(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルムを前記液体に浸漬させた後、前記液体を引き抜く際、前記液体の液面高さを前記第一の領域側よりも前記第二の領域側で高くすることにより、前記第一の領域を正又は負に摩擦帯電させ、第二の領域を逆極性に帯電させる、請求項2に記載のポリオレフィン微多孔フィルムの表面処理方法。
前記液体を静置したときの液面と前記フィルムのいずれか一方の表面とのなす角度が5°〜85°である、請求項3に記載のポリオレフィン微多孔フィルムの表面処理方法。
前記液体が水、アルコール20重量%以下の水溶液から選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔フィルムの表面処理方法。
前記フィルムをロールに巻き取りフィルムロールとした際に、対向して接触するそれぞれのフィルム表面が実質的に逆極性に帯電されている、請求項9に記載のポリオレフィン微多孔フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態のフィルムの表面処理方法の一例を示す図である。本実施形態の処理方法は、ポリオレフィン微多孔フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)10を、液体20、21に浸漬させた後、その液体20、21から引き抜く際、一方のフィルム表面の第一の領域11側の液体20の液面高さよりも、第一の領域11に対向する他方のフィルム表面の第二の領域12側の液体21の液面高さを高くする。これにより、第一の領域11を正又は負に帯電させ、第二の領域12を、第一の領域の極性とは逆極性に帯電させる。つまり、第一の領域が正に帯電する場合は、第二の領域が負に帯電し、第一の領域が負に帯電する場合は、第二の領域が正に帯電する。
【0016】
ポリオレフィン微多孔フィルム10としては、電気絶縁性であれば、特に限定されない。例えば、微多孔質のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。また、これらのフィルムの製造方法としては、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤からなる溶融混合物を延伸、成膜後、成膜用溶剤を除去する方法(湿式法)、ポリオレフィン樹脂フィルムを一軸方向または二軸方向に延伸する方法(乾式法)などの従来公知の方法を用いることができる。このようなポリオレフィン微多孔フィルムとしては、一般的には、例えば、膜厚が1.0〜60μm、空孔率が20〜80%、膜厚20μm換算の透気抵抗度が10〜5000秒/100ccである。なお、本実施形態の表面処理方法を用いるポリオレフィン微多孔フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、バッテリーセパレータフィルムに用いることにより、作業時のハンドリング性を向上させることができる。
【0017】
液体20、21としては、フィルム表面に電荷を供給できるものでればよく、特に限定されない。例えば、表面張力が高くポリオレフィン微多孔フィルムへの濡れ性が低い液体が好適に使用できる。液体20、21は、用いるフィルムの種類などに応じて適宜選択することができるが、この中でも、調整が容易であるという観点から、液体としては、超純水、蒸留水、イオン交換水、井戸水等の天然水などの水を好適に用いることができる。なお、水は少量のアルコールなどの他の成分を含有していてもよいが、その場合、20℃の表面張力が50mN/m以上の液体であることが好ましく、60mN/m以上であることがより好ましい。表面張力はJIS K2241に規定された方法で測定することができる。
【0018】
なお、第二の領域12と接触する液体21は、第一の領域11側の液体20と同一でも異なっていてもよい。また、後述する液面調整部などにより、液体21を適宜、第二の領域に供給する場合、フィルム10を浸漬させた液体の種類と、液面調整のために供給する液体の種類が同じでも、異なっていてもよい。
【0019】
フィルム10を液体20、21から引き抜く速度は、第一の領域11を帯電させることにより対向する第二の領域12において電荷が補償される速度であればよく、フィルムの搬送速度を制御することにより適宜調整することができる。また、後述するように、フィルムの引き抜く速度により、第一の領域11の帯電量を調整することができる。
【0020】
