(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図9を参照しつつ、本発明に係る運針機構の実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における時計100の平面図である。
この図に示すように、本実施形態の時計100は、文字板1と複数の指針2とを備えており、円形の文字板1上で複数の指針2を運針させて時刻等の表示を行うアナログ式の時計である。
複数の指針2は、文字板1のほぼ中央部回りに回転して時刻を表示する秒針21、分針22及び時針23と、文字板1上の個別の小領域で回動して種々の情報を表示する2つの小針24,25とから構成されている。
2つの小針24,25のうちの小針24は、秒針21,分針22及び時針23と同様に1方向に回転して例えばクロノグラフ機能などに用いられるものである。一方、小針25は、所定角度の扇形の範囲内を往復回転して所定の情報(本実施形態では曜日)を表示するレトログラード針である。
【0011】
時計100は、文字板1の裏面側にモジュール3を備えている。
図2は、モジュール3の内部構成を示す平面図である。
この図に示すように、モジュール3は、文字板1に対応した平面視略円形状に形成されており、その内部に、時計100の電源部である電池36や、制御回路が実装された回路基板37(
図3参照)のほか、複数の指針2を運針させる複数の運針機構4等を収容している。
【0012】
複数の運針機構4は、複数の指針2に対応しており、当該対応する指針2を個別に運針させる。
これら複数の運針機構4のうち、秒針21、分針22及び時針23に対応する運針機構41〜43は、文字板1の中央部回りに回転する秒針21、分針22及び時針23を運針させることから、モジュール3内の中央部寄りに配置されている。但し、時針23に対応する運針機構43は、本実施形態では、モジュール3内のレイアウトスペースの都合上、やや中央部から離れた位置に配置されている。
一方、2つの小針24,25に対応する運針機構44,45は、運針機構41〜43等を避けて、モジュール3内のうちの湾曲した周縁部の近傍に配置されている。
【0013】
具体的に、複数の運針機構4は、輪列機構5とステッピングモータ6とからそれぞれ構成されている。
輪列機構5は、複数の歯車が噛合されて構成されており、そのうち一端の歯車がステッピングモータ6の回転軸に連結され、他端の歯車が指針2に連結されている。
【0014】
ステッピングモータ6は、輪列機構5を介して指針2を回転させるためのものである。
複数の運針機構4におけるステッピングモータ6のうち、秒針21、分針22、時針23及び小針24に対応する運針機構41〜44のステッピングモータ61〜64は、いずれも1つのコイルコアのみを有するものである。このステッピングモータ61〜64は一般的な構造のものであるため、その詳細な説明は省略する。
一方、小針25に対応するステッピングモータ65は、後述する2つのコイルコア86a,86bを有するデュアルコアモータであり、その回転軸(後述するロータ7)を正逆両方向に回転可能となっている。なお、当該ステッピングモータ65、輪列機構55及び小針25は、レトログラード針である小針25を所定の回転角度範囲内で往復運針させるレトログラード機構を構成している。
【0015】
図3は、ステッピングモータ65の平面図である。
この図に示すように、ステッピングモータ65は、回転軸であるロータ7と、ロータ7を回転させるステータ8とを備えている。
【0016】
ロータ7は、径方向に2極着磁された磁石が図示しない回転支軸に取り付けられたものである。本実施形態では、磁石は円盤状に形成されており、回転支軸は磁石の円中心に取り付けられている。
ロータ7を構成する磁石としては、例えば希土類磁石等(例えば、サマリウムコバルト磁石等)の永久磁石が好適に用いられるが、ロータ7を構成する磁石の種類はこれに限定されない。
ロータ7は、後述するステータ本体80のロータ受容部84に受容され、回転支軸を回転中心として回転可能に配置されている。
ロータ7には輪列機構55の所定の歯車が連結されており(
図2参照)、ロータ7が回転することにより、この歯車を回転させるようになっている。
【0017】
ステータ8は、ステータ本体80と、コイル支持部85とにより構成されている。
図4(a)は、ステータ本体80の平面図であり、
図4(b)は、コイル支持部85の平面図である。
