(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379918
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20180820BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20180820BHJP
H01M 2/20 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
H01M2/10 M
H01M10/48 P
H01M2/10 E
!H01M2/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-190976(P2014-190976)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-62800(P2016-62800A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
【審査官】
宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−170884(JP,A)
【文献】
特開2013−098032(JP,A)
【文献】
特開2011−070846(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/132671(WO,A1)
【文献】
特開2010−287516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを配列してなる配列体と、
前記配列体における前記電池セルの配列方向に沿って延在すると共に、先端の接続端子が所定の電池セルの電極端子に接続された複数のハーネスと、
前記複数のハーネスを結束してハーネス束とする結束部材と、
前記配列体における前記電池セルの一方の配列端に配置された弾性体と、を備え、
前記結束部材による前記ハーネスの結束位置と、前記電極端子と前記接続端子との接続位置との間で、前記結束部材から分岐する前記ハーネスが撓みを有し、
前記複数のハーネスは、前記弾性体が配置される前記一方の配列端側から前記配列体に向けて引き込まれ、
前記結束部材による前記ハーネスの結束位置は、前記電極端子と前記接続端子との接続位置よりも前記弾性体側に位置している電池モジュール。
【請求項2】
前記弾性体を介して前記配列体を前記配列方向に拘束する拘束部材を更に備えている請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記結束部材による前記ハーネスの結束位置は、接続先の電池セルが膨張したときの前記電極端子と前記接続端子との接続位置よりも前記弾性体側に位置している請求項2記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記結束部材から分岐する前記ハーネスの撓み量は、当該ハーネスの接続先の電池セルが前記弾性体側に位置しているほど大きくなっている請求項2又は3記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記ハーネスのそれぞれには、前記結束部材による前記結束位置を示す目印が設けられている請求項1〜4のいずれか一項記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記ハーネスは、前記電池セルの電圧検出に用いるハーネスである請求項1〜5のいずれか一項記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリチウムイオン二次電池等の電池セルを複数配列してなる電池モジュールが知られている。かかる電池モジュールでは、電池セルの配列体を金属プレート等の拘束具で挟み込んで一定の荷重で拘束することで、電池セルにおいて内部抵抗等の特性が変動することを抑制している。例えば特許文献1に記載の組電池では、両端に屈曲部を有する金属バンドをエンドプレートに固定し、このエンドプレートによって電池ブロックを積層方向に拘束している。このような電池モジュールでは、電池セルの膨張による拘束部材の破損を防止する目的で、配列体と拘束部材のエンドプレートとの間にゴムなどの弾性体を介在させる場合がある。
【0003】
また、電池モジュールには、各電池セルの電圧検出などに用いるハーネスが組み付けられることがある。例えば特許文献2に記載の組電池では、電圧検出端子を備えたコネクタを保持部材で保持し、保持部材を電池群に対して取り付けることにより、電池セルの電極端子に一括してコネクタを電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−055069号公報
【特許文献2】特開2008−243412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池モジュールに対してハーネスを組み付けるにあたっては、ハーネスの配線の煩雑化を避ける必要がある。そのため、複数本のハーネスの基端側を結束部材で結束し、ハーネス束の状態で電池モジュールに組み付けることが好適である。また、ハーネス先端の接続端子を電池セルの電極端子に接続する際、接続先を誤らないように、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さを互いに異ならせることもある。
