(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0022】
[実施形態1]
<現金取扱装置の全体の構成>
本実施形態1に係る現金取扱装置1は、現金を取り扱う機能と、装置の内部で無線通信(ただし、電波だけでなく、可視光又は赤外光による光無線通信を含む)を行う機能とを有する装置である。現金取扱装置1は、例えば、主に金融機関で利用されている現金自動預け払い機(ATM)や、主に流通機関で利用されているキャッシュレジスタ、主に交通機関で利用されている券売機等の形態の装置として構成することができる。ここでは、現金取扱装置1がATMとして構成されている場合を想定して説明する。
【0023】
本実施形態1に係る現金取扱装置1は、装置の内部に収納された各ユニット(後記する金庫6)に対応して、ユニットの数と同数(又はそれ以上)の本体側通信部(後記するアンテナ9を備える通信部)とユニット側通信部(後記するアンテナ10を備える通信部)とを用意し、本体側通信部とユニット側通信部とを開口部(後記する21及び紙幣受渡口22)を介して1対1の関係で対向するように配置した構成になっている。
【0024】
以下、
図1を参照して、本実施形態1に係る現金取扱装置1の全体の構成につき説明する。
図1は、本実施形態1に係る現金取扱装置1の全体の概略構成を示す図である。
【0025】
図1に示すように、現金取扱装置1は、仕切部材4、金庫保護部5、金庫6、制御部7、記憶部8、及び、アンテナ9を有している。本実施形態1では、金庫6の個数が5個である場合を想定して説明する。ただし、金庫6の個数は、5個に限らず、増減することができる。
【0026】
以下、各金庫6を区別して説明する場合に、各金庫6を、
図1に示す左側のものから順に、「金庫6a」〜「金庫6e」として説明する。また、各金庫6a〜6eに対応する構成要素に対して符号の末尾に「a」〜「e」を付して説明する。
【0027】
仕切部材4は、現金取扱装置1の内部を複数の空間に仕切る部材である。ここでは、仕切部材4が現金取扱装置1の内部を上部側の空間2と下部側の空間3とに仕切っている場合を想定して説明する。また、仕切部材4が金庫保護部5の天板を構成しているものとして説明する。仕切部材4は、例えば、金属製の板材によって構成されている。
【0028】
金庫保護部5の天板を構成する仕切部材4には、金庫6の後記する紙幣受渡口22の上方に該当する位置に開口部21が形成されている。本実施形態1では、5個の金庫6a〜6eが下部側の空間3に配置されているため、5個の金庫6a〜6eの各紙幣受渡口22a〜22eに対応して5個の開口部21a〜21eが仕切部材4に形成されている。
【0029】
金庫保護部5は、金庫6a〜6eの周囲を覆う筺体である。金庫保護部5は、例えば、金属製の板材によって構成されている。
【0030】
金庫6は、内部に紙幣を収納する構成要素である。金庫6は、装置本体に対して取り付け(収納)及び取り外しが可能なユニットとして構成されている。現金取扱装置1は、金庫6が取り付けられているか否かを(金庫6が装置内に収納されているか否かを)図示せぬマイクロスイッチで検知する。本実施形態1では、5個の金庫6a〜6eが下部側の空間3に配置されている。各金庫6の筺体の天板には、金庫6の外部から内部に紙幣を取り込んだり、金庫6の内部から外部に紙幣を繰り出したりするための開口部22(以下、「紙幣受渡口22」と称する)が形成されている。
【0031】
制御部7は、装置全体の動作を制御する構成要素である。制御部7は、CPU及び記憶部8に予め格納された制御プログラムによって構成されている。制御部7は、現金取扱装置1の内部の上部側の空間2に配置されている。以下、制御部9を「本体側制御部7」と称する。
記憶部8は、各種のプログラムやデータを格納する構成要素である。
【0032】
