(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の燃焼に伴う二酸化炭素の発生が問題視される。このため、太陽熱エネルギ、風力エネルギ、水力エネルギ等のような自然エネルギの活用が推進される。自然エネルギの中でも、風力エネルギ、水力エネルギ等は流体の運動エネルギである。従来、流体運動エネルギを活用して発電が行われる。
【0003】
例えば、一般的な風力発電設備では、羽根車が風力を受けて回転する。羽根車の回転軸は発電機の入力軸に連結されており、羽根車の回転に伴って発電機の入力軸が回転する。これにより、発電機で電気が発生する。つまり、一般的な風力発電設備では、風力エネルギが羽根車の回転軸の運動エネルギに変換され、この回転軸の運動エネルギが電気エネルギに変換される。
【0004】
特開2011−89492号公報(特許文献1)は、エネルギの利用効率の向上を図った風力発電設備を開示する。特許文献1の発電設備は渦電流式減速装置を備え、風力エネルギから電気エネルギへの変換過程で熱エネルギを発生する。
【0005】
特許文献1の発電設備においては、風力エネルギが羽根車の回転軸の運動エネルギに変換され、この回転軸の運動エネルギが油圧ポンプの油圧エネルギに変換される。油圧エネルギによって油圧モータが回転する。油圧モータの主軸は渦電流式減速装置の回転軸に連結され、この減速装置の回転軸は発電機の入力軸に連結される。油圧モータの回転に伴って減速装置の回転軸が回転するとともに、発電機の入力軸が回転する。これにより、発電機で電気が発生する。
【0006】
渦電流式減速装置は、永久磁石からの磁界の作用によって生じる渦電流を利用し、減速装置の回転軸の回転速度を減速する。これにより、油圧モータの主軸の回転速度が減速し、これに伴い油圧ポンプを介して羽根車の回転速度が調整される。
【0007】
また、渦電流式減速装置においては、渦電流の発生により、回転軸の回転速度を減速させる制動力が発生すると同時に、熱が発生する。つまり、風力エネルギの一部が熱エネルギに変換される。その熱(熱エネルギ)が蓄熱装置に回収され、回収された熱エネルギによって原動機が駆動する。原動機の駆動によって発電機が駆動し、その結果として発電機で電気が発生する、と特許文献1には記載される。このことから、特許文献1の渦電流式減速装置は、羽根車の回転軸の運動エネルギを熱エネルギに変換して回収するための発熱装置ともいえる。
【0008】
また、渦電流式減速装置は、トラック、バス等の車両に補助ブレーキとして搭載される場合がある。この場合の減速装置は、プロペラシャフト、ドライブシャフト等のような回転軸の回転速度を減速する。これにより、車両の走行速度が調整される。その際、回転軸の回転速度を減速させる制動力が発生すると同時に、熱が発生する。したがって、車両に搭載された渦電流式減速装置においても、回転軸の運動エネルギが熱エネルギに変換されることから、この熱エネルギを回収して活用することが望まれる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態による渦電流式発熱装置は、回転軸と、発熱部材と、複数の永久磁石と、磁石保持部材と、熱回収機構と、を備える。回転軸は、非回転部に回転可能に支持される。発熱部材は円筒状であり、前記回転軸に固定される。複数の永久磁石は、前記発熱部材の外周面又は内周面に隙間を空けて対向し、互いに隣接するもの同士で磁極の配置が交互に異なる。磁石保持部材は、前記永久磁石を保持し、前記非回転部に固定される。熱回収機構は、前記発熱部材に生じた熱を回収する。
【0017】
熱回収機構は、密閉容器と、配管と、蓄熱装置と、熱媒体と、を含む。密閉容器は、前記非回転部に固定されて前記発熱部材を包囲する。密閉容器は、前記発熱部材と前記永久磁石との前記隙間に非磁性の隔壁を有する。配管は、前記密閉容器の内部空間に繋がる入口及び出口にそれぞれ接続される。蓄熱装置は、前記各配管に接続される。熱媒体は、前記密閉容器、前記配管、及び前記蓄熱装置を循環する。そして、渦電流式発熱装置は、前記永久磁石と対向する前記発熱部材の前記周面に非磁性の突起を備える。
【0018】
