクタを用意して接続すればよい。なお、上記したように、同じ形状の光コネクタを用意し、上下反転して接続する形態であってもよい。これによれば、低コスト化が可能となる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る光コネクタは、(11)上記した複数の光入出射部と、複数の光入出射部を収容するフェルールとを備える光コネクタであって、相手方光コネクタと光接続を行う当該光コネクタにおいて、フェルールは相手方光コネクタと対向する前端と前端の反対側の後端とを有し、後端には複数の光入出射部の導波路部材を導入する導入穴が開口されており、前端には複数の光入出射部のGRINレンズをそれぞれ収容するための複数の第1穴が開口されており、複数の第1穴の導入穴側には、第1穴より小径であり、複数の第1穴と導入穴とをそれぞれ連結し、導入穴から導入された導波路部材をそれぞれ収容するための複数の第2穴が形成されている。
【0026】
この光コネクタよれば、光コネクタを組み立てる際に、前端側からGRINレンズを、後端側から導波路部材を導入することで、大径のGRINレンズの端面位置、及び、GRINレンズ長の管理を容易に行うことができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る光コネクタの製造方法は、(12)複数の光入出射部と、複数の光入出射部を収容するフェルールとを備える光コネクタであって、相手方光コネクタと光接続を行う当該光コネクタの製造方法であって、相手方光コネクタと対向する前端と前端の反対側の後端とを有し、後端には複数の光入出射部の導波路部材を導入する導入穴が開口されており、前端には複数の光入出射部のGRINレンズをそれぞれ収容するための複数の第1穴が開口されており、複数の第1穴の導入穴側には、第1穴より小径であり、複数の第1穴と導入穴とをそれぞれ連結し、導入穴から導入された導波路部材をそれぞれ収容するための複数の第2穴が形成されている光コネクタフェルールと、複数の第1穴にGRINレンズをそれぞれガイドする治具フェルールとを用意する第1工程と、治具フェルールにGRINレンズの先端をそれぞれ突出させてガイドする第2工程と、導波路部材を光コネクタフェルールの複数の第2穴にそれぞれ挿入するとともに、治具フェルールから突出したGRINレンズの先端を光コネクタフェルールの複数の第1穴に前端側からそれぞれ挿入する第3工程と、GRINレンズの先端と導波路部材の先端とをそれぞれ当接させるとともに、GRINレンズの先端を第1穴から第2穴に縮径する部分にそれぞれ突き当てる第4工程と、光コネクタフェルールの後端側の導波路部材それぞれ、及び、治具フェルールの後端側のGRINレンズそれぞれに曲げを付与する第5工程と、導波路部材の曲げ及びGRINレンズの曲げを確認して、導波路部材及びGRINレンズを光コネクタフェルールに固定する第6工程と、前端を研磨する第7工程とを含む。
【0028】
この光コネクタの製造方法によれば、GRINレンズ及び導波路部材に曲げが付与されていることを確認することで、両者がきちんと突き当てられていることを保証することができる。GRINレンズと導波路部材との隙間が空いてしまい、光学特性が低下することを防止できる。したがって、製造の歩留まりを向上することができる。
【0029】
(13)上記した第6工程では、GRINレンズの曲げの長さが、導波路部材の曲げの長さよりも小さくてもよい。曲げ長が小さいと、座屈力(ファイバが伸びようとする力)が大きい。従って、光ファイバの座屈力にGRINレンズが負けない。従って、GRINレンズ先端が、第1穴と第2穴の縮径する部分にきちんと突き当たっていることを保証することができる。これにより、光ファイバとGRINレンズの突き当て位置を管理することができるので、GRINレンズ長のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な光学特性を有する光コネクタを容易に製造可能となる。
[本願発明の実施形態の詳細]
【0030】