アンテナ9は、本体側制御部7に接続された通信部(以下、「本体側通信部」と称する)の信号の送受信部である。アンテナ9は、現金取扱装置1の上部側の空間2に配置されている。アンテナ9は、金庫6に配置されたアンテナ10と1対1の関係で通信する。本実施形態1では、5個の金庫6a〜6eの各アンテナ10a〜10eに対応して5個のアンテナ9a〜9eが上部側の空間2に配置されている。アンテナ9は、信号線16(
図3参照)によって本体側制御部7と接続されており、本体側制御部7によって電波の送信を制御される。
【0033】
各金庫6は、アンテナ10、制御部11、及び、記憶部12を有している。
アンテナ10は、ユニット側である各金庫6の制御部11に接続された通信部(以下、「ユニット側通信部」と称する)の信号の送受信部である。アンテナ10は、各金庫6に配置されている。アンテナ10は、アンテナ9と1対1の関係で通信する。アンテナ10は、信号線17(
図3参照)によって制御部11と接続されており、制御部11によって電波の送信を制御される。
【0034】
制御部11は、金庫6やその周囲に配置された取込機構(図示せず)や繰出機構(図示せず)等の動作を制御する構成要素である。「取込機構」は、金庫6の外部から内部に紙幣を取り込む機構である。「繰出機構」は、金庫6の内部から外部に紙幣を繰り出す機構である。制御部11は、CPU及び記憶部12に予め格納された制御プログラムによって構成されている。制御部11は、ユニット側である各金庫6に配置されている。以下、制御部11を「ユニット側制御部11」と称する。
記憶部12は、各種のプログラムやデータを格納する構成要素である。
【0035】
<通信部の位置関係>
以下、
図2を参照して、アンテナ9とアンテナ10との位置関係につき説明する。
図2は、現金取扱装置1の通信部の概略構成を示す図である。
【0036】
図2に示すように、アンテナ9は、矢印A1の方向に強い指向性を有する構成になっている。また、アンテナ10も、矢印A2の方向に強い指向性を有する構成になっている。
【0037】
金庫保護部5の天板を構成する仕切部材4には、紙幣受渡口22の上方に該当する位置に開口部21が形成されている。また、金庫6の筺体の天板には、紙幣受渡口22が形成されている。アンテナ9及びアンテナ10は、開口部21及び紙幣受渡口22を介して、1対1の関係で対向するように配置されている。したがって、アンテナ9、開口部21、紙幣受渡口22、及び、アンテナ10は、直線上に配置された位置関係(又は、それに近い位置関係)になっている。
【0038】
アンテナ9及びアンテナ10は、このような位置関係になっているため、金庫保護部5や金庫6の筺体等によって電波が妨げられることがなく、互いの間で電波を良好に送受信することができる。
【0039】
<通信部の周囲の構成>
以下、
図3及び
図4を参照して、アンテナ9及びアンテナ10の周囲の構成につき説明する。
図3及び
図4は、それぞれ、アンテナ9とアンテナ10との間に配置される搬送ガイド31の概略構成を示す図である。
図3は、搬送ガイド31を開口部21に取り付けた場合の構成を示している。
図4(a)は、斜め上方向から見た搬送ガイド31の構成を示しており、また、
図4(b)は、搬送ガイド31を分解した場合の構成を示している。
【0040】
なお、ここでは、右側に配置された構成要素と左側に配置された構成要素とを区別して説明する場合に、右側に配置された構成要素に対して符号の末尾に「R」を付し、また、左側に配置された構成要素に対して符号の末尾に「L」を付して説明する。
【0041】
図3に示すように、金庫保護部5の開口部21及び金庫6の紙幣受渡口22には、搬送ガイド31が取り付けられる。搬送ガイド31は、紙幣99の搬送を案内する部材である。
【0042】
搬送ガイド31の中央部32の内部には、上下方向に貫通する孔(溝を含む)34が形成されている。これにより、中央部32は、中空な形状になっている。中央部32は、紙幣99を搬送する搬送部として機能する。
【0043】
また、搬送ガイド31の端部33の内部には、上下方向に貫通する孔35が形成されている。これにより、端部33は、中空な形状になっている。アンテナ9及びアンテナ10は、端部33の孔35(