図4(a)に示すように、ステータ本体80は、例えばパーマロイ等の高透磁率材料によって形成されており、第1ヨーク81、第2ヨーク82、第3ヨーク83を備えている。また、これら第1ヨーク81、第2ヨーク82、第3ヨーク83の交点には、ほぼ円形の孔部であるロータ受容部84が形成されている。ロータ受容部84には、ロータ7が回転可能に配置されている。
また、第2ヨーク82と第3ヨーク83とは、第1ヨーク81がある側とは反対側で互いになす角度が180°未満となるように、ロータ受容部84を中心に互いにやや屈曲している。
【0018】
ロータ受容部84の内周面には、3つの凹部84aが設けられている。これら3つの凹部84aは、ロータ7の静止状態を維持させるステータ側静止部であり、ステッピングモータ65の非通電状態においてロータ7を所定の位置で磁気的に安定させて停止させるためのものである。
【0019】
第1ヨーク81、第2ヨーク82、第3ヨーク83の自由端側には、ステータ本体80をコイル支持部85と連結するための連結孔81a,82a,83aがそれぞれ設けられている。
【0020】
図4(b)に示すように、コイル支持部85は、例えばパーマロイ等の高透磁率材料によって形成され、2つのコイルコア86a,86bが中央の連結部87で連結された形状に形成されている。
2つのコイルコア86a,86bは、当該コイルコア86a,86bに巻回されたコイル88(第1コイル88a、第2コイル88b)を担持している。こうして2つのコイルコア86a,86bにそれぞれコイル88が担持されることで、2つのコイルブロック89(第1コイルブロック89a、第2コイルブロック89b)が構成されている。なお、2つのコイルコア86a,86bは、本実施形態では、ほぼ同程度の長さとなっており、巻回されるコイル88の量(巻線数)も同程度となっている。
また、2つのコイルコア86a,86bは、それぞれは直線状に形成されているものの、モジュール3の周縁部の湾曲形状に倣うようにして、連結部87を中心に所定の角度で互いに屈曲している(
図3参照)。
【0021】
コイル支持部85の連結部87及び両端には、当該コイル支持部85をステータ本体80と連結するための3つの連結孔85a〜85cが設けられている。そして、これら3つの連結孔85a〜85cがステータ本体80の連結孔81a,82a,83aとそれぞれビス留め固定されることで、ステータ本体80とコイル支持部85とが磁気的に連結されるようになっている。
【0022】
図3に示すように、コイル支持部85の2つのコイルブロック89は、ステータ本体80とコイル支持部85とが固定された状態において、ステータ本体80の第1ヨーク81、第2ヨーク82、第3ヨーク83を磁気的に接続するように配置されている。
具体的には、第1コイルブロック89aは、第1ヨーク81と第2ヨーク82とを磁気的に接続するように配置され、第2コイルブロック89bは、第1ヨーク81と第3ヨーク83とを磁気的に接続するように配置されている。
【0023】
コイル支持部85の両端には、2つのコイル基板91が設けられている。各コイル基板91には2つのコイル端子92が実装されており、当該2つのコイル端子92には、当該コイル基板91に近い側のコイル88の両端が接続されている。
各コイル基板91のうち、2つのコイル端子92周辺は、接続されたコイル88の端部とともに、コイルの断線を防止するための保護樹脂93が被覆されている。そのため、この保護樹脂93の被覆部分は、コイル基板91の表面よりも高く盛り上がっている。
【0024】
また、2つのコイル基板91は、その上方に配置される回路基板37と電気的に接続されている。
回路基板37には、コイル基板91の表面よりも盛り上がった2箇所の保護樹脂93を避けるための2つの切欠き37aが、モジュール3の外周側に向けて開口するように形成されている。そのため、回路基板37は、この2箇所の保護樹脂93を避けて、2つのコイル基板91と確実に面接触するようになっている。
【0025】
図5は、時計100の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、時計100は、制御部38を備えている。制御部38は、回路基板37に実装されたCPU(Central Processing Unit)等から構成され、時計100の各部を統合制御する。
具体的に、制御部38は、電池36を電源部として、複数の運針機構4におけるステッピングモータ6に駆動パルスを印加することで、当該ステッピングモータ6の駆動,ひいては指針2の回転動作を制御する。
