(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の水処理には、多くの場合において膜技術が適用されている。例えば、浄水場での水処理には、精密ろ過膜や限外ろ過膜が用いられており、海水の淡水化には、逆浸透膜が用いられている。また、半導体製造用水、ボイラー用水、医療用水およびラボ用純水等の処理には、逆浸透膜やナノろ過膜が用いられている。さらに、下廃水の処理には、精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた膜分離活性汚泥法も適用されている。
【0003】
これらの分離膜は、その形状から平膜と中空糸膜に大別される。これらの分離膜のうち、主に合成重合体から形成される平膜は、分離機能を有する膜単体では機械的強度に劣るため、一般に不織布や織布等の支持体と一体化して使用されることが多い。
【0004】
一般に、分離機能を有する膜と支持体は、不織布や織布等の支持体上に、分離機能を有する膜の原料となる高分子重合体の溶液を流延して固着させる方法により一体化される。また、逆浸透膜等の半透膜においては、不織布や織布等の支持体上に高分子重合体の溶液を流延し支持層を形成させた後に、その支持層上に半透膜を形成させる方法等により一体化される。
【0005】
したがって、支持体となる不織布や織布等には、高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、膜物質が剥離したり、さらには支持体の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求される。
【0006】
また、分離膜の取り扱いを容易にするための流体分離素子の形態としては、平膜のプレートフレーム型、プリーツ型およびスパイラル型等のものが挙げられる。例えば、プレートフレーム型であれば、所定の大きさにカットした分離膜をフレームに取り付ける工程が必要であり、またスパイラル型であれば、所定の大きさにカットした分離膜同士の外周部を貼り合わせて封筒状に加工し集水管の周りに巻き付ける工程が必要である。そのため、分離膜支持体には、これらの工程で膜が折れ曲がったり、丸まったりすることがないような優れた加工性が要求される。
【0007】
さらに、高圧下で使用されることが多い逆浸透膜等の半透膜の場合は、特に、支持体には高い機械的強度と高い寸法安定性が要求される。
【0008】
またさらに、海水淡水化等に使用される逆浸透複合膜の場合は、その逆浸透複合膜が組み込まれている海水淡水化装置を、ある一定の運転圧力で継続して連続運転をする場合もあれば、供給海水の水質や温度の変化や目標とする造水量の管理値の変動などに対応して、運転圧力をその都度変化させるような運転をする場合もある。実際には、後者のような運転が一般的であるが、その場合、逆浸透複合膜の厚さ方向に付与される運転圧力が変動することにより、逆浸透複合膜はその膜厚方向における伸縮動作を反復し、逆浸透複合膜の支持膜と支持体が剥離することもあるため、分離膜支持体には分離膜を形成した際の高い剥離強度も要求される。
【0009】
近年、地下数千m付近に存在する頁岩の内部に存在している天然資源(シェールガスやシェールオイル等)の利用が進められている。シェールガスの回収は、それを貯留している頁岩層を水圧粉砕し、その割れ目から資源を回収しているが、そのためには、地層を溶かす酸や界面活性剤等の薬品が含まれた大量の水が投入される。この採掘作業により発生する排水には、多くの薬品や油分が含まれる。この排水は、中和処理等の前処理を実施した後に分離膜による膜ろ過処理を施し、再利用されている。
【0010】
処理する排水中に油分が含有される場合は、分離膜の汚染が著しくなる。分離膜の汚染が進むと分離膜の処理能力が低下するため、酸やアルカリなどを添加した洗浄液を用いて膜洗浄を行う。
【0011】
従来、分離膜支持体としては、その要求特性やコストの観点から、ポリエステル繊維を用いた不織布からなる分離膜支持体が数多く提案されている。例えば、分離膜や流体分離素子として使用したときにかかる圧力等で変形したり、破断したりすることのない優れた機械的強度を有する不織布からなる分離膜支持体が提案されている(特許文献1参照。)。また別に、ポリエステル繊維を用いて、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドの3層構造の不織布とすることにより、薄くても裏抜け防止性およびコーティング樹脂との一体性に優れ、実用的な強度を有する分離膜支持体が得られることが提案されている(特許文献2参照。)。
【0012】
しかしながら、上記従来のポリエステル繊維からなる分離膜支持体の提案においては、排水や洗浄液に含有される薬品に対する耐久性については、言及されていなかった。近年、耐油性と耐薬品性に優れ、油分と薬品含有廃液処理に好適に使用することができる、分離膜および分離膜支持体が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の分離膜支持体は、不織布からなる分離膜支持体において、前記の不織布がポリフェニレンスルフィドを主成分とする繊維で構成されており、前記の不織布の目付が20g/m
2以上100g/m
2以下であり、かつ目付CVが4.0%以下の分離膜支持体である。
【0020】
本発明の分離膜支持体は、その表面上に分離機能を有する膜を形成させて用いられる分離膜支持体である。本発明の分離膜支持体は、ポリフェニレンスルフィドを主成分とする繊維からなる不織布で構成されている。すなわち、本発明の分離膜支持体を構成する不織布は、ポリフェニレンスルフィドを主成分とする繊維で構成されていることが重要である。このようにすることにより、優れた耐熱性、難燃性および耐薬品性を得ることができる。ここで、ポリフェニレンスルフィドを主成分とするとは、ポリフェニレンスルフィドが全体の85質量%以上を占めることをいう。
【0021】