本発明の実施形態に係る光コネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図であり、図2は、図1に示すII-II線に沿う光コネクタの断面図である。図3は、図2に示すIII部分を拡大して示す図であり、図4は、図2に示すII-II線に沿うフェルールの断面斜視図及び一部拡大断面斜視図である。図5は、第1の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図であり、図6は、本発明の第1の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
【0032】
各図には、説明の便宜のためにXYZ直交座標系が記載されている。X軸は、光コネクタの入出射面側の前端、及び後端における長手方向に延在し、Y軸は、光コネクタの前端及び後端における短手方向に延在する。Z軸は、光コネクタの前端から後端へ向かう方向、すなわち光コネクタ内の光ファイバの延在方向、換言すれば光ファイバの光軸に沿って、延在する。
【0033】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態の光コネクタ1は、32個(8個×4段)の光入出射部10と、これらの光入出射部10を収容するフェルール20とを備える。光入出射部10は、X方向及びY方向に二次元配列されており、Z方向に延在している。より具体的には、光入出射部10は、X方向に8個、Y方向に4段で二次元配列されている。
【0034】
各光入出射部10は、図2及び図3に示すように、光ファイバ(導波路部材)11とGRINレンズ12とを有する。光ファイバ11は、同心円筒状のコアとクラッドとを含む。光ファイバ11の一例としては、コア径約10μmのシングルモード光ファイバが挙げられる。光ファイバ11は、Z軸に沿って第1の光軸L1を有する。光ファイバ11に対して光入出射部10の入出射面10a側には、GRINレンズ12が配置されている。
【0035】
GRINレンズ12の一例としては、GI(Graded Index)ファイバが挙げられる。GRINレンズ12は、中心から外周12cに向けて屈折率が徐々に小さくなるような所定の屈折率分布を有する。GRINレンズ12の一端12aは光ファイバ11の端部11aに接続され、GRINレンズ12の他端12bは光入出射部10の入出射面10aとなる。
【0036】
GRINレンズ12は、Z軸に沿って第2の光軸L2を有する。すなわち、GRINレンズ12の光軸L2は、光ファイバ11の光軸L1に対して平行である。また、GRINレンズ12の光軸L2は、光ファイバ11の端部11aにおいて、光ファイバ11の光軸L1に対してY方向にオフセットされている。このオフセット量の詳細については後述する。
【0037】
GRINレンズ12の一端12a及び他端12bは、光軸L2と直交するように形成されている。すなわち、光入出射部10の入出射面10aは、GRINレンズ12の光軸L2と直交する。また、図5に示すように、光入出射部10の入出射面10aは、入出射面10aから出射する光ビームL3の光軸、及び、入出射面10aに入射する光ビームL3の光軸と直交しないこととなる。
【0038】
ここで、図5に示すように、光入出射部10同士を間隔をあけて対向させると、一方(図面右側)の光入出射部10の光ファイバ11のコアから出射した光ビームL3は、GRINレンズ12内を広がりながら伝搬し、入出射面10aから出射する。出射した光ビームL4は、コリメートされた光ビームであり、一方の光入出射部10と他方(相手方、図面左側)の光入出射部10との間を伝搬し、他方の光入出射部10の入出射面10aに入射する。入射した光ビームL3’は、GRINレンズ12によって集光され、光ファイバ11のコアに結合する。このように、光入出射部10は、拡大ビームを介して光ファイバ11の光接続を行う。
【0039】
ここで、入出射面10aでは、GRINレンズ12と空気との屈折率差が存在し、これにより、光ビームL3が一方の光入出射部10の入出射面10aから出射するときに反射戻り光L5が発生する。また、光ビームL4が他方の光入出射部10の入出射面10aに入射するときに反射戻り光L6が発生する。
【0040】
