特許第6379991号(P6379991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6379991-警報装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379991
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-215370(P2014-215370)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-81462(P2016-81462A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚基
(72)【発明者】
【氏名】結城 俊男
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】島 高志
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−203844(JP,A)
【文献】 特開平11−025397(JP,A)
【文献】 特表2008−501167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
B60R 21/00
B60W 30/12
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行車線を区分する車線境界線を取得する車線取得手段と、
前記車線取得手段で取得される車線境界線に基づいて、前記車両が前記走行車線側から前記車線境界線を超えた逸脱量を演算すると共に、当該逸脱量が予め設定された所定の基準逸脱量を超えると、前記車両が車線逸脱状態にあると判定する車線逸脱判定手段と、
前記車線取得手段で取得される車線境界線に基づいて、前記車両の前記走行車線側から前記車線境界線への接近速度を演算する接近速度演算手段と、
前記接近速度演算手段で演算される接近速度に応じて前記基準逸脱量を補正する基準逸脱量補正手段と、
前記車線逸脱判定手段により前記車両が車線逸脱状態と判定されると警報を行う警報手段と、を備える
警報装置。
【請求項2】
前記基準逸脱量補正手段は、前記接近速度が速くなるほど前記基準逸脱量を減少させる
請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記基準逸脱量補正手段は、前記接近速度が所定の閾値速度以下の場合、前記基準逸脱量の補正を実施しない
請求項1又は2に記載の警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報装置に関し、特に、車線逸脱警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の警報装置として、車載カメラにより撮像した車両前方の路面画像に基づいて走行車線を区分する白線等の車線境界線を検出し、車両が車線境界線を逸脱する可能性が高い場合に警報を行うものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−268845号公報
【特許文献2】特開平9−270098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、この種の装置では、車載カメラにより撮像した画像にエッジ抽出等の処理を施して車線認識画像を生成すると共に、生成した車線認識画像に基づいて車線逸脱判定を行っている。このため、車両の車線境界線への接近速度が速い場合は、画像処理時間の影響によって車線逸脱判定が実際の車線逸脱状態に対して大幅に遅れ、適切なタイミングで警報を行えなくなる可能性がある。
【0005】
開示のシステムは、車両の車線境界線への接近速度に応じて車線逸脱警報の最適化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の装置は、車両の走行車線を区分する車線境界線を取得する車線取得手段と、前記車線取得手段で取得される車線境界線に基づいて、前記車両が前記走行車線側から前記車線境界線を超えた逸脱量を演算すると共に、当該逸脱量が予め設定された所定の基準逸脱量を超えると、前記車両が車線逸脱状態にあると判定する車線逸脱判定手段と、前記車線取得手段で取得される車線境界線に基づいて前記車両の前記走行車線側から前記車線境界線への接近速度を演算すると共に、当該接近速度に応じて前記基準逸脱量を補正する基準逸脱量補正手段と、前記車線逸脱判定手段により前記車両が車線逸脱状態と判定されると警報を行う警報手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の装置によれば、車両の車線境界線への接近速度に応じて車線逸脱警報の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車線逸脱警報装置を搭載した車両の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る車線逸脱警報装置の電子制御ユニットを示す機能ブロック図である。
図3】車両の接近速度及び、基準逸脱量閾値の補正を説明する図である。