また、本発明の分離膜支持体を構成する不織布を構成する繊維としては、単一成分からなる繊維、複数成分からなる複合型繊維および複数種の繊維を混合したいわゆる混繊型繊維等が挙げられるが、本発明の分離膜支持体においては、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型繊維が好ましく用いられる。かかる複合型繊維を用いることにより、熱圧着により不織布における繊維同士が強固に接着するため、不織布の平滑性が向上することに加え、不織布を分離膜支持体として使用した際、毛羽立ちによる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合型繊維は、高融点重合体のみからなる繊維と低融点重合体のみからなる繊維を混合した混繊型繊維に比べて、接着点の数も多くなるため、分離膜支持体として用いた際の機械的強度の向上につながる。
【0022】
複合型繊維における高融点重合体と低融点重合体の融点差は、10〜140℃であることが好ましい。融点差を好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることにより、機械的強度の向上に資する熱接着性を得ることができる。一方、融点差を好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることにより、熱ロールを用いた熱圧着時に、その熱ロールに低融点重合体成分が融着して生産性が低下することを抑制することができる。
【0023】
高融点重合体の融点は、本発明の分離膜支持体上に分離膜を形成する際の製膜性が良好であり耐久性に優れる分離膜を得ることができるという観点から、160〜320℃であることが好ましい。高融点重合体の融点を好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることにより、分離膜または膜分離エレメント製造時に熱が加わる工程を通過しても形態安定性に優れる。一方、高融点重合体の融点を好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることにより、不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。
【0024】
また、低融点重合体の融点は、120℃以上であることが好ましく、より好ましくは140℃以上である。
【0025】
複合型繊維における低融点重合体の占める割合は、分離膜支持体に適した不織布を得る点から10〜70質量%であることが好ましい。低融点重合体の占める割合を好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることにより、分離膜支持体としての使用に堪える熱接着性を得ることができる。一方、低融点重合体の占める割合を好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることにより、熱ロールによる熱圧着時に当該熱ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。
【0026】
不織布には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤および難燃剤等の添加剤を添加することができる。なかでも、酸化チタン等の金属酸化物は不織布の熱ロールによる熱圧着成形の際、熱伝導性を増すことで不織布の接着性を向上させる効果がある。また、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、熱ロールと不織ウェブ間の離型性を増すことにより接着安定性を向上させる効果がある。
【0027】
複合型繊維の複合形態としては、効率的に繊維同士の熱接着点を得られるという観点から、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等の複合形態を挙げることができる。
また、不織布を構成する繊維の横断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等の横断面形状を挙げることができる。
【0028】
なかでも、複合形態としては、同心芯鞘型を、繊維断面形状としては円形断面や扁平断面とすることが、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができ、さらには得られる分離膜支持体の厚さを低減し、平滑性を向上させ、流体分離素子ユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
【0029】
不織布を構成する繊維の平均単繊維直径は、3〜30μmであることが好ましい。繊維の平均単繊維直径を好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上とすることにより、不織布製造時に紡糸性が低下することが少なく、また分離膜支持体内部の空隙を維持できるため製膜時に流延させた高分子重合体溶液が分離膜支持体内部に速やかに浸透し、強固に接着することにより、膜剥離強度に優れた分離膜を得ることができる。一方、繊維の平均単繊維直径を好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下とすることにより、均一性に優れた不織布および分離膜支持体を得ることができ、また分離膜支持体を高密度化できるため高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく、良好な製膜性を得ることができる。
【0030】
本発明の分離膜支持体を構成する不織布としては、スパンボンド法によって製造したスパンボンド不織布が好ましく用いられる。熱可塑性フィラメントから構成された長繊維不織布であるスパンボンド不織布を用いることにより、短繊維不織布を用いたときに起こりやすい、毛羽立ちによって生じる高分子重合体溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、スパンボンド不織布は機械的強度により優れていて、分離膜支持体としての使用における製膜性が良好であり、耐久性に優れる分離膜シートを得ることもできるからである。