特に、制御部38は、デュアルコアモータであるステッピングモータ65に対しては、2つのコイル88への通電(駆動パルスの印加)を個別に制御することで、当該ステッピングモータ65のロータ7を、ひいてはレトログラード針である小針25を、正転方向(時計回り)及び逆転方向(反時計回り)のいずれの方向にも所定のステップ角で回転制御可能となっている。
【0026】
続いて、時計100におけるレトログラード機構の動作態様について説明する。
まず、レトログラード針である小針25を正転方向(時計回り)に回転させて、当該小針25に所定の情報(本実施形態では曜日)を表示させる表示運針時について、
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
図6及び
図7は、同時に通電させるコイル数を1つとした場合におけるステッピングモータ65のロータ7を正転させるときの磁束の流れを説明するための図である。
【0027】
本実施形態においては、いずれのコイル88にも通電されていない非通電状態では、例えば、ロータ7のS極と対峙する第1ヨーク81の磁極がN極となり、第2ヨーク82側と第3ヨーク83側の2つの凹部84aとロータ7の磁石の分極位置とが対向した状態でロータ7が静止している。
この状態からロータ7を正転させる場合には、まず制御部38は、第2コイル88bのみにプラス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図6(a)に示すように、第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がN極となり、第3ヨーク83の磁極がS極となる。さらに、第1ヨーク81及び第1コイル88aのコイルコア86aを介して第2ヨーク82に磁束が流れて、第2ヨーク82の磁極がN極となる。この結果、ロータ7は、S極となった第3ヨーク83にN極側が引きつけられるようにして、正転方向に回転を開始する。
【0028】
次に、制御部38は、第1コイル88aのみにプラス方向の駆動パルスを印加する。このとき、制御部38は、ロータ7を大きく回転させるために、駆動パルスの印加時間を長め(例えば、ロータを180°回転させるときの全体の印加時間のうちの50%以上100%未満)にする。これにより、
図6(b)に示すように、第1コイル88aに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がS極となり、第2ヨーク82の磁極がN極となる。さらに、第1ヨーク81及び第2コイル88bのコイルコア86bを介して第3ヨーク83に磁束が流れて、第3ヨーク83の磁極がS極となる。この結果、ロータ7は、N極となった第2ヨーク82にS極側が引きつけられるようにして、さらに正転方向に大きく回転する。
【0029】
次に、制御部38は、第2コイル88bのみにマイナス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図6(c)に示すように、第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がS極となり、第3ヨーク83の磁極がN極となる。さらに、第1ヨーク81及び第1コイル88aのコイルコア86aを介して第2ヨーク82に磁束が流れて、第2ヨーク82の磁極がS極となる。この結果、ロータ7は、N極となった第3ヨーク83にN極側が反発するようにして正転方向に回転し、第2ヨーク82側及び第3ヨーク83側の2つの凹部84aとロータ7の磁石の分極位置とが対向した磁気的安定位置、すなわち回転開始位置から180°回転した位置(以下、「半回転位置」という。)で静止する。
【0030】
すると、ステッピングモータ65のロータ7が回転開始位置から180°回転したことに伴って、このロータ7と小針25とを所定のギヤ比で連結する輪列機構55によって、小針25が所定のステップ角だけ正転する。これにより、本実施形態では、小針25が指し示す曜日が次の日のものに変化する(
図1参照)。
【0031】
この半回転位置からロータ7をさらに180°正転させて回転開始位置に戻す場合には、制御部38は、第2コイル88bのみにマイナス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図7(a)に示すように、第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がS極となり、第3ヨーク83の磁極がN極となる。さらに、第1ヨーク81及び第1コイル88aのコイルコア86aを介して第2ヨーク82に磁束が流れて、第2ヨーク82の磁極がS極となる。この結果、ロータ7は、N極となった第3ヨーク83の磁極にS極側が引きつけられるようにして、正転方向に回転する。
