(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多管式熱交換器について、図面を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、多管式熱交換器の第1実施形態を示すものであり、
図1(a)は容器軸心位置での概略断面図、
図1(b)は
図1(a)のA−A方向矢視断面図、
図1(c)は
図1(a)のB−B方向矢視断面図である。
【0016】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図1(a)(b)(c)に示すように、円筒状の容器1を備える。
【0017】
容器1内の軸心方向一端寄り個所(
図1(a)では上端寄り個所)には、管板2により仕切られた第1の流体としての管側流体12の分配ヘッダ3が設けられている。容器1内の軸心方向他端寄り個所(
図1(a)では下端寄り個所)には、別の管板4により仕切られた管側流体12の集合ヘッダ5が設けられている。なお、容器1の軸心に沿う方向は、単に、容器軸心方向と云うものとする。
【0018】
容器1における各管板2と4の間に位置する円筒状の部分は胴6である。胴6の内側の空間部は、中心部を除く領域が、環状の管群設置領域7とされる。
【0019】
管群設置領域7には、容器軸心方向に平行に配置された複数の伝熱管9による管群8が設けられている。
【0020】
なお、
図1(a)(b)(c)に示した伝熱管9の数や、伝熱管9同士の間隔は、図示するための便宜上のものであり、実際の伝熱管9の数や伝熱管9同士の間隔を反映したものではない。又、図示する便宜上、
図1(a)と、
図1(b)(c)では、伝熱管9の数や伝熱管9の配置は異なっている(後述する各実施形態の図においても同様)。
【0021】
各伝熱管9の一端部は、管板2を介して分配ヘッダ3に連通接続されている。各伝熱管9の他端部は、管板4を介して集合ヘッダ5に連通接続されている。
【0022】
容器1の軸心方向の一端部には、分配ヘッダ3に連通する管側流体入口10が設けられている。一方、容器1の軸心方向の他端部には、集合ヘッダ5に連通する管側流体出口11が設けられている。これにより、管側流体入口10の上流側に接続された図示しない管側流体供給部より供給される管側流体12は、管側流体入口10を通して分配ヘッダ3に流入し、この分配ヘッダ3内で分散されてから、管群8を形成している各伝熱管9に対し供給される。各伝熱管9に対して供給された管側流体12は、各伝熱管9を通過する間に、各伝熱管9の外面に接する後述の第2の流体としての胴側流体13と、各伝熱管9の管壁を介して間接的に熱交換される。各伝熱管9を通過した後の管側流体12は、集合ヘッダ5で集合させられた後、管側流体出口11を通して容器1の外部へ取り出される。この容器1の外部へ取り出された管側流体12は、管側流体出口11の下流側に接続された図示しない管側流体12の需要先や回収部に送られるようにすればよい。
【0023】
管群設置領域7は、周方向に等間隔の複数個所、たとえば、
図1(b)(c)に示す如き周方向120度間隔の3個所に、バッフル(邪魔板)14a,14b,14cが設けられている。これらのバッフル14a,14b,14cは、容器軸心方向に平行な面内で管群設置領域7の内周側端部から容器1の胴6の内面に接する位置まで容器1の半径方向に沿って延びる矩形板状とされている。これにより、管群設置領域7には、各バッフル14a,14b,14cによって仕切られた3つの区画7aと7bと7cが、周方向に配列して形成される。
【0024】
各バッフル14a,14b,14cは、図示してないが、容器軸心方向の両端側に位置する端部が、各管板2と4にそれぞれ取り付けられている。又、
図1(b)(c)に示すように、各バッフル14a,14b,14cの容器1の外周寄りに位置する端部は、胴6の内面に取り付けられている。
【0025】
各バッフル14a,14b,14cは、管群8の各伝熱管9と干渉しないように配置されている。
【0026】
たとえば、管群8における伝熱管9の配列が、
図1(b)(c)に示すような正三角形を単位とする三角配列(千鳥配列)となっている場合は、管群8には、各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる個所が、周方向60度間隔の6個所に形成される。この容器1の半径方向に連続する隙間が存在する各個所では、その他の個所に比べて、管群設置領域7に供給される胴側流体13が、容器1の半径方向に沿って通り抜けやすくなる。
【0027】
この点に鑑みて、各バッフル14a,14b,14cは、各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる6個所のうちの3個所に配置することが望ましい。これは、各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる個所にバッフル14a,14b,14cを配置することにより、該個所での胴側流体13の容器の半径方向に沿う流れが抑制されるようにするためである。したがって、このような各バッフル14a,14b,14cの配置によれば、管群設置領域7で、胴側流体13が局所的に容器1の半径方向に沿う方向へ通り抜ける現象を抑制することができる。
【0028】
次に、前記のように管群設置領域7に形成された各区画7a,7b,7cを通る胴側流体13の流通経路について説明する。
【0029】
図2は、胴側流体13の流通経路の概要を説明するための図で、容器1の胴6内の管群設置領域7に形成された3つの区画7a,7b,7cを、周方向に分離し、展開させて示してある。なお、
図2では、各区画7a,7b,7cを、内周部が手前側に、外周部が奥側に配置された状態として斜視図で示してある。
図2において、
図1(a)(b)(c)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。又、
図2では、各区画7a,7b,7cを図示する便宜上、各バッフル14a,14b,14c、容器1の胴6以外の部分、管板2、及び、伝熱管9の記載は省略してある。
【0030】
各区画7a,7b,7cは、外周部と内周部の容器軸心方向にずれた位置、たとえば、
図2にハッチングを付して示すように、外周部における容器軸心方向一端寄りの端部(
図2では上端寄りの端部)と、内周部における容器軸心方向他端寄りの端部(
図2では下端寄りの端部)に、外周側開口部15a,15b,15cと、内周側開口部16a,16b,16cをそれぞれ備えている。この外周側と内周側の各開口部15a,15b,15cと16a,16b,16cの具体的な構成については後述する。
【0031】
周方向に配列された3つの区画7a,7b,7cのうち、隣接する区画7aと7bは、互いの内周側開口部16aと16b同士が、区画7aと7bの内側に設けた内周側接続流路17を介して接続されている。更に、隣接する区画7bと7cは、互いの外周側開口部15bと15c同士が、容器1の胴6の外側に設けた外周側接続流路18を介して接続されている。この内周側接続流路17及び外周側接続流路18の具体的な構成は後述する。
【0032】
以上により、管群設置領域7には、外周側開口部15aから、区画7aの内部空間、内周側開口部16a、内周側接続流路17、内周側開口部16b、区画7bの内部空間、外周側開口部15b、外周側接続流路18、外周側開口部15c、及び、区画7cの内部空間を順に経て、内周側開口部16cまで一連に繋がる胴側流体13の流通経路が形成される。
【0033】
これにより、区画7aと7cでは、
図2に示すように、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部15a,15cより流入する胴側流体13が、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部16a,16cに向けて流れるようになる。
【0034】
又、区画7bでは、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部16bより流入する胴側流体13が、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部15bに向けて流れるようになる。
【0035】
したがって、各区画7a,7b,7cでは、前記のように流通する胴側流体13が、複数の伝熱管9(
図1(a)(b)(c)参照)の外面に接して、各伝熱管9内を流通する管側流体12との熱交換に供される。
【0036】
この際、胴側流体13は、各伝熱管9の管軸に平行な容器軸心方向の流れとなるときに生じる抵抗が、各伝熱管9に対して直交する方向の流れ(管群直交流)となるときに生じる抵抗に比して小さくなる。
【0037】
そのため、
図2に各区画7a,7b,7cにおける胴側流体13の流れ方向の概要を示すように、各区画7a,7b,7c内での胴側流体13の流れは、外周側開口部15a,15b,15cと内周側開口部16a,16b,16cが設けられている容器軸心方向両端寄りの領域で、管群直交流の流れ成分を含むようになるとしても、各区画7a,7b,7c内における容器軸心方向の中間部の領域では、主として容器軸心方向に沿った流れとなる。
【0038】
次に、外周側開口部15a,15b,15c、及び、内周側開口部16a,16b,16cと、内周側接続流路17、及び、外周側接続流路18の具体的な構成について説明する。
【0039】
外周側開口部15a,15b,15cは、
図1(a)(b)及び
図2に示すように、容器1の胴6における容器軸心方向一端寄りの端部に、各区画7a,7b,7cの周方向角度範囲に対応して周方向に延びるように設けられている。なお、外周側接続流路18を介して接続される隣接する2つの外周側開口部15bと15cは、
図1(b)に示すように、容器1の胴6に、周方向に連続した開口として形成させるようにしてもよい。
【0040】
一方、
図1(a)(b)に示すように、管群設置領域7の内側(胴6の中心部)には、管板2に接する位置から、胴6における容器軸心方向の他端寄り個所まで延びる円柱形状の閉止部材19が設けられている。これにより、内周側開口部16a,16b,16cは、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端部と、管板4との間の隙間として形成されている。
【0041】
閉止部材19の容器軸心方向一端寄りの端部は、管板2に取り付けられている。又、閉止部材19の外周面には、各バッフル14a,14b,14cの容器1の中心寄りに位置する端部が取り付けられている。なお、閉止部材19は、胴側流体13を通さないものであれば、中空構造又は中実構造のいずれであってもよい。
【0042】
図1(a)に示すように、管板4には、管群設置領域7よりも内側となる中央部に、開口20が設けられている。開口20には、容器1の軸心方向に沿って集合ヘッダ5の内側に突出する管状部材21が取り付けられている。管状部材21の突出端部は閉塞されているものとする。更に、管状部材21には、接続管30の一端側が接続されている。接続管30の他端側は、集合ヘッダ5に対応する容器壁を貫通させて外部に突出されている。外部に突出した接続管30の他端側は、胴側流体13の出口30aとされている。なお、容器壁における接続管30が貫通配置された部分は、シールされているものとする。
【0043】
更に、
図1(a)(c)に示すように、管群設置領域7よりも内側で、且つ閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面から管板4の開口20までの間の空間には、該空間を、内周側開口部16aと16bの双方に連通する領域と、内周側開口部16cのみに連通する領域とに仕切るための内周部仕切部材22が設けられている。
