【実施例1】
【0051】
以下に、本実施形態の各実施例及び各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本実施形態は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<耐熱滑性層40付き基材10の作製>
基材10として、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に、下記の組成の耐熱滑性層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布し、100℃1分乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層40付き基材10を得た。
【0052】
<耐熱滑性層塗布液−1>
アクリルポリオール樹脂 13.1部
ラウリン酸亜鉛 1.5部
タルク 6.3部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.2部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0053】
<スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体の作成方法>
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部及び、反応触媒として、酢酸亜鉛1部を仕込み、130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン1部を添加し、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行ない、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを純水に溶解し、ついでグリシジル基含有アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジルをポリエステルの重量比で30:70となるように加え、さらに重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、モノマー乳化液を作成した。
【0054】
ついで次に、冷却管付き反応容器に、純水と上記モノマー乳化液とを仕込み、20分間窒素ガスを吹き込んで十分脱酸素を行った後、1時間かけて徐々に昇温し、75〜85℃を維持しつつ3時間反応を行い、スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体を得た。また、同様の方法でルホン酸基含有ポリエステル/カルボキシル基含有アクリル共重合体及び各重合比のポリエステルアクリル共重合体を得た。
【0055】
耐熱滑性層40付き基材10の耐熱滑性層40が塗布されていない面に、下記組成の下引層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃2分乾燥することで、下引層20を形成した。引き続き、その下引層20の上に、下記組成の染料層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層30を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体1を得た。
【0056】
<下引層塗布液−1>
スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
ポリビニルピロリドン(K値60) 2.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
<染料層塗布液−1>
C.I.ソルベントブルー63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0057】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−2>
アクリルポリオール樹脂 12.8部
ラウリン酸亜鉛 2.0部
タルク 6.1部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.1部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0058】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−3>
アクリルポリオール樹脂 12.2部
ラウリン酸亜鉛 3.0部
タルク 5.9部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 3.9部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0059】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−4>
アクリルポリオール樹脂 11.7部
ラウリン酸亜鉛 4.0部
タルク 5.6部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 3.7部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0060】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−5>
アクリルポリオール樹脂 11.1部
ラウリン酸亜鉛 5.0部
タルク 5.3部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 3.6部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0061】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−6>
アクリルポリオール樹脂 13.7部
ラウリン酸亜鉛 3.0部
タルク 4.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.4部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0062】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−7>
アクリルポリオール樹脂 11.0部
ラウリン酸亜鉛 3.0部
タルク 7.5部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 3.5部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0063】
(実施例8)
<耐熱滑性層40付き基材10の作製>
基材10として、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に前述した耐熱滑性層塗布液−3の組成の耐熱滑性層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布し、100℃1分乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層40付き基材10を得た。
【0064】
耐熱滑性層40付き基材10の耐熱滑性層40が塗布されていない面に前述した下引層塗布液−1の組成の下引層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃2分乾燥することで、下引層20を形成した。引き続き、その下引層20の上に前述した染料層塗布液−1の組成の染料塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃1分乾燥することで、染料層30を形成し、実施例8の感熱転写記録媒体1を得た。
【0065】
(実施例9)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−2にした以外は、実施例8と同様にして、実施例9の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−2>
スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
ポリビニルピロリドン(K値90) 2.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0066】
(実施例10)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−3にした以外は、実施例8と同様にして、実施例10の感熱記録転写媒体を得た。
【0067】
<下引層塗布液−3>
スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
ポリビニルピロリドン(K値90) 2.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0068】
(実施例11)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−4にした以外は、実施例8と同様にして、実施例11の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−4>
スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 3.5部
ポリビニルピロリドン(K値60) 1.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0069】
(実施例12)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−5にした以外は、実施例8と同様にして、実施例12の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−5>
スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 1.5部
ポリビニルピロリドン(K値60) 3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0070】
(実施例13)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−6にした以外は、実施例8と同様にして、実施例13の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−6>
スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
ポリビニルピロリドン(K値90) 2.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0071】
(実施例14)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−7にした以外は、実施例8と同様にして、実施例14の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−7>
スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(20:80) 2.50部
ポリビニルピロリドン(K値90) 2.50部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0072】
(実施例15)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−8にした以外は、実施例8と同様にして、実施例15の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−8>
スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(40:60) 2.5部
ポリビニルピロリドン(K値90) 2.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0073】
(実施例16)
実施例10で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例8と同様にして、実施例16の感熱記録転写媒体を得た。
(実施例17)
実施例10で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を乾燥後の塗布量が0.35g/m
2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例8と同様にして、実施例17の感熱記録転写媒体を得た。
【0074】
(比較例1)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−8>
アクリルポリオール樹脂 13.6部
ラウリン酸亜鉛 0.5部
タルク 6.5部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.4部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0075】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−9>
アクリルポリオール樹脂 13.3部
ラウリン酸亜鉛 1.0部
タルク 6.4部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.3部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0076】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体1において、耐熱滑性層40付き基材10作成の際に基材10に塗布するのが下記組成の耐熱滑性層塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録転写媒体を得た。
<耐熱滑性層塗布液−10>
アクリルポリオール樹脂 9.1部
ラウリン酸亜鉛 3.0部
タルク 10.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 2.9部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0077】
(比較例4)
耐熱滑性層40付き基材10の耐熱滑性層40が塗布されていない面に、下引層20を形成することなく、実施例8と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m
2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例4の感熱転写記録媒体1を得た。
【0078】
(比較例5)
下引層20を下記組成の下引層塗布液−8にした以外は、実施例8と同様にして、比較例5の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−8>
ポリビニルピロリドン(K値30) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0079】
(比較例6)
下引層20を下記組成の下引層塗布液−9にした以外は、実施例8と同様にして、比較例6の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−9>
ポリビニルピロリドン(K値90) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0080】
(比較例7)
下引層20を下記組成の下引層塗布液−10にした以外は、実施例8と同様にして、比較例7の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−10>
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 5.00部
純水 47.5部
イソプロピルアルコール 47.5部
【0081】
(比較例8)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−11にした以外は、実施例8と同様にして、比較例8の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−11>
