特許第6380295号(P6380295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380295
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】運転者状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/18 20060101AFI20180820BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20180820BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61B5/18
   A61B5/0245 C
   A61B5/05 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-165477(P2015-165477)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-42262(P2017-42262A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】星野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩下 洋平
【審査官】 多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−245357(JP,A)
【文献】 特開2015−104516(JP,A)
【文献】 特開平02−257933(JP,A)
【文献】 特開2009−261419(JP,A)
【文献】 特開2004−024704(JP,A)
【文献】 特開2010−134533(JP,A)
【文献】 特開2009−039167(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0301433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A61B 5/02 − 5/03
B60K 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の皮膚コンダクタンスを検出する皮膚コンダクタンス検出手段と、
運転者の心拍の高周波数成分の大きさを検出する高周波数成分検出手段と、
前記皮膚コンダクタンス検出手段により検出手段された運転者の皮膚コンダクタンスと前記高周波数成分検出手段で検出された高周波数成分の大きさとに基づいて、運転者の心理状態を推定する心理状態推定手段と、
を備え、
前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが大きく増大したときに、該皮膚コンダクタンスが大きく増大した後の前記高周波数成分の大きさに基づいて運転者がひやりとした状態であるか否かを推定する、
ことを特徴とする運転者状態検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが大きくかつ前記高周波数成分が小さいときに、運転者が緊張状態であると推定する、ことを特徴とする運転者状態検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが小さくかつ前記高周波数成分が大きいときに、運転者が漫然状態であると推定する、ことを特徴とする運転者状態検出装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記心理状態推定手段は、前記皮膚コンダクタンスに基づいて運転者が緊張状態または漫然状態であると仮に推定されたことを条件として、前記高周波数成分の大きさに基づいて運転者が緊張状態であるか漫然状態であるかを最終的に推定する、ことを特徴とする運転者状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転負担軽減等のために、各種の運転支援装置が提案されている。この運転支援のために、運転者が現在どのような心理状態にあるのか、特に運転者の緊張度合いを検出することが望まれるものである。とりわけ、運転を安心感をもって行うには、安心感が運転者の余裕と集中度合いの双方が高い状態のときに得られることから、緊張し過ぎたり、あるいはリラックスし過ぎること(緊張が足りないこと)は好ましくないものとなる。
【0003】
特許文献1には、推定された運転者の精神状態(心理状態)に応じて、シート・ハンドル位置や室内照明、空調を可変制御して、精神状態を向上させる運転支援例が多数開示されている。また、特許文献2には、瞳孔径や発汗等を検出して、運転支援制御に反映させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23613号公報