【0044】
内周部仕切部材22は、容器1の軸心位置からバッフル14aと14cの内周側端部に向けて容器1の半径方向に沿って延びる2つの平板を容器1の軸心位置で繋いだ形状とされ、その両側端部がバッフル14aと14cの内周側端部に取り付けられている。内周部仕切部材22の容器軸心方向一端寄りの端部は、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面に取り付けられている。
【0045】
更に、管板4の開口20の中には、管群設置領域7よりも内側で、且つ内周部仕切部材22によって内周側開口部16aと16bの双方に連通するように仕切られた領域の容器軸心方向他端側を閉塞させて、管状部材21との連通を阻止するための閉塞部材23(
図1(a)参照)が設けられている。
【0046】
これにより、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面と、閉塞部材23との間で、内周部仕切部材22によって内周側開口部16aと16bの双方に連通するように仕切られた領域が、前述した内周側接続流路17となる。
【0047】
一方、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面と、管板4の開口20との間で、内周部仕切部材22によって内周側開口部16cのみに連通するように仕切られた領域は、前述した胴側流体13の流通経路で下流側端部(末端)に位置する内周側開口部16cより流出する胴側流体13を集合させて、管状部材21に送るための出口側のヘッダ24となる。
【0048】
図1(a)(b)に示すように、胴6の外面における外周側開口部15bと15cの周縁部には、胴6の外面に沿って周方向に延びる樋状の流路形成部材25が、各外周側開口部15bと15cを一緒に覆うように配置された状態で取り付けられている。流路形成部材25の内部空間は、外周側開口部15bと15cとを接続する外周側接続流路18となる。
【0049】
前述した胴側流体13の流通経路で上流側端部(起端)に位置するのは、外周側開口部15aである。そこで、胴6の外面における外周側開口部15aの周縁部には、胴6の外面に沿って周方向に延びる樋状のヘッダ部材26が、外周側開口部15aを覆うように配置された状態で取り付けられている。このヘッダ部材26には、胴側流体13の入口27が設けられている。
【0050】
更に、
図1(a)(b)に示すように、各外周側開口部15a,15b,15cには、分散板28を備えることが望ましい。この分散板28は、胴側流体13が通過する際に或る程度の圧力損失を生じさせることで、各外周側開口部15a,15b,15cを通る胴側流体13の周方向への分散を促進させるためのものである。分散板28は、前記の胴側流体13の分散促進機能を備えていれば、多孔板、パンチングメタル、スリットを設けた板、メッシュを用いる構成等、任意の構成のものを採用してよい。又、分散板28は、胴6の周壁に孔やスリットを設けた構成としてもよい。なお、
図1(b)では、分散板28を、周方向に均一な構造を有するものとして示したが、外周側開口部15aの外側のヘッダ部材26内における胴側流体13の流通方向や、外周側開口部15bと15cを接続する外周側接続流路18における胴側流体13の流通方向等を考慮して、分散板28は、胴側流体13の通過時に生じる圧力損失が、均一に分布していないものであってもよいことは勿論である。又、各分散板28は、同一構成のものでもよいし、同一構成のものでなくてもよい。
【0051】
又、各内周側開口部16a,16b,16cにも、胴側流体13の流れを周方向に平均化させることを目的として、管群設置領域7の内周側端部位置に沿って円弧状に配置された分散板29を備えることが望ましい。なお、流路断面積の差を考慮して、内周側の分散板29は、外周側の分散板28に比して、胴側流体13の通過時に発生する圧力損失が小さいものを用いるようにすればよい。
【0052】
以上の構成としてある第1実施形態の多管式熱交換器を使用する場合は、管側流体入口10に、図示しない管側流体供給部を接続し、管側流体出口11に、図示しない管側流体12の需要先又は回収部を接続する。
【0053】
一方、ヘッダ部材26の入口27には、図示しない胴側流体供給部を接続し、接続管30の出口30aには、胴側流体13の回収部あるいは需要先を接続する。なお、胴側流体13が熱媒である場合は、出口30aより回収される胴側流体13を、胴側流体供給部に戻し、温度調整しながら循環させて使用すればよい。
【0054】
この状態で、管側流体供給部より供給される管側流体12は、前述したように管側流体入口10、分配ヘッダ3を経て各伝熱管9に連続的に供給される。
【0055】
一方、胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口27よりヘッダ部材26内へ供給されると、ヘッダ部材26内で周方向に分散された後、外周側開口部15aより区画7aに流入する。その後、前述した胴側流体13の流通経路にしたがって、区画7aを通過した胴側流体13は、内周側接続流路17を経て区画7bに供給され、区画7bを通過した胴側流体13は、外周側接続流路18を経て区画7cに供給される。
【0056】
これにより、各区画7a,7b,7c内では、それぞれの区画7a,7b,7cに配置された各伝熱管9内を流通する管側流体12と、各伝熱管9の外側を流通する胴側流体13との間で、伝熱管9の管壁を介した熱交換が行われる。
【0057】
前記熱交換の処理が行われた後の管側流体12は、各伝熱管9を通過後に、集合ヘッダ5で集合させられてから、管側流体出口11より取り出される。
【0058】
一方、前記熱交換の処理が行われた後の胴側流体13は、内周側開口部16cを通して、その内周側に設けられているヘッダ24へ導かれ、その後、管板4の開口20から、管状部材21と接続管30を通して出口30aまで導かれて取り出される。
【0059】
しかる後、本実施形態の多管式熱交換器より取り出された管側流体12と、胴側流体13は、それぞれの需要先や回収部へ送って、予め設定されている後処理を行うようにすればよい。
【0060】
ところで、管群設置領域7の各区画7aと7bと7cは、胴側流体13の流通経路上で上下流方向に並んでいるため、区画7aでの熱交換処理に供された後の胴側流体13が区画7bに供給され、更に、区画7bでの熱交換処理に供された後の胴側流体13が区画7cに供給されるようになる。このため、区画7aと7bと7cでは、供給される胴側流体13の温度に相違が生じ、それに起因して、伝熱管9の管外側の熱伝達率に差が生じることが考えられる。
【0061】
しかし、一般に、熱交換器の熱交換性能は、管側流体12の供給時と取出時の温度差や、胴側流体13の供給時と取出時の温度差に基づいて決定されるものであるため、個々の伝熱管9で管外側の熱伝達率に差が生じていても、多管式熱交換器としての熱交換性能に何ら問題が生じることはない。
【0062】
このように、本実施形態の多管式熱交換器によれば、管側流体12と胴側流体13との熱交換を実施させることができる。
【0063】
又、容器1の胴6内では、管群設置領域7をバッフル14a,14b,14cにより3つの区画7a,7b,7cに分けて、胴側流体13の流路断面積を制限するようにしてあるため、各伝熱管9の外側を流通する胴側流体13の流速が高められる。よって、本実施形態の多管式熱交換器は、熱交換性能を高いものとすることができる。
【0064】
更に、本実施形態の多管式熱交換器では、各区画7a,7b,7c内での胴側流体13の流れを、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとし、特に、各区画7a,7b,7cの容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13を、主として容器軸心方向に沿う流れとさせることができる。
【0065】
このため、本実施形態の多管式熱交換器では、従来の多管式熱交換器のように、管群直交流を繰り返しているものではないので、胴側流体13の圧力損失の低減化を図ることができる。
【0066】
これにより、本実施形態の多管式熱交換器は、胴側流体供給部より胴側流体13を供給するために必要とされるポンプ動力の低減化を図る場合に有利な構成とすることができる。
【0067】
従来の多管式熱交換器の場合は、特許文献1に記載されているように、バッフルに多数の伝熱管挿通孔を設けて、各伝熱管挿通孔に伝熱管を挿通(貫通)させるようにした構成とされている。
【0068】
これに対し、本実施形態の多管式熱交換器では、各バッフル14a,14b,14cは、各伝熱管9の管軸方向に平行に配置してあるため、伝熱管挿通孔を設ける必要がない。よって、バッフル14a,14b,14cに対する孔開け作業自体が不要である。
【0069】
更に、管群設置領域7の各区画7a,7b,7cに胴側流体13を流通させるときに、バッフル14a,14b,14cに伝熱管挿通孔が形成されていないことから、胴側流体13の伝熱管挿通孔からのリークという問題は生じない。このため、本実施形態の多管式熱交換器では、管群設置領域7の各区画7a,7b,7cにおける胴側流体13の流れが単純なものとなる。したがって、本実施形態の多管式熱交換器は、胴側流体13の温度コントロールを行いやすいものとすることができる。
【0070】
[第1実施形態の応用例]
図3は第1実施形態の応用例を示すものであり、
図3(a)(b)(c)は
図1(a)(b)(c)と対応する図である。
【0071】
なお、
図3(a)(b)(c)において、
図1(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図3(a)(b)(c)に示す多管式熱交換器は、胴側流体13の流通方向を第1実施形態の多管式熱交換器とは逆にしたものである。
【0073】
本応用例では、接続管30の容器外側の端部を、胴側流体13の入口30bとし、ヘッダ部材26に、胴側流体13の出口27aを設けるようにすればよい。このように用いる場合は、各区画7a,7b,7cにおける胴側流体13の流れは、
図2に示したものとは逆方向となる。したがって、胴側流体13は、容器軸心方向両端寄りの領域で、管群直交流の流れ成分を含むようになるとしても、各区画7a,7b,7c内における容器軸心方向の中間部の領域では、主として容器軸心方向に沿った流れとなる。
【0074】
よって、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
[第2実施形態]
図4は、多管式熱交換器の第2実施形態を示すものであり、
図4(a)は容器軸心位置での概略断面図、
図4(b)は
図4(a)のC−C方向矢視断面図、
図4(c)は
図4(a)のD−D方向矢視断面図である。
【0076】
なお、
図4(a)(b)(c)において、
図1(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図4(a)(b)(c)に示すように、前記第1実施形態と同様の構成において、管群設置領域7における周方向120度間隔の3個所に、バッフル14a,14b,14cを設けた構成に代えて、管群設置領域7の周方向180度間隔の2個所に、前記バッフル14a,14b,14cと同様のバッフル141a,141bを設けた構成としてある。
【0078】
これにより、本実施形態では、管群設置領域7に、各バッフル141aと141bによって仕切られた2つの区画71aと71bが周方向に配列されて形成されている。