なお、フィルム10の第一の領域または第二の領域を帯電させる際の液体20、21の温度は、特に限定されないが、通常は室温であり、例えば、2〜50℃であり、10〜30℃である。
【0021】
液体20、21の液面高さの調整方法は、特に限定されず、種々の方法により行うことができる。例えば、
図3に示されるように、第二の領域側のフィルム表面に液体21をかけることにより、第二の領域側の液体21の液面を、第一の領域側の液体20の液面より高くするように調整することができる。また、液体液面より高い位置に設置された枠に液体を流し込むことや、含水性の不織布やスポンジ等を液体液面より高い位置でフィルムの片方の表面に接触させる(例えば、
図4(A))などの方法によっても同様に調整できる。また、例えば、疎水性の部材を第一の領域側の液面に配置することにより、第一の領域側の液面を第二の領域側の液面より低くするように調整してもよい(例えば、
図4(B))。
【0022】
液体液面の高低差は、フィルム表面と液体との濡れ性や、フィルム10の搬送速度、フィルム表面のしわやボイドの程度や頻度、液体20、21の液面の振動等による搖動のしやすさによって、適宜調整することができる。
【0023】
また、フィルム表面に対する液体20、21の液面高さの調整の容易さ、安定性という観点から、液体を静置したときの液面とフィルムのいずれか一方の表面とのなす角度θが好ましくは5°〜85°、より好ましくは60°〜83°となるように、前記液体から引き抜くことができる。なお、角度θは、第一の領域側のフィルム表面と液体液面との角度θ
1であってもよく、第二の領域側のフィルム表面と液体液面との角度θ
2であってもよい。
【0024】
また、フィルムに対する液体の濡れ性によっては、角度θを調整して、フィルムを液体から引き抜くことで、第一の領域の液面を第二の領域の液面より安定的に低くすることもできる。この場合の角度θは、第一の領域側のフィルム表面と液体液面がなす角度θ
1であって、5°〜85°であることが好ましく、より好ましくは60°〜83°である。角度θ
1が上記範囲内であると、第一の領域において、液体のフィルム表面からの液切れが良好になるからである。なお、水槽からフィルムを引き抜く際の角度θが、鉛直方向である場合、フィルムの表面状態や、処理装置の振動等により液体液面が不均一に搖動することがある。
【0025】
以下、フィルムの両表面が裏表逆極性帯電する際の推測されるメカニズムについて
図2を参照して説明する。なお、本発明は、このメカニズムに限定されない。
図2は、本実施形態の一例として、フィルム10としてポリエチレン系樹脂フィルム、液体20、21として水を用いた際の推測されるフィルム表面の帯電状態を示す図である。
【0026】
図2(A)は、フィルム10を液体中から大気中へ引き抜くことにより、液体20に接触していたフィルム表面の第一の領域11を液体20中から液面上へ露出させた際の状態を示す。この際、フィルム10の表面の第一の領域11は、液体20との摩擦により負に帯電30すると考えられる。なお、
図2中の矢印は、フィルムの搬送方向を示す。なお、第一の領域11の帯電量は、フィルム10の種類、液体20の種類、前述した液体20の液面と第一の領域11とのなす角度、液体の液面の高低差、フィルムを引き抜く速度などにより適宜調整できる。
【0027】
図2(B)は、フィルムをさらに引き抜いた状態を示す図である。液体20の液面上へ露出した第一の領域11が連続的に負に帯電することにより、第一の領域11に対向する第二の領域12が、その電荷を補償するため、逆極性である正に帯電31した状態を示す。この際、第二の領域12が液体21と接触していることにより、液体21から電荷補償され容易に第二の領域12が逆極性に帯電することができる。
【0028】
なお、第二の領域12は、第一の領域11で発生した電荷を補償することができれば、液体21と接触していなくてもよい。例えば第二の領域12側に正又は負のイオンを発生する装置を設置してもよい。
【0029】
図2(C)は、第二の領域12が、液体21から引き抜かれた際、第一の領域11及び第二の領域12ともに逆極性帯電が維持されている状態を示す。このように、フィルム10を、液体20、21に浸漬させ、液体から引き抜く際の液体20、21の液面の高さを制御するという簡便な工程により、フィルム表面の所望の領域において、正又は負に均一に帯電したフィルムを得ることができる。
【0030】