図3に示す例では、左側の端部33Lの孔35L)を介して、上下方向に対向するように配置されている。これにより、端部33は、電波を伝播させる部位として機能する。ただし、アンテナ9及びアンテナ10が配置されない側の端部33(
図3に示す例では、右側の端部33R)は、中実な構成(すなわち、孔35が形成されていない構成)にしてもよい。また、アンテナ9及びアンテナ10は、
図3及び
図4に示すように、互いが対向した位置関係になっていれば、斜め方向に傾けて配置することもできる。
【0044】
搬送ガイド31の端部33の上部部分には、金庫保護部5の開口部21の周囲部分と係合する係合部39が形成されている。
図3に示す例では、係合部39は、紙幣99の搬送方向(中央部32に形成された中空な形状の方向)に対して垂直に交差する方向に突出する突起として構成されている。搬送ガイド31は、係合部39によって所定の位置で固定される。
【0045】
図4に示すように、搬送ガイド31は、例えば、第1ガイド筺体36と第2ガイド筺体37とを互いの向かい合わせ面38で向かい合わせて接合することによって構成することができる。
【0046】
<搬送ガイドの変形例>
搬送ガイド31は、様々な形状に変形することができる。以下、
図5を参照して、搬送ガイド31の変形例につき説明する。
図5は、変形例に係る搬送ガイド41の概略構成を示す図である。
図5(a)は、搬送ガイド41を開口部21に取り付けた場合の構成を示しており、また、
図5(b)は、斜め上方向から見た搬送ガイド41の構成を示している。
【0047】
図5に示すように、変形例に係る搬送ガイド41は、
図3及び
図4に示す搬送ガイド31と比較すると、上下方向に貫通する孔35の代わりに、斜め方向に貫通する孔45が端部33に形成されている点で相違している。
【0048】
アンテナ9及びアンテナ10は、孔45を介して、斜め方向に対向するように配置されている。ただし、孔45は、端部33ではなく、中央部32に形成することも可能である。
【0049】
<現金取扱装置の動作>
以下、
図2を参照して、現金取扱装置1の動作につき説明する。なお、現金取扱装置1の動作は、記憶部に読み出し自在に予め格納されたプログラムによって規定されており、制御部によって実行される。また、装置本体側の制御部7とユニット(金庫6)側の制御部11との間の通信は、受信側の制御部が通信によって受信されたデータを記憶部に一旦格納し、その後に、データを記憶部から読み出すことによって、行われる。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本体側制御部7及びユニット側制御部11は、金庫6が現金取扱装置1に取り付けられたときに、それぞれに接続されたアンテナ9とアンテナ10との間で電波を送受信することによって、適正に無線通信を行うことができるか否かを検証する。
【0051】
例えば、装置本体側から金庫6側に無線通信を行う場合に、現金取扱装置1は、アンテナ9からアンテナ10に電波を送信する。逆に、金庫6側から装置本体側に無線通信を行う場合に、現金取扱装置1は、アンテナ10からアンテナ9に電波を送信する。
【0052】
アンテナ9は、矢印A1の方向に強い指向性を有している。また、アンテナ10は、矢印A2の方向に強い指向性を有している。そして、アンテナ9、開口部21、紙幣受渡口22、及び、アンテナ10は、直線上に配置された位置関係(又は、それに近い位置関係)になっている。
【0053】
このような現金取扱装置1は、方向を限定した構成で電波を送信することにより、金庫保護部5や金庫6の筺体等によって電波が妨げられることがなく(つまり、受信電波が弱くなることがなく)、アンテナ9とアンテナ10との間で電波を良好に送受信することができる。したがって、現金取扱装置1は、従来の現金取扱装置よりも損失の少ない無線通信を行うことができ、その結果、無線通信のエラーの発生を低減することができる。
