(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接続切替部は、アノードが前記第1端子に接続され且つカソードが前記第2端子に接続されたダイオードを有し、前記ダイオードは、前記第1電圧が前記第2電圧としきい値電圧とを加算した電圧以上になったときに前記第1端子から前記第2端子に電流を流す、請求項1に記載の近接センサ。
前記第1遅延回路は、前記第1端子に接続された第1コンデンサと、前記第1コンデンサに接続された第1抵抗素子とを有し、前記第1時定数は、前記第1コンデンサの容量及び前記第1抵抗素子の抵抗値により規定され、
前記第2遅延回路は、前記第1コンデンサに並列接続された第2コンデンサと、前記第2コンデンサに接続された第2抵抗素子とを有し、前記第2時定数は、前記第2コンデンサの容量及び前記第2抵抗素子の抵抗値により規定される、請求項1〜3の何れか一項に記載の近接センサ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による近接センサを、図を参照しつつ説明する。この近接センサは、金属体の通過による検出コイルの磁束の変化に応じて大きさが変化する検知電流が供給される第1遅延回路及び第2遅延回路と、接続切替部とを有する。検知電流は、金属体が検出コイルに近接しているときに供給されず、金属体が検出コイルに近接していないときに供給される。第1遅延回路は、検知電流が供給される第1端子を有し、検知部から入力される検知電流に応じて第1端子の第1電圧を、金属体の非検出を示す非検出レベルから金属体の検出を示す検出レベルとの間で遷移させるときに第1時定数に応じて遅延させる。第2遅延回路は、第1遅延回路に並列接続され且つ第2端子を有し、検知部から入力される検知電流に応じて第2端子の第2電圧を、検出レベルに対応する電圧から非検出レベルに対応する電圧に遷移させるときに第1時定数より大きい第2時定数に応じて遅延させる。接続切替部は、第1端子と第2端子との間に配置され、第1電圧が第2電圧以上であるときに、第1端子と第2端子との間を接続する。第2時定数が第1時定数より大きいので、金属体が検出コイルに接近し検知電流の供給が停止し第1コンデンサ及び第2コンデンサが放電されるとき、接続切替部は、第1端子と第2端子との間の接続を遮断し続ける。一方、金属体が離反し検知電流の供給が開始されるときに、第1電圧が第2電圧以上になると、接続切替部が第1端子と第2端子との間を接続するので、検知電流は第1遅延回路及び第2遅延回路の双方に供給される。検知電流が第1遅延回路及び第2遅延回路の双方に供給されることにより、第1電圧の立上り遅延を大きくすることができる。これにより、この近接センサは、金属体の接近に応じて検知電流が変化してから出力信号が遷移するまでの出力遅れ時間を変更することなく、金属体の離反に応じて検知電流が変化してから出力信号が遷移するまでの出力遅れ時間を操作し、出力時間を大きく設定することができる。以下、金属体の接近に応じて検知電流が変化してから出力信号が遷移するまでの出力遅れ時間は、検出遅れ時間と称され、金属体の離反に応じて検知電流が変化してから出力信号が遷移するまでの出力遅れ時間は、非検出遅れ時間と称される。以下の説明では、遊技機で使用される遊技球を検知対象の金属体の一例として使用して実施形態に係る近接センサについて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る近接センサを備える遊技機の概略斜視図である。
【0017】
