(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラープリンターについて示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(
図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0014】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により
図1において時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラー9において転写紙P上に一度に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを
図1において反時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0015】
トナー像が転写される転写紙Pは、カラープリンター100本体下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナ19が配置されている。
【0016】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転可能に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング部5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0017】
パーソナルコンピューター等の上位装置から画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0018】
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、一次転写ローラー6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング部5a〜5dにより除去される。
【0019】
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とを含む複数の張架ローラーに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0020】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0021】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラー対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラー対15を逆回転させることにより分岐部14で反転搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラー対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラー対15を介して排出トレイ17に排出される。
【0022】
図2は、カラープリンター100に搭載される本発明の第1実施形態に係る現像装置3aの構成を示す側面断面図である。なお、ここでは
図1の画像形成部Paに配置される現像装置3aについて説明するが、画像形成部Pb〜Pdに配置される現像装置3b〜3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
【0023】
図2に示すように、現像装置3aは、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器22を備えている。現像容器22は、現像ローラー20を感光体ドラムに向けて露出させる開口22aが形成されており、仕切壁22bによって第1及び第2攪拌室22c、22dに区画されている。第1及び第2攪拌室22c、22dには図示しないトナーコンテナから供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー43及び第2攪拌スクリュー44から成る攪拌部材42が回転可能に配設されている。
【0024】
そして、第1攪拌スクリュー43及び第2攪拌スクリュー44によって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁22bの両端に形成された連通部22e、22f(
図4参照)を介して第1及び第2攪拌室22b、22c間を循環する。図示の例では、現像容器22は左斜め上方に延在しており、現像容器22内において第2攪拌スクリュー44の上方には磁気ローラー21が配置され、磁気ローラー21の左斜め上方には現像ローラー20が対向配置されている。そして、現像ローラー20は現像容器22の開口22a側(