本実施形態では、GRINレンズ12の光軸L2が光ファイバ11の光軸L1に対してオフセットされているので、光ビームL3は光軸L2に対して非平行となる。また、入出射面10aが光軸L2と直交するので、光ビームL3は入出射面10aに対して直交しない。これにより、光ビームL3が入出射面10aから出射するときに発生する反射戻り光L5が、光ファイバ11のコアに結合しないようにすることができる。また、光ビームL4は入出射面10aに対して直交しないので、光ビームL4が入出射面10aに出射するときに発生する反射戻り光L6が、光ファイバ11のコアに結合しないようにすることができる。
【0041】
図7は、光ファイバ11の光軸L1とGRINレンズ12の光軸L2とのオフセット量に対する反射減衰量の関係を示す図である。なお、反射減衰量が大きいほど、光ファイバ11に結合する反射戻り光の量が少ないことを意味する。図7によれば、光ファイバ11の光軸L1とGRINレンズ12の光軸L2とのオフセット量が増大するにつれて、反射減衰量が大きくなることがわかる。
【0042】
一般に、シングルモード光ファイバ用の光コネクタでは、反射減衰量が30dB以上、好ましくは40dB以上、さらに好ましくは50dB以上であることが求められる。これより、光ファイバ11の光軸L1に対するGRINレンズ12の光軸L2のオフセット量は、5μm以上であればよく、6μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがさらに好ましい。
【0043】
なお、本実施形態では、GRINレンズ12の外径が光ファイバ11の外径よりも大きく、光ファイバ11の外周がGRINレンズ12の外周の内側に収まっている。なお、GRINレンズ12の外径は光ファイバ11の外径と略同一であってもよい。
【0044】
次に、フェルール20は、図1〜4に示すように、相手方光コネクタと対向する前端20aと、Z方向において前端と反対側の後端20bとを有する。後端20bには、32本の光ファイバ11の束を導入するために、Z方向に延びる導入穴23が開口されている。一方、前端20aには、32個のGRINレンズ12をそれぞれ収容するために、Z方向に延びる32個の第1穴21が開口されている。32個の第1穴21の導入穴23側には、これらの第1穴21と導入穴23とをそれぞれ連結するために、Z方向に延びる32個の第2穴22が形成されている。32個の第2穴22は、導入穴23から導入された光ファイバ11をそれぞれ収容する。第2穴22は第1穴21より小径であり、第1穴21と第2穴22との間には、それぞれ、縮径する部分21aが存在する。
【0045】
第1穴21の中心は、第2穴22の中心に対してY方向にオフセットされている。これにより、第1穴21にGRINレンズ12を固定し、第2穴22に光ファイバ11を固定すれば、上述した光ファイバ11の光軸L1とGRINレンズ12の光軸L2とのオフセット構造を容易に得ることができる。
【0046】
また、第2穴22と導入穴23との間には、それぞれ、光ファイバ11を第2穴22に挿入しやすくするための構造として、沿わせ溝22a、及び、テーパ22bが形成されている。
【0047】
また、フェルール20には、接着部材を充填することによって光ファイバ11を接着固定するための窓24が形成されている。また、図2に示すように、フェルール20の導入穴23には、32本の光ファイバ11を支持するための支持部材15が設けられてもよい。
【0048】
また、フェルール20は、図1図2及び図6に示すように、相手方光コネクタと光接続を行うためにガイド部を備える。ガイド部は、2つのガイドピン(第1ガイド部)25と、ガイドピン25と接続可能な2つのガイドピン穴(第2ガイド部)26とを含む。2つのガイドピン25は、前端20aのY方向上側におけるX方向両側部に、左右対称線(X方向対称線)S1に対して左右対称に配置されており、Z方向に突出している。一方、2つのガイドピン穴(第2ガイド部)26は、前端20aのY方向下側におけるX方向両側部に、左右対称線S1に対して左右対称に配置されており、Z方向に窪んでいる。また、ガイドピン25とガイドピン穴26とは、上下対称線(Y方向対称線)S2に対して上下対称な位置に配置されている。これにより、図6に示すように、一方(図面右側)に対して他方(図面左側)を上下反転するだけで、同一の光コネクタ同士を結合することができる。
【0049】