遊技機1は、上部から中央部の大部分の領域に設けられた遊技盤2と、下部に配設された玉受け部3及び発射ハンドル4などで構成される。遊技機1では、遊技者が発射ハンドル4を回動させると、遊技機1に内蔵された発射制御装置(図示せず)が、一定の発射間隔で、その回転角に応じた発射速度で遊技球を発射する。発射された遊技球は、遊技盤2の側方に設けられたレール5に沿って上方へ移動し、遊技盤2上に設けられた多数の障害釘6の間を落下する。そして、その落下する遊技球が、実施形態に係る近接センサを含む入賞口装置7に入ると、実施形態に係る近接センサは、遊技球が通過したときに検出コイルにより発生される磁束が変化することにより遊技球を検知する。実施形態に係る近接センサは、入賞口装置7を通過した遊技球を検出したことを示す出力信号を、近接センサに接続された制御装置(図示せず)に出力する。制御装置が入賞したと判定した場合、所定個数の遊技球を、遊技盤2の背面に設置された賞球払出装置(図示せず)を通じて玉受け部3へ払い出す。さらに、遊技盤2の略中央部に配設された表示装置8は、入賞の有無などに応じて様々に変化する遊技情報を遊技者に表示する。
【0018】
図2は、入賞口装置7に配置される実施形態に係る近接センサの分解斜視図である。
【0019】
近接センサ10は、筐体101と、第1シールド部材102と、基板103と、第2シールド部材104と、カバー105とを有する。基板103は、樹脂製のコイルスプール106が圧入されると共に、後に詳細に説明される検知部、遅延回路、接続切替部及び判定回路が搭載される。コイルスプール106の外周には検出コイル21が巻回される。近接センサ10は、遊技球が貫通口Hを通過するときに、検出コイル21により発生される磁束が変化することにより遊技球の近接及び離反を検知する。
【0020】
図3は、近接センサ10の回路ブロック図である。
【0021】
近接センサ10は、検出コイル21と、検知部22と、第1遅延回路23と、第2遅延回路24と、接続切替部25と、判定回路26とを有する。検知部22、第1遅延回路23、第2遅延回路24、接続切替部25及び判定回路26は、基板103に搭載される。検知部22は、発振回路30と、検波回路31と、pnpトランジスタである第1トランジスタ32を有する。第1遅延回路23は、第1コンデンサ40と、第1抵抗素子41と、第1端子42とを有し、第2遅延回路24は、第2コンデンサ50と、第2抵抗素子51と、第2端子52とを有する。接続切替部25は、ダイオード60を有する。判定回路26は、比較回路33と、出力回路34とを有する。
【0022】
検出コイル21は、貫通口Hの周囲を巻回すように配置され、遊技球の接近及び離反に応じて磁束が変化する。発振回路30は、遊技球の接近及び離反による検出コイル21の磁束の変化に応じて出力信号が変化する。発振回路30は、検出コイル21に遊技球が近接していないときの検出コイル21の磁束に応じて、所定の振幅の発振信号V1を出力する。検出コイル21に遊技球が接近していくと、検出コイル21の磁束が徐々に変化し、発振回路30は、発振信号V1の振幅を徐々に小さくし、検出コイル21に遊技球が近接している間、発振信号V1の出力を停止する。検出コイル21に近接していた遊技球が離反していくと、発振回路30は、発振信号V1の振幅を徐々に大きくし、検出コイル21から遊技球が離反すると再び所定の振幅の発振信号V1を出力し始める。
【0023】
検波回路31は、発振回路30から入力される発振信号V1の振幅に応じて信号レベルが変化する検波信号V2を出力する。発振回路30から所定以上の振幅の発振信号V1が入力されるとき、検波回路31はLレベルの検波信号V2を出力し、発振回路30から入力される発振信号V1の振幅が所定値未満のとき、検波回路31はHレベルの検波信号V2を出力する。遊技球が検出コイル21に徐々に接近するとき、検波回路31から出力される検波信号の振幅は、発振信号V1の振幅の減少に応じて徐々に増大する。また、遊技球が検出コイル21に徐々に離反するとき、検波回路31から出力される検波信号V2の振幅は、発振信号V1の振幅の増大に応じて徐々に減少する。
【0024】
第1トランジスタ32は、エミッタが電源電圧Vccに接続され、コレクタが第1遅延回路23の第1端子42及びダイオード60のアノードに接続され、ベースに入力される電流に応じてオンオフされる。第1トランジスタ32は、検波信号V2の信号レベルが電源電圧Vccとベース―エミッタ間電圧Vbeとの差よりも小さくなりベース電流が流れるとオンして定電流である検知電流Ioを流す。また、第1トランジスタ32は、検波信号V2の信号レベルが電源電圧Vccとベース―エミッタ間電圧Vbeとの差よりも大きくなりベース電流が流れなくなるとオフする。
