(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続先選択部は、前記一の伝送装置として、接続中の伝送装置の伝送レートの次に大きい伝送レートに対応する伝送装置、又は接続中の伝送装置の伝送レートの次に小さい伝送レートに対応する伝送装置に接続先を切り替える、
請求項1に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.マルチキャストシステムの概要
1−2.送信装置の構成例
1−3.受信装置の構成例
1−4.送信装置100と受信装置150の接続関係
1−5.複数の送信装置の配置例
1−6.ストリームデータの伝送処理
1−6−1.送信装置100の処理例
1−6−2.受信装置150の処理例
1−7.接続方法
2.第2の実施形態
3.第3の実施形態
4.第4の実施形態
5.第5の実施形態
6.まとめ
【0016】
<1.第1の実施形態>
(1−1.マルチキャストシステムの概要)
本開示の第1の実施形態に係るマルチキャストシステム1の概要について、
図1を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係るマルチキャストシステム1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、マルチキャストシステム1は、カメラ50と、複数の送信装置100と、複数の受信装置150(1)〜150(N)とを有する。
【0018】
カメラ50は、例えば動画や静止画を撮像するビデオカメラである。カメラ50は、撮像した非圧縮画像や音声データ等を含む非圧縮データを、ビデオ信号入力IFを経由して複数の送信装置100へ送信する。すなわち、複数の送信装置100には、同一のコンテンツの非圧縮データが入力される。
【0019】
送信装置100は、カメラ50から入力された非圧縮データに基づいて、異なる伝送レートのストリームデータを生成して受信装置150(1)〜150(N)にマルチキャスト伝送する。具体的には、送信装置100は、カメラ50から入力された非圧縮データに対して、それぞれ異なる圧縮率にて圧縮符号化を行い、圧縮ストリームデータを生成する。そして、送信装置100は、生成したストリームデータを、所定の伝送レートでマルチキャスト伝送する。なお、送信装置100の詳細構成は、後述する。
【0020】
受信装置150(1)〜150(N)は、送信装置100からマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信する。なお、受信装置150の詳細構成は、後述する。
【0021】
(1−2.送信装置の構成例)
次に、第1の実施形態に係る送信装置100の構成例について説明する。
図1に示すように、送信装置100は、複数のストリーム生成部110(1)、110(2)、・・、110(M)(以下、ストリーム生成部110と総称する)と、伝送装置の一例である複数の無線伝送部130(1)、130(2)、・・、130(M)(以下、無線伝送部130と総称する)とを有する。
【0022】
(ストリーム生成部110の構成例)
複数のストリーム生成部110(1)、110(2)、・・、110(M)には、それぞれ同一のコンテンツの非圧縮データがカメラ50から入力される。ストリーム生成部110(1)〜110(M)は、入力された非圧縮データに対して、それぞれ異なる圧縮率にて圧縮符号化を行い、圧縮ストリームデータを生成する。このため、一つの送信装置100による圧縮後のデータレートの種類は、M個だけある。
【0023】
ストリーム生成部110(1)〜110(M)は、同様な構成であるので、以下では、ストリーム生成部110(1)を例に挙げて、ストリーム生成部の構成例について説明する。ストリーム生成部110(1)は、
図1に示すように、CODEC112(1)と、FEC部114(1)と、RTP部116(1)と、平滑化部118(1)と、RTCP部120(1)とを有する。
【0024】
CODEC112(1)は、カメラ50から入力された非圧縮データを、所定のレートにて圧縮符号化を行う。また、CODEC112(1)は、
IETF RFC 3550に準拠したRTPパケット化処理を行い、RTPストリームデータを生成する。そして、CODEC112(1)は、生成したRTPストリームデータをFEC部114(1)に出力する。
【0025】
FEC部114(1)は、RTPストリームデータの前方誤り訂正符号化(Forward Error Correction)処理を行う。FEC部114(1)は、前方誤り訂正符号として例えばReed−Solomnパケット消失訂正符号を用いて、パケット損失時の回復用に冗長符号化を行う。そして、FEC部114(1)は、冗長符号化されたデータをRTP部116(1)に出力する。
【0026】
RTP部116(1)は、冗長符号化データを含んだデータに対して、
IETF RFC 3550に準拠したRTPパケット化処理を行い、冗長符号化データを含んだRTPストリームを生成する。そして、RTP部116(1)は、生成したRTPストリームを平滑部118(1)に出力する。
【0027】
平滑化部118(1)は、RTPストリームに対して、伝送速度の平滑化処理を施す。そして、平滑化部118(1)は、平滑化処理されたRTPストリームを無線伝送部130(1)に出力する。
【0028】
RTCP部120(1)は、受信装置150(1)〜150(N)のRTCP部172との間で、例えば
IETF RFC 3550記載のRTCP(RTP Control Protocol)に準拠し、RTCP SR(Sender Report)、RR(Receiver Report)パケットを送受信する。
【0029】
(無線伝送部130の構成例)
無線伝送部130(1)〜130(M)は、対応するストリーム生成部110(1)〜110(M)が生成したストリームデータを、所定の伝送レートでマルチキャスト伝送する。例えば、無線伝送部130(1)は、ストリーム生成部110(1)が生成したストリームデータを伝送し、無線伝送部130(2)は、ストリーム生成部110(2)が生成したストリームデータを伝送する。
【0030】
そして、本実施形態では、無線伝送部130(1)〜130(M)は、対応するストリーム生成部110(1)〜110(M)が生成したストリームデータを、それぞれ圧縮後のデータレートに対応した物理層での伝送レート(いわゆるPHYレート)に設定して、マルチキャスト伝送する。
【0031】
無線伝送部130(1)〜130(M)は、同様な構成であるので、以下では、無線伝送部130(1)を例に挙げて、無線伝送部の構成例について説明する。無線伝送部130(1)は、
図1に示すように、無線伝送デバイス132(1)と、PHYレート設定部134(1)とを有する。
【0032】
無線伝送デバイス132(1)は、ストリーム生成部110(1)が生成したRTPストリームデータを、無線伝送網190を介して受信装置150(1)〜150(N)にマルチキャスト伝送する。すなわち、無線伝送デバイス132(1)は、複数の受信装置150(1)〜150(N)にRTPストリームデータを送信する。無線伝送デバイス132(1)は、例えば無線LANデバイスである。
【0033】