【0006】
一方、過充電等の異常によってケース内部にガスが発生した場合や経年劣化などによって電池セルが膨張する場合がある。電池セルに膨張が生じると、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置が、ハーネス束の結束位置に対して動くことが考えられる。このとき、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さが不足すると、ハーネスに負荷がかかり、断線等の不具合を招いてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、電池セルに膨張が生じた場合であっても、ハーネスにかかる負荷を抑制できる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決のため、本発明の一側面に係る電池モジュールは、複数の電池セルを配列してなる配列体と、配列体における電池セルの配列方向に沿って延在すると共に、先端の接続端子が所定の電池セルの電極端子に接続された複数のハーネスと、複数のハーネスを結束してハーネス束とする結束部材と、を備え、結束部材によるハーネスの結束位置と、電極端子と接続端子との接続位置との間で、結束部材から分岐するハーネスが撓みを有している。
【0009】
この電池モジュールでは、結束部材によるハーネスの結束位置と、電極端子と接続端子との接続位置との間で、結束部材から分岐するハーネスが撓みを有している。このため、電池セルに膨張が生じ、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置がハーネスの結束位置に対して動いた場合であっても、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さが不足してしまうことを防止できる。したがって、ハーネスに負荷がかかることを抑制でき、断線等の不具合の発生を抑えられる。
【0010】
また、電池モジュールは、配列体における電池セルの一方の配列端に配置された弾性体と、弾性体を介して配列体を配列方向に拘束する拘束部材と、を更に備え、複数のハーネスは、弾性体が配置される一方の配列端側から配列体に向けて引き込まれ、結束部材によるハーネスの結束位置は、電極端子と接続端子との接続位置よりも弾性体側に位置していてもよい。
【0011】
配列端における電池セルの一方の配列端に弾性体を配置した場合、配列体は、電池セルに膨張が生じたときに弾性体側に一方向に膨張する。このため、電池セルに膨張が生じたときの電極端子と接続端子との接続位置は、初期位置から弾性体側に一方向に動くこととなる。したがって、結束部材によるハーネスの結束位置を電極端子と接続端子との接続位置よりも弾性体側に位置させることにより、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置がハーネスの結束位置に対して動いた場合であっても、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さが不足してしまうことを好適に防止できる。
【0012】
また、結束部材によるハーネスの結束位置は、接続先の電池セルが膨張したときの電極端子と接続端子との接続位置よりも弾性体側に位置していてもよい。これにより、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置がハーネスの結束位置に対して動いた場合であっても、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さが不足してしまうことをより確実に防止できる。
【0013】
また、結束部材から分岐するハーネスの撓み量は、当該ハーネスの接続先の電池セルが弾性体側に位置しているほど大きくなっていてもよい。電池セルに膨張が生じた場合、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置がハーネスの結束位置に対して動く量は、弾性体側に位置している電池セルほど大きくなる。したがって、結束部材から分岐するハーネスの撓み量を、当該ハーネスの接続先の電池セルが弾性体側に位置しているほど大きくすることにより、電池セルの電極端子とハーネスの接続端子との接続位置がハーネスの結束位置に対して動いた場合であっても、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さが不足してしまうことを一層確実に防止できる。
【0014】
また、ハーネスのそれぞれには、結束部材による結束位置を示す目印が設けられていてもよい。この場合、電池モジュールへのハーネスの組み付けの際に、結束部材によるハーネスの結束位置を容易に把握できる。したがって、各ハーネスに対する結束範囲のばらつきを抑え、結束部材の先端側で分岐するハーネスの長さをより確実に確保できる。
【0015】
また、ハーネスは、電池セルの電圧検出に用いるハーネスであってもよい。上述したハーネスの配置は、電池セルの電圧検出に用いるハーネスの配置に好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池モジュールによれば、電池セルに膨張が生じた場合であっても、ハーネスにかかる負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した電池モジュールの平面図である。