本実施形態の渦電流式発熱装置によれば、発熱部材に対向する磁石の磁極の配置が、互いに隣接する磁石同士で交互に異なるため、磁石からの磁界が広がり、発熱部材に到達する磁束密度が多くなる。これにより、磁石からの磁界の作用によって発熱部材に生じる渦電流が大きくなり、十分な発熱が得られる。しかも、発熱部材と隔壁との間の熱媒体は、発熱部材と一体で回転する突起によって攪拌される。この攪拌により、発熱部材から熱媒体への熱伝達が効率良く均一に行われる。したがって、回転軸の運動エネルギを熱エネルギに有効に変換して回収することができる。
【0019】
上記の発熱装置において、前記突起は前記発熱部材の周方向に複数設けられる構成とすることができる。
【0020】
上記の発熱装置において、前記突起は前記発熱部材の軸方向に複数設けられる構成とすることができる。
【0021】
上記の発熱装置において、前記突起は前記発熱部材の軸方向に沿って螺旋状に延びることが好ましい。この場合、前記突起は前記発熱部材の回転方向に傾斜することが好ましい。
【0022】
上記の発熱装置は、風力発電設備、水力発電設備等のように流体運動エネルギを利用した発電設備に搭載することができる。また、上記の発熱装置は、車両に搭載することができる。いずれの場合でも、発熱装置は回転軸の運動エネルギを熱エネルギに変換して回収する。回収した熱エネルギは、例えば電気エネルギの生成に利用される。
【0023】
以下に、本発明の渦電流式発熱装置の実施形態について詳述する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の発熱装置の縦断面図である。
図2は、第1実施形態の発熱装置の横断面図である。
図3は、その発熱装置における発熱部材の外観を示す平面図である。
図1〜
図3には、風力発電設備に搭載した発熱装置1を例示する。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の発熱装置1は、回転軸3と、発熱部材4と、複数の永久磁石5と、磁石保持部材6と、を備える。回転軸3は、非回転部である固定の本体2に対し、軸受7を介して回転可能に支持される。
【0025】
発熱部材4は、回転軸3に固定される。発熱部材4は、回転軸3を軸心とする円筒部材4Aと、この円筒部材4Aと回転軸3を繋ぐ円板状の連結部材4Bと、を含む。連結部材4Bには、軽量化及び熱回収のために、複数の貫通穴4Cが設けられる。磁石保持部材6は、発熱部材4の外側に配置され、本体2に固定される。磁石保持部材6は、回転軸3を軸心とする円筒部材6aを含む。円筒部材6aは磁石5を保持する。
【0026】
磁石5は、円筒部材6aの内周面に固定され、発熱部材4(円筒部材4A)の外周面に対し隙間を空けて対向する。ここで、
図2に示すように、磁石5は、円周方向にわたり配列される。これらの磁石5の磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3を中心とする径方向であって、円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。第1実施形態の場合、磁石5を直接保持する円筒部材6aの材質は、強磁性材料である。
【0027】
発熱部材4の材質、特に磁石5と対向する円筒部材4Aの外周面の表層部の材質は、導電性材料である。導電性材料としては、強磁性金属材料(例:炭素鋼、鋳鉄等)、弱磁性金属材料(例:フェライト系ステンレス鋼等)、又は非磁性金属材料(例:アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、銅合金等)が挙げられる。
【0028】
また、発熱部材4と磁石5との隙間には、円筒状の隔壁15が配置される。この隔壁15は本体2に固定され、発熱部材4を包囲する密閉容器を形成する。隔壁15の材質は非磁性材料である。磁石5から発熱部材4への磁界に悪影響を及ぼさないようにするためである。
【0029】
磁石5と対向する発熱部材4の周面、すなわち円筒部材4Aの外周面に、突起16が固定される。この突起16は、発熱部材4の軸方向の全域にわたり、発熱部材4の軸方向に沿って螺旋状に延びる。突起16は、円筒部材4Aの外周面から垂直に突出する。
