(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用変速機の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1〜
図19は、本発明に係る一実施形態の車両用変速機を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、エンジン2に連結される自動変速機3とを備えており、エンジン2の出力は、自動変速機3からドライブシャフト24L、24R(
図2参照)を介して図示しない駆動輪に伝達される。なお、本実施形態の自動変速機3は、本発明の車両用変速機を構成する。
【0017】
車両1の前方にはダッシュパネル1Aが設けられており、車両1は、ダッシュパネル1Aによってエンジン2および自動変速機3が搭載される前方側のエンジンルーム1Bと、乗員が乗り込む後方側の車室1Cとが仕切られる。本実施形態の車両1は、フロントエンジンフロントドライブ式の車両、所謂、FF車両である。
【0018】
なお、本実施形態では、車室1Cに備えられた運転席に着座した運転者から見た前後方向、左右方向、および上下方向と一致するように、
図1〜
図19中で前、後、右、左、上、下の文字を付して矢印を記している。また、後方、前方という表現は、車両1の前後方向に対して後方であることおよび前方であることを意味し、車両1の前後方向後方および前方は、以下、単に後方、前方と表現する。
【0019】
自動変速機3は、トランスミッションケース4を備えている。
図2において、トランスミッションケース4の内部には図示しない単板式クラッチと、変速機構9と、ディファレンシャル装置50とが収容されており、ディファレンシャル装置50は、変速機構9の後方に設置されている。
【0020】
自動変速機3は、単板式クラッチを介してエンジン2の動力を変速機構9に入力し、図示しないシフタ軸の作動により変速機構9において変速を行い、変速された回転をディファレンシャル装置50により、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪に伝達する。
【0021】
図2、
図4において、変速機構9は、単板式クラッチを介してエンジン2の図示しないクランクシャフトに連結され、エンジン2から動力が伝達される入力軸10と、入力軸10と平行に設置されるカウンタ軸11およびリバース軸12とを備えている。すなわち、カウンタ軸11およびリバース軸12は、入力軸10と平行な回転軸を有する。
【0022】
図2において、入力軸10には複数の変速ギヤ13が設けられており、変速ギヤ13は、1速ドライブギヤ14A、2速ドライブギヤ14B、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14Dおよび5速ドライブギヤ14Eを有している。
【0023】
1速ドライブギヤ14Aは、エンジン2側に配置されており、エンジン2から軸線方向に遠ざかるに従って2速ドライブギヤ14B、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14D、5速ドライブギヤ14Eが順次、設けられている。
【0024】
1速ドライブギヤ14Aおよび2速ドライブギヤ14Bは、入力軸10に固定されており、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14Dおよび5速ドライブギヤ14Eは、入力軸10に対して回転自在に設けられている。
【0025】
カウンタ軸11には複数の変速ギヤ15が設けられている。変速ギヤ15は、1速ドリブンギヤ16A、2速ドリブンギヤ16B、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16Dおよび5速ドリブンギヤ16Eを有している。
【0026】
具体的には、変速ギヤ15は、エンジン2側に1速ドリブンギヤ16Aが位置しており、エンジン2から軸線方向に遠ざかるに従って2速ドリブンギヤ16B、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16D、5速ドリブンギヤ16Eが順次、設けられている。
【0027】