【
図3】複数のハーネスを結束部材で結束してなるハーネス束を示す概略図である。
【
図4】
図1及び
図2の電池モジュールにおいて、結束部材から分岐するハーネスの組み付け状態を示す要部拡大概略図である。
【
図5】
図4に示すハーネスの電池セルの膨張時の状態を示す要部拡大概略図である。
【
図6】比較例に係る電池モジュールにおいて、結束部材から分岐するハーネスの組み付け状態を示す要部拡大概略図である。
【
図7】
図6に示すハーネスの電池セルの膨張時の状態を示す要部拡大概略図である。
【
図8】本発明の変形例に係る電池モジュールにおいて、結束部材から分岐するハーネスの組み付け状態を示す要部拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る電池モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールを示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した電池モジュールの平面図である。
図1及び
図2に示すように、電池モジュール1は、複数の電池セル11を配列してなる配列体2と、配列体2に対して電池セル11の配列方向に拘束荷重を付加する拘束部材3と、配列体2と拘束部材3との間に介在する弾性体4とを備えている。
【0020】
配列体2は、例えば複数(ここでは7体)の電池セル11(弾性体4側に向かって11A〜11G)によって構成されている。電池セル11,11間には、不図示の伝熱プレートが介在している。電池セル11は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。電池セル11は、例えば略直方体形状をなす中空のケース12内に電極組立体を収容してなる。ケース12の頂面には、一対の電極端子17,17が互いに離間して設けられている。
図2に示すように、電極端子17の一方は、電極組立体の正極に接続された正極端子15となっており、電極端子17の他方は、電極組立体の負極に接続された負極端子16となっている。隣接する電池セル11,11は、正極端子15と負極端子16とが互いに隣り合うように配列され、隣り合う正極端子15と負極端子16とをバスバー部材18で接続することにより、電気的に直列に接続されている。
【0021】
また、電池セル11には、
図1及び
図2に示すように、電池ホルダ21が取り付けられている。電池ホルダ21は、例えば樹脂によって一体成型された枠体22を有している。枠体22は、電池セル11のケース12の側面のうち、電池セル11の配列方向の側面を除いた各側面に沿うように、ケース12に嵌め込まれている。
【0022】
拘束部材3は、例えば一対のエンドプレート31と、エンドプレート31同士を締結する締結部材32とを備えている。エンドプレート31は、例えば鉄などの金属によって形成され、電池セル11を配列方向から見た場合の面積よりも大きい面積を有する略矩形の板状をなしている。エンドプレート31は、その外縁部分が電池セル11の外縁部分よりも外側に張り出した状態で、配列体2及び弾性体4の配列方向の両端にそれぞれ配置されている。なお、エンドプレート31には、ブラケット35が取り付けられている。電池モジュール1は、ブラケット35を介し、筐体等の壁部に対して強固に固定される。
【0023】
締結部材32は、例えば長尺のボルト33と、ボルトに螺合されるナット34(
図2参照)とによって構成されている。ボルト33は、例えばエンドプレート31の外縁部分においてエンドプレート31に挿通されている。各ボルト33の両端にエンドプレート31の外側からナット34が螺合されることで、電池セル11、弾性体4、及び伝熱プレートが挟持されてユニット化されると共に拘束荷重が付加される。
【0024】
弾性体4は、拘束荷重による電池セル11の破損の防止に加え、拘束部品の破損を防ぐ目的で用いられる部材であり、例えばウレタン製のゴムスポンジによって矩形の板状に形成されている。弾性体4は、配列体2における電池セル11の配列方向の一端に配置されている。弾性体4の形成材料としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。また、弾性体4は、ゴムに限られず、バネ材などであってもよい。
【0025】
上述した構成を有する電池モジュール1には、
図2に示すように、電池セル11の電圧検出に用いる複数のハーネス41が組み付けられている。複数のハーネス41は、結束部材42によって結束され、ハーネス束43となった状態で電池セル11の配列方向に沿って配線されている。本実施形態では、電池セル11の一方の電極端子17の列と電池セル11の他方の電極端子17の列とのそれぞれに沿うように、弾性体4側から一対のハーネス束43,43が電池セル11側に引き込まれている。
【0026】
ハーネス束43,43の基端側は、被覆部材44で被覆された状態で電池モジュール1の外側で合流し、例えば電池モジュール1の上方に配置された電圧計(不図示)に電気的に接続されている。ハーネス束43,43の先端側では、被覆部材44及び結束部材42の先でハーネス41が分岐している。分岐するハーネス41の先端には、
