(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面(
図1〜
図9)を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
[実施形態1]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の構成を示す図である。インクジェット記録装置1は、装置筐体100、給紙部2、第1シート搬送部4、第2シート搬送部5、シート排出部6、及び、シート反転部7を備える。また、インクジェット記録装置1は、第1搬送ベルト32、第2搬送ベルト36、及び、4種類のラインヘッド34a、34b、34c、34dを更に備える。4種類のラインヘッド34a、34b、34c、及び、34dは、略同一の構成を有するため、ラインヘッド34と記載する場合がある。
【0012】
給紙部2は、給紙カセット21、及び、給紙ローラー22を備える。給紙カセット21は、装置筐体100に着脱自在に取り付けられる。給紙カセット21は、複数枚のシートSを収容する。給紙ローラー(ピックアップローラー)22は、給紙カセット21の一方側端(
図1では右側端)に対して配置される。給紙ローラー22は、給紙カセット21内に収容されたシートSを最上部から一枚ずつ取り出す。
【0013】
第1シート搬送部4は、給紙部2から第1搬送ベルト32まで延在して、給紙ローラー22によって取り出されたシートSを第1搬送ベルト32まで搬送する。第1シート搬送部4は、レジストローラー対44を備える。
【0014】
レジストローラー対44は、第1シート搬送部4によって搬送されるシートSの斜行補正を行う。このとき、シートSは、レジストローラー対44によって一時的に停止させられる。シートSが一時的に停止した後、レジストローラー対44は、シートSへの画像形成タイミングに合わせて、第1搬送ベルト32へシートSを送出する。
【0015】
第1搬送ベルト32は駆動されて、レジストローラー対44から送出されてきたシートSを所定方向に搬送する。
図1では、第1搬送ベルト32は反時計周りに駆動される。その結果、シートSは、
図1では左向きに搬送される。以下、第1搬送ベルト32によってシートSが搬送される方向を搬送方向Dと記載する。搬送方向Dは、第1方向の一例である。シートSは、第1搬送ベルト32によって搬送されて、ラインヘッド34に対向する位置を通過する。本実施形態において、第1搬送ベルト32は、無端ベルトである。
【0016】
ラインヘッド34は、第1搬送ベルト32の上方に配置される。ラインヘッド34は、ラインヘッド34に対向する位置を通過中のシートSにインクを吐出し、シートSに画像を形成する。なお、本実施形態では、インクとして水性インクが使用される。水性インクがシートSに吐出されると、インクに含まれる水に湿潤してシートSの片面(画像形成面)が伸長し、シートSの一部がカールする可能性がある。
【0017】
ラインヘッド34によって画像が形成されたシートSは、第1搬送ベルト32によって第2搬送ベルト36へ向けて搬送される。
【0018】
第2搬送ベルト36は駆動されて、第1搬送ベルト32から搬送されたシートSを第2シート搬送部5へ搬送する。
【0019】
第2シート搬送部5は、第2搬送ベルト36の一方端側(
図1では左側)からシート排出部6まで延在する。第2シート搬送部5は、搬送路の途中に分岐部材51を備える。分岐部材51は、回動可能に支持され、分岐部材51の回動によってシートSの搬送先がシート排出部6とシート反転部7との間で切り替えられる。シートSの両面に画像を形成する場合において、片面に画像が形成されたシートSは、シート反転部7へ導かれる。一方、シートSの両面に画像を形成する場合において、両面に画像が形成されたシートSはシート排出部6へ搬送される。また、シートSの片面にのみ画像を形成する場合において、片面に画像が形成されたシートSは、シート排出部6へ搬送される。
【0020】
シート排出部6は、排出ローラー対61、及び、排出トレイ62を備える。排出トレイ62は、装置筐体100に形成された排出口101から外部に突出するように装置筐体100に固定されている。
【0021】
