(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
感光体の表面の潤滑性を向上するためにトナーを過剰に供給してしまうと、トナーに含まれる研磨剤がブレードをすり抜ける量が多くなり、感光体の表面に付着して、感光体を汚染してしまうこととなる。また、放電生成物の発生についても、できるだけ効率的に抑制することが望ましい。したがって、画像形成装置において画質の向上を図るためには、より正確な画像形成条件の設定が必要となる。すなわち、ブレードの負荷の軽減をより適切に行うためには、実際の感光体の表面粗さに合わせて、適切な帯電バイアス電圧値を設定したり、潤滑剤としてのトナーの供給のタイミングを設定する必要がある。
【0009】
ここで、画像形成装置の使用状況毎に、厳密に感光体の表面粗さを測定することは困難である。したがって、昨今は、画像形成装置の耐久枚数、すなわち、現在までに形成した画像形成の枚数や駆動時間の総計から推測して、感光体の表面粗さの値に換算している。しかし、実際の表面粗さとは異なる表面粗さの設定で画像形成条件を設定することとなるため、精度よく画質の向上が図れないこととなる。上記した特許文献1に開示の技術では、対応することができない。
【0010】
この発明の目的は、画質を向上させた画像形成装置を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、精度よく画像形成装置用感光体の表面粗さを検出することができる画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、耐久に伴う感光体の表面の平滑化のメカニズムについて、鋭意検討した。そして、感光体の表面粗さが小さくなるに従い、感光体の動摩擦係数が大きくなることに着目し、さらには、形成する画像の位置のずれと感光体の動摩擦係数との間に相関関係があることに着目した。そして、感光体に印加される交流の帯電バイアスが大きくなると、形成する画像の位置のずれの差が顕著になることを見出し、本願発明を構成するに至った。
【0013】
すなわち、この発明の一の局面においては、画像形成装置は、感光体と、露光部と、帯電バイアス印加部と、
複数の現像装置と、中間転写体と、二次転写ローラーと、トナー濃度検出部と、第一のパッチ画像形成部と、
第一のパッチ画像色ずれ量検出部と、第二のパッチ画像形成部と、
第二のパッチ画像色ずれ量検出部と、差分算出部と、表面粗さ導出部と、画像形成条件設定部とを備える。
感光体は、各色に対応して複数設けられる。露光部は、
各感光体の表面に静電潜像を形成する際に
各感光体に露光する。帯電バイアス印加部は、静電潜像を形成する際に
各感光体に交流の帯電バイアスを印加する。
複数の現像装置は、
各感光体上に形成された静電潜像に
各色のトナーを供給してトナーによる可視画像を形成する。中間転写体は、
各現像装置によって形成された可視画像を一次転写される。二次転写ローラーは、中間転写体上に一次転写された可視画像を用紙に二次転写する。トナー濃度検出部は、中間転写体上に一次転写された画像のトナー濃度を検出する。第一のパッチ画像形成部は、帯電バイアス印加部により第一の帯電バイアスを感光体に印加してトナーの濃度を調整するための
各色の第一のパッチ画像を形成する。
第一のパッチ画像色ずれ量検出部は、トナー濃度検出部により、第一のパッチ画像形成部により形成された各色の第一のパッチ画像の、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量を検出する。第二のパッチ画像形成部は、帯電バイアス印加部により第一の帯電バイアスよりも大きい第二の帯電バイアスを感光体に印加してトナーの濃度を調整するための
各色の第二のパッチ画像を
色毎にそれぞれ別途形成する。
第二のパッチ画像色ずれ量検出部は、トナー濃度検出部により、第二のパッチ画像形成部により形成された各色の第二のパッチ画像の、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量を検出する。差分算出部は、
第一のパッチ画像色ずれ量検出部により検出された
各色の第一のパッチ画像の色ずれ量と、第二のパッチ画像色ずれ量検出部により検出された
各色の第二のパッチ画像の色ずれ量との差分を算出する。表面粗さ導出部は、差分算出部により算出された差分に基づいて、感光体の表面粗さを導出する。画像形成条件設定部は、表面粗さ導出部により導出された感光体の表面粗さを基に、画像形成条件を設定する。
【0014】
この発明の他の局面においては、
各色に対応して複数設けられる画像形成装置用感光体と、
各画像形成装置用感光体の表面に静電潜像を形成する際に
各画像形成装置用感光体に露光する露光部と、
各画像形成装置用感光体上に形成された静電潜像に
各色のトナーを供給してトナーによる可視画像を形成する