【0079】
なお、各バッフル141a,141bは、第1実施形態における各バッフル14a,14b,14cの配置と同様に、三角配列とされた管群8の各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる6個所のうちの2個所に配置することが望ましい。このような各バッフル141a,141bの配置によれば、管群設置領域7で、胴側流体13が局所的に容器1の半径方向に沿う方向へ通り抜ける現象を抑制することができる。
【0080】
次に、前記のように管群設置領域7に形成された各区画71a,71bを通る胴側流体13の流通経路について説明する。
【0081】
図5は、本実施形態における胴側流体13の流通経路の概要を説明するための図で、管群設置領域7に形成された2つの区画71a,71bを、周方向に分離し、展開させて示してある。なお、
図5では、各区画71a,71bを、内周部が手前側に配置された状態として斜視図で示してある。
図5において、
図4(a)(b)(c)に示したものと同一のものには、同一符号が付してある。又、
図5では、各区画71a,71bを図示する便宜上、各バッフル141a,141b、容器1の胴6以外の部分、管板2、及び、伝熱管9の記載は省略してある。
【0082】
各区画71a,71bは、
図5にハッチングを付して示すように、外周部における容器軸心方向一端寄りの端部(
図5では上端寄りの端部)と、内周部における容器軸心方向他端寄りの端部(
図5では下端寄りの端部)に、外周側開口部151a,151bと、内周側開口部161a,161bをそれぞれ備えている。
【0083】
区画71aと71bは、互いの内周側開口部161aと161b同士が、内周側接続流路17を介して接続されている。
【0084】
以上により、管群設置領域7には、外周側開口部151aから、区画71aの内部空間、内周側開口部161a、内周側接続流路17、内周側開口部161b、区画71bの内部空間を順に経て、外周側開口部151bまで一連に繋がる胴側流体13の流通経路が形成される。
【0085】
これにより、区画71aでは、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部151aより流入する胴側流体13が、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部161aに向けて流れるようになる。
【0086】
又、区画71bでは、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部161bより流入する胴側流体13が、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部151bに向けて流れるようになる。
【0087】
したがって、本実施形態においても、
図5に各区画71a,71bにおける胴側流体13の流れ方向の概要を示すように、各区画71a,71b内での胴側流体13の流れは、外周側開口部151a,151bと内周側開口部161a,161bが設けられている容器軸心方向両端寄りの領域で、管群直交流の流れ成分を含むようになるが、各区画71a,71b内における容器軸心方向の中間部の領域では、主として容器軸心方向に沿った流れとなる。
【0088】
本実施形態では、胴側流体13の流通経路は、偶数である2つの区画71aと71bを接続したものとなっている。このため、前記したように、外周側開口部151aを上流側端部(起端)とする胴側流体13の流通経路の下流側端部(末端)は、外周側開口部151bとなる。
【0089】
そこで、
図4(a)(b)に示すように、胴6の外面における外周側開口部151bの周縁部には、胴6の外面に沿って周方向に延びる樋状のヘッダ部材31が、外周側開口部151bを覆うように配置された状態で取り付けられている。このヘッダ部材31には、胴側流体13の出口32が設けられている。
【0090】
更に、本実施形態では、管群設置領域7の内側に配置されるのは、内周側開口部161aと161bとを接続するための内周側接続流路17のみである。
【0091】
よって、
図4(a)(c)に示すように、本実施形態では、管板4は、中央部に開口のないものとしてあり、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面と管板4との隙間全体が、内周側接続流路17とされる。
【0092】
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器を使用する場合は、管側流体入口10と管側流体出口11には、第1実施形態と同様に、図示しない管側流体供給部と管側流体12の需要先又は回収部をそれぞれ接続する。本実施形態において、管側流体12の流通は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0093】
一方、ヘッダ部材26の入口27には、図示しない胴側流体供給部を接続し、ヘッダ部材31の出口32には、胴側流体13の回収部あるいは需要先を接続する。なお、胴側流体13が熱媒である場合は、出口32より回収される胴側流体13を、胴側流体供給部に戻し、温度調整しながら循環させて使用すればよい。
【0094】
胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口27よりヘッダ部材26内へ供給されると、ヘッダ部材26内で周方向に分散された後、外周側開口部151aより区画71aに流入する。その後、前述した胴側流体13の流通経路にしたがって、区画71aを通過した胴側流体13は、内周側接続流路17を経て区画71bに供給される。
【0095】
これにより、各区画71a,71b内では、それぞれの区画71a,71bに配置された各伝熱管9内を流通する管側流体12と、各伝熱管9の外側を流通する胴側流体13との間で、伝熱管9の管壁を介した熱交換が行われる。
【0096】
前記管側流体12との熱交換の処理が行われた後の胴側流体13は、外周側開口部151bを通して、その外周側に設けられているヘッダ部材31へ導かれた後、出口32から取り出される。この胴側流体13は、第1実施形態と同様に処理するようにすればよい。
【0097】
したがって、本実施形態の多管式熱交換器においても、管側流体12と胴側流体13との熱交換を実施させることができる。
【0098】
又、本実施形態の多管式熱交換器では、各区画71a,71b内での胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなる。特に、各区画71a,71bの容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13が、主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0099】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第1実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0100】
[第3実施形態]
図6は、多管式熱交換器の第3実施形態を示すものであり、
図6(a)は容器軸心位置での概略断面図、
図6(b)は
図6(a)のE−E方向矢視断面図、
図6(c)は
図6(a)のF−F方向矢視断面図である。
【0101】
なお、
図6(a)(b)(c)において、
図4(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0102】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図6(a)(b)(c)に示すように、前記第2実施形態と同様に、管群設置領域7に、バッフル141a,141bによって仕切られた2つの区画71a,71bを備えた構成において、胴側流体13の流通経路を変更したものである。
【0103】
図7は、本実施形態における胴側流体13の流通経路の概要を説明するための図で、
図5と同様に、管群設置領域7に形成された2つの区画71a,71bを、周方向に分離し、展開させて示してある。
【0104】
本実施形態における胴側流体13の流通経路は、区画71aと71bを、互いの外周側開口部151aと151b同士が、外周側接続流路18を介して接続されている。この外周側接続流路18の具体的な構成は後述する。
【0105】
このため、管群設置領域7には、内周側開口部161aを起端として、内周側開口部161aから、区画71aの内部空間、外周側開口部151a、外周側接続流路18、外周側開口部151b、区画71bの内部空間を順に経て、内周側開口部161bまで一連に繋がる胴側流体13の流通経路が形成される。
【0106】
これにより、区画71aでは、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部161aより流入する胴側流体13が、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部151aに向けて流れるようになる。
【0107】
又、区画71bでは、容器軸心方向一端寄りの端部に設けられた外周側開口部151bより流入する胴側流体13が、容器軸心方向他端寄りの端部に設けられた内周側開口部161bに向けて流れるようになる。
【0108】
したがって、本実施形態においても、
図7に各区画71a,71bにおける胴側流体13の流れ方向の概要を示すように、各区画71a,71b内での胴側流体13の流れは、外周側開口部151a,151bと内周側開口部161a,161bが設けられている容器軸心方向両端寄りの領域で、管群直交流の流れ成分を含むようになるが、各区画71a,71b内における容器軸心方向の中間部の領域では、主として容器軸心方向に沿った流れとなる。
【0109】
外周側接続流路18の具体的な構成は、
図6(a)(b)に示すように、胴6の外面に沿って周方向に延びる樋状の流路形成部材25が、胴6の外面における外周側開口部151aと151bの周縁部を一緒に覆うように配置された状態で取り付けられている。これにより、流路形成部材25の内部空間が、外周側開口部151aと151bとを接続する外周側接続流路18となる。
【0110】
本実施形態では、胴側流体13の流通経路は、偶数である2つの区画71aと71bを接続したものとなっており、前記したように、内周側開口部161aを上流側端部(起端)とする胴側流体13の流通経路の下流側端部(末端)は、内周側開口部161bとなる。
【0111】
そこで、
図6(a)(c)に示すように、管板4には、管群設置領域7よりも内側となる中央部に、開口20が設けられている。開口20には、容器1の軸心方向に沿って集合ヘッダ5の内側に突出する管状部材21が取り付けられている。
【0112】
管群設置領域7よりも内側で、且つ閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面から管板4の開口20までの間の空間には、容器1の軸心位置を通ってバッフル141aと141bの内周側端部同士を接続する内周部仕切部材22が設けられている。内周部仕切部材22の容器軸心方向一端寄りの端部は、閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面に取り付けられている。
【0113】
