(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部を貫通する空洞を有する中空部品と、前記中空部品の前記空洞の少なくとも一端側にある第一の樹脂部品と、前記中空部品の外周に前記空洞の開口部を塞がないように設けてある第二の樹脂部品と、前記中空部品と前記第一の樹脂部品との間にあって前記一端を塞ぐ多孔質部材とを備えた溶着構造体において、
前記第一の樹脂部品と前記第二の樹脂部品が熱可塑性樹脂であり、前記第一の樹脂部品と前記第二の樹脂部品とを振動溶着してなる溶着構造体。
前記多孔質部材は、前記中空部品の前記空洞の貫通方向の一端における端面と、前記第一の樹脂部品または前記第二の樹脂部品あるいはその両方に設けた窪みとが形成する空間内に配置されている請求項1に記載の溶着構造体。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態における溶着構造体の概略を示す分解断面図である。
【
図2】第1の実施形態における溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の断面図である。
【
図3】第1の実施形態における熱可塑性樹脂部品の成型方法を示す断面図である。
【
図4】従来の実施形態における溶着構造体製造方法を示す分解断面図である。
【
図5】従来の実施形態において溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の断面図である。
【
図6】第1の実施形態において溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の使用形態を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態において溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の使用形態の一例を示す斜視図である。
【
図8】第2の実施形態における溶着構造体の製造方法を示す分解断面図である。
【
図9】第2の実施形態における溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の断面図である。
【
図10】第3の実施形態における溶着構造体の製造方法を示す分解断面図である。
【
図11】第3の実施形態における溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の使用形態を示す断面図である。
【
図12】第4の実施形態における溶着構造体の製造方法を示す断面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細かつ具体的に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本実施例の振動溶着を行うための、部品構成の概要を示す。本実施例においては、第一熱可塑性樹脂部品2及び熱可塑性樹脂部品4に、金属製のナット1を埋め込んだ第二熱可塑性樹脂部品3を振動溶着することにより固定する。その際、第一熱可塑性樹脂部品2と第二熱可塑性樹脂部品3の間に多孔質部材5を配置することによって、バリの発生を効果的に抑制しながら、溶着構造体を製造する方法を説明する。
【0017】
まず
図1を用いて、本実施例の溶着構造体の製造方法に用いる部品について説明する。本実施例に用いる金属製のナット1は、内部を空洞が貫通した中空形状となっており、その空洞の壁面にはねじ11が切ってある。そしてこのナット1は、この空洞を塞がない状態で、ブロック状の第二熱可塑性樹脂部品3に埋め込んである。この第二熱可塑性樹脂部品3は、ナット1の外周部分の一部もしくは全体を覆っており、上端はナット1の上端部とほぼ同じ高さの平面を有している。また、この第二熱可塑性樹脂部品3の下端は、
