特許第6380077号(P6380077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6380077サンプリング部及びそれを備えたICP質量分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380077
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】サンプリング部及びそれを備えたICP質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20180820BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01J49/06
   G01N27/62 G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-253890(P2014-253890)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-115566(P2016-115566A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】林 英幹
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−208690(JP,A)
【文献】 特開2015−194380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/06
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をプラズマによりイオン化するプラズマイオン源と、イオン化された試料を質量分析する質量分析部との間に配置され、
サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが軸方向にこの順で取付けられ、かつ、取外し可能となっているサンプリング部であって、
サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられた状態で、前記質量分析部の前面壁から軸方向と反対方向に所定距離移動させた後、軸方向と垂直となる方向に移動させることで、前記質量分析部から取外され、かつ、
サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられた状態で、軸方向と垂直となる方向に移動させた後、前記質量分析部の前面壁に向かって軸方向に所定距離移動させることで、前記質量分析部に取付けられる構造となっており、
前記前面壁には、軸方向と垂直方向に移動させる際のガイドとなる水平方向に伸びるガイド部が設けられていることを特徴とするサンプリング部。
【請求項2】
一端部を回転軸として他端部を回転させることで前記質量分析部から他端部を軸方向と反対方向に所定距離移動させた後、軸方向と垂直となる方向に移動させることで、前記質量分析部から取外され、かつ、
軸方向と垂直となる方向に移動させた後、前記質量分析部に一端部を保持させて一端部を回転軸として他端部を回転させることで前記質量分析部に向かって他端部を軸方向に所定距離移動させることで、前記質量分析部に取付けられる構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング部。
【請求項3】
前記質量分析部に形成された真空開口部と連結される真空用開口部と、
前記質量分析部に形成された冷却溶媒供給流路と連結される冷却溶媒用流路と、
前記質量分析部に形成された質量分析部側電源接点部と接続されるサンプリング部側電源接点部とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサンプリング部。
【請求項4】
サンプリングコーンが取付けられる第一板状体と、
スキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられる第二板状体とを備え、
前記第一板状体には、前記冷却溶媒用流路となる冷却溶媒用流路溝が形成され、
前記第二板状体には、前記真空用開口部と前記サンプリング部側電源接点部と前記冷却溶媒用流路出入口とが形成されていることを特徴とする請求項3に記載のサンプリング部。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のサンプリング部と、
試料をプラズマによりイオン化するプラズマイオン源と、
イオン化された試料を質量分析する質量分析部とを備え、