【0054】
係る構成において、現金取扱装置1では、本体側制御部7とユニット側制御部11とは、アンテナ9及びアンテナ10を介して、様々な情報を送受信する。
【0055】
例えば、本体側制御部7が金庫6aに収納されている紙幣の繰り出し動作をユニット側制御部11aに指示する場合に、繰り出し動作を指示するコマンドがアンテナ9aからアンテナ10aに送信される。コマンドには、例えば、繰り出す紙幣の金種や枚数等の情報が含まれている。
【0056】
ユニット側制御部11aは、コマンドに応答して金庫6aの繰出機構(図示せず)を作動させる。そして、ユニット側制御部11aは、コマンドに応答するレスポンス情報を本体側制御部7に送信する。この場合に、レスポンス情報がアンテナ11aからアンテナ9aに送信される。レスポンス情報には、例えば、繰り出した紙幣の金種や枚数、状態監視結果(例えば、所定の箇所において紙幣を正常に搬送させることができたか否かを表すセンシング結果)等の情報が含まれている。
【0057】
ユニット側制御部11aは、アンテナ9aを介してユニット側制御部11aからレスポンス情報を取得し、取得したレスポンス情報を記憶部8に格納する。
【0058】
ただし、本体側制御部7とユニット側制御部11とは、このような情報に限らず、他の情報を送受信することができる。例えば、金庫6が現金取扱装置1に取り付けられた場合に、その金庫6のユニット側制御部11は、金庫6の内部に収納されている紙幣の金種や枚数、金庫6の寿命等の情報を記憶部12から読み出して、アンテナ11を介して本体側制御部7に送信することができる。
【0059】
以上の通り、本実施形態1に係る現金取扱装置1によれば、装置の内部で行われる無線通信のエラーの発生を低減することができる。
【0060】
[実施形態2]
<現金取扱装置の全体の構成>
本実施形態2では、装置の内部に収納された各ユニット(金庫6)に複数のユニット側通信部(後記するアンテナ61〜65を備える通信部)を用意し、複数のユニット側通信部の中から、通信に用いるユニット側通信部として、本体側通信部(アンテナ9を備える通信部)との間で最も通信を良好に行えるものを選択して使用する現金取扱装置1Aを提供する。
【0061】
以下、
図6を参照して、本実施形態1に係る現金取扱装置1Aの全体の構成につき説明する。
図6は、本実施形態2に係る現金取扱装置1Aの全体の概略構成を示す図である。
【0062】
図6に示すように、本実施形態2に係る現金取扱装置1Aは、実施形態1に係る現金取扱装置1(
図1参照)と比較すると、(a)5つのアンテナ9a〜9eの代わりに、1つのアンテナ59を上部側の空間2に有するとともに、1つのアンテナ10の代わりに、複数(ここでは、5つ)のアンテナ61〜65を各金庫6a〜6eに有する点、及び、(b)ユニット側制御部11の代わりに、ユニット側制御部71を各金庫6a〜6eに有する点で相違している。ただし、アンテナ61〜65の数は、5つに限らず、増減することができる。
【0063】
アンテナ59は、本体側制御部7に接続された本体側通信部の信号の送受信部である。アンテナ59は、現金取扱装置1の上部側の空間2に配置されている。
アンテナ61〜65は、各金庫6のユニット側制御部71に接続されたユニット側通信部の信号の送受信部である。アンテナ61〜65は、各金庫6に配置されている。
【0064】
アンテナ59は、信号線によって本体側制御部7と接続されており、本体側制御部7によって電波の送信を制御される。一方、アンテナ61〜65は、信号線によってユニット側制御部71と接続されており、ユニット側制御部71によって電波の送信を制御される。アンテナ59は、開口部21を介してアンテナ61〜65と1対複数の関係で配置されており、各アンテナ61〜65との間で電波を送受信することができる。
【0065】