【特許文献2】特開2008−217274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転者の心理状態としての緊張度合いを、皮膚コンダクタンスに基づいて推定することが考えられる。すなわち、運転者が緊張して発汗すると、皮膚コンダクタンスが大きくなる(皮膚抵抗が小さくなる)ことから、この皮膚コンダクタンスの大きさに基づいて緊張度合いを推定することが一応は可能であると考えられる。
【0006】
しかしながら、皮膚コンダクタンスのみで運転者の緊張度合いを推定する場合、余裕があるにもかかわらず、緊張している(緊張し過ぎ)と推定されてしまうような事態が応々にして生じることになる。すなわち、例えばある屈曲路を走行する場合に、運転が不得手な運転者にとっては、緊張しっぱなしの状態で余裕なく運転している状態となって皮膚コンダクタンスが大きくなる状態が継続して発生する一方、ベテランの運転者にあっては、かなり緊張しながらも余裕をもって運転することになる。このように、発生する皮膚コンダクタンスの大きさが同程度であったとしても、その心理状態は実際には大きく相違することになる。これに加えて、運転の上手、下手という要因以外にも、同じ状況下においても皮膚コンダクタンスの発生や変化に個人差があり、したがって緊張していると推定する際のしきい値の設定が難しいものとなる。そして、運転者の緊張度合いの推定を誤ってしまうと、余計な運転支援を行ってしまって、運転者に対して違和感や煩わしさを与えてしまう等の好ましくない事態を生じることになる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、運転者の心理状態、特に運転者の緊張度合をより精度よく推定できるようにした運転者状態検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、皮膚コンダクタンスが、運転者の自律神経のうち興奮や緊張をつかさどる交感神経の活動を図る指標であることから、自律神経のうち安静やリラックスをつかさどる副交感神経の活動を図る指標となる心拍の高周波数成分の大きさをも用いて、運転者の心理状態を推定するようにしてある。
【0009】
具体的には、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
運転者の皮膚コンダクタンスを検出する皮膚コンダクタンス検出手段と、
運転者の心拍の高周波数成分の大きさを検出する高周波数成分検出手段と、
前記皮膚コンダクタンス検出手段により検出手段された運転者の皮膚コンダクタンスと前記高周波数成分検出手段で検出された高周波数成分の大きさとに基づいて、運転者の心理状態を推定する心理状態推定手段と、
を備え、
前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが大きく増大したときに、該皮膚コンダクタンスが大きく増大した後の前記高周波数成分の大きさに基づいて運転者がひやりとした状態であるか否かを推定する、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、運転者の心理状態特に緊張の程度を推定する場合に、交感神経の活動を示す指標となる皮膚コンダクタンスに加えて、副交感神経の活動を示す指標となる心拍の高周波数成分の大きさをも考慮して行うことにより、この推定をより精度よく行うことができる。以上に加えて、皮膚コンダクタンスが増大したときに、ひやりとした状態であるか否か(瞬間的な緊張が発生したか否か)は運転の得手・不得手によっても相違することになるが、この点をも考慮してひやりとした状態であるか否かを精度よく推定することができる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、 前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが大きくかつ前記高周波数成分が小さいときに、運転者が緊張状態であると推定する、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、皮膚コンダクタンスが大きくなって緊張状態であると推定されるような状況でも、例えば運転の得意な運転者においてみられるように、副交感神経も同時にかなり活発に働いているために高周波数成分の大きさがさほど低下していないときは、緊張状態ではなくて運転を楽しんでいるような状況であると考えられ、このような場合に緊張状態であるとあやまって推定してしまう事態を回避でき、緊張状態であると推定する場合の推定精度を高めることができる。
【0012】
前記心理状態推定手段は、皮膚コンダクタンスが小さくかつ前記高周波数成分が大きいときに、運転者が漫然状態であると推定する、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、皮膚コンダクタンスのみからでは単に非緊張状態であると推定される状況において、集中力が低下していている漫然状態であるということを精度よく推定することができる。