前記質量分析部には、電源と接続された前記質量分析部側電源接点部と、冷却溶媒供給源と連結された冷却溶媒供給流路と、真空ポンプと連結された真空開口部と、前記サンプリング部を軸方向と垂直となる方向に移動させるためのガイド部とが形成されていることを特徴とするICP質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング部及びそれを備えたICP質量分析装置に関し、特に、高周波誘導結合プラズマ(ICP)をイオン源とするICP質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICP質量分析装置は、現在、高感度の元素分析を行うことのできる装置として注目されている。図10は、従来のICP質量分析装置の一例を示す概略構成図である。また、図11は、図10に示すICP質量分析装置の外観を示す斜視図であり、図12は、図11に示すAの拡大斜視図である。なお、地面に水平な一方向をX方向(軸方向)とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
ICP質量分析装置101は、プラズマトーチ(プラズマイオン源)10と、プラズマトーチ10の前方(X方向)に配置されたサンプリング部120と、サンプリング部120に隣接して配置された質量分析部130と、ロータリーポンプ等の低真空ポンプ38と、ターボ分子ポンプ等の高真空ポンプ36、37と、サンプリング部120に接続された電源42及び冷却溶媒供給源41と、プラズマトーチ10に連結されたガス供給源43と、ICP質量分析装置101全体の制御を行う制御部(図示せず)とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プラズマトーチ10は、円筒形状のガラス製の試料ガス管(図示せず)と、試料ガス管の外周面を、空間を空けて覆う円筒形状のガラス製のプラズマ用ガス管(図示せず)と、プラズマ用ガス管の外周面を、空間を空けて覆う円筒形状のガラス製のクーラントガス管11と、クーラントガス管11の外周面の先端部分に2〜4ターン巻き付けられた高周波誘導コイル12と、ガス入口13とを備える。そして、ガス入口13は、ガス供給源43と連結されており、アルゴンガスが供給されるようになっている。
【0004】
サンプリング部120は、アルミニウムや銅製のケース状(例えば9cm×13cm×2cm)の筐体121を有し、プラズマトーチ10側から(X方向に向かって)順にサンプリングコーン151とスキマーコーン152とエキストラクタ電極153とが配置されている。
筐体121の壁内には、冷却水を流通させる冷却溶媒用流路(図示せず)が形成されており、冷却溶媒供給源41と冷却溶媒用流路の出入口とが連結されている。これにより、筐体121が冷却水で冷却されるようになっている。また、筐体121の壁には、開口部が形成されており、低真空ポンプ38と連結されている。これにより、筐体121内が低真空ポンプ38によって真空状態(例えば100〜150Pa)となるようになっている。
【0005】
サンプリングコーン151は、円板体(例えば直径6cm)と、円板体の中央に形成された円錐形部とを有した金属体であり、円錐形部の中央に円形状の開口151aが形成されている。サンプリングコーン151の開口151aは、イオン進行方向(X方向)に対して徐々に広がるような形状となっている。そして、サンプリングコーン151は、筐体121のプラズマトーチ10側の側壁と2本のネジ151bを用いて取付け取外し可能となっている。
【0006】
スキマーコーン152は、円板体(例えば直径3cm)と、円板体の中央に形成された円錐形部とを有した金属体であり、円錐形部の中央に円形状の開口152aが形成されている。スキマーコーン152の開口152aは、イオン進行方向(X方向)に対して徐々に広がるような形状となっている。そして、スキマーコーン152は、筐体121の内部とネジ(図示せず)を用いて取付け取外し可能となっている。
【0007】
エキストラクタ電極153は、円板体(例えば直径5cm)と、円板体の中央に形成された円筒形部153aとを有した金属体である。エキストラクタ電極153は、電源42と接続されており、約0〜700Vの電圧が印加されるようになっている。そして、エキストラクタ電極153は、筐体121のプラズマトーチ10側と反対側の側壁と2本のネジ(図示せず)を用いて取付け取外し可能となっている。
【0008】
質量分析部130は、アルミニウムや銅製のケース状(例えば20cm×10cm×15cm)の筐体131aを有する第一チェンバ131と、アルミニウムや銅製のケース状(例えば35cm×10cm×15cm)の筐体32aを有する第二チェンバ32とを備える。筐体131a内には、収束レンズ等のイオンレンズ部33が配置され、筐体32a内には、四重極ロッド構造等の質量分離部34が配置され、最後段にはエレクトロマルチプライヤ等の検出器35が配置されている。
【0009】
このようなICP質量分析装置101では、プラズマトーチ10の高周波誘導コイル12に高周波電流を流すことによりプラズマPが生成され、プラズマPの5000℃〜6000℃の熱によって試料がイオン化し、このイオンとプラズマPとがサンプリングコーン151の開口151aを通過して筐体121内に導入される。そして、筐体121内に導入されたイオンは、スキマーコーン152の開口152aと、エキストラクタ電極153の円筒形部153a内とを順番に通過して筐体131a内に導入される。筐体131a内では、イオンレンズ部33によりサンプリング部120からのイオンを後方の第二チェンバ32に向けて収束させる。
【0010】