これにより、管群設置領域7よりも内側で、閉止部材19よりも容器軸心方向他端寄りとなる空間は、内周部仕切部材22により、内周側開口部161aにのみ連通する領域と、内周側開口部161bにのみ連通する領域とに仕切られる。このうち、内周側開口部161aに連通する領域は、前述した胴側流体13の流通経路で上流側端部に位置する内周側開口部161aへ胴側流体13を供給するための入口側のヘッダ33となる。一方、内周側開口部161bに連通する領域は、前述した胴側流体13の流通経路で最も下流側に位置する内周側開口部161bより流出する胴側流体13を集合させて、管状部材21に送るための出口側のヘッダ24となる。
【0114】
更に、管状部材21の内側は、内周部仕切部材22より容器軸心方向他端側へ一連に延びる仕切り34によって全長に亘り2つの空間に分割されている。更に、管状部材21には、前記2つの空間のうちの内周側開口部161aに連通する空間に対応する個所に、接続管35の一端部が接続されている。接続管35の他端部側は、集合ヘッダ5に対応する容器壁を貫通させて外部に突出させてある。本実施形態では、この接続管35の容器1外側に突出した端部が、胴側流体13の入口35aとなる。
【0115】
又、管状部材21において、前記2つの空間のうちの内周側開口部161bに連通する空間に対応する個所には、第1実施形態における接続管30と同様に、接続管30の一端部が接続されている。接続管30の他端部側は、集合ヘッダ5に対応する容器壁を貫通させて外部に突出させてある。この接続管30の容器1外側に突出した端部が、胴側流体13の出口30aとなる。
【0116】
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器を使用する場合は、管側流体入口10と管側流体出口11には、第1実施形態と同様に、図示しない管側流体供給部と管側流体12の需要先又は回収部をそれぞれ接続する。本実施形態において、管側流体12の流通は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0117】
一方、接続管35の入口35aの上流側には、図示しない胴側流体供給部を接続し、接続管30の出口30aには、胴側流体13の回収部あるいは需要先を接続する。なお、胴側流体13が熱媒である場合は、出口30aより回収される胴側流体13を、胴側流体供給部に戻し、温度調整しながら循環させて使用すればよい。
【0118】
胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口35aより接続管35と管状部材21と管板4の開口20を通して、ヘッダ33へ供給される。このヘッダ33に供給された胴側流体13は、内周側開口部161aより区画71aに流入する。その後、前述した胴側流体13の流通経路にしたがって、区画71aを通過した胴側流体13は、外周側接続流路18を経て区画71bに供給される。
【0119】
これにより、各区画71a,71b内では、それぞれの区画71a,71bに配置された各伝熱管9内を流通する管側流体12と、各伝熱管9の外側を流通する胴側流体13との間で、伝熱管9の管壁を介した熱交換が行われる。
【0120】
前記管側流体12との熱交換の処理が行われた後の胴側流体13は、内周側開口部161bを通して、その内周側に設けられているヘッダ24へ導かれ、その後、管板4の開口20から、管状部材21と接続管30を通して出口30aまで導かれて取り出される。この胴側流体13は、第2実施形態と同様に処理するようにすればよい。
【0121】
したがって、本実施形態の多管式熱交換器においても、管側流体12と胴側流体13との熱交換を実施させることができる。
【0122】
又、本実施形態の多管式熱交換器でも、前記第2実施形態と同様に、各区画71a,71b内での胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなる。特に、各区画71a,71bの容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13が、主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0123】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第2実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0124】
なお、前記第1実施形態では、管群設置領域7に周方向に3分割された区画7a,7b,7cを形成した例を示し、又、前記第2実施形態及び第3実施形態では、管群設置領域7に周方向に2分割された区画71a,71bを形成した例を示した。これらの区画数である3と2は、いずれも1を除く正の約数は、その数以外にはない。したがって、複数の区画を通過するように設定する胴側流体13の流通経路は、すべての区画を通過する一系統のみとなる。
【0125】
これに対し、たとえば、区画数が6、4、8のように、1とその数以外の約数を有する数である場合は、胴側流体13の流通経路は複数設定し得る。
【0126】
たとえば、6区画の場合は、2区画ずつを接続した3系統の流通経路、3区画ずつを接続した2系統の流通経路、及び、6区画を接続した1系統の流通経路が設定可能である。
【0127】
又、4区画の場合は、2区画ずつを接続した2系統の流通経路、及び、4区画を接続した1系統の流通経路が設定可能である。
【0128】
更に、8区画の場合は、2区画ずつを接続した4系統の流通経路、4区画ずつを接続した2系統の流通経路、及び、8区画を接続した1系統の流通経路が設定可能である。
以下にこれらの例について示す。
【0129】
[第4実施形態]
図8は多管式熱交換器の第4実施形態を示すものであり、
図8(a)(b)はそれぞれ
図1(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0130】
なお、
図8(a)(b)において、
図1(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。又、本実施形態において、管側流体12の流通経路は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0131】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図8(a)(b)に示すように、前記第1実施形態と同様の構成において、管群設置領域7における周方向120度間隔の3個所に、バッフル14a,14b,14cを設けた構成に代えて、管群設置領域7の周方向60度間隔の6個所に、前記バッフル14a,14b,14cと同様のバッフル142a,142b,142c,142d,142e,142fを設けた構成としてある。
【0132】
これにより、本実施形態では、管群設置領域7に、各バッフル142a,142b,142c,142d,142e,142fによって仕切られた6つの区画72a,72b,72c,72d,72e,72fが周方向に配列されて形成されている。
【0133】
なお、各バッフル142a,142b,142c,142d,142e,142fは、第1実施形態における各バッフル14a,14b,14cの配置と同様に、三角配列とされた管群8の各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる6個所に配置することが望ましい。このような各バッフル142a,142b,142c,142d,142e,142fの配置によれば、管群設置領域7で、胴側流体13が局所的に容器1の半径方向に沿う方向へ通り抜ける現象を抑制することができる。
【0134】
各区画72a,72b,72c,72d,72e,72fには、外周部の容器軸心方向一端寄りの端部に、外周側開口部152a,152b,152c,152d,152e,152fが設けられている。又、各区画72a,72b,72c,72d,72e,72fの内周部の容器軸心方向他端寄りの端部には、内周側開口部162a,162b,162c,162d,162e,162fが設けられている。
【0135】
次に、前記のように管群設置領域7に形成された各区画72a,72b,72c,72d,72e,72fを通る胴側流体13の流通経路について説明する。
【0136】
本実施形態では、胴側流体13の流通経路は、区画72a,72b,72cと、区画72f,72e,72dの3区画ずつを接続した2系統の流通経路として設定される。
【0137】
そのために、内周側開口部162aと162bは、内周側接続流路17により接続される。又、外周側開口部152bと152cは、外周側接続流路18により接続される。これにより、区画72aと72bと72cを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部152aから、区画72aの内部空間とその内周側開口部162a、内周側接続流路17、内周側開口部162bと区画72bの内部空間とその外周側開口部152b、外周側接続流路18、外周側開口部152cと区画72cの内部空間を順に経て、内周側開口部162cまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0138】
一方、内周側開口部162fと162eは、別の内周側接続流路17により接続される。又、外周側開口部152eと152dは、別の外周側接続流路18により接続される。これにより、区画72fと72eと72dを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部152fから、区画72fの内部空間とその内周側開口部162f、内周側接続流路17、内周側開口部162eと区画72eの内部空間とその外周側開口部152e、外周側接続流路18、外周側開口部152dと区画72dの内部空間を順に経て、内周側開口部162dまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0139】
なお、各内周側接続流路17は、
図8(b)に示すように、管群設置領域7よりも内側で、且つ閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面から管板4の開口20までの間の空間を、内周部仕切部材22によって仕切ることで形成されている(
図1(a)参照)。このため、内周部仕切部材22は、容器1の軸心位置からバッフル142a,142c,142eの内周側端部に向けて容器1の半径方向に沿って延びる3つの平板を繋いだ形状としてある。更に、各内周側接続流路17の容器軸心方向他端側は、
図1(a)に示した閉塞部材23と同様の閉塞部材により閉止されているものとする。
【0140】
図8(a)に示すように、外周側開口部152bと152cを接続する外周側接続流路18は、胴6の外面に、
図1(a)(b)に示した流路形成部材25と同様の流路形成部材25を、外周側開口部152bと152cを覆うように取り付けることにより、この流路形成部材25の内部空間として形成されている。
【0141】
同様に、外周側開口部152eと152dを接続する外周側接続流路18は、胴6の外面に、前記と同様の流路形成部材25を、外周側開口部152eと152dを覆うように取り付けることにより、この流路形成部材25の内部空間として形成されている。
【0142】
前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、上流側端部(起端)に位置するのは、外周側開口部152aと、外周側開口部152fである。そこで、胴6の外面における外周側開口部152aと152fの外側には、
図1(a)(b)に示したと同様の入口27を備えたヘッダ部材26が、各外周側開口部152aと152fを一緒に覆うように取り付けられている。
