特許第6379933号(P6379933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379933
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20180820BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   C21C 7/072 20060101ALI20180820BHJP
   C21C 7/068 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C21C7/10 J
   C21C7/00 B
   C21C7/00 N
   C21C7/072 P
   C21C7/072 A
   C21C7/068
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-198397(P2014-198397)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69670(P2016-69670A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 礼太
(72)【発明者】
【氏名】笠原 秀平
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−229027(JP,A)
【文献】 特開平08−013020(JP,A)
【文献】 特開平05−156343(JP,A)
【文献】 特開平06−145769(JP,A)
【文献】 特開平08−100211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0019968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00〜7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス設備内に配置された取鍋に収容された溶湯に、ランスを用いて酸素吹錬を行うとともに取鍋底部に設けたポーラスプラグからArを吹き込んで撹拌することによって、脱炭、脱窒素および成分均一化を図りながら合金を製造する際に、取鍋溶湯自由表面と、脱炭中のAr、COおよびCOのガス発生速度に基づいて得られる、脱炭で発生したCOとCO気泡およびArの気液界面とを反応サイトとする反応サイト界面積を用いる脱窒素終了判定モデルを用いて脱窒素の終了タイミングを推定し、推定した脱窒素の終了タイミングに基づいて脱窒素処理を終了することを特徴とする合金の製造方法。
【請求項2】
前記合金は、高合金、Ni基高合金またはNi系ステンレス鋼である請求項1に記載された合金の製造方法。
【請求項3】
前記高合金はCr含有量およびNi含有量が合計で50質量%以上の高合金であり、前記Ni基高合金はCr含有量およびNi含有量が合計で50質量%以上であるとともにNi含有量が20質量%以上であるNi基高合金である請求項2に記載された合金の製造方法。
【請求項4】
前記脱炭、脱窒素および成分均一化はVOD工程で行なわれる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高合金、Ni基高合金またはNi系ステンレス鋼、具体的には、Cr含有量およびNi含有量が合計で50質量%以上(本明細書では、化学組成に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する)の高合金、Cr含有量およびNi含有量が合計で50%以上であるとともにNi含有量が20%以上であるNi基高合金またはNi系ステンレス鋼等の合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギー需要は拡大の一途を辿っており、これに伴って、石油や天然ガスの掘削環境は深井戸、サワー環境等の過酷なものへと推移している。このため、油井管用やラインパイプ用の継目無鋼管の材質は、炭素鋼からステンレス鋼、さらにはNi系ステンレス鋼(オーステナイト系ステンレス鋼(18%Cr−8%Ni),二相系ステンレス鋼(25%Cr−7%Ni−3%Mo))またはNi基高合金(30%Ni−25%Cr−3%Mo−0.5%Ti)へと高合金化が進んでいる。
【0003】
図1は、Ni系ステンレス鋼,Ni基高合金の製造工程の一例を示す説明図である。
図1に示すように、Ni系ステンレス鋼,Ni基高合金は、電気炉を用いるEAF工程の後に、炉底近くの側壁に設けられた数本の二重管羽口の内管から酸素および不活性ガス(Ar+N)を吹き込むとともに外管から冷却用の不活性ガスを吹き込んで炉内のCO分圧を低下することによってCrの酸化を抑制しながら脱炭を行うAOD(Argon Oxygen Degassing)工程と、真空脱ガス設備内に配置された取鍋に収容された溶湯に上からランスを用いて酸素吹錬を行うとともに取鍋底部に設けたポーラスプラグからArを吹き込んで溶湯を撹拌することによって脱炭、必要に応じて脱窒素および成分均一化を図るVOD工程と、ポーラスプラグからArガスによるバブリングを行いながら上部より還元性のフラックスを添加し三相アーク加熱することにより脱酸および脱硫を行うLF工程により製錬される。この製錬工程を経た後の造塊工程では、主に垂直連続鋳造機により連続鋳造される。