図2の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラー21及び現像ローラー20は
図2の時計回り方向に回転する。
【0025】
なお、現像容器22には、第1攪拌スクリュー43と対面してトナー濃度センサー(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサーで検知されるトナー濃度に応じて補給装置(図示せず)からトナー補給口22gを介して現像容器22内にトナーが補給される。
【0026】
磁気ローラー21は、非磁性の回転スリーブ21aと、回転スリーブ21aに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体21bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体21bの磁極は、主極35、規制極(穂切り用磁極)36、搬送極37、剥離極38、及び汲上極39の5極構成である。磁気ローラー21と現像ローラー20とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。
【0027】
また、現像容器22には穂切りブレード25が磁気ローラー21の長手方向(
図2の紙面と垂直な方向)に沿って取り付けられており、穂切りブレード25は、磁気ローラー21の回転方向(
図2の時計回り方向)において、現像ローラー20と磁気ローラー21との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、穂切りブレード25の先端部と磁気ローラー21の表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0028】
現像ローラー20は、非磁性の現像スリーブ20aと、現像スリーブ20a内に固定された現像ローラー側磁極20bで構成されている。現像ローラー側磁極20bは、固定マグネット体21bの対向する磁極(主極)35と異極性である。
【0029】
現像ローラー20には、直流バイアス(以下、Vslv(DC)という)及び交流バイアス(以下、Vslv(AC)という)を印加する第1バイアス回路30が接続されており、磁気ローラー21には、直流バイアス(以下、Vmag(DC)という)及び交流バイアス(以下、Vmag(AC)という)を印加する第2バイアス回路31が接続されている。また、第1バイアス回路30及び第2バイアス回路31は共通のグランドに接地されている。
【0030】
前述のように、第1攪拌スクリュー43及び第2攪拌スクリュー44によって、現像剤が攪拌されつつ現像容器22内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー44によって現像剤が磁気ローラー21に搬送される。穂切りブレード25には固定マグネット体21bの規制極36が対向するため、穂切りブレード25として非磁性体或いは規制極36と異なる極性の磁性体を用いることにより、穂切りブレード25の先端と回転スリーブ21aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
【0031】
この磁界により、穂切りブレード25と回転スリーブ21aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー21上の磁気ブラシは穂切りブレード25によって層厚規制された後、現像ローラー20に対向する位置に移動すると、固定マグネット体21bの主極35及び現像ローラー側磁極20bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラー20表面に接触する。そして、磁気ローラー21に印加されるVmag(DC)と現像ローラー20に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラー20上にトナー薄層を形成する。
【0032】
現像ローラー20上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラー21と現像ローラー20との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラー20上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
【0033】