【0013】
【0014】
【0015】
前記心理状態推定手段は、前記皮膚コンダクタンスに基づいて運転者が緊張状態または漫然状態であると仮に推定されたことを条件として、前記高周波数成分の大きさに基づいて運転者が緊張状態であるか漫然状態であるかを最終的に推定する、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、皮膚コンダクタンスに基づいて運転者がある心理状態になっていることの可能性が考えられる場合を条件として、高周波数成分の大きさに基づいて最終的な心理状態を推定するので、推定の無駄や制御の簡単化等の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運転者の心理状態をより精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す簡略側面図。
図2】一般道を意識して走行したときのSCL(皮膚コンダクタンス)とHF(心拍の高周波数成分の大きさ)との変化の様子を示す図。
図3】安全を意識して走行したときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図4】楽しさを意識して走行したときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図5】一般道を意識して走行すると共に窓開けしたときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図6】適度な緊張感のときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図7】緊張し過ぎているときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図8】リラックスし過ぎているときのSCLとHFとの変化の様子を示す図。
図9】余裕がないときのSCLの変化の様子を示す図。
図10】ヒヤリとしているときのSCLの変化の様子を示す図。
図11】かなりヒヤリとしているときのSCLの変化の様子を示す図。
図12】車速に合わせた緊張感になっているときのSCLの変化の様子を示す図。
図13】車速に合わずに葛藤しているときのSCLの変化の様子を示す図。
図14】余裕があるときのSCLの変化の様子を示す図。
図15】本発明の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す車両Vにおいて、SSは運転席、Jは運転席SSに着座された運転者である。また、1はステアリングハンドル、2はインストルメントパネル、3はフロントウインドガラスである。
【0019】
ステアリングハンドル1には、運転者Jにおける手指部分の皮膚コンダクタンス(皮膚抵抗の逆数)を計測する抵抗センサ11が埋設されている。また、運転席SSには、運転者Jの心臓に対応する位置において心電計測器12が装備されている。心電計測器12は、例えば静電容量型で、シート埋め込み型心拍計により構成することができる。
【0020】
インストルメントパネル2内には、前記抵抗センサ11および心電計測器12からの信号が入力されるコントローラUが装備されている。このコントローラUは、後述するように、運転者Jの緊張状態を推定して、例えば緊張し過ぎあるいはリラックスし過ぎであると推定した際に、例えば窓開け制御や空調風制御等の車両状態を変更する制御を行う(運転者Jが適度の緊張状態に復帰することを促す運転支援を行う)。
【0021】
次に、被験者(運転者J対応)によって、周回路からなるテストコースにおいて車両Vを走行させた際の実験データについて、図2図5を参照しつつ説明する。まず、図2は、予備走行から開始して、テストコースを3周分走行したデータであり、一般道を走行している意識での運転(最高制限速度は50km/h)を行った場合のものである。予備走行は、一般道を走行している意識での運転を心がけたものである(このことは以下の別の実験においても同じ)。一般道を走行している意識での運転は、運転者の運転意欲および運転負荷共に小さいものとなる。
【0022】
図2の(a)において、実線は皮膚コンダクタンスSCL(μs)であり、SCLが大きいほど交感神経の活動が活発で有ることを示す(大きいほど運転者の緊張度合いが高い)。また、破線は、心拍の高周波数成分値(0.15〜0.45Hzの大きさ)HFを0〜6の複数段階の指標で示すもので、HFが大きいほど副交感神経が活発であることを示す(大きいほど運転者の緊張度合いが低くて、リラックス度合いが強くなる)。
【0023】
図2の(b)は、図2の(a)に示す皮膚コンダクタンスSCLの予備走行および各周での平均値を示す。また、図2の(c)は、図2の(a)に示す高周波数成分値HFの予備走行および各周での平均値を示す。
【0024】