【0143】
一方、前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、下流側端部(末端)に位置するのは、内周側開口部162cと、内周側開口部162dである。そこで、これらの内周側開口部162cと162dの内側は、
図1に示したと同様の管板4に設けた開口20に連通する共通のヘッダ24とされている。管板4の開口20には、
図1に示したと同様の管状部材21と、容器1外側の端部を出口30aとした接続管30が接続されているものとする。
【0144】
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器によれば、入口27に接続された図示しない胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口27よりヘッダ部材26内へ供給されると、ヘッダ部材26内で周方向に分散された後、外周側開口部152aと152fを通して区画72aと72fに流入する。
【0145】
区画72aに流入した胴側流体13は、前述した区画72a,72b,72cを順に経る系統の流通経路を通った後、内周側開口部162cからヘッダ24に送られる。
【0146】
同様に、区画72fに流入した胴側流体13は、前述した区画72f,72e,72dを順に経る系統の流通経路を通った後、内周側開口部162dからヘッダ24に送られる。
【0147】
このヘッダ24まで達した胴側流体13は、
図1(a)に示した第1実施形態の場合と同様に、管板4の開口と管状部材21と接続管30を通して出口30aまで導かれて取り出される。
【0148】
したがって、本実施形態の多管式熱交換器によっても、胴側流体13の流通経路を形成している各区画72a,72b,72cと72f,72e,72d内では、胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなる。特に、容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13が主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0149】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第1実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0150】
なお、本実施形態では、外周側開口部152aと152fの外側に共通のヘッダ部材26を設け、又、内周側開口部162cと162dの内側に共通のヘッダ24を設けた構成を示したが、胴側流体13の2つの系統の流通経路に、個別の入口側のヘッダ部材26と、出口側のヘッダ24を備える構成としてもよいことは勿論である。この場合、区画72dと72eと72fを接続した流通経路は、外周側開口部152dにヘッダ部材26を取り付け、内周側開口部162fの内側を管板4の開口20に連通する出口側のヘッダ24としてもよい。
【0151】
本実施形態のように管群設置領域7に周方向に6つの区画72a,72b,72c,72d,72e,72fを形成した構成では、胴側流体13の流通経路は、区画72a,72b,72cと区画72d,72e,72fの3区画ずつを接続した2系統の流通経路のほかに、前述したように6区画を接続した1系統の流通経路と、2区画ずつを接続した3系統の流通経路を設定することができる。
【0152】
[第4実施形態の第1変形例]
図9は、第4実施形態の第1変形例として、6つの区画72a,72b,72c,72d,72e,72fを順に接続した1系統の流通経路を設けた形式を示すものである。
【0153】
図9(a)(b)は、それぞれ
図8(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0154】
なお、
図9(a)(b)において、
図8(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0155】
この第4実施形態の第1変形例では、内周側開口部162aと162b、内周側開口部162cと162d、内周側開口部162eと162fが、それぞれ個別の内周側接続流路17を介して接続されている。
【0156】
又、外周側開口部152bと152c、外周側開口部152dと152eが、胴6の外面の対応する個所に取り付けられた個別の流路形成部材25によって形成した外周側接続流路18によりそれぞれ接続されている。
【0157】
この変形例では、接続された区画数が偶数であるため、外周側開口部152aを上流側端部(起端)とする胴側流体13の流通経路の下流側端部(末端)は、外周側開口部152fとなる。
【0158】
このため、胴6の外面には、外周側開口部152aの外側となる位置に、入口27を備えたヘッダ部材26が取り付けられている。一方、胴6の外面における外周側開口部152fの外側となる位置には、
図4(a)(b)に示したと同様の出口32を備えたヘッダ部材31が取り付けられている。又、管板4は中央に開口のないものとしてある。
【0159】
[第4実施形態の第2変形例]
図10は、第4実施形態の第2変形例として、6つの区画72a,72b,72c,72d,72e,72fのうち、2つずつの区画72aと72b、区画72cと72d、区画72eと72fを接続した3系統の流通経路を設けた形式を示すものである。
【0160】
図10(a)(b)は、それぞれ
図8(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0161】
なお、
図10(a)(b)において、
図8(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0162】
この第4実施形態の第2変形例では、内周側開口部162aと162b、内周側開口部162cと162d、内周側開口部162eと162fが、それぞれ個別の内周側接続流路17を介して接続されている。
【0163】
胴6の外面には、外周側開口部152aと152cと152eの外側となる位置には、
図4(b)に示したと同様の入口27を備えたヘッダ部材26がそれぞれ取り付けられている。
【0164】
更に、胴6の外面における外周側開口部152bと152dと152fの外側となる位置には、
図4(b)に示したと同様の出口32を備えたヘッダ部材31がそれぞれ取り付けられている。
【0165】
この変形例も、接続された区画数が偶数であるため、管板4は中央に開口のないものとしてあるものとする。
【0166】
以上の第4実施形態の第1変形例及び第2変形例によっても、胴側流体13の流通経路の1つの系統に含まれる区画の数は異なるが、第4実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
【0167】
[第5実施形態]
図11は多管式熱交換器の第5実施形態を示すものであり、
図11(a)(b)はそれぞれ
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0168】
なお、
図11(a)(b)において、
図4(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。又、本実施形態において、管側流体12の流通経路は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0169】
本実施形態の多管式熱交換器は、管群8における伝熱管9の配列が、たとえば、
図11(a)(b)に示すような正方形を単位とする四角配列となっている場合に適用する例を示すものである。
【0170】
伝熱管9が四角配列となっている場合、管群8には、各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる個所が、周方向90度間隔の4個所に形成される。
【0171】
そこで、本実施形態では、
図11(a)(b)に示すように、
図4(a)(b)(c)に示した第2実施形態と同様の構成において、管群設置領域7における周方向90度間隔の4個所に、バッフル143a,143b,143c,143dを設けた構成としてある。
【0172】
これにより、本実施形態では、管群設置領域7に、各バッフル143a,143b,143c,143dによって仕切られた4つの区画73a,73b,73c,73dが周方向に配列されて形成されている。
【0173】
なお、各バッフル143a,143b,143c,143dは、四角配列された各伝熱管9同士の隙間が容器1の半径方向に連続して延びる4個所に配置することが望ましい。このような各バッフル143a,143b,143c,143dの配置によれば、管群設置領域7で、胴側流体13が局所的に容器1の半径方向に沿う方向へ通り抜ける現象を抑制することができる。
【0174】
各区画73a,73b,73c,73dには、外周部の容器軸心方向一端寄りの端部に、外周側開口部153a,153b,153c,153dが設けられている。又、各区画73a,73b,73c,73dの内周部の容器軸心方向他端寄りの端部には、内周側開口部163a,163b,163c,163dが設けられている。
【0175】
次に、前記のように管群設置領域7に形成された各区画73a,73b,73c,73dを通る胴側流体13の流通経路について説明する。
【0176】
本実施形態では、胴側流体13の流通経路は、区画73a,73bと、区画73c,73dの2区画ずつを接続した2系統の流通経路として設定される。
【0177】
そのため、内周側開口部163aと163bは、内周側接続流路17により接続される。これにより、区画73aと73bを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部153aから、区画73aの内部空間とその内周側開口部163a、内周側接続流路17、内周側開口部163bと区画73bの内部空間を順に経て、外周側開口部153bまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0178】
一方、内周側開口部163dと163cは、別の内周側接続流路17により接続される。これにより、区画73dと73cを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部153dから、区画73dの内部空間とその内周側開口部163d、内周側接続流路17、内周側開口部163cと区画73cの内部空間を順に経て、外周側開口部153cまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0179】
なお、各内周側接続流路17は、
図11(b)に示すように、管群設置領域7よりも内側で、且つ閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面から管板4までの間の空間を、内周部仕切部材22によって仕切ることで形成されている(
図1(a)参照)。このため、内周部仕切部材22は、容器1の軸心位置を通ってバッフル143aと143cの内周側端部同士を接続した構成としてある。なお、管板4は、開口がないものとしてある。
【0180】
前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、上流側端部(起端)に位置するのは、外周側開口部153aと、外周側開口部153dである。そこで、胴6の外面における外周側開口部153aと153dの外側には、