変速ギヤ15は、同一の各変速段を構成する変速ギヤ13に常時噛合しており、1速ドリブンギヤ16Aおよび2速ドリブンギヤ16Bがカウンタ軸11に回転自在に設けられているとともに、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16Dおよび5速ドリブンギヤ16Eがカウンタ軸11に固定されている。ここで、噛合とは、歯と歯が噛み合うことを意味する。
【0028】
リバース軸12にはリバースアイドラギヤ17が軸線方向に移動自在に設けられている。さらに、入力軸10にリバースドライブギヤ14Fが固定されるとともにカウンタ軸11にリバースドリブンギヤ16Fが固定されている。
【0029】
リバースアイドラギヤ17は、軸線方向に移動することで、入力軸10に設けられたリバースドライブギヤ14Fおよびカウンタ軸11に設けられたリバースドリブンギヤ16Fに噛合する。
【0030】
また、変速機構9は、噛み合いクラッチ18〜22を備えており、噛み合いクラッチ20〜22は、3速ドライブギヤ14Cと入力軸10の間、4速ドライブギヤ14Dと入力軸10の間、および5速ドライブギヤ14Eと入力軸10の間にそれぞれ設けられている。
噛み合いクラッチ18、19は、1速ドリブンギヤ16Aとカウンタ軸11の間、2速ドリブンギヤ16Bとカウンタ軸11との間にそれぞれ設けられている。
【0031】
この変速機構9は、シフト操作を行い、噛み合いクラッチ18〜22を軸線方向に移動させて各変速段を構成する変速ギヤ13、15を適宜噛合させることで、各変速段を成立させる。
【0032】
また、変速機構9は、リバースアイドラギヤ17を変速ギヤ13のリバースドライブギヤ14Fおよび変速ギヤ15のリバースドリブンギヤ16Fに噛合させ、後進段を形成する。
【0033】
図1において、車室1Cにはインストルメントパネル1Dが設けられており、インストルメントパネル1Dには運転者によって操作されるシフト装置5が設けられている。シフト装置5は、シフトレバー5Aが設けられており、シフトレバー5Aは、パーキングポジション(Pポジション)5a、リバースポジション(Rポジション)5b、ニュートラルポジション(Nポジション)5cおよびドライブポジション(Dポジション)5dに操作される。
【0034】
図3〜
図5、
図6において、トランスミッションケース4の上部にはシフトアンドセレクトシャフト6が設けられている。
図3〜
図5において、トランスミッションケース4の上部には仮想線で示す電気式、油圧式あるいは機械式のアクチュエータ7が設けられている。
【0035】
アクチュエータ7は、シフトレバー5Aがリバースポジション5b、ニュートラルポジション5cおよびドライブポジション5dの各ポジションに操作されると、図示しないECU(Electronic Control Unit)から入力される制御信号に基づいてシフトアンドセレクトシャフト6をシフト方向およびセレクト方向に操作する。
【0036】
これにより、噛み合いクラッチ18〜22が選択されて選択された噛み合いクラッチ18〜22が軸線方向に移動して各変速段を構成する1速ドライブギヤ14A、2速ドライブギヤ14B、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14Dおよび5速ドライブギヤ14Eと、1速ドリブンギヤ16A、2速ドリブンギヤ16B、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16Dおよび5速ドリブンギヤ16Eとを選択的に噛合させることで、各変速段を成立させる。
【0037】
図2において、カウンタ軸11のエンジン2側の端部には変速ギヤ15の一部を構成するファイナルドライブギヤ16Gが固定して設けられており、このファイナルドライブギヤ16Gには、大径のリングギヤ23が噛み合っている。
【0038】
図2、
図7において、自動変速機3にはディファレンシャル装置50が設けられている。ディファレンシャル装置50は、大径のリングギヤ23が固定されたデフケース51と、ピニオンシャフト52と、ピニオンシャフト52に回転自在に支持された一対のピニオンギヤ53A、53Bと、ピニオンギヤ53A、53Bに噛み合う一対のサイドギヤ54A、54Bとを有している。
【0039】