図3は、現像ローラー20及び磁気ローラー21に印加されるバイアス波形の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、現像ローラー20には、Vslv(DC)にピークツーピーク値がVpp1である矩形波のVslv(AC)を重畳した合成波形Vslv(実線)が第1バイアス回路30から印加される。また、磁気ローラー21には、Vmag(DC)にピークツーピーク値がVpp2であり、且つVslv(AC)と位相が異なる矩形波のVmag(AC)を重畳した合成波形Vmag(破線)が第2バイアス回路31から印加される。
【0034】
従って、磁気ローラー21及び現像ローラー20間(以下、MS間という)に印加される電圧は、
図3(b)に示すようなVpp(max)とVpp(min)を有する合成波形Vmag−Vslvとなる。なお、Vmag(AC)はVslv(AC)よりもDuty比が大きくなるように設定される。実際には
図3で示すような完全な矩形波ではなく、一部が歪んだ形状の交流バイアスが印加される。
【0035】
磁気ブラシによって現像ローラー20上に形成されたトナー薄層は、現像ローラー20の回転によって感光体ドラム1aと現像ローラー20との対向部分に搬送される。現像ローラー20にはVslv(DC)及びVslv(AC)が印加されているため、感光体ドラム1aとの間の電位差によってトナーが飛翔し、感光体ドラム1a上の静電潜像が現像される。
【0036】
さらに回転スリーブ20aが時計回り方向に回転すると、今度は主極35に隣接する異極性の剥離極38により発生する水平方向(ローラー周方向)の磁界により磁気ブラシは現像ローラー20表面から引き離され、現像に用いられずに残ったトナーが現像ローラー20から回転スリーブ21a上に回収される。さらに回転スリーブ21aが回転すると、固定マグネット体21bの剥離極38及びこれと同極性の汲上極39により反発する磁界が付与されるため、トナーは現像容器22内で回転スリーブ21aから離脱する。そして、第2攪拌スクリュー44により攪拌、搬送された後、再び適正なトナー濃度で均一に帯電された二成分現像剤として汲上極39により再び回転スリーブ21a上に磁気ブラシを形成し、穂切りブレード25へ搬送される。
【0037】
次に、現像装置3aの攪拌部の構成について詳細に説明する。
図4は第1実施形態の現像装置3aの攪拌部を示す平面断面図(
図2のXX′矢視断面図)である。
【0038】
現像容器22には、前述のように、第1搬送室22cと、第2搬送室22dと、仕切壁22bと、上流側連通部22e、及び下流側連通部22fが形成され、その他に、現像剤補給口22gと、現像剤排出口22hと、上流側壁部22i、及び下流側壁部22jが形成されている。なお、第1搬送室22cにおいて、
図4の左側を上流側、
図4の右側を下流側とし、また、第2搬送室22dにおいて、
図4の右側を上流側、
図4の左側を下流側とする。従って、連通部及び側壁部は、第2搬送室22dを基準として、上流及び下流と呼称している。
【0039】
仕切壁22bは、現像容器22の長手方向に延びて第1搬送室22cと第2搬送室22dを並列させるように区画している。仕切壁22bの長手方向の右側端部は、上流側壁部22iの内壁部とともに上流側連通部22eを形成し、一方、仕切壁22bの長手方向の左側端部は、下流側壁部22jの内壁部とともに下流側連通部22fを形成している。そして現像剤は、第1搬送室22cと、上流側連通部22eと、第2搬送室22d、及び下流側連通部22f内を循環することが可能である。
【0040】
現像剤補給口22gは、現像容器22の上部に設けられた現像剤補給容器(図略)から新たなトナー及びキャリアを現像容器22内に補給するための開口であり、第1搬送室22cの上流側(
図4の左側)に配置される。
【0041】
現像剤排出口22hは、現像剤の補給によって、第1及び第2搬送室22c、22d内で余剰となった現像剤を排出するための開口であり、第2搬送室22dの下流側で第2搬送室22dの長手方向に連続して設けられる。
【0042】
第1搬送室22c内には第1攪拌スクリュー43が配設され、第2搬送室22d内には第2攪拌スクリュー44が配設されている。
【0043】
第1攪拌スクリュー43は、回転軸43bと、回転軸43bに一体に設けられ、回転軸43bの軸方向に一定のピッチで螺旋状に形成される第1螺旋羽根43aとを有する。また、第1螺旋羽根43aは、第1搬送室22cの長手方向の両端部側まで延び、上流側及び下流側連通部22e、22fにも対向して設けられている。回転軸43bは現像容器22の上流側壁部22iと下流側壁部22jに回転可能に軸支されている。
【0044】