PHYレート設定部134(1)は、ストリーム生成部110(1)で圧縮された圧縮後のデータレートに対応した物理層における伝送レート(PHYレート)を設定する。無線伝送デバイス132(1)は、PHYレート設定部134(1)により設定された伝送レートで、RTPストリームデータを送信する。
【0034】
ここで、ストリーム生成部110(j)(なお、1≦j≦M、jは整数)により生成された圧縮後のデータレートRd_j(bps)と、無線伝送部130(j)のPHYレート設定部134(j)により設定されるPHYレートRp_j(bps)は、下記の式(1)〜式(3)の関係を満たす。
Rd_j≧Rd_k (j<k) ・・・(式1)
Rp_j≧Rp_k (j<k) ・・・(式2)
Rp_j≧Rd_j (1≦j≦M、jは整数) ・・・(式3)
【0035】
ところで、本実施形態に係る送信装置100は、IETF RFC 3550記載のRTP(Real−time Transport Protocol)に従い、圧縮データをRTPパケット化し伝送する。かかる場合に、Rd_j(bps)は、RTPパケットしたRTPストリームの後の圧縮後データのデータレートを示す。そして、圧縮後データレートの高いデータの方が、コンテンツ品質は高く、式(1)よりj<kを満たす場合、ストリーム生成部110(j)が生成するストリームデータのコンテンツ品質が、ストリーム生成部110(k)の生成するストリームデータのコンテンツ品質より高い。
【0036】
一方、PHYレートRp_j(bps)は、例えば無線伝送デバイス132(1)としてIEEE 802.11規格に従った無線LANデバイスを用いる場合、無線LANデバイスにおける物理層での伝送レートを示す。RTPストリームのデータレートRd_jを伝送するためには、PHYレートRp_j(bps)は、Ethernet Frame Header等のオーバーヘッドを見込み、大きく設定する必要がある。
【0037】
そして、IEEE 802.11無線LANデバイスを用いた通信の場合、PHYレートを大きく設定するほど、一定の実効スループットを実現するために必要とされる、受信装置における受信信号の強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、SN比、フレーム損失率等のネットワーク環境が良好である必要がある。これらのネットワーク環境条件は、送信装置と受信装置の距離が離れるほど悪化し、他の無線装置による電波干渉、遮蔽物の存在等にも影響される。
【0038】
一般には、PHYレートの低い無線伝送部ほど送受信装置間で安定したデータ通信の可能な範囲、いわゆる、伝送可能範囲は、広くなる。従って、上記の式(1)、(2)の関係を維持している場合、一般的には、j<kを満たす場合、無線伝送部130(j)の伝送可能範囲は、無線伝送部130(k)の伝送可能範囲より狭くなる。
【0039】
(1−3.受信装置の構成例)
複数の受信装置150(1)〜150(N)は、送信装置100の無線伝送部130(1)〜130(M)からIPマルチキャスト伝送されたストリームデータを受信する。例えば、
図1に示すように、受信装置150(1)及び受信装置150(2)は、無線伝送部130(1)からマルチキャスト伝送されたストリームデータを受信する。同様に、他の無線伝送部130(2)〜130(M)からマルチキャスト伝送されたストリームデータは、他の受信装置において受信される。
【0040】
受信装置150(1)〜150(N)の構成は同様であるので、以下では、受信装置150(1)を例に挙げて、受信装置の構成例について説明する。
図1に示すように、受信装置150(1)は、受信部の一例である無線伝送デバイス162と、RTP部164と、ジッタ吸収バッファ166と、FEC部168と、CODEC170と、RTCP部172と、接続先選択部174とを有する。
【0041】
無線伝送デバイス162は、送信装置100から送信されたRTPストリームデータを、無線伝送網190を介して受信する。無線伝送デバイス162は、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)から、それぞれ物理層での異なる伝送レートでマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信する。無線伝送デバイス162は、受信したRTPストリームデータをRTP部164に出力する。
【0042】
RTP部164は、RTPストリームデータのRTPパケットの解析を行う。これにより、RTP部164は、パケット損失率、ネットワーク遅延、ネットワークジッタ情報等のRTPストリームにおけるネットワーク情報を収集する。RTP部164は、解析後のRTPストリームデータをジッタ吸収バッファ166に出力する。
【0043】
ジッタ吸収バッファ166は、RTP部164において解析されたRTPストリームデータに対して、ジッタ吸収処理を施す。ジッタ吸収処理では、例えば、RTP Packet Headerに付加されたRTP Timestamp情報を元に、ネットワーク上で発生したジッタが吸収される。そして、ジッタ吸収バッファ166は、RTP Timestamp値に応じた時刻に、データをFEC部168に出力する。
【0044】
FEC部168は、パケット損失があった場合、送信装置100により冗長符号化されたデータにより回復可能であれば、パケット損失回復を行う。そして、FEC部168は、パケット損失回復後のRTPストリームデータを、CODEC170に出力する。
【0045】
CODEC170は、RTPストリームデータに対して圧縮復号化処理を行う。そして、CODEC170は、復号化処理後の非圧縮データを、ビデオ信号出力IF経由で例えば表示装置等に出力する。
【0046】
RTCP部172は、送信装置100のRTCP部(例えば、RTCP部120(1))との間で、例えば
IETF RFC 3550記載のRTCP(RTP Control Protocol)に準拠し、RTCP SR(Sender Report)、RR(Receiver Report)パケットを送受信する。これにより、RTP部164により取得したRTPストリームにおけるネットワーク状況情報が、送信装置100と受信装置150の間でやり取りが行われる。
【0047】
この結果、送信装置100のFEC部114(1)は、ネットワーク状況に応じた冗長符号化処理を行うことができる。例えば、FEC部114(1)は、受信装置150のパケット損失率の高い場合には、高い冗長度で冗長符号化を行い、パケット損失率の低い場合には、低い冗長度で冗長符号化を行う。
【0048】
接続先選択部174は、送信装置100との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得し、取得した環境変化情報に基づいて、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)のうちの一の無線伝送部を無線伝送デバイス162の接続先として選択する。これにより、受信装置150は、ネットワーク環境の変化に応じて、最適な無線伝送デバイス162の接続先を切り替えることができる。
【0049】
接続先選択部174は、無線伝送部130(1)〜130(M)からの受信信号の強度を取得しうる。そして、接続先選択部174は、取得された受信信号の強度に基づいて、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)のうちの一の無線伝送部を無線伝送デバイス162の接続先として選択しうる。受信信号の強度を取得することによりネットワーク環境の変化を適切に検出できるので、ネットワーク環境の変化に応じた最適な接続先に切り替え易くなる。