【0031】
また、本発明の分離膜支持体を構成する不織布を、
少なくとも1層のスパンボンド不織ウェブを含む複数の不織ウェブからなる積層体(積層複合不織布)とすること
が重要であり、これによって、より均一性に優れた分離膜支持体を得ることができ、さらに支持体の厚さ方向の密度分布の調整も容易に行うことができる。積層体の態様としては、例えば、2層のスパンボンド不織布(不織ウェブ)の積層体や、2層のスパンボンド不織布(不織ウェブ)の層間にメルトブロー不織布(不織ウェブ)を配した3層構造の積層体等を挙げることができ、少なくとも1層はスパンボンド不織布(不織ウェブ)であることが
重要であり、スパンボンド不織布(不織ウェブ)のみからなることがより好ましい態様である。
【0032】
本発明の分離膜支持体を構成する積層複合不織布の目付は、20g/m
2以上100g/m
2以下であることが重要である。目付を20g/m
2以上、好ましくは30g/m
2以上、さらに好ましくは40g/m
2以上とすることにより、高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができ、高い機械的強度を有し耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、目付を100g/m
2以下、好ましくは90g/m
2以下、さらに好ましくは80g/m
2以下とすることにより、分離膜支持体の厚さを低減し、流体分離素子ユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
本発明の積層複合不織布は、スパンボンド法で製造する場合は、不織ウェブの捕集速度、口金からの吐出量等の諸条件を変更することにより、所望の目付に調整することができる。また、積層させる不織ウェブの枚数等を調整することにより、積層複合不織布の目付を調整することができる。
【0033】
不織布本発明の分離膜支持体を構成する積層複合不織布の厚さは、0.03〜0.20mmであることが好ましい。不織布の厚さを好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.04mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上とすることにより、高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができ、製膜後のカールを抑制することができ、高い膜剥離強度および機械的強度を有し耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、不織布の厚さを好ましくは0.13mm以下、より好ましくは0.12mm以下、さらに好ましくは0.11mm以下とすることにより、分離膜支持体の厚さを低減し、流体分離素子ユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
本発明の分離膜支持体を構成する積層複合不織布の目付CVは、4.0%以下であることが重要である。積層複合不織布の目付CVを4.0%以下とすることにより、局所的に目付の低い箇所を少なくすることができ、製膜時において、キャスト液が裏抜けすることなく加工することができる。また、分離膜支持体の目付分布を小さくすることができ、液体分離素子ユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
【0034】
また、本発明の分離膜支持体を構成する目付CV4.0%以下の不織布は、複数の不織ウェブを積層させた積層不織布とすること
で得ることができる。積層体の態様としては、例えば、2層のスパンボンド不織布(不織ウェブ)の積層体や、2層のスパンボンド不織布(不織ウェブ)の層間にメルトブロー不織布(不織ウェブ)を配した3層構造の積層体等を挙げることができ、少なくとも1層はスパンボンド不織布であることが
重要であり、スパンボンド不織布のみからなることがより好ましい態様である。
【0035】
本発明の分離膜支持体を構成する不織布は、不織布の裏面が、JIS P8119(1998年版)によるベック平滑度が5〜35秒であることが好ましい。不織布の裏面のベック平滑度を好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは15秒以上とすることにより、分離膜製造時に水を主成分とする凝固液の分離膜支持体裏面から内部への過度の浸透を抑制し、支持体上に流延した高分子溶液が支持体内部へ十分に浸透した後に凝固させ、形成した分離膜の膜剥離強度を向上させることができる。また、分離膜製造時の巻取工程において製膜面と裏面が擦過することにより生じる分離膜面の傷を抑制することができる。一方、不織布の裏面のベック平滑度を好ましくは35秒以下、より好ましくは30秒以下、さらに好ましくは25秒以下とすることにより、分離膜製造時に分離膜支持体内部の空気が速やかに排出され、部分的な膜剥離強度の低下を抑制し、またピンホールなどの製膜欠点の発生を抑制することができる。
【0036】
本発明の分離膜支持体を構成する積層複合不織布のベック平滑度は、不織ウェブを熱圧着する際の、温度、圧力およびクリアランス等の諸条件を適宜変更することにより、調整することができる。
【0037】
次に、本発明の分離膜支持体の製造方法について説明する。
本発明において、不織布を構成する繊維として芯鞘型等の複合型繊維とする場合は、通常の複合方法を採用することができる。
【0038】