図4】本実施形態に係る補正量設定マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る車線逸脱警報装置10は、好ましくは、トラック等の大型車両1に搭載されるもので、CCDカメラ11、電子制御ユニット(以下、単にECUという)20、警報手段としてのスピーカ30及び、表示装置31を備えている。
【0011】
CCDカメラ11は、本発明の車線取得手段の一例であって、車両1(キャブCA)の前部に設けられている。CCDカメラ11は、車両1の走行車線LAを区分する路面上の白線や黄線等の車線境界線WLを撮像すると共に、撮像した画像をECU20に送信する。なお、車線情報を取得する手段としては、CCDカメラ11に限定されず、他の公知の撮像装置を適用してもよい。
【0012】
ECU20は、車両1の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。また、図2に示すように、ECU20は、画像処理部21、接近速度演算部22、逸脱量閾値補正部23、車線逸脱判定部24、警報出力処理部25を一部の機能要素として備えている。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU20に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0013】
画像処理部21は、CCDカメラ11から送信される画像にエッジ抽出等の画像処理を施すことで、走行車線LAを区分する白線や黄線等を認識するための車線境界線画像を生成する。
【0014】
接近速度演算部22は、本発明の接近速度演算手段であって、画像処理部21により生成される車線境界線画像に基づいて、車両1が走行車線LA側から左右何れか一方の車線境界線WLに向かって接近する接近速度VWL図3参照)を演算する。
【0015】
逸脱量閾値補正部23は、本発明の基準逸脱量補正手段であって、接近速度演算部22によって演算される接近速度VWLに応じて、後述する車線逸脱判定に用いられる基準逸脱量閾値OLST_0を補正する。
【0016】
図4は、予めECU20のメモリに格納された補正量設定マップMの一例である。この補正量マップMには、基準逸脱量閾値OLSTから減算する補正量Cと、接近速度演算部22によって演算される接近速度VWLとの関係が規定されている。補正量Cは、接近速度VWLが所定の閾値速度Vmin以下の領域ではゼロに設定され、接近速度VWLが閾値速度Vminよりも速くなるにしたがい増加するように設定されている。
【0017】
すなわち、接近速度VWLが閾値速度Vmin以下の領域では、基準逸脱量閾値OLSTの補正は行われず、接近速度VWLが閾値速度Vminよりも速くなる領域では、接近速度Vminの上昇に伴い基準逸脱量閾値OLST_0を小さくする減少補正が実施されるようになっている。なお、所定の閾値速度Vminは、例えば、車両1の基準逸脱量閾値OLSTへの到達時間を画像処理部21の画像生成時間よりも短くする接近速度を実験等により取得し、当該取得した接近速度を基準に設定することが好ましい。
【0018】
車線逸脱判定部24は、本発明の車線逸脱判定手段であって、車両1が走行車線LA側から車線境界線WLを超えて走行する車線逸脱状態にあるか否かを判定する。
【0019】
より詳しくは、ECU20のメモリには、所定の基準逸脱量閾値OLST_0が予め格納されている。車線逸脱判定部24は、まず、画像処理部21によって生成される車線境界線画像に基づいて車両1が走行車線LA側から車線境界線WLの内側ラインを超える車線逸脱量OLを演算する。そして、接近速度VWLが閾値速度Vmin以下の場合(VWL≦Vmin)は、車線逸脱量OLが基準逸脱量閾値OLST_0を超えると(OL>OLST_0)、車両1を「車線逸脱状態」と判定する。一方、接近速度VWLが閾値速度Vminよりも速い場合(VWL<Vmin)は、車線逸脱量OLが接近速度VWLに応じて減少補正された補正後逸脱量閾値OLST_nを超えると(OL>OLST_n)、車両1を「車線逸脱状態」と判定する。すなわち、接近速度VWLが閾値速度Vminよりも速い場合は、接近速度VWLが速くなるほど車線境界線WL側に短く補正される補正後逸脱量閾値OLST_nに基づいて、車線逸脱判定が行われるようになっている。
【0020】
警報出力処理部25は、車線逸脱判定部24により「車線逸脱状態」と判定された場合に、スピーカ30に警報を発させる指示信号及び表示装置31に警報を表示させる指示信号を出力する。
【0021】
以上詳述したように、本実施形態の車線逸脱警報装置10では、車両1の車線境界線WLへの接近速度VWLが速い場合は、接近速度VWLが速くなるほど車線境界線WL側に短く補正される補正後逸脱量閾値OLST_nに基づいて、車線逸脱判定が実施されるようになっている。したがって、接近速度VWLが速い場合においても、画像生成時間の影響を受けることなく、車線逸脱判定を早期に行うことが可能となり、警報の遅れを効果的に防止することができる。
【0022】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0023】
例えば、車両1はトラック等の大型車両として説明したが、乗用車等の他の車両にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
10 車線逸脱警報装置
11 CCDカメラ
20 ECU
21 画像処理部
22 接近速度演算部
23 逸脱量閾値補正部
24 車線逸脱判定部
25 警報出力処理部
30 スピーカ
31 表示装置
図1
図2
図3
図4