また、図6(b)に示すように、32個の光入出射部10は、左右対称線S1に対して左右対称に配置されている。一方、32個の光入出射部10は、上下対称線S2に対して上下非対称に配置されている。具体的には、32個の光入出射部10は、前端20aのY方向下側にずれて配置されている。これにより、一方の光コネクタ1におけるY方向下側にずれた光入出射部10から出射し、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1との間隔部分をY方向斜め上方向に伝搬する光ビームL4を、他方の光コネクタ1におけるY方向上側にずれた光入出射部10へ結合することができる。
【0050】
次に、光コネクタ1の製造方法について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る光コネクタの製造方法を示すフローチャートであり、図9は、図8に示す光コネクタの製造方法の模式図である。光コネクタ1の製造方法は、7つの工程を含む。
【0051】
まず、上記した光コネクタフェルール20と治具フェルール30とを用意する。治具フェルール30は、上記したGRINレンズ12を構成するGIファイバ12’を仮固定するためのものである(第1工程S1)。
【0052】
次に、32本のGIファイバ12’を治具フェルール30にそれぞれガイドさせる。このとき、治具フェルール30の前端30aからGIファイバ12’の先端を突出させる。また、治具フェルール30の後端30b側では、固定部31によってGIファイバ12’を固定する。固定部31より前側(治具フェルール30側)では、GIファイバ12’は治具フェルール30に対して相対的に前後移動可能とする(第2工程S2)。
【0053】
次に、32本の光ファイバ11を光コネクタフェルール20の後端20b側の導入穴23を介して32個の第2穴22にそれぞれ挿入する。このとき、光ファイバ11の先端の一部を第1穴21までそれぞれ突出させる。また、光コネクタフェルール20の後端20b側では、固定部32によって光ファイバ11を固定する。固定部32より前側(光コネクタフェルール20側)では、光ファイバ11は光コネクタフェルール20に対して相対的に前後移動可能である(第3工程S3)。なお、固定部31と治具フェルール30の後端30bとの間隔D1は、固定部32と光コネクタフェルール20との間隔D2よりも小さい。
【0054】
次に、治具フェルール30の前端30aから突出したGIファイバ12’の先端を、光コネクタフェルール20の32個の第1穴21に前端20a側からそれぞれ挿入する。このとき、GIファイバ12’の先端を、第1穴21の反対側から突出している光ファイバ11の先端にそれぞれ当接させ、更に光ファイバ11をそれぞれ押し戻しつつ、GIファイバ12’の先端を、第1穴21から第2穴22に縮径する部分21aにそれぞれ突き当てる(第3工程及び第4工程S4)。
【0055】
また、このとき、光ファイバ11は、光コネクタフェルール20の後端20b側の固定部32によって固定されているので、GIファイバ12’によって押し戻されることにより、光コネクタフェルール20の後端20bと固定部32との間で光ファイバ11にそれぞれ曲げを生じさせる(第5工程S5−1)。この曲げを確認することにより、GIファイバ12’の先端と光ファイバ11の先端とが当接したことを確認することができる。
【0056】
次に、GIファイバ12’をさらに押し込み、治具フェルール30の後端30bと固定部31との間でGIファイバ12’にそれぞれ曲げを生じさせる(第5工程S5−2)。この曲げを確認することにより、GIファイバ12’の先端が、第1穴21と第2穴22との間の縮径部21aに当接したことを確認することができる。
【0057】
次に、光ファイバ11の先端とGIファイバ12’の先端とが当接し、かつ、GIファイバ12’の先端と縮径部分21aとが当接したことを確認した上で、光ファイバ11及びGIファイバ12’を光コネクタフェルール20に接着固定する(第6工程S6)。
【0058】
次に、GIファイバ12’を切断し、光コネクタフェルール20の前端20a及びGIファイバ12’の切断面を研磨することによって、光ファイバ11の先端にGRINレンズ12が接続された光入出射部10を備える光コネクタ1を得る(第7工程S7)。
【0059】
以上の構成を備える第1の実施形態の光入出射部10、光コネクタ1、及び、光コネクタの製造方法によって得られる作用効果について説明する。
【0060】