図4(a)(b)に示したと同様の入口27を備えたヘッダ部材26が、各外周側開口部153aと153dを一緒に覆うように取り付けられている。
【0181】
一方、前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、下流側端部(末端)に位置するのは、外周側開口部153bと外周側開口部153cである。そこで、胴6の外面における外周側開口部153bと153cの外側には、
図4(a)(b)に示したと同様の出口32を備えたヘッダ部材31が、各外周側開口部153bと153cを一緒に覆うように取り付けられている。
【0182】
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器によれば、入口27に接続された図示しない胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口27よりヘッダ部材26内へ供給されると、ヘッダ部材26内で周方向に分散された後、外周側開口部153aと153dを通して区画73aと73dに流入する。
【0183】
区画73aに流入した胴側流体13は、前述した区画73a,73bを順に経る系統の流通経路を通った後、外周側開口部153bからヘッダ部材31に送られる。
【0184】
同様に、区画73dに流入した胴側流体13は、前述した区画73d,73cを順に経る系統の流通経路を通った後、外周側開口部153cからヘッダ部材31に送られる。
【0185】
このヘッダ部材31まで達した胴側流体13は、その出口32から取り出される。
【0186】
したがって、本実施形態の多管式熱交換器によっても、胴側流体13の流通経路を形成している各区画73a,73bと73d,73c内では、胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなる。特に、容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13が主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0187】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第1実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0188】
なお、本実施形態では、外周側開口部153aと153dの外側に共通のヘッダ部材26を設け、又、外周側開口部153bと153cの外側に共通のヘッダ部材31を設けた構成を示したが、胴側流体13の2つの系統の流通経路に、個別の入口側のヘッダ部材26と、出口側のヘッダ部材31を備える構成としてもよいことは勿論である。
【0189】
本実施形態のように管群設置領域7に周方向に4つの区画73a,73b,73c,73dを形成した構成では、胴側流体13の流通経路は、区画73a,73bと区画73c,73dの2区画ずつを接続した2系統の流通経路のほかに、前述したように4区画を接続した1系統の流通経路を設定することができる。
【0190】
[第5実施形態の変形例]
図12は、第5実施形態の変形例として、4つの区画73a,73b,73c,73dを順に接続した1系統の流通経路を設けた形式を示すものである。
【0191】
図12(a)(b)は、それぞれ
図11(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0192】
なお、
図12(a)(b)において、
図11(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0193】
この第5実施形態の変形例では、内周側開口部163aと163b、及び、内周側開口部163cと163dは、第5実施形態と同様に、個別の内周側接続流路17を介して接続されている。
【0194】
更に、外周側開口部153bと153cが、胴6の外面の対応する個所に取り付けられた流路形成部材25によって形成した外周側接続流路18により接続されている。
【0195】
この変形例では、接続された区画数が偶数であるため、外周側開口部153aを上流側端部(起端)とする胴側流体13の流通経路の下流側端部(末端)は、外周側開口部153dとなる。
【0196】
このため、胴6の外面には、外周側開口部153aの外側となる位置に、入口27を備えたヘッダ部材26が取り付けられている。一方、胴6の外面における外周側開口部153dの外側となる位置には、出口32を備えたヘッダ部材31が取り付けられている。
【0197】
以上の第5実施形態の変形例によっても、胴側流体13の流通経路の1つの系統に含まれる区画の数は異なるが、第5実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
【0198】
[第6実施形態]
図13は多管式熱交換器の第6実施形態を示すものであり、
図13(a)(b)はそれぞれ
図11(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0199】
なお、
図13(a)(b)において、
図11(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。又、本実施形態において、管側流体12の流通経路は、第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0200】
本実施形態の多管式熱交換器は、管群8における伝熱管9の配列が、たとえば、
図11(a)(b)に示すような正方形を単位とする四角配列となっている場合に適用する別の例を示すものである。
【0201】
本実施形態では、
図13(a)(b)に示すように、
図11(a)(b)に示した第5実施形態と同様の構成において、管群設置領域7の4個所にバッフル143a,143b,143c,143dを設けた構成に代えて、管群設置領域における周方向45度間隔の8個所に、バッフル144a,144b,144c,144d,144e,144f,144g,144hを設けた構成としてある。
【0202】
これにより、本実施形態では、管群設置領域7に、各バッフル144a,144b,144c,144d,144e,144f,144g,144hによって仕切られた8つの区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hが周方向に配列されて形成されている。
【0203】
なお、管群設置領域7における胴側流体13の局所的な通り抜けを抑制するという観点から考えると、バッフル144a,144b,144c,144d,144e,144f,144g,144hの半数は、
図11に示したと同様に、正方配列された各伝熱管9同士の隙間が半径方向に連続して延びるようになる周方向90度間隔の4個所に合わせて配置するようにし、残りの半数は、管群8に配列されている各伝熱管9のうちの一部を間引くことで管群設置領域7に半径方向に延びるよう形成させた空間に設けるようにすることが望ましい。
【0204】
各区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hには、外周部の容器軸心方向一端寄りの端部に、外周側開口部154a,154b,154c,154d,154e,154f,154g,154hが設けられている。又、各区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hの内周部の容器軸心方向他端寄りの端部には、内周側開口部164a,164b,164c,164d,164e,164f,164h,164gが設けられている。
【0205】
次に、前記のように管群設置領域7に形成された各区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hを通る胴側流体13の流通経路について説明する。
【0206】
本実施形態では、胴側流体13の流通経路は、区画74a,74b,74c,74dと、区画74h,74g,74f,74eの4区画ずつを接続した2系統の流通経路として設定される。
【0207】
そのため、内周側開口部164aと164b、内周側開口部164cと164dは、それぞれ別の内周側接続流路17により接続される。
【0208】
更に、外周側開口部154bと154cが、外周側接続流路18により接続される。
【0209】
これにより、区画74a,74b,74c,74dを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部154aから、区画74aの内部空間とその内周側開口部164a、第1の内周側接続流路17、内周側開口部164bと区画74bの内部空間と外周側開口部154b、外周側接続流路18、外周側開口部154cと区画74cの内部空間と内周側開口部164c、第2の内周側接続流路17、内周側開口部164dと区画74dの内部空間を順に経て、外周側開口部154dまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0210】
一方、内周側開口部164hと164g、内周側開口部164fと164eは、更に別々の内周側接続流路17により接続される。
【0211】
更に、外周側開口部154gと154fが、別の外周側接続流路18により接続される。
【0212】
これにより、区画74h,74g,74f,74eを接続した胴側流体13の流通経路は、外周側開口部154hから、区画74hの内部空間とその内周側開口部164h、別の第1の内周側接続流路17、内周側開口部164gと区画74gの内部空間と外周側開口部154g、別の外周側接続流路18、外周側開口部154fと区画74fの内部空間と内周側開口部164f、別の第2の内周側接続流路17、内周側開口部164eと区画74eの内部空間を順に経て、外周側開口部154eまで一連に繋がる流通経路とされる。
【0213】
なお、各内周側接続流路17は、
図13(b)に示すように、管群設置領域7よりも内側で、且つ閉止部材19の容器軸心方向他端寄りの端面から管板4までの間の空間を、内周部仕切部材22によって仕切ることで形成されている(
図1(a)参照)。この内周部仕切部材22は、容器1の軸心位置からバッフル144aと144cと144eと144gの内周側端部に向けて容器1の半径方向に沿って延びる4つの平板を容器1の軸心位置で繋いだ形状とされ、その各端部がバッフル144aと144cと144eと144gの内周側端部に取り付けられている。
【0214】
前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、上流側端部(起端)に位置するのは、外周側開口部154aと、外周側開口部154hである。そこで、胴6の外面における外周側開口部154aと154hの外側には、
図4(a)(b)に示したと同様の入口27を備えたヘッダ部材26が、各外周側開口部154aと154hを一緒に覆うように取り付けられている。
【0215】
一方、前述した胴側流体13の流通経路の2つの系統で、下流側端部(末端)に位置するのは、外周側開口部154dと、外周側開口部154eである。そこで、胴6の外面における外周側開口部154dと154eの外側には、
図4(a)(b)に示したと同様の出口32を備えたヘッダ部材31が、各外周側開口部154dと154eを一緒に覆うように取り付けられている。
【0216】
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器によれば、入口27に接続された図示しない胴側流体供給部より供給される胴側流体13は、入口27よりヘッダ部材26内へ供給されると、ヘッダ部材26内で周方向に分散された後、外周側開口部154aと154hを通して区画74aと74hに流入する。