図3には、発熱部材4の周方向に突起16が8つ設けられた態様を示す。突起16の材質は非磁性材料である。磁石5から円筒部材4Aへの磁界に悪影響を及ぼさないようにするためである。
【0030】
回転軸3が回転すると、発熱部材4が回転軸3と一体で回転する(
図1中の白抜き矢印参照)。これにより、磁石5と発熱部材4との間に相対的な回転速度差が生じる。このとき、
図2に示すように、発熱部材4(円筒部材4A)の外周面と対向する磁石5に関し、磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3を中心とする径方向であって、円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。また、磁石5を保持する円筒部材6aが強磁性体である。
【0031】
このため、磁石5からの磁束(磁界)は、次のような状況になる。互いに隣接する磁石5のうちの一方の磁石5のN極から出た磁束は、この磁石5に対向する発熱部材4(円筒部材4A)に達する。発熱部材4に達した磁束は、他方の磁石5のS極に達する。他方の磁石5のN極から出た磁束は、円筒部材6aを通じて一方の磁石5のS極に達する。つまり、円周方向に隣接する磁石5同士、磁石5を保持する円筒部材6a、及び発熱部材4との間に、磁石5による磁気回路が形成される。このような磁気回路が、円周方向の全域にわたり、交互にその磁束の向きを逆向きにして形成される。そうすると、磁石5からの磁界が広がり、発熱部材4に到達する磁束密度が多くなる。
【0032】
磁石5と発熱部材4との間に相対的な回転速度差が生じた状態において、磁石5から発熱部材4に磁界が作用すると、発熱部材4(円筒部材4A)の外周面に渦電流が発生する。この渦電流と、磁石5からの磁束密度との相互作用により、フレミングの左手の法則に従い、回転軸3と一体で回転する発熱部材4には回転方向と逆向きの制動力が発生する。
【0033】
更に、渦電流の発生により、制動力が発生すると同時に、発熱部材4に熱が発生する。上記のとおり、発熱部材4に到達する磁束密度が多いので、磁石5からの磁界の作用によって発熱部材4に生じる渦電流が大きくなり、十分な発熱が得られる。
【0034】
発熱装置1は、発熱部材4に生じた熱を回収して活用するために、熱回収機構を備える。第1実施形態では、熱回収機構として、隔壁15と一体で密閉容器を構成する本体2に、密閉容器の内部空間、すなわち発熱部材4が存在する空間(以下、「発熱部材存在空間」ともいう)に繋がる入口11及び出口12が設けられる。この発熱部材存在空間の入口11及び出口12のそれぞれには、図示しない入側配管及び出側配管が接続される。入側配管及び出側配管は、図示しない蓄熱装置に接続される。発熱部材存在空間(密閉容器の内部空間)、入側配管、出側配管、及び蓄熱装置は一連の経路を形成し、この経路中を熱媒体が流通して循環する(
図1中の実線矢印参照)。
【0035】
発熱部材4に生じた熱は、発熱部材存在空間を流通する熱媒体に伝達される。その際、発熱部材4(円筒部材4A)の外周面と隔壁15の内周面との間の熱媒体は、発熱部材4と一体で回転する突起16によって攪拌される。このため、発熱部材4から熱媒体への熱伝達が効率良く均一に行われる。発熱部材存在空間内の熱媒体は、発熱部材存在空間の出口12から排出され、出側配管を通じて蓄熱装置に導かれる。蓄熱装置は、熱交換によって熱媒体から熱を受け取って回収し、その熱を蓄える。蓄熱装置を経た熱媒体は、入側配管を通じ、入口11から発熱部材存在空間に戻る。このようにして、発熱部材4に生じた熱が回収される。
【0036】
第1実施形態の発熱装置1においては、上記のとおり、発熱部材4で十分な発熱が得られる。しかも、熱媒体の攪拌により、発熱部材4から熱媒体への熱伝達が効率良く均一に行われる。したがって、回転軸3の運動エネルギを熱エネルギに有効に変換して回収することができる。特に、第1実施形態では、突起16が螺旋状であることから、熱媒体が旋回流となる。このため、発熱部材4から熱媒体への熱伝達の際、熱媒体がより攪拌される。更に、第1実施形態では、突起16が複数設けられるため、熱媒体の攪拌がより一層大きくなる。
【0037】
第1実施形態の発熱装置1は、風力発電設備に搭載される。すなわち、