第1の実施形態の光コネクタ1によれば、光ファイバ(導波路部材)11の光軸L1に対してGRINレンズ12の光軸L2をオフセットすることで、光ファイバ11からGRINレンズ12に入射する光ビームL3の光軸をGRINレンズ12の光軸L2と異ならせることができる。これにより、容易に、入出射面10aから出射する光ビームL3の光軸を入出射面10aと直交しないようにできる。したがって、入出射面10aで反射した光L5が光ファイバ11のコアに結合することを低減することができ、入出射面10aにおける反射戻り光に起因する光学特性の低下を低減することができる。
【0061】
また、この光コネクタ1によれば、入出射面10aと直交しない光軸を有する光ビームL4を入出射面10aに入射するときに、当該光ビームL4を容易に光ファイバ11のコアに結合することができる。
【0062】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、光ファイバ11の光軸L1に対するGRINレンズ12の光軸L2のオフセット量が5μm以上であるので、シングルモード伝送の場合に、入出射面10aにおける反射減衰量を十分に抑制することができ、シングルモード伝送用光コネクタへの適用が可能となる。
【0063】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、GRINレンズ12の外径が光ファイバ11の外径よりも大きいので、光ファイバ11の光軸L1に対してGRINレンズ12の光軸L2をオフセットしても、光ファイバ11から出射する光ビームがGRINレンズ12から外れ難い。また、光コネクタを組み立てる際に、光ファイバ11を収容する穴のサイズとGRINレンズ12を収容する穴のサイズとを変えることで、光ファイバ11とGRINレンズ12との端面位置の管理を容易に行うことができる。すなわち、GRINレンズ12長の管理を容易に行うことができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0064】
GRINレンズ12長を所望値に管理することにより、光ファイバ11のコアから出射した光ビームをコリメートして出射することができる。GRINレンズ長がばらつくとコリメート状態がばらつくため、相手方光コネクタにおいて、きちんと光ビームが光ファイバのコアに集光されなくなり、光学特性が低下する(接続損失増大)。しかしながら、本構成によれば、光学特性の良い多心光コネクタを容易に製造することができる。
【0065】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、光ファイバ11の外周がGRINレンズの外周の内側に収まっているので、GRINレンズ12をフェルール20に固定した後に光ファイバ11をGRINレンズ12に突き当てて位置決めを行う場合に、光ファイバ11の端面11aとGRINレンズ12の端面12aとを十分に面当てすることができる。これにより、組み立て工程において、光ファイバ11及びGRINレンズ12の欠損を抑制することができる。
【0066】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、入出射面10aがGRINレンズ12の光軸L2と直交するので、GRINレンズ12の端面12b及びフェルール20の端面20aを斜めに加工する必要がない。また、複数の光ファイバ11を多心、多段に配置する場合に、各光ファイバ11の端面位置及びGRINレンズ12の端面位置を揃えることが容易である。また、GRINレンズ12長のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0067】
ところで、この光コネクタ同士で光接続を行う場合、光コネクタ間では光ビームが接続方向に対して傾斜することとなるので、この傾斜に対応するように、一方の光コネクタにおける光入出射部を他方の光コネクタにおける光入出射部に対してオフセットする必要がある。第1の実施形態の光コネクタ1によれば、複数の光入出射部10を非対称に配置することで、上記した光入出射部10のオフセット配置を実現することができ、一対の光コネクタ1間で、各入出射面10aに直交しない光軸を有する光ビームの光接続を行うことができる。これによれば、上記した光入出射部を多心光コネクタに適用することが可能となる。