【0025】
第1遅延回路23の第1コンデンサ40及び第1抵抗素子41の一端は第1端子42を介して第1トランジスタ32のコレクタに接続され、第1コンデンサ40及び第1抵抗素子41の他端は接地される。第1遅延回路23の時定数τ1は、第1コンデンサ40の容量C1及び第1抵抗素子41の抵抗値R1から、
τ1 = C1*R1 (1)
で示される。
【0026】
第2遅延回路24の第2コンデンサ50及び第2抵抗素子51の一端は第2端子52を介してダイオード60のカソードに接続され、第2コンデンサ50及び第2抵抗素子51の他端は接地される。第2遅延回路24の時定数τ2は、第2コンデンサ50の容量C2及び第2抵抗素子51の抵抗値R2から、
τ2 = C2*R2 (2)
で示される。第2遅延回路24の時定数τ2が第1遅延回路23の時定数τ1よりも大きくなるように、第1コンデンサ40及び第2コンデンサの容量C1及びC2並びに第1抵抗素子41及び第2抵抗素子51の抵抗値R1及びR2のそれぞれが定められる。
【0027】
以下、第1トランジスタ32から検知電流Ioの供給の変化に応じて遷移する第1遅延回路23の第1端子の第1電圧V3及び第2遅延回路24の第2端子の第2電圧V4の遅延特性について説明する。
【0028】
まず、第1トランジスタ32から検知電流Ioが供給されなくなり、第1電圧V3及び第2電圧V4が立ち下がるときの立下り波形について説明する。第1トランジスタ32から検知電流Ioが供給されて第1コンデンサ40及び第2コンデンサ50の双方に電荷が充電されているとき、第1電圧V3は、第2電圧V4よりダイオード60のカットイン電圧Vzだけ高くなっている。第1トランジスタ32からの検知電流Ioの供給が停止すると、第1コンデンサ40は第1時定数τ1に応じた遅延時間で立ち下がり、第2コンデンサ50は第1時定数τ1よりも大きな値である第2時定数τ2に応じた遅延時間で立ち下がる。第2時定数τ2が第1時定数τ1よりも大きいので、第1トランジスタ32からの検知電流Ioの供給が停止して第1電圧V3及び第2電圧V4の双方が立ち下がるとき、双方の電圧差は徐々に小さくなり、やがて双方の電圧は逆転する。このため、第1電圧V3が立ち下がるとき、第1電圧V3が第2電圧V4とダイオード60のカットイン電圧Vzとを加算した電圧以上になることはなく、ダイオード60はオフし続ける。このため、第1電圧V3及び第2電圧V4が立ち下がるとき、第1遅延回路23と第2遅延回路24との間の接続は、ダイオード60によって遮断されて、第1電圧V3及び第2電圧V4は個別に放電されることになる。よって、第1トランジスタ32から検知電流Ioが供給されなったときの第1電圧V3の立下り波形は、第1時定数τ1及び電源電圧Vccから、
V3=Vcc*exp(−t/τ1) (3)
と示される。また、このときの第2電圧V4の立下り波形は、第2時定数τ2、電源電圧Vcc及びダイオード60のカットイン電圧Vzから、
V4=(Vcc−Vz)*exp(−t/τ2) (4)
と示される。第2電圧V4の立下り波形は、第1電圧V3の立下り波形に対して定常項がダイオード60のカットイン電圧Vzの分だけ低い第1電圧V3の立下り波形に対応した波形となる。
【0029】
次に、第1トランジスタ32から検知電流Ioが供給されて、第1電圧V3及び第2電圧V4が立ち上がるときの立上り波形について説明する。第1トランジスタ32からの検知電流Ioの供給が停止されて第1電圧V3及び第2電圧V4が立ち下がっている間、第1電圧V3は第2電圧V4よりも小さいのでダイオード60はオフしている。したがって、第1トランジスタ32からの検知電流Ioの供給が開始され、ダイオード60がオフしている間は、第1遅延回路23のみに検知電流Ioが供給される。このときの第1電圧V3の立上り波形は、