【0050】
また、接続先選択部174は、TFRC(TCP Frienndy Control)レート制御方式によるTFRC伝送レートを取得しうる。そして、接続先選択部174は、取得したTFRC伝送レートに基づいて、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)のうちの一の無線伝送部を無線伝送デバイス162の接続先として選択しうる。TFRC伝送レートを取得することによりネットワーク環境の変化を適切に検出できるので、ネットワーク環境の変化に応じた最適な接続先に切り替え易くなる。
【0051】
また、接続先選択部174は、選択される一の無線伝送部として、接続中の無線伝送部の伝送レートの次に大きい伝送レートに対応する無線伝送部、又は接続中の無線伝送部の伝送レートの次に小さい伝送レートに対応する無線伝送部に接続先を切り替えうる。これにより、切替後の無線伝送部が伝送するコンテンツ品質が、切替前の無線伝送部が伝送したコンテンツ品質から大幅に乖離することを防止できる。
【0052】
(1−4.送信装置100と受信装置150の接続関係)
次に、
図2を参照しながら、複数の無線伝送部130を有する送信装置100と、複数の受信装置150の間の接続関係について説明する。
【0053】
図2は、複数の無線伝送部130を有する送信装置100と、複数の受信装置150(1)〜(4)の間の接続関係を説明するための模式図である。ここでは、送信装置100は、3つの無線伝送部130(1)、130(2)、130(3)を有し、4つの受信装置150(1)、150(2)、150(3)、150(4)にIPマルチキャストを用いてリアルタイムストリーミングを行うものとする。
【0054】
また、無線伝送部130(1)、130(2)、130(3)には、
図1に示すように、圧縮後のデータレートが各々異なるストリームを生成するストリーム生成部110(1)、110(2)、110(3)が接続されている。ストリーム生成部110(1)、110(2)、110(3)で生成されたストリームデータは、対応する無線伝送部130(1)、130(2)、130(3)を経由してIPマルチキャスト伝送される。
【0055】
また、
図2に示すように、3つの無線伝送部130(1)〜130(3)の伝送可能範囲は、それぞれ異なる。具体的には、3つの無線伝送部130(1)〜130(3)のうち無線伝送部130(1)の伝送可能範囲が最も狭く、無線伝送部130(3)の伝送可能範囲が最も広い。なお、無線伝送部130(1)〜130(3)の伝送可能範囲は、他の無線装置による電波干渉、遮蔽物の存在等にも影響される。一方で、送信装置100から伝送されるストリームデータの品質に関しては、3つの無線伝送部130(1)〜130(3)のうち無線伝送部130(1)から伝送されるストリームデータの品質が最も高く、無線伝送部130(3)から伝送されるストリームデータの品質が最も低い。
【0056】
図2では、3つの無線伝送部130(1)〜130(3)の伝送可能範囲が送信装置100を中心とした円で描かれている。なお、受信装置150(4)付近の無線伝送部130(3)の伝送可能範囲は、無線伝送部130(2)の伝送可能範囲にはみ出している。これは、他の無線装置による電波干渉、遮蔽物の存在等により無線伝送部130(2)の伝送可能範囲が非対称な範囲となってしまっているためである。また、伝送可能範囲は、他の無線装置による電波干渉に影響されて時間的に変化しうる。
【0057】
受信装置150(1)〜150(4)のうち、受信装置150(2)、150(3)、150(4)は配置位置が固定されているのに対して、受信装置150(1)は移動可能である。
図2に示すように受信装置150(1)が地点1に配置している場合には、3つの無線伝送部130(1)〜130(3)の伝送可能範囲内であるため、受信装置150(1)は、接続先選択部174により3つの無線伝送部130(1)〜130(3)のいずれとも接続可能である。例えば、最も品質の高いストリームデータを受信するように接続先を選択する場合には、接続先選択部174は無線伝送部130(1)と接続する。
【0058】
同様に、受信装置150(2)は、無線伝送部130(3)の伝送可能範囲内の場所に位置するため、無線伝送部130(3)と接続し、受信装置150(3)は、無線伝送部130(2)の伝送可能範囲内の場所に位置するため、無線伝送部130(2)と接続する。受信装置150(4)は、他の無線装置による電波干渉、遮蔽物の存在等により無線伝送部130(3)の伝送可能範囲となった場所に位置するため、無線伝送部130(3)と接続する。
【0059】
受信装置150(1)が地点1から地点2へ移動した場合、接続先選択部174は、送信装置100との間のネットワーク環境の変化を検知し、接続先を無線伝送部130(1)から無線伝送部130(2)へ変更する。仮に接続先を変更しなければ、受信装置150(1)が地点2へ移動することでストリームデータの受信が不可能となるのに対して、接続先を変更すれば受信できるストリームデータの品質は低下する恐れがあるが、ストリームデータの受信を継続することが可能となる。
【0060】
なお、受信装置150(1)が同一に位置したままでも、他の無線送信との干渉により、送信装置100との間のネットワーク環境が変化した場合には、接続先選択部174は、変化に追従して接続先を変更する。上記では、受信装置150(1)を例に挙げて説明したが、他の受信装置150(2)〜150(4)についても同様に接続先が変更される。
【0061】
以上説明したように、受信装置150(1)〜150(4)と送信装置100の間のネットワーク環境の変化に伴い動的に無線伝送部130(1)〜130(3)の接続先を変更することにより、IPマルチキャスト伝送においてネットワーク環境に応じたストリーミング受信が可能となる。
【0062】
(1−5.複数の送信装置の配置例)
第1の実施形態に係るマルチキャストシステム1は、
図1に示すように、同一のストリームデータを伝送する複数の送信装置100を有する。そして、受信装置150が移動しても送信装置100からストリームデータを受信できるように、
図3に示すように複数の送信装置100の配置が工夫されている。
【0063】
図3は、複数の送信装置100の配置例を示す模式図である。ここでは、
図3に示すように平面空間上に複数の送信装置100が配置されるものとする。複数の送信装置100を格子状に配置することにより、受信装置150が、指定エリア内のどこに位置しても、又は指定エリア内を移動しても、いずれかの送信装置100からストリームデータを受信することができる。
【0064】
図3に各送信装置100は、それぞれ3つの無線伝送部130(1)〜130(3)を有する。3つの無線伝送部130(1)〜130(3)のPHYレートは、それぞれ異なる。上述した式(1)、式(2)の関係を満たしている場合には、一般には、PHYレートの低い無線伝送部ほど伝送可能範囲は広くなる。
図3では、無線伝送部130(3)の伝送可能範囲が最も広く、無線伝送部130(1)の伝送可能範囲が最も狭い。そして、
図3に示すように、各送信装置100の無線伝送部130(3)の伝送可能範囲の一部が重なるように、複数の送信装置100が格子状に配置している。