グリシジル基含有アクリル樹脂 5.0部
純水 47.5部
イソプロピルアルコール 47.5部
【0082】
(比較例9)
下引層20を下記組成の下引層塗布液−12にした以外は、実施例8と同様にして、比較例9の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−12>
スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0083】
(比較例10)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−13にした以外は、実施例8と同様にして、比較例10の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−13>
グリシジル基含有アクリル樹脂 7.0部
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 3.0部
純水 45.0部
イソプロピルアルコール
【0084】
(比較例11)
実施例8で作製した感熱転写記録媒体1において、下引層20を下記組成の下引層塗布液−14にした以外は、実施例8と同様にして、比較例11の感熱記録転写媒体を得た。
<下引層塗布液−14>
メトキシメチル化ナイロン
(メトキシメチル化率 約30%) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
<被転写体の作製>
基材10として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0085】
<受像層塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<動摩擦係数評価>
実施例1〜7、比較例1〜3の感熱転写記録媒体1の耐熱滑成層の120℃におけるSiC、Si
3N
4、SiONに対する動摩擦係数μ
kを測定した結果を表1に示す。なお、動摩擦係数μ
kは新東科学製HEIDONトライボギア14を用い、荷重100g、走査速度100mm/minで測定した。
【0086】
<伸び率が1%になる温度の評価>
実施例1〜7、比較例1〜3の感熱転写記録媒体1の感熱転写記録媒体1(サンプル)を荷重をかけて引っ張りながら過熱した場合の伸び率が1%になる温度Tの測定結果を表1に示す。温度TはSII社製TMA/SS6100を用いて、感熱転写記録媒体1(サンプル)をMD方向に5000N/m
2の荷重をかけて引っ張りながら室温から0℃に−5℃/minで冷却後、260℃まで5℃/minで加熱した際の感熱転写記録媒体1(サンプル)の変位を測定することにより導出した。
なお、基材10の一方の面に下引層20と染料層30を順次層したシートの温度Tは200℃であった。
【0087】
<サーマルヘッド磨耗評価>
実施例1〜7、比較例1〜3の感熱転写記録媒体1を使用し、SiC、Si
3N
4、SiONの3種類それぞれの未使用のサーマルヘッドを用い、サーマルシミュレーターにて下記の条件でベタ印画を連続して10000枚実施した。
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.9msec
印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
そして、使用後のサーマルヘッドの断面形状をNikon NEXIV VMRで観察して耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗を確認した。磨耗の評価結果を表1に示す。なお、磨耗の評価は以下の基準とした。
〇:最大磨耗が1μm未満のもの。サーマルヘッドの寿命は実用上問題ないレベルを保てる。
×:最大磨耗が1μmを超えるもの。サーマルヘッドの寿命が短くなる。
【0088】
<印画シワ評価>
実施例1〜7、比較例1〜3の感熱転写記録媒体1を使用し、SiC、Si
3N
4、SiONの3種類それぞれのサーマルヘッドを用いた印画評価を行った。シワの評価として、24V、27Vと印画エネルギーを変えた2パターンに関して10inch/secの速さで印画評価を行った。また、24Vに関しては、255階調を分割し、高濃度側を255階調として、低階調側として46階調、中階調側として178階調、高階調側として255階調の印画濃度の測定を行った。印画濃度に関しては、黒色に関して測定を行った。
なお、シワによる印画不良の評価は以下の基準にて行った。24Vの電圧においてシワが発生しなければ実用上において問題ない。
〇:印画物にシワによる印画不良無し
×:印画物にシワによる印画不良あり
【0089】
<印画評価>
実施例8〜17、比較例4〜11の感熱転写記録媒体1を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した結果を、表2示す。なお最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.9msec
印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
【0090】
<異常転写評価>
実施例8〜17、比較例4〜11の感熱転写記録媒体1に関して、常温にて養生された感熱転写記録媒体1と被転写体を使用し、48℃5%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。結果を、表2に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。△以上が実用上問題ないレベルである。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0091】
<動的粘弾性の測定>
粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR DMS6100)を用い、下記条件で評価を行った。結果を表2に示す。
周波数:10Hz
温度範囲:20℃から200℃
昇温速度:3℃/min
試験片:約0.1mm
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1に示す結果から、耐熱滑性層40の120℃における対SiCの動摩擦係数μ
kが0.18以下である実施例1〜5の感熱転写記録媒体1は耐熱滑性層40と擦れたことによるSiCのサーマルヘッドの磨耗に問題はない。一方で、耐熱滑性層40の120℃における対SiCの動摩擦係数μ
kが0.18を超える比較例1〜2ではサーマルヘッドの耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗は最大磨耗が1μmを超えて寿命が短くなっている。
【0095】
また、表1に示す結果から、耐熱滑性層40の120℃における対Si
3N
4の動摩擦係数μ
kが0.18以下である実施例1〜5の感熱転写記録媒体1はSi
3N
4のサーマルヘッドの耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗に問題はない。一方で、耐熱滑性層40の120℃における対Si
3N
4の動摩擦係数μ
kが0.18を超える比較例1〜2ではサーマルヘッドの耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗は最大磨耗が1μmを超えて寿命が短くなっている。
【0096】
また、表1に示す結果から、耐熱滑性層40の120℃における対SiONの動摩擦係数μ
kが0.18以下である実施例1〜5、比較例2の感熱転写記録媒体1はSiONのサーマルヘッドの耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗に問題はない。一方で、耐熱滑性層40の120℃における対SiONの動摩擦係数μ
kが0.18を超える比較例1ではサーマルヘッドの耐熱滑性層40と擦れたことによる磨耗は最大磨耗が1μmを超えて寿命が短くなっている。
【0097】
このように、SiC、Si
3N
4、SiONのいずれのサーマルヘッドも耐熱滑性層40の120℃における対ヘッド材質の動摩擦係数μ
