特許第6379984号(P6379984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379984
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】固定極及び電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20180820BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20180820BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20180820BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H04R19/02
   H04R19/04
   H04R3/00 310
   H04R7/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-211642(P2014-211642)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-82376(P2016-82376A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼永 憲市
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−039555(JP,A)
【文献】 特開2013−145311(JP,A)
【文献】 特開2012−039597(JP,A)
【文献】 特開2009−124473(JP,A)
【文献】 特開平09−182190(JP,A)
【文献】 特開2006−055215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 7/04
H04R 19/02
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する振動体との間に静電容量を形成する固定極であって、
前記振動体に対向する第1領域と、
前記第1領域の縁より外側の領域を曲げ領域とし、当該固定極のフレームを形成する第2領域と、
を有する固定極。
【請求項2】
前記第2領域は、折り曲げられた領域を有する請求項1に記載の固定極。
【請求項3】
前記第2領域は、湾曲された領域を有する請求項1又は請求項2に記載の固定極。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の固定極を有する静電型の電気音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型の電気音響変換器及び電気音響変換器に用いる固定極に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、厚みの薄い平板形状の面スピーカに対して矩形の枠体をあてがうことが開示されている。また、特許文献2には、薄型の静電型スピーカの外縁部を枠体で挟むことが開示されており、特許文献3には、静電型スピーカの電極と振動体との間に絶縁体で枠型のスペーサを配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−039555号公報
【特許文献2】特開2013−145311号公報
【特許文献3】特開2012−39597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1−3の発明によれば、枠体によって矩形の形状を維持することができる。しかしながら、スピーカとは別に枠体を製造し、製造した枠体をスピーカに取り付ける作業が必要となる。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、静電型の電気音響変換器の本体とは別に枠体を製造して取り付けすることなく、静電型の電気音響変換器の形状を維持できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対向する振動体との間に静電容量を形成する固定極であって、前記振動体に対向する第1領域と、前記第1領域の縁より外側の領域を曲げ領域とし、当該固定極のフレームを形成する第2領域と、を有する固定極を提供する。
【0007】
本発明においては、前記第2領域は、折り曲げられた領域を有する構成としてもよい。
また、本発明においては、前記第2領域は、湾曲された領域を有する構成としてもよい。
また、本発明は、上記のいずれかの構成の固定極を有する静電型の電気音響変換器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静電型の電気音響変換器の本体とは別に枠体を製造して取り付けすることなく、静電型の電気音響変換器の形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る静電型電気音響変換器1の外観図。
図2】静電型電気音響変換器1の分解図。
図3】固定極20の展開図。
図4図1のA−A線断面図。
図5】静電型電気音響変換器1の断面の拡大図。
図6】凸部の位置の一例を示した図。
図7】静電型電気音響変換器1に係る電気的構成を示した図。
図8】変形例に係る固定極の展開図と断面の一部を示した図。
図9】変形例に係る固定極の展開図と断面の一部を示した図。
図10】変形例に係る固定極の展開図と断面の一部を示した図。
図11】変形例に係る固定極の斜視図。