ユニット側制御部71は、ユニット側制御部11と同様に、金庫6やその周囲に配置された取込機構(図示せず)や繰出機構(図示せず)等の動作を制御する構成要素である。ただし、ユニット側制御部71は、ユニット側制御部11と比較すると、アンテナ61〜65の中から、通信に用いるユニット側通信部として、最も通信を良好に行えるアンテナ(受信強度の最も強いアンテナ)を選択する機能を有している点で相違している。ユニット側制御部71は、特許請求の範囲に記載された「選択部」に相当する。
【0066】
<ユニット側制御部の構成>
以下、
図7を参照して、ユニット側制御部71の構成につき説明する。
図7は、ユニット側制御部71の概略構成を示す図である。ユニット側制御部71の構成は、各金庫6a〜6eで共通の構成になっている。
【0067】
図7に示すように、ユニット側制御部71は、金庫制御部72、及び、切替部73を備えている。
金庫制御部72は、各アンテナ61〜65の中から、通信に用いるユニット側通信部を選択する機能手段である。金庫制御部72は、各アンテナ61〜65で受信された電波の受信強度を測定する機能を有しており、各アンテナ61〜65の受信強度をアナログ値として測定し、測定された値を記憶部12に記録する。
切替部73は、金庫制御部72と各アンテナ61〜65との接続を切り換える機能手段である。切替部73は、アンテナ61〜65のうちのいずれか1つを金庫制御部72と接続させる。
【0068】
<通信部の位置関係>
以下、
図8及び
図9を参照して、アンテナ59とアンテナ61〜65との位置関係につき説明する。
図8は、現金取扱装置1Aの通信部の概略構成を示す図である。
図9は、現金取扱装置1Aの内部での電波の伝播状況を模式的に示す図である。
【0069】
図8に示す例では、1つの金庫6につき、5つのアンテナ61〜65が配置されている。金庫保護部5の天板である仕切部材4には、各金庫6に対応して、開口部21が形成されている。
【0070】
各開口部21の位置は、金庫6毎に異ならせることができる。例えば、
図8に示す例では、開口部21aが金庫6aのアンテナ61の直上に形成されており、また、開口部21bが金庫6bのアンテナ62の直上に形成されている。
【0071】
各アンテナ61〜65は、開口部21の下方に位置する場合に、アンテナ59との間に遮断物がないため、受信強度が最も強くなる傾向にある。そのため、金庫6aでは、アンテナ61の受信強度が最も強くなり、また、金庫6bでは、アンテナ62の受信強度が最も強くなる。他の金庫6b〜6eについても、同様に、開口部21の下方に位置するアンテナの受信強度が最も強くなる。
【0072】
したがって、現金取扱装置1Aでは、各アンテナ61〜65と開口部21との位置関係によって、金庫6毎に、受信強度の最も強いアンテナが異なっている。そこで、現金取扱装置1Aは、金庫6毎に、アンテナ61〜65の中から、通信に用いるユニット側通信部として、最も通信を良好に行えるアンテナ(通信強度の最も強いアンテナ)を選択するように動作する。
【0073】
<現金取扱装置の動作>
以下、
図7及び
図9を参照して、現金取扱装置1Aの動作につき説明する。
現金取扱装置1Aは、例えば、金庫6が現金取扱装置1に取り付けられたときに、以下の動作を行う。ここでは、
図9に示す金庫6aと金庫6bとが現金取扱装置1に取り付けられて、金庫6aと金庫6bとを使用可能な状態にする処理が行われる場合を想定して説明する。
【0074】
この場合に、本体側制御部7と金庫6aのユニット側制御部71と金庫6bのユニット側制御部71とが、図示せぬマイクロスイッチから出力される出力信号に基づいて、金庫6aと金庫6bとが取り付けられたこと(金庫6aと金庫6bとが現金取扱装置1の内部に収納されたこと)を検知する。
【0075】
これに応答して、金庫6aと金庫6bとにおいて、まず、ユニット側制御部71の切替部73(
図7参照)が、金庫制御部72とアンテナ61とを接続する。
【0076】
次に、
図9に示すように、本体側制御部7が、アンテナ59を介してテストデータの電波を下部側の空間3(
図6参照)に向けて送信する。
【0077】