【0032】
次に、制御部38は、第1コイル88aのみにマイナス方向の駆動パルスを印加する。このとき、制御部38は、ロータ7を大きく回転させるために、駆動パルスの印加時間を長め(例えば、ロータを180°回転させるときの全体の印加時間のうちの50%以上100%未満)にする。これにより、
図7(b)に示すように、第1コイル88aに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がN極となり、第2ヨーク82の磁極がS極となる。さらに、第1ヨーク81及び第2コイル88bのコイルコア86bを介して第3ヨーク83に磁束が流れて、第3ヨーク83の磁極がN極となる。この結果、ロータ7は、S極となった第2ヨーク82にN極側が引きつけられるようにして、さらに正転方向に大きく回転する。
【0033】
次に、制御部38は、第2コイル88bのみにプラス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図7(c)に示すように、第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がN極となり、第3ヨーク83の磁極がS極となる。さらに、第1ヨーク81及び第1コイル88aのコイルコア86aを介して第2ヨーク82に磁束が流れて、第2ヨーク82の磁極がN極となる。この結果、ロータ7は、S極となった第3ヨーク83にS極側が反発するようにして、第2ヨーク82側及び第3ヨーク83側の2つの凹部84aとロータ7の磁石の分極位置とが対向した磁気的安定位置、すなわち半回転位置からさらに180°回転した位置で静止する。
【0034】
すると、ステッピングモータ65のロータ7が半回転位置から180°回転したことに伴って、このロータ7と小針25とを所定のギヤ比で連結する輪列機構55によって、小針25が所定のステップ角だけ正転する。これにより、本実施形態では、小針25が指し示す曜日がさらに次の日のものに変化する(
図1参照)。
【0035】
このように、本実施形態においては、小針25の表示運針時には、2つのコイル88のうちいずれか一方のみに通電することで当該小針25(すなわちロータ7)を回転させる。
【0036】
続いて、2つのコイル88の両方に通電することで小針25を逆転方向(反時計回り)に急速に回転させて、情報の表示を伴わずに当該小針25を回転範囲の基点(左端)まで振り戻す非表示運針時について、
図8を参照しつつ説明する。
図8は、ステッピングモータ65のロータ7を逆転させるときの磁束の流れを説明するための図である。
【0037】
本実施形態においては、いずれのコイル88にも通電されていない非通電状態では、例えば、ロータ7のN極と対峙する第1ヨーク81の磁極がS極となり、第2ヨーク82側と第3ヨーク83側の2つの凹部84aとロータ7の磁石の分極位置とが対向した状態でロータ7が静止している。
この状態からロータ7を急速に逆転させる場合には、まず制御部38は、第1コイル88aにプラス方向の駆動パルスを印加すると同時に、第2コイル88bにプラス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図8(a)に示すように、第1コイル88a及び第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第2ヨーク82の磁極がN極となり、第3ヨーク83の磁極がS極となる。この結果、ロータ7は、N極となった第2ヨーク82にS極側が引きつけられるようにして、逆転方向に回転を開始する。
【0038】
次に、制御部38は、第1コイル88aにマイナス方向の駆動パルスを印加すると同時に、第2コイル88bにプラス方向の駆動パルスを印加する。これにより、
図8(b)に示すように、第1コイル88a及び第2コイル88bに実線で示す向きの磁束が生じ、第1ヨーク81の磁極がN極となり、第2ヨーク82及び第3ヨーク83の磁極がS極となる。この結果、ロータ7は、N極となった第1ヨーク81にS極側が引きつけられるようにして、さらに逆転方向に回転する。
【0039】
そして、
図8(c)に示すように、ロータ7は、第2ヨーク82側及び第3ヨーク83側の2つの凹部84aとロータ7の磁石の分極位置とが対向した磁気的安定位置、すなわち半回転位置からさらに180°回転した位置で静止する。
【0040】