これらサイドギヤ54A、54Bは、左右のドライブシャフト24L、24Rに連結されている。また、本実施形態のドライブシャフト24L、24Rは、入力軸10と平行に設置されてディファレンシャル装置50に連結されている。ここで、本実施形態の自動変速機3は、FF車両において、横置きに設置されるエンジン2に取付けられる横置きの自動変速機3である。
【0040】
リングギヤ23は、ファイナルドライブギヤ16Gに噛合しており、ディファレンシャル装置50は、左右の駆動輪の差動を許容しつつ、ファイナルドライブギヤ16Gの回転を左右の駆動輪に伝達する。
【0041】
デフケース51の車幅方向一端部(左端部)は、軸受55Aを介してトランスミッションケース4に回転自在に支持されており、デフケース51の車幅方向他端部(右端部)は、軸受55Bを介してトランスミッションケース4に回転自在に支持されている。
【0042】
図2、
図7において、トランスミッションケース4には開口部4A、4Bが形成されている。ドライブシャフト24L、24Rは、開口部4A、4Bを通してトランスミッションケース4の外方に突出しており、ドライブシャフト24L、24Rは、ディファレンシャル装置50から動力が伝達されることで、左右の駆動輪を回転させる。
【0043】
ここで、本実施形態の入力軸10は、本発明の入力軸を構成し、カウンタ軸11は、本発明のカウンタ軸を構成する。また、ドライブシャフト24L、24Rは、本発明の出力軸を構成する。また、入力軸10およびカウンタ軸11に設けられた変速ギヤ13、15、リバースドライブギヤ14F、リバースドリブンギヤ16F、ファイナルドライブギヤ16Gは、本発明の動力伝達機構を構成しており、本実施形態の自動変速機3は、動力伝達機構57によって入力軸10からカウンタ軸11を介して変速されたエンジン2の動力がリングギヤ23に伝達される。
【0044】
図2〜
図4、
図6、
図8において、トランスミッションケース4は、収容部61を有し、収容部61にはディファレンシャル装置50が収容される。
【0045】
トランスミッションケース4は、収容部62を有し、収容部62には入力軸10、カウンタ軸11、リバース軸12、変速ギヤ13、15、リバースドライブギヤ14F、リバースドリブンギヤ16F、ファイナルドライブギヤ16Gおよびリバースアイドラギヤ17が収容される。
【0046】
図2、
図5、
図6、
図8において、収容部62は、収容部61よりも入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に突出しており、収容部62の車幅方向の寸法は、収容部61の車幅方向の寸法よりも長く形成されている。
【0047】
図5、
図6、
図8において、トランスミッションケース4は、収容部63を備えており、収容部63は、収容部62の下方でかつ、収容部61に対して前後方向にずらして設置される。具体的には、収容部63は、収容部62の下方でかつ、収容部61に対して前方に離れて設置される。また、収容部62は、収容部63よりも入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に突出している。
【0048】
収容部63は、周壁部64およびカバー部材65から構成されている。
図3、
図5、
図6、
図8、
図9において、周壁部64は、トランスミッションケース4の側壁4aから入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に突出しており、
図5、
図6において、カバー部材65は、周壁部64の開口端64aに取付けられる。
ここで、本実施形態の収容部61は、本発明の第1の収容部を構成し、収容部62は、本発明の第2の収容部を構成し、収容部63は、本発明の第3の収容部を構成する。
【0049】
図4、
図6〜
図9において、周壁部64の内部にはパーキングロック機構71の一部が収容されている。カバー部材65にはパーキングロック機構71の一部が取付けられている。
【0050】
図9〜
図16のいずれかにおいて、パーキングロック機構71は、中間軸72、ギヤ73、パーキングロックギヤ74、パーキングポール75、ガイドプレート76、サポート部材77、パーキングロッド78、インナレバー79、マニュアルシャフト80およびディテントスプリング81を含んで構成される。
【0051】
