特許第6379961号(P6379961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379961
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】芝育成装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20180820BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20180820BHJP
【FI】
   A01G7/00 601A
   A01G1/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-207493(P2014-207493)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-73252(P2016-73252A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】十河 潔司
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0099895(US,A1)
【文献】 特開2005−312444(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然芝が植えられたピッチにおいて、前記天然芝を育成するための人工光を照射する照明部を備えた芝育成装置であって、
前記照明部を保持する支持部と、
前記照明部を移動させる移動部と、
前記照明部の上方を覆うカバー部と、
前記人工光を照射した前記ピッチにおける位置を取得し、データ記憶部に記録する記録部とを備えたことを特徴とする芝育成装置。
【請求項2】
前記ピッチに関する環境条件に応じて、前記照明部の前記人工光の強度を調整可能とする光強度調整部を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の芝育成装置。
【請求項3】
前記光強度調整部は、前記照明部が地面に対する距離を変更することにより、光強度を変更し、
前記照明部は、前記カバー部との相対位置を変更可能に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の芝育成装置。
【請求項4】
前記移動部及び前記支持部は、飛行体により構成されており、
前記照明部は、前記飛行体に吊り下げられて支持されることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の芝育成装置。
【請求項5】
前記データ記憶部に記録された位置情報に基づいて、ピッチにおける設置予定位置に配置するように前記移動部を制御する制御部に接続したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の芝育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランド等において、スポーツに用いられる芝(ターフ)を育成する芝育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サッカーや陸上競技等を行なう建築物として、芝(ターフ)を用いたピッチを備えているスタジアムがある。このスタジアムには、競技規則上の必要性や安全性、又は使用時の感触の点から、天然芝を用いているものもある。しかし、天然芝は、激しい運動等によって傷みやすく、また、天候による太陽光の照射状態や通気性によって生育状態が変化するため、育成することが難しい。そこで、天然芝を育成するために、ピッチに人工光を照射する方法や照明装置が検討されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持ち、躯体が起伏自在且つ移動自在とされ、通常は起立状態で場内の照明装置として機能し、伏状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、天然芝が植えられた全天候型の競技場に設置された光源に、その光源を天然芝に対して近離させる可動装置を設け、光源を天然芝に近づけて補光する全天候型の競技場に於ける天然芝の維持管理方法が記載されている。この特許文献2には、競技場の天井に設置された光源を、天然芝に近づけて補光する技術が開示されている。更に、下方に人工光の照射可能な光源を具備した芝刈車を走行させて補光する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/147391号