【0065】
具体的には、上述した受信装置150の指定エリアが無線伝送部130(3)の伝送可能範囲に含まれるように複数の送信装置100を配置させることで、受信装置150が指定エリア内を移動した場合でも、ストリームデータを受信することが可能となる。
【0066】
なお、
図3における無線伝送部130(1)〜130(3)の各々で使用する無線周波数帯は、隣接する他の送信装置100の無線伝送部や、同一の送信装置100内の他の無線伝送部で使用する無線周波数帯と異なるものが使用される。例えば、無線伝送部としてIEEE 802.11規格の無線LANデバイスを用いる場合、異なるChannelを用いる事となる。
【0067】
(1−6.ストリームデータの伝送処理)
図4を参照しながら、第1の実施形態に係るストリームデータの伝送処理例について説明する。
【0068】
図4は、ストリームデータの伝送処理例を示すフローチャートである。なお、
図4(a)は、送信装置100側の処理例を示すフローチャートであり、
図4(b)は、受信装置150側の処理例を示すフローチャートである。
【0069】
(1−6−1.送信装置100の処理例)
まず、
図4(a)に示す送信装置100側の処理例について説明する。
図4(a)の処理は、送信装置100の制御部のCPUが、ROMに格納されているプログラムを実行することにより、実現される。なお、実行されるプログラムは、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード等の記録媒体に記憶されても良く、インターネットを介してサーバ等からダウンロードされても良い。
【0070】
図4(a)は、
図1に示すカメラ50が撮像した非圧縮画像や音声データ等を含む非圧縮データが、ビデオ信号入力IFを経由して送信装置100に入力されたところから開始される。
【0071】
図4(a)において、送信装置100は、まず、ストリームデータの伝送処理を行う(ステップS102)。すなわち、送信装置100のストリーム生成部110(1)〜110(3)は、カメラ50から入力された非圧縮データに基づき圧縮ストリームデータを生成し、無線伝送部130(1)〜130(3)は、対応するストリーム生成部110(1)〜110(3)が生成したストリームデータを受信装置150にマルチキャスト伝送する。
【0072】
3つのストリーム生成部110(1)〜110(3)、及び3つの無線伝送部130(1)〜130(3)が行う処理は同様であるので、ここでは、ストリーム生成部110(1)と無線伝送部130(1)の処理について、具体的に説明する。
【0073】
ストリーム生成部110(1)のCODEC112(1)は、カメラ50から入力された非圧縮データを、所定のレートにて圧縮符号化を行う。また、CODEC112(1)は、
IETF RFC 3550に準拠したRTPパケット化処理を行い、RTPストリームデータを生成する。次に、FEC部114(1)は、RTPストリームデータの前方誤り訂正符号化(Forward Error Correction)処理を行う。FEC部114(1)は、前方誤り訂正符号として例えばReed−Solomnパケット消失訂正符号を用いて、パケット損失時の回復用に冗長符号化を行う。
【0074】
次に、RTP部116(1)は、冗長符号化データを含んだデータに対して、
IETF RFC 3550に準拠したRTPパケット化処理を行い、冗長符号化データを含んだRTPストリームを生成する。次に、平滑化部118(1)は、RTPストリームに対して、伝送速度の平滑化処理を施す。そして、平滑化部118(1)は、平滑化処理されたRTPストリームを無線伝送部130(1)に出力する。
【0075】
次に、無線伝送部130(1)の無線伝送デバイス132(1)は、ストリーム生成部110(1)が生成したRTPストリームデータを、PHYレート設定部134(1)により設定された物理層における伝送レートで、無線伝送網190を介して受信装置150にマルチキャスト伝送する。
【0076】
図4(a)に示すフローチャートに戻って説明を続ける。送信装置100は、カメラ50から順次入力されたデータについて上述した伝送処理を行い、全てのデータの伝送処理が完了した場合には(ステップS104:Yes)、送信装置100は、処理を完了する。
【0077】
(1−6−2.受信装置150の処理例)
次に、
図4(b)に示す受信装置150側の処理例について説明する。
図4(b)の処理は、受信装置150の制御部のCPUが、ROMに格納されているプログラムを実行することにより、実現される。
【0078】
図4(b)において、受信装置150は、まず、送信装置100の無線伝送部130(1)〜130(3)のうちの接続先を選択する接続先選択処理を行う(ステップS152)。ここで、接続先選択処理として、受信装置150は、受信強度に基づく接続選択処理、又はTFRCに基づく接続先選択処理を行う。
【0079】
(受信強度に基づく接続先選択処理)
ここで、
図5を参照しながら、受信強度に基づく接続先選択処理について説明する。
【0080】
図5は、受信強度に基づく接続先選択処理を示すフローチャートである。ここでは、受信装置150(1)を例に挙げて説明する。
図5のフローチャートは、受信装置150(1)が、送信装置100の無線伝送部130(j)、(1≦j≦M、jは整数)と接続している状態から開始される。
【0081】
まず、受信装置150(1)の接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)との通信の受信信号の強度RSSI値を、無線伝送デバイス162を介して定期的に取得する(ステップS202)。また、接続先選択部174は、取得した受信信号の強度RSSIに対して移動荷重平均処理等の統計処理を行い、平均値RSSI_Aを取得する。
【0082】
次に、接続先選択部174は、平均値RSSI_Aがレート増加閾値θ_up_jよりも大きいか否かを判定する(ステップS204)。そして、ステップS204で平均値RSSI_Aがレート増加閾値θ_up_jよりも小さい場合には(No)、接続先選択部174は、平均値RSSI_Aがレート減少閾値θ_down_jよりも小さいか否かを判定する(ステップS206)。
【0083】
そして、ステップS206で平均値RSSI_Aがレート減少閾値θ_down_jよりも大きい場合には(No)、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS208)。
【0084】
ステップS204で平均値RSSI_Aがレート増加閾値θ_up_jよりも大きい場合には(Yes)、接続先選択部174は、jが1より大きいか否かを判定する(ステップS210)。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)が無線伝送部130(1)であるか否かを判定する。
【0085】
そして、ステップS210でjが1よりも大きい場合には、接続先選択部174は、接続先を無線伝送部130(j−1)に変更する(ステップS212)。例えば、それまでの接続先が無線伝送部130(2)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(1)に接続先を変更する。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)よりも高いコンテンツ品質のストリームデータを伝送する無線伝送部(j−1)に接続先を切り替える。