V3=R1*Io{1−exp(−t/τ1)} (5)
で示される。一方、第1トランジスタ32からの検知電流Ioの供給が開始され、ダイオード60がオフしている間は、第2遅延回路24に検知電流Ioは供給されず、第2電圧V4は式(4)に従って下降し続けている。
【0030】
第1電圧V3が上昇すると共に第2電圧V4が下降して、双方の電位差がダイオード60のカットイン電圧Vz以上になると、ダイオード60がオンする。ダイオード60がオンすると、検知電流Ioは第1遅延回路23及び第2遅延回路24の双方に供給されることになる。このときの、第1電圧V3の立上り波形は、
V3=R1//R2*(Io+Vz/R2)*Io{1−exp(−t/τ3)} (6)
と示される。ここで、IoはVz/R2よりも非常に大きいので、
V3≒R1//R2*Io{1−exp(−t/τ3)} (7)
と近似される。R1//R2は第1抵抗素子41及び第2抵抗素子51の合成抵抗であり、
R1//R2=R1*R2/(R1+R2) (8)
で示される。また、τ3はダイオード60がオンしたときの第3時定数であり、
τ3=(C1+C2)*(R1//R2) (9)
で示される。第3時定数τ3は、第1コンデンサ40及び第2コンデンサ50の容量を加算した値(C1+C2)を、第1抵抗素子41及び第2抵抗素子51の合成抵抗(R1//R2)の積なので、第1時定数τ1よりも大きい値になる。ダイオード60がオンしているとき、第2電圧V4は第1電圧V3よりもダイオード60のカットイン電圧Vzだけ小さくなり、第2電圧V4の立上り波形は、
V4≒R1//R2*Io{1−exp(−t/τ3)}−Vz (10)
と示される。ダイオード60がオンした後の第1電圧V3及び第2電圧V4は、第1時定数τよりも大きい第3時定数τ3に応じて立ち上がる。第2電圧V4の立上り波形は、第1電圧V3の立上り波形に対して定常項がダイオード60のカットイン電圧Vzの分だけ低い第1電圧V3の立上り波形に対応した波形となる。
【0031】
ダイオード60がオンした後の第1電圧V3は、第1時定数τよりも大きい第3時定数τ3に応じて立ち上がることにより、ダイオード60がオンすることなく第1時定数τ1に応じて第1電圧V3が上昇したときの立上り時間よりも長くなる。また、式(5)に示すように、第1遅延回路23のみに検知電流Ioが供給された場合の定常項はR1*Ioであるのに対し、ダイオード60がオンした後の定常項は、式(7)に示すように、R1//R2*Ioである。R1//R2はR1より小さいので、近接センサ10における第1電圧の立上り時間は、ダイオード60がオンすることなく第1時定数τ1に応じて第1電圧V3が上昇したときの立上り時間よりも更に長くなる。
【0032】
比較回路33は、コンパレータ70と、電源71と、第3抵抗素子72と、第4抵抗素子73と、第5抵抗素子74とを有し、シュミットトリガ回路を形成する。比較回路33は、第1電圧V3が立上り遷移するとき、信号レベルが第1しきい値VSHになる比較信号V5と第1電圧V3とを比較する。比較回路33は、第1電圧V3の大きさである電圧レベルが第1しきい値VSH以上であるときに、第1電圧V3が非検出レベルであると判定する。また、比較回路33は、第1電圧V3が立下り遷移するとき、信号レベルが第2しきい値VSLになる比較信号V5と第1電圧V3とを比較する。比較回路33は、第1電圧V3の大きさである電圧レベルが第2しきい値VSL以下であるときに、第1電圧V3が検出レベルであると判定する。出力回路34は、npnトランジスタである第2トランジスタ75と、第6抵抗素子76と、第7抵抗素子77とを有する。出力回路34の出力信号V7は、比較回路33から第2トランジスタ75のベースに入力される比較結果を示す比較信号V6の信号レベルに応じて、信号レベルが変化する。出力回路34は、比較信号V6の信号レベルがLレベルのとき、遊技球を検出していないことを示すHレベルの出力信号V7を制御装置(図示せず)に出力する。また、出力回路34は、比較信号V6の信号レベルがHレベルのとき、遊技球を検出していることを示すLレベルの出力信号V7を制御装置に出力する。
