(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下向流形式で原水が通水され且つ上向流形式で洗浄水が供給される長繊維濾過装置であって、塔(1)頂部には原水通水配管と洗浄排水排出配管とが設けられ、塔(1)底部には処理水排出配管と洗浄水供給配管とが設けられ、塔(1)内部には芯紐(41)の周側に濁質捕捉材を形成して成る複数の濾材(4)が装填され、複数の濾材(4)は原水通水時には塔(1)の下流側に押圧されて濁質捕捉材の一部が圧密状態を形成し且つ洗浄水供給時には前記の圧密状態を解除して粗状態を形成し得る様に流水方向に沿って屈曲変形可能な懸垂状態で吊り下げられ、前記の濁質捕捉材は、芯紐(41)の周側に形成された編組状モールコード(42)から成り、編組状モールコード(42)は、組紐を構成する素線(紐状体)のうち右回り、左回りのどちらか1方向の素線でループ(42a)を形成し、この素線及び他方向の素線で芯部の組紐体(42b)を形成した構造を有し、編組状モールコード(42)の組紐体(42b)は、50〜600mm間隔毎に2〜20mmの幅の縫付加工(42c)によって芯紐(41)に固定されていることを特徴とする長繊維濾過装置。
【背景技術】
【0002】
長繊維濾過装置は、基本的には、塔の内部には芯紐の周側に濁質捕捉材を形成して成る複数の濾材が装填され、複数の濾材は原水通水時には塔の下流側に押圧されて濁質捕捉材の一部が圧密状態を形成し且つ洗浄水供給時には前記の圧密状態を解除して粗状態を形成し得る様に流水方向に沿って屈曲変形可能な懸垂状態で吊り下げられた構造を有し、原水中の濁質の除去に有効であり、濁質除去装置と呼ばれることもある(特許文献1)。濁質捕捉材には、例えば、特開2002−061041号公報(特許文献2)に記載の各種形状のモールコードを使用することが出来、モールコードの芯紐への固定は接着剤によって行うことが出来る。
【0003】
ところで、長期間の運転においては、前記の圧密状態と粗状態とは繰り返し行われるため、芯紐への固定に使用した接着剤の水中での応力劣化が助長され、長期の運転中にモールコードの芯紐とモールコードとの固定状態に部分的な剥離が生じ、モールコードが濁質捕捉材として機能しなくなるという欠点がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
先ず、
図1に示す長繊維濾過装置について説明する。分図(a)は原水処理運転の説明図であり、分図(b)は洗浄運転の説明図である。この長繊維濾過装置は、基本的には、前述の先行技術(特許第4649799号公報)に記載の濁質除去装置と同一である。
【0011】
本発明で使用する長繊維濾過装置は、下向流形式で原水が通水され且つ上向流形式で洗浄水が供給される長繊維濾過装置である。従って、塔(1)の頂部にはバルブ付であって且つ原水タンクに連結された原水通水配管とバルブ付の洗浄排水排出配管とが設けられ、塔(1)の底部にはバルブ付の処理水排出配管と洗浄水供給配管と空気供給配管とが設けられている。
図1に示す装置においては、原水処理運転および洗浄運転で使用される配管は共通しており、バルブ操作によって水の流れ方向が変更される。
【0012】
すなわち、原水処理運転の場合、バルブ(61)及び(62)のみが開状態とされ、濁質を含む原水は、バルブ(61)から配管(51)を経由して塔(1)内に通水される。この際、濾材(4)は後述する様に圧密状態を呈し、原水に同伴された濁質は濾材(4)によって捕捉される。濁質を含まない処理水は、配管(52)を経由してバルブ(62)から排出される。
【0013】
一方、洗浄運転の場合、原水処理運転時に開状態であったバルブ(61)及び(62)が閉止され、洗浄水は、バルブ(64)から配管(52)を経由して塔(1)内に供給される。一方、空気は、バルブ(63)から配管(53)を経由して塔(1)内に供給される。濾材(4)は後述する様に圧密状態を解除し、濾材(4)から濁質が除去される。空気のバブリング作用により、濾材(4)が振動させられ、濾材(4)に付着した濁質の剥離が促進される。濁質を含む洗浄水は、配管(51)を経由してバルブ(65)から排出される。
【0014】
塔内部には上部支持体(2)と下部支持体(3)とが配置され、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間には複数の濾材(4)が当該濾材の端部の上部吊り紐(7)と下部吊り紐(8)とによって懸垂状態で固定されている。
【0015】
上部支持体(2)及び下部支持体(3)の構造は、水の流れを妨げず且つ吊り紐(7)及び(8)によって濾材(4)を固定し得る構造である限り、特に制限されず、例えば、格子構造、目皿構造、編目構造などを適宜採用し得る。
【0016】
濾材(4)は、後述するように芯紐の周側に特定構造の濁質捕捉材を形成して成る。濾材(4)、芯紐、上部吊り紐(7)及び下部吊り紐(8)は、流水方向に沿って屈曲変形可能に構成される。斯かる構成は、素材の種類、形態、太さ等の選択によって達成される。上記の各要素は、通常、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂素材にて構成される。なお、濾材(4)の芯紐(41)が長く濁質捕捉材の両端(具体的には後述の組紐体(42b)の両端)から突出している場合は、両端突出部の芯紐を上部吊り紐(7)及び下部吊り紐(8)として使用することが出来る。