図1に示すように、発熱装置1の回転軸3の延長線上に、風車である羽根車20が設けられる。羽根車20の回転軸21は、固定の本体2に対し、軸受25を介して回転可能に支持される。羽根車20の回転軸21は、クラッチ装置23及び増速装置24を介して、発熱装置1の回転軸3に連結される。羽根車20の回転軸21の回転に伴って発熱装置1の回転軸3が回転する。このとき、発熱装置1の回転軸3の回転速度は、増速装置24によって、羽根車20の回転軸21の回転速度よりも増加する。増速装置24には、例えば遊星歯車機構を適用できる。
【0038】
このような風力発電設備では、羽根車20が風力を受けて回転する(
図1の白抜き矢印参照)。羽根車20の回転に伴って発熱装置1の回転軸3が回転する。これにより、発熱部材4で熱が発生し、発生した熱は蓄熱装置に回収される。すなわち、羽根車20の回転に基づく発熱装置1の回転軸3の運動エネルギの一部が熱エネルギに変換されて回収される。その際、羽根車20と発熱装置1との間には、特許文献1の風力発電設備のような油圧ポンプ及び油圧モータが無いため、エネルギの変換ロスが少ない。蓄熱装置に回収された熱は、例えば、熱素子、スターリングエンジン等による発電に利用される。
【0039】
更に、発熱装置1の回転軸3が回転することにより、発熱部材4が発熱すると同時に、回転軸3には、回転を減速させる制動力が発生する。これにより、増速装置24及びクラッチ装置23を介し羽根車20の回転速度が調整される。ここで、クラッチ装置23は以下の機能を有する。発熱装置1で発熱が必要な場合には、クラッチ装置23は、羽根車20の回転軸21と発熱装置1の回転軸3とを接続する。これにより、羽根車20の回転動力が発熱装置1に伝達される。蓄熱装置に蓄積された熱量が許容量に達し、発熱装置1で発熱の必要が無くなった場合、メンテナンスのために発熱装置1を停機する場合等には、クラッチ装置23は、羽根車20の回転軸21と発熱装置1の回転軸3との接続を切る。これにより、羽根車20の回転動力が発熱装置1に伝達されない。このときに羽根車20が風力で自由に回転することのないように、羽根車20とクラッチ装置23との間に、羽根車20の回転を止める摩擦式、電磁式等のブレーキ装置22を設置するのが好ましい。
【0040】
上記のとおり、発熱部材4(円筒部材4A)に発生した渦電流により、発熱部材4が発熱する。このため、磁石5は発熱部材4からの輻射熱によって温度が上昇し、保有する磁力が低下するおそれがある。そこで、磁石5の温度上昇を抑制する工夫を施すことが望ましい。
【0041】
この点、第1実施形態の発熱装置1では、発熱部材4からの輻射熱が密閉容器の隔壁15によって遮断される。これにより、磁石5の温度上昇を防止することができる。また、この場合、磁石5と隔壁15との間に、断熱材が充填されたり、磁石5と隔壁15との間が真空状態にされたりすることが好ましい。発熱部材4からの輻射熱をより確実に遮断することができるからである。
【0042】
図4は、第1実施形態の発熱装置における発熱部材の好適な態様の一例を示す横断面図である。
図4では、磁石5と対向する発熱部材4(円筒部材4A)の外周面近傍を拡大して示す。
図4に示すように、発熱部材4は、基材4aの外周面に、第1層4b、第2層4c及び酸化防止皮膜層4dが順に積層される。基材4aの材質は、熱伝導率の高い導電性金属材料(例:銅合金、アルミニウム合金等)である。第1層4bの材質は、強磁性金属材料(例:炭素鋼、鋳鉄等)である。第2層4cの材質は、非磁性金属材料又は弱磁性金属材料であり、特に第1層4bに比べて導電率の高い材料(例:アルミニウム合金、銅合金等)が望ましい。酸化防止皮膜層4dは、例えばNi(ニッケル)めっき層である。
【0043】
基材4aと第1層4bとの間、第1層4bと第2層4cとの間、第2層4cと酸化防止皮膜層4dとの間には、それぞれ緩衝層4eが積層される。緩衝層4eの線膨張係数は、隣接する一方の材料の線膨張係数よりも大きく、他方の材料の線膨張係数よりも小さい。各層の剥離を防止するためである。緩衝層4eは、例えばNiP(ニッケル−リン)めっき層である。
【0044】