不織布を製造する方法として、スパンボンド法の場合は、溶融した熱可塑性重合体をノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸して紡糸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して不織ウェブとし、さらに連続的に熱圧着等を施すことにより一体化して、長繊維不織布を製造することができる。その際、繊維ウェブを構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度は2000m/分以上が好ましく、より好ましくは3000m/分以上であり、さらに好ましくは4000m/分以上である。
また、不織布を製造する方法として、メルトブロー法を用いる場合は、溶融した熱可塑性重合体に加熱高速ガス流体を吹き当てることにより、その熱可塑性重合体を引き伸ばして極細繊維化し、捕集して長繊維不織布を製造することができる。
【0039】
また、短繊維不織布であれば、長繊維をカットして短繊維とし、乾式法や湿式法により不織布とする方法が好ましく用いられる。
【0040】
また、前述した複数の不織ウェブの積層体からなる積層複合不織布の製造方法としては、例えば、2層の不織ウェブからなる積層複合不織布の製造方法の場合は、仮接着状態の不織ウェブを2層重ね合わせた後、熱圧着により一体化する方法が好ましく用いられる。また、2層のスパンボンド不織ウェブの層間にメルトブロー不織ウェブを配した3層構造の積層体からなる積層複合不織布の製造方法としては、仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ2層の間に、別ラインで製造したメルトブロー不織ウェブを挟むように重ね合わせた後、熱圧着により一体化する方法や、一連の捕集コンベア上部に配されたスパンボンド用ノズル、メルトブロー用ノズルおよびスパンボンド用ノズルからそれぞれ押し出され、繊維化された不織ウェブを順に捕集、積層し、熱圧着する方法を好ましく用いることができる。
【0041】
乾式短繊維不織布や抄紙不織布の場合は、一旦巻き取った不織ウェブを複数層重ね合わせた後、熱圧着により一体化する方法を好ましく用いることができる。
【0042】
ここで、積層された不織ウェブを一体化するための熱圧着の方法としては、機械的強度と耐久性に優れ、さらには平滑性に優れる分離膜を得るために、表面が平滑であり機械的強度に優れる点で、上下1対のフラットロールにより積層された不織ウェブを熱圧着し、一体化する方法を好ましく用いることができる。このフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。特に、不織布の表面の繊維の融着を抑え、形態を保持することにより、分離膜支持体として使用した際に分離膜の平滑性を向上できることから、積層された不織ウェブを加熱した金属製ロールと弾性ロールにより熱圧着する方式が好ましく用いられる。さらに、分離膜製造時に支持体上に流延した高分子重合体溶液の過浸透を抑制できることから、不織ウェブの金属製ロールと接触した面を分離膜支持体の製膜面に、弾性ロールと接触した面を分離膜支持体の裏面に用いることが好ましい。
【0043】
ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールの材質としては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム等の樹脂製のロール等が挙げられる。
【0044】
弾性ロールの硬度(Shore D)は、70〜99であることが好ましい。弾性ロールの硬度(Shore D)を好ましくは70以上、より好ましくは75以上、さらに好ましくは80以上とすることにより、不織ウェブの弾性ロールと接触した面を裏面に用いた際に、分離膜支持体の裏面の平滑性を向上させ、分離膜製造時に水を主成分とする凝固液の分離膜支持体内部への浸透を抑制し、支持体上に流延した高分子溶液が支持体内部へ十分に浸透した後に凝固させ、形成した分離膜の膜剥離強度を向上させることができる。
一方、弾性ロールの硬度(Shore D)を好ましくは99以下、より好ましくは95以下、さらに好ましくは91以下とすることにより、不織ウェブの弾性ロールと接触した面を裏面に用いた際に、分離膜支持体の裏面の平滑性の過度の向上を抑制することにより、分離膜製造時に水を主成分とする凝固液が分離膜支持体内部へ浸透することが可能となり、製膜面に流延した高分子重合体溶液の過浸透、すなわち裏抜けを抑制することができる。
【0045】
また、2本以上のフラットロールの構成としては、金属/弾性ロールの組み合わせを製造工程中で連続して、または非連続で2組以上用いる2本ロール×2組方式、2本ロール×3組方式や、弾性/金属/弾性、弾性/金属/金属、および金属/弾性/金属などの3本ロール方式なども好ましく用いることができる。
【0046】
2本ロール×2組方式の場合、不織布に対して2度熱と圧力を加えることができるため、不織ウェブの特性のコントロールが容易になり、製造する際の速度を上げることも可能となり、また1組目と2組目の弾性ロール接触面の反転が容易なため不織布の表裏面の表面特性のコントロールもしやすくなる。
【0047】
一方、3本ロール方式の場合、例えば、弾性1/金属/弾性2の弾性1/金属ロール間で熱圧着した不織布を折り返して金属/弾性2ロール間でさらに熱圧着することにより、上記2本ロール×2組方式と同じように不織布に対して2度熱と圧力を加えることができる上、連続した2本ロール×2組方式に比べ設備費の抑制や省スペース化が可能となる。
【0048】
これらの弾性ロールを2本以上使用する製造方法においては、不織布と1段目に接触する弾性ロールと2段目に接触する弾性ロールの硬度(Shore D)を変更させることができる。
【0049】
金属ロールの表面温度は、不織ウェブを構成する繊維の少なくとも表面を構成する高分子重合体の融点よりも20〜90℃低いことが好ましく、さらには30〜70℃低いことが好ましい。金属ロールの表面温度が不織ウェブを構成する繊維の少なくとも表面を構成する高分子重合体の融点よりも20℃以上低ければ、不織ウェブ表面繊維の過度の融着を抑制することができ、高分子重合体溶液が浸透しやすくなり、膜接着強度に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、金属ロールの表面温度と不織ウェブを構成する繊維の少なくとも表面を構成する高分子重合体の融点の差が90℃以下であれば、不織布を構成する繊維同士を強固に接着させ、また不織布を高密度化することにより機械的強度に優れた分離膜支持体を得ることができ、また、高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。