その後、制御部38は、2つのコイル88に同時に通電しつつ、ロータ7の回転に伴って各ヨーク81〜83の磁極を順次変化させることで、当該ロータ7を連続的に逆転方向に回転させる。そして、制御部38は、小針25がその回転範囲の左端に至るまでロータ7を回転させた後に、当該ロータ7を静止させる。
【0041】
このように、本実施形態においては、小針25の非表示運針時には、当該小針25(すなわちロータ7)の回転を2つのコイル88に同時に通電することで当該小針25を回転させる。このため、表示運針時に比べて遥かに早い時間で小針25を振り戻すことができる。
なお、2つのコイル88に同時に通電される「非表示運針時」としては、小針25を振り戻すときだけに限定されず、例えば、外部からの衝撃などで小針25が拘束されてしまって当該拘束を解きたいときや、或いはバックラッシュ取り時など、小針25による情報の表示を伴わないときを広く含むものとする。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、小針25が所定の情報を表示する表示運針時と、小針25が情報の表示を伴わない非表示運針時とで、同時に通電させるステッピングモータ65のコイル88の数を異ならせている。
このため、視認者の目に触れないように速い速度で小針25を振り戻したり、小針25が拘束されたときに大きなトルクを掛けて当該拘束を解いたりなどして、好適に小針25を運針させることができる。
また、通電させるコイル88の数を増やすだけで、ロータ7を正逆いずれの方向にも大きなトルクで回転させることができる。
このため、複数のカムやばね等が組み合わされていた機械式のものに比べ、簡便な構造で、好適に小針25を運針させることができる。
【0043】
また、ステッピングモータ65は、モジュール3内の周縁部近傍に配置されており、中央の連結部87から延出する2つのコイルコア86a,86bが、モジュール3の周縁部の湾曲形状に倣った所定の角度で、中央の連結部87を中心に互いに屈曲している。
このため、2つのコイルコア86a,86b、ひいては2つのコイルブロック89をモジュール3の周縁部に沿わせて当該周縁部近傍に配置することができる。したがって、秒針21、分針22及び時針23に対応する運針機構41〜43をモジュール3内の中央部寄りに配置させるといった、モジュール3内の配置レイアウトを容易にすることができる。
このとき、2つのコイルコア86a,86bをモジュール3の周縁部に倣って湾曲させると、当該コイルコア86a,86bにコイル88が偏って巻かれ、結果として巻線数の減少を招来してしまうところ、本実施形態では、2つのコイルコア86a,86bをそれぞれ直線状に形成しつつ互いに屈曲させているので、このような巻線数の減少を招来することなく、2つのコイルブロック89をモジュール3内の周縁部近傍に配置することができる。
【0044】
また、ステッピングモータ65は、モジュール3内の周縁部近傍に配置されており、中央の連結部87から延出する2つのコイルコア86a,86bよりも各先端側に、各コイルコア86a,86bに巻回されたコイル88の両端が接続されたコイル基板91を有している。そして、当該ステッピングモータ65は、コイル基板91のうちコイル88の両端が接続された部分には保護樹脂93が被覆され、当該保護樹脂93を避けつつモジュール3の外周側に向けて開口する切欠き37aが形成された回路基板37とコイル基板91とが面接触している。
つまり、コイル基板91を2つのコイルコア86a,86bの両端側に設けることにより、モジュール3の外周側に開口する切欠き37aによって保護樹脂93を避けつつ、コイル基板91と回路基板37とを好適に面接触させることができる。
これに対し、仮に2つのコイルコア86a,86b間の連結部87にコイル基板91が設けられていた場合、まず連結部87上のコイル基板91に保護樹脂93が被覆される。そして、回路基板37のうちコイル基板91に接続される部分には配線パターンを通さなければならないことから、この場合には、保護樹脂93を避ける形状が外周側への切欠きではなく、その外周側に回路基板37の配線パターン部分が存在する孔部となってしまう。さらに、耐衝撃性などの点から、この孔部よりも外周側の回路基板37部分は一定程度以上の幅が必要となる。すなわち、この幅の分だけ回路基板37が外周側へ張り出すこととなるため、当該回路基板37とモジュール3との干渉を避けるには、ステッピングモータ65をモジュール3の内周側へ移動させなければならなくなる。