直流電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加される質量分離部34では、印加された電圧に応じた質量数(質量m/電荷z)を有するイオンのみが選択的に通過するので、選択されたイオンが検出器35に到達する。このとき、第二チェンバ32を通過するイオンの質量数は、印加される電圧に依存するので、電圧を操作することにより、所定の質量数を有するイオンについてのイオン強度信号を検出器35で得ることができる。
【0011】
ところで、ICP質量分析装置101では、サンプリングコーン151は直接的にプラズマPにさらされ、かつ、イオンが開口151aを通過するため汚れが付着しやすい部品である。汚れが付着すると開口151aが小さくなったり、電界の様子が変わったりして分析感度が低下するので、サンプリングコーン151は比較的頻繁にメンテナンスを行う必要がある。また、スキマーコーン152やエキストラクタ電極153も同様に、メンテナンスを比較的頻繁に行う必要がある。よって、ICP質量分析装置101では、サンプリングコーン151とスキマーコーン152とエキストラクタ電極153とをメンテナンスするために、筐体121から着脱可能な構造となっている。
【0012】
図13は、図10に示すICP質量分析装置101をメンテナンスする際の図である。図13に示すように、メンテナンス時には、まずネジ151b等を取外し、筐体121からサンプリングコーン151とスキマーコーン152とエキストラクタ電極153とを軸方向と反対方向(−X方向)に引き抜いていた。このとき、引き抜き方向(−X方向)にはプラズマトーチ10が存在するため、プラズマトーチ10は、メンテナンス開始前に所定位置から取外したり、所定位置から−X方向に移動可能となるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−144672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、プラズマトーチ10が取外し可能に形成されたICP質量分析装置101では、プラズマトーチ10を取外す手間がかかり、また一旦取外したプラズマトーチ10を取付ける際には、プラズマトーチ10の位置調整が必要となるため非常に手間がかかっていた。
また、プラズマトーチ10が−X方向へ移動可能に形成されたICP質量分析装置101では、プラズマトーチ10を移動させる空間が必要となるためICP質量分析装置101のサイズが大きくなるという問題点があった。
そこで、本発明は、装置を大型化することなく、サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とを容易にメンテナンスすることができるサンプリング部及びそれを備えたICP質量分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明のサンプリング部は、試料をプラズマによりイオン化するプラズマイオン源と、イオン化された試料を質量分析する質量分析部との間に配置され、サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが軸方向にこの順で取付けられ、かつ、取外し可能となっているサンプリング部であって、サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられた状態で、前記質量分析部の前面壁から軸方向と反対方向に所定距離移動させた後、軸方向と垂直となる方向に移動させることで、前記質量分析部から取外され、かつ、サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられた状態で、軸方向と垂直となる方向に移動させた後、前記質量分析部の前面壁に向かって軸方向に所定距離移動させることで、前記質量分析部に取付けられる構造となっており、前記前面壁には、軸方向と垂直方向に移動させる際のガイドとなる水平方向に伸びるガイド部が設けられた構造となっている。
【0016】
ここで、「所定距離」とは、設計者等によって予め決められた任意の距離であり、例えば、プラズマイオン源と接触しない距離や、プラズマイオン源を軸方向と反対方向に移動させる距離を短くするための距離等となり、例えば0.25cm以上0.75cm以下等となる。
【0017】
本発明によれば、サンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とがサンプリング部に取付けられた状態で、質量分析部からサンプリング部を軸方向と反対方向に所定距離移動させた後、軸方向と垂直となる方向に移動させて質量分析部からサンプリング部を取外す。そして、ICP質量分析装置とは別の場所で、サンプリング部からサンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とを取外してメンテナンスする。その後、ICP質量分析装置とは別の場所で、メンテナンス完了後のサンプリングコーンとスキマーコーンとエキストラクタ電極とをサンプリング部に取付け、これを軸方向と垂直となる方向に移動させた後、質量分析部に向かって軸方向に所定距離移動させることで、質量分析部に取付けるようにしている。