図1においては、ナット1の下端面と比較して少し引っ込んだ位置で平面を形成しているが、同一平面とすることや、少し出っ張った平面とすることもできる。したがって、ナット1の下端部13は、第二熱可塑性樹脂部品3と比較し、図中の下方向に突出した形状、または同一平面を形成する形状、もしくは引っ込んだ形状とすることができる。このナット1は、第二熱可塑性樹脂部品3から、図中の下方向へ抜けることのないように、外周上の上下方向の一部に突起部12を有している。突起部12は、ナット1の下端部よりも外周方向に広がった形状になっている。なお、突起部12は、外周の上下方向に複数設けてもよく、または、突起形状の代わりに、ナット1の外周が下端から上端に向けて広がる段差や傾斜を設けたものとすることもできる。また、これらの段差や傾斜は、ナット1の外周上の周方向に一周分設けることもできるし、一部に設けることもできる。外周を覆う第二熱可塑性樹脂部品3の上端面は、ナット1の上方に設けた第一熱可塑性樹脂部品2の平面と面で接することができるように、また下端面も同様に熱可塑性樹脂部品4の平面と面で接することができるように、平面部分を有している。
【0018】
図1に示す通り、金属製のナット1の上部には、不織布またはスポンジ状の発泡体等でできた多孔質部材5を設けることが望ましい。なお、この多孔質部材5としては、具体的にはPP、PA、PE、PET、PVなどを用いることができる。この多孔質部材5は、円盤形状をしている。またその大きさは、外周がナット1の上端面の外周と同等もしくはこれよりもやや大きく、このナット1の上端面をすべて覆うように位置している。この多孔質部材5は、圧縮されることにより、ある程度変形が可能であることが望ましい。また、多孔質部材5の孔は、独立気泡を有していても良いが、連続気泡を多く有していることがより望ましい。連続気泡を多く有している方が、後述する溶着工程において発生する溶融した樹脂が多孔質部材5の孔に流れ込みやすくなり、外側から多孔質部材5を大きく圧縮することを防ぐことができるためである。なお、本実施例においては、多孔質部材5の形状は円盤形状であるが、楕円形状や、環状、円筒状であってもよく、外側の形状は四角形などの多角形などにすることもできる。また、その大きさも、後述する通り、その一部をナット1の外周径より小さくすることもできる。
【0019】
図1に示す通り、金属製のナット1及び多孔質部材5の上部には、ナット1を設置するための第一熱可塑性樹脂部品2がある。第一熱可塑性樹脂部品2には多孔質部材5と同サイズの窪み21が設けてあり、後述する溶着工程において、多孔質部材5を圧縮しない状態で第一熱可塑性樹脂部品2及び第二熱可塑性樹脂部品3を接合することができる。なお、窪み21の深さは、多孔質部材5の厚さより浅くすることもできるが、この場合、この多孔質部材5は、第一熱可塑性樹脂部品2及び第二熱可塑性樹脂部品3を接合する際に、多少圧縮されることになり、熱可塑性樹脂に窪み21を設ける際の深さ方向の誤差を吸収することができる。また、振動溶着による振動や、流入する溶融した樹脂による影響にかかわらず、多孔質部材5を確実に保持できる。さらに、これと同様に、窪み21の広さを多孔質部材5よりも小さくすることもできる。
【0020】
図1に示す通り、金属製のナット1の下部には熱可塑性樹脂部品4がある。この熱可塑性樹脂部品4は下側からナット1及び第二熱可塑性樹脂部品3を支える役割を担っている。熱可塑性樹脂部品4は、ナット1の第二熱可塑性樹脂部品3から突出した下端部13に相当する部分に、これとほぼ同等、もしくは若干大きめの孔を有しており、ナット1の下端部13を避けて、第二熱可塑性樹脂部品3と平面で接触できる。なお、装着した熱可塑性樹脂部品4の下端面に対し、ナット1の下端面は、同一平面を形成することもできるし、また、熱可塑性樹脂部品4の下端面よりも出っ張った形状、あるいは凹んだ形状でも構わない。
【0021】
なお、第一熱可塑性樹脂部品2乃至熱可塑性樹脂部品4は、熱可塑性であると同時に、炭素繊維強化性樹脂(CFRP)またはグラスファイバー強化性樹脂などとすることで、本実施例によって製造される溶着構造体を軽量で耐久性に優れたものとすることができる。
【0022】
まず、
図2に示す通り、第一熱可塑性樹脂部品2と第二熱可塑性樹脂部品3と多孔質部材5とを密着して設置する。さらに第二熱可塑性樹脂部品3と熱可塑性樹脂部品4とを密着させる。そして、第一熱可塑性樹脂部品2、第二熱可塑性樹脂部品3及び熱可塑性樹脂部品4の接合面に対して垂直方向(
図2における上下方向)に図示しない専用の治具によって加圧する。この状態でさらに、第一熱可塑性樹脂部品2、第二熱可塑性樹脂部品3及び熱可塑性樹脂部品4の接合面に対して水平方向(
図2における水平方向)に周期的な振動を一定時間与える。このとき、