このとき、金庫6aでは、遮蔽物がアンテナ61の上方にないため、アンテナ61は、損失の少ない状態でテストデータの電波を受信することができる。
【0078】
しかしながら、金庫6bでは、遮蔽物(ここでは、仕切部材4)がアンテナ61の上方にあるため、テストデータの電波が遮蔽物で反射する。そして、アンテナ61には、開口部21bを介して金庫6bの筺体の内部に進入し、金庫6bの筺体の内部で反射した分(回り込んだ分)のテストデータの電波が到達する。そのため、金庫6bでは、アンテナ61は、損失の多い状態でテストデータの電波を受信する。
【0079】
金庫6a及び金庫6bの各金庫制御部72は、受信された電波の受信強度を測定し、測定された値を記憶部12に記録する。測定された値が記憶部12に記録されると、切替部73が、金庫制御部72とアンテナ61との接続を切断し、代わりに、金庫制御部72とアンテナ62とを接続する。つまり、切替部73は、金庫制御部72とアンテナとの接続の切替を行う。
【0080】
以降、現金取扱装置1Aは、各アンテナ62〜65の順に、同様の処理を行う。つまり、現金取扱装置1Aは、金庫6a及び金庫6bの各アンテナ62〜65に対して金庫制御部72との接続と接続の切替とを繰り返し行って、電波の受信強度を測定し、測定された値を記憶部12に記録する。
【0081】
この後、金庫6a及び金庫6bのすべてのアンテナ61〜65の受信強度の測定が完了したときに、金庫6a及び金庫6bの金庫制御部72は、記憶部12に記録された各アンテナ61〜65の受信強度の測定された値を参照する。
【0082】
そして、金庫制御部72は、アンテナ61〜65の中から、通信に用いるユニット側通信部として、最も通信を良好に行えるアンテナ(受信強度の最も強いアンテナ)を選択する。
【0083】
この後、金庫6a及び金庫6bのユニット側制御部71(例えば、切替部73)は、金庫制御部72によって選択されたアンテナが通信時に常に使用されるように、そのアンテナとの接続設定を行う。
【0084】
以降、すべての金庫6a〜6eの各ユニット側制御部71は、金庫6の取り外しが行われるまで、アンテナの接続設定を変更せずに、無線通信を行う。
【0085】
このような現金取扱装置1Aは、アンテナ59とアンテナ61〜65との間の通信強度を最適化した状態で無線通信を行うことができる。
【0086】
また、現金取扱装置1Aは、金庫6毎に、開口部21を異なる位置に形成することができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0087】
また、現金取扱装置1Aは、無線通信の強度によってアンテナ61〜65の実装位置を特定することができる。そのため、現金取扱装置1Aは、金庫6を取り付けるときに、アンテナ61〜65の実装位置を調整(変更)することなく、共通仕様の構造の金庫6を金庫保護部5の内部のいずれの場所にも取り付けることができる。
【0088】
<ユニット側通信部の配置位置>
ユニット側通信部(アンテナ61〜65)の配置位置は、例えば、
図10に示すように、金庫6の様々な場所に設定することができる。
図10は、ユニット側通信部の信号の送受信部(アンテナ61〜65)の配置位置を模式的に示す図である。
【0089】
図10に示す例では、アンテナ61〜65は、金庫6の様々な場所に分散して設けられている。係る構成において、ユニット側制御部71は、金庫6が現金取扱装置1に取り付けられたときに、通信に用いるユニット側通信部として、受信強度の最も強いアンテナを選択するため、装置の内部で行われる無線通信のエラーの発生を低減することができ、本体側制御部7と通信を良好に行うことができる。しかも、金庫6は、アンテナ61〜65を様々な場所に分散して設けることができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0090】
以上の通り、本実施形態2に係る現金取扱装置1Aによれば、実施形態1に係る現金取扱装置1と同様に、装置の内部で行われる無線通信のエラーの発生を低減することができる。
