(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インナーライナーが、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有する、インナーライナー用ゴム組成物で形成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
本発明の空気入りタイヤ(本発明のタイヤ)は、
インナーライナーとカーカスとを有し、
前記カーカスを形成するカーカスコートゴムと前記インナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
4.0≦M300
(Carcass)/M300
(IL)≦7.0 (1)
60℃における前記インナーライナーの空気透過係数が4.2×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤである。
【0011】
本発明のタイヤは、M300
(Carcass)/M300
(IL)(M300
(IL)に対するM300
(Carcass)の比率)及びインナーライナーの空気透過係数が特定の範囲であることによって、耐久性と亀裂発生の抑制とを高度に両立できる。
この理由は明らかではないが概ね次のように考えられる。
即ち、M300
(Carcass)/M300
(IL)が特定の範囲であることによって亀裂の発生を抑制し、インナーライナーの空気透過係数が特定の範囲であることによって耐久性(例えば酸素に対する耐久性)に優れる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤについて添付の図面を用いて以下に説明する。本発明の空気入りタイヤは添付の図面に限定されるものではない。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例について、そのタイヤ子午線方向の部分断面を模式的に表す断面図である。
【0013】
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるタイヤトレッド部3からなる。
左右一対のビード部1間にカーカス4が装架されている。カーカスは、カーカスコートゴムに例えばスチールコードのような金属や繊維が埋設されている(図示せず。)。
空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が設けられている。
カーカス4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りに内側から外側に折り返されて巻き上げられている。ビードフィラー6は2つの部材から構成される場合もあり、その場合上部は上ビードフィラー6aであり、下部は下ビードフィラー6bである。
タイヤトレッド部3においては、カーカス4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。
本発明のタイヤは、インナーライナーを接着させるために、カーカスとインナーライナーとの間にタイゴムを有してもよい。
【0014】
本発明において、カーカスを形成するカーカスコートゴムとインナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たす。
4.0≦M300
(Carcass)/M300
(IL)≦7.0 (1)
M300
(Carcass)/M300
(IL)は、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労特性に優れるという観点から、4.0<M300
(Carcass)/M300
(IL)<7.0が好ましく、
4.5〜6.5であるのがより好ましく、4.5より大きく5.9未満が更に好ましい。
【0015】
M300
(Carcass)は、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労特性に優れるという観点から、10.0〜22.0であるのが好ましく、12.0〜20.0であるのがより好ましい。
M300
(IL)は、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労性に優れるという観点から、
1.5〜6.0であるのが好ましく、2.0〜5.0であるのがより好ましい。
【0016】
また、本発明において、60℃におけるインナーライナーの空気透過係数が4.2×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPa以下である。
インナーライナーの空気透過係数は、耐久性により優れるという観点から、4.0×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPa以下であるのが好ましく、3.9×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPa以下であるのがより好ましく、3.8×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPa以下であるのが更に好ましい。
【0017】
本発明のタイヤが有するインナーライナーを形成するために使用されるゴム組成物(インナーライナー用ゴム組成物)は、ゴムを含有する組成物である。
インナーライナー用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴムが好ましい。
【0018】
ハロゲン化ブチルゴムは特に制限されない。ハロゲン化ブチルゴムは、ブチルゴムを臭素や塩素などでハロゲン化したものである。具体的には例えば、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムが挙げられる。
【0019】
インナーライナー用ゴム組成物は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分(又はジエン系ゴム。以下同様。)100質量部中、ブチルゴムを50質量%以上含むのが好ましく、75〜100質量%がより好ましい。この場合ブチルゴムはハロゲン化ブチルゴムであるのが好ましい。
【0020】
インナーライナー用ゴム組成物は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、更に層状又は板状粘土鉱物(粘土鉱物ともいう)を含有するのが好ましい。
インナーライナー用ゴム組成物が更に含有することができる層状又は板状粘土鉱物は、タイヤのインナーライナーとした際の耐屈曲性や低温耐久性を維持しつつ、空気透過性をより低減するために使用することができる。
層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、タルク(例えば、HARタルク),マイカ,長石,シリカ、アルミナ、これらの含水複合体;モンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,膨潤性マイカなどが挙げられる。
【0021】