【0004】
VOD工程での脱窒素は、TiNの生成を抑制して鋼材の表面疵の発生起点を低減するとともに、窒化物が増加することに起因した強度の上昇やバラツキを抑制するために、行われる。
【0005】
Ni系ステンレス鋼,Ni基高合金の溶製は、VODでの処理時間が連続鋳造の鋳込み時間よりも長く律速工程となっているとともに、過剰な脱窒素を行うことに起因した脱窒素処理時間のばらつきも大きい。このため、Ni系ステンレス鋼,Ni基高合金の溶製においてVODでの処理時間を短縮するとともにそれに伴う熱エネルギーロスを抑制するためには、脱窒素処理時の窒素濃度の推移を高精度で予測して適正な処理時間で脱窒素処理を終了することが重要になる。
【0006】
しかし、NiやCrを多量に含んだ高合金鋼の製造における脱窒素工程は、今なお経験的に行われている部分が多く、脱窒素処理の終了判定モデルを用いて脱窒素処理の終了を判定している。
【0007】
これまで、一般的に脱窒素反応は、(1)式の化学反応速度とその反応が進行する反応サイト界面積を用いて(2)式のように表現される。
【0008】
【数1】
【0009】
【数2】
【0010】
ここで、kは化学反応速度定数,Sは反応サイト界面積,Vは溶鋼体積,[%N]は溶鋼中窒素濃度,[%N]は脱N前窒素濃度,tは脱N時間である。
【0011】
化学反応速度定数kに関する報告はこれまでにも数多くなされている。例えば、原島らによる非特許文献1には(3)式が開示が開示され、務川らによる非特許文献2には(4)式が開示され、萬谷らによる非特許文献3には(5)式が開示されている。ここで[%O]は溶鋼酸素濃度,[%S]は溶鋼硫黄濃度,aは酸素活量,aは硫黄活量,aは窒素活量,fは窒素の活量係数である。(3)〜(5)式による化学反応速度定数kは、主に酸素や硫黄と言った界面活性元素の影響を考慮した化学反応速度である。
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】
しかし、反応サイト界面積Sは推定が難しく報告が少ない。北村らによる非特許文献4には、(6)式および(7)式に示すように見かけの脱N速度定数Kを発生COガス流量と真空度およびArガス流量の関数とした実験式を用い、操業中の排ガスの影響を考慮したモデルが開示されている。ここで[%N]は溶鋼中窒素濃度,[%N]は脱N前窒素濃度,tは脱N時間,Kは見かけの脱N反応速度,QArは処理中のポーラスAr流量,QCOは処理中に発生する排ガス中COガス流量,Pは真空度である。
【0016】
【数6】
【0017】
【数7】
【0018】
しかし、これは反応サイト界面積という考え方で整理されていないため、化学反応速度定数と反応サイト界面積のバランスが実験条件と大きく異なる場合には適用できず、汎用性に欠けることが問題であり、実操業におけるオンラインでの予測モデルとしては不十分である。
【0019】
このように、反応サイト界面積Sは推定が難しく、熱力学的,速度論的な検証に余地が多いために、脱窒素終了判定モデルとしては不十分であり、これに伴い、処理時間の延長が課題である。
【0020】
特許文献1には、それまで解析の対象とされていなかったCrおよびFeの平衡状態からずれた酸化現象をも考慮して物質収支を勘案した脱Nモデルを用いて操業を制御することにより、それまでの解析方法によるAOD操業の操業方法では解決できなかった操業の適格な制御を可能とする発明が開示されている。しかし、特許文献1にも反応サイト界面積Sの導出は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特公平01−0544110号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】鉄と鋼,73(1987),1559頁
【非特許文献2】鉄と鋼,84(1998),16頁
【非特許文献3】鉄と鋼,60(1974),1443頁
【非特許文献4】CAMP−ISIJ Vol.10(1997),958頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、従来の技術が有する上述の課題を解決するものであり、例えばVOD工程における脱窒素処理の終了を、高い推定精度で判定できるモデルを用いて脱窒素処理を過剰に行うことなく、例えばNi系ステンレス鋼やNi基高合金、具体的には、Cr含有量およびNi含有量が合計で50%以上の高合金、Cr含有量およびNi含有量が合計で50%以上であるとともにNi含有量が20%以上であるNi基高合金またはNi系ステンレス鋼等の合金を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者は、上記課題を解決するための鋭意検討