【0091】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0092】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に追加したり、置き換えたりすることができる。また、本発明は、ある実施形態の構成から一部の構成を削除することができる。
【0093】
また、例えば、前記した実施形態2に係る現金取扱装置1Aは、
図11に示す現金取扱装置1Bのように変形することができる。
図11は、実施形態2の変形例に係る現金取扱装置1Bの全体の概略構成を示す図である。
【0094】
現金取扱装置1Bは、装置の内部に複数の本体側通信部(アンテナ59を備える通信部)を用意するとともに、装置の内部に収納された各ユニット(金庫6)に1つ以上のユニット側通信部(アンテナ61〜65を備える通信部)を用意し、1つ以上のユニット側通信部の中から、通信に用いるユニット側通信部として、本体側通信部との間で最も通信を良好に行えるものを選択して使用するように構成された装置である。
【0095】
図11に示すように、現金取扱装置1Bは、実施形態2に係る現金取扱装置1A(
図6参照)と比較すると、(a)複数の本体側通信部(アンテナ59を備える通信部)を上部側の空間2に有するとともに、(b)3つのユニット側通信部(アンテナ61〜63を備える通信部)を金庫6aに有し、2つのユニット側通信部(アンテナ61,62を備える通信部)を金庫6bに有し、1つのユニット側通信部(アンテナ61を備える通信部)を金庫6cに有する点で相違している。ただし、各金庫6のユニット側通信部の数は、増減することができる。
【0096】
本体側通信部(アンテナ59を備える通信部)は、少なくとも1つのアンテナ59が1つの金庫6に対応できるように、金庫6の数以上に設けられている。本体側通信部及びユニット側通信部は、開口部21を介して1対1又は1対複数の関係で配置されている。
【0097】
現金取扱装置1Bは、実施形態2に係る現金取扱装置1A(
図6参照)と同様に動作する。その結果、選択部(ユニット側制御部71)の金庫制御部72は、各金庫6に少なくとも1つ以上配置されたアンテナの中から、通信に用いるユニット側通信部として、最も通信を良好に行えるアンテナ(受信強度の最も強いアンテナ)を選択する。
【0098】
なお、その際に、アンテナが1つしか配置されていない金庫6(例えば、
図11に示す金庫6c)では、金庫制御部72は、自動的に、通信に用いるユニット側通信部として、配置されているアンテナを選択する。
【0099】
そして、各金庫6のユニット側制御部71(例えば、切替部73)は、金庫制御部72によって選択されたアンテナが通信時に常に使用されるように、そのアンテナとの接続設定を行う。
【0100】
このような現金取扱装置1Bは、実施形態2に係る現金取扱装置1A(
図6参照)と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
また、例えば、前記した実施形態1及び実施形態2では、現金取扱装置が現金自動預け払い機(ATM)として構成されている場合を想定して説明した。しかしながら、本発明は、ATMに限らず、例えば、キャッシュレジスタや券売機等の現金取扱装置であって、かつ、装置本体側と装置の内部に収納されたユニット側との間で通信を行う現金取扱装置に適用することができる。
【0102】
また、例えば、前記した実施形態1及び実施形態2では、信号を伝達する手段として電波を用いる場合を想定して説明した。したがって、前記した実施形態1及び実施形態2では、本体側通信部及びユニット側通信部の信号の送受信部がアンテナによって構成されている。しかしながら、本発明は、信号を伝達する手段として電波以外の電磁波(例えば、可視光や赤外光)を用いることができる。この場合に、本体側通信部及びユニット側通信部の信号の送受信は、可視光や赤外光の発光素子や受光素子として構成される。