図12】変形例に係る固定極の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る静電型電気音響変換器1の外観図、図2は、静電型電気音響変換器1の分解図、図3は、後述する固定極20U、20Lの展開図である。また、図4は、図1のA−A線断面図であり、図5は、静電型電気音響変換器1の断面を拡大した図である。図においては、直交するX軸、Y軸及びZ軸で方向を示しており、静電型電気音響変換器1を正面側から図1の矢印B方向へ見たときの左右方向をX軸の方向、前後方向をY軸の方向、高さ(上下)方向をZ軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「●」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。また、図中、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。なお、図中の各部材の寸法は、各部材の形状や位置関係を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0011】
静電型電気音響変換器1は、振動体10、固定極20U及び固定極20Lで構成されている。なお、本実施形態においては、固定極20Uと固定極20Lの構成は同じである。このため、固定極20Uと固定極20Lを区別する必要が特に無い場合は、符号の末尾の「L」及び「U」などの記載を省略する。
【0012】
上方向から見て矩形の振動体10は、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)またはPP(polypropylene:ポリプロピレン)などの絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっている。
【0013】
固定極20は、PETまたはPPなどの塑性及び絶縁性を有する合成樹脂のシート(絶縁層)、紙、導電性を有する金属の導電膜(導電層)、紙の順番で積層された部材である。固定極20は、上方向から見て矩形の形状となっており、振動体10に面する対向部201と、枠型の枠部202を有する。本実施形態においては、導電膜は、対向部201の領域においては積層され、枠部202の部分には積層されない構成となっている。また、枠部202の部分には、紙や導電膜を積層せず、絶縁層のみとしてもよい。また、固定極20は、紙を積層せず、合成樹脂、導電膜、合成樹脂の順で積層された構成であってもよい。
【0014】
固定極20のフレームを形成する枠部202(第2領域)は、図3の(a)に示した矩形の対向部201(第1領域)の縁より外側に設けられた曲げ領域である折り曲げ部204を折り曲げ、隣り合う枠部202同士を糊代203A及び糊代203Bに接着剤を塗布して張り合わせることにより形成される。
【0015】
折り曲げ部204は、第1領域211、第2領域212、第3領域213及び第4領域214を有する。枠部202を形成する際には、例えば、第4領域214と第3領域213の境界を谷折りした後、第3領域213と第2領域212の境界を谷折りする。次に、第2領域212と第1領域211の境界を谷折りした後、第1領域211と対向部201の境界を谷折りする。
図3の(b)は、折り曲げ部204を折り曲げたときの断面を示した図である。各領域を折り曲げた後、矩形の糊代203C及び第4領域214に接着剤を塗布し、対向部201に糊代203C及び第4領域214を接着する。また、台形の形状をした糊代203Aと第1領域211の境界を折り曲げ、隣り合う第1領域211同士を接着剤が塗布された糊代203Aで張り合わせ、矩形の形状をした糊代203Bと第3領域213の境界を折り曲げ、隣り合う第3領域213同士を接着剤が塗布された糊代203Bで張り合わせる。
【0016】
枠部202が形成されている固定極20においては、電圧が印加される対向部201は、対向する振動体10との間に静電容量を形成する領域となり、電圧が印加されない枠部202は、振動体10には対向せず、振動体10との間に静電容量を形成しない領域となる。なお、折り曲げる部分については、ミシン目や溝を設け、折り曲げが容易になるようにしてもよい。また、固定極20においては、枠部202となる部分については、合成樹脂の層を設けないようにしてもよい。
【0017】
また、固定極20は、表面から裏面に貫通する孔を複数有しており、空気及び音波の通過が可能となっている。また、固定極20は、対向部201の絶縁層の側において、平面部21と、平面部21に連なり振動体10の側に突出した複数の凸部22を有している。なお、図1〜3においては、この孔と凸部22の図示を省略している。
【0018】
円錐台の形状の凸部22は、本実施形態においては、エンボス加工により形成されており、図6に示したように、固定極20Lにおいては、左右方向及び前後方向へ予め定められた距離をおいて設けられている。また、図示を省略しているが、固定極20Uにおいても、固定極20Lと同様に、絶縁層の側において、固定極20Lの凸部22と対向する位置に、左右方向及び前後方向へ予め定められた距離をおいて凸部22が設けられている。なお、図6においては、前述した表面から裏面に貫通する複数の孔の図示を省略している。また、凸部22の形状は、円錐台に限定されず他の形状であってもよい。
【0019】
なお、図4、5に示した例では、固定極20Uの上側の面と、固定極20Lの下側の面にエンボス加工の金型による凹みがあるが、エンボス加工は、固定極20Uの上側の全面と、固定極20Lの下側の全面が平面となるように、片面エンボス加工であってもよい。また、複数の凸部22においては、平面部21から凸部22の上下方向の先端までの高さは均一であるのが好ましいが、所定の公差の範囲内であれば、均一でなくてもよい。