排出ローラー対61は、第2シート搬送部5によって搬送されたシートSを、排出口101へ向けて送出する。排出ローラー対61によって送出されたシートSは、排出口101を介して、装置筐体100の外部に排出される。排出トレイ62には、排出口101から排出されたシートSが載置される。
【0022】
シート反転部7は、第2シート搬送部5から第1シート搬送部4まで延在する。詳しくは、シート反転部7の一端は、分岐部材51が設けられた位置で第2シート搬送部5と接続する。一方、シート反転部7の他端は、レジストローラー対44の手前で第1シート搬送部4と接続する。シート反転部7は、シート反転部7に導かれたシートSの搬送方向を反転させる。この結果、シートSの第1面と、第1面とは反対側のシートSの第2面とに画像が形成される。即ち、シートSの両面に画像が形成される。
【0023】
次に、
図2を参照して、ラインヘッド34の近傍の構成、及び、ラインヘッド34について説明する。
図2は、
図1に示すラインヘッド34、及び、その近傍の構成を示す図である。
【0024】
図2に示すように、インクジェット記録装置1は、駆動部31、吸引部33、及び、ヘッドベース37を更に備える。
【0025】
駆動部31は、ラインヘッド34の下方に配置される。駆動部31は、ベルト速度検知ローラー311、吸着ローラー312、駆動ローラー313、テンションローラー314、及び、一対のガイドローラー315を備える。
【0026】
ベルト速度検知ローラー311、駆動ローラー313、テンションローラー314、及び、一対のガイドローラー315は、第1搬送ベルト32を張架する。
【0027】
ベルト速度検知ローラー311は、吸引部33に対して搬送方向Dの上流側(
図2では右側)に配置され、第1搬送ベルト32との間の摩擦力によって回転する。ベルト速度検知ローラー311は、パルス板(図示せず)を含み、上記パルス板は、ベルト速度検知ローラー311と一体になって回転する。上記パルス板の回転速度を測定することによって、第1搬送ベルト32の回転速度が検知される。
【0028】
吸着ローラー312は、従動ローラーである。吸着ローラー312は、第1搬送ベルト32を介して、吸引部33が備えるプラテン35に対向する。吸着ローラー312は、レジストローラー対44から送出されたシートSを第1搬送ベルト32上へ誘導する。シートSにおける搬送方向Dと直交する方向の中心が第1搬送ベルト32における搬送方向Dと直交する方向の中心と一致するように、シートSが第1搬送ベルト32に導かれることが好ましい。
【0029】
駆動ローラー313は、吸引部33に対して搬送方向Dの下流側(
図2では左側)に配置される。好ましくは、駆動ローラー313は、ベルト速度検知ローラー311と共に、ラインヘッド34と対向する位置の第1搬送ベルト32の平面性を維持するように配置される。
【0030】
駆動ローラー313は、モーター(図示せず)によって回転駆動され、
図2の反時計回りの方向に第1搬送ベルト32を回転させる。
【0031】
テンションローラー314は、第1搬送ベルト32が撓まないように、第1搬送ベルト32に張力を与える。
【0032】
一対のガイドローラー315は、吸引部33よりも下方に配置され、吸引部33の下方に空間を形成する。このように配置することによって、吸引部33の下方における第1搬送ベルト32と吸引部33との接触を防止することができる。
【0033】
吸引部33は、第1搬送ベルト32の裏面側に配置される。吸引部33は、第1搬送ベルト32を介して第1搬送ベルト32の上方に吸引力を発生させる。これにより、第1搬送ベルト32によって搬送されているシートSが第1搬送ベルト32に吸着される。吸引部33は、プラテン35に加え、空気流通室331、2つの吸引力発生源336、及び、2つのダクト337を備える。プラテン35、空気流通室331、2つの吸引力発生源336、及び、2つのダクト337は、この順に上側から下側に配置されている。
【0034】
プラテン35は、空気流通室331の上面開口を覆い、第1搬送ベルト32を介してシートSを支持する。本実施形態において、プラテン35は、金属材料からなる。具体的には、プラテン35の材料として、アルミダイキャスト、プレス加工板等を使用できる。あるいは、プラテン35の材料として、第1搬送ベルト32との摺動性に優れた樹脂を選択することも可能である。
【0035】