【0086】
そして、受信装置150(1)は、変更後の無線伝送部130(j−1)からストリームデータを受信する(ステップS218)。
【0087】
一方で、ステップS210でjが1より大きく無い場合には、すなわち接続中の無線伝送部が無線伝送部130(1)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS208)。
【0088】
また、ステップS206で平均値RSSI_Aがレート減少閾値θ_down_jよりも小さい場合には(Yes)、接続先選択部174は、jがMよりも小さいか否かを判定する(ステップS214)。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)が無線伝送部130(3)であるか否かを判定する。
【0089】
そして、ステップS214でjがMよりも小さい場合には(Yes)、接続先選択部174は、接続先を無線伝送部130(j+1)に変更する(ステップS216)。例えば、それまでの接続先が無線伝送部130(2)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(3)に接続先を変更する。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)よりも低いコンテンツ品質のストリームデータを伝送する無線伝送部(j+1)に接続先を切り替える。なお、接続中の無線伝送部130(j)から伝送されるストリームデータの品質が十分に高いので、無線伝送部130(j+1)に切り替えても、受信するストリームデータの品質は高い。
【0090】
そして、受信装置150(1)は、変更後の無線伝送部130(j+1)からストリームデータを受信する(ステップS218)。
【0091】
一方で、ステップS214でjがMより小さく無い場合には(No)、すなわち接続中の無線伝送部が無線伝送部130(3)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS208)。これにより、受信強度に基づく接続先選択処理が終了し、
図4(b)のフローチャートに戻る。
【0092】
(TFRCに基づく接続先選択処理)
次に、
図6を参照しながら、TFRCに基づく接続先選択処理について説明する。
【0093】
図6は、TFRCに基づく接続先選択処理を示すフローチャートである。ここでも、受信装置150(1)を例に挙げて説明する。
図6のフローチャートは、受信装置150(1)が、送信装置100の無線伝送部130(j)と接続している状態から開始される。
【0094】
まず、受信装置150(1)の接続先選択部174は、IETF RFC3448記載のTFRC(TCP Frienndy Rate Control)等のレート制御方式に従い、RTP部、RTCP部によって、RTPストリームの往復伝送遅延(RTT:Round Trip Time)、パケット損失事象確率値を取得する(ステップS302)。
【0095】
次に、接続先選択部174は、ステップS302で取得した値に基づいて、ネットワーク状況に応じたTFRC計算伝送レートR_tfrc(bps)を計算する(ステップS304)。
【0096】
次に、接続先選択部174は、ステップS304で計算した伝送レートR_tfrcがTFRCレート増加閾値θ_tfrc_up_jよりも大きいか否かを判定する(ステップS306)。なお、TFRCレート増加閾値θ_tfrc_up_jは、下記の式(4)のように定義される。
θ_tfrc_up_j=Rd_(j−1) ・・・(式4)
(なお、j>1)
【0097】
ステップS306で伝送レートR_tfrcがTFRCレート増加閾値θ_tfrc_up_jよりも大きく無い場合には(No)、接続先選択部174は、伝送レートR_tfrcがTFRCレート減少閾値θ_tfrc_down_jよりも小さいか否かを判定する(ステップS308)。なお、TFRCレート減少閾値θ_tfrc_down_jは、下記の式(5)のように定義される。
θ_tfrc_down_j=Rd_(j+1) ・・・(式5)
(なお、j<M)
【0098】
ステップS308で伝送レートR_tfrcがTFRCレート減少閾値θ_tfrc_down_jよりも小さく無い場合には(No)、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS310)。
【0099】
ステップS306で伝送レートR_tfrcがTFRCレート増加閾値θ_tfrc_up_jよりも大きい場合には(Yes)、接続先選択部174は、jが1より大きいか否かを判定する(ステップS312)。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)が無線伝送部130(1)であるか否かを判定する。
【0100】
そして、ステップS312でjが1よりも大きい場合には、接続先選択部174は、接続先を無線伝送部130(j−1)に変更する(ステップS314)。例えば、それまでの接続先が無線伝送部130(2)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(1)に接続先を変更する。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)よりも高いコンテンツ品質のストリームデータを伝送する無線伝送部(j−1)に接続先を切り替える。
【0101】
そして、受信装置150(1)は、変更後の無線伝送部130(j−1)からストリームデータを受信する(ステップS320)。
【0102】
一方で、ステップS312でjが1より大きく無い場合には、すなわち接続中の無線伝送部が無線伝送部130(1)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS310)。
【0103】
また、ステップS308で伝送レートR_tfrcがTFRCレート減少閾値θ_tfrc_down_jよりも小さい場合には(Yes)、接続先選択部174は、jがMよりも小さいか否かを判定する(ステップS316)。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)が無線伝送部130(3)であるか否かを判定する。
【0104】
そして、ステップS316でjがMよりも小さい場合には(Yes)、接続先選択部174は、接続先を無線伝送部130(j+1)に変更する(ステップS318)。例えば、それまでの接続先が無線伝送部130(2)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(3)に接続先を変更する。すなわち、接続先選択部174は、接続中の無線伝送部130(j)よりも低いコンテンツ品質のストリームデータを伝送する無線伝送部(j+1)に接続先を切り替える。なお、接続中の無線伝送部130(j)から伝送されるストリームデータの品質が十分に高いので、無線伝送部130(j+1)に切り替えても、受信するストリームデータの品質は高い。
【0105】
そして、受信装置150(1)は、変更後の無線伝送部130(j+1)からストリームデータを受信する(ステップS320)。
【0106】