図2に示すように、接続端子45(45A〜45H)がそれぞれ設けられており、接続端子45が所定の電池セル11の電極端子17に接続されることで、ハーネス41と電池セル11との電気的な接続がなされている。
【0027】
結束部材42は、
図3に示すように、例えば樹脂テープ或いは樹脂チューブなどによって構成されている。結束部材42の長さLは、他の結束部材42から分岐するハーネス41の配置を阻害しない範囲で任意の長さに設定できる。また、結束部材42で結束されるハーネス41のそれぞれには、結束部材42による結束位置(結束部材42の先端の位置)46を示す目印47が設けられている。目印47としては、特に制限はないが、例えば樹脂テープ或いは樹脂チューブを用いてもよく、塗料の塗布や印刷によるものであってもよい。また、溝や凹部等によるものであってもよい。
【0028】
本実施形態のハーネス41には、
図2に示すように、被覆部材44から一定の間隔をもって2つの結束部材42が設けられている。また、ハーネス束43,43の基端側を束ねる被覆部材44も結束部材42としての機能を有している。一方のハーネス束43において、先端側の結束部材42Aから分岐するハーネス41Aは、電池セル11Aの正極端子15Aに接続され、同じく結束部材Aから分岐するハーネス41Bは、電池セル11Bの負極端子16Bに接続されている。また、基端側の結束部材42Bから分岐するハーネス41Cは、電池セル11Dの負極端子16Dに接続され、被覆部材44から分岐するハーネス41Dは、電池セル11Fの負極端子16Fに接続されている。
【0029】
また、他方のハーネス束43において、先端側の結束部材42Cから分岐するハーネス41Eは、電池セル11Aの負極端子16Aに接続され、同じく結束部材42Cから分岐するハーネス41Fは、電池セル11Cの負極端子16Cに接続されている。また、基端側の結束部材42Dから分岐するハーネス41Gは、電池セル11Eの負極端子16Eに接続され、被覆部材44から分岐するハーネス41Hは、電池セル11Gの負極端子16Gに接続されている。
【0030】
ここで、電池モジュール1では、結束部材42によるハーネス41の結束位置46と、電極端子17と接続端子45との接続位置48との間で、結束部材42から分岐するハーネス41が撓みを有している。
図4は、結束部材から分岐するハーネスの状態を示す概略図である。同図の例では、電池セル11Aの正極端子15Aに接続されているハーネス41Aと、電池セル11Bの負極端子16Bに接続されているハーネス41Bとを示している。
【0031】
図4に示すように、電池モジュール1では、結束部材42Aによるハーネス41A,41Bの結束位置46Aが、電池セル11Bの負極端子16Bとハーネス41Bの接続端子45Bとの接続位置48Bよりも弾性体4側に位置している。より具体的には、結束部材42Aによるハーネス41A,41Bの結束位置46Aは、ハーネス束43の延在方向に沿う線分R1と、電池セル11の電極端子17,17の中心同士を結ぶ線分R2とが交差する交差点Pに対し、所定の間隔W1をもって弾性体4側に位置している。これにより、結束部材42Aによる結束位置46Aと接続位置48Bとの間で、結束部材42Aから分岐するハーネス41Bが撓みを有している。
【0032】
所定の間隔W1は、電池セル11のケース12の厚さやハーネス41の種類などに応じて適時設定されるが、電池セル11の膨張量を考慮することが好適である。すなわち、結束部材42Aによる結束位置46Aは、直近の電池セル11Bが膨張したときの負極端子16Bと接続端子45Bとの接続位置48Bよりも弾性体4側に位置していることが好ましい(
図5参照)。
【0033】
図5は、
図4に示したハーネス41A,41Bの作用効果を示す図である。電池モジュール1では、上述したように、配列体2における電池セル11の配列方向の一端(電池セル11G側)に弾性体4が配置されている。このため、電池セル11に膨張が生じた場合、配列体2は、弾性体4が圧縮可能な範囲で弾性体4側に一方向に膨張する。このとき、エンドプレート31に直接的に拘束されている電池セル11Aの正極端子15Aと接続端子45Aとの接続位置48Aは、殆ど変化しないが、電池セル11Bの負極端子16Bと接続端子45Bとの接続位置48Bは、
図5に示すように、初期位置から弾性体4側に動くこととなる。
【0034】
このような接続位置48Bの動きに対し、電池モジュール1では、結束部材42Aによるハーネス41A,41Bの結束位置46Aが、直近の電池セル11Bが膨張したときの負極端子16Bと接続端子45との接続位置48Bよりも弾性体4側に位置しており、結束位置46Aと接続位置48Bとの間で、結束部材42Aから分岐するハーネス41Bが撓みを有している。したがって、接続位置48Bが初期位置から弾性体4側に動いた場合であっても、結束部材42Aから分岐するハーネス41Bの長さが不足してしまうことが防止され、ハーネス41Bの撓みが維持される。ハーネス41Bの撓みが維持されることで、ハーネス41Bに張力などの過剰な負荷がかかることを抑制できるので、断線等の不具合の発生を抑えられる。
【0035】