空気流通室331は、上面が開口した有底筒状の箱形部材によって形成されている。空気流通室331を構成する側壁の上面は、プラテン35に固定されている。2つの吸引力発生源336は、空気流通室331の下方にそれぞれ配置される。2つの吸引力発生源336が駆動すると空気流通室331内に負圧が発生し、第1搬送ベルト32、及び、プラテン35を介して空気が空気流通室331に流れ込む。その結果、第1搬送ベルト32に向けてシートSが吸引される。第1搬送ベルト32、及び、プラテン35を介して空気流通室331内に吸引された空気は、吸引力発生源336を介してダクト337から外部へ排出される。
【0036】
吸引力発生源336は、空気流通室331内に負圧を発生させるものであって、本実施形態では、ファンである。ただし、吸引力発生源336は、ファンに限定されるものではなく、例えば、真空ポンプであってもよい。
【0037】
2つのダクト337は、各吸引力発生源336の下面とそれぞれ接続する。各吸引力発生源336によって吸引された空気は、各ダクト337から外部へ排出される。
【0038】
4種類のラインヘッド34a、34b、34c、及び、34dは、搬送方向Dの上流側から下流側に向けてヘッドベース37に並設される。
【0039】
続いて、
図3を参照して4種類のラインヘッド34a、34b、34c、及び、34dの構成について説明する。
図3は、
図2に示すラインヘッド34の構成を示す平面図である。
【0040】
図3に示すように、ラインヘッド34aは、3つの記録ヘッド340aを有する。以下、3つの記録ヘッド340aを、
図3の左側から順に、第1記録ヘッド341a、第2記録ヘッド342a、及び、第3記録ヘッド343aと記載する場合がある。
【0041】
第1記録ヘッド341a、第2記録ヘッド342a、及び、第3記録ヘッド343aは、プラテン35の上方においてプラテン35の幅方向に沿って千鳥状に配置される。プラテン35の幅方向は、搬送方向Dと直交する方向である。なお、プラテン35の幅方向は第2方向の一例である。
【0042】
詳しくは、第2記録ヘッド342aは、プラテン35の幅方向におけるプラテン35の中央部分に対向し、第1記録ヘッド341a及び第3記録ヘッド343aのそれぞれとプラテン35の幅方向において隣接する。第2記録ヘッド342aは、第1記録ヘッド341a、及び、第3記録ヘッド343aよりも搬送方向Dの上流側に配置される。また、第2記録ヘッド342aは、第1記録ヘッド341a及び第3記録ヘッド343aのそれぞれとプラテン35の幅方向における位置が重なる重なり部分344を有する。換言すれば、第2記録ヘッド342aは、第1記録ヘッド341aの一部、及び、第3記録ヘッド343aの一部と搬送方向Dにおいて部分的に重なるように配置される。したがって、第1記録ヘッド341a、及び、第3記録ヘッド343aも、搬送方向Dにおいて第2記録ヘッド342aと部分的に重なる重なり部分344を含む。
【0043】
ラインヘッド34aと同様に、ラインヘッド34bは3つの記録ヘッド340bを有し、ラインヘッド34cは3つの記録ヘッド340cを有し、ラインヘッド34dは3つの記録ヘッド340dを有する。記録ヘッド340b、記録ヘッド340c、及び記録ヘッド340dは、記録ヘッド340aと略同一の構成を有する。また、3つの記録ヘッド340b、3つの記録ヘッド340c、及び3つの記録ヘッド340dは、3つの記録ヘッド340aと同様に配置される。以下、各記録ヘッド340a、340b、340c、及び340dを記録ヘッド340と記載する場合がある。
【0044】
記録ヘッド340は、複数のノズル(図示せず)を有する。記録ヘッド340のノズルから記録ヘッド340に対向する位置を通過中のシートSに向けてインクが吐出される。これにより、シートSに文字、図形のような画像が形成される。
【0045】
次に、
図4を参照して、第1搬送ベルト32の構成について説明する。
図4は、
図2に示す第1搬送ベルト32の構成を示す平面図である。
【0046】
図4に示すように、第1搬送ベルト32には、複数の吸引孔321が略等間隔に形成されている。詳しくは、複数の吸引孔321は、搬送方向D及びプラテン35の幅方向(搬送方向Dに直交する方向)に沿って形成される。複数の吸引孔321は、千鳥状に配置されている。吸引孔321は、第1搬送ベルト32を貫通する。本実施形態において、吸引孔321の直径は、2mmであり、隣接する吸引孔321の間隔は、8mmである。吸引孔321は、ベルト孔の一例である。