【0020】
振動体10と固定極20とを固着させる際には、凸部22の先端に接着剤を塗布し、固定極20Uの凸部22の先端と、固定極20Lの凸部22の先端とを対向させて固定極20Uと固定極20Lで振動体10を挟み、定盤上で上方向から圧力を加える。複数の凸部22は、平面部21から凸部22の上下方向の先端までの高さが均一であるため、固着後の振動体10から固定極20Uまでの距離は、平面部21から凸部22の上下方向の先端までの高さと同じとなり、振動体10から固定極20Lまでの距離も、平面部21から凸部22の上下方向の先端までの高さと同じとなる。振動体10において凸部22に接していない部分は、空気の層を挟んで固定極20Uと固定極20Lとの間に位置し、上下方向への振動が可能となる。また、固定極20と振動体10とを固着させた後においては、折り曲げて形成された枠部202により、固定極20の周縁の強度が増し、固定極20の強度が向上する。
【0021】
次に、静電型電気音響変換器1に係る電気的構成について説明する。図7に示したように、静電型電気音響変換器1には、音を表す音響信号が入力されるアンプ部130、変圧器110、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源120を備えた駆動回路100が接続される。
固定極20Uは、変圧器110の二次側の端子T1に接続され、固定極20Lは、変圧器110の二次側の他方の端子T2に接続される。また、振動体10は、抵抗器R1を介してバイアス電源120に接続される。変圧器110の中点の端子T3は、抵抗器R2を介して駆動回路100の基準電位であるグランドGNDに接続される。
アンプ部130には音響信号が入力される。アンプ部130は、入力された音響信号を増幅し、増幅された音響信号を出力する。アンプ部130は、音響信号を出力する端子TA1、TA2を有しており、端子TA1は、抵抗器R3を介して変圧器110の一次側の端子T4に接続され、端子TA2は、抵抗器R4を介して変圧器110の一次側の他方の端子T5に接続されている。
【0022】
アンプ部130に交流の音響信号が入力されると、入力された音響信号が増幅されて変圧器110の一次側に供給される。そして、変圧器110で昇圧された音響信号が固定極20に供給され、固定極20Uと固定極20Lとの間に電位差が生じると、固定極20Uと固定極20Lとの間にある振動体10には、固定極20Uと固定極20Lのいずれかの側へ引き寄せられるような静電力が働く。
【0023】
具体的には、端子T2から出力される第2音響信号は、端子T1から出力される第1音響信号とは信号の極性が逆となる。端子T1から極性がプラスの音響信号が出力され、端子T2から極性がマイナスの音響信号が出力されると、固定極20Uにはプラスの電圧が印加され、固定極20Lにはマイナスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている固定極20Uとの間の静電引力が弱まる一方、マイナスの電圧が印加されている固定極20Lとの間の静電引力が強まる。振動体10において凸部22に接していない部分は、振動体10に加わる静電引力の差に応じて固定極20L側に吸引力が働き、固定極20L側(下方向)へ変位する。
【0024】
また、端子T1から極性がマイナスの第1音響信号が出力され、端子T2から極性がプラスの第2音響信号が出力されると、固定極20Uにはマイナスの電圧が印加され、固定極20Lにはプラスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている固定極20Lとの間の静電引力が弱まる一方、マイナスの電圧が印加されている固定極20Uとの間の静電引力が強まる。振動体10において凸部22に接していない部分は、振動体10に加わる静電引力の差に応じて固定極20U側に吸引力が働き、固定極20U側(上方向)へ変位する。
【0025】
このように、振動体10が音響信号に応じて上方向又は下方向に変位し(撓み)、その変位方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音波が振動体10から発生する。発生した音波は、音響透過性を有する固定極20を通過して静電型電気音響変換器1の外部に音として放射される。
【0026】
本実施形態によれば、折り曲げて形成された枠部202がフレームとして機能するため、固定極20とは別にスペーサを取り付けなくとも、枠部202により静電型電気音響変換器1の周縁部の強度が向上し、静電型の電気音響変換器1の形状を維持することができる。また、本実施形態では、固定極20は、合成樹脂や紙、導電膜で形成されるため、静電型電気音響変換器1の重量を軽くすることができる。また、固定極20は、合成樹脂や紙など、安価な材料で作ることができるため、静電型電気音響変換器1を製造する際のコストを抑えることができる。
また、静電型電気音響変換器1を壁に配置した場合、枠部202が壁面に接し、枠部202の高さの分、壁面と対向部201との間には空間が確保される。この空間の空気が、固定極20に設けられた孔を介して移動するため、静電型電気音響変換器1を壁に配置しても、振動体10を振動させて音を放射することができる。
また、例えば、固定極20を金属板とする場合、固定極20に放音のための孔を形成すると、その工程でバリが発生するため、バリを除去する手間が必要となるが、本実施形態においては、固定極20は紙の層を有するため、固定極20に孔を設けるときに、プレス加工で孔を開けても、バリの発生を抑えることができる。
【0027】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0028】