図2のデータから、運転者の運転意欲および運転負荷共に小さいため、運転慣れした3週目には、図2の(c)に示すように高周波数成分値HFの平均値が大きくなって、かなりのリラックス状態へと変化していることが理解される。ただし、このリラックス状態は、運転慣れによって、運転することにあきがきている状態とも言え、集中力低減という意味では好ましくない傾向を示している。ただし、皮膚コンダクタンスSCLのデータからは、上記のような運転にあきがきているということを判断しずらいものとなっている。
【0025】
次に、図3の(a)は、図2の(a)の場合と同様に、予備走行から開始して、テストコースを3周分走行したデータであり、安全を意識して運転した場合のものである(制限速度にしたがった運転)。安全を意識した運転は、運転者の運転意欲および運転負荷共に中程度となる。そして、図3の(b)は、図3の(a)に示す皮膚コンダクタンスSCLの予備走行および各周での平均値を示す。また、図3の(c)は、図3の(a)に示す高周波数成分値HFの予備走行および各周での平均値を示す。
【0026】
図3のデータからすれば、適度の緊張状態が継続しており、特に緊張し過ぎやリラックスし過ぎ、さらには皮膚コンダクタンスSCLが急激に増大するひやりとする運転者状態も検出されていないものとなっている。ただし、図3の(b)のデータからすると、高周波数成分値HFが、予備走行状態から1周目走行へ移行した際に、皮膚コンダクタンスSCLが若干増大しているが、その後の周回走行における平均値にさほど大きな変化がなく、しかも高周波数成分HFが低下する傾向がみられないことから、安定した心理状態で運転が継続されていると判断することができる。
【0027】
図4は、図2の場合と同様に、予備走行から開始して、テストコースを3周分走行したデータであり、楽しさを意識して運転した場合のものである(制限速度にしたがいつつ、自由に運転)。楽しさを意識した運転は、運転者の運転意欲および運転負荷共に大となる。そして、図4の(b)は、図4の(a)に示す皮膚コンダクタンスSCLの予備走行および各周での平均値を示す。また、図4の(c)は、図4の(a)に示す高周波数成分値HFの予備走行および各周での平均値を示す。
【0028】
図4の皮膚コンダクタンスSCLのデータからすると、予備走行から1周目の走行を開始した直後に、皮膚コンダクタンスSCLが急激に大きく増大し、このSCLからだけでは、運転者が「ひやり」という心理状態になったものと推定される。しかしながら、皮膚コンダクタンスSCLが急激に大きくなった直後の高周波数成分値HFは、殆ど変化がなく、運転者は十分に余裕をもって運転を行っているものと判断される。すなわち、運転者は、予備走行という比較的安全運転を行っている状態から、制限速度の範囲内ではあるが自由に楽しく運転する状態へと気持ちの変化が大きく、これが皮膚コンダクタンスSCLを急激に増大させる要因になったものと判断されるが、高周波数成分値HFをみる限り、運転に余裕があり、ひやりとした状態の発生にはつながっていないものと判断される。この図4のデータからしても、皮膚コンダクタンスSCLのみならず、高周波数成分値HFをも加味して運転者の心理状態を推定することにより推定精度を向上させることができる、ということが理解される。
【0029】
ここで、前述した図2図4のデータは全て、車両のウインドガラスを全閉とした状態でのものとなっている。一方、図5は、図2に対応した一般道を意識した運転を行った場合に、運転席側のサイドウインドガラスを、1周目と3周目に開いた窓開けのとき(車両状態の変更制御を行ったとき)のデータを示す。図2と5とを比較すると、窓開けを行うことにより、皮膚コンダクタンスSCL高周波数成分値HF共に、変化が少なく安定しており、高周波数成分値HFの平均値が予備走行から3周目の全てに渡ってほぼ一定の安定した状態となっている(リラックスし過ぎが抑制されて、適度の緊張状態へと移行された)。
【0030】
次に、図14図16を参照しつつ、皮膚コンダクタンスSCLと高周波数成分値HFとに基づいて、運転者(の心理状態)が、適度な緊張状態、緊張し過ぎ状態、リラックスし過ぎ状態となる典型的な例について説明する。まず、図14は、適度な緊張状態のときである。このときは、皮膚コンダクタンスSCLが、適度の大きさでかつ急激な大きな変化が生じていないものとなっている。また、高周波数成分値HFは、全体的に適度な大きさの範囲でもって変化している。
【0031】
次に、皮膚コンダクタンスSCLと高周波数成分値HFとに基づく運転者の心理状態の推定について、図6図8を参照しつつさらに説明する。まず、図6は、適度の緊張状態のときを示し、皮膚コンダクタンスSCLが、中間範囲の大きさ(例えば所定の上限値と下限値との間の範囲にほぼ収まるような変化で)でもってゆるやかに変動しており、しかも高周波数成分値HFも中間範囲でもって安定している。
【0032】
図7は、緊張し過ぎている状態のときを示し、皮膚コンダクタンスSCLが大きな値の範囲でもって変化しており(所定の上限値を超える値が多く出現)、その変化幅も図6の場合に比して大きくなっている。また、高周波数成分値HFは、小さい値の範囲(例えば所定の下限値以下)でもって収束するように変化している。