図3における上下方向のいずれか一方を固定し、他方を振動させることもできるし、両方を振動させることもできる。また、振動溶着工程は、第一熱可塑性樹脂部品2、第二熱可塑性樹脂部品3及び熱可塑性樹脂部品4を一度に溶着することもできるし、第一熱可塑性樹脂部品2と第二熱可塑性樹脂部品3を溶着する過程と、第二熱可塑性樹脂部品3と熱可塑性樹脂部品4を溶着する過程の2過程を設けることによって溶着することもできる。これらの工程により、第一熱可塑性樹脂部品2及び第二熱可塑性樹脂部品3の溶着部7と、第二熱可塑性樹脂部品3及び熱可塑性樹脂部品4の溶着部8がそれぞれ摩擦により発熱し溶融する。そして、その後振動を停止して冷却することで溶融した樹脂が固化し結合する。なお、加圧及び加振は、専用の装置を用いても良いが、公知の振動溶着機を用いて行うこともできる。
【0023】
なお、
図3によって、上記溶着構造体に用いる第二熱可塑性樹脂部品3の成型方法の一例について説明する。
図3は、第1の実施形態における、第二熱可塑性樹脂部品3の成型方法を示す断面図である。まず、第二熱可塑性樹脂部品3の内部に埋め込むナット1を、金型9aに設置する。次に、多孔質部材5をナット1の一端を塞ぐ位置に設置し、金型9bで圧縮する。金型9a及び金型9bによって形成される空間は、第二熱可塑性樹脂部品3の形状を成している。このとき、多孔質部材5は、金型9bに設けられた突起部91によって圧縮されて、多孔質部材5の中にある孔部が潰れた状態となることが望ましい。このとき多孔質部材5のこの断面部における両端部(全体としては外周部分)はあまり潰れることなく原形をほぼ保つようにすることができる。この状態で、金型9a及び9bにある空間93に、図示しない射出口から、熱可塑性樹脂の溶融した樹脂を射出して、第二熱可塑性樹脂部品3を形成する。これにより、多孔質部材5は、溶融した樹脂と接する圧縮されていない端面51のみが接着するため、内部にある孔部は第二熱可塑性樹脂部品3の射出後も、樹脂が流れ込んで埋まることなく保持される。また、上述の潰れていない部分には若干の熱可塑性樹脂が浸透することになる。なお、第二熱可塑性樹脂部品3は、このような方法で製造することが望ましいが、これに限られることなく、その他の方法で製造することも可能である。例えば第二熱可塑性樹脂部品3を、多孔質部材5とは別に成形し、その後の工程で多孔質部材5を接着することもできる。
【0024】
上記の方法によれば、第二熱可塑性樹脂部品3成型時に、ナット1を埋め込むと同時に多孔質部材5を第二熱可塑性樹脂部品3に固定することができるため、生産効率が向上する。また、このように、あらかじめ第二熱可塑性樹脂部品3の成型時に、多孔質部材5を接着しておくことで、前述した振動溶着工程において多孔質部材5が溶融した樹脂に押し出されて位置がずれることを防止することができる。ただし、本製造方法は第二熱可塑性樹脂部品3の成型方法の一例であって、他の方法により多孔質部材5を第二熱可塑性樹脂部品3以外の部品に接着しておいたり、接着せずに振動溶着することもできる。
【0025】
ここで、
図4及び
図5によって、振動溶着の際に発生するバリ31について説明する。
図4は、従来の実施方法により振動溶着を行う際の構成図である。本実施例にかかる構成図である
図1と比較し、多孔質部材5がなく、また、第二熱可塑性樹脂部品3の上部に備えられた第一熱可塑性樹脂部品2aには多孔質部材5が収まるための窪みが構成されていない。さらに、
図5は、従来の実施形態において、溶着構造体製造方法によって製造した溶着構造体の断面図である。この
図5に示すように、従来の溶着構造体製造方法においては、振動溶着の際、溶着部7の周囲の樹脂が過剰に溶融し、ナット1内部の空洞や外部に溢れ出して冷却され、バリ31となることがある。外部に発生したバリについては、比較的簡単に除去できるが、ナット1内部の空洞に発生したバリ31については、除去が比較的困難となる。また、このバリ31は振動溶着後にナット1にボルト6を通す際に障害となる。
【0026】
一方、
図1〜
図3で示す通り、本実施例においてはナット1の空洞開口部には多孔質部材5が配置されている。そのため、振動溶着の際、溶融した樹脂が多孔質部材5の孔に流れ込み、ナット1の内部の空洞に流れ込むのを防止する。したがって、ナット1の内部の空洞にバリが入り込むのを抑制することができる。なお、樹脂を吸収した多孔質部材5は冷却後に冷えて固まり、上記の振動溶着方法によって製造される溶着構造体の一部となる。
【0027】
図6は、本実施例により製造した溶着構造体の使用態様の一例である。この
図6に示すように、本実施例により製造した溶着構造体のナット1の内部の空洞には、バリ31が発生していない。したがって、ボルト6を障害なく挿入することができる。