したがって、本実施形態では、コイル基板91を2つのコイルコア86a,86bの両端側に設けることにより、当該コイル基板91を2つのコイルコア86a,86bの間に設ける場合と異なり、ステッピングモータ65をモジュール3の周縁部近傍に配置することができ、ひいてはモジュール3内の配置レイアウトを容易にすることができる。
【0045】
上述した実施形態では、2つのコイル88の両方に通電することで小針25を逆転方向(反時計回り)に急速に回転させて、情報の表示を伴わずに当該小針25を回転範囲の基点(左端)まで振り戻す非表示運針時について説明したが、
図9(a)〜(c)に示すように、通電するコイル88の数を、2つと1つとを組み合わせるようにしてもよい。このようにした場合でも、同時に通電させるコイル数を1つとした表示運針時に比べて遥かに早い時間で小針25を振り戻すことができる。
【0046】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態では、小針25が表示運針時に正転方向に回転し、非表示運針時に逆転方向に回転することとしたが、小針25の回転方向と表示状態との関係は特に限定されず、小針25が表示する情報の種類等に応じたものとしてよい。したがって、例えば、小針25の正逆両方向の回転時とも、情報を表示する表示運針時であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ステッピングモータ65のロータ7が正転方向に回転するときに小針25も正転方向に回転することとしたが、ロータ7と小針25との回転方向の関係は、互いに対応さえしていれば特に限定されない。
【0049】
また、上記実施形態では、ステッピングモータ65が2つのコイル88を有することとしたが、当該コイル88は複数であれば特に限定されず、3つ以上であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、レトログラード針である小針25、輪列機構55及びステッピングモータ65からなるレトログラード機構が、アナログ式の時計100に設けられることとしたが、この時計はアナログ式のものに限定されない。
当該レトログラード機構は、例えば、時刻やカレンダ情報等の各種情報を文字等により表示させる文字板(例えば、液晶表示部等)を備えるデジタル式の時計に設けられることとしてもよいし、アナログ式とデジタル式の2つの表示部を備える時計に設けられることとしてもよい。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
指針を運針させる運針機構において、
複数のコイルを有し、回転軸を正逆両方向に回転可能なステッピングモータと、
前記ステッピングモータの前記回転軸に連結された一の歯車、及び、前記指針に連結された他の歯車を含む複数の歯車からなる輪列機構と、
前記複数のコイルへの通電を個別に制御して、前記ステッピングモータの駆動を制御するモータ駆動制御手段と、
を備え、
前記モータ駆動制御手段は、表示運針時と非表示運針時とで、同時に通電させるコイル数を異ならせることを特徴とする運針機構。
<請求項2>
前記ステッピングモータは、2つのコイルを有し、
前記モータ駆動制御手段は、前記表示運針時には1つのコイルのみに通電させつつ前記指針を一の方向に回転させ、前記非表示運針時には2つのコイルに通電させつつ前記指針を他の方向に回転させることを特徴とする請求項1に記載の運針機構。
<請求項3>
前記ステッピングモータは、
周縁部が湾曲したモジュール内の周縁部近傍に配置され、
それぞれ直線状に形成されるとともに中央の連結部から延出する2つのコイルコアを有し、
前記2つのコイルコアが、前記モジュールの周縁部の湾曲形状に倣った所定の角度で、中央の連結部を中心に互いに屈曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の運針機構。
<請求項4>
前記ステッピングモータは、
周縁部が湾曲したモジュール内の周縁部近傍に配置され、
中央の連結部から延出する2つのコイルコアを有し、
前記2つのコイルコアよりも各先端側に、各コイルコアに巻回されたコイルの両端が接続されたコイル基板を有し、
前記コイル基板のうち前記コイルの両端が接続された部分には、保護樹脂が被覆され、
前記保護樹脂を避けつつ前記モジュールの外周側に向けて開口する切欠きが形成された回路基板と前記コイル基板とが面接触していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の運針機構。
<請求項5>
請求項1〜4の何れか一項に記載の運針機構を備えることを特徴とする時計。