複数の現像装置と、
各現像装置によって形成された可視画像を一次転写される中間転写体と、中間転写体上に一次転写された可視画像を用紙に二次転写する二次転写ローラーと、中間転写体上に一次転写された画像のトナー濃度を検出するトナー濃度検出部とを備える画像形成装置に備えられる
画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法であって、第一の帯電バイアスを
各画像形成装置用感光体に印加してトナーの濃度を調整するための
各色の第一のパッチ画像を形成する工程と、
形成された各色の第一のパッチ画像の、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量を検出する工程と、第一の帯電バイアスよりも大きい第二の帯電バイアスを
各画像形成装置用感光体に印加してトナーの濃度を調整するための
各色の第二のパッチ画像を
色毎にそれぞれ別途形成する工程と、
形成された第二のパッチ画像の、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量を検出する工程と、検出された
各色の第一のパッチ画像の色ずれ量と、検出された
各色の第二のパッチ画像の色ずれ量との差分を算出する工程と、算出された差分に基づいて、
各画像形成装置用感光体の表面粗さを導出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0015】
このような画像形成装置によると、導出される感光体の表面粗さの精度が高いため、より正確に画像形成条件を設定することができる。したがって、画質の向上を図ることができる。
【0016】
また、このような画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法によると、導出される感光体の表面粗さの精度を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置を複合機に適用した場合の複合機11を示す図である。
図2は、
図1に示す複合機11の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1および
図2を参照して、複合機11は、制御部12と、操作部13と、画像読み取り部14と、画像形成部15と、用紙セット部19と、排出トレイ30と、記憶部としてのハードディスク16と、ファクシミリ通信部17と、ネットワーク25と接続するためのネットワークインターフェース部18とを備える。
【0020】
制御部12は、複合機11全体の制御を行う。操作部13は、複合機11側から発信する情報やユーザーの入力内容を表示する表示画面21を含む。操作部13は、印刷部数や階調等の画像形成の条件や電源のオンまたはオフを入力させる。画像読み取り部14は、セット位置にセットされた原稿を読み取り位置に搬送する原稿搬送装置としてのADF(Auto Document Feeder)22を含む。画像読み取り部14は、ADF22または不図示の載置台上にセットされた原稿の画像を読み取る。用紙セット部19は、手差しで用紙をセットする手差しトレイ28やサイズの異なる複数枚の用紙を収納可能な給紙カセット群29を含む。画像形成部15は、画像読み取り部14により読み取られた画像データやネットワーク25を介して送信された画像データを基に、搬送されてきた用紙に画像を形成する。画像形成部15により画像を形成された用紙は、排出トレイ30に排出される。ハードディスク16には、受信した画像データや入力された画像形成条件のデータ等が記憶される。ファクシミリ通信部17は、公衆回線24に接続されており、ファクシミリ送信やファクシミリ受信を行う。
【0021】
なお、複合機11は、画像データの書き出しや読み出しを行うDRAM(Dynamic Random Access Memory)等を備えるが、これらについては、図示および説明を省略する。また、
図2中の矢印は、制御信号や制御、画像に関するデータの流れを示している。なお、
図1に示すように、この実施形態においては、給紙カセット群29は、3つの給紙カセット23a、23b、23cから構成されている。
【0022】
複合機11は、画像読み取り部14により読み取られた原稿の画像データを用いて画像形成部15において画像を形成することにより、複写機として作動する。また、複合機11は、ネットワークインターフェース部18を通じて、ネットワーク25に接続されたコンピューター26a、26b、26cから送信された画像データを用いて、画像形成部15において画像を形成して用紙に印刷することにより、プリンターとして作動する。すなわち、画像形成部15は、要求された画像を印刷する印刷部として作動する。複合機11は、ファクシミリ通信部17を通じて、公衆回線24から送信された画像データを用いて、DRAMを介して画像形成部15において画像を形成することにより、また、画像読み取り部14により読み取られた原稿の画像データを、ファクシミリ通信部17を通じて公衆回線24に画像データを送信することにより、ファクシミリ装置として作動する。複合機11は、画像処理に関し、複写機能、プリンター機能、ファクシミリ機能等、複数の機能を有する。さらに、各機能に対しても、詳細に設定可能な機能を有する。