【0050】
さらに、金属ロールと弾性ロールの間に温度差を設け、弾性ロールの表面温度を金属ロールの表面温度よりも10〜120℃低い温度とすることも好ましい態様である。
金属ロールの加熱方式としては、誘導発熱方式や熱媒循環方式等を好ましく用いることができるが、均一性に優れた分離膜支持体が得られることから、不織布幅方向の温度差は中心値に対して±3℃以内であることが好ましく、より好ましくは±2℃以内である。
弾性ロールの加熱方式としては、加圧時に加熱した金属ロールと接触することで加熱される接触加熱方式や、より厳密に弾性ロールの表面温度をコントロールできる、赤外線ヒーターなどを使用した非接触加熱方式などを好ましく用いることができる。弾性ロールの不織布幅方向の温度差は、中心値に対して±10℃以内であることが好ましく、±5℃以内であることがより好ましい。弾性ロールの不織布幅方向の温度差をさらに厳密にコントロールするには、赤外線ヒーターなどを幅方向に分割して設置し、それぞれの出力を調整することができる。
【0051】
また、フラットロールの線圧は、196〜4900N/cmであることが好ましい。フラットロールの線圧は、より好ましくは490〜4900N/cmであり、さらに好ましくは980〜4900N/cmである。フラットロールの線圧が196N/cm以上であれば、不織布を構成する繊維同士を強固に接着させ、また不織布を高密度化することにより機械的強度に優れた分離膜支持体を得ることができ、また、高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。一方、フラットロールの線圧が4900N/cm以下であれば、不織布表面繊維の過度の融着を抑制することができ、高分子重合体溶液の不織布内部への浸透を妨げず、膜剥離強度に優れた分離膜支持体を得ることができる。
【0052】
本発明の分離膜支持体の製造方法は、2〜5層積層された不織ウェブ層を熱圧着により一体化し積層複合不織布とすることが
重要である。積層数が2層以上であれば、単層時に比べて地合いが向上し、十分な均一性が得られる。また、積層数が5層以下であれば、積層時にシワが入ることを抑制し、そして層間の剥離を抑制することができる。また、スパンボンド不織ウェブの熱圧着方法としては、1対のフラットロールのみで不織ウェブを熱圧着するのではなく、より精密に不織ウェブの特性をコントロールするために、2段階接着方式を採用することもできる。すなわち、不織ウェブを1対のフラットロール間で予備熱圧着して、または1本のフラットロールと繊維ウェブの捕集に用いられる捕集コンベア間で予備熱圧着して、仮接着状態の不織布を得た後に、連続工程であるいは仮接着状態の不織布を巻き取った後に、さらにそれをもう1度フラットロール間で熱圧着するような2段階接着方式も好ましく用いることができる。
【0053】
この2段階接着方式での1段階目の予備熱圧着においては、2段階目の熱圧着時に不織布をより高密度化できることから、その仮接着の状態の不織布の充填密度を0.1〜0.3とすることが好ましい。その際の1段階目の予備熱圧着に用いられるフラットロールの温度は、不織ウェブを構成する繊維の融点よりも20〜120℃低く、線圧は5〜70kg/cmであることが好ましい。
【0054】
本発明の分離膜とは、上記の分離膜支持体の上に、分離機能を有する膜を形成してなる分離膜である。そのような分離膜の例として、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜等の半透膜が挙げられる。
【0055】
分離膜の製造方法としては、上記の分離膜支持体の少なくとも片方の表面上に、高分子重合体溶液を流延して分離機能を有する膜を形成させ分離膜とする方法が好ましく用いられる。また、分離膜が半透膜の場合は、分離機能を有する膜を支持層と半透膜層を含む複合膜とし、この複合膜を分離膜支持体の少なくとも片方の表面上に積層する方法も好ましい形態である。
【0056】
本発明の分離膜支持体に流延する高分子重合体溶液は、膜となった際に分離機能を有するものであり、例えば、ポリスルホンやポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンおよび酢酸セルロースなどの溶液が好ましく用いられる。なかでも特に、化学的、機械的および熱的な安定性の点で、ポリスルホンとポリアリールエーテルスルホンの溶液が好ましく用いられる。また溶媒は、膜形成物質に応じて、適宜選定することができる。また、分離膜が支持層と半透膜層を含む複合膜の場合の半透膜として、多官能酸ハロゲン化物と多官能アミンとの重縮合などによって得られる架橋ポリアミド膜などが好ましく用いられる。
【0057】
本発明の分離膜は、筐体等に納めて液体分離素子として海水淡水化装置に使用することができる。その形態としては、平膜のプレートフレーム型、プリーツ型およびスパイラル型等の流体分離素子が挙げられる。中でも特に、分離膜が透過液流路材と供給液流路材と共に集水管の周りにスパイラル状に巻き付けられた、スパイラル型の流体分離素子が好ましく用いられる。そして、複数の流体分離素子を直列あるいは並列に接続して、分離膜ユニットとすることができる。
【実施例】
【0058】
[測定方法]
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また、示差走査型熱量計において、融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
【0059】
(2)メルトフローレート(MFR)(g/10分)