【特許文献2】特開2001−78573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、通常は場内の照明装置として用いるため、装置が大型化し、ピッチに人工光を照射する場合には、芝に自重が掛かり、芝を傷める可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術においては、天井に設置された光源を天然芝に近づけて補光する場合には、設備が大掛かりになる。また、屋根付きでない競技場に適用することはできない。更に、芝刈車を走行させる場合には、自重が大きくなり、芝を傷める可能性がある。更に、人工光を効率よく照射させることも難しかった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で芝を傷め難くしながら効率よく光を照射して芝を育成するための芝育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する芝育成装置は、天然芝が植えられたピッチにおいて、前記天然芝を育成するための人工光を照射する照明部を備えた芝育成装置であって、前記照明部を保持する支持部と、前記照明部を移動させる移動部と、前記照明部の上方を覆うカバー部とを備える。これにより、雨天時にも、カバー部が降雨の影響を抑制し、芝に人工光を照射することができる。また、構成が簡易であるため、自重による芝への影響を軽減し、効率的に芝を育成することができる。
【0010】
上記芝育成装置において、前記人工光を照射した前記ピッチにおける位置を取得し、データ記憶部に記録する記録部を更に備えることが好ましい。これにより、芝育成装置を配置した位置を記録し、この記録に基づいて次に人工光を照射する位置を決定することができる。従って、過去の芝育成装置の配置位置に基づいて、次に配置する位置を決定することができるので、効率よく人工光を照射することができる。
【0011】
上記芝育成装置において、前記ピッチに関する環境条件に応じて、前記照明部の前記人工光の強度を調整可能とする光強度調整部を更に備えることが好ましい。これにより、環境条件に応じて決定された人工光の強度を調整することにより、環境条件に応じた強度で人工光を照射することができる。
【0012】
上記芝育成装置において、前記光強度調整部は、前記照明部が地面に対する距離を変更することにより、光強度を変更し、前記照明部は、前記カバー部との相対位置を変更可能に取り付けられていることが好ましい。これにより、照明部の地面からの距離を変更することにより光強度を容易に変更することができる。また、照明部とカバー部との相対距離を変更することにより、照明部の周囲の通気性を確保することができる。
【0013】
上記芝育成装置において、前記移動部及び前記支持部は、飛行体により構成されており、前記照明部は、前記飛行体に吊り下げられて支持されることが好ましい。これにより、照明部をピッチ上に配置した場合でも、芝育成装置の自重が芝の上にかからないようにすることができるので、芝育成中に芝を傷つける恐れを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素な構成で、照明部の下方の芝に対して、効率よく人工光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の芝育成装置の斜視図。
図2】第1の実施形態の芝育成装置の図であり、(a)及び(b)は連結部材が収縮した状態の正面図及び右側面図、(c)及び(d)は連結部材が伸長した状態の正面図及び右側面図。
図3】第1の実施形態の芝育成装置の機能ブロック図。
図4】第1の実施形態の芝育成処理の処理手順を示す流れ図。
図5】第2の実施形態の芝育成装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図4を用いて、芝育成装置を具体化した第1の実施形態について説明する。本実施形態の芝育成装置は、サッカー等を行なう競技場に植えられた天然芝を育成する。
【0017】
図1は、本実施形態の芝育成装置10の斜視図である。
図1に示すように、芝育成装置10は、芝(天然芝)に光を照射する照明部11、この照明部11の上方に配置された天板12、天板12に照明部11を連結する連結部材13、天板12を支持するフレーム部14、フレーム部14の下に取り付けられた複数の車輪15を備えている。
【0018】
照明部11は、複数のLED(Light Emitting Diode)部11aが取付板11bに一体化して取り付けられて構成されている。各LED部11aは直管形状をしており、複数のLED部11aを並列させた状態で取り付けられている。各LED部11aは、人工光を下方に向かって照射する。照明部11は、取付板11bの中央に設けられた連結部材13によって天板12に取り付けられている。照明部11の各LED部11aは、図示しない電線を介して図示しないスイッチに接続されている。本実施形態では、スイッチを制御することによって、照明部11を、全灯、半灯又は全消灯にすることができる。
【0019】
天板12は、カバー部として機能し、照明部11のすべてのLED部11aの上方を覆う大きさ及び位置で配置されている。本実施形態の天板12は、方形状をした剛性がある薄板で構成される。天板12の各角は、フレーム部14の後述する縦フレーム14aに上下動可能に固定されている。
【0020】
次に、図2を用いて、照明部11の可動構造について説明する。ここで、図2(a)及び図2(c)は、芝育成装置10の正面図、図2(b)及び図2(d)は、芝育成装置10の右側面図である。また、図2(a)及び図2(b)は、後述する照明部11が上方に位置した状態、図2(c)及び図2(d)は、照明部11が下方に位置した状態を示している。
【0021】
図2に示すように、連結部材13は、リンク機構を用いた伸縮構造を有しており、図示しない昇降操作部の操作によって長さが可変になる。この連結部材13が伸縮することにより、照明部11の配置位置(天板12からの距離)を変更できる。そして、縦フレーム14aに対する天板12の上下位置の変更、及び連結部材13との伸縮により、地面から照明部11までの距離を変更することができる。本実施形態では、地面(ピッチ)からの距離と点灯状態(全灯又は半灯)とを変更することにより、ピッチに照射する光の強度を調整する。