【0047】
続いて
図5を参照して、プラテン35の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るプラテン35の構成を示す平面図である。詳しくは、
図5は、プラテン35を第1搬送ベルト32側から見た図である。
図5に示す2点鎖線は、記録ヘッド340と対向する第1対向領域11を示す。
【0048】
図5に示すように、プラテン35には、第1プラテン孔の一例である第1貫通孔352が複数形成されている。複数の第1貫通孔352は、第1対向領域11の外方において、搬送方向D及びプラテン35の幅方向(搬送方向Dに直交する方向)に沿って配置されている。つまり、搬送方向Dに沿った複数の第1貫通孔352からなる列が、プラテン35の幅方向に複数本形成されている。そして、搬送方向Dに沿った複数の第1貫通孔352からなる各列は、
図4を参照して説明した第1搬送ベルト32の吸引孔321と連通し得るように配置される。第1貫通孔352の横断面の形状は、円形である。第1貫通孔352は、プラテン35をプラテン35の厚さ方向に貫通する。これにより、第1貫通孔352は、空気流通室331とも連通する。
【0049】
複数の第1貫通孔352は、第2プラテン孔の一例である第2貫通孔352aを含む。各第2貫通孔352aは、搬送方向Dにおいて対向する第1対向領域11の各端の近傍に形成される。
【0050】
また
図5に示すように、プラテン35には、第1プラテン溝の一例である第1溝351が複数形成されている。第1溝351は、搬送方向Dに沿って延在する。複数の第1溝351は、搬送方向D及びプラテン35の幅方向に沿って配置されている。つまり、搬送方向Dに沿った複数の第1溝351からなる列が、プラテン35の幅方向に複数本形成されている。
【0051】
複数の第1溝351は、第2プラテン溝の一例である第2溝351aを含む。各第2溝351aは、搬送方向Dにおいて第1対向領域11の上流側から下流側に延在する。即ち、各第2溝351aは、記録ヘッド340の下方を搬送方向Dに沿って延在する。また、各第2溝351aには、少なくとも2つの第2貫通孔352aが形成されている。
【0052】
また、複数の第2溝351aは、第3プラテン溝の一例である第3溝351bを含む。第3溝351bは、搬送方向Dにおいて第2対向領域12の上流側から第3対向領域13の下流側まで延在する。なお、第2対向領域12は、
図3を参照して説明した第2記録ヘッド342aと対向する領域である。第2記録ヘッド342aは、ラインヘッド34のうち、搬送方向Dにおいて最も上流側に位置するラインヘッド34aに含まれる。つまり、第2対向領域12は、記録ヘッド340のうち、搬送方向Dにおいて最も上流側に位置する記録ヘッド340に対向する領域である。また、第3対向領域13は、第1記録ヘッド341dに対向する領域と、第3記録ヘッド343dに対向する領域とを含む。第1記録ヘッド341d及び第3記録ヘッド343dは、ラインヘッド34のうち、搬送方向Dにおいて最も下流側に位置するラインヘッド34dに含まれる。つまり、第3対向領域13は、記録ヘッド340のうち、搬送方向Dにおいて最も下流側に位置する記録ヘッド340に対向する領域である。したがって、第3溝351bは搬送方向Dに沿って、
図3を参照して説明した重なり部分344に対向する領域を通過するように延在する。
【0053】
続いて、
図6〜
図8を参照して、第2溝351a、第3溝351b、及び第2貫通孔352aの作用について説明する。
図6は、記録ヘッド340にシートSが接触する様子を示す図である。
図7は、記録ヘッド340にシートSが接触する他の様子を示す図である。
図8は、
図5に示す第2溝351a、第3溝351b、及び、第2貫通孔352aの作用を示す図である。
【0054】
本実施形態では、上述のように水性インクが使用される。水性インクがシートSに吐出されると、インクに含まれる水が湿潤してシートSの片面(画像形成面)が伸長し、シートSの一部がカールする可能性がある。カールによるシートSの歪みは、シートSの四隅において特に大きくなる。
【0055】
例えば、
図6(a)及び
図6(b)に示す構成においては、溝351が、記録ヘッド340の下方を搬送方向Dに沿って延在する。また、溝351に対して1つの貫通孔352のみが連通する。このような構成では、シートSと記録ヘッド340との接触が起こりやすい。