中間軸72は、周壁部64に設置されており、中間軸72は、軸受72A、72Bを介してトランスミッションケース4に回転自在に支持されている(
図7参照)。
【0052】
ギヤ73は、中間軸72の軸線方向の一方側に取付けられており、ギヤ73は、リングギヤ23に噛合している。パーキングロックギヤ74は、中間軸72の軸線方向の他方側に取付けられており、
図4、
図9に示すように、パーキングロックギヤ74の外周部には等間隔で歯74Aが形成され、歯74Aの間に嵌合溝74Bが形成される。
このように本実施形態のギヤ73およびパーキングロックギヤ74は、中間軸72の軸上に設置されている。
【0053】
ここで、本実施形態の中間軸72は、本発明の中間軸を構成する。また、ギヤ73は、本発明の第1のギヤを構成し、パーキングロックギヤ74は、本発明の第2のギヤを構成する。
【0054】
図9において、パーキングポール75は、周壁部64に設置されている。パーキングポール75は、パーキングポールシャフト82によってトランスミッションケース4に取付けられており、パーキングポール75は、パーキングポールシャフト82を中心に揺動する。
【0055】
パーキングポール75には爪部75aが形成されており、爪部75aは、パーキングロックギヤ74の嵌合溝74Bに嵌合する。これにより、パーキングロックギヤ74の回転が規制され、中間軸72およびギヤ73の回転も規制される。ギヤ73は、リングギヤ23に噛合しているので、リングギヤ23の回転も規制され、結果的に、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪が回転することが規制される。
【0056】
周壁部64の内部にはリターンスプリング83が設置されており、リターンスプリング83は、爪部75aがパーキングロックギヤ74の嵌合溝74Bから離隔するようにパーキングポール75を反時計回転方向に付勢する。ここで、付勢とは、勢いを増すこと、あるいは勢いをつけることを意味する。
【0057】
ガイドプレート76は、周壁部64の内部に設置されている。周壁部64の内部において、トランスミッションケース4にはボス部4Cが形成されており(
図6、
図8、
図9参照)、ボス部4Cは、中間軸72の延びる方向に延び、内周面にねじ溝が形成されている。
【0058】
ガイドプレート76は、ボス部4Cにボルト84がねじ止めされることにより、ボス部4Cの先端に締結されることでトランスミッションケース4に固定される。ガイドプレート76には開口76Aが形成されており、サポート部材77は、開口76Aよりも車両右方向側において周壁部64の内部に設置される。
【0059】
図14、
図17〜
図19において、サポート部材77には周方向(車両1の前後方向)に湾曲する第1の湾曲面77Aと、第1の湾曲面77Aにテーパ面77Bを介して連続し、第1の湾曲面77Aよりも上方で周方向に湾曲する位置する第2の湾曲面77Cが形成されている。
【0060】
図17〜
図19において、サポート部材77は、中間軸72の軸線方向視において、開口76Aを通して第1の湾曲面77A、テーパ面77Bおよび第2の湾曲面77Cが目視可能となっている。
【0061】
パーキングロッド78は、カバー部材65に取付けられている(
図10参照)。
図17〜
図19において、パーキングロッド78にはカム部材78Aが取付けられており、カム部材78Aは、パーキングロッド78の外周部においてパーキングロッド78の軸線方向に沿って移動自在となっている。
【0062】
パーキングロッド78のインナレバー79側にはストッパ部78bが形成されており、カム部材78Aとストッパ部78bとの間にはカムスプリング78Bが介在される。また、パーキングロッド78の先端にはストッパ部78cが形成されている。
【0063】
カムスプリング78Bは、カム部材78Aがストッパ部78cに接触するまでカム部材78Aを付勢しており、カム部材78Aは、ストッパ部78cに接触することでパーキングロッド78から抜け出ることを防止できる。
【0064】
カバー部材65が周壁部64に取付けられた状態においては、
図17〜
図19に示すように、パーキングロッド78のカム部材78Aは、ガイドプレート76の開口76Aを通してサポート部材77の上方に位置しており、パーキングロッド78は、ガイドプレート76およびサポート部材77によって往復移動自在に支持される。