粘土鉱物は、有機化されたものであってもよい。ここで、有機化された粘土鉱物とは、有機オニウムイオンによって有機化されたものをいう。有機オニウムイオンは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0022】
層状又は板状粘土鉱物の中でも、耐久性により優れ、耐空気透過性に優れるという観点から、タルクが好ましい。
タルクとしては、例えば、HARタルクのような板状のタルクが挙げられる。
層状又は板状粘土鉱物の平均粒径(平均ストークス相当径)は、7.9μm以下が好ましく、4.9〜7.1μmがより好ましい。
層状又は板状粘土鉱物の平均アスペクト比は、3.0〜7.0が好ましく、3.4〜5.4がより好ましい。
粘土鉱物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
層状又は板状粘土鉱物の量は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労性に優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、5.0〜50.0質量部であるのがより好ましい。
また、層状又は板状粘土鉱物の量は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分(又はジエン系ゴム)100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有するのが好ましく、5.0〜50.0質量部であるのがより好ましい。
【0024】
インナーライナー用ゴム組成物は、更に、カーボンブラック;層状又は板状粘土鉱物以外の無機充填剤や添加剤などの通常用いられる配合剤を添加することができる。
インナーライナー用ゴム組成物に更に含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、インナーライナーのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、GPF、T−NSが好ましい。
カーボンブラックの量は、インナーライナーのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、
20〜50質量部であるのが好ましい。
【0025】
添加剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤、加硫促進剤、加工助剤、老化防止剤、可塑剤、カップリング剤などのインナーライナー用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができる。これらの配合剤の量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
インナーライナー用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することにより製造することができる。
インナーライナー用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0026】
本発明のタイヤが有するカーカスを形成するために使用されるゴム組成物(カーカス用ゴム組成物)は、ゴムを含有する組成物である。カーカス用ゴム組成物によって、カーカスコートゴムが形成される。
カーカス用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、インナーライナー用ゴム組成物に含有されるジエン系ゴムと同様のものが挙げられる。なかでも、耐久性、亀裂発生の抑制により優れ、耐空気透過性に優れるという観点から、天然ゴム、ブチルゴムが好ましい。
【0027】
カーカス用ゴム組成物は、更に、カーボンブラック、コバルト化合物を含有することができる。
カーカス用ゴム組成物に更に含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、HAFやFEFが好ましい。
カーボンブラックの量は、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、35〜75質量部であるのが好ましく、45〜75質量部であるのが好ましい。
【0028】
カーカス用ゴム組成物が更に含有することができるコバルト化合物はコバルトを有する化合物であれば特に制限されない。中でも、ワイヤーとの接着性に優れるという観点から、CoO、Co
2O
3、Co
3O
4のような酸化コバルト;ステアリン酸コバルトのようなコバルトのカルボン酸塩であるのが好ましく、酸化コバルト、コバルトのアルキルカルボン酸塩がより好ましい。アルキルカルボン酸が有するアルキル基の炭素数は1〜20個が好ましい。コバルト化合物はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。コバルト化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
コバルト化合物の量は、ワイヤーとの接着性に優れるという観点から、ゴム成分(又はジエン系ゴム)100質量部に対して、0.1〜6.0質量部であるのが好ましく、0.3〜3.0質量部であるのがより好ましい。
【0030】
カーカス用ゴム組成物は、更に、カーボンブラック以外の無機充填剤や添加剤などの通常用いられる配合剤を添加することができる。無機充填剤は特に制限されない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルクが挙げられる。添加剤は上記と同様である。
添加剤は上記と同様である。
カーカス用ゴム組成物に含有される硫黄の量は、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、3.0〜10.0質量部であるのが好ましい。
【0031】
カーカス用ゴム組成物はその製造について特に限定されない。具体的には、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混合する方法などが挙げられる。
カーカス用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0032】
本発明のタイヤは、その製造について特に制限されない。例えば、上記のインナーライナー用ゴム組成物、カーカス用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法で製造することができる。
また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【0033】
本発明のタイヤは、一般車両、重荷重車輌のタイヤ(重荷重タイヤ)として使用することができる。重荷重車輌としては、例えば、トラック、バス、トラクターが挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<カーカス用ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第1表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、カーカス用ゴム組成物を製造した。
<カーカスシートの製造>