kが0.18以下の場合に、サーマルヘッドの寿命が実用上問題ないレベルを保てることがわかった。印画時に高温となるサーマルヘッドとそれにより加熱された耐熱滑性層40との摩擦が低くなることにより、サーマルヘッドの磨耗が抑制されるものとみられる。
【0098】
表1に示す結果から、MD方向に5000N/m
2の荷重をかけて引っ張りながら過熱した場合の感熱転写記録媒体1のMD方向の感熱転写記録媒体1の伸び率が1%になる温度Tが205℃以上である実施例3、6、7はSiC、Si
3N
4、SiONのいずれのサーマルヘッドを用いて印画した場合にも印画シワが発生していない。一方で、温度Tが205℃未満である比較例3では印画シワが発生している。このことから、温度Tが205℃以上であれば印画シワが発生しないことがわかった。これは、温度Tが205℃以上であれば熱圧がかかった時の感熱転写記録媒体1の伸びが十分に小さいためとみられる。
【0099】
なお、前述のように基材10の一方の面に下引層20と染料層30を順次層したシートの温度Tは200℃であったが、これに耐熱滑性層40が加わった実施例3、6、7の感熱転写記録媒体1の温度Tは205℃以上になっていることから、実施例3、6、7の耐熱滑性層40には温度Tを引き上げる効果、すなわち熱圧がかかった時の伸びを抑える効果があり、これにより印画シワが抑制されたと考えられる。
【0100】
表2に示す結果から、該下引層20を構成する樹脂の100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+06N/m2以上である、実施例8〜17、比較例5〜7、9、11の感熱転写記録媒体1は、100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+06N/m
2未満である比較例8,10と比較し、異常転写が発生しないことがわかった。また、100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+08N/m
2以上の実施例8,10、12〜17、比較例11は、100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+06N/m
2以上1.0E+08N/m
2未満である実施例9,11、比較例5,7,9と比較し、異常転写に対して効果が高く、好ましいことがわかる。比較例9のスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルの共重合体は、下引層20が設けられていない比較例4及びスルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例5と比べ、高速印画時における転写感度が高いことがわかった。
【0101】
ポリステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例8〜17とポリステル−アクリル共重合体単体である比較例9、ポリビニルピロリドン単体である比較例5,6とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上し、転写感度が高くなることがわかった。
また、混合するポリビニルピロリドンのK値が大きいほど転写感度が向上することがわかった。
【0102】
さらにポリステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられ(実施例8,11,12)、混合比率としてはポリエステルとアクリルの共重合体とポリビニルピロリドンが、重量比で70:30〜30:70であることが好ましいことがわかる。
また、実施例16では、実施例10の感熱転写記録媒体1と比較すると、下引層20の塗布量が0.05g/m
2未満であるため、幾分転写感度の低下と密着性の低下が確認された。また、実施例17の感熱転写記録媒体1は、同じく実施例10の感熱転写記録媒体1と比較すると、下引層20の塗布量が0.30g/m
2超であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることがわかった。
本実施形態では、
図1の基材10が基材を構成する。以下同様に、
図1の耐熱滑性層40が耐熱滑性層を構成する。また、
図1の染料層30が染料層を構成する。さらに、
図1の下引層20が下引層を構成する。また、
図1の感熱転写記録媒体1が感熱転写記録媒体を構成する。
【0103】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、基材10と、基材10の一方の面に形成された耐熱滑性層40と、基材10の他方の面に形成された染料層30と、他方の面と染料層30との間に形成された下引層20と、を有する感熱転写記録媒体1であって、下引層20は、100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+06N/m
2以上であり、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと少なくともグリシジル基及びカルボキシル基のいずれか1種類を有するアクリルとの共重合体とポリビニルピロリドンとを含み、耐熱滑性層40は、120℃におけるSiC、Si
3N
4、SiONの各々に対する動摩擦係数μ
kが0.18以下であることを特徴とする。
【0104】
このような構成によれば、下引層20の、100℃における貯蔵弾性率G’を1.0E+06N/m
2以上としたため、異常転写を抑制できる。また、ポリエステルとアクリルとの共重合体を用いたため、耐溶剤性と染料バリア性とを向上できる。さらに、耐熱滑性層40の、120℃におけるSiC、Si
3N
4、SiONの各々に対する動摩擦係数μ
kを0.18以下としたため、プリンタのサーマルヘッドを長寿命化できる。そのため、このような構成によれば、より適切に印刷を行うことができる。
【0105】
(2)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引層20は、100℃における貯蔵弾性率G’が1.0E+08N/m
2以上で且つ1.0E+10N/m
2以下である。
このような構成によれば、転写感度をより向上でき、印画時のシワを抑制できる。
(3)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、ポリビニルピロリドンのフィッケンチャーの公式におけるK値は、30以上で且つ100以下である。
このような構成によれば、印画における転写感度の向上しつつ、塗工適正を向上することができる。
(4)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、共重合体におけるポリエステルの重量比は、20%以上で且つ40%未満である。
このような構成によれば、基材10との密着性を向上しつつ、印画濃度を向上することができる。
【0106】
(5)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引層20における共重合体の重量比は、30%以上で且つ70%未満である。
このような構成によれば、印画濃度を向上しつつ、保存性を向上することができる。
(6)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引層20の乾燥後の塗布量は、0.10g/m
2以上で且つ0.30g/m
2以下である。
このような構成によれば、高速印画時における転写感度を向上しつつ、コスト面を向上することができる。
(7)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、感熱転写記録媒体1をMD方向に5000N/m2の荷重をかけて引っ張りながら過熱した場合のMD方向の感熱転写記録媒体1の伸び率が1%になる温度Tを205℃以上とした。
このような構成によれば、印画時にシワの発生を抑制できる。
(8)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、感熱転写記録媒体1をMD方向に5000N/m2の荷重をかけて引っ張りながら過熱した場合のMD方向の感熱転写記録媒体1の伸び率が1%になる温度Tが205℃以上となるような耐熱滑性層40を用いた。
このような構成によれば、温度Tを比較的容易に205℃以上とすることができる。