を重ねた結果、真空脱ガス設備内に配置された取鍋に収容された溶湯にランスを用いて酸素吹錬を行うとともに取鍋底部に設けたポーラスプラグからArを吹き込んで溶湯を撹拌することによって脱炭、脱窒素および成分均一化を図るVOD工程において、真空脱ガス設備を用いた脱窒素モデルとしてはこれまで用いられていない排ガス情報を用いて窒素濃度の推移を予測する窒素推移予測モデル、具体的には、脱窒素反応が起こる反応サイトを取鍋溶鋼自由表面と、溶鋼中気泡表面との二つに分け、溶鋼中気泡表面積は、排ガス情報から得られるAr、COおよびCOのガス発生速度の関数で正確に定義できるため、脱窒素反応が進行する反応サイト界面積を精度よく推定可能なN推移予測モデルを用いれば、上記課題を解決できること知見し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
【0025】
(1)真空脱ガス設備内に配置された取鍋に収容された溶湯に、ランスを用いて酸素吹錬を行うとともに取鍋底部に設けたポーラスプラグからArを吹き込んで撹拌することによって、脱炭、脱窒素および成分均一化を図りながら合金を製造する際に、取鍋溶湯自由表面と、脱炭中のAr、COおよびCOのガス発生速度に基づいて得られる、脱炭で発生したCOとCO気泡およびArの気液界面とを反応サイトとする反応サイト界面積を用いる脱窒素終了判定モデルを用いて脱窒素の終了タイミングを推定し、推定した脱窒素の終了タイミングに基づいて脱窒素処理を終了することを特徴とする合金の製造方法。
【0026】
(2)前記合金は、高合金、Ni基高合金またはNi系ステンレス鋼である(1)項に記載された合金の製造方法。
【0027】
(3)前記高合金はCr含有量およびNi含有量が合計で50%以上の高合金であり、前記Ni基高合金はCr含有量およびNi含有量が合計で50%以上であるとともにNi含有量が20%以上であるNi基高合金である(2)項に記載された合金の製造方法。
【0028】
(4)前記脱炭、脱窒素および成分均一化はVOD工程で行なわれる(1)項から(3)項までのいずれか1項に記載された合金の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、Ar、COおよびCOそれぞれのガス発生速度から脱窒素モデルを構築した結果、実績窒素濃度と計算による推定窒素濃度は、±10ppm程度の精度で一致するようになり、高精度で窒素濃度を推定することが可能になり、本発明で用いる脱窒素モデルの適用により高合金鋼のVOD処理時間を、従来よりも例えば6分間短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、Ni系ステンレス鋼,Ni基高合金の製造工程の一例を示す説明図である。
図2図2は、脱窒素反応の概要を示す説明図である。
図3図3は、脱窒素反応モデルの考え方を示す説明図である。
図4図4は、Ar、COおよびCOそれぞれのガス発生速度と計算による脱窒素反応サイト面積との関係を示すグラフである。
図5図5は、モデルによる窒素濃度の推移を示すグラフである。
図6図6は、実績窒素濃度とモデルによる推定窒素濃度とを比較して示すグラフである。
図7図7は、脱窒素時間分布の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付図面を参照しながら本発明を説明する。以降の説明では、合金がNi系ステンレス鋼(オーステナイト系ステンレス鋼(18%Cr−8%Ni)または二相系ステンレス鋼(25%Cr−7%Ni−3%Mo))である場合を例にとるが、本発明は、例えばNi系ステンレス鋼やNi基高合金、具体的には、Cr含有量およびNi含有量が合計で50%以上の高合金、Cr含有量およびNi含有量が合計で50%以上であるとともにNi含有量が20%以上であるNi基高合金またはNi系ステンレス鋼等の合金にも適用可能である。
【0032】
1.本発明の着想ポイントおよびメカニズム
(1−1)着想ポイント
本発明で用いる脱窒素終了判定モデルは、脱窒素反応が、取鍋溶鋼自由表面のみならず、Ar、COおよびCOそれぞれのガス気泡表面で起こるとの発想に立脚して構築される。
【0033】
この発想に至った経緯は、VOD工程での脱窒素処理において排ガス流量、すなわちAr、COおよびCOのガス発生速度が大きい脱炭期における脱窒素速度が、Al,Si等による脱酸後の高真空脱窒素時における脱窒素速度よりも高いことである。つまり、脱窒素反応への寄与度は、真空度やAr流量の影響よりも発生ガス界面積のほうが大きい。
【0034】
そこで、Ar、COおよびCOのガス発生速度と脱窒素反応サイト面積との関係を見出すことにより、実操業でオンラインでの窒素濃度の推移を正確に予想できる脱窒素終了判定モデルを構築することに想到した。
【0035】
(1−2)メカニズム
本発明における脱窒素終了判定モデルの内容を説明する。
【0036】
図3は、脱窒素反応モデルの考え方を示す説明図である。図3に示すように、脱窒素終了判定モデルは、下記(i)〜(iv)の内容で構成される。
【0037】