上記のとおり製造されたカーカス用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmのカーカスシートを製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・カーボンブラック1:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・ステアリン酸:NOFコーポレーション社製、「ステアリン酸YR」
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・コバルト:ステアリン酸コバルト、商品名cost−F、大日本インキ化学工業社製
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーDZ−G」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
【0037】
<インナーライナー用ゴム組成物の製造>
下記第2表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第2表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、インナーライナー用ゴム組成物を製造した。
<インナーライナーシートの製造>
上記のとおり製造されたインナーライナー用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmのインナーライナーシートを製造した。
【0038】
【表2】
【0039】
第2表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・IIR:臭素化ブチルゴム、エクソンブチル268、エクソン化学社製
・カーボンブラック2:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・カーボンブラック3:GPF、シーストV、東海カーボン社製
・タルク:Imerys社製HARtalc、粒子径=5.7μm、アスペクト比Ar=4.7
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製、「エキストラクト4号S」
・ZnO:酸化亜鉛、正同化学工業社製、「酸化亜鉛3種」
・加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラー NS」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
【0040】
<空気入りタイヤの製造>
上記のとおり製造されたカーカス用ゴム組成物から製造されたカーカスと、上記のとおり製造されたインナーライナー用ゴム組成物から製造されたインナーライナーとを、第3表の組合せで有する、タイヤサイズ11R22.5のトラックバススチールラジアルタイヤを製造した。
【0041】
<評価>
以下の評価を行った。
・M300:上記のとおり製造されたカーカスシート、インナーライナーシートについて、JIS K 6251に準じて、300%伸長時のモジュラスを25℃の条件下で測定した。結果を第1表、第2表に示す。
・通気度:上記のとおり製造されたインナーライナーシートについて、JIS K 7126に準じて、60℃における通気度(空気透過係数)を測定した。値が小さいほど空気透過性が低く良好である。結果を第2表、第3表に示す。
【0042】
・N
2充填でのタイヤ耐久試験:上記のとおり製造された空気入りタイヤに窒素を充填させた状態(内圧900kPa)で、速度50km/h、30℃、荷重4500kg(所定の荷重の150%)で押し付け、30,000km走行させた。
完走した場合を亀裂発生の抑制に非常に優れるとして「A」と評価した。
完走しても、インナーライナーに微小なクラックが認められた場合は、亀裂発生の抑制に優れるとして「B」と評価した。
インナーライナーが界面で亀裂した場合、及び/又は、インナーライナー自体に亀裂が入った場合、亀裂発生の抑制が低いとして「C」と評価した。
結果を第3表に示す。
【0043】
・O
2充填でのタイヤ耐久試験:上記のとおり製造された空気入りタイヤに酸素を充填させた以外はN
2充填でのタイヤ耐久試験と同様に評価を行った。結果を第3表に示す。
この評価によって、酸素に対する耐久性を評価することができる。
なお、実施例1〜7、比較例2、3においてN
2充填でのタイヤ耐久試験の評価結果はAであったので、実施例1〜7、比較例2、3はインナーライナー等に亀裂はなく空気入りタイヤに破壊はなかった。実施例1、4〜6においては、O
2充填でのタイヤ耐久試験でもインナーライナー等に亀裂はなく空気入りタイヤに破壊はなかった。
【0044】
【表3】
【0045】
第3表に示す結果から明らかなように、M300
(Carcass)/M300
(IL)が所定の範囲を外れる比較例1、4〜6は、窒素充填でのタイヤ耐久性試験においてインナーライナーとカーカスとの界面で亀裂が生じ、空気入りタイヤが破壊し、亀裂発生の抑制ができなかった。M300
(Carcass)/M300
(IL)が所定の範囲外である場合、歪蓄積によりタイヤが故障すると考えられる。
比較例2、3は、窒素充填でのタイヤ耐久性試験において亀裂の発生がなく空気入りタイヤに破壊はなかった。しかし、比較例2、3においてインナーライナーの空気透過係数は4.2×10
-5mm
3・mm/mm
2・sec・MPaを超えるので、酸素に対する耐久性が悪かった。これは、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、熱と酸素によりインナーライナーが容易に酸化劣化し、その結果、硬度やモジュラス等が上昇することによって、インナーライナーにクラックが発生したと推測される。インナーライナーでのクラック発生によって空気透過性が更に悪くなる場合、酸素がよりタイヤ内部に透過するので、酸化劣化が顕著に現れると考えられる。
【0046】
これに対して、実施例1〜7は、窒素充填でのタイヤ耐久性試験において亀裂の発生がなく空気入りタイヤに破壊はなかった。また、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において空気入りタイヤに破壊がなく、酸素に対する耐久性に優れた。
同じインナーライナーを有する比較例5、実施例1、実施例3、比較例6を比較すると、窒素充填でのタイヤ耐久性試験において、比較例5、6では亀裂の発生があったが、実施例1、3では亀裂の発生等はなかった。また、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、実施例1は実施例3より酸素に対する耐久性により優れた。よって、M300
(Carcass)/M300
(IL)は5.9未満がより好ましいと言える。
同じインナーライナーを有する実施例2、4、5を比較すると、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、実施例4、5は実施例2より酸素に対する耐久性により優れた。よって、M300
(Carcass)/M300
(IL)は4.5より大きいことがより好ましいといえる。