(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るサスペンション構造の一実施形態について、図面(
図1〜
図5)を参照しながら説明する。本実施形態のサスペンション構造は、一対のトレーリングアーム20をトーションビーム10で接続されるトーションビーム式のサスペンション構造である。なお、当該サスペンション構造は、トーションビーム10の内側に配置されるようなスタビライザーバーを有しないタイプである。
【0017】
本実施形態のトーションビーム式のサスペンション5は、
図1に示すように、車両の左右の車輪3(この例では、後輪)を車体1に対して車両上下方向に揺動可能に支持するものであって、一対のトレーリングアーム20と、トーションビーム10と、スプリングシート40とを有している。詳細な説明は両略するが、
図1に示すように、トレーリングアーム20の車両後部には車輪3が接続され、車両前部は、車体フレームに接続されている。なお、
図1は、本実施形態のサスペンション構造について、車体1内における位置関係を概略的に示す斜視図であり、詳細な構造は略して示している。
【0018】
先ず、トレーリングアーム20の構造について説明する。トレーリングアーム20は、
図1に示すように、車体1の車幅方向の両側部に一対で配置される部材である。各トレーリングアーム20は、
図2に示すように、車両前後方向(
図2における上下方向)に延びると共に、車両前後方向における中央部21が車幅方向内側に湾曲している。また、トレーリングアーム20は、略中空構造体の金属製の断面が環状の部材である(
図4)。
【0019】
トレーリングアーム20の中央部21の外面は、ビーム接合部22が設けられている。この例では、ビーム接合部22は、中央部21において車幅方向内側に湾曲している部分のうち、車幅方向内側に設けられている。当該ビーム接合部22には、トーションビーム10の車幅方向端部が、溶接されている。
【0020】
さらに、
図2に示すように、トレーリングアーム20には、ビーム接合部22よりも車両後方に、スプリングシート40が接合されるアーム側シート接合部23が設けられている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、アーム側シート接合部23は、トレーリングアーム20の中央部21よりも車両後方の2箇所に設けられている。この例では、中央部21より車両後方における車両下部を含むように設けられ、詳細は省略するが、スプリングシート40がトレーリングアーム20の周囲に回り込むように設けられている。また、車両前側のアーム側シート接合部23は、ビーム接合部22よりも車両後方に間隔を空けて配置されている。ビーム接合部22と2箇所のアーム側シート接合部23は、トレーリングアーム20の中央部21より車両後方で、中央部21から車両後方且つ車幅方向外側に延びる長手方向に沿って、間隔を空けて配置されている。
【0022】
続いて、トーションビーム10の構成について説明する。トーションビーム10は、略中空構造体で、車幅方向に延びる金属製の部材である。このトーションビーム10の横断面形状は、
図2〜
図5に示すように、車両上部が凸となる略半円状である。トーションビーム10の車両下部には、車幅方向に延びる開口部15が設けられている。この開口部15は、
図2に示すように、車両下方視で車幅方向に延びる略長方形状である。すなわち、トーションビーム10は、円環状の部材を長手方向に分割した状態である。また、トーションビーム10の外壁面11aには、
図4に示すように、スプリングシート40が接合されるビーム側シート接合部13が設けられている。
【0023】
次に、スプリングシート40について説明する。スプリングシート40は、トーションビーム10及びトレーリングアーム20のそれぞれに接合される金属製の板状の部材であり、上述したビーム側シート接合部13に接合されるビーム接合部41(
図4)と、2箇所のアーム側シート接合部23に接合されるアーム接合部42(
図2、
図3)を有している。各接合部41、42については、後で説明する。スプリングシート40には、車両上下方向に貫通する貫通穴が形成されている。
図2〜
図5では省略しているが、
図1に示すように、当該貫通穴の縁部には、車両上下方向に延びるコイルスプリング45が取り付けられている。スプリングシート40は、当該コイルスプリング45の下端を支持している。また、コイルスプリング45の車両後部には、ショックアブソーバ46が配置されている。