【0068】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、ガイド部がガイドピン25とガイドピン穴26とを有し、相手方光コネクタに対して上下反転して対向可能であるので、雄コネクタと雌コネクタとの2種類を用意せずとも、同じ形状の光コネクタを用意し、上下反転して接続すればよい。これによれば、低コスト化が可能となる。
【0069】
また、第1の実施形態の光コネクタ1によれば、光ファイバ11を収容するための第2穴がGRINレンズ12を収容するための第1穴よりも小径であるので、光コネクタを組み立てる際に、前端側からGRINレンズ12を、後端側から光ファイバ11を導入することで、大径のGRINレンズ12の端面位置、及び、GRINレンズ12長の管理を容易に行うことができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の光コネクタの製造方法によれば、GRINレンズ12及び光ファイバ11に曲げが付与されていることを確認することで、両者がきちんと突き当てられていることを保証することができる。GRINレンズ12と光ファイバ11との隙間が空いてしまい、光学特性が低下することを防止できる。したがって、製造の歩留まりを向上することができる。
【0071】
また、本実施形態の光コネクタの製造方法によれば、GRINレンズ12の曲げの長さを光ファイバ11の曲げの長さよりも小さくする。曲げ長が小さいと、座屈力(ファイバが伸びようとする力)が大きい。従って、第1穴内に突出した光ファイバ11にGRINレンズ12の先端を当接させて押し戻すときに、光ファイバ11の座屈力にGRINレンズ12が負けない。そのため、GRINレンズ12が曲がるのはGRINレンズ12の先端が、第1穴21と第2穴22の縮径する部分21aにきちんと突き当たっている時であるということができる。したがって、GRINレンズ12の先端が、第1穴21と第2穴22の縮径する部分21aにきちんと突き当たっていることを保証することができる。これにより、光ファイバ11とGRINレンズ12の突き当て位置を管理することができるので、GRINレンズ12長のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な光学特性を有する光コネクタを容易に製造可能となる。
(第2の実施形態)
【0072】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図であり、図11は、図10に示すXI-XI線に沿う光コネクタの断面図である。図12は、図11に示すXII部分を拡大して示す図であり、図13は、図10に示すXI-XI線に沿う光入出射部の一部拡大断面図(模式図)である。図14は、図10に示すXI-XI線に沿うフェルールの一部拡大断面斜視図である。図15は、第2の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図であり、図16は、本発明の第2の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
【0073】
図10及び図11に示すように、第2の実施形態の光コネクタ1Aは、光コネクタ1において主に入出射面がY方向に傾斜している点で相違する。光コネクタ1Aは、32個(8個×4段)の光入出射部10Aと、これらの光入出射部10Aを収容するフェルール20Aとを備える。
【0074】
各光入出射部10Aは、図11図13に示すように、光入出射部10においてGRINレンズ12に代えてGRINレンズ12Aを備えている点で第1の実施形態と相違する。GRINレンズ12Aは、光接続された光入出射部10Aの間で光ビームL4がZ方向に対して平行となるように、他端12bがY方向に傾斜している点でGRINレンズ12と異なる。すなわち、光入出射部10の入出射面10aは、GRINレンズ12Aの光軸L2と直交しない。また、図15に示すように、光入出射部10の入出射面10aは、入出射面10aから出射する光ビームL3の光軸、及び、入出射面10aに入射する光ビームL3の光軸と直交しない。また、入出射面10aから出射した光ビームL4の光軸、及び、入出射面10aに入射する光ビームL4の光軸は、GRINレンズ12Aの光軸L2と平行である。