【0217】
区画74aに流入した胴側流体13は、前述した区画74a,74b,74c,74dを順に経る系統の流通経路を通った後、外周側開口部154dからヘッダ部材31に送られる。
【0218】
同様に、区画74hに流入した胴側流体13は、前述した区画74h,74g,74f,74eを順に経る系統の流通経路を通った後、外周側開口部154eからヘッダ部材31に送られる。
【0219】
このヘッダ部材31まで達した胴側流体13は、その出口32から取り出される。
【0220】
したがって、本実施形態の多管式熱交換器によっても、胴側流体13の流通経路を形成している各区画74a,74b,74c,74dと区画74h,74g,74f,74e内では、胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなる。特に、容器軸心方向中間部付近の領域では、胴側流体13が主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0221】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第1実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0222】
なお、本実施形態では、外周側開口部154aと154hの外側に共通のヘッダ部材26を設け、又、外周側開口部154dと154eの外側に共通のヘッダ部材31を設けた構成を示したが、胴側流体13の2つの系統の流通経路に、個別の入口側のヘッダ部材26と、出口側のヘッダ部材31を備える構成としてもよいことは勿論である。
【0223】
本実施形態のように管群設置領域7に周方向に8つの区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hを形成した構成では、胴側流体13の流通経路は、4区画ずつを接続した2系統の流通経路のほかに、前述したように8区画を接続した1系統の流通経路と、2区画ずつを接続した4系統の流通経路を設定することができる。
【0224】
[第6実施形態の第1変形例]
図14は、第6実施形態の第1変形例として、8つの区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hを順に接続した1系統の流通経路を設けた形式を示すものである。
【0225】
図14(a)(b)は、それぞれ
図13(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0226】
なお、
図14(a)(b)において、
図13(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0227】
この第6実施形態の第1変形例では、
図14(b)に示すように、内周側開口部164a,164b,164c,164d,164e,164f,164g,164hの内周側接続流路17を介した接続構造は、
図13(b)に示した第6実施形態と同様とされている。
【0228】
一方、
図14(a)に示すように、外周側開口部154bと154c、外周側開口部154dと154e、外周側開口部154fと154gが、胴6の外面の対応する個所に取り付けられた個別の流路形成部材25によって形成した外周側接続流路18によりそれぞれ接続されている。
【0229】
この変形例では、接続された区画数が偶数であるため、外周側開口部154aを上流側端部(起端)とする胴側流体13の流通経路の下流側端部(末端)は、外周側開口部154hとなる。
【0230】
このため、胴6の外面には、外周側開口部154aの外側となる位置に、入口27を備えたヘッダ部材26が取り付けられている。一方、胴6の外面における区画74hの外周側開口部154hの外側となる位置には、
図13(a)に示したと同様の出口32を備えたヘッダ部材31が取り付けられている。
【0231】
[第6実施形態の第2変形例]
図15は、第6実施形態の第2変形例として、8つの区画74a,74b,74c,74d,74e,74f,74g,74hのうち、2つずつの区画74aと74b、区画74cと74d、区画74eと74f、区画74gと74hを接続した4系統の流通経路を設けた形式を示すものである。
【0232】
図15(a)(b)は、それぞれ
図13(a)(b)に対応する図であり、
図4(b)(c)に対応する位置での断面図である。
【0233】
なお、
図15(a)(b)において、
図13(a)(b)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0234】
図15(b)に示すように、内周側開口部164a,164b,164c,164d,164e,164f,164g,164hの内周側接続流路17を介した接続構造は、
図13(b)に示した第6実施形態と同様とされている。
【0235】
一方、胴6の外面には、外周側開口部154aと154cと154eと154gの外側となる位置に、入口27を備えたヘッダ部材26がそれぞれ取り付けられている。
【0236】
更に、胴6の外面における外周側開口部154bと154dと154fと154hの外側となる位置には、出口32を備えたヘッダ部材31がそれぞれ取り付けられている。
【0237】
以上の第6実施形態の第1変形例及び第2変形例によっても、胴側流体13の流通経路の1つの系統に含まれる区画の数は異なるが、第6実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
【0238】
なお、
図10(a)(b)に示した第4実施形態の第2変形例、
図11(a)(b)に示した第5実施形態、
図12(a)(b)に示した第5実施形態の変形例、
図13(a)(b)に示した第6実施形態、
図14(a)(b)に示した第6実施形態の第1変形例、
図15(a)(b)に示した第6実施形態の第2変形例は、いずれも、胴側流体13の一つの系統で接続されている区画数が偶数である。
【0239】
そのため、各図では、胴側流体13の入口27と出口32が、それぞれ容器1の胴6の外周部に設けられた構成について示したが、第3実施形態と同様に、胴側流体13を、管群設置領域7の内側から行うようにしてもよい。
【0240】
この場合は、図示してないが、胴側流体13の流通経路の上流側端部(起端)となる区画の内周側開口部の内側と、流通経路の下流側端部(末端)となる区画の内周側開口部の内側に、
図6(a)(c)に示した第3実施形態の場合と同様に、入口側のヘッダ33と出口側のヘッダ24をそれぞれ設け、これらのヘッダ33,24を、管板4の中央部に設けた開口20に取り付けて内部を適宜仕切った管状部材21を介して、容器外部に入口35aを有する接続管35、及び、容器外部に出口30aを有する接続管30に接続した構成とすればよい。
【0241】
[第7実施形態]
図16は、多管式熱交換器の第7実施形態を示すものであり、
図16(a)は容器軸心位置での概略断面図、
図16(b)は
図16(a)のG−G方向矢視断面図、
図16(c)は
図16(a)のH−H方向矢視断面図である。
【0242】
なお、
図16(a)(b)(c)において、
図1(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。又、本実施形態において、管側流体12の流通経路は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0243】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図1(a)(b)(c)に示した第1実施形態と同様に、管群設置領域7に、バッフル14a,14b,14cにより仕切られた3つの区画7aと7bと7cが、周方向に配列して形成されている。
【0244】
管群設置領域7に形成された各区画7a,7b,7cを通る胴側流体13の流通経路は、以下のようにしてある。
【0245】
図17は、胴側流体13の流通経路の概要を説明するための図で、
図2と同様に、容器1の胴6内の管群設置領域7に形成された3つの区画7a,7b,7cを、周方向に分離し、展開させて示してある。
図17において、
図16に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0246】
各区画7a,7b,7cは、
図17にハッチングを付して示すように、外周部における容器軸心方向の中間部に、外周側開口部15a,15b,15cを備え、内周部における容器軸心方向の両端部の2個所に、内周側開口部16a,16b,16cをそれぞれ備えている。
【0247】
周方向に配列された3つの区画7a,7b,7cのうち、隣接する区画7aと7bは、互いの周方向に隣接する内周側開口部16aと16b同士が、区画7aと7bの内側に設けられた内周側接続流路17を介してそれぞれ接続されている。更に、隣接する区画7bと7cは、互いの外周側開口部15bと15c同士が、容器1の胴6の外側に設けた外周側接続流路18を介して接続されている。
【0248】
以上により、管群設置領域7には、外周側開口部15aから、区画7aの内部空間、各内周側開口部16a、各内周側接続流路17、各内周側開口部16b、区画7bの内部空間、外周側開口部15b、外周側接続流路18、外周側開口部15c、及び、区画7cの内部空間を順に経て、各内周側開口部16cまで上下流方向に繋がる胴側流体13の流通経路が形成される。
【0249】
これにより、区画7aと7cでは、容器軸心方向中間部に設けられた外周側開口部15a,15cより流入する胴側流体13が、容器軸心方向両端部に設けられた2つの内周側開口部16a,16cに向けて流れるようになる。
【0250】
又、区画7bでは、容器軸心方向両端部に設けられた2つの内周側開口部16bより流入する胴側流体13が、容器軸心方向中間部に設けられた外周側開口部15bに向けて流れるようになる。
【0251】
したがって、各区画7a,7b,7cでは、胴側流体13が、外周側開口部15a,15b,15cと内周側開口部16a,16b,16cが設けられている容器軸心方向中間部と両端部寄りの領域では、管群直交流の流れ成分を含むようになるが、その間の領域では、主として容器軸心方向に沿った流れとなる。
【0252】
本実施形態において、胴6の外側に流路形成部材25によって形成される外周側接続流路18、及び、区画7aの外側に設けられる胴側流体13の入口27を備えたヘッダ部材26は、第1実施形態と同様とされている。
【0253】
一方、内周側接続流路17は、管群設置領域7の内側に設ける閉止部材19を、容器軸心方向一端側の管板2及び容器軸心方向他端側の管板4の双方と所定の間隔を隔てて配置し、閉止部材19の容器軸心方向両端側の端面と各管板2,4との間の空間に、
図1(c)に示した内周部仕切部材22と同様の内周部仕切部材22を設けることで形成されている。
【0254】
更に、管板4に加えて、管板2にも、管群設置領域7よりも内側となる中央部に、
図1(a)に示した管板4と同様の開口20が設けられ、この開口20に、容器1の軸心方向に沿って分配ヘッダ3の内側に突出する管状部材21が取り付けられている。管状部材21の突出端部は閉塞されている。更に、管板2側の管状部材21には、接続管30の一端側が接続されている。該接続管30の他端側は、分配ヘッダ3に対応する容器壁を貫通させて外部に突出されている。外部に突出した接続管30の他端側は、胴側流体13の出口30aとされている。
【0255】