さらに、質量分析部の前面壁には軸方向と垂直方向に移動させる際のガイドとなる水平方向に伸びるガイド部が設けてあり、サンプリング部を取外す際、また、取付ける際に、このガイド部によって軸方向と垂直方向に移動させる際のサンプリング部の水平方向の移動が案内される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のサンプリング部によれば、サンプリング部の着脱の際に、プラズマイオン源を逃がす空間が少なくて済むため、装置の小型化が可能となる。また、プラズマイオン源を取外す必要がないため、メンテナンスの度にプラズマイオン源を位置調整する必要がない。また、サンプリング部のメンテナンス作業を独立した位置で行うことができる。さらに、サンプリング部の取付け、取外しの際に、サンプリング部の軸方向と垂直方向への移動をガイド部の案内によって簡単に行うことができる。
【0019】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明のサンプリング部においては、一端部を回転軸として他端部を回転させることで前記質量分析部から他端部を軸方向と反対方向に所定距離移動させた後、軸方向と垂直となる方向に移動させることで、前記質量分析部から取外され、かつ、軸方向と垂直となる方向に移動させた後、前記質量分析部に一端部を保持させて一端部を回転軸として他端部を回転させることで前記質量分析部に向かって他端部を軸方向に所定距離移動させることで、前記質量分析部に取付けられる構造となっているようにしてもよい。
【0020】
また、本発明のサンプリング部においては、前記質量分析部に形成された真空開口部と連結される真空用開口部と、前記質量分析部に形成された冷却溶媒供給流路と連結される冷却溶媒用流路と、前記質量分析部に形成された質量分析部側電源接点部と接続されるサンプリング部側電源接点部とを有するようにしてもよい。
本発明によれば、真空構造と給電構造と水冷構造とが同時に着脱可能なサンプリング部であるため、メンテナンス時には装置との接続部を残すことなく完全に着脱できる。
【0021】
そして、本発明のサンプリング部においては、サンプリングコーンが取付けられる第一板状体と、スキマーコーンとエキストラクタ電極とが取付けられる第二板状体とを備え、前記第一板状体には、前記冷却溶媒用流路となる冷却溶媒用流路溝が形成され、前記第二板状体には、前記真空用開口部と前記サンプリング部側電源接点部と前記冷却溶媒用流路出入口とが形成されているようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明のICP質量分析装置においては、上述したようなサンプリング部と、試料をプラズマによりイオン化するプラズマイオン源と、イオン化された試料を質量分析する質量分析部とを備え、前記質量分析部には、電源と接続された前記質量分析部側電源接点部と、冷却溶媒供給源と連結された冷却溶媒供給流路と、真空ポンプと連結された真空開口部と、前記サンプリング部を軸方向と垂直となる方向に移動させるためのガイド部とが形成されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るICP質量分析装置の一例を示す概略構成図。
図2図1に示すICP質量分析装置の一部の拡大断面図。
図3】取外されたサンプリング部の裏面を示す斜視図。
図4図3に示すサンプリング部の断面斜視図。
図5図3に示すサンプリング部の断面斜視図。
図6】第一板状体の裏面を示す斜視図。
図7】サンプリング部取付け時の質量分析部の一例を示す斜視図。
図8】サンプリング部取外し時の質量分析部の一例を示す斜視図。
図9】サンプリング部の取付け作業時における質量分析部の一例を示す斜視図。
図10】従来のICP質量分析装置の一例を示す概略構成図。
図11図10に示すICP質量分析装置の外観を示す斜視図。
図12図11に示すAの拡大斜視図。
図13図10のICP質量分析装置のメンテナンス時の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0025】
図1は、本発明に係るICP質量分析装置の一例を示す概略構成図であり、図2は、図1に示すICP質量分析装置の一部の拡大断面図である。なお、上述したICP質量分析装置101と同様のものについては、同じ符号を付している。
ICP質量分析装置1は、プラズマトーチ(プラズマイオン源)10と、プラズマトーチ10の前方(X方向)に配置されたサンプリング部20と、サンプリング部20に隣接して配置された質量分析部30と、ロータリーポンプ等の低真空ポンプ38と、ターボ分子ポンプ等の高真空ポンプ36、37と、質量分析部30に接続された電源42及び冷却溶媒供給源41と、プラズマトーチ10に連結されたガス供給源43と、ICP質量分析装置1全体の制御を行う制御部(図示せず)とを備える。
【0026】
ここで、図3は、取外された状態のサンプリング部20の裏面を示す斜視図である。また、図4及び図5は、図3に示すサンプリング部20の断面斜視図である。
サンプリング部20は、アルミニウムや銅製の第一板状体21と、アルミニウムや銅製の第二板状体22とを備え、プラズマトーチ10側から順番(X方向)にサンプリングコーン51とスキマーコーン52とエキストラクタ電極53とが配置されている。