(i)脱N反応;−d[%N]/dt=k・(A+B)/V・[%N]で記述(二次速度式)
脱窒素反応を二次速度式(8)により記述する。
【0038】
【数8】
【0039】
(ii)脱N反応サイト;脱炭時のCO気泡界面(A)+取鍋溶鋼自由表面(B)
次に、化学反応速度kを(9)式に示すように表面活性元素の関数として記述する。
【0040】
【数9】
【0041】
ここで,a;脱窒素後の酸素活量,a;脱窒素後の硫黄活量である。
図2は、脱窒素反応の概要を示す説明図である。図2に示すように、脱窒素反応は、脱炭により発生したCOおよびCO気泡、Arそれぞれの気液界面(反応サイト:A)と、取鍋溶鋼自由表面(反応サイト:B)とを反応サイトとして、起こる。
【0042】
(iii)反応サイト界面積AとAr+CO+COガス発生速度の関係を実績から算出
図4は、Ar、COおよびCOのガス発生速度と計算による脱窒素反応サイト面積との関係を示すグラフである。なお、図4のグラフは、実施例において後述するように、Ni基高合金I(20%Cr−40%Ni)、Ni基高合金II(30%Cr−60%Ni)およびNi系ステンレス鋼IIIについて、VOD工程での脱窒素処理における結果である。
【0043】
図4のグラフおよび下記(10)式に示すように、計算により算出した計算反応サイト面積Aは、脱炭中のAr、COおよびCOのガス発生速度であるAr+CO+COガス発生速度に比例する。
【0044】
【数10】
【0045】
一方、反応サイトBは(11)式に示すように取鍋溶湯自由表面である。
【0046】
【数11】
【0047】
(iv)排ガス情報(ガス発生速度)とkを用い[%N]変化を予測
ここで、計算反応サイト面積Aは、CO、COおよびArによる溶鋼中気泡の気液界面積であるとして、脱炭中のAr、COおよびCOのガス発生速度に基づいて得られる、脱炭で発生したCOとCO気泡およびArの気液界面とを反応サイトとする反応サイト界面積と、上述した(2)式により示される化学反応速度定数kとを用いて、[%N]変化を予測することにより、脱窒素の終了タイミングを推定する。
【0048】
そして、推定した脱窒素の終了タイミングに基づいて脱窒素処理を終了する。
本発明によれば、取鍋溶鋼自由表面(反応サイト:B)とともに、脱炭により発生したCOおよびCO気泡、Arそれぞれの気液界面(反応サイト:A)を考慮して、[%N]変化を予測するため、高精度で窒素濃度を推定することが可能になり、これに伴い、脱窒素処理時間の適正化および短縮化を図ることができる。
【実施例】
【0049】
表1〜3に、本実施例で試験に供したNi基高合金I,II、Ni系ステンレス鋼(SUS304)IIIの化学成分を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
これらの供試材I〜IIIを真空脱ガス設備内に配置された取鍋に収容し、収容された溶湯に、ランスを用いて酸素吹錬を行うとともに取鍋底部に設けたポーラスプラグからArを吹き込んで撹拌することによって、脱炭、脱窒素および成分均一化を図るVOD工程を経て、本発明に係る製造方法により、Ni基高合金I,II、Ni系ステンレス鋼(SUS304)IIIを製造した。
【0054】
この際に、本発明に係る製造法を用いて、[%N]変化を予測することにより脱窒素の終了タイミングを推定し、推定した脱窒素の終了タイミングに基づいて脱窒素処理を終了した。
【0055】
図4は、本実施例における、Ar、COおよびCOのガス発生速度と計算による脱窒素反応サイト面積との関係を示すグラフである。
【0056】
図4に示す関係を用い、(2)式から算出した反応サイト界面積SとAr、COおよびCOのガス発生速度VAr+CO+CO2とには(12)式の比例関係が認められた。
【0057】
【数12】
【0058】
ここで、S=A+B,Bは取鍋溶湯自由表面積,AはCO、COおよびArによる溶湯中気泡の気液界面積,VAr+CO+CO2は排ガス情報から計算されるAr,COおよびCOのガス発生速度である。
【0059】
この関係とオンラインで逐次プロコンから抽出される排ガス情報を用いて脱窒素挙動を計算した。
【0060】
図5は、モデルによる窒素濃度の推移を示すグラフである。図5のグラフには、あるヒートにおける,Ar、COおよびCOのガス発生速度とモデルによる窒素濃度の推移の計算結果を示す。
【0061】
図5のグラフに示すように、このモデルは、窒素濃度の推移を高精度で推定できており、これにより、脱窒素の終了判定を正確に行って余分な脱窒素を省略することができた。
【0062】
図6は、実績窒素濃度とモデルによる推定窒素濃度とを比較して示すグラフであり、図7は、脱窒素時間分布の変化を示すグラフである。
【0063】
図6のグラフに示すように、実績窒素濃度と本発明で用いるモデルによる推定窒素濃度とは±10ppmの高精度で一致したことがわかる。
【0064】
また、図7のグラフに示すように、本発明により、VOD工程における脱窒素処理時間が平均で6分間短縮できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7