【0056】
詳しくは、貫通孔352は、搬送方向Dにおける記録ヘッド340の上流側の端340xの直下の外側近傍に位置している。以下、端340xを上流端340xと記載する。同様に、搬送方向Dにおける記録ヘッド340の下流側の端340yを、下流端340yと記載する。
【0057】
搬送方向Dにおける溝351の上流側の端351xは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の上流端340xよりも上流側に位置する。また、搬送方向Dにおける溝351の下流側の端351yは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の下流端340yよりも下流側に位置する。以下、端351xを上流端351xと記載し、端351yを下流端351yと記載する。
【0058】
以上説明した
図6(a)及び
図6(b)に示す構成では、シートSが貫通孔352の上方を通過している間、貫通孔352の上方の圧力損失が大きくなり、溝351を介してシートSに作用する吸引力が、強くなる。したがって、搬送ベルト32によって搬送されるシートSの前端側の隅にカールが発生していても、シートSの前端と記録ヘッド340との接触は起こりにくい。一方、シートSの後端が貫通孔352の上方を通過すると、貫通孔352の上方の圧力損失が小さくなり、溝351を介してシートSに作用する吸引力が弱まる。したがって、シートSの後端側の隅にカールが発生している場合、シートSの後端と記録ヘッド340との接触が起こりやすい。
【0059】
また例えば、
図7(a)及び
図7(b)に示す構成においても、溝351に対して1つの貫通孔352のみが連通するため、シートSと記録ヘッド340との接触が起こりやすい。
【0060】
即ち、
図7(a)及び
図7(b)に示す構成では、
図6(a)及び
図6(b)に示す構成と同様に、溝351の上流端351xは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の上流端340xよりも上流側に位置する。また、溝351の下流端351yは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の下流端340yよりも下流側に位置する。一方、貫通孔352は、記録ヘッド340の下流端340yの直下の外側近傍に位置している。
【0061】
このような構成の場合、シートSの前端が貫通孔352の上方に到達するまでの間、貫通孔352の上方の圧力損失が小さく、溝351を介してシートSに作用する吸引力は弱いままとなる。このため、シートSの前端側の隅にカールが発生している場合、シートSの前端と記録ヘッド340との接触が起こりやすい。一方、シートSが貫通孔352の上方を通過している間は、貫通孔352の上方の圧力損失が大きくなり、溝351を介してシートSに作用する吸引力が強くなる。したがって、搬送ベルト32によって搬送されるシートSの後端側の隅にカールが発生していても、シートSの後端と記録ヘッド340との接触は起こりにくい。
【0062】
これに対し、本実施形態では、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第2溝351aに対して2つの第2貫通孔352aが連通する。つまり、
図6及び
図7に示す溝351と同様に、第2溝351aの上流端351xは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の上流端340xよりも上流側に位置する。また、第2溝351aの下流端351yは、搬送方向Dにおいて記録ヘッド340の下流端340yよりも下流側に位置する。一方、第2溝351aには、記録ヘッド340の下流端340yの直下の外側近傍に配置されている第2貫通孔352aが連通する。更に、第2溝351aには、記録ヘッド340の上流端340xの直下の外側近傍に配置されている第2貫通孔352aも連通する。
【0063】
したがって、本実施形態では、シートSの前端が記録ヘッド340の下方の領域(第1対向領域11)に進入する際には、2つの第2貫通孔352aのうち、搬送方向Dに対して上流側の第2貫通孔352aの上方の圧力損失が大きくなる。その結果、第2溝351aを介してシートSに作用する吸引力が強くなる。このため、第1搬送ベルト32によって搬送されるシートSの前端側の隅にカールが発生していても、シートSの前端と記録ヘッド340との接触は起こりにくい。