【0065】
また、カム部材78Aは、パーキングロッド78の延びる方向において、ストッパ部78bからストッパ部78cに向かうに従って先細り形状のカム部78aを有する。
【0066】
図15〜
図17において、パーキングロッド78は、インナレバー79に取付けられており、インナレバー79は、マニュアルシャフト80に取付けられている。ここで、
図5、
図6、
図11〜
図14において、本実施形態のカバー部材65は、平坦部65Aおよび膨出部65Bを備えている。
【0067】
図6、
図8において、平坦部65Aは、周壁部64の開口端64aに沿って形成されており、膨出部65Bは、平坦部65Aから入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に膨れ出ている。また、膨出部65Bは、カバー部材65の前後方向中央部C(
図3参照)に対して、収容部61から前方に離隔する位置に偏って形成される。
【0068】
図14に示すように、膨出部65Bは、上壁65aおよび下壁65bを備えており、マニュアルシャフト80は、上壁65aおよび下壁65bに回転自在に支持されている。また、インナレバー79およびパーキングロッド78は、膨出部65Bの内部に設置されている。
【0069】
マニュアルシャフト80の下部分は、膨出部65Bの下壁65bよりも下方に突出しており、この突出するマニュアルシャフト80の下部分は、突出部位80Aを構成している。
【0070】
マニュアルシャフト80の突出部位80Aにはアウタレバー85が取付けられており、アウタレバー85は、マニュアルシャフト80の軸線方向に対して直交する方向に延びている(
図5参照)。
【0071】
図3において、アウタレバー85にはケーブル部材86の一端部が連結されており、
図1において、ケーブル部材86の他端部は、シフトレバー5Aに連結される。また、ケーブル部材86は、ダッシュパネル1Aを通してエンジンルーム1Bと車室1Cとに配索されており、ダッシュパネル1Aに図示しないグロメットを介して取付けられている。
【0072】
ケーブル部材86は、シフトレバー5Aが操作方向の一方側であるパーキングポジション5aと、操作方向の他方側であるドライブポジション5dとの間に操作されると、マニュアルシャフト80を、回転方向の一方側の最大移動位置と回転方向他方側の最大移動位置との間で回転させる。
このようにマニュアルシャフト80は、シフトレバー5Aの操作に連動してカバー部材65に対して回転する。
【0073】
インナレバー79は、マニュアルシャフト80の軸線に対して直交する方向に延びており、マニュアルシャフト80の回転に伴ってマニュアルシャフト80の回転軸周りに回転する。
【0074】
シフトポジションがドライブポジション5dにある場合には、パーキングロッド78は、
図17に示すように、カム部材78Aのカム部78aがパーキングポール75から離隔している。
【0075】
この状態からシフトレバー5Aがドライブポジション5dからパーキングポジション5aに操作されると、ケーブル部材86がアウタレバー85を押す。このとき、マニュアルシャフト80が回転して、
図15に示すように、アウタレバー85を時計回転方向に回転させる。
【0076】
これにより、アウタレバー85によってパーキングロッド78がパーキングポール75側に押される。このとき、カム部材78Aのカム部78aが、第1の湾曲面77Aからテーパ面77Bを通して第2の湾曲面77Cに乗り上げる。
【0077】
カム部78aが、第2の湾曲面77Cに乗り上げると、カム部78aがパーキングポール75を上方に押し上げることにより、パーキングポールシャフト82を支点にしてパーキングポール75を
図9の時計回転方向に揺動させる。
【0078】
これにより、パーキングポール75の爪部75aがパーキングロックギヤ74の嵌合溝74Bに嵌合してパーキングロックギヤ74の回転を規制する。この状態では、カム部材78Aがパーキングポール75とサポート部材77との間に位置決めされることで、爪部75aが嵌合溝74Bから抜け出ることがない。
【0079】
したがって、中間軸72およびギヤ73の回転が規制されるとともに、ギヤ73に噛合するリングギヤ23の回転が規制される。この結果、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪が回転することが規制され、車両1が停止される。