使用した樹脂のMFRは、ASTM D1238−70に準じて測定温度315.5℃で、測定荷重5kgの条件で測定した。
【0060】
(3)平均単繊維径(μm)
平均単繊維径は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の単繊維の直径を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
【0061】
(4)不織布の厚さ(mm)
不織布の厚さは、JIS L1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を0.01mm単位で厚さを測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入して求めた。
【0062】
(5)不織布の目付(g/m
2)
不織布の目付は、30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料(不織布)の質量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
【0063】
(6)不織布の目付CV(%)
不織布の目付CVは、5cm×5cmの不織布を縦方向、横方向それぞれ16個ずつ、合計256個採取して、各試料(不織布)の質量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入し、不織布の目付を求め、そのCV値を求めた。
【0064】
[実施例1]
(芯成分)
100モル%の線状ポリフェニレンスルフィド樹脂(東レ社製、品番:E2280、融点:281℃、MFR:160g/10分)を、窒素雰囲気中で160℃の温度で10時間乾燥して、芯成分として用いた。
【0065】
(鞘成分)
100モル%の線状ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂(東レ社製、品番:M2588、融点:281℃、MFR:300g/10分)を、窒素雰囲気中で160℃の温度で10時間乾燥して、鞘成分として用いた。
【0066】
(紡糸と不織ウェブ捕集)
上記の芯成分と鞘成分を押出機で、それぞれ溶融し、芯成分と鞘成分との質量比が80:20となるように計量し、紡糸温度が315℃で、孔径がφ0.55mmの矩形芯鞘型紡糸口金から単孔吐出量1.37g/分で芯鞘型複合繊維を紡出した。紡出した芯鞘型複合繊維を室温20℃の雰囲気下で冷却固化し、前記の矩形芯鞘型紡糸口金からの距離550mmの位置に設置した矩形エジェクターに通し、空気加熱器で200℃の温度に加熱した空気をエジェクター圧力0.17MPaでエジェクターから噴射させ、糸条を牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した。得られた芯鞘型複合長繊維の平均単繊維直径は16μmで、紡糸速度は4,800m/分であり、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0067】
(仮接着)
引き続き、インライン上に設置された金属製の上下一対のカレンダーロールを用い線圧200N/cmおよび仮接着温度90℃で、上記の不織ウェブを仮接着し、目付が36g/m
2の仮接着状態のスパンボンド(SB)不織ウェブ(a)を得た。
【0068】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(a)を2枚重ね合わせ、その積層不織ウェブを、上が硬度(Shore D)91、表面平均粗さRaが4μmの樹脂製の弾性ロールで、中が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75、表面平均粗さRaが4μmの樹脂製の弾性ロールの1組の3本フラットロールの中−下間に通し熱圧着し、さらにその積層不織ウェブを折り返して上−中間を通し熱圧着し、熱圧着して得られた積層複合不織布の弾性ロールと接触させた裏面を、表面温度が45℃の金属製の冷ロールに1秒間接触させ、目付が72g/m
2で、厚さが0.09mmであり、目付CVが3.0%であるポリフェニレンスルフィドスパンボンド不織布(積層複合不織布)を製造し、分離膜支持体を得た。このときの3本フラットロールの表面温度は、上が140℃、中が180℃、下が140℃とし、線圧は1715N/cmとした。評価結果を表1に示す。
【0069】
(分離膜形成)
得られた分離膜支持体を、12m/分の速度で巻き出し、その上にポリスルホン(ソルベイアドバンスドポリマーズ社製の“Udel”(登録商標)−P3500)の16質量%ジメチルホルムアミド溶液(キャスト液)を50μm厚みで、室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中に室温(20℃)で10秒間浸漬した後、75℃の温度の純水中に120秒間浸漬し、続いて90℃の温度の純水中に120秒間浸漬し、100N/全幅の張力で巻き取り、分離膜支持体上にポリスルホン膜を形成し、分離膜を作成した。作製した分離膜は、平滑性と耐薬品性に優れており、油分と薬品を含有する排水処理に好適に使用できるものであった。
【0070】
[実施例2]
紡糸、不織ウェブ捕集および仮接着工程において、目付が25g/m
2となるように仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(b)を得た。このスパンボンド不織ウェブ(b)を用いたいこと以外は、実施例1と同様にして、目付が50g/m
2で、厚さが0.07mmで、目付がCV3.3%のポリフェニレンスルフィドスパンボンド不織布(積層複合不織布)を製造し、分離膜支持体を得た。評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
紡糸、不織ウェブ捕集および仮接着工程において、目付が15g/m
2となるように仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(c)を得た。このスパンボンド不織ウェブ(c)を用いたいこと以外は、実施例1と同様にして、目付が30g/m