【0022】
図1に示すように、フレーム部14は支持部として機能し、縦方向に延在する4つの縦フレーム14aと、横方向に延在する4つの横フレーム14bと、取手フレーム14cとを備えている。各横フレーム14bは、天板12の辺に対応する下方の位置において、縦フレーム14aの2つを連結する。取手フレーム14cは、2つの縦フレーム14aの上端部同士を架け渡す形状をしている。この取手フレーム14cは、LED部11aの延在方向と平行となるように配置されている。
各縦フレーム14aの下端部には、移動部として機能する車輪15が、回転可能に取り付けられている。本実施形態では、車輪15として、ターフタイヤや球状のタイヤ(例えばオムニホイール(登録商標)など)を用いる。
【0023】
次に、図3を用いて、この芝育成装置10の機能ブロックについて説明する。
芝育成装置10は、制御部21、これに接続された入出力部25及び光強度変更部26を備えている。入出力部25は、タッチパネルディスプレイを用いて構成する。この入出力部25は、芝育成装置10を設置する予定位置を表示する。更に、入出力部25は、設置した位置の入力を取得する。光強度変更部26は、制御部21からの信号に応じて、昇降操作部により連結部材13の伸縮の制御、照明部11の点灯状態の制御(全灯、半灯又は全消灯)を行なう。
また、芝育成装置10は、図示しない電源を備えている。この電源は、制御部21、入出力部25、光強度変更部26及びLED部11aに電力を供給する。
【0024】
制御部21は、制御手段(CPU、RAM、ROM等)を備え、照明強度を制御して、芝育成装置10の配置を管理する。更に、この制御部21はシステムタイマを内蔵する。更に、制御部21は、芝育成装置10のピッチ配置マップに関するデータを記憶している。
【0025】
このピッチ配置マップは、芝育成装置10によって照射を行なうピッチの形状を示したマップである。このマップは、芝育成装置10の照射面積で分割した領域(区画領域)毎に分割されている。そして、ピッチ配置マップデータには、各区画領域に対して、各領域を特定するための領域識別子、ピッチ上の位置、照射順番が関連付けられて含まれている。本実施形態では、各区画領域に対して1つの順番が付与されている。
【0026】
制御部21は、照明設定データ記憶部22及び照明履歴データ記憶部23に接続されている。
照明設定データ記憶部22は、環境条件に応じて設定する照明強度に関するデータが記録されている。本実施形態では、環境条件として季節(年月日の期間)を用いる。また、照明強度としては、照明部11の地面(ピッチ)からの高さ及び点灯状態を用いる。
【0027】
照明履歴データ記憶部23は、ピッチにLED光を照射した実績に関する履歴データが記録される。この照明履歴データには、照明開始日時、照明終了日時、照明強度及び配置場所に関するデータが含まれる。
【0028】
照明開始日時データ領域及び照明終了日時データ領域には、照明を開始及び終了した年月日及び時刻に関するデータが記録される。
照明強度データ領域には、この期間において用いた照明の強度に関するデータが記録される。この照明の強度は、照明部11の地面からの高さと点灯状態(全灯又は半灯)によって決まる。
配置場所データ領域には、この期間において実際に設置された照明の配置場所を特定する情報(領域識別子)に関するデータが記録される。
【0029】
次に、図4を用いて、芝育成装置10を用いた芝育成方法について説明する。
まず、芝育成装置10の電源が投入された場合、芝育成装置10の制御部21は、設置予定位置の特定処理を実行する(ステップS1)。具体的には、制御部21は、システムタイマから現在日を特定し、この現在日よりも前(過去)の照明履歴データを照明履歴データ記憶部23において検索する。
【0030】
ここで、過去の照明履歴データを抽出した場合には、制御部21は、照明履歴データ記憶部23に記録された履歴データを用いて最後の設置場所を特定する。具体的には、制御部21は、照明履歴データ記憶部23に記録された履歴データのうち、照射開始日時が最も遅い日時を特定する。そして、この日時から設置所要時間(例えば1時間)以内の照射開始日時の履歴データを特定する。そして、特定した履歴データの内、最も順番が遅い(最後に配置した区画領域の)領域識別子を特定する。次に、制御部21は、この領域識別子の次の順番の領域識別子を、設置予定位置として特定する。
【0031】
一方、過去の照明履歴データを抽出しなかった場合、又は特定した領域識別子が最後の順番の領域だった場合には、制御部21は、設置予定位置として、ピッチ配置マップの最初の順番の区画領域を特定する。
【0032】
次に、芝育成装置10の制御部21は、芝育成装置の配置処理を実行する(ステップS2)。具体的には、制御部21は、ピッチ配置マップを入出力部25に出力する。更に、制御部21は、このピッチを示す形状の上に、ステップS1において特定した区画領域の位置に関する情報を表示する。
【0033】
その後、作業者(グランドキーパー)が芝育成装置10を、入出力部25に表示された作業予定の区画領域に移動させる。そして、移動を完了した場合には、ピッチ配置マップに、移動先(作業予定)の区画領域に関する情報を入力する。この場合、芝育成装置10の制御部21は、入力により取得した設置位置を仮記憶する。