【0033】
図4は、近接センサ10の動作を示すタイミングチャートを示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、符号401が示す波形は発振信号V1を示し、符号402が示す波形は検波信号V2を示す。また、符号403が示す波形は第1電圧V3を示し、符号404が示す波形は第2電圧V4を示す。また、符号405が示す波形は比較信号V5を示し、符号406が示す波形は比較信号V5を示し、符号407が示す波形は出力信号V7を示す。また、符号408が示す波形はダイオード60がオンせず第1遅延回路23のみに検知電流Ioが流れた場合の第1電圧V3を示す。
図4において、期間(a)及び(e)は金属体である遊技球が検出コイル21から離反している状態を示し、期間(b)は遊技球が検出コイル21に接近していく状態を示す。期間(c)は遊技球が検出コイル21に近接している状態を示し、期間(d)は遊技球が検出コイル21から離反していく状態を示す。
【0034】
発振回路30は、期間(a)及び(e)に示すように、遊技球が検出コイル21から離反している状態では、Aoの振幅を有する発振信号V1を出力する。期間(a)に続く期間(b)では、遊技球が検出コイル21に接近していくに従って、発振回路30が出力する発振信号V1の振幅はAoから徐々に減少していき、遊技球が検出コイル21に近接している期間(c)では発振信号V1は出力されなくなる。次いで、期間(d)では、遊技球が検出コイル21から離反していくに従って、発振回路30が出力する発振信号V1の振幅は徐々に増加していき、期間(e)では発振信号V1の振幅はAoに戻る。
【0035】
矢印Aで示すように、検波信号V2の信号レベルが電源電圧Vccと第1トランジスタ32のベース―エミッタ間電圧Vbeとの差よりも大きくなりベース電流が流れなくなると、第1トランジスタ32がオフして検知電流Ioの供給を停止する。検知電流Ioの供給が停止されると、第1電圧V3は、式(3)に示すように、第1時定数τ1に応じた立下り波形で下降する。このとき、第2電圧V4は、式(4)に示すように、第2時定数τ2に応じた立下り波形で下降する。第1時定数τ1が第2時定数τ2より小さいので、第1電圧V3が立ち下がるとき、第1電圧V3は第2電圧V4とダイオード60のカットイン電圧Vzとを加算した値よりも大きくなることはなく、ダイオード60はオフし続ける。
【0036】
第1電圧V3が第2しきい値VSLよりも小さくなると、比較回路33が比較信号をLレベルからHレベルに遷移させることに応じて、出力回路34は、遊技球の検出を示すLレベルの出力信号V7を出力する。遊技球が検出コイル21に近接してから出力回路34が遊技球の検出を示す出力信号V7を出力するまでの検出遅れ時間Δt1は、第1遅延回路23の第1時定数τ1に応じて規定される。
【0037】
矢印Bで示すように、検波信号V2が電源電圧Vccと第1トランジスタ32のベース―エミッタ間電圧Vbeとの差よりも小さくなりベース電流が流れると、第1トランジスタ32がオンして検知電流Ioの供給を開始する。検知電流Ioの供給が開始されると、第1電圧V3は、式(5)に示すように、第1時定数τ1に応じた立上り波形で上昇する。このとき、ダイオード60がオフして検知電流Ioが供給されないため、第2電圧V4は、下降し続けている。
【0038】
第1電圧V3が上昇すると共に第2電圧V4が下降して、双方の電位差がダイオード60のカットイン電圧Vz以上になると、ダイオード60がオンして、第1トランジスタ32から第2遅延回路24への電流の供給が開始される。第1トランジスタ32がオンしてからダイオード60がオンするまでの時間は、
図4ではΔt21で示される。
【0039】
第1トランジスタ32がオンしてから時間Δt21経過後にダイオード60がオンした後は、第1電圧V3は、式(7)に示すように、第3時定数τ3に応じた立上り波形で上昇する。このとき、第2電圧V4は、式(10)に示すように、第3時定数τ3に応じた立上り波形で上昇する。