【0023】
この発明の一実施形態に係る複合機11を含む画像形成システム27は、上記した構成の複合機11と、ネットワーク25を介して複合機11に接続される複数のコンピューター26a、26b、26cとを備える。この実施形態においては、複数のコンピューター26a〜26cについては、3台示している。各コンピューター26a〜26cはそれぞれ、複合機11に対して、ネットワーク25を介して印刷要求を行って印刷をすることができる。
【0024】
次に、複合機11に備えられる画像形成部15の構成について、さらに詳細に説明する。
図3は、複合機11に備えられる画像形成部15を示す図である。
【0025】
図1〜
図3を参照して、画像形成部15は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各4色にそれぞれ対応する第一の作像ユニット41a、第二の作像ユニット41b、第三の作像ユニット41c、および第四の作像ユニット41dを含む作像器31と、露光部としてのLSU(Laser Scanner Unit)32と、中間転写体としての転写ベルト33と、各作像ユニット41a〜41dに対応して設けられる四つの一次転写ローラー34a、34b、34c、34dを含む一次転写ユニット35と、二次転写ローラー36と、現像バイアス印加部37と、帯電バイアス印加部38とを備える。LSU32については、一点鎖線で概略的に示している。なお、複合機11は、いわゆる四連タンデム形式の画像形成部15を備えることとなる。
【0026】
イエローの可視画像を形成する第一の作像ユニット41aは、その表面に静電潜像が形成される第一の感光体42a、第一の感光体42aにイエローの現像剤を供給する第一の現像ローラー43a、第一の感光体42aを帯電させる第一の帯電ローラー44a、および第一の感光体42aをクリーニングする第一のクリーニング部45aを含む。マゼンタの可視画像を形成する第二の作像ユニット41bは、その表面に静電潜像が形成される第二の感光体42b、第二の感光体42bにマゼンタの現像剤を供給する第二の現像ローラー43b、第二の感光体42bを帯電させる第二の帯電ローラー44b、および第二の感光体42bをクリーニングする第二のクリーニング部45bを含む。シアンの可視画像を形成する第三の作像ユニット41cは、その表面に静電潜像が形成される第三の感光体42c、第三の感光体42cにシアンの現像剤を供給する第三の現像ローラー43c、第三の感光体42cを帯電させる第三の帯電ローラー44c、および第三の感光体42cをクリーニングする第三のクリーニング部45cを含む。ブラックの可視画像を形成する第四の作像ユニット41dは、その表面に静電潜像が形成される第四の感光体42d、第四の感光体42dにブラックの現像剤を供給する第四の現像ローラー43d、第四の感光体42dを帯電させる第四の帯電ローラー44d、および第四の感光体42dをクリーニングする第四のクリーニング部45dを含む。なお、各クリーニング部45a〜45dには、いずれも図示しないクリーニングブレードおよび感光体42a〜42dの表面を研磨する研磨ローラーが含まれている。また、供給される現像剤に含まれるトナー中には、外添剤として、酸化チタン(TiO
2)が含まれている。この酸化チタンについては、金属粒子であり、感光体42a〜42dを研磨する研磨粒子でもある。なお、感光体42a〜42dの初期の表面粗さRaとしては、20nm〜50nmのものが好適に用いられる。
【0027】
現像バイアス印加部37は、第一〜第四の現像ローラー43a〜43dに、それぞれ現像バイアス電圧を印加する。帯電バイアス印加部38は、第一〜第四の帯電ローラー44a〜44dに、それぞれ帯電バイアス電圧を印加する。ここで、帯電バイアス印加部38は、第一〜第四の帯電ローラー44a〜44dに、帯電バイアスとして、DC(Direct Current(直流))電圧にAC(Alternating Current(交流))電圧を重畳したものを印加する。
【0028】
第一〜第四の作像ユニット41a〜41dは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に、
図3中の矢印D
1の方向で示す転写ベルト33の回転方向の上流側から配置されている。すなわち、上流側から第一の作像ユニット41a、第二の作像ユニット41b、第三の作像ユニット41c、第四の作像ユニット41dの順に配置されている。最下流側に第四の作像ユニット41dが配置される。