【0027】
サンプリングコーン51は、円板体(例えば直径6cm)と、円板体の中央に形成された円錐形部とを有した金属体であり、円錐形部の中央に円形状の開口51aが形成されている。サンプリングコーン51の開口51aは、イオン進行方向(X方向)に対して徐々に広がるような形状となっている。
スキマーコーン52は、円板体(例えば直径3cm)と、円板体の中央に形成された円錐形部とを有した金属体であり、円錐形部の中央に円形状の開口52aが形成されている。スキマーコーン52の開口52aは、イオン進行方向(X方向)に対して徐々に広がるような形状となっている。
エキストラクタ電極53は、円板体(例えば直径5cm)と、円板体の中央に形成された円筒形部53aとを有した金属体である。
【0028】
また、図6は、第一板状体21の裏面を示す斜視図である。第一板状体21は、長方形の平板形状(例えば9cm×13cm×2cm)をしている。そして、第一板状体21の中央部には、軸方向(X方向)に貫通する開口部21aが形成されている。このような第一板状体21の表面の中央部に、図2に示すようにサンプリングコーン51が2本のネジ51bを用いて取付け取外し可能となっている。また、第一板状体21の裏面には、冷却溶媒用流路となる冷却溶媒用流路溝21cと、開口部21aの周囲となる位置に真空用パッキン溝21dと、冷却溶媒用流路溝21cの周囲となる位置に冷却溶媒用パッキン溝21eとが形成されている(図4参照)。さらに、冷却溶媒用流路の入口と出口となる位置には、円環形状のパッキン(弾性体)21c’が各々配置されている。
【0029】
第二板状体22は、図3に示すように長方形の平板形状(例えば9cm×9cm×1cm)をしており、第二板状体22の中央部には、軸方向(X方向)に貫通する円形状(例えば直径3cm)の高真空用開口部22aが形成されている。そして、第二板状体22の図における左端部には、裏面が−X方向に所定角度(例えば15°)で傾斜する傾斜部22kが形成されるとともに、傾斜部22kには2個の半円形状(例えば直径0.8cm)の保持用溝22eが上下方向(Z方向)に並んで形成されており、また保持用溝22eの右方には、X方向に貫通する楕円形状の低真空用開口部22bが形成されている。さらに、第二板状体22の図における右下部には、X方向に貫通する2個の円形状(例えば直径0.5cm)の冷却溶媒用出入口22cが形成されており、この冷却溶媒用出入口22cには、円環形状のパッキン(弾性体)22c’が各々配置されている。
【0030】
このような第二板状体22の表面の中央部に、スキマーコーン52が取付け取外し可能となるとともに、第二板状体22の裏面の中央部には、エキストラクタ電極53が2本のネジ53bを用いて取付け取外し可能となっている。また、図5に示す第二板状体22の右上部の内側には、金属製の給電接続棒22hが水平方向(Y方向)に伸びるように配置されており、給電接続棒22hの一端部には裏面側に向かって突出する金属製の給電端子(サンプリング部側電源接点部)22jが形成されるとともに、給電接続棒22hの他端部となる第二板状体22の裏面の中央部には、取付けられたエキストラクタ電極53と電気的に接続される金属製の給電端子22iが形成されている。
【0031】
そして、このような第一板状体21と第二板状体22とは、真空用パッキン溝21dと冷却溶媒用パッキン溝21eとにパッキン(弾性体)21d’、21e’が配置された後、第二板状体22の表面と第一板状体21の裏面とが重なるようにして4本のネジ21fを用いて取付けられる。このとき、第一板状体21の開口部21aと第二板状体22の高真空用開口部22a及び低真空用開口部22bとの周囲がパッキン21d’でシール(密閉)されながら連結される。また、第一板状体21の冷却溶媒用流路溝21cの周囲と第二板状体22の表面とがパッキン21e’でシールされながら連結される。このとき、第二板状体22の表面と第一板状体21の冷却溶媒用流路溝21cとの間に流路が形成され、この冷却溶媒用流路の出入口が冷却溶媒用出入口22cとパッキン21c’でシールされながら連結されることになる。
【0032】
ここで、サンプリングコーン51とスキマーコーン52とエキストラクタ電極53とをメンテナンスするメンテナンス方法の一例について説明する。
【0033】
まず、第一板状体21から2本のネジ51bを取外して、サンプリングコーン51を取外す。次に、第二板状体22からスキマーコーン52を取外す。また、第二板状体22から2本のネジ53bを取外して、エキストラクタ電極53を取外す。
そして、サンプリングコーン51とスキマーコーン52とエキストラクタ電極53とをメンテナンスする。
【0034】
次に、第二板状体22の裏面の中央部に、メンテナンスされたエキストラクタ電極53を2本のネジ53bにより取付け、第二板状体22の表面の中央部に、メンテナンスされたスキマーコーン52を取付ける。このとき、エキストラクタ電極53と給電端子22iとが電気的に接続される。次に、第一板状体21の表面の中央部に、メンテナンスされたサンプリングコーン51を2本のネジ51bにより取付ける。
【0035】