第2攪拌スクリュー44は、回転軸44bと、回転軸44bに一体に設けられ、回転軸44bの軸方向に第1螺旋羽根43aと同じピッチで第1螺旋羽根43aとは逆方向を向く(逆位相の)羽根で螺旋状に形成される第2螺旋羽根44aとを有する。また、第2螺旋羽根44aは、磁気ローラー21の軸方向長さ以上の長さを有し、更に、上流側連通部22eに対向する位置まで延びて設けられている。回転軸44bは、回転軸43bと平行に配置され、現像容器22の上流側壁部22iと下流側壁部22jに回転可能に軸支されている。
【0045】
また、回転軸44bには、第2螺旋羽根44aとともに、規制部52及び排出羽根53が一体に配設されている。
【0046】
規制部52は、第2搬送室22d内で下流側に搬送された現像剤を塞き止め、且つ、所定量以上になった現像剤を現像剤排出口22hに搬送することを可能にするものである。規制部52は、回転軸44bに設けられる螺旋羽根からなり、第2螺旋羽根44aと逆方向を向く(逆位相の)羽根で螺旋状に形成され、且つ、第2螺旋羽根44aの外径と略同じで第2螺旋羽根44aのピッチより小さく設定されている。また、規制部52は、下流側壁部22j等の現像容器22の内壁部と規制部52の外周部において所定の隙間を形成している。この隙間を通過して余剰の現像剤が現像剤排出口22hに搬送されることになる。
【0047】
回転軸44bは現像剤排出口22h内まで延びている。現像剤排出口22h内の回転軸44bには排出羽根53が設けられている。排出羽根53は、第2螺旋羽根44aと同じ方向を向く螺旋状の羽根からなるが、第2螺旋羽根44aよりピッチが小さく、また羽根の外周が小さくなっている。従って、回転軸44bが回転すると、排出羽根53も回転し、規制部52を乗り越えて現像剤排出口22h内に搬送された余剰現像剤は、
図4の左側に送られて、現像容器22外に排出されるようになっている。なお、排出羽根53、規制部52、及び第2螺旋羽根44aは合成樹脂によって回転軸44bと一体に成型される。
【0048】
現像容器22の外壁には、歯車61〜64が配設されている。歯車61、62は回転軸43bに固着され、歯車64は回転軸44bに固着され、歯車63は、現像容器22に回転可能に保持されて、歯車62、64に噛合している。
【0049】
新たに現像剤を補給していない現像時には、モーター等の駆動源によって、歯車61が回転すると、回転軸43bとともに第1螺旋羽根43aが回転し、第1螺旋羽根43aによって、現像剤は、第1搬送室22c内の現像剤を主搬送方向(矢印P方向)に搬送され、その後、上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送される。更に、回転軸44bと連動する回転軸44bとともに第2螺旋羽根44aが回転すると、第2螺旋羽根44aによって、現像剤は、第2搬送室22d内の現像剤を主搬送方向(矢印Q方向)に搬送される。従って、現像剤はその嵩高を大きく変動させながら第1搬送室22cから上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送され、規制部52を乗り越えることなく、下流側連通部22fを通って第1搬送室22cに搬送される。
【0050】
このように現像剤は、第1搬送室22cから、上流側連通部22e、第2搬送室22d、及び下流側連通部22fと循環しながら攪拌されて、攪拌された現像剤が磁気ローラー21に供給される。
【0051】
次に、現像剤補給口22gから現像剤が補給される場合について説明する。現像によってトナーが消費されると、現像剤補給口22gから第1搬送室22c内にキャリアを含む現像剤が補給される。
【0052】
補給された現像剤は、現像時と同様に、第1螺旋羽根43aによって、第1搬送室22c内を矢印P方向に搬送され、その後、上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送される。更に、第2螺旋羽根44aによって、現像剤は、第2搬送室22d内の現像剤を主搬送方向(矢印Q方向)に搬送される。回転軸44bの回転にともなって規制部52が回転すると、規制部52によって、主搬送方向とは逆方向(逆搬送方向)の搬送力が現像剤に付与される。この規制部52によって現像剤が塞き止められて嵩高となり、余剰の現像剤(現像剤補給口22gから補給された現像剤と同量)が規制部52を乗り越えて、現像剤排出口22hを介して現像容器22外に排出される。
【0053】
図5は、
図4における現像剤排出口22h周辺の拡大図であり、
図6は、第2攪拌スクリュー44に形成される第1環状部55を回転軸44b方向から見た平面図である。
図5に示すように、第2攪拌スクリュー44は、第2螺旋羽根44aと規制部52との間に第1環状部55aが配置されている。第1環状部55aは、回転軸44bを中心とする同心円状の外縁部57と、回転軸44bの外周面から径方向に垂直に突出して回転軸44bと外縁部57とを連結する2本の支持部59とを有し、外縁部57、支持部59、及び回転軸44bで囲まれた欠損部分60が形成される。第1環状部55aは、第2螺旋羽根44a、規制部52、及び排出羽根53と共に合成樹脂によって回転軸44bと一体に成型される。