【0017】
長繊維濾過装置において、複数の濾材(4)はその芯紐の両端を塔(1)内で固定されることにより原水通水時には塔(1)の下流側に押圧されて濁質捕捉材の一部が圧密状態を形成し且つ洗浄水供給時には前記の圧密状態を解除して粗状態を形成し得る様に流水方向に沿って屈曲変形可能な懸垂状態で吊り下げられる必要がある。斯かる状態は、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間の距離(LA)、濾材(4)の長さ(LB)、上部吊り紐(7)の長さ(Lb1)、下部吊り紐(8)の長さ(Lb2)が以下に規定する式(1)〜(3)を満足することによって達成することが出来る。
【0018】
[数1]
LA<(Lb1+LB+Lb2) 式(1)
LB<LA 式(2)
(LB+Lb2)<LA<(LB+Lb1) 式(3)
【0019】
すなわち、長繊維濾過装置において、式(1)に示す様に、濾材(4)と上部支持体(2)と下部支持体(3)の合計長さ(Lb1+LB+Lb2)は、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間の距離(LA)より長い。従って、上記の各要素の何れかは塔(1)内に弛んだ状態で存在する。
【0020】
また、式(2)に示す様に、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間の距離(LA)は、濾材(4)の長さ(LB)より長い。従って、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間には流水方向に沿って濾材(4)が存在しない領域が形成されている。換言すれば、流水方向に沿って濾材(4)の可動範囲が形成されている。なお、
図1の模式的説明図では濾材(4)同士の間に隙間が存在しているが、実際は濾材(4)同士の間に隙間はなく、複数の濾材(4)は圧密状態となる様に懸垂され、従って、複数の濾材(4)の全体は、流水方向(上下方向)に沿ってのみ移動する。
【0021】
更に、式(3)に示す様に、濾材(4)と上部吊り紐(7)との合計長さ(LB+Lb1)は、濾材(4)と下部吊り紐(8)との合計長さ(LB+Lb2)より長い。従って、下向流形式で原水が通水される原水処理運転時においては、
図1(a)に示す様に、濾材(4)は下部支持体(3)に当接して下部吊り紐(8)と共に塔底部近傍で圧密され、上向流形式で洗浄水が供給される洗浄運転時においては
図1(b)に示す様に、濾材(4)は上部支持体(2)に当接せずに下部吊り紐(8)と共に塔内の上方に伸長した状態となる。
【0022】
以上の結果、長繊維濾過装置においては、原水処理運転時における濾材の圧密状態と洗浄運転時における濾材の圧密状態の解除とにより、濾材による濁質の捕捉と排出とが効率的に行われる。
【0023】
本発明で使用する長繊維濾過装置において、前記の各要素は、以下に規定する式(1’)〜(3’)を満足するのが好ましい。式(1’)〜(3’)中の各要素の大小関係の数値は、装置の経済性を考慮して決定された値である。
【0024】
[数2]
1.01×LA<(Lb1+LB+Lb2)<2.00×LA 式(1’)
1.01×LB<LA<1.50×LB 式(2’)
1.01×(LB+Lb2)<LA<1.01
×(LB+Lb1) 式(3’)
【0025】
長繊維濾過装置の前記した各要素の寸法は次の通りである。すなわち、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間の距離(LA)は100〜400cm、濾材(4)の長さ(LB)は70〜300cm、上部吊り紐(7)の長さ(Lb1)は10〜250cm、下部吊り紐(8)の長さ(Lb2)は5〜20cm、塔(1)の直径は20〜360cmである。
【0026】
次に、
図2に示す濾材(4)について説明する。濾材(4)は芯紐(41)の周側に濁質捕捉材である編組状モールコード(42)を形成して成る。洗浄水供給時の圧密状態を解除した状態における編組状モールコード(42)の長さは、特に制限されないが、通常1〜5m以上である。斯かる長さは、塔(1)内部に装填前の濾材(4)について、編組状モールコード(42)の長さ、実際には後述する組紐体(42b)の長さを測定することによって確認することが出来る。
【0027】
ところで、モールコードの芯紐への固定を接着剤によって行う従来の長繊維濾過装置が大型化された場合、前述の圧密状態と粗状態とが長い距離で行われるため、接着剤の水中での応力劣化が一層助長され、長期の運転中にモールコードの芯紐とモールコードとの固定状態に部分的な剥離が生じ易くなる。これに対し、本発明の長繊維濾過装置は、モールコードの芯紐への固定に接着剤を使用していないため、上記のような問題は全くない。従って、本発明の長繊維濾過装置は、編組状モールコード(42)の前記の長さが1m以上、好ましくは1.5m以上の大型装置の場合に特に有効であると言える。