【0034】
そして、芝育成装置10の制御部21は、照明部の高さの設定処理を実行する(ステップS3)。具体的には、制御部21は、照明設定データ記憶部22から、現在日に対応する照明強度を取得する。そして、制御部21は、取得した照明強度を、光強度変更部26に指示する。この場合、光強度変更部26は、指示された照明強度になるように、昇降操作部を制御して連結部材13の伸縮及び照明部11の点灯状態を調整する。
【0035】
次に、芝育成装置10の制御部21は、照明開始日時の記録処理を実行する(ステップS4)。具体的には、制御部21は、現在時刻を照明開始日時として照明履歴データ記憶部23に記録する。更に、制御部21は、仮記憶していた設置位置及び制御した照明強度を照明履歴データ記憶部23に記録する。
【0036】
その後、芝育成装置10の制御部21は、照明終了日時の記録処理を実行する(ステップS5)。具体的には、芝育成に必要な照射時間が経過した場合、グランドキーパーは、入出力部25の画面上の終了ボタンを選択する。この場合、制御部21は、照明部11のLED部11aを全消灯する。次に、制御部21は、システムタイマから現在日時を特定し、この現在日時を、照明終了日時として今回の照明履歴データに記録する。
【0037】
本実施形態の芝育成装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の芝育成装置10は、下方に光を照射する照明部11と、照明部11の上部を覆う天板12と、天板12を支持するフレーム部14、フレーム部14の下に取り付けられた複数の車輪15を備えている。これにより、雨天時にも、天板12が雨を受け止めるため、降雨に影響されることなく、芝に人工光を照射することができ、効率よく芝を育成することができる。また、芝育成装置10の構成が簡易であるため、自重によって芝を傷め難く、効率よく芝を育成することができる。
【0038】
(2)本実施形態の芝育成装置10では、照明部11が、伸縮可能な連結部材13を介して天板12に取り付けられている。芝育成装置10の制御部21は、特定した照明強度になるように連結部材13の伸縮を変更する。これにより、照明部11の地面からの距離を変更し、芝育成に適した光強度に調節することができる。また、照明部11と天板12との距離を変更することにより、芝育成装置10内の通気性を確保することができる。
【0039】
(3)本実施形態の芝育成装置10は、天板12がフレーム部14に対して上下動可能に取り付けられている。これにより、地面からの照明部11の高さを一定にしても、照明部11と天板12との相対距離を変更することができる。
【0040】
(4)本実施形態の芝育成装置10は、人工光を下方に向かって照射するLED部11aを備えた照明部11を用いる。これにより、効率的に、ピッチの芝にLED光を照射することができる。また、上方に漏れたり反射したりする光は、天板12で反射させ、LED光を有効活用できる。
【0041】
(5)本実施形態の芝育成装置10の制御部21は、照明開始日時の記録処理(ステップS4)において、照明開始日時、設置位置及び照明強度を照明履歴データ記憶部23に記録する。これにより、今回の設置予定位置を効率的に特定することができる。
(6)本実施形態の芝育成装置10の制御部21は、照明部の高さの設定処理(ステップS3)において、現在日に対応する照明強度を、照明設定データ記憶部22において特定し、この照明強度となるように光強度変更部26を制御する。これにより、季節(年月日)に応じて、適切な照明強度に調整することができる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、図5を用いて芝育成装置を具体化した第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態における車輪15の代わりに気球35を用いる。
【0043】
具体的には、本実施形態の芝育成装置30は、芝に光を照射する照明部31、この照明部31の上方に配置された天板32、天板32に照明部31を一体的に連結する連結部材33、天板32を支持して移動可能とする気球35を備えている。気球35は、支持部及び移動部として機能する飛行体である。
【0044】
照明部31は、第1の実施形態の照明部11と同様に、複数のLED部31aが取付板31bに一体化して取り付けられている。この取付板31bの中央には、連結部材33を介して天板32が固定されている。天板32は、上記実施形態の天板12と同様に、照明部31のすべてのLED部31aの上方を覆う大きさ及び位置で配置されている。更に、天板32の各角には、気球35が取り付けられている。各気球35は、ロープを介して係留部材36に係留されている。係留部材36は、気球35に接続されているロープの長さを変更可能な構成を備えている。この係留部材36においてロープの長さを変更することにより、気球35の高さを調節する。そして、気球35に吊り下げられた天板32及び照明部11の配置位置を調整することができる。
【0045】
本実施形態においては、芝育成装置30の制御部21は、設置予定位置の特定処理(ステップS1)、芝育成装置の配置処理(ステップS2)、照明部の高さの設定処理(ステップS3)を実行する。この場合、芝育成装置30の制御部21は、係留部材36のロープの長さを変更することにより照明部31の高さを調整する。そして、芝育成装置30の制御部21は、照明開始日時の記録処理(ステップS4)及び照明終了日時の記録処理(ステップS5)を実行する。