【0080】
ここで、パーキングロックギヤ74の回転位置において、パーキングポール75の爪部75aがパーキングロックギヤ74の嵌合溝74Bに嵌合せずに、歯74Aの歯先に乗り上げてしまうことがある。
【0081】
この場合には、
図19に示すように、カム部材78Aがサポート部材77のテーパ面77Bに乗り上げた状態となって第2の湾曲面77Cに乗り上げずに、カム部材78Aがパーキングロックギヤ74とサポート部材77によって挟まれた状態となる。
【0082】
このとき、カム部材78Aは、カムスプリング78Bの付勢力に抗してストッパ部78b側に移動するため、カムスプリング78Bが圧縮された状態となる。この状態で、車両1が前後方向のいずれか一方に移動すると、爪部75aが嵌合溝74Bに嵌合する。このとき、カム部材78Aが込むカムスプリング78Bに付勢されて、カム部材78Aが第2の湾曲面77Cに乗り上げて、パーキングポール75とサポート部材77との間に位置決めされる。
【0083】
図12において、インナレバー79には複数の嵌合溝79a〜79dが形成されており、嵌合溝79a〜79dにはそれぞれディテントスプリング81のローラ部材81Aが嵌合自在となっている。
【0084】
ディテントスプリング81の延びる方向の一端部は、カバー部材65に取付けられており、ディテントスプリング81の延びる方向の他端部にはローラ部材81Aが取付けられている。
【0085】
嵌合溝79aは、パーキングポジション5aに対応する位置にインナレバー79が回転したときに、ローラ部材81Aに嵌合し、嵌合溝79bは、リバースポジション5bに対応する位置にインナレバー79が回転したときに、ローラ部材81Aに嵌合する。
【0086】
嵌合溝79cは、ニュートラルポジション5cに対応する位置にインナレバー79が回転したときに、ローラ部材81Aに嵌合し、嵌合溝79dは、ドライブポジション5dに対応する位置にインナレバー79が回転したときに、ローラ部材81Aに嵌合する。
【0087】
このようにインナレバー79は、シフトレバー5Aのシフト操作に応じて回転するときに、各シフトポジョンにおいて嵌合溝79a〜79dにローラ部材81Aが嵌合することで、シフト操作時の運転者に切換え感触(所謂、クリック感)を与える。
【0088】
また、シフトレバー5Aをパーキングポジション5aから他のポジションに操作すると、ケーブル部材86がアウタレバー85を引っ張り、マニュアルシャフト80を回転させる。このとき、
図15に示す位置からアウタレバー85が反時計回転方向に回転し、アウタレバー85によってパーキングロッド78がパーキングポール75から離れる方向に引っ張られる。
【0089】
このとき、カム部材78Aのカム部78aが、第2の湾曲面77Cからテーパ面77Bを通して第1の湾曲面77Aに移動する。カム部78aが、第1の湾曲面77Aに移動すると、パーキングポール75がリターンスプリング83に付勢されてパーキングポールシャフト82を支点にして
図9の反時計回転方向に揺動する。
【0090】
これにより、パーキングポール75の爪部75aがパーキングロックギヤ74の嵌合溝74Bから離れてパーキングロックギヤ74の回転が許容される。この結果、中間軸72およびギヤ73の回転が許容されるとともに、ギヤ73に噛合するリングギヤ23の回転が許容され、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪が回転することが許容される。
【0091】
本実施形態の自動変速機3によれば、パーキングロック機構71を収容する収容部63が、動力伝達機構57を収容する収容部62の下方でかつ、ディファレンシャル装置50を収容する収容部61に対して前方にずらして設置され、収容部63が、トランスミッションケース4の側壁4aから入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に突出する周壁部64および周壁部64の開口端64aに取付けられたカバー部材65を含んで構成される。
【0092】
これにより、トランスミッションケース4の構造を大幅に変更することなく、トランスミッションケース4にパーキングロック機構71を設けることができる。