上述した実施形態においては、対向部201の縁より外側の領域を折って曲げることにより枠部202が形成されているが、枠部202を形成する構成は、上述の実施形態の構成に限定されるものではない。
図8の(a)は、本発明の一変形例に係る固定極20Aの展開図であり、図8の(b)は、固定極20Aの枠部202Aの断面の拡大図である。図8の(a)に示したように、展開された状態で矩形の曲げ部204Aを加熱して塑性変形させることにより湾曲させ、枠部202A(第2領域)を円筒状に形成してもよい。また、曲げ部204Aに曲げる加工を施す場合には、円筒状ではなく、円筒状以外の形状、例えば、円筒を半分に割った半円筒の形状に曲げてもよい。
また、図9の(a)は、本発明の一変形例に係る固定極20Bの展開図であり、図9の(b)は、固定極20Bの枠部202Bの断面の拡大図である。展開された状態で矩形の折り曲げ部204Bを振動体10とは反対方向に折り曲げ、糊代203Aに接着剤を塗布して隣り合う折り曲げ部204Bに外側から張り合わせることにより枠部202B(第2領域)を形成し、固定極20の周縁の強度を向上させるようにしてもよい。
【0029】
上述した実施形態においては、展開された状態の固定極20において折り曲げられる部分は、固定極20の周縁部となっているが、周縁部に限定されるものではなく、他の部分を折り曲げてもよい。
図10の(a)は、本発明の一変形例に係る固定極20Cの展開図であり、図10の(b)は、固定極20Cの断面の一部を拡大した図である。図9に示した例と同様に、展開された状態で矩形の折り曲げ部204Cを振動体10とは反対方向に折り曲げ、糊代203Aに接着剤を塗布して隣り合う折り曲げ部204Cに張り合わせることにより枠部202Cを(第2領域)形成する。また、図10の(b)に示したように、第2の折り曲げ部205を振動体10とは反対側へ凸となるように折り曲げ、折り返し部206(第2領域)を形成するようにしてもよい。
この構成によれば、例えば、ポスターを枠部202Cに貼りつける場合、ポスターの中央部分が折り返し部206で支持されるため、ポスターを貼りやすく、また保持しやすくなる。また、折り返し部206の高さの分、ポスターと対向部201との間には空間が確保される。この空間の空気が、固定極20に設けられた穴を介して移動するため、静電型電気音響変換器1にポスターを貼りつけても、振動体10を振動させて音を放射することができる。
なお、図10に示した構成では、枠部202Cと折り返し部206の両方を有する構成であるが、枠部202Cを備えず、複数の折り返し部206を有する構成であってもよい。
【0030】
上述した実施形態においては、固定極20において、振動体10と対向する側とは反対側の面に絵や写真を印刷してもよい。また、このように固定極20に絵や写真を印刷する構成においては、印刷がされた後で放音用の孔を固定極20に開けるようにしてもよい。
【0031】
上述した実施形態においては、凸部22により振動体10と固定極20との間に隙間を確保しているが、固定極20に凸部22を設けない構成においては、振動体10と固定極20との間に不織布などスペーサとして機能する部材を配置することにより、振動体10と固定極20との間に隙間を確保するようにしてもよい。
【0032】
上述した実施形態においては、展開された状態で平らな固定極20を曲げることにより、枠部や折り返し部を形成しているが、枠部や折り返し部を形成する方法は、他の方法であってもよい。例えば、対向部201の周縁部に金型で曲げる加工の一例であるプレス加工を施すことにより、図11に示した固定極20Dのように、枠型に屈曲した枠部202D(第2領域)を形成してもよい。
また、固定極にプレス加工を施す場合には、枠部202Dだけではなく、図12に示したように、枠部202Dの平行な二辺の間にも、振動体10とは反対側へ凸となった梁部207(第2領域)を形成するようにしてもよい。また、図12においては、梁部207は直線上となっているが、二つの梁部207を交差させた形状とし、固定極は、枠部202Dと当該梁部とにより格子状に凸となった部分を有する構成としてもよい。
【0033】
上述した実施形態の静電型電気音響変換器1は、音を放音するスピーカとして動作するが、上述した実施形態や変形例の構成は、電気音響変換器であるマイクロホンに適用することも可能である。本発明をスピーカとして動作させる場合、図7に示した回路を用いることができる。静電型電気音響変換器1をマイクロホンとして用いる場合、駆動回路100においては、アンプ部130に入出力される信号の方向がスピーカとして使用する場合と反対となる。静電型電気音響変換器1の外部で音波が発生した場合、静電型電気音響変換器1に到達した音波によって振動体10が振動する。振動体10が振動した場合、固定極20の電位が変化する。この固定極20の電位の変化は、振動体10の振動の変位に対応しており、音響信号として端子T1及び端子T2を介して変圧器110に供給されることになる。そして、変圧器110は、この音響信号を変圧してアンプ部130に入力し、アンプ部130は、この音響信号を増幅して図示せぬスピーカやコンピュータなどに出力することになる。
【符号の説明】
【0034】
1…静電型電気音響変換器、10…振動体、20、20U、20L…固定極、21…平面部、22…凸部、100…駆動回路、110…変圧器、120…バイアス電源、130…アンプ部、201…対向部、202、202A、202B、202C、202D…枠部、203A、203B、203C…糊代、204…折り曲げ部、204A…曲げ部、204B…折り曲げ部、204C…折り曲げ部、205…第2の折り曲げ部、206…折り返し部、207…梁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12