一方で、ステップS316でjがMより小さく無い場合には(No)、すなわち接続中の無線伝送部が無線伝送部130(3)である場合には、接続先選択部174は、無線伝送部130(j)との接続状態を維持する(ステップS310)。これにより、TFRCに基づく接続先選択処理が終了し、
図4(b)のフローチャートに戻る。
【0107】
図4(b)に示すフローチャートに戻って説明を続ける。受信装置150は、接続先選択処理後に、選択された無線伝送部130からのストリームデータの受信処理を行う(ステップS154)。
【0108】
具体的には、受信装置150の無線伝送デバイス162は、選択された無線伝送部130から送信されたRTPストリームデータを、無線伝送網190を介して受信する。次に、RTP部164は、RTPストリームデータのRTPパケットの解析を行う。これにより、RTP部164は、パケット損失率、ネットワーク遅延、ネットワークジッタ情報等のRTPストリームにおけるネットワーク情報を収集する。
【0109】
次に、ジッタ吸収バッファ166は、RTP部164において解析されたRTPストリームデータに対して、ジッタ吸収処理を施す。次に、FEC部168は、パケット損失があった場合、送信装置100により冗長符号化されたデータにより回復可能であれば、パケット損失回復を行う。次に、CODEC170は、RTPストリームデータに対して圧縮復号化処理を行い、ビデオ信号出力IF経由で例えば表示装置等に出力する。
【0110】
受信装置150は、送信装置100から順次伝送されたストリームデータについて、上述した受信処理を行い、全てのデータの受信処理が完了した場合には(ステップS156:Yes)、受信装置150は、処理を完了する。
【0111】
一方で、送信装置100から送信されたデータがある場合には(ステップS156:No)、受信装置150は、ステップS152、S154の処理を繰り返す。また、受信装置150が移動してネットワーク環境が変化した場合にも、ステップS152、S154の処理を繰り返す。すなわち、ネットワーク環境が変化した場合に、受信装置150は、接続先の無線伝送部を切り替えて、ストリームデータの受信を継続する。
【0112】
(1−7.接続方法)
送信装置100の無線伝送部130(1)〜130(M)と受信装置150の接続方法として、以下では、無線伝送部130(1)〜130(M)に共通のESSIDを設定する場合の接続方法と、無線伝送部130(1)〜130(M)に異なるESSIDを設定する場合の接続方法について説明する。
【0113】
(無線伝送部に共通のESSIDを設定する場合)
ここでは、無線伝送部130(1)〜130(M)の無線伝送デバイス132(1)〜132(M)に、IEEE802.11規格に記載された無線LANデバイスを利用し、無線伝送デバイスにおけるESSID(Extended Service Set Identifier)に共通のIDを設定するものとする。
【0114】
ところで、共通のESSIDが設定された無線伝送デバイスに対しては、IEEE802.11f、IEEE802.11rに規定されたローミング技術により、受信装置では、複数の送信装置からの(1)ビーコン信号受信の喪失、(2)通信レートの低下、(3)受信信号の強度の低下等をトリガとして、接続する送信装置へ切り替える事ができる。通常、IEEE802.11f、IEEE802.11rに規定されたローミング技術は、複数の送信装置の伝送可能範囲を受信装置が移動しながら受信する場合、受信装置の位置に対して最も通信状況の良い位置に配置された送信装置へ接続先を自動的に切り替えるために用いられる。
【0115】
これに対して、本実施形態においては、同一コンテンツを異なる圧縮後データレートに圧縮したストリームを、IPマルチキャスト伝送するPHYレートの異なる送信装置100の無線伝送部130(1)〜130(M)を、受信装置150とのネットワーク状況に応じて動的に選択・変更しながら接続する事に用いる。接続先選択部174は、選択された接続先の無線伝送デバイス132(1)〜132(M)を、共通のESSIDが設定された接続先から選択する。
【0116】
(無線伝送部に異なるESSIDを設定する場合)
ここでは、無線伝送部130(1)〜130(M)の無線伝送デバイス132(1)〜132(M)に、異なるESSIDを設定するものとする。かかる状況下で、接続先選択部174は、接続先を変更する場合には、それまで選択されていた無線伝送デバイスのESSIDとの接続を
切断し、新たな接続先の無線伝送デバイスのESSIDへ再度接続を行う。
【0117】
<2.第2の実施形態>
本開示の第2の実施形態に係るマルチキャストシステム1の概要について、
図7を参照しながら説明する。
【0118】
図7は、第2の実施形態に係るマルチキャストシステム1の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、第2の実施形態に係るマルチキャストシステム1も、複数の送信装置100(1)〜100(M)と、複数の受信装置150(1)〜150(N)とを有する。
【0119】
前述した第1の実施形態では、複数のストリーム生成部110(1)〜110(M)と、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)とが、一つの送信装置100に設けられている。これに対して、第2の実施形態では、ストリーム生成部110(1)〜110(M)、及び無線伝送部130(1)〜130(M)が、複数の送信装置100(1)〜100(M)に分離して設けられている。例えば、ストリーム生成部110(1)及び無線伝送部130(1)は、送信装置100(1)に設けられ、ストリーム生成部110(2)及び無線伝送部130(2)は、送信装置100(2)に設けられている。
【0120】
上述した構成によれば、圧縮後データのデータレート、無線伝送デバイスのPHYレート毎に送信装置を独立に配置する事ができる。
【0121】
ストリーム生成部110(1)〜110(M)で生成されたストリームデータは、複数の受信装置150に伝送されても良い。例えば、
図7では、送信装置
100(1)のストリーム生成部110(1)で生成されたストリームデータは、受信装置150(1)及び受信装置150(2)に伝送される。
【0122】
前述したように、第1の実施形態においては送信装置100を格子状に複数配列(
図3参照)していたが、第2の実施形態でも、送信装置100(1)〜100(M)を格子状に複数配列しても良い。以下では、M=2であるものとして、送信装置100(1)、100(2)の配列について説明する。
【0123】
図8は、第2の実施形態に係る送信装置100(1)、100(2)の配置例を示す模式図である。第2の実施形態では、
図8(a)に示すように送信装置100(1)を格子状に複数配列すると共に、
図8(b)に示すように送信装置100(2)を格子状に複数配列する。このように、送信装置100(1)、100(2)を格子状に配置することにより、受信装置150が、指定エリア内のどこに位置しても、又は指定エリア内を移動しても、いずれかの送信装置100からストリームデータを受信することができる。
【0124】
特に、第2の実施形態の場合には、受信装置150の指定エリアが、送信装置100(1)の無線伝送部130(1)の伝送可能範囲に含まれると共に、送信装置100(2)の無線伝送部130(2)の伝送可能範囲に含まれるようにすることで、指定エリアのほぼ全ての場所で、受信装置150は高品質のストリームデータを受信することが可能となる。