このような積層構造によれば、磁石5からの磁界の作用によって発熱部材4に生じる渦電流がより大きくなり、高い制動力とより十分な発熱を得ることが可能になる。ただし、第2層4cは省いて構わないし、緩衝層4eも省いて構わない。
【0045】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の発熱装置の横断面図である。
図5に示す第2実施形態の発熱装置1は、前記第1実施形態の発熱装置1の構成を基本とする。後述する第3〜第5実施形態でも同様とする。第2実施形態の発熱装置1は、前記第1実施形態と比較し、主に磁石5の配列態様が相違する。
【0046】
図5に示すように、磁石5は、円筒部材6aの内周面に、円周方向にわたり配列される。これらの磁石5の磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3を中心とする周方向であって、円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。第2実施形態の場合、磁石5を直接保持する円筒部材6aの材質は、非磁性材料である。円周方向で隣接する磁石5の間に強磁性体からなるポールピース9が設けられる。
【0047】
第2実施形態では、磁石5からの磁束(磁界)は、次のような状況になる。周方向に隣接する磁石5同士は、ポールピース9を挟んで同極が向き合う。また、磁石5を保持する円筒部材6aが非磁性体である。このため、両磁石5のN極から出た磁束は、互いに反発し、ポールピース9を通じて発熱部材4(円筒部材4A)に達する。発熱部材4に達した磁束は、隣のポールピース9を通じて各々の磁石5のS極に達する。つまり、磁石5、ポールピース9、及び発熱部材4との間に、磁石5による磁気回路が形成される。このような磁気回路が、円周方向の全域にわたり、交互にその磁束の向きを逆向きにして形成される。そうすると、磁石5からの磁界が広がり、発熱部材4に到達する磁束密度が多くなる。
【0048】
したがって、第2実施形態の発熱装置1でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態の発熱装置の縦断面図である。第3実施形態の発熱装置1は、前記第1実施形態と比較し、主に磁石5の配列態様が相違する。
【0050】
図6に示すように、磁石5は、円筒部材6aの内周面に、軸方向にわたり配列される。これらの磁石5の磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3に沿った軸方向であって、軸方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。第3実施形態の場合、磁石5を直接保持する円筒部材6aの材質は、前記第2実施形態と同様に非磁性材料である。軸方向で隣接する磁石5の間に、強磁性体からなるポールピース9が設けられる。更に、ポールピース9は、軸方向の両端に配置された磁石5の端にも設けられる。
【0051】
第3実施形態では、磁石5からの磁束(磁界)は、次のような状況になる。軸方向に隣接する磁石5同士は、ポールピース9を挟んで同極が向き合う。また、磁石5を保持する円筒部材6aが非磁性体である。このため、両磁石5のN極から出た磁束は、互いに反発し、ポールピース9を通じて発熱部材4(円筒部材4A)に達する。発熱部材4に達した磁束は、隣のポールピース9を通じて各々の磁石5のS極に達する。つまり、磁石5、ポールピース9、及び発熱部材4との間に、磁石5による磁気回路が形成される。このような磁気回路が、軸方向の全域にわたり、交互にその磁束の向きを逆向きにして形成される。そうすると、磁石5からの磁界が広がり、発熱部材4に到達する磁束密度が多くなる。
【0052】
したがって、第3実施形態の発熱装置1でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態の発熱装置の縦断面図である。第4実施形態の発熱装置1は、磁石5の温度上昇を抑制する点に着目し、前記第1実施形態の発熱装置1に磁石5を冷却する冷却機構を設けたものである。
【0054】