【0064】
また、シートSの後端が記録ヘッド340の下方の領域(第1対向領域11)から離れる際には、2つの第2貫通孔352aのうち、搬送方向Dに対して下流側の第2貫通孔352aの上方の圧力損失は大きいまま維持される。その結果、第2溝351aを介してシートSに作用する吸引力が強いまま維持される。このため、第1搬送ベルト32によって搬送されるシートSの後端側の隅にカールが発生していても、シートSの後端と記録ヘッド340との接触は起こりにくい。
【0065】
よって、本実施形態では、シートSが記録ヘッド340の下方の領域(第1対向領域11)を通過している間、第2溝351aを介してシートSに作用する吸引力が強くなる。つまり、シートSが第2溝351aの上方を通過している間、第2溝351aは強い吸引力を維持する。したがって、シートSの四隅にカールが発生していても、シートSが記録ヘッド340と接触し難く、シートSのカールに起因したジャムの発生を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、記録ヘッド340の上流端340xの直下の外側近傍、及び、記録ヘッド340の下流端340yの直下の外側近傍に、第2貫通孔352aが配置される。第2貫通孔352aがこのように配置されることにより、記録ヘッド340の上流端340xの直下においてシートSを強く吸引することができる。また、記録ヘッド340の下流端340yの直下においてシートSを強く吸引することができる。よって、記録ヘッド340の上流端340xの直下、及び、記録ヘッド340の下流端340yの直下において、より確実にシートSを第1搬送ベルト32に吸着させることができる。したがって、シートSと記録ヘッド340との接触をより確実に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、シートSが第3溝351bの上方を通過している間、第3溝351bは、第2溝351aと同様に強い吸引力を維持する。したがって、
図3を参照して説明した記録ヘッド340の重なり部分344においても、シートSと記録ヘッド340との接触を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1貫通孔352が、記録ヘッド340の直下に設けられていない。つまり、
図5を参照して説明した第1対向領域11の外方にのみ第1貫通孔352が形成されており、第1対向領域11の内側に第1貫通孔352は形成されていない。このため、吸引風によるインク滴の着弾乱れ及びインク滴の不吐出を抑制することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態1に係るインクジェット記録装置1について説明した。本実施形態によれば、画像品質の低下を抑制しつつ、シートSのカールに起因したジャムを抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態において、吸引力発生源336が2つである場合を例に説明したが、吸引力発生源336は2つに限定されない。吸引力発生源336は、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0071】
[実施形態2]
次に、
図1〜
図4及び
図9を参照して、本発明の実施形態2に係るインクジェット記録装置1について説明する。実施形態2では、プラテン35の構成が実施形態1と異なる。以下、実施形態2について実施形態1と異なる事項を説明し、実施形態1と重複する事項の説明は割愛する。
【0072】
図9に示すように、複数の第
1貫通孔35
2は、複数の第3貫通孔352bを含む。第3貫通孔352bは、第3プラテン孔の一例である。各第3貫通孔352bは、第1対向領域11のうち、
図3を参照して説明した記録ヘッド340の重なり部分344に対向する部分の近傍に形成される。これにより、記録ヘッド340の重なり部分344において、シートSと記録ヘッド340との接触を抑制することができる。
【0073】
また、