なお、フィルム表面の帯電分布は、例えば、特開2006−210160号公報に記載されるような、フィルム表面をアースした金属板に接触させて、もう一方の表面電位を測定することにより評価できる。表面電位の測定には、一般的な電位測定器を使用することができる。ポリオレフィン微多孔フィルムの場合、この際の表面電位は、絶対値として約40〜150Vとなることが一般的である。
【0031】
また、上述したフィルムの表面処理は、通常のポリオレフィン微多孔フィルムの製造工程に組み込むことにより、簡便にフィルム表面の帯電分布の制御を行うことができる。一旦、表面処理を行って両表面を逆極性に帯電させたフィルムは、その後、延伸工程、熱処理、架橋処理などを行っても、その効果を発揮することができる。
【0032】
また、一旦、表面処理を行って両表面を逆極性に帯電させたフィルムは、ロール搬送するなどして、摩擦帯電や剥離放電により表面の一部が帯電したとしても、一般の除電器でこの一部の帯電を除去することができる。このように一部の帯電を除去した後のフィルムは、表面内の帯電極性が一様で、両表面が逆極性に帯電したフィルムとなる。
【0033】
また、帯電分布が不均一なフィルムを、極性溶媒に浸漬することにより、除電することもできる。例えば、表面張力が50mN/m未満の極性溶媒は、フィルムに対する浸透性が高く、フィルム内の細孔を通って、液体が他方のフィルム表面まで浸透し、フィルムの両表面の逆極性帯電が中和されるため、除電される。例えば、両表面が逆極性に帯電したポリオレフィン系微多孔フィルムをメチルエチルケトンやジクロロメタンなどの極性溶媒に浸漬させたり、フィルムのどちらか一方の表面に塗布したりすると、これらの極性溶媒はフィルムに浸透し、フィルムの前記帯電が除電される。
【0034】
このような用途に使用可能な極性溶媒は特に限定されず、ケトン類、エーテル類、アルコール類、塩素含有炭化水素系溶剤およびこれらの混合物などを用いることができる。なお、液体のフィルムへの浸透の有無は、フィルムを液体に浸漬させ、引き抜いた際の目視による浸透の有無で判断することができる。
【0035】
なお、フィルム表面処理方法の他の実施形態として、フィルムを液体から引き抜くのではなく、液体を移動させることにより、フィルム表面に帯電を生じさせてもよい。液体を移動させる方法としては、例えば、液体をスポンジ等の多孔質弾性部材に含有させ、その部材を介してフィルムと液体とを接触させた後、フィルムを移動させ、スクレーパー、エアブロー等の液体除去手段の設置位置をそれぞれの表面で変えて、液体をフィルムから分離したりする方法が挙げられる(例えば、
図5)。
【0036】
図3は、本実施形態のフィルムの表面帯電装置100の一例を示す図である。このフィルムの表面帯電装置100を用いることにより、上述したフィルムの帯電処理を簡便に効率的に行うことができる。フィルムの帯電装置100は、溶媒保持部40、フィルム10を搬送することのできる搬送部(図示せず)及び、前記フィルムのすくなくとも一方の表面と液体20、21との接触面を調整する溶媒接触調整部60を備える。なお、
図3中の矢印は、フィルムの搬送方向を示す。
【0037】
溶媒保持部40は、液体22を保持できるものであればよく、その形状、大きさ等は、帯電分布を制御する領域の大きさに応じて、適宜調整することができる。例えば、液体槽の形態とすることができる。
【0038】
搬送部は、図示しないが、溶媒保持部40とフィルム10の両表面とが任意の時間接触できるように、フィルム10を搬送できるものであればよく、例えば、搬送ロールなどを用いることができる。搬送ロールの回転数、材質、大きさ、設置する位置等は、特に限定されず、適宜、調整することができる。
【0039】
溶媒接触調整部60は、フィルムの両表面が前記溶媒保持部から離れる際、一方の前記フィルム表面の所定領域と他方の前記フィルム表面の対向する領域との間で液体20、21と分離する時間が異なるように、フィルムの少なくとも一方の表面と液体20、21との接触する液面を調整する。例えば、液面調整部60は、フィルムの片面に液体21を噴射できるようにした溶媒噴射部を備えることができる。
【0040】
また、
図4(A)に示されるように、液面調整部61は、液体液面より高い位置に設置された枠や、不織布やスポンジ等とすることができる。この枠内に液体を供給したり、不織布やスポンジ等に液体を含有させたりすることにより、液体21の液面高さを調整する。また、
図4(B)に示されるように、液面調整部62は、疎水性の部材とすることもできる。これにより、疎水性部材を設置した側の液体20の液面を、他方の側の液体21の液面よりも低くすることができる。
【0041】
図5は、フィルムの表面帯電装置100の他の実施形態を示す図である。