ここで、サンプリング部20を取付けたり取外したりする質量分析部30について説明する。図7は、サンプリング部20が取付けられたときの質量分析部30の一例を示す斜視図であり、図8は、サンプリング部20が取外されたときの質量分析部30の一例を示す斜視図であり、図9は、サンプリング部20が取付けられる際の質量分析部30の一例を示す斜視図である。
質量分析部30の前面壁31の中央部には、軸方向(X方向)に貫通する円形状(例えば直径5cm)の開口部31aが形成され、前面壁31の右部には、X方向に貫通する楕円形状の真空開口部31bが形成され、前面壁31の左下部には、X方向に貫通する2個の円形状(例えば直径0.4cm)の冷却溶媒供給流路31cが形成されている。この冷却溶媒供給流路31cは、冷却溶媒供給源41(図1参照)と連結されている。また、前面壁31の左上部には、給電端子(質量分析部側接点部)31dが形成されており、給電端子31dは、電源42(図1参照)と連結されている。
給電端子(質量分析部側接点部)31dは、略円柱形状のピンと、内部にピンが挿入される弾性体と、ピンのX方向に配置された給電板とを有する。このような給電端子31dによれば、弾性体がピンを−X方向に移動させるように作用すると、ピンと給電板とが非接触状態となり、一方、ピンが弾性体の弾性力に対抗してX方向に移動すると、ピンと給電板とが接触状態となる。
【0036】
また、前面壁31の上部と下部とには、ガイド部31eが水平方向(Y方向)に伸びるように形成され、前面壁31の右部には、2個の突起部31fが上下方向(Z方向)に並んで形成され、また前面壁31の左部には、ネジ22gが挿入されるネジ穴31gが形成されている。ガイド部31eは、前面壁31から−X方向に所定距離(例えば1cm)突出するよう形成されており、サンプリング部20の取付け取外しの際にサンプリング部20がガイド部31eによって−X方向に所定距離以上移動せず、かつ、前面壁31から所定距離分離隔した状態でY方向に移動するようになっている。2個の突起部31fは、−X方向に突出する円柱体(例えば直径0.7cm、高さ0.8cm)形状となっており、サンプリング部20が質量分析部30の所定位置にあるときには、サンプリング部20の保持用溝22eに挿入され、サンプリング部20は2個の突起部31f、31fを結ぶZ方向を回転軸として回転するようになっている。
【0037】
そして、サンプリング部20を質量分析部30に取付ける方法の一例について説明する。まず、上方のガイド部31e及び下方のガイド部31eと質量分析部30の前面壁31との間に、サンプリング部20を−Y方向から挿入し、サンプリング部20の下端部を下方のガイド部31eに乗せながら−Y方向に移動させていく。その後、サンプリング部20が質量分析部30の所定位置に移動したときに、サンプリング部20の右端部の2個の保持用溝22eが質量分析部30の2個の突起部31fに挿入される。次に、サンプリング部20を2個の突起部31fを回転軸として回転させることで、サンプリング部20の左端部をX方向に所定距離移動させる。次に、ネジ22gがネジ穴31gに挿入され、サンプリング部20を質量分析部30にしっかり固定する。このとき、高真空用開口部22aが開口部31aに、低真空用開口部22bが真空用開口部31bにパッキン31hでシールされながら連結され、冷却溶媒用出入口22cが冷却溶媒供給流路31cにパッキン22c’でシールされながら連結され、給電端子(サンプリング部側電源接点部)22jが給電端子(質量分析部側接点部)31dのピンをX方向に押圧することで、電気的に接続される。
【0038】
さらに、サンプリング部20を質量分析部30から取外す方法の一例について説明する。まず、ネジ22gをネジ穴31gから取外す。次に、サンプリング部20を2個の突起部31fを回転軸として回転させることで、サンプリング部20の左端部を−X方向に所定距離移動させる。その後、サンプリング部20は、上方のガイド部31eと下方のガイド部31eとによって−X方向へは移動できなくなる。次に、サンプリング部20を上方のガイド部31eと下方のガイド部31eとによってY方向に移動させることで、上方のガイド部31e及び下方のガイド部31eと質量分析部30の前面壁31との間からサンプリング部20を取外す。
【0039】
以上のように、本発明のICP質量分析装置1によれば、サンプリング部20の着脱の際に、プラズマトーチ10を逃がすための空間が少なくて済むため、装置の小型化が可能となる。また、プラズマトーチ10を取外す必要がないため、メンテナンスの度にプラズマトーチ10の位置を調整する必要がない。さらに、サンプリング部20のメンテナンス作業を独立した位置で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ICP質量分析装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1: ICP質量分析装置
10: プラズマトーチ(プラズマイオン源)
20: サンプリング部
30: 質量分析部
51: サンプリングコーン
52: スキマーコーン
53: エキストラクタ電極
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