【0075】
本実施形態でも、光ビームL3は入出射面10aに対して直交しないので、光ビームL3が入出射面10aから出射するときに発生する反射戻り光L5が、光ファイバ11のコアに結合しないようにすることができる。また、光ビームL4は入出射面10aに対して直交しないので、光ビームL4が入出射面10aに出射するときに発生する反射戻り光L6が、光ファイバ11のコアに結合しないようにすることができる。
【0076】
また、図13に示すように、Y方向に並ぶGRINレンズ12AのZ方向の長さを異ならせないように、GRINレンズ12Aの一端12aを固定する位置を異ならせている。これにより、入出射面10aの傾斜に起因する入出射面位置差D3をGRINレンズ12Aの一端12aの固定位置差D4によってキャンセルする。
【0077】
なお、第1の実施形態では、GRINレンズ12の光軸L2が、光ファイバ11の端部11aにおいて、光ファイバ11の光軸L1に対してY方向上方にオフセットされていたが、本実施形態では、GRINレンズ12Aの光軸L2が、光ファイバ11の端部11aにおいて、光ファイバ11の光軸L1に対してY方向下方にオフセットされている。また、光ファイバ11の光軸L1に対してGRINレンズ12Aの光軸L2がオフセットする方向と反対方向に向かって入出射面が突出するように、入出射面がY方向に傾斜している。
【0078】
次に、フェルール20Aは、図10図14に示すように、入出射面10aの傾斜角に合わせて前端20aがY方向に傾斜している点でフェルール20と異なる。また、Y方向の異なる位置に位置する第1穴21と第2穴22との間の縮径部分21aの位置が、入出射面10aの傾斜角に応じてZ方向にずれている。これにより、図13に示す光入出射部10Aの実装構造を容易に得ることができる。
【0079】
前端20aの傾斜は、例えば、上記した光コネクタの製造方法における第7工程の研磨プロセスにおいて形成することができる。具体的には、前端20aがY方向に傾斜していない光コネクタフェルールにGRINレンズ及び光ファイバを実装した後に、前端20a及び入出射面10aを研磨すればよい。なお、光コネクタフェルールの縮径部分21aの位置は、この研磨加工の傾斜角設計値に応じて予め決定すればよい。
【0080】
また、図16(b)に示すように、32個の光入出射部10が、左右対称線S1に対して左右対称に配置されるとともに、上下対称線S2に対しても上下対称に配置されている点で第1の実施形態と異なる。
【0081】
この第2の実施形態の光コネクタ1Aでも、第1の実施形態の光コネクタ1と同様の利点を得ることができる。
【0082】
なお、第2の実施形態の光コネクタ1Aによれば、入出射面10aから出射した光ビームL4の光軸、及び、入出射面10aに入射する光ビームL4の光軸がGRINレンズ12の光軸L2と平行であるので、光コネクタに適用する場合に、これらの光コネクタ同士をオフセットなしで対向するだけで容易に光接続が可能となる。したがって、使いやすい光入出射部を得ることができる。
【0083】
これにより、光接続された光入出射部10Aの間隔部分では、コリメートビームであり、かつ、光軸方向に平行に伝搬するので、光入出射部10Aの間隔が変動しても、光学特性の低下が小さくなる。したがって、光コネクタを構成する場合に、入出射面間の間隔を高精度に位置決めしなくてもよいので、光コネクタの低コスト化が可能である。
【0084】
また、第2の実施形態の光コネクタ1Aによれば、光軸オフセットと端面傾斜とを併用したものであり、端面傾斜量が小さくても、入出射面10aにおける反射戻り光に起因する光学特性の低下を十分に低減することができる。したがって、良好な光学特性を得ることができる。
【0085】
ところで、この光コネクタ同士で光接続を行う場合、光コネクタ間では光ビームが接続方向に対して平行となるので、一方の光コネクタにおける光入出射部を他方の光コネクタにおける光入出射部に対してオフセットする必要がない。第2の実施形態の光コネクタ1Aによれば、複数の光入出射部10を対称に配置することで、一対の光コネクタ間で、各入出射面10aに直交しない光軸を有する光ビームの光接続を容易に行うことができる。すなわち、上記したように、これらの光コネクタ同士をオフセットなしで対向するだけで容易に光接続が可能となる。これによれば、上記した光入出射部を多心光コネクタに適用することが可能となる。