【0033】
図8は、リラックスし過ぎている状態のときを示し、皮膚コンダクタンスSCLが小さい値の範囲(所定の下限値以下の範囲)でもって殆ど変化しないものとなっている。また、高周波数成分値HFは、大きな値の範囲(所定の上限値以上)でもってかなり大きく変化している。図8の場合、皮膚コンダクタンスSCLのみからすれば、緊張し過ぎていないという状態しか推定できないが、高周波数成分値HFをもみることにより、集中力が低下して運転には好ましくない漫然状態ということを推定することが可能となる。
【0034】
次に、図9図14を参照して、運転者の心理状状態と皮膚コンダクタンスSCLとの関係例について説明する。ただし、高周波数成分値HFを加味した推定ではないため、仮の(可能性が考えられる)推定となる。まず、図9は、皮膚コンダクタンスSCLが適度の大きさ(適度の緊張状態)となっているが、急激に大きくなる状態が連続して発生しており、運転に余裕がない状態という可能性がある場合に対応している(ひやりとなる回数が多い)。
【0035】
図10は、皮膚コンダクタンスSCLが比較的小さい状態(緊張度合いが比較的小さい)ものの、一旦急激に大きくなった後、滑らかに徐々に低下している。このような状態のときも、ひやりとした状態が発生したことの可能性がある場合に対応している。
【0036】
図11は、皮膚コンダクタンスSCLがやや大きい状態で、急激に大きくなった後、急激に元の状態へ復帰している。この場合は、かなりひやりとして状態が発生したことの可能性がある場合に対応している。
【0037】
図12は、車速に応じた皮膚コンダクタンスSCLの相違を示すものである。すなわち、図12の(a)のデータが、車速が大きいときを示し、皮膚コンダクタンスSCLが細かく変動している。また、図2の(b)のデータが、車速が小さいときを示し、皮膚コンダクタンスSCLが滑らかに大きな変動するものとなっている。そして、図13は、運転者の心理状態と車速とが合っていないときの状態であり、車速が遅いにもかかわらず皮膚コンダクタンスSCLの波形が乱れたものとなっている(運転者が葛藤している可能性がある場合に対応)。
【0038】
図14は、余裕がある状態であり、皮膚コンダクタンスSCLが適度の大きさで、しかも急激に大きく立ち上がる波形が殆どないものとなっている。
【0039】
図9図14の説明から理解されるように、皮膚コンダクタンスSCLのみに基づいても、運転者の心理状態としての緊張の程度をかなり精度よく推定することは可能である。しかしながら、既述のように、高周波数成分値HFを加味して心理状態を推定することにより、推定精度をより向上させることが可能となり、また皮膚コンダクタンスSCLのみからでは判断できない心理状態(例えば漫然状態)を推定することも可能となる。
【0040】
次に、皮膚コンダクタンスSCLと高周波数成分値HFとに基づいて運転者の心理状態を推定して、その推定結果に基づいて車両状態を変更制御するようにした制御例について、図15のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップであり、またこの制御例は図1に示すコントローラUによって実行されるものである。
【0041】
まず、Q1において、皮膚コンダクタンスSCLと高周波数成分値HFの入力処理が行われる。この入力処理は、各センサ11、12からの信号を読み込んで、現時点での皮膚コンダクタンスSCLと高周波数成分値HFとを入手、記憶すると共に、所定周期毎(例えば30秒〜1分等の周期毎)にその平均値を演算して記憶しておく処理となる(移動平均値を求める処理)。
【0042】
Q2では、SCLが急激に大きくなるような変化が生じたか否かが判別される。このQ2の判別でYESのときは、運転者がひやりとした状態(瞬間的な大きな緊張状態)が発生した可能性があるときであり、このときはQ3において、SCLが増大変化された直後においてHFが低下している状態であるか否かが判別される。このQ3の判別でYESのときは、Q4において、ひやり状態発生と仮に推定されると共に、推定された回数がカウウントアップされる。なお、カウウントアップされる回数は、所定周期(例えば10秒〜30秒)内での回数とされる。この後、Q5において、Q4でのひやり状態が上記所定周期内において所定回数(例えば3回)以上発生したか否かが判別される。このQ5の判別でYESのときは、Q6において、ひやり状態が頻発していると最終的に推定される。なお、Q5の処理は、単発的なひやり状態の発生は、運転支援を特に必要としないということから設定したものでる。
【0043】