【0054】
本実施形態の構成によれば、第2螺旋羽根44aと規制部52との間に第1環状部55aを配置することで、第2螺旋羽根44aによって主搬送方向(矢印Q方向)に搬送される現像剤の搬送力が第1環状部55aの外縁部57により塞き止められ、第1環状部55aの上流側に一定量の現像剤が滞留する。これにより、第2攪拌スクリュー44の回転速度(rpm)が変化した場合でも、第1環状部55aの上流側に滞留した現像剤の緩衝効果(バッファー効果)によって、第2螺旋羽根44aから規制部52へ移動する現像剤の搬送速度が第2攪拌スクリュー44の回転速度に依存しないほぼ一定の速度となり、結果的に現像容器22内の現像剤安定量の速度依存性を小さくすることができる。
【0055】
また、第1環状部55aに代えて第2螺旋羽根44aと規制部52との間に円板を配置した場合、第2螺旋羽根44aによって搬送される現像剤が円板の上流側に徐々に滞留し、滞留した現像剤のうち円板の外縁部を乗り越えた分だけが規制部52へ受け渡される。現像剤の搬送速度が比較的遅い場合は規制部52へ受け渡される現像剤量は現像剤の流動性に係わらずほぼ一定であり、現像容器22内の現像剤安定量に差は見られない。
【0056】
しかし、現像剤の流動性が低下した際に搬送速度を速くしていくと、円板の上流側に滞留していた現像剤がある時点を過ぎると崩れてしまい、円板を乗り越える現像剤が急激に増加して多量の現像剤が一度に規制部52に移動する。その結果、規制部52から現像剤排出口22hに移動する現像剤も増加するため、現像剤が過剰に排出されてしまい、現像容器22内の現像剤安定量が低下してしまう。
【0057】
これに対し、本実施形態のように第1環状部55aを配置した場合、第2螺旋羽根44aから第1環状部55aの欠損部分60を通過して規制部52に適度に現像剤の受け渡しが行われるため、多量の現像剤が一度に第1環状部55aを乗り越えて規制部52に移動するのを防止することができる。従って、現像剤中のトナー濃度(T/C)や使用環境の温湿度の変化等により現像剤の流動性が低下した場合であっても、現像剤排出口22hから排出される現像剤量を安定化することができ、現像容器22内の現像剤安定量の速度依存性を小さくすることができる。
【0058】
なお、外縁部57の外径が第2螺旋羽根44aの外径よりも大きい場合、第2螺旋羽根44aによって搬送されてくる現像剤の塞き止め効果が過剰となり、現像剤が規制部52へ移動し難くなる。従って、外縁部57の外径は第2螺旋羽根44aの外径以下であることが好ましい。
【0059】
また、
図6における外縁部57の幅(径方向寸法)W1が大きくなるにつれて現像剤を塞き止める作用も増加するが、外縁部57の幅W1が大きすぎると欠損部分60の面積が小さくなり過ぎて第2螺旋羽根44aと規制部52の間の現像剤の受け渡しが十分に行われない。そのため、外縁部57の幅W1を外縁部57の半径Rの10%〜20%にすることが好ましい。本実施形態では、外縁部57の直径を14mm(R=7mm)、外縁部57の幅W1を1mmとしている。
【0060】
また、支持部59は2本に限らず、3本以上としても良いが、支持部59の本数が多くなるにつれて欠損部分60の面積が小さくなるため、支持部59の本数は少ないほうが好ましい。さらに、第1環状部55aの周方向における現像剤の塞き止め効果のばらつきを小さくするために、支持部59は第1環状部55aの周方向に均等に設けることが好ましい。支持部59の幅W2は欠損部分60を通過する現像剤の妨げとならないように1mm程度が適当である。
【0061】
図7は、本発明の第2実施形態に係る現像装置3aにおける現像剤排出口22h周辺の拡大図である。本実施形態では、第2螺旋羽根44aと規制部52との間に第1環状部55aが配置されておらず、規制部52と排出羽根53との間に第2環状部55bが配置されている。第2環状部55bの構成は
図6に示した第1環状部55aと同様である。また、現像装置3aの他の部分の構成は
図4、
図5に示した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0062】
本実施形態の構成によれば、規制部52と排出羽根53との間に第2環状部55bを配置することで、規制部52を通過して排出羽根53に搬送される現像剤が第2環状部55aの外縁部57により一旦塞き止められる。これにより、規制部52から第2環状部55bを乗り越えて現像剤排出口22hに移動する現像剤量を調整することができ、現像容器22内の現像剤量を調整することができる。