図5に示されるように、溶媒保持部41を、液体20、21を染み込ませることができるように、不織布やスポンジ等の多孔質部材の形態とすることができる。液面調整部63a、63bは、フィルム表面のいずれか一方又は他方の側にそれぞれ備えることができる。また、液面調整部63bは、液面調整部63aに対向する位置とは異なる位置に備えられることにより、フィルム表面に接触している液体20、21を除去する時間をそれぞれの表面で異ならせる。なお、液面調整部は、フィルム表面のいずれか一方の面のみに備えられてもよい。
【0042】
上述の本実施形態の表面処理方法または装置を用いることにより、帯電分布が制御されたポリオレフィン微多孔フィルムを得ることができる。フィルムの帯電分布は、目的により、所望の分布とすることができる。例えば、一方の表面及び他方の表面を一様に逆極性に帯電させたりすることができる(両表面逆極性帯電)。また、
図6に示されるように、フィルム長さ方向(MD)に沿って、正又は負に一様に帯電させ、かつ、フィルム横方向(TD)に正又は負に帯電した領域を交互に配置させたり(縦筋両表面逆極性帯電)、
図7に示されるように、フィルム横方向(TD)に沿って、正又は負に一様に帯電させ、かつ、フィルム長さ方向(MD)に、正又は負に帯電した領域を交互に配置させたり(横筋両表面逆極性帯電)することができる。
【0043】
例えば、上記した両表面逆極性帯電、縦筋両表面逆極性帯電又は横筋両表面逆極性帯電させたフィルムでは、フィルムをロールに巻き取りフィルムロールとした際に、対向して接触するそれぞれのフィルム表面が逆極性に帯電されているため、フィルム同士の密着性が向上する。それにより、フィルムロールとした際、巻きずれなどが無く巻き姿が良好なものとなる。
【0044】
特に、縦筋両表面逆極性帯電させたフィルムでは、巻き取り時の横ずれをより少なくすることが期待できる。また、横筋両表面逆極性帯電させたフィルムでは、巻き締りの抑制が期待できる。
【0045】
また、各フィルム表面を一様に逆極性に帯電させたフィルムでは、巻き取ったフィルムロールを巻き出す際にも、不均一な帯電によるフィルムの折れ曲がり等が解消されるため、加工性、ハンドリング性が向上する。また、使用目的によっては、一方のフィルム表面を所定の規則性を有するように正負を混合して帯電させることで、フィルムを所望の形状に折り曲げたり、丸めたりするようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施形態の方法により表面処理を行ったフィルムは、フィルムの両面(裏表面)で相互に逆極性に帯電しているため、見かけ電位がゼロとなり、フィルムをロールに巻き取り、再度巻き出しても埃付着などの帯電の影響は受けにくい。
【0047】
フィルム表面の正又は負の均一帯電領域をフィルム長さ方向または横方向に平行に交互に配置する方法としては、特に限定されず、例えば、後述する実施例2、3の方法を用いることができる。なお、フィルム表面の帯電分布は、アースした金属上に置いたフィルム表面を電位測定器のプローブで操作することによって帯電量と共に評価することができる。電位測定はアースした金属上に静置したフィルムを用いて行ってもよく、アースした導体ロール上にフィルムを走行させながら、測定してもよい。また、その他にも、極性の異なるカラートナー混合物(例えば、正に帯電した赤色トナーと負に帯電した青色トナーとの混合物)を振りかけ、その色合いを観察することにより評価することができる。本実施形態に係るフィルム表面処理を行ったフィルム表面の領域は、処理を行わなかったフィルム表面の領域と比較して、その色合いが均一なものとなる。
【実施例】
【0048】
[実施例1](均一表裏逆極性帯電)
ポリエチレンと可塑剤として流動パラフィンとを配合したポリマーをダイより押し出しシートを成形した。その後、シートを5X5倍の同時2軸延伸し、洗浄工程で可塑剤を所定の範囲内になるように洗浄してポリオレフィン微多孔フィルムを得た。その後、液体として水(イオン交換水:表面張力72mN/m)を用いてフィルムの表面処理を行うため、フィルムを水槽に通し、水槽から出てきた微多孔フィルムの片面のみに水を噴射し、フィルム片側のみフィルム横幅方向に均一に水面の高さを上げ、ヒートセットを実施し巻き取って微多孔フィルム原反ロールを得た。水面に対向するフィルム表面(水面の低い側)と水面(静止時)との角度は83°とした。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出しスリッターにてタッチロールを使用せずにスリットした。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれなどが無く巻き姿が良好であった。