【0029】
第一〜第四の帯電ローラー44a〜44dはそれぞれ、第一〜第四の感光体42a〜42dを所定の電位に帯電させる。LSU32は、画像読み取り部14によって読み取った画像を基に、第一〜第四の感光体42a〜42dに対して、各色の成分の光に応じて露光する。露光された各色の成分の光を基に、第一〜第四の感光体42a〜42d上にそれぞれ静電潜像が形成される。第一〜第四の感光体42a〜42d上に形成された静電潜像に第一〜第四の現像ローラー43a〜43dからそれぞれ各色の現像剤、具体的には、トナーが供給される。各色のトナーが第一〜第四の感光体42a〜42d上にそれぞれ供給されて、第一〜第四の感光体42a〜42d上にそれぞれ各色のトナーによる可視画像を形成される。このようにして第一〜第四の感光体42a〜42d上に形成されたトナーによる可視画像は、転写ベルト33に一次転写される。
【0030】
転写ベルト33は、無端状である。転写ベルト33は、駆動ローラー46a、および従動ローラー46bによって一方向に回転する。転写ベルト33の回転方向は、
図3中の矢印D
1で示される。すなわち、転写ベルト33の回転方向については、第一〜第四の感光体42a〜42dが設けられている下方領域においては、左側から右側に向かう方向、その逆の上方領域においては、右側から左側に向かう方向である。
【0031】
四つの一次転写ローラー34a〜34dはそれぞれ、転写ベルト33を介して各色の感光体42a〜42dに対向する位置に配置される。一次転写ユニット35によって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の第一〜第四の作像ユニット41a〜41dにより形成されたトナーによる可視画像が転写ベルト33に一次転写される。具体的には、一次転写ローラー34a〜34dのそれぞれに一次転写バイアスが印加されることによって、第一〜第四の作像ユニット41a〜41dにより形成されたトナーによる可視画像が、転写ベルト33の表面に一次転写される。この時に、各色の画像が転写ベルト33に重ねられて、転写ベルト33上にフルカラーの画像が形成される。
【0032】
二次転写ローラー36は、転写ベルト33を介して、従動ローラー46bと対向する位置に設けられる。画像形成部15は、二次転写ローラー36と転写ベルト33の表面とが当接する位置に記録媒体としての用紙を搬送するための用紙搬送路47aを備える。また、画像形成部15は、二次転写された用紙を不図示の定着ユニット側へ搬送するための用紙搬送路47bを備える。給紙カセット23a〜23cが位置する上流側となる用紙搬送路47aから、二次転写ローラー36と転写ベルト33の表面とが当接する位置に用紙が供給される。用紙の搬送のタイミングに合わせて、二次転写ローラー36へのトナーと逆の極性の二次転写バイアスが印加される。二次転写ローラー36への二次転写バイアスの印加により、転写ベルト33の表面上に形成されたトナーによる可視画像が、供給された用紙側に電気的に引き寄せられ、用紙に二次転写される。トナーによる可視画像が転写された用紙は、用紙搬送路47bを利用して図示しない定着ユニットまで搬送される。
【0033】
次に、トナー濃度検出部としてのトナー濃度検出センサー51の構成について説明する。複合機11は、転写ベルト33上に一次転写されたトナーによる可視画像のうちのトナー濃度を検出するトナー濃度検出センサー51を備える。
【0034】
図4は、トナー濃度検出センサー51の構成を示す概略図である。なお、
図3においては、トナー濃度検出センサー51は、二点鎖線で概略的に示している。
【0035】
図1〜
図4を参照して、トナー濃度検出センサー51は、転写ベルト33の回転方向において、ブラックの作像ユニット41dの下流側に配置されている。トナー濃度検出センサー51は、転写ベルト33の表面48側に光を照射する発光素子52aと、転写ベルト33の表面48側から反射された反射光を受光する受光素子52bと、受光素子52bによって受光した反射光の光量からトナー量を算出するトナー濃度算出部(図示せず)とを備える。この実施形態においては、発光素子52aと受光素子52bとは、転写ベルト33の表面48に垂直な方向に延びる平面54に対して、対称の位置となるように設置されている。すなわち、受光素子52bは、発光素子52aによって発光された光に対して正反射光を受光する位置に設けられている。発光素子52aの一例として、具体的には、赤外光を照射する赤外発光ダイオードが採用される。また、受光素子52bの一例として、具体的には、赤外受光素子が採用される。
【0036】
発光素子52aは、転写ベルト33の表面48またはトナーによる可視画像49に向かって、
図4中の矢印E