(第3の実施形態)
【0086】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。図18は、第3の実施形態に係る光入出射部の結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図であり、図19は、本発明の第3の実施形態に係る光コネクタの結合状態(光接続状態)を摸式的に示す図である。
【0087】
図17に示すように、第3の実施形態に係る光コネクタ1Bは、光コネクタ1Aにおいてガイド部の構成において相違する。具体的には、光コネクタ1Bは、光コネクタ1Aにおいてフェルール20Aに代えてフェルール20Bを備える点で第2実施形態と相違する。光コネクタ1Bの他の構成は光コネクタ1Aと同一である。
【0088】
フェルール20Bは、ガイドピン25とガイドピン穴26とを1つずつ備える点でフェルール20Aと相違する。フェルール20Bの他の構成はフェルール20Aと同一である。
【0089】
図17及び図19(b)に示すように、ガイドピン25は、前端20aのX方向右側におけるY方向中央部(上下対称線S2上)に配置されており、ガイドピン穴26は、前端20aのX方向左側におけるY方向中央部(上下対称線S2上)に配置されている。ガイドピン25とガイドピン穴26とは、左右対称線(X方向対称線)S1に対して上下対称な位置に配置されている。これにより、図19に示すように、一方(図面右側)に対して他方(図面左側)を上下反転することなく、同一の光コネクタ同士を結合することができる。
【0090】
この第3の実施形態の光コネクタ1Bでも、第2の実施形態の光コネクタ1Aと同様の利点を得ることができる。
【0091】
なお、第3の実施形態の光コネクタ1Bによれば、ガイドピンの本数を減らすことができ、光コネクタの低コスト化が可能となる。また、光コネクタ1B間において光ビームL4がGRINレンズ12の光軸L2に平行に伝搬するので、ガイド部構成の自由度が増す。
【0092】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。本実施形態では、光ファイバの光軸に対してGRINレンズの光軸をY方向にオフセットしたが、光ファイバの光軸に対してGRINレンズの光軸をX方向にオフセットしてもよい。第1の実施形態をこのように変形する場合、光入出射部の入出射面から出射する光ビームがX方向に傾斜して伝搬するので、光入出射部の入出射面を左右対称軸に対して非対称に配置すればよい。また、第2及び第3の実施形態をこのように変形する場合、光入出射部の入出射面から出射する光ビームがX方向に傾斜しないように、入出射面を傾斜させればよい。
【0093】
また、本実施形態では、光コネクタの製造方法において、フェルールに対して光ファイバを挿入してからGIファイバを挿入したが、GIファイバを挿入した後に光ファイバを挿入してもよい。この場合、GIファイバを縮径部に当接させて、GIファイバに曲げを付与しした後に、光ファイバを導入し、GIファイバ先端に当接され、光ファイバに曲げを加えても良い。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B…光コネクタ、10,10A…光入出射部、10a…入出射面、11…光ファイバ(導波路部材)、11a…光ファイバの端部、12,12A…GRINレンズ(GIファイバ)、12a…GRINレンズの一端、12b…GRINレンズの他端、12c…GRINレンズの外周、15…支持部材、20,20A,20B…フェルール、20a…フェルールの前端、20b…フェルールの後端、21…第1穴、21a…縮径部、22…第2穴、22a…沿わせ溝、22b…テーパ、23…導入穴、24…窓、25…ガイドピン(第1ガイド部、ガイド部)、26…ガイドピン穴(第2ガイド部、ガイド部)、30…治具フェルール、30a…治具フェルールの前端、30b…治具フェルールの後端、31,32…固定部、L1…第1の光軸、L2…第2の光軸。
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