【0040】
ダイオード60がオンしてから時間Δt22経過後に、第1電圧V3が第1しきい値VSHよりも大きくなると、比較回路33が比較信号をHレベルからLレベルに遷移させ、出力回路34は、遊技球の非検出を示すHレベルの出力信号V7を出力する。
【0041】
遊技球が検出コイル21から離反し始めてからダイオード60がオンするまでの時間Δt21は、第1遅延回路23の第1時定数τ1に応じて規定される。また、ダイオード60がオンしてから出力回路34が遊技球の非検出を示すHレベルの出力信号V7を出力するまでの時間Δt22は、第1時定数τ1よりも大きい第3時定数τ3に応じて規定される。
【0042】
検出コイル21に近接していた遊技球が検出コイル21から離反し始めてから出力回路34が遊技球の非検出を示す出力信号V7を出力するまでの非検出遅れ時間Δt2は、時間Δt21及びΔt22を加算した時間である。非検出遅れ時間Δt2は、第1時定数τ1よりも大きい第3時定数τ3に応じた時間Δt22を含むので、ダイオード60がオンすることなく第1時定数τ1に応じて第1電圧V3が上昇したときの時間Δt3よりも長くなる。
【0043】
以上に説明してきたように、この近接センサは、第1遅延回路と第1遅延回路より時定数が大きい第2遅延回路と、第2遅延回路への電流の流入を制御する接続切替部とを有することにより、最小限の回路構成で非検出遅れ時間を大きくすることができる。すなわち、遊技球が検出コイルに接近して第1遅延回路の第1端子の第1電圧が立下り遷移するとき、接続切替部が第1端子と第2遅延回路の第2端子との間の接続を遮断するため、第1電圧は、第1遅延回路の第1時定数に応じて立下り遷移する。一方、遊技球が検出コイルから離反して第1電圧が立上り遷移するとき、第1電圧が第2電圧とダイオードのカットイン電圧とを加算した電圧以上になると接続切替部が第1端子と第2端子との間を接続する。接続切替部が第1端子と第2端子との間を接続すると、第1電圧は、式(7)に示す立上り波形に応じて立上り遷移する。式(7)に示す波形は、第1時定数よりも大きい第3時定数に応じて遷移するとともに、式(7)の定常項は式(5)に示す第1遅延回路23のみに検知電流Ioが供給された場合の定常項よりも小さい。したがって、接続切替部が第1端子と第2端子との間を接続して第1電圧が式(7)に示す立上り波形に応じて立上り遷移することにより、この近接センサは、第1電圧の立上り遷移に応じて規定される非検出遅れ時間を大きくすることができる。
【0044】
次に、第2実施形態に係る近接センサについて説明する。第2実施形態に係る近接センサでは、接続切替部は、第1遅延回路の第1端子の第1電圧と第2遅延回路の第2端子の第2電圧とを比較して第1電圧が第2電圧以上であるときに、第1遅延回路の第1端子と第2遅延回路の第2端子とを接続する。第2実施形態に係る近接センサでは、ダイオードのカットイン電圧の分だけ第1実施形態に係る近接センサよりも早く第1遅延回路の第1端子と第2遅延回路の第2端子とを接続することができるので、非検出遅れ時間をより大きくすることができる。
図5は、第2実施形態に係る近接センサの回路ブロック図である。
【0045】
第2実施形態に係る近接センサ11は、ダイオード60を有する接続切替部25の代わりに接続切替部27が配置されることが、
図3に示される第1実施形態に係る近接センサ10と相違する。そこで、以下では第1実施形態と相違する接続切替部27について説明する。なお、近接センサ11の接続切替部27以外の構成素子は、第1実施形態に係る近接センサ10と同様な構成及び機能を有するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