【0063】
また、規制部52から第2環状部55bの欠損部分60を通過して排出羽根53に適度に現像剤の受け渡しが行われるため、第2攪拌スクリュー44の回転速度(rpm)が変化した場合でも、第2環状部55bの上流側に滞留した現像剤の緩衝効果(バッファー効果)によって、規制部52から排出羽根53へ移動する現像剤の搬送速度が第2攪拌スクリュー44の回転速度に依存しないほぼ一定の速度となり、結果的に現像容器22内の現像剤安定量の速度依存性を小さくすることができる。なお、現像容器22内の現像剤安定量の速度依存性を小さくする効果は第1実施形態に比べてやや劣る。
【0064】
図8は、本発明の第3実施形態に係る現像装置3aにおける現像剤排出口22h周辺の拡大図である。本実施形態では、第2螺旋羽根44aと規制部52との間に第1環状部55aを配置するとともに、規制部52と排出羽根53との間に第2環状部55bを配置している。第1環状部55a、第2環状部55bの構成、現像装置3aの他の部分の構成は第1、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0065】
本実施形態の構成によれば、第1環状部55aの上流側に滞留した現像剤の緩衝効果(バッファー効果)によって、第2螺旋羽根44aから規制部52へ移動する現像剤の搬送速度が、第2攪拌スクリュー44の回転速度に依存しないほぼ一定の速度となる。従って、第1、第2実施形態に比べて現像容器22内の現像剤安定量の速度依存性をより効果的に小さくすることができる。
【0066】
また、規制部52と排出羽根53との間に第2環状部55bを配置することで、規制部52を通過して排出羽根53に搬送される現像剤が第2環状部55aの外縁部57により一旦塞き止められる。これにより、規制部52から第2環状部55bを乗り越えて現像剤排出口22hに移動する現像剤量を調整することができ、現像容器22内の現像剤量を調整することができる。即ち、第1、第2実施形態の両方の効果を兼ね備えた現像装置3aとなる。
【0067】
以上述べたような本発明の第1〜第3実施形態の現像装置3a〜3dをプロセス速度の異なる複数種の画像形成装置に搭載することにより、プロセス速度に応じて現像装置3a〜3dの設計や仕様を変更する必要がなくなる。
【0068】
また、搬送される記録媒体の厚みや種類に応じて装置の駆動速度が二段階に切り換えられる画像形成装置においては、例えば、記録媒体が普通紙である場合は通常の駆動速度(以下、全速モードという)で画像形成処理が行われ、記録媒体が厚紙である場合は十分な定着時間を確保して画質を向上させる通常よりも低速(以下、減速モードという)で画像形成処理が行われる。このような画像形成装置では、全速モードから減速モードに切り換えられると現像容器22内の現像剤搬送速度が急激に変化する。そこで、本発明の現像装置3a〜3dを搭載することにより、全速モードと減速モードのいずれにおいても現像容器22内の安定現像剤量をほぼ一定に維持可能となる。
【0069】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明は
図2に示したような磁気ローラー21と現像ローラー20を備えた現像装置に限定されるものではなく、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる種々の現像装置に適用可能である。例えば、上記各実施形態では現像容器22内の現像剤循環経路として、互いに並列配置される第1搬送室22cと第2搬送室22dとを備えた2軸搬送式の現像装置について説明したが、磁気ローラー21から引き剥がされた現像際を回収して第2搬送室22dに合流させる回収搬送室を備えた3軸搬送式の現像装置にも適用可能である。
【0070】
また、上記各実施形態では、回転軸43b、44bの外周面に第1螺旋羽根43b、第2螺旋羽根44bが連続的に設けられた第1搬送スクリュー43、第2搬送スクリュー44を用いているが、現像剤を搬送する搬送羽根は螺旋羽根に限定されず、例えば複数の半月状板体(円形の板を2分割したもの)を、回転軸43b、44bの外周面に所定の傾斜角度で交互に配設した攪拌搬送部材を用いても良い。
【0071】
また、本発明は
図1に示したタンデム式のカラープリンターに限らず、デジタル或いはアナログ方式のモノクロ複写機、モノクロプリンター、カラー複写機、ファクシミリ等、二成分現像方式を用いた種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明する。
【実施例】
【0072】
図1に示すようなカラープリンター100において、現像剤の搬送速度、トナー濃度を変化させた場合の現像装置3a〜3d内の現像剤量の変化について調査した。なお、試験は感光体ドラム1a及び現像装置3aを含むシアンの画像形成部Paにおいて行った。