以上の構成としてある第7実施形態の多管式熱交換器も、第1実施形態と同様に使用して、管側流体12と胴側流体13との熱交換を実施することができる。
【0256】
又、本実施形態の多管式熱交換器でも、各区画7a,7b,7c内での胴側流体13の流れは、容器軸心方向の流れ成分を含んだものとなり、特に、各区画7a,7b,7cにおいて、容器軸心方向の中間部と、容器軸心方向両端部との間の領域では、胴側流体13が、主として容器軸心方向に沿う流れとなる。
【0257】
このため、本実施形態の多管式熱交換器によっても、第1実施形態の多管式熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0258】
更に、本実施形態では、接続管30の出口30aを入口とし、ヘッダ部材26の入口27を出口として、胴側流体13の流れを逆にしてもよい。
【0259】
本実施形態では、各区画7a,7b,7c内に、容器軸心方向の中間部を挟んで、一端寄りと他端寄りに2つに分かれて胴側流体13が流通するため、容器1の管群設置領域7の容器軸心方向に沿う寸法が大きい場合に、胴側流体13の流路が過度に長くなるのを抑制する場合に有利な構成とすることができる。
【0260】
ここで、前述の各実施形態から明らかとなる本発明の多管式熱交換器に備える胴側流体13の流通経路の配置パターンについて述べる。
【0261】
本発明の多管式熱交換器では、管群設置領域7の周方向に形成する複数の区画について、すべての区画を経る一系統のみの流通経路を形成する構成としてもよく、あるいは、区画数が、1とその数以外の約数を有する数となっている場合は、その約数ずつに分けた区画を接続した複数系統の流通経路を形成する構成としてもよい。
【0262】
又、一つの系統の胴側流体13の流通経路が偶数の区画を接続した構成である場合は、その流通経路の上流側端部(起端)と下流側端部(末端)は、共に区画の内周側開口部とする構成と、共に区画の外周側開口部とする構成のいずれであってもよい。
【0263】
一方、胴側流体13の流通経路が奇数の区画を接続した構成である場合は、その流通経路の上流側端部(起端)を区画の外周側開口部とし、下流側端部(末端)を区画の内周側開口部とする構成と、その流通経路の上流側端部(起端)を区画の内周側開口部とし、下流側端部(末端)を区画の外周側開口部とする構成のいずれを採用してもよい。
【0264】
更に、複数系統の胴側流体13の流通経路を備える構成では、それぞれの系統の流通経路ごとに、周方向に配列された区画を順に経て胴側流体を移動させる方向は、容器1の軸心方向の一端側から見て時計回り方向、又は、反時計回り方向のいずれに設定してもよい。
【0265】
[第8実施形態]
図18は、多管式熱交換器の第8実施形態を示すもので、
図18(a)(b)(c)は、
図1(a)(b)(c)に対応する図である。
【0266】
なお、
図18(a)(b)(c)において、
図1(a)(b)(c)と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0267】
本実施形態の多管式熱交換器は、
図1(a)(b)(c)に示した第1実施形態と同様の構成において、管群8の各伝熱管9に触媒36が充填された構成としてある。且つ、各伝熱管9に流通させる管側流体12は、触媒36を介した触媒反応の対象とする反応原料及び反応生成物としてのプロセス流体とし、各伝熱管9の外側に流通させる胴側流体13は、熱媒とした構成とする。
【0268】
なお、本実施形態の多管式熱交換器では、各伝熱管9の外側に流通させる胴側流体13が、内周側と周辺部で流路断面積の相違により速度変化を生じる点、及び、胴側流体13が各区画7a,7b,7cを順に流通するようにしてある点に鑑みて、前記熱媒として用いる胴側流体13は、各伝熱管9の管内側におけるプロセス流体である管側流体12の熱伝達率に比して、管外側の熱伝達率が大きくなるように、密度、比熱、熱伝導率や流量が設定してあるものとする。又、該熱媒としての胴側流体13は、触媒反応が発熱反応の場合は、冷却媒体を、又、触媒反応が吸熱反応の場合は、加熱媒体を用いるようにすればよい。更に、熱媒の種類は、触媒反応に所望される温度条件等に応じて適宜選定すればよい。
【0269】
本実施形態の多管式熱交換器では、前記各伝熱管9の内部で、触媒36により反応原料より反応生成物を生成させる触媒反応が進行する。
【0270】
この際、前記したように、各伝熱管9では、管内側の熱伝達率が管外側の熱伝達率よりも小さくなるようにしてあるため、各伝熱管9の管壁を介した前記反応原料及び反応生成物となる管側流体12と、熱媒となる胴側流体13との熱通過率(総括熱伝達係数)は、前記管内側の熱伝達率に大きく依存している。そのために、本実施形態の多管式熱交換器では、前記管内側の熱伝達率が、前記管壁内外方向の熱通過率の全体に対して律速となる。
【0271】
よって、本実施形態の多管式熱交換器は、熱媒となる胴側流体13に前記したような速度変化が生じたり、各区画7a,7b,7cを順次経ることで多少の温度変化が生じたりする場合であっても、胴側流体13による管外側の熱伝達率は、前記熱通過率への寄与が小さい。そのため、各伝熱管9内をほぼ均一な温度条件に保持することができる。よって、本実施形態の多管式熱交換器は、各伝熱管9で前記触媒反応を一様に進行させることが可能な多管式反応器として使用することができる。
【0272】
なお、本実施形態のように各伝熱管9に触媒36を充填する構成は、前述の各実施形態、応用例、及び変形例に適用してもよいことは勿論である。
【0273】
なお、本発明は前述の各実施形態、応用例、及び変形例のみに限定されるものではなく、管側流体入口10と管側流体出口11を入れ替えて、容器1の他端部の管板4により仕切られた空間を分配ヘッダ3とし、容器1の一端側の管板2により仕切られた空間を集合ヘッダ5としてもよい。かかる構成では、前述の各実施形態に対して管側流体12の流れ方向は逆になるが、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0274】
管群設置領域7に設けるバッフルの数は、図示した以外の数としてもよい。したがって、管群設置領域に周方向に並べて形成させる区画の数も、図示した以外の数としてもよい。
【0275】
管群8における各伝熱管9の配列としては、三角配列と四角配列を例示したが、図示した以外の規則配列や、その他、任意の配列を採用してもよい。又、各伝熱管9の径や本数、配列ピッチは適宜変更してよい。更に、管群設置領域7における胴側流体13の局所的な通り抜けを抑制するという観点から考えると、管群8を構成している各伝熱管9同士の隙間が半径方向に連続して延びる個所に合わせてバッフルを配設することが望ましいが、その他の個所であってもよい。
【0276】
容器1の軸心方向寸法と径寸法との比、容器1内における各管板2と4の設置位置、分配ヘッダ3と集合ヘッダ5の容積、各管板2と4同士の間隔、各区画の外周側開口部と内周側開口部の容器軸心方向の寸法等は、管側流体12と胴側流体13の供給量や、温度条件等の熱交換処理に所望される種々の条件に応じて、図示したものから適宜変更してもよい。
【0277】
前記管側流体12及び胴側流体13は、ガス又は液体のいずれであってもよい。
【0278】
本発明の多管式熱交換器は、いかなる熱交換処理を行う熱交換器に適用してもよい。
【0279】
本発明の多管式熱交換器は、容器1の軸心方向を、上下方向以外のいかなる方向に向けた姿勢で用いるようにしてもよい。
【0280】
各伝熱管9について、長手方向の途中位置で振れ止めのための支持が必要な場合は、ワイヤやロッドを格子状に組み合わせたロッドバッフル等の管支持材で支持するようにすればよい。
【0281】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0282】
本発明の多管式熱交換器に関し、第1実施形態とその応用例、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態とその第1変形例、第5実施形態とその変形例、第6実施形態とその第1変形例及び第2変形例、第7実施形態の各構成について、伝熱管9と管内側を流通させる管側流体12との間の熱伝達率(管内側の熱伝達率)h
1、及び、伝熱管9と管外側を流通させる胴側流体13との間の熱伝達率(管外側の熱伝達率)h
2と、管側流体12と胴側流体13との伝熱管9の管壁を介した熱通過率Kと、管側流体12側の圧力損失、及び、胴側流体13側の圧力損失について数値解析した。
【0283】
なお、熱通過率Kの算出は、以下の式に基づいて行った。
【数1】
その解析結果を、以下の表1に示す。
【0284】
表1における比較例1は、従来の多管式熱交換器であって、管群設置領域に、伝熱管の長手方向の3個所に、伝熱管の長手方向に直交する面内に配置したドーナツ状のバッフル2枚とディスク状のバッフル1枚を設けてなる4段流路構成としたものである。
【0285】
又、比較例2は、前記比較例1と同様の構成において、各バッフルにおける伝熱管挿通孔と伝熱管との隙間からのリークを考慮したものである。
【0286】
このリークの算出条件は以下のようにした。
隙間形状係数:Z=67
管本数:約20000本
Zの定義は、下記による。
Z=2t/(D−d)
t:バッフル厚さ
D:バッフルの管挿通孔の径
d:伝熱管の外径
【0287】
この比較例1、2の構成について、前記と同様に、管側流体側の熱伝達率(管内側の熱伝達率)h
1と、胴側流体側の熱伝達率(管外側の熱伝達率)h
2と、熱通過率Kと、管側流体側の圧力損失と、胴側流体側の圧力損失について数値解析したものである。
【0288】
なお、前述の各実施形態、及び、比較例1、2の構成は、伝熱管9の径、管ピッチ、本数、管側流体12の流量、胴側流体13の流量、容器1の径、高さを同様に設定してある。
【0289】
なお、前記伝熱管9には触媒が充填され、管側流体12がガスであると想定して、管内側の管側流体12が、管外側の胴側流体13に比して熱伝達率が低くなるように設定してある。
【0290】
又、以下の表1では、各熱伝達率h
1及びh
2と、熱通過率Kについては、各実施形態と比較例1、2に共通している伝熱管9内に流通させる管側流体12側の熱伝達率(管内側の熱伝達率)h
1の解析結果の値を基準となる1.0とおいて、各実施形態と比較例1、2の前記各項目の解析結果を規格化している。圧力損失については、前記と同様に、管側流体12側の圧力損失の解析結果の値を基準となる1.0とおいて、各実施形態と比較例1、2の前記各項目の解析結果を規格化している。
【0291】
【表1】
【0292】
以上の結果から明らかなように、各実施形態のいずれにおいても、比較例1、2とした伝熱管長手方向に直交するバッフルを備えた多管式熱交換器に比して、伝熱管9と胴側流体13側の熱伝達率(管外側の熱伝達率)h
2は低下する。しかし、熱交換器の熱交換性能の指標となる熱通過率Kに関しては、律速の因子となる伝熱管9と管側流体12側の熱伝達率h
1が変化しないため、各実施形態の熱通過率Kは、それぞれ0.92〜0.76の範囲の値となり、比較例1、比較例2の熱通過率Kの0.97という値に比して熱交換性能はあまり低下していない。
【0293】
一方、各実施形態では、胴側流体13側の圧力損失は、それぞれ、0.025〜1.0の範囲の値となっており、比較例1の胴側流体側の圧力損失の4.4という値に比して、更には、比較例2の胴側流体側の圧力損失の1.8という値に比しても低減させることができることが判明した。よって、本発明の多管式熱交換器では、熱通過率Kの低下を抑制しながら、すなわち、熱交換性能の低下を抑制しながら、胴側流体13の圧力損失を大幅に低減できることが判明した。