【0028】
図7には、本実施例に記載の方法で製造した溶着構造体の使用例の一つを示す。
図7は自動車の内部に使用される樹脂製の骨組みに使用した例である。ここでは、図中下部に設けられたロアメンバ100の両端部に、本実施例に記載の方法で製造した溶着構造体を用いている、ロアメンバ100は、下方側が開口した略U字状の断面形状を有する部材であり、上記実施例1における、第一熱可塑性樹脂部品2及び熱可塑性樹脂部品4に相当する部分は、共にロアメンバ100の一部となっている。また、
図7に示す通り、このロアメンバ100の両端部に、固定対象となる同じく略U字状の断面を有したサイドメンバ110を備えている。サイドメンバ110には、ボルトが通る孔が備えてあり、この孔をロアメンバ100のナットのねじ孔に合わせ、図示しないボルトによって固定することができる。このように、樹脂部品の固定部などには本発明による方法で製造した溶着構造体を用いることで強度を上げることができるため有用である。ここで、熱可塑性樹脂材としては炭素繊維やグラスファイバーで強化したPP、PA、PCといった樹脂を用いることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、第2の実施形態による溶着構造体の製造方法を示す断面図である。また、
図9は第2の実施形態における製造方法により製造した溶着構造体の断面図である。本実施形態は、第1の実施形態(
図1〜
図2)の変形例であるため、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0030】
図8に示す通り、本実施形態における第一熱可塑性樹脂部品2aは、第1の実施形態で説明した第一熱可塑性樹脂部品2の窪み21に相当する部分を設けていない。一方で、この窪み21に相当する窪みを、ナット1及びナット1を埋め込んだ第二熱可塑性樹脂部品3の図中上端面部に窪み35として設けることができる。
【0031】
本実施形態によれば、
図9に示す通り、前述した振動溶着過程において発生するボルト1の孔の内部のバリの発生を効果的に抑制し、溶着構造体を製造することができる。本実施形態を採用することで、第一熱可塑性樹脂部品2に対して、第二熱可塑性樹脂部品3及びナット1の位置決めを厳密に行う必要がなくなり、溶着工程の手間を削減することができる。
【0032】
また、本実施例にかかる窪み35と、前述した実施例1にかかる窪み21の両方を、同時に設けることもできる。この場合、窪み35及び窪み21の深さの和を多孔質部材5の厚さにとほぼ同様にすることで、前述したバリ31の発生の抑制効果を得ることができる。
【0033】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、第4の実施形態による溶着構造体の製造方法を示す断面図である。また、
図11は第4の実施形態における製造方法により製造した溶着構造体の実施形態の断面図である。本実施形態は、第1の実施形態(
図1〜
図2)の変形例であるため、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0034】
図10に示す通り、本実施形態においては、ナット1bを埋め込んだ第二熱可塑性樹脂部品3bの上下に、長尺のボルト6aを貫通させるための孔をあけた第一熱可塑性樹脂部品2b及び熱可塑性樹脂部品4bを設けることができる。また、ナット1bの、図中の上下両端側に多孔質部材5b及び5cを設ける。つまり第一熱可塑性樹脂部品2b及び熱可塑性樹脂部品4bのナット1bのねじ孔の延長上に位置する部分には、ボルトを通すためのボルト通し孔21b及び41bを備えることができる。そして、多孔質部材5b及び5cのナット1bのねじ孔の延長上に位置する部分には、ボルトを通すためのボルト通し孔52b及び52cを備えることができる。これにより、ボルトが図中の上下方向に貫通することができる。また、ナット1bの外周部には、前述した実施例1及び実施例2と同様に突起部12bが設けてある。この突起部12bにより、ナット1bが第二熱可塑性樹脂部品3bに対して、上下方向の位置がずれにくくなる。
【0035】
これにより、ナット1bの上端及び下端の端面両方を、接合対象となる第一熱可塑性樹脂部品2b及び熱可塑性樹脂部品4bで覆う内部に備えることができ、露出した部品表面の均一性を保つことができる。この際、