図9に示すように、複数の第2溝351aは、プラテン35の幅方向において対向するシートSの各端部が通過する通過領域14に対向する位置にのみ配置されている。以下、プラテン35の幅方向において対向するシートSの各端部を、シートSの各端部と記載する。
【0074】
本実施形態では、4つの通過領域14が設定されている。具体的には、A4サイズのシートSが縦通紙される場合、即ち、シートSの短辺が搬送方向Dと直交するようにA4サイズのシートSが搬送される場合、シートSの各端部は、
図9に示す通過領域14のうち、内側の通過領域14を通過する。また、A4サイズのシートSが横通紙される場合、即ち、シートSの長辺が搬送方向Dと直交するようにA4サイズのシートSが搬送される場合、シートSの各端部は、
図9に示す通過領域14のうち、外側の通過領域14を通過する。なお、搬送方向Dに直交する方向における通過領域14の幅は、第1搬送ベルト32に導かれるシートSの位置が機械公差等によってばらつくことを考慮して設定される。更に好ましくは、通過領域14の幅は、シートSの四隅をより確実に第1搬送ベルト32に吸着させるために、シートSの四隅の位置がカールによってばらつくことを考慮して設定される。
【0075】
通過領域14においてシートSに作用する吸引力は、単位面積当たり30N/m
2以上が望ましく、50N/m
2以上75N/m
2以下が更に望ましい。これにより、記録ヘッド340から吐出されるインク滴の吸引風による着弾乱れ、及び、異物の記録ヘッド340への付着をより抑制することができる。なお、吸引力は、以下の式で算出される。
吸引力=(シートSが第1搬送ベルト32に吸着されていないときの空気流通室331の負圧[Pa])×(吸引孔321の開口率)/100[N/m
2]
【0076】
また、通過領域14の外方においてシートSに作用する吸引力は、通過領域14においてシートSに作用する吸引力よりも小さい範囲において、単位面積当たり30N/m
2以下が望ましく、3N/m
2以上15N/m
2以下が更に望ましい。これにより、記録ヘッド340から吐出されるインク滴の吸引風による着弾乱れ、及び、異物の記録ヘッド340への付着をより抑制することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態では、通過領域14に、実施形態1と同様に第2溝351a及び第2貫通孔352aが形成されている。したがって、シートSの四隅にカールが発生していても、シートSが記録ヘッド340と接触しにくく、シートSのカールに起因したジャムの発生を抑制することができる。更に本実施形態では、通過領域14にのみ第2溝351aが形成されている。換言すれば、第1対向領域11のうち、通過領域14の外方の部分には、第1溝351が形成されていない。また、実施形態1と同様に、記録ヘッド340の直下に第1貫通孔352が形成されていない。よって、記録ヘッド340から吐出されるインク滴の吸引風による着弾乱れ、及び、異物の記録ヘッド340への付着をより抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態2に係るインクジェット記録装置1について説明した。本実施形態によれば、画像品質の低下を抑制しつつ、カールに起因したジャムの発生を抑制することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、A4サイズのシートSに画像を形成するインクジェット記録装置1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、複数のサイズ種別、例えば、A4サイズのシートS、及び、B4サイズのシートSに画像を形成可能なインクジェット記録装置にも適用され得る。この場合、インクジェット記録装置が対応可能なシートSのサイズ種別ごとに通過領域14を設定すればよい。
【0080】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、本発明の実施形態では、プラテン35と空気流通室331とが別部材である場合について説明したが、プラテン35と空気流通室331とが一体に形成されている形態でもよい。この場合には、空気流通室331からの負圧のリークを防止することができる。詳しくは、プラテン35と空気流通室331との間の隙間からの空気流通室331への空気の流入を防止することができる。