【0093】
また、マニュアルシャフト80、インナレバー79およびパーキングロッド78をカバー部材65に取付けたので、周壁部64の開口端64aにカバー部材65を取付けることで、マニュアルシャフト80、インナレバー79およびパーキングロッド78をカバー部材65と一体でトランスミッションケース4に組み付けることができる。
【0094】
これに加えて、パーキングロックギヤ74およびパーキングポール75がトランスミッションケース4の側壁4aに形成された周壁部64に設置されるので、周壁部64の開口端64aから近い位置にパーキングロックギヤ74およびパーキングポール75を設置できる。このため、作業者の手あるいは組み付け装置の届き易い位置にパーキングロックギヤ74およびパーキングポール75を設置でき、マニュアルシャフト80、インナレバー79およびパーキングロッド78をパーキングポール75に位置決めできる。
この結果、トランスミッションケース4に対するパーキングロック機構71の組み付け性を向上できる。
【0095】
また、本実施形態の自動変速機3によれば、カバー部材65が、周壁部64の開口端64aに沿って形成される平坦部65Aと、平坦部65Aから入力軸10およびカウンタ軸11の軸線方向外方に膨れ出る膨出部65Bとを有し、膨出部65Bの上壁65aおよび下壁65bにマニュアルシャフト80が回転自在に支持され、インナレバー79が膨出部65Bの内部に設置される。
【0096】
これにより、マニュアルシャフト80を膨出部65Bの上壁65aおよび下壁65bに嵌合させることで、マニュアルシャフト80を膨出部65Bに容易に位置決めして取付けることができる。このため、カバー部材65に対してマニュアルシャフト80、インナレバー79およびパーキングポール75を一体にしてカバー部材65に容易に組み付けることができる。
【0097】
また、本実施形態の自動変速機3によれば、マニュアルシャフト80が、ケーブル部材86の一端部が連結されたアウタレバー85を有し、ケーブル部材86は、ケーブル部材86の他端部に連結されるシフトレバー5Aの操作に連動してマニュアルシャフト80を回転させるように構成される。
【0098】
これに加えて、マニュアルシャフト80が、マニュアルシャフト80の一部を膨出部65Bの下壁65bよりも下方に突出する突出部位80Aを有し、突出部位80Aにアウタレバー85が取付けられる。
【0099】
これにより、収容部62が設けられた膨出部65Bの上方に比べて周辺部品の少ない膨出部65Bの下方において、マニュアルシャフト80にアウタレバー85を連結することができる。このため、マニュアルシャフト80にアウタレバー85を設置するための広い空間を確保でき、マニュアルシャフト80に対するアウタレバー85の組み付け性を向上できる。
【0100】
また、本実施形態の自動変速機3によれば、膨出部65Bが、カバー部材65の車両の前後方向中央部に対して、収容部61から前方に離隔する位置に偏って形成される。
これにより、収容部61が設けられた膨出部65Bの後方に比べて周辺部品の少ない膨出部65Bの前方において、マニュアルシャフト80にアウタレバー85を連結することができる。このため、マニュアルシャフト80にアウタレバー85を設置するための広い空間をより効果的に確保でき、マニュアルシャフト80に対するアウタレバー85の組み付け性をより効果的に向上できる。
【0101】
これに加えて、膨出部65Bが、カバー部材65の車両の前後方向中央部に対して、収容部61から前方に離隔する位置に偏って形成されることで、アウタレバー85を介してケーブル部材86が接続されるマニュアルシャフト80を前方側に設置できる。
【0102】
これにより、アウタレバー85とダッシュパネル1Aの間においてケーブル部材86を長くできる。このため、エンジン2の運転時にエンジン2が前後方向に揺動した場合に、エンジン2の揺動をケーブル部材86によって吸収でき、ケーブル部材86がダッシュパネル1Aを前後方向に揺らすことを防止できる。
この結果、ダッシュパネル1Aを通して車室1Cに異音が発生することを防止できるとともに、ケーブル部材86からダッシュパネル1Aに負荷が加わることを防止できる。
【0103】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。