図10においては、多孔質部材5b及び5cの設置部となるナット1bの上端側及び下端側に、ナット1bと熱可塑性樹脂部材3bとで窪みを設けているが、この窪みは、第一熱可塑性樹脂部品2b及び熱可塑性樹脂部品4bに設けることもできる。また、前述したとおり、窪みの深さは、多孔質部材5b及び5cのそれぞれの厚さよりも浅く設けることもできる。
【0036】
本実施形態による方法製造した溶着構造体によれば、
図11に示す通りナット1bのねじ孔よりも長尺のボルト6bでこの溶着構造体を固定することができる。これにより、各部品同士をより強固に固定することができる。また、この第一熱可塑性樹脂部品2b及び熱可塑性樹脂部品4bに設けた孔の壁面には、貫通させるボルト6bに合わせたねじ部を設けることもできる。これにより、ボルト6bをさらに強固に固定することができる。なお、ここではナット1bを用いた例について説明したが、ナットの代わりにネジ構造がない円筒形状の中空部品を用いることができる。この場合には、例えば両端にネジが切ってあるロッドを中空部品に通して、両端からナットで締め付けることが考えられる。
【0037】
本実施例による方法製造した溶着構造体を例えば
図7の接合部101及び102に用いることで、ロアメンバ100及びロアメンバ102をより強固に固定することができる。
【0038】
[第4の実施形態]
第4の実施形態について、
図12を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態(
図1〜
図2)の変形例であるため、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図12は第4の実施形態による溶着構造体を、後述する多孔質部材5dを含む水平面の断面を上面から見た図である。
【0039】
図12に示す通り、本実施形態においては、多孔質部材5dは外周部の一部に、ナット1のねじ孔の中心方向に向かう切欠き17を設けることができる。この切欠きには、前述した振動溶着工程において、溶融した樹脂が流れ込み、その後の冷却で凝固する。これにより、多孔質部材5dを強固に固定することができ、ボルト6の付け外しによって外れることを防ぐ役割をする。また、この切欠きは、
図12に示すように一つを設けても良いが、複数設けることもできる。また、切欠き部の形状は、図のように四角形でも良いが、中心方向が鋭角の三角形や、曲線や、これらの組み合わせで形成されていても良い。さらに、切欠きの幅や深さや設置方向も可変であり、例えば、
図12では、切欠きの深さを多孔質部材5dの外周から中心に向けて、ナット1のねじ孔の投影部位置の外周手前まで設けている。この形状を採用した場合、溶融した樹脂部材が切欠き部に流れ込むものの、ねじ孔内部まで流れ込むことがないため、ねじ孔内に発生するバリを抑制する働きは確保される。
【0040】
一方で、この切欠きの長さを、ナット1のねじ孔の投影部位置の外周を超過して設けることもできる。この場合、前述した振動溶着過程において、溶融した樹脂がナット1のねじ孔内部に流れ込むこととなるが、その量は多孔質部材を設けない場合と比較して、ごく少量となる。このように、ねじ孔に流れ込んだ微量の樹脂によって形成されたバリはごく微小なバリとなる。また、この微小なバリは、ボルト6をナット1に締結する際にねじ山の溝やボルト6の端部に挟まることで、ボルト6の緩み止めとして作用しうる。
【0041】
[その他の態様]
前述した実施形態の説明は、本発明にかかる溶着構造体製造方法及び溶着構造体を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は前記した実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、前述した多孔質部材5の形状は切欠きを設ける以外にも、例えば外郭部に径方向へ向かう突起部等を設けることで、より強固に第二熱可塑性樹脂部品3に固定することもできる。
【0043】
他にも、前述した実施形態においてはいずれも第二熱可塑性樹脂部品3に一つのナット1を埋め込んでいるが、例えば複数のナットを埋め込むことで、複数のねじ孔を設けた溶着構造体を製造することもできる。
【0044】
さらに、前述した実施例ではいずれも第二熱可塑性樹脂部品3にナット1を埋め込んでいるが、例えばナット以外の、内部に空間を有する形状の部品を埋め込んだ部品を用いることでも、本発明を実施することができる。