1で示す左斜め上方向に赤外光といった光53aを照射する。トナーによる可視画像49が形成されていない場合には、発光素子52aは、転写ベルト33の表面48に向かって光53aを照射することになる。
【0037】
受光素子52bは、
図4中の矢印E
2で示す左斜め下方向に向かうトナーによる可視画像49からの反射光53bおよび転写ベルト33の表面48からの反射光53bのいずれか一方か、またはトナーによる可視画像49と転写ベルト33の表面48との双方からの反射光53bを受光する。トナーによる可視画像49が転写ベルト33の表面48を完全に覆っていれば、トナーによる可視画像49からの反射光53bのみを受光する。トナーによる可視画像49が転写ベルト33の表面48上に形成されていなければ、転写ベルト33の表面48からの反射光53bのみを受光する。トナーによる可視画像49が転写ベルト33の表面48を完全に覆っておらず、トナーによる可視画像49のトナー量が少なければ、トナーによる可視画像49と転写ベルト33の表面48との双方からの反射光53bを受光する。
【0038】
トナー濃度検出センサー51は、その表面48にトナーによる可視画像49が形成された転写ベルト33に対して、
図4中の矢印E
1で示す方向に光53aを照射する。光53aは、トナーによる可視画像49および転写ベルト33の表面48のいずれか一方か、またはトナーによる可視画像49と転写ベルト33の表面48との双方に当たって反射する。反射された反射光53bは、受光素子52bによって受光される。受光素子52bは、受光した光の光量に応じた電流をそれぞれ出力する。トナー濃度算出部は、受光素子52bによって出力された電流を電圧値に変換する。そして、この電圧値に基づいてトナー濃度を算出する。このようにして、トナー濃度検出センサー51は、トナー濃度を検出する。
【0039】
次に、制御部12の構成について説明する。
図5は、制御部12の構成を示すブロック図である。
図5を参照して、制御部12は、第一のパッチ画像形成部61と、
第一のパッチ画像色ずれ量検出部62と、第二のパッチ画像形成部63と、
第二のパッチ画像色ずれ量検出部64と、差分算出部65と、表面粗さ導出部66と、画像形成条件設定部67とを備える。
【0040】
第一のパッチ画像形成部61は、上記した画像形成部15を用いて、帯電バイアス印加部38により第一の帯電バイアスを感光体42a〜42dに印加してトナーの濃度を調整するための第一のパッチ画像を形成する。第一のパッチ画像および後述する第二のパッチ画像は、それぞれの作像ユニット41a〜41dにおいて、各色で形成される。第一のパッチ画像および後述する第二のパッチ画像の形状は、例えば、矩形状である。第一のパッチ画像形成部61は、感光体42a〜42dの回転方向に間隔を開けて複数のトナーの濃度を調整するための第一のパッチ画像を感光体42a〜42d上に形成する。そして、形成された各第一のパッチ画像はそれぞれ、転写ベルト33に一次転写される。
【0041】
第一のパッチ画像色ずれ量検出部62は、トナー濃度検出センサー51により、第一のパッチ画像形成部61により形成された第一のパッチ画像の
色ずれ量を検出する。この場合、トナー濃度検出センサー51により、転写ベルト33上のトナーの有無を検出したタイミングにより、第一のパッチ画像の
色ずれ量を検出する。具体的には、ブラックの第一のパッチ画像が形成された位置を基準の位置として、イエローの第一のパッチ画像、マゼンタの第一のパッチ画像、およびシアンの第一のパッチ画像の位置が、それぞれどの程度ずれているか否かを検出することにより、それぞれの第一のパッチ画像の
色ずれ量を検出する。なお、第一のパッチ画像および後述する第二のパッチ画像は、トナー濃度の調整のために形成されるものである。したがって、転写ベルト33上に一次転写され、トナー濃度検出センサー51によってトナー濃度が検出された後は、用紙に転写されることなく図示しない転写ベルトクリーニングブレード等によって除去される。
【0042】
第二のパッチ画像形成部63は、帯電バイアス印加部38により第一の帯電バイアスよりも大きい第二の帯電バイアスを感光体42a〜42dに印加してトナーの濃度を調整するための第二のパッチ画像を形成する。第二のパッチ画像形成部63は、第一のパッチ画像形成部61の作動後に行われる。
【0043】
第二のパッチ画像色ずれ量検出部64は、トナー濃度検出センサー51により、第二のパッチ画像形成部63により形成された第二のパッチ画像の
色ずれ量を検出する。この場合、トナー濃度検出センサー51により、
第一のパッチ画像色ずれ量検出部62と同様に、転写ベルト33上のトナーの有無を検出したタイミングにより、第二のパッチ画像の
色ずれ量を検出する。
【0044】
差分算出部65は、
第一のパッチ画像色ずれ量検出部62により検出された第一のパッチ画像の
色ずれ量と
第二のパッチ画像色ずれ量検出部64により検出された第二のパッチ画像の