【0028】
編組状モールコード(42)は、基本的には、前述の先行技術(特開2002−061041号公報)に数多く記載されたモールコードの1つであり、この先行技術においては、実公昭63−50298号公報に記載の螺旋条の編組状モールコードとして紹介されている。そして、編組法を採用して製造するものであるため、生産性の点でおのずから限界があると指摘されている。
【0029】
しかしながら、長繊維濾過においては、基本的な構造として実公昭63−50298号公報に記載の螺旋条の編組状モールコードが好適である。すなわち、本発明で使用する編組状モールコード(42)は、上記の編組状モールコードと同様に構成され、組紐を構成する素線(紐状体)のうち右回り、左回りのどちらか1方向の素線でループ(42a)を形成し、この素線及び他方向の素線で芯部の組紐体(42b)を形成した構造を有する。
【0030】
但し、実公昭63−50298号公報に記載の螺旋条の編組状モールコードは、「ループを形成する方向の素線には、天然繊維、化学繊維などの伸度の比較的小さい繊維素材を使用し、他方向の素線のうち少なくとも1本以上を弾性伸縮する天然ゴム、合成ゴム、弾性化学繊維、等の素材で構成し、その弾性回復力によって螺旋状の編組状モールコード形成する」こととしているが、本発明ではループを形成する方向の素線と他方向の素線の材質とが異なる必要はない。むしろ、弾性回復力を利用した螺旋状の形成は本発明における濁質捕捉材としての使用には不利となる。
【0031】
図2においては、ループ(42a)の理解のため、芯部の組紐体(42b)や後述の縫付加工(42c)の説明のため、素線は、便宜的に、1本のモノフィラメント糸によって表現されているが、実際の編組状モールコードは、
図3に示すような外観を有する。斯かる編組状モールコードは、素線としてマルチフィラメント糸を使用して制作することが出来る。糸径は、極細のものから極太のものまで任意に選択することが出来る。また、捲縮加工されたものであってもよい。
【0032】
本発明の最大の特徴は、編組状モールコード(42)の組紐体(42b)が50〜600mm間隔毎に2〜20mmの幅の縫付加工(42c)によって芯紐(41)に固定されている点に存する。
【0033】
縫付加工(42c)は、図示を省略しているが、通常、組紐体(42b)の両端部から行われる。縫付加工(42c)の間隔が前記の範囲未満の場合は、縫付加工(42c)の形成が密に過ぎて組紐体(42b)の屈曲変形性(柔軟性)が損なわれ、前記の範囲を超える場合は、芯紐(41)への組紐体(42b)の固定が十分とは言えない。一方、縫付加工(42c)の幅が前記の範囲未満の場合は、芯紐(41)への組紐体(42b)の固定が十分とは言えず、前記の範囲を超える場合は、組紐体(42b)の屈曲変形性(柔軟性)が損なわれる。何れの場合にも編組状モールコード(42)の濁質捕捉材としての機能が低下する。縫付加工(42c)は通常ミシン掛けにより行われるが、ミシン掛けは芯紐(41)と直角方向に行われる。縫付加工(42c)に使用する糸は前述の合成樹脂素材にて構成される。
【0034】
次に、
図1に示す長繊維濾過装置の運転方法について説明する。本長繊維濾過装置の運転方法は、原水処理運転と洗浄運転とを繰り返し行なうことから成る。
【0035】
原水処理運転(
図1(a))においては、前述の様に、バルブ(61)及び(62)のみが開状態とされ、濁質を含む原水は、バルブ(61)から配管(51)を経由して塔(1)内に通水される。原水に同伴された濁質は濾材(4)によって捕捉される。濁質を含まない処理水は、配管(52)を経由してバルブ(62)から排出される。
【0036】
そして、原水処理運転において、例えば、原水通水ポンプ(図示せず)の圧力測定、処理水の水質分析などの手段により、長繊維濾過装置の性能が低下した時点で原水処理運転を停止する。原水処理運転の停止は一定時間経過毎に自動的行なってもよい。
【0037】
洗浄運転(
図1(b))においては、前述の様に、原水処理運転時に開状態であったバルブ(61)及び(62)が閉止され、洗浄水は、バルブ(64)から配管(52)を経由して塔(1)内に供給される。一方、空気は、バルブ(63)から配管(53)を経由して塔(1)内に供給される。空気の供給は、洗浄水の供給と同時に始めてもよく、また、洗浄水の供給よりも遅れて始めてもよい。濁質を含む洗浄水は、配管(51)を経由してバルブ(65)から排出される。この際、濾材(4)は上部支持体(2)に当接せずに下部吊り紐(8)と共に塔内の上方に伸長した状態となる。しかしながら、濾材(4)の上部に濃縮された濁質が除去されるまでの長時間の洗浄運転は、多量の洗浄水を使用して不経済となるので行なう必要はない。
【0038】
前記の洗浄運転においては、洗浄水として、原水または濁質除去処理水を使用することが出来る。濁質除去処理水としては、濾過器や膜(逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜など)で処理された水の他、本発明で使用する濁質除去装置で処理した水が使用される。