図7に示すように、第6実施形態の発熱装置1は、磁石冷却機構として、以下の構成を備える。本体2には、磁石5及び磁石保持部材6が存在する空間(以下、「磁石存在空間」ともいう)に繋がる吸入口31及び排出口32が設けられる。なお、
図7では、排出口32が磁石保持部材6(円筒部材6a)を貫通する態様を示す。
【0055】
磁石存在空間の吸入口31及び排出口32のそれぞれには、吸入側配管33及び排出側配管34が接続される。吸入側配管33及び排出側配管34は、熱交換器35に接続される。磁石存在空間、吸入側配管33、排出側配管34、及び熱交換器35は一連の経路を形成し、この経路中を冷媒体が流通して循環する(
図7中の点線矢印参照)。この経路中には、冷媒体を送り出すポンプ36が設置される。
【0056】
このような構成によれば、ポンプ36の駆動により、冷媒体が吸入口31から磁石存在空間に導入される(
図7中の点線矢印参照)。磁石存在空間に導入された冷媒体は、磁石5の近傍領域を流通する。その際、磁石5が冷却される。磁石5を冷却した冷媒体は、排出口32から排出側配管34に排出される(
図7中の点線矢印参照)。排出側配管34に排出された冷媒体は、熱交換器35で冷却され、吸入側配管33に送り出される。このようにして、磁石5を冷媒体によって強制的に冷却し、磁石5の温度上昇を抑制することができる。
【0057】
このような磁石冷却機構は、前記第2及び第3実施形態の発熱装置1に適用することも可能である。
【0058】
第4実施形態の変形例として、吸入側配管33、排出側配管34、熱交換器35、及びポンプ36は省くこともできる。この場合、送風機等によって、外部の空気を吸入口31から磁石存在空間に導入し、排出口32から排出させればよい。磁石5は、磁石存在空間内を流通する空気によって冷却される。
【0059】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態の発熱装置の横断面図である。第5実施形態の発熱装置1は、前記第1実施形態の発熱部材4に設けた突起16の態様を変形したものである。
【0060】
図8に示すように、螺旋状の突起16は、円筒部材4Aの外周面から発熱部材4の回転方向に傾斜して突出する。これにより、突起16によって生じる熱媒体の旋回流が強力になる。このため、熱媒体の攪拌が更に大きくなる。
【0061】
したがって、第5実施形態の発熱装置1によれば、前記第1実施形態よりも優れた効果が期待できる。
【0062】
このような突起16の態様は、前記第2〜第4実施形態の発熱装置1に適用することも可能である。
【0063】
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、突起16の設置数は、特に限定しない。
図9A、
図9B及び
図10は、突起の態様の変形例を示す図である。
図9A及び
図9Bに示すように、螺旋状の突起16が周方向に4つ設けられても構わない。
図10に示すように、螺旋状の突起16が複数に分割されても構わない。また、突起16の形状は、螺旋状でなくてもよく、単純なピン状であってもよい。要するに、突起16は、周方向に複数設けられてもよいし、軸方向に複数設けられてもよい。もちろん、単数であってもよい。
【0064】
上記の実施形態では、発熱部材4(円筒部材4A)の外側に磁石5を配置し、磁石5は発熱部材4の外周面に対向する。これとは逆に、発熱部材4(円筒部材4A)の内側に磁石5を配置し、磁石5が発熱部材4の内周面に対向するようにすることもできる。ただし、この場合であっても、発熱部材4は回転軸3に固定され、磁石5は磁石保持部材6を介して本体2に固定される。
【0065】
また、上記の発熱装置は、風力発電設備のみならず、水力発電設備等のように流体運動エネルギを利用した発電設備に搭載することができる。
【0066】
更に、上記の発熱装置は、車両に搭載することができる。この場合、上記の発熱装置は、補助ブレーキとしての渦電流式減速装置とは別個に設けられてもよいし、補助ブレーキとして兼用されてもよい。補助ブレーキとして兼用される場合、制動と非制動を切り替えるスイッチ機構を設置すればよい。車両に搭載した発熱装置によって回収された熱は、例えば、車体内を暖めるための暖房機の熱源に利用されたり、コンテナ内を冷却するための冷凍機の熱源に利用されたりする。