【0125】
なお、無線伝送部130(1)〜130(M)で使用する無線周波数帯は、伝送可能範囲が重なる他の送信装置100の無線伝送部で使用する無線周波数帯と異なるものが使用される。例えば、無線伝送部としてIEEE 802.11規格の無線LANデバイスを用いる場合、異なるChannelを用いる事となる。
【0126】
<3.第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態に係るマルチキャストシステム1の概要について、
図9を参照しながら説明する。
【0127】
図9は、第3の実施形態に係るマルチキャストシステム1の構成例を示すブロック図である。
図9に示すように、第3の実施形態に係るマルチキャストシステム1は、送信装置100と、複数の受信装置150(1)〜150(N)と、無線中継装置200とを有する。
【0128】
無線中継装置200は、送信装置100から受信装置150(1)〜150(N)にストリームデータを伝送する中継装置の機能を有する。無線中継装置200としては、例えば、いわゆるIEEE 802.11規格に準拠した無線LAN接続用のAP(Access Point)を利用することができる。
【0129】
第1の実施形態では、複数のストリーム生成部110(1)〜110(M)、及び複数の無線伝送部130(1)〜130(M)が、一つの送信装置100に設けられている。これに対して、第3の実施形態では、
図9に示すように、複数のストリーム生成部110(1)〜110(M)が、送信装置100に、複数の無線伝送部230(1)〜230(M)が、無線中継装置200に分離して設けられている。
【0130】
また、第3の実施形態では、送信装置100がIP伝送部140を有し、無線中継装置200がIP伝送部210を有しており、送信装置100と無線中継装置200は、IP伝送網192によって接続されている。なお、
図9では、IP伝送網における接続方式が無線である場合が示されているが、これに限定されず、有線で接続されても良い。
【0131】
第3の実施形態においては、送信装置100のストリーム生成部110(1)〜110(M)は、IP伝送部140に生成したストリームを出力する。そして、IP伝送部140は、IP伝送網192を経由して無線中継装置200のIP伝送部210に、ストリームを伝送する。無線中継装置200のIP伝送部210は、受信したストリームを、ストリーム生成部110(1)〜110(M)の各々が対応する無線伝送部230(1)〜230(M)に出力する。例えば、IP伝送部210は、ストリーム生成部110(1)が生成したストリームデータを、無線伝送部230(1)に出力し、ストリーム生成部110(2)が生成したストリームデータを、無線伝送部230(2)に出力する。
【0132】
無線伝送部230(1)〜230(M)の構成は、第1の実施形態の無線伝送部130(1)〜130(M)と同様である。無線伝送部230(1)〜230(M)の無線伝送デバイス232(1)〜232(M)は、PHYレート設定部234(1)〜234(M)により設定された伝送レートで、無線伝送網190を介してRTPストリームデータを受信装置150に送信する。
【0133】
前述したように、第1の実施形態においては送信装置100を格子状に複数配列(
図3参照)していたが、第3の実施形態においては、送信装置100の代わりに無線中継装置200を格子状に複数配置しても良い。これにより、受信装置150は、送信装置100が少数(例えば、
図9に示すように一つ)であっても複数の無線中継装置200を経由してストリームデータを広範囲で受信できる。また、受信装置150が移動する際に、ストリームデータを受信できる。
【0134】
<4.第4の実施形態>
本開示の第4の実施形態に係るマルチキャストシステム1の概要について、
図10を参照しながら説明する。
【0135】
図10は、第4の実施形態に係るマルチキャストシステム1の構成例を示すブロック図である。
図10に示すように、第4の実施形態に係るマルチキャストシステム1は、送信装置100と、複数の受信装置150(1)〜150(N)と、複数の無線中継装置200(1)〜200(M)とを有する。
【0136】
第4の実施形態は、複数の無線伝送部230(1)〜230(M)を複数の無線中継装置200(1)〜200(M)に分離した点が、
図9に示す第3の実施形態と異なる。例えば、無線伝送部230(1)は無線中継装置200(1)に設けられ、無線伝送部230(2)は無線中継装置200(2)に設けられている。なお、
図10では、複数の無線中継装置200(1)〜200(M)に無線伝送部が一つずつ設けられているが、これに限定されず、各無線中継装置200(1)〜200(M)に設けられる無線伝送部の数が異なることとしても良い。
【0137】
送信装置100の一のストリーム生成部から生成されたストリームデータは、複数の無線中継装置200に伝送されても良い。例えば、
図10では、ストリーム生成部110(2)から生成されたストリームデータは、無線中継装置200(2)及び無線中継装置200(3)に伝送されている。
【0138】
第4の実施形態でも、第3の実施形態と同様に、複数の無線中継装置200(1)〜200(M)を格子状に配置しても良い。これにより、受信装置150は、送信装置100が少数(例えば、
図10に示すように一つ)であっても複数の無線中継装置200(1)〜200(M)を経由してストリームデータを広範囲で受信できる。また、受信装置150が移動する際に、ストリームデータを受信できる。
【0139】
<5.第5の実施形態>
本開示の第5の実施形態に係るマルチキャストシステム1の概要について、
図11を参照しながら説明する。
【0140】
図11は、第5の実施形態に係るマルチキャストシステム1の構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、第5の実施形態に係るマルチキャストシステム1は、複数の送信装置100(1)〜100(M)と、複数の受信装置150(1)〜150(N)と、複数の無線中継装置200(1)〜200(M)とを有する。
【0141】
第5の実施形態は、複数のストリーム生成部110(1)〜110(M)を複数の送信装置100(1)〜100(M)に分離した点が、
図10に示す第4の実施形態と異なる。例えば、ストリーム生成部110(1)は送信装置100(1)に設けられ、ストリーム生成部110(2)は送信装置100(2)に設けられている。なお、
図11では、複数の送信装置100(1)〜100(M)にストリーム生成部が一つずつ設けられているが、これに限定されず、各送信装置100(1)〜100(M)に設けられるストリーム生成部の数が異なることとしても良い。
【0142】
<6.まとめ>
上述したように、本開示のマルチキャストシステム1の受信装置150は、送信装置100との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得し、取得された環境変化情報に基づいて、複数の無線伝送部130(1)〜130(M)のうちの一の無線伝送部を接続先として選択する。
【0143】