第2実施形態に係る接続切替部27は、コンパレータ61と、第3トランジスタ62とを有する。コンパレータ61は、一方の入力端子に第1端子42が接続され、他方の入力端子に第2端子52が接続され、出力端子に第3トランジスタ62のベースが接続される。第3トランジスタ62は、エミッタに第1端子42が接続され、コレクタに第2端子52が接続される。コンパレータ61は、第1電圧V3と第2電圧V4とを比較する比較回路であり、第1電圧V3が第2電圧V4以上になったときに、第3トランジスタ62のベースに電流を流す。第3トランジスタ62は、電流経路を形成する電流経路形成素子であり、第1電圧V3が第2電圧V4以上になったときに流れるベース電流に応じて、第1端子42から第2端子52に電流を流す。
【0047】
図6は、近接センサ11の動作を示すタイミングチャートを示す図である。
図6において、横軸は時間を示し、符号601〜608のそれぞれは、
図4に示される401〜408と同様の波形である。
図6に示される期間(a)〜(e)のそれぞれは、
図4に示される期間(a)〜(e)と同様の期間である。
【0048】
矢印Aで示す時点において、第1トランジスタ32がオフして検知電流Ioの供給を停止すると、第1電圧V3は、式(3)に示すように、第1時定数τ1に応じた立下り波形で下降する。このとき、矢印Aで示す時点において第1電圧V3と同電位であった第2電圧V4は、式(4)に示すように、第2時定数τ2に応じた立下り波形で下降する。第1時定数τ1が第2時定数τ2より小さいので、第1電圧V3が立ち下がるとき、第1電圧V3は第2電圧V4とよりも大きくなることはなく、第3トランジスタ62はオフし続ける。遊技球が検出コイル21に近接してから出力回路34が遊技球の検出を示す出力信号V7を出力するまでの検出遅れ時間Δt1は、第1遅延回路23の第1時定数τ1に応じて規定される。
【0049】
矢印Bで示す時点において、第1トランジスタ32がオンして検知電流Ioの供給を開始すると、第1電圧V3及び第2電圧V4は、式(5)に示すように、第1時定数τ1に応じた立上り波形で上昇する。このとき、第1電圧よりも第2電圧の方が大きいので、第3トランジスタ62はオフして、第2電圧V4は、下降し続けている。
【0050】
第1電圧V3が上昇して、第1電圧V3が第2電圧V4以上になると、第3トランジスタ62がオンして、第1トランジスタ32から第2遅延回路24への電流の供給が開始される。第1トランジスタ32がオンしてから第3トランジスタ62がオンするまでの時間は、
図6ではΔt21で示される。
【0051】
第1トランジスタ32がオンしてから時間Δt21経過後に第3トランジスタ62がオンした後は、第1電圧V3及び第2電圧V4は、同電位になり、式(7)に示すように、第3時定数τ3に応じた立上り波形で上昇する。
【0052】
検出コイル21に近接していた遊技球が検出コイル21から離反し始めてから出力回路34が遊技球の非検出を示す出力信号V7を出力するまでの非検出遅れ時間Δt2は、時間Δt21及びΔt22を加算した時間である。非検出遅れ時間Δt2は、第1時定数τ1よりも大きい第3時定数τ3に応じた時間Δt22を含むので、第3トランジスタ62がオンすることなく第1時定数τ1に応じて第1電圧V3が上昇したときの時間Δt3よりも長くなる。
【0053】
以上に説明してきたように、この近接センサは、接続切替部は、ダイオードを使用することなくコンパレータとトランジスタとで構成される。これにより、この近接センサは、ダイオードのカットイン電圧の分だけ第1実施形態に係る近接センサよりも早く第1遅延回路の第1端子と第2遅延回路の第2端子とを接続することができるので、非検出遅れ時間をより大きくすることができる。
【0054】
次に、第3実施形態に係る近接センサについて説明する。第3実施形態に係る近接センサでは、判定回路は直流2線式出力回路として構成される。第3実施形態に係る近接センサでは、遊技球が検出コイルに近接しているときの判定回路からの出力信号は、近接センサに流入する電流の大きさに依存する。第3実施形態に係る近接センサでは、遊技球が検出コイルに近接しているときに近接センサに流入する電流の大きさは略一定値であるので、遊技球が検出コイルに近接しているときの出力信号を略一定値に維持することができる。