【0024】
本実施形態のトーションビーム10には、リンフォース30が接合されている。以下、リンフォース30について説明する。リンフォース30は、車幅方向に延びる金属製の板状の部材であり、トーションビーム10の車幅方向両端部の開口部15を塞ぐように配置されている。当該リンフォース30は、開口部15における車幅方向両端部の開口縁15aの近傍の内壁面11bに溶接されている。
【0025】
ここで、リンフォース30の形状について説明する。リンフォース30は、
図3〜
図5に示すように、本体部31と、開口側湾曲部32と、奥側湾曲部33とを有しており、これらが一体に形成されている。
【0026】
本体部31は、車幅方向に延びている部分であり、本体部31の車幅方向外側は、トーションビーム10の車幅方向外側部まで延びている。本体部31は、開口部15の開口縁15aの近傍に配置されており、本体部31の車両前端31aは、車幅方向に延び、開口縁15aの近傍における車両前側の内壁面11bに溶接されている。同様に、本体部31の車両後端31bは、車幅方向に延び、開口縁15aの近傍における車両後側の内壁面11bに溶接されている。この例では、本体部31の車幅方向外側部は、トレーリングアーム20の中央部21に溶接されていないが、溶接されてもよい。
【0027】
開口側湾曲部32は、本体部31の車幅方向内側に設けられ、本体部31の車幅方向内側端から車幅方向内側に延びると共に開口奥側(底部15b)に向かって湾曲している。すなわち、開口側湾曲部32は、車幅方向内側に延びると共に、車両下部から車両上部に向かって湾曲している。さらに、開口側湾曲部32は、
図4及び
図5に示すように、トーションビーム10の外壁面11aに設けられているビーム側シート接合部13及びスプリングシート40のビーム接合部41よりも、車幅方向内側まで延びている。
【0028】
開口側湾曲部32の車両前端32a及び車両後端32bは、内壁面11bに接合されている状態で、上記のように湾曲している。開口側湾曲部32の車幅方向内側端は、トーションビーム10の内壁面11bにおける車両上部まで延びている。すなわち、開口側湾曲部32は、車幅方向内側に向かうに従い車両上部に湾曲しており、開口側湾曲部32の車両前後方向幅は、車幅方向内側に向かうに従い小さくなるように形成されている。
【0029】
奥側湾曲部33は、開口側湾曲部32の車幅方向内側に配置され、開口側湾曲部32の車幅方向内側端から車幅方向内側に延びると共に開口側(車両下方)に向かって湾曲している。
【0030】
奥側湾曲部33の車両前端33a及び車両後端33bは、
図4に示すように、内壁面11bに接合されている状態で、上記のように湾曲している。奥側湾曲部33の車幅方向内側端は、
図5に示すように、トーションビーム10の内壁面11bのうち、開口縁15aと底部15bの中間部まで延びている。この例では、トーションビーム10の上下方向の略中央部まで延びている。奥側湾曲部33の車両前後方向幅は、車幅方向内側に向かうに従い広くなるように形成されている。
【0031】
奥側湾曲部33の車幅方向長さは、本体部31の車幅方向長さの4分の1程度である。なお、奥側湾曲部33の車幅方向長さを、本体部31の車幅方向長さと開口側湾曲部32の車幅方向長さを合わせた長さの4分の1程度にしてもよい。
【0032】
上記のようにサスペンション構造を構成することで、車輪3からの車両前後方向からの入力及び車幅方向両側からの入力に対して、スプリングシート40が突っ張ることで、トレーリングアーム20の変形を抑制できるため、サスペンション構造の剛性が向上する。また、トレーリングアーム20とトーションビーム10との接合部22のみでなく、トレーリングアーム20とスプリングシート40との間の接合部42、23、並びに、トーションビーム10とスプリングシート40との間の接合部41、13においても、上記入力を受けるため、応力が分散され、接合部の耐久性が向上する。
【0033】
すなわち、上記したようなリンフォース30を設けることにより、トーションビーム10のねじれによる耐久性能の低下を抑制することが可能となる。さらに、周辺部材の板厚を薄くすることができるようになり軽量化することができる。また、リンフォース30の車幅方向内側端部に開口側湾曲部32を設け、トーションビーム10の長手方向(水平方向)に対し角度を設けることで、ねじれにより発生する応力を車両幅方向に均一化することができる。その結果、サスペンション構造の耐久性を向上させることができると共に軽量化も可能になる。