図6は、比較例に係る電池モジュールにおいて、結束部材から分岐するハーネスの組み付け状態を示す要部拡大概略図である。同図に示すように、比較例では、結束部材142Aによるハーネス141A,141Bの結束位置146Aと、電池セル111Bの負極端子116B(電極端子117)とハーネス141Bの接続端子145Bとの接続位置148Bとが揃った状態となっている。すなわち、この比較例では、結束部材142Aによるハーネス141A,141Bの結束位置146Aは、ハーネス束143の延在方向に沿う線分R1と、電池セル111Bの負極端子116Bの中心と正極端子115B(電極端子117)の中心とを結ぶ線分R2とが交差する交差点Pに略一致している。また、結束位置146Aから分岐するハーネス141Bの長さは、結束位置146Aから接続位置148Bまでの距離と略一致している。
【0036】
このような比較例の構成では、電池セル111に膨張が生じた場合の接続位置148Bの動きに対し、ハーネス141Bの長さが不足することが考えられる。ハーネス141Bの長さが不足すると、
図7に示すように、ハーネス141Bには張力による負荷がかかり、ハーネス141Bに断線等の不具合が発生してしまうおそれがある。したがって、
図4に示したように、結束部材142Aから分岐するハーネス141Bに撓みを持たせることが、断線等の不具合の抑制に好適である。
【0037】
結束部材42から分岐するハーネス41が撓みを有している点については、ハーネス41B,41C,41F,41G,41Hについても同様である。これらのハーネス41の接続先である電池セル11C〜11Gでは、電池セル11Bと同様、配列体2が弾性体4側に一方向に膨張したときに、電極端子17と接続端子45との接続位置48が初期位置から弾性体4側に動く。したがって、結束部材42から分岐するハーネス41に撓みを持たせることで、断線等の不具合の発生を抑制できる。
【0038】
また、電池セル11に膨張が生じた場合、電極端子17と接続端子45との接続位置48がハーネス41の結束位置46に対して動く量は、弾性体4側に位置している電池セル11ほど各電池セル11の膨張量が加算されて大きくなる。したがって、結束部材42から分岐するハーネス41の撓み量は、当該ハーネス41の接続先の電池セル11が弾性体4側に位置しているほど大きくなっていることが好適である。これにより、電池セル11の膨張によって電極端子17と接続端子45との接続位置48が結束位置46に対して動いた場合であっても、結束部材42の先端側で分岐するハーネス41の長さが不足してしまうことを一層確実に防止できる。
【0039】
本実施形態では、
図2に示すように、電池セル11A側から順に、結束部材42Cによるハーネス41Fの結束位置46Cと、線分R1と線分R2との交差点Pとの間の間隔をW2、結束部材42Bによるハーネス41Cの結束位置46Bと、線分R1と線分R2との交差点Pとの間の間隔をW3、結束部材42Dによるハーネス41Gの結束位置46Dと、線分R1と線分R2との交差点Pとの間の間隔をW4、被覆部材44によるハーネス41Dの結束位置46Eと、線分R1と線分R2との交差点Pとの間の間隔をW5、被覆部材44によるハーネス41Hの結束位置46Fと、線分R1と線分R2との交差点Pとの間の間隔をW6とした場合に、W1<W2<W3<W4<W5<W6の関係を満たすようになっている。なお、電池セル11については、正極端子15Aと接続端子45Aとの接続位置48Aが殆ど変化しないため、上述した結束位置46と交差点Pとの間隔を考慮しなくてもよい。
【0040】
また、電池モジュール1では、結束部材42による結束位置46を示す目印47がハーネス41のそれぞれに設けられている(
図3参照)。この目印47により、電池モジュール1へのハーネス41の組み付けの際に、結束部材42によるハーネス41の結束位置46を容易に把握できる。したがって、各ハーネス41に対する結束範囲のばらつきを抑え、結束部材42の先端側で分岐するハーネス41の長さをより確実に確保できる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、ハーネス41として、電池セル11の電圧検出に用いるハーネスを示したが、ハーネスの用途はこれに限定されない。また、上記実施形態では、結束部材42によるハーネス41の結束位置46を線分R1と線分R2との交差点Pから弾性体4側にずらすことで、結束部材42から分岐するハーネス41に撓みを持たせているが、ハーネス41への撓みの持たせ方はこれに限定されない。
【0042】
例えば
図8に示すように、結束部材42Aによるハーネス41A,41Bの結束位置46Aを線分R1と線分R2との交差点Pに略一致させる一方、結束位置46Aから分岐するハーネス41Bの長さを結束位置46Aから接続位置48Bまでの距離よりも長くすることで、ハーネス41Bに撓みを持たせてもよい。このような構成であっても、結束部材42Aから分岐するハーネス41Bの長さが不足してしまうことが防止され、電池セル11Bが膨張した場合であってもハーネス41Bに張力などの過剰な負荷がかかることを抑制できる。したがって、断線等の不具合の発生を抑えられる。
【符号の説明】
【0043】
1…電池モジュール、2…配列体、3…拘束部材、11…電池セル、17…電極端子、41(41A〜41H)…ハーネス、42(42A〜42D)…結束部材、43…ハーネス束、44…被覆部材(結束部材)、45(45A〜45H)…接続端子、46(46A〜46F)…結束位置、47…目印、48(48A〜48H)…接続位置。