2で、厚さが0.04mmで、目付がCV3.2%であるポリフェニレンスルフィドスパンボンド不織布(積層複合不織布)を製造し、分離膜支持体を得た。評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例4]
(紡糸と不織ウェブ捕集)
実施例1で使用した芯成分を押出機で溶融し、紡糸温度315℃で、孔径φ0.55mmの紡糸口金から単孔吐出量1.37g/分で紡出した。紡出した繊維を室温20℃の雰囲気下で冷却固化し、前記口金からの距離550mmの位置に設置した矩形エジェクターに通し、空気加熱器で200℃の温度に加熱した空気をエジェクター圧力0.17MPaでエジェクターから噴射させ、糸条を牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した。このスパンボンド不織ウェブ(d)の目付は、30g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0073】
続いて、水分率10ppmに乾燥したMFRが160g/分で、融点が281℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を、315℃の温度で溶融し、紡糸口金の細孔から紡出した後、1000Nm
3/hr/mの加熱空気を吹き当てることにより紡糸して、噴射させ、移動するネットコンベアー上のスパンボンド不織ウェブ(d)の上にメルトブロー不織ウェブ(e)を捕集した。このメルトブロー(MB)不織ウェブ(e)の目付は、10g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0074】
さらに、スパンボンド不織ウェブ(d)と同様の条件とし、メルトブロー不織ウェブ(e)の上にスパンボンド不織ウェブ(f)を捕集した。このスパンボンド不織ウェブ(f)の目付は、30g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0075】
(予備熱圧着)
上記のようにして捕集した積層不織ウェブを、金属フラットロールとネットコンベアーの間に通し、フラットロール表面温度が180℃で、線圧が294N/cmで予備熱圧着し目付が70g/m
2で、厚さが0.35mmの仮接着状態のスパンボンド/メルトブロー/スパンボンドからなる3層構造の積層複合不織ウェブを製造した。
【0076】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態の積層複合不織ウェブを、上が金属ロールの1組の2本フラットロールの間に通し熱圧着し、目付が70g/m
2で、厚さが0.09mmで、目付CVが2.8%のポリフェニレンスルフィド複合不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得た。このときの2本フラットロールの表面温度は、上が230℃、下が130℃とし、線圧は1519N/cmとした。評価結果を表1に示す。
【0077】
(分離膜形成)
得られた積層複合不織布を用い、実施例1と同様の方法で、分離膜支持体上にポリスルホン膜を形成し、分離膜を得た。得られた分離膜は、平滑性に極めて優れており、耐薬品性も優れており、油分と薬品を含有する排水処理に好適に使用できるものであった。
【0078】
【表1】
【0079】
[比較例1]
(芯成分と鞘成分)
芯成分および鞘成分として、それぞれ実施例1と同一のPPS樹脂を用いた。
【0080】
(紡糸と不織ウェブ捕集)
実施例1と同様にして、ネットコンベアー上に不織ウェブとして捕集した。
【0081】
(仮接着と熱接着)
引き続き、インライン上に設置された金属製の上下一対のカレンダーロールを用い線圧200N/cmおよび仮接着温度90℃で上記の不織ウェブを仮接着した。次いで、金属製の上下一対のカレンダーロールで、線圧1000N/cm、熱接着温度200℃で熱接着して、不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の目付は72g/m
2で、厚さは0.09mmで、目付CVは4.8%であった。評価結果を表2に示す。
【0082】
(分離膜形成)
上記で得られた複合不織布を用い、実施例1と同様の方法で、分離膜を得た。得られた分離膜は平滑性が劣り、液体分離素子ユニットを形成した際、好適に使用できるものではなかった。
【0083】
[比較例2]
(芯成分)
芯成分として、実施例1と同一のPPS樹脂を用いた。
【0084】
(鞘成分)
鞘成分は、用いなかった。
【0085】
(紡糸、不織ウェブ捕集、仮接着および熱接着)
上記の芯成分を押出機で溶融して計量し、紡糸温度が315℃で、孔径φ0.50mmの矩形単一成分紡糸口金から単孔吐出量1.37g/分で紡出した。以降は、比較例1と同様にして、紡糸と不織ウェブ化を行い、不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の目付は72g/m
2で、厚さは0.09mmで、目付CVは5.3%であった。評価結果を表2に示す。
【0086】
(分離膜形成)
得られた不織布を用い、実施例1と同様の方法で、分離膜支持体を得た。得られた分離膜は平滑性が劣り、液体分離素子ユニットを形成した際、好適に使用できるものではなかった。
【0087】
[比較例3]
(芯成分)
固有粘度IVが0.65で、融点が260℃で、酸化チタンの含有量が0.3質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂を、水分率50ppm以下に乾燥したものを芯成分として用いた。
【0088】
(鞘成分)
固有粘度IVが0.66で、イソフタル酸共重合率が11モル%で、融点が230℃で、酸化チタンの含有量が0.2質量%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を、水分率50ppm以下に乾燥したものを鞘成分として用いた。