【0046】
本実施形態の芝育成装置30によれば、上述した(4)〜(6)と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7)本実施形態の芝育成装置30は、下方に光を照射する照明部31と、照明部31の上部を覆う天板32と、天板32に取り付けられた気球35とを備えている。これにより、雨天時にも、天板32が雨を受け止めるため、降雨に影響されることなく、芝に人工光を照射することができ、効率よく芝を育成することができる。また、気球35によって芝育成装置30を移動可能に支持したので、照明部31をピッチ上に配置した場合でも、芝育成装置30の自重が芝にかからず、芝を傷つける可能性を少なくすることができる。
【0047】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第2の実施形態の芝育成装置30は、飛行体として気球35を用いた。照明部11を吊り下げて支持する飛行体は、気球35に限定されるものではない。例えば、移動可能な飛行船や遠隔制御の小型ヘリコプタ等を用いることも可能である。また、照明部を安定して支持できる構成であれば、各角を支持する構成でなくてもよい。例えば、2つの飛行体を両辺に配置する構成や、中心に1つの飛行体を設けて支持する構成を用いることが可能である。また、芝育成装置10を使用しない場合には、飛行体を、他の用途(例えば、広告等)に使用してもよい。この場合には、照明部の下方に広告幕や広告板等を吊り下げる。
【0048】
・上記各実施形態の芝育成装置10,30のカバー部としての天板12,32は、方形状の剛性がある薄板から構成した。照明部の上方を覆うカバー部は、照明部の上方に配置されて照明部を覆う形態であれば、この形状及び材質に限定されるものではない。例えば、可撓性がある材質等を用いることができる。
【0049】
・上記各実施形態の芝育成装置10,30は、直管形状をしたLED部11aを並列させた照明部11を備えた。芝育成装置10,30の照明部11,31の構成は、複数列にLED部を並べて構成してもよい。更に、複数列のLED部を列毎に折り畳み可能又は組み立て可能な構成にしてもよい。これにより、芝育成装置10,30を使用しない場合の収納空間を小さくできるとともに、人工光を一度に照射する範囲を広くして、芝育成を広く行なうことができる。
【0050】
・上記各実施形態の芝育成装置10,30の制御部21は、季節(年月日の期間)に応じて照明強度を決定した。照明強度を決定する環境条件は、季節に限定されず、例えば、天候であってもよい。具体的には、制御部21に、季節や天候(天気、温度及び湿度等)に対応した照明強度を記憶部に記憶し、制御部21を、ネットワークを介して天気情報提供サーバに接続する。制御部21は、芝育成装置の配置処理(ステップS2)を実行した場合、天気情報提供サーバから、このピッチ位置の天候情報を取得する。そして、制御部21は、取得した天候情報及び季節に対応する照明強度を記憶部において特定する。これにより、季節や天候を考慮して、芝育成に適した強さの光を照射することができる。更に、天候情報及び季節から通気性に応じた照明部11と天板12との相対距離を特定し、この相対距離になるように天板12の高さ(縦フレーム14aに対する上下における位置)を特定する。これにより、照明強度及び通気性を考慮して光を芝に照射することができる。
【0051】
・上記各実施形態の芝育成装置10,30の制御部21は、配置する順番が区画領域に関連付けられたピッチ配置マップに関するデータを記憶している。ここで、区画領域によっては、繰り返して複数回の照射を行なう順番を付与したり、生育状態のよい区画領域は照射を省略する順番を付与したりしてもよい。例えば、ゴール前等、芝の生育が不足している部分を繰り返して重点的に配置するようなピッチ配置マップを用いてもよい。
【0052】
・上記各実施形態において、各芝育成装置10,30は、制御部21を備えている。これに代えて、各芝育成装置に通信部を設け、この通知部を用いて、複数の芝育成装置を集中管理する制御部を設けてもよい。この場合、制御部は、各芝育成装置の移動を制御して、芝育成装置を、設置予定位置に遠隔操作で配置してもよい。
【0053】
・上記各実施形態において、芝育成装置10,30の制御部21は、照明終了日時の記録処理を実行する(ステップS5)。具体的には、照射時間が経過した場合、グランドキーパーは、入出力部25の画面上の終了ボタンを選択する。これに代えて、制御部21が、照明部11のLED部11aを全消灯するようにしてもよい。この場合には、照明設定データ記憶部22には、環境条件(例えば、季節)に応じて、消灯時刻を記録しておく。そして、システムタイマから取得した現在日時が、照明設定データ記憶部22に記録された消灯時刻になった場合、照明部11のLED部11aを全消灯する。
【符号の説明】
【0054】
10,30…芝育成装置、11,31…照明部、11a,31a…LED部、11b,31b…取付板、12,32…天板、13,33…連結部材、14…フレーム部、14a…縦フレーム、14b…横フレーム、14c…取手フレーム、15…車輪、21…制御部、22…照明設定データ記憶部、23…照明履歴データ記憶部、25…入出力部、26…光強度変更部、35…気球、36…係留部材。
図1
図2
図3
図4
図5