【0073】
試験方法としては、第2攪拌スクリュー44の回転軸44bに第2螺旋羽根44a、規制部52、排出羽根53を設け、
図5に示したように、第2螺旋羽根44aと規制部52の間に第1環状部55aを配置した第1実施形態の現像装置3aを本発明とした。一方、第1環状部55に代えて第2螺旋羽根44aと規制部52の間に円板を配置した現像装置3aを比較例とした。
【0074】
本発明及び比較例に用いる第2攪拌スクリュー44は、第2螺旋羽根44aが外径14mm、ピッチ30mmの螺旋羽根であり、回転軸44bの直径が6mmであり、第2螺旋羽根44aと第2搬送室22dとの間隔(クリアランス)は1.5mmである。また、規制部52は、外径11mm、ピッチ5mmの2枚の逆巻き(逆位相)の螺旋羽根で構成されており、規制部52と第2搬送室22dとの間隔は3.5mmである。排出羽根53は、外径8mm、ピッチ5mmの螺旋羽根であり、排出羽根53と現像剤排出口22hとの間隔は1.5mmである。
【0075】
本発明に用いる第1環状部55aは、外縁部57の外径が14mm、内径が12mmであり、外縁部75の幅W1は1mm(外縁部57の半径の約14%)である。また、回転軸44bを中心として点対称の位置に2本の支持部59が設けられており、支持部59の幅W2は1mmである。第1環状部55と第2搬送室22dとの間隔は1.5mmである。比較例に用いる円板は、外径14mmであり、円板と第2搬送室22dとの間隔は1.5mmである。
【0076】
本発明及び比較例の現像装置3aの現像容器22に、それぞれ平均粒子径が6.7μmの正帯電性トナーと、フェライトキャリアとから成る二成分現像剤を約280gずつ充填して現像剤を攪拌搬送し、現像剤排出口22hからの現像剤の排出が収まった時点で現像容器22内に存在する現像剤量(安定重量、安定体積)を測定した。
【0077】
現像剤量の測定方法は、本発明及び比較例の現像装置3aを試験機に搭載し、常温常湿(25℃、50%)環境下で第1攪拌スクリュー43及び第2攪拌スクリュー44の回転速度(現像容器22内の現像剤搬送速度)、トナー濃度(T/C)を変化させて現像剤を攪拌した後、現像装置3aを取り外して重量を測定した。測定された現像装置3aの重量から現像剤を取り除いた空の現像装置3aの重量を差し引いて現像剤量(安定重量)を算出した。
【0078】
なお、攪拌速度は231rpm、284rpm、364rpmの3水準、トナー濃度は4%、8%、12%の3水準とした。結果を
図9に示す。
図9中、本発明の現像装置3aにおいてトナー濃度を4%、8%、12%とした場合の結果を、それぞれ△、○、●のデータ系列で示す。また、比較例の現像装置3aにおいてトナー濃度を4%、8%、12%とした場合の結果を、それぞれ×、◇、◆のデータ系列で示す。
【0079】
図9から明らかなように、本発明の現像装置3aと比較例の現像装置3aにおいて第2攪拌スクリュー44の回転速度を変化させたときの現像剤量を比較すると、本発明のほうが比較例に比べてトナー濃度が上下したときの速度依存性が小さくなっている。これは、本発明の構成では第2螺旋羽根44aと規制部52の間に第1環状部55aが存在することにより、第1環状部55aの上流側に滞留する現像剤が欠損部分60を通過して規制部52に適度に移動するため、トナー濃度の変化により現像剤の流動性が変化しても規制部52を乗り越えて現像剤排出口22hから排出される現像剤量を安定化することができるためであると考えられる。
【0080】
一方、第1環状部55aに代えて円板を配置した比較例の現像装置3aでは、円板の上流側に徐々に滞留する現像剤がある時点で崩れてしまい、円板を乗り越える現像剤が急激に増加して多量の現像剤が一度に規制部52に移動し、規制部52から現像剤排出口22hに移動する現像剤も増加するため現像剤が過剰に排出される。その結果、特にトナー濃度の変化により現像剤の流動性が変化したときに現像容器22内の現像剤安定量が低下してしまうためであると考えられる。
【0081】
以上の結果より、第2螺旋羽根44aと規制部52の間に第1環状部55aを配置した本発明の現像装置3aでは、現像剤の攪拌速度、トナー濃度が変化した時の現像剤の安定重量の変動が抑制されるため、攪拌速度、トナー濃度の変動による画像不良の発生や現像剤の劣化を効果的に抑制することができ、特に、攪拌速度が変化した場合の現像剤の安定重量、安定体積の変動が顕著に抑制されることが確認された。なお、ここでは記載しないが、規制部52と排出羽根53の間に第2環状部55bを配置した第2実施形態、第1環状部55aと第2環状部55bの両方を配置した第3実施形態においても同様の効果が得られることが確認されている。