【0034】
また、リンフォース30に上記したような奥側湾曲部33を設けることにより、トーションビーム10のねじれ剛性を微調整することができ、乗り心地や運動性能等の車両性能の向上と軽量化を両立することが可能となる。
【0035】
奥側湾曲部33の車幅方向内側端には、
図2〜
図4に示すように、切欠き33cが設けられている。切欠き33cは、奥側湾曲部33の車幅方向内側端の車両前後方向中央が、車幅方向外側に向かって切り込まれるように形成されている。当該切欠き33cを設けることで、奥側湾曲部33は、車両上下方向視で車幅方向内側に開く二股形状(Y字形状)となるように形成されている。
【0036】
奥側湾曲部33に上記のように切欠き33cを設けることで、応力が大きくなる開口部側の剛性を低くすることができ、応力集中を抑制することが可能となる。その結果、溶接剥がれを抑制することが可能となる。
【0037】
ここで、スプリングシート40のアーム接合部42について、説明する。アーム接合部42は、スプリングシート40の車幅方向外側端に2箇所設けられている。上述の通り、各アーム接合部42は、トレーリングアーム20の2箇所のアーム側シート接合部23に溶接されている。
図2及び
図3に示すように、これらのアーム接合部42は、車両前後方向に間隔を空けて設けられており、スプリングシート40の本体から車幅方向外側に突出している。
【0038】
次に、スプリングシート40のビーム接合部41について、リンフォース30の開口側湾曲部32との位置関係等について説明する。ビーム側シート接合部13は、トーションビーム10の外壁面11aのうち、開口側湾曲部32がトーションビーム10の内壁面11bに接合されている位置に対応するように配置されている。ビーム接合部41は、
図4及び
図5に示すように、上記位置に配置されたビーム側シート接合部13に接合されている。すなわち、ビーム接合部41は、開口側湾曲部32の車両後端32bが接合されている内壁面11bに対して裏表の関係にある(反対側の)外壁面11aに接合されている。ビーム接合部41と、リンフォース30の開口側湾曲部32の車両後端32bは、トーションビーム10のビーム側シート接合部13を挟み込むように配置され、ビーム側シート接合部13の表裏(外側面11a、内側面11b)に溶接されている。ビーム接合部41は、ビーム側シート接合部13に対応する位置の開口側湾曲部32の車両後端32bの形状に対応するように形成されている。
【0039】
上記のようにスプリングシート40のビーム接合部41とリンフォース30の開口側湾曲部32の車両後端32bを、トーションビーム10に外壁面11a(ビーム側シート接合部13)及び内壁面11bにそれぞれ接合することにより、トーションビーム10の変形を抑えることが可能となり、リンフォース30に囲まれた範囲内にスプリングシート40を溶接することができ、トーションビーム10におけるスプリングシート40との接合部に発生する応力集中を抑制し、トーションビーム10とトレーリングアーム20を接続するスプリングシート40の機能を十分発揮できるようにすることができる。
【0040】
以上の説明からわかるように本実施形態によれば、リンフォース30がトーションビーム10に接続される部分の応力集中を緩和し、サスペンション構造の耐久性を向上させることが可能となる。
【0041】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、本実施形態では、トーションビーム10の横断面形状が略半円状の例で説明したが、これに限らない。例えば、V字やU字形状でもよい。この場合においても、リンフォース30には、開口側湾曲部32及び奥側湾曲部33が設けられ、これらの湾曲部の車両前端及び後端が、断面V字(U字)形のトーションビーム10の内壁面11bに接続されている。
【0043】
また、上記実施形態では、ビーム接合部41と、リンフォース30の開口側湾曲部32の車両後端32bは、トーションビーム10のビーム側シート接合部13を挟み込むように配置され、ビーム側シート接合部13の表裏(外側面11a、内側面11b)に溶接されている。このとき、開口側湾曲部32の車両後端32bとビーム接合部41は、ビーム側シート接合部13を介在して、重なる部分を有していることが好ましいが、これに限らない。開口側湾曲部32の車両後端32bとビーム接合部41が、ビーム側シート接合部13を介在して、近接するように配置してもよい。