【0089】
(紡糸と不織ウェブ捕集)
上記の芯成分および鞘成分を、それぞれ295℃と270℃の温度で溶融し、口金温度が300℃で、芯/鞘の質量比率80/20で同心芯鞘型(断面円形)に複合して細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸して、移動するネットコンベアー上に不織ウェブとして捕集した。
【0090】
(予備熱圧着)
捕集した不織ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間に通し、各フラットロール表面温度が140℃で、線圧が60kg/cmで予備熱圧着し、繊維径が10μm、目付が36g/m
2で、厚さが0.16mmの仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(g)を得た。
【0091】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(g)を2枚重ね合わせ、実施例1と同様にして、積層複合不織布を製造し、分離膜支持体を得た。このときの3本フラットロールの表面温度は、上が100℃、中が180℃、下が140℃とし、線圧は1715N/cmとした。評価結果を表2に示す。
【0092】
(分離膜形成)
得られた積層複合不織布を用い、実施例1と同一の方法で、分離膜を得た。作製した分離膜の平滑性は優れていたものの、耐薬品性に劣り、油分と薬品を含有する排水処理には、好適に使用できるものではなかった。
【0093】
[比較例4]
紡糸、不織ウェブ捕集および仮接着工程において、目付が25g/m
2の仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(h)を得た。このスパンボンド不織ウェブ(h)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、目付が50g/m
2で、厚さが0.07mmで、目付CVが3.5%であるポリエステルスパンボンド積層複合不織布を製造し、分離膜支持体を得た。評価結果を表2に示す。
【0094】
[比較例5]
紡糸、不織ウェブ捕集および仮接着工程において、目付が15g/m
2の仮接着状態のスパンボンド不織ウェブ(i)を得た。このスパンボンド不織ウェブ(i)を用いたいこと以外は、比較例1と同様にして、目付が30g/m
2で、厚さが0.04mmで、目付CVが3.9%のポリエステルスパンボンド積層複合不織布を製造し、分離膜支持体を得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
[比較例6]
(紡糸と不織ウェブ捕集)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IVが0.65で、融点が260℃であり、酸化チタンを0.3質量%含むポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を、295℃の温度で溶融し、口金温度300℃で細孔から紡出した後、不織布幅方向にスリットを有する矩形エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸して、フィラメント(断面円形)とし、このフィラメント群を噴射させ、移動するネットコンベアー上に不織ウェブとして捕集した。このスパンボンド不織ウェブ(j)の目付は、30g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0096】
続いて、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IVが0.50で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を、295℃の温度で溶融し、口金温度300℃で細孔から紡出した後、1000Nm
3/hr/mの加熱空気を吹き当てることにより紡糸して、噴射させ、移動するネットコンベアー上のスパンボンド不織ウェブ(j)の上にメルトブロー不織ウェブ(k)を捕集した。このメルトブロー(MB)不織ウェブ(k)の目付は、10g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0097】
さらに、スパンボンド不織ウェブ(j)と同様の条件とし、メルトブロー不織ウェブ(k)の上にスパンボンド不織ウェブ(l)を積層捕集した。このスパンボンド不織ウェブ(l)の目付は、30g/m
2となるように吐出量を調整した。
【0098】
(予備熱圧着)
上記のようにして捕集した積層不織ウェブを、金属フラットロールとネットコンベアーの間に通し、フラットロール表面温度が180℃で、線圧が294N/cmで予備熱圧着し目付が70g/m
2で、厚さが0.35mmの仮接着状態のスパンボンド/メルトブロー/スパンボンドからなる3層構造の積層不織ウェブを製造した。
【0099】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態の積層不織ウェブを、上が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75の樹脂製の弾性ロールの1組の2本フラットロールの間に通して熱圧着して、積層複合不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の目付は70g/m
2で、厚さは0.09mmであった。このときの2本フラットロールの表面温度は、上が230℃で下が130℃とし、線圧は1519N/cmとした。評価結果を表2に示す。
【0100】
(分離膜形成)
得られた複合不織布を用い、実施例1と同じ方法で、分離膜を得た。作製した分離膜の平滑性は優れていたものの、耐薬品性に劣り、油分と薬品を含有する排水処理には、好適に使用できるものではなかった。
【0101】
【表2】