図7は、第3実施形態に係る近接センサの回路ブロック図である。
【0055】
第3実施形態に係る近接センサ12は、判定回路26の代わりに判定回路28が配置されることが、
図3に示される第1実施形態に係る近接センサ10と相違する。そこで、以下では第1実施形態と相違する判定回路28について説明する。なお、近接センサ12の判定回路28以外の構成素子は、第1実施形態に係る近接センサ10と同様な構成及び機能を有するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
第3実施形態に係る判定回路28は、比較回路33と、出力回路35と、定電圧回路36と、第9抵抗素子37とを有する直流2線式出力回路である。出力回路35は、第2トランジスタ75、第6抵抗素子76及び第7抵抗素子77に加えて、第8抵抗素子78と、第4トランジスタ79と、ツェナーダイオード80とを有する。第8抵抗素子78は、一端が第2トランジスタ75のコレクタに接続され、他端が第4トランジスタ79のベースに接続される。第4トランジスタ79は、コレクタがツェナーダイオード80のアノードに接続され、エミッタが接地される。ツェナーダイオードのカソードは、定電圧回路36及び第9抵抗素子37の一端に接続される。第9抵抗素子37の他端は、一端が電源電圧Vsに接続された負荷抵抗素子107の他端に接続される。
【0057】
近接センサ12の出力電圧Voutは、第9抵抗素子37と負荷抵抗素子107との間の電圧である。遊技球が検出コイルから離反しているときの近接センサ12の出力電圧Vout1は、
Vout1=VZD1+(VS−VZD1)*R9/(R9+RL) (11)
で示される。ここで、VZD1はツェナーダイオード80のツェナー電圧であり、R9は第9抵抗素子37の抵抗値であり、RLは負荷抵抗素子107の抵抗値である。一方、遊技球が検出コイルに近接しているときの近接センサ12の出力電圧Vout2は、
Vout2=Vs−RL*I9 (12)
で示される。ここで、RLは負荷抵抗素子107の抵抗値であり、I9は負荷抵抗素子107を流れる第9電流である。第9電流I9は、定電圧回路36の流入する第6電流I6と第2トランジスタ75のエミッタ電流である第7電流I7とから、
I9=I6+I7 (13)
と示される。また、第6電流I6は、発振回路30に流入する第1電流I1、検波回路31に流入する第2電流I2、第1トランジスタ32のエミッタ電流である第3電流I3、コンパレータ70に流入する第4電流I4及び第5抵抗素子74に流入する第5電流I5から、
I6=I1+I2+I3+I4+I5 (14)
と示される。遊技球が検出コイルに近接しているとき、発振回路30は発振を停止し、第1トランジスタ32はオフするため、第1電流I1及び第3電流I3は略ゼロである。また、第2電流I2、第4電流I4、第5電流I5及び第7電流I7は、遊技球が検出コイル21に近接している間は略一定の値になる。このため、近接センサ12は、遊技球が検出コイルに近接している間、近接センサ12の出力電圧Vout2を略一定値に維持することができる。
【0058】
以上に説明してきたように、この近接センサは、近接センサに流入する電流の大きさは略一定値であるので、遊技球が検出コイルに近接しているときの出力信号を略一定値に維持することができる。
【0059】
説明された各実施形態では、第1遅延回路23及び第2遅延回路24はCR回路であるが、近接センサは、CR回路の代わりにLCR回路等の他の遅延回路を有してもよい。また、説明された実施形態では、近接センサは、入賞口装置を通過した遊技球の検出に使用されるが、賞球払出装置等、遊技機が備える他の装置を通過する遊技球の検出に使用されてもよい。また、説明された実施形態では、近接センサは遊技球の検出に使用されるが、他の金属体の検出に使用されてもよい。このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。