【0049】
得られた微多孔フィルムロールから微多孔フィルムを1m巻きだし、ロールを1.5mの高さの空中に保持した。巻きだしたフィルムは自重で垂れ下がり、しわなどの発生は認められなかった。得られたフィルムロールから巻きだしたフィルム表面と反対側のフィルム表面は、相互に逆の極性で均一に帯電していた。なお、帯電分布は、アースした金属板上に得られた微多孔フィルムを置き、もう一方の表面を電位測定器のプローブで捜査して評価した。その結果、フィルムのそれぞれの表面の帯電極性は一様でありはフィルム表面の電位は絶対値で50〜100Vであった。
【0050】
[実施例2](横筋表裏逆極性帯電)
水槽から出てきた微多孔フィルムの一方の表面と反対の表面に一定時間水を交互に噴射して、一定時間ごとに、いずれか一方の表面の液面高さが交互に高くなるように調整し、ヒートセットを実施し巻き取った以外は実施例1と同様にして微多孔フィルム原反ロールを得た。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出し、スリッターにてタッチロールを使用せずにスリットして巻き取って微多孔フィルムロールを得た。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれなどが無く巻き姿が良好であった。
【0051】
[実施例3](縦筋表裏逆極性帯電)
水槽から出てきた微多孔フィルムの一方の表面に一定間隔に設置した複数のノズルから、水を噴射し、フィルム走行方向に対して交互に液面の高さを上げ、ヒートセットを実施し巻き取った以外は実施例1と同様にして微多孔フィルム原反ロールを得た。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出し、スリッターにてタッチロールを使用せずにスリットして巻き取って微多孔フィルムロールを得た。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれなどが無く巻き姿が良好であった。
【0052】
[比較例1]
ポリエチレンと流動パラフィンを可塑剤としたポリマーをダイより押し出しシートを成形した。その後シートを5×5倍の同時2軸延伸、洗浄工程で可塑剤を所定の範囲内になるように洗浄した後、ヒートセットを実施し巻き取って微多孔フィルム原反ロールを得た。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出し、スリッターにてタッチロールを使用せずにスリットして巻き取って微多孔フィルムロールを得た。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれが認められ、巻き姿が悪かった。
【0053】
[比較例2]
水槽から液面に対して鉛直方向に微多孔フィルムを取り出し、フィルムのどちらの表面にも水を噴射しなかった以外は実施例1と同様にして微多孔フィルム原反ロールを得た。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出し、スリッターにてタッチロールを使用せずにスリットして巻き取って微多孔フィルムロールを得た。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれが認められ、巻き姿が悪かった。
【0054】
得られたフィルムロールから巻きだしたフィルム表面と反対側のフィルム表面は、相互に逆の極性でフィルム走行方向にもフィルム横方向にも不均一に帯電していた。フィルムを水槽から取り出す際に、水面が不均一に揺れたことが原因と推測された。
【0055】
[実施例4](除電後の再帯電)
比較例2で得られた微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出しながらグラビアコートにてメチルエチルケトン(MEK)を塗布し、乾燥させて巻き取った。得られた微多孔フィルムの帯電量は0Vであった。
【0056】
上記微多孔フィルムを巻きだして、水槽を通し、実施例1と同様にしてフィルム片側のみフィルム横幅方向に均一に水面の高さを上げ、ヒートセットを実施し巻き取って微多孔フィルム原反ロールを得た。微多孔フィルム原反ロールから微多孔フィルムを巻出しスリッターにてタッチロールを使用せずにスリットした。得られた微多孔フィルムロールは、巻きずれなどが無く巻き姿が良好であった。