前記Q2の判別でNOのとき、Q3の判別でNOのとき、あるいはQ5の判別でNOのときは、それぞれ、Q7に移行される。このQ7では、SCLが所定の上限値以上となる状態が所定時間(例えば5秒〜20秒)以上継続しているか否かが判別される。このQ7の判別でYESのときは、Q8において、高周波数成分値HFが小さい状態(下限値以下の状態)が継続(例えば5秒〜20秒)しているか否かが判別される。このQ8の判別でYESのときは、Q10において、運転者が緊張状態(緊張し過ぎの状態)であると推定される。すなわち、交感神経が活発に活動している一方(Q7の判別でYES)、副交感神経の活動が活発でない(Q8の判別でYES)ということから、最終的にQ10での推定が精度のよいものとなる。
【0044】
前記Q7の判別でNOのとき、あるいはQ8の判別でNOのときは、それぞれ、Q11に移行される。このQ11では、SCLが小さい状態(所定の下限値以下の状態)が所定時間(例えば5秒〜20秒)以上継続しているか否かが判別される。このQ11の判別でYESのときは、Q12において、高周波数成分値HFが大きい状態(所定の上限値以上の状態)が所定時間(例えば5秒〜20秒)継続しているか否かが判別される。このQ12の判別でYESのときは、Q13において、運転者が漫然状態(緊張が足りないリラックスし過ぎの状態)であると推定される。すなわち、交感神経の活動が活発でない一方(Q11の判別でYES)、副交感神経の活動が活発である(Q12の判別でYES)ということから、最終的にQ13での推定が精度のよいものとなる。
【0045】
前記Q11の判別でNOのとき、あるいはQ12の判別でNOのときは、それぞれ、Q14に移行される。このQ14では、SCLの所定周期毎の平均値の変化が小さいか否かが判別される。このQ14の判別でYESのときは、Q15において、高周波数成分値HFの平均値が大きくなる状態へ変化しているか否かが判別される。このQ15の判別でYESのときは、Q13に移行される。なお、Q15からQ13へ移行するときの運転者状態は、漫然状態であっても運転にあきがきている状態と考えることができる。
【0046】
前記Q14の判別でNOのとき、あるいはQ15の判別でNOのときは、それぞれ、Q1へリターンされる。すなわち、適度の緊張状態(適度のリラックス状態)であり、集中してかつ余裕をもって運転している好ましい状態であると考えられる。
【0047】
前記Q6の後、Q10の後あるいはQ13の後は、推定された運転者状態に応じて、車両状態が変更制御されて、運転者が適度の緊張状態かつ適度のリラックス状態となるようにされる。Q16での処理は、具体的には、運転者が緊張状態のときは、例えば、ウインドガラスを明けて走行風を取り入れたり、空調風の温度低下や風量増大を行ったり、車線維持等の運転支援の度合いを高めたり、休憩を促すことや車速を低下させることを促す旨の報知(ディスプレイによる表示や音声報知)を行う等が実行される。
【0048】
また、Q16での処理は、Q6から移行されたとき(ひやり状態の頻発)は、運転技量を超えるような運転を行っていることから、Q16では、例えばアクセルペダルの反力増大させることやブレーキペダルの反力を小さくすることにより車速低下を促したり、ハンドルの操舵補助力を増大させたり、スピード出し過ぎの警報(表示または音声の少なくとも一方)を行う等が実行される。
【0049】
さらに、Q16での処理は、Q13から移行されたとき(漫然状態のとき)は、ウインドガラスの開閉を繰り返したり(走行風の取り入れと遮断)、空調風の風量を可変制御したり、エンジン音を擬似的に増大させたり(スピーカの利用)、ハンドルやアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルの反力を高めたり、室内照明の点灯と消灯を繰り返したり、ステアリングハンドル1やシートSSを微振動させたり、もっと運転に集中することを促す旨の報知を行う等のことが実行される。
【0050】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。推定された心理状態に応じた車両状態の変更制御は、前述した他適宜の手法を種々採択できるものである。
心理状態の推定に際しては、まず皮膚コンダクタンスのみに基づいて仮に緊張状態であるのか漫然状態であるのかを仮に推定し、緊張状態またはあ漫然状態であると仮に推定されたことを条件として、高周波数成分値HFに基づいて最終的な心理状態を推定するようにしてもよい。皮膚コンダクタンスSCLとして皮膚抵抗値そのものを用いるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、運転者の心理状態を精度よく推定して、例えば適切な心理状態へと復帰するように車両状態を変更制御する等の上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0052】
V:車両
J:運転者
U:コントローラ
SS:運転席シート
1:ステアリングハンドル
11:抵抗センサ(皮膚コンダクタンスSCLの検出用)
12:心電計測器(高周波数成分値HFの検出用)
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