すなわち、無線マルチキャスト伝送でもユニキャスト伝送と同様に、動的に受信する無線伝送部を切り替えながら受信する事により、擬似的に送信装置100と受信装置150の間でレート制御を行いながら受信する事と同様の効果が得られる。
【0144】
これにより、ネットワーク環境の時間的に動的な変化に対応しながら常にその環境において最高品質のコンテンツ伝送を受信する事ができる。また、受信装置が移動した場合でも、位置に応じたネットワーク環境での最高品質のコンテンツを無線伝送部から受信する事ができる。
【0145】
また、上述したマルチキャストシステム1によれば、送信装置100からの無線マルチキャスト伝送において、複数の受信装置150にコンテンツを伝送する際、受信装置150毎のネットワーク環境に応じた伝送レート、コンテンツの品質での伝送が可能となる。
【0146】
また、通常の無線マルチキャスト伝送においては、複数の受信装置にコンテンツを伝送するためには、ネットワーク環境の最も悪い受信装置とのネットワーク環境に合わせ、コンテンツ品質の低いコンテンツを伝送する事しかできなかったが、本実施形態によれば、受信装置毎のネットワーク環境に応じたコンテンツ品質での伝送が可能となる。
【0147】
また、通常の無線マルチキャスト伝送においては、コンテンツ品質を優先させ、伝送した場合には、無線伝送に置ける物理層の伝送レートを高く設定する必要があり、ネットワーク環境の悪い受信装置では受信する事が出来なかったが、本実施形態によれば、受信装置毎のネットワーク環境に応じたコンテンツ品質での伝送が可能となる。
【0148】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0149】
上記の実施形態では、カメラより入力された非圧縮データをコンテンツとした例を説明したが、コンテンツが送信装置内にファイルとして予め保存されている場合、コンテンツファイルが圧縮データであっても良い。
【0150】
上記の実施形態では、無線伝送デバイスとして無線LANデバイスを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、無線伝送デバイスとして第三世代携帯電話(3G)、第4世代携帯電話(4G:LTE−Advanced等)、IEEE802.16e(WiMAX)、LTE(Long Term Evolution)に準拠したデバイスを使用しても良い。かかる場合には、例えば、MBMS(multimedia broadcast/multicast service)方式を用いてマルチキャスト伝送が行われる。
【0151】
また、上記の実施形態のフローチャートに示されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【0152】
本明細書において説明した情報処理装置による処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0153】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
複数の伝送装置から、それぞれ物理層での異なる伝送レートでマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信する受信部と、
前記伝送装置との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得する取得部と、
取得された前記環境変化情報に基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を前記受信部の接続先として選択する接続先選択部と、
を備える、受信装置。
(2)
前記取得部は、前記伝送装置からの受信信号の強度を取得し、
前記接続先選択部は、取得された前記受信信号の強度に基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を前記受信部の接続先として選択する、
前記(1)に記載の受信装置。
(3)
前記取得部は、TFRC(TCP Frienndy Control)レート制御方式によるTFRC伝送レートを取得し、
前記接続先選択部は、取得した前記TFRC伝送レートに基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を前記受信部の接続先として選択する、
前記(1)に記載の受信装置。
(4)
前記接続先選択部は、前記一の伝送装置として、接続中の伝送装置の伝送レートの次に大きい伝送レートに対応する伝送装置、又は接続中の伝送装置の伝送レートの次に小さい伝送レートに対応する伝送装置に接続先を切り替える、
前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の受信装置。
(5)
前記複数の伝送装置は、前記異なる伝送レートのストリームデータを生成して送信する送信装置と、前記受信装置との間を接続する中継装置に設けられている、
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の受信装置。
(6)
前記複数の伝送装置は、前記異なる伝送レートのストリームデータを生成して送信する送信装置に設けられている、
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の受信装置。
(7)
前記複数の伝送装置は、それぞれ伝送可能範囲が異なる、
前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の受信装置。
(8)
それぞれ物理層での異なる伝送レートでストリームデータをマルチキャスト伝送する複数の伝送装置と、
前記伝送装置からマルチキャスト伝送される前記ストリームデータを受信する1又は複数の受信装置と、
を備え、
前記受信装置は、
前記複数の伝送部から、それぞれ物理層での異なる伝送レートでマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信する受信部と、
前記伝送装置との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得する取得部と、
取得された前記環境変化情報に基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を前記受信部の接続先として選択する接続先選択部と、
を有する、送受信システム。
(9)
複数の伝送装置から、それぞれ物理層での異なる伝送レートでマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信することと、
前記伝送装置との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得することと、
取得された前記環境変化情報に基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を受信部の接続先として選択することと、
を含む、受信方法。
(10)
コンピュータに、
複数の伝送装置から、それぞれ物理層での異なる伝送レートでマルチキャスト伝送されるストリームデータを受信することと、
前記伝送装置との間のネットワーク環境の変化に関する環境変化情報を取得することと、
取得された前記環境変化情報に基づいて、前記複数の伝送装置のうちの一の伝送装置を受信部の接続先として選択することと、
を実行させる、プログラム。