色ずれ量との差分を算出する。差分の算出については、例えば、いわゆる色ずれ量の差を差分として画素数で算出する。
【0045】
表面粗さ導出部66は、差分算出部65により算出された差分に基づいて、感光体42a〜42dの表面粗さを導出する。感光体42a〜42dの表面粗さの導出については、後に詳述する。画像形成条件設定部67は、表面粗さ導出部66により導出された感光体42a〜42dの表面粗さを基に、画像形成条件を設定する。画像形成条件については、例えば、所定のタイミングで、潤滑剤としてのトナーを供給するタイミングや量についての条件、耐久後の帯電バイアス電圧値の設定等を含むものである。
【0046】
次に、この発明の一実施形態に係る複合機11を用いて、感光体42a〜42dの表面粗さを導出する際の処理の内容について説明する。
図6は、この発明の一実施形態に係る複合機11を用いて、感光体42a〜42dの表面粗さを導出する場合の処理の内容を示すフローチャートである。
【0047】
図6を参照して、まず、トナー濃度を調整する所定のタイミングに達したと判断すれば(
図6において、ステップS11において、YES、以下、「ステップ」を省略する)、第一のパッチ画像を形成する(S12)。このタイミングとしては、具体的には、例えば、印字枚数や画像形成の枚数が所定の枚数に達したタイミングや、複合機11の駆動時間の総計が、所定の駆動時間に達したタイミングである。この場合、第一のパッチ画像形成部61によって、第一の帯電バイアス電圧で印加された感光体42a〜42dの表面上にLSU32から露光し、それぞれの色において第一のパッチ画像を形成する。この工程は、第一の帯電バイアスを感光体42a〜42dに印加してトナーの濃度を調整するための第一のパッチ画像を形成する工程である。具体的な第一の帯電バイアスとしては、例えば、DC電圧にAC電圧を重畳した振動電圧であり、そのVpp(peak to peak)の値として、1.0kVが挙げられる。
【0048】
そして、形成されたそれぞれの色の第一のパッチ画像の
色ずれ量を、トナー濃度検出センサー51によって検出する(S13)。この工程は、形成された第一のパッチ画像の
色ずれ量を検出する工程である。この場合、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量として検出する。そして、検出された第一のパッチ画像の
色ずれ量のデータとしてハードディスク16に記憶する(S14)。
【0049】
次に、形成された第一のパッチ画像を転写ベルト33上から除去し、第二のパッチ画像を形成する(S15)。この場合、第一の帯電バイアスよりも高い第二の帯電バイアスを感光体42a〜42dに印加して、第二のパッチ画像を形成する。ここで、第二のパッチ画像については、色毎にそれぞれ別途形成する。すなわち、第一のパッチ画像の形成とは異なり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎に別途、第二のパッチ画像を形成する。この工程は、第一の帯電バイアスよりも大きい第二の帯電バイアスを感光体42a〜42dに印加してトナーの濃度を調整するための第二のパッチ画像を形成する工程である。具体的な第二の帯電バイアスとしては、例えば、DC電圧にAC電圧を重畳した振動電圧であり、そのVppの値として、1.2kVが挙げられる。
【0050】
そして、形成された第二のパッチ画像の
色ずれ量を、トナー濃度検出センサー51によって検出する(S16)。この工程は、形成された第二のパッチ画像の
色ずれ量を検出する工程である。この場合も、ある基準のパッチ画像に対して、そのパッチ画像からどの程度ずれたかという色ずれ量として検出する。そして、検出された第二のパッチ画像の
色ずれ量のデータとしてハードディスク16に記憶する(S17)。
【0051】
次に、差分を算出する(S18)。具体的には、記憶された色ずれ量同士の差を画素数として算出する。この工程は、検出された第一のパッチ画像の
色ずれ量と検出された第二のパッチ画像の
色ずれ量との差分を算出する工程である。
【0052】
そして、全ての色について、算出された差分に基づいて、感光体42a〜42dの表面粗さを導出する(S19、さらにS20において、YES)。
【0053】
その後、導出された感光体42dの表面粗さを基に、画像形成条件設定部67によって画像形成条件を設定する(S21)。具体的には、導出された表面粗さに応じて、画像形成条件として、潤滑剤として供給するトナーのタイミングを調整したり、帯電バイアス印加部38により印加される帯電バイアス電圧値を下げるよう調整する。
【0054】
このような複合機11によると、導出される感光体42dの表面粗さの精度が高いため、より正確に画像形成条件を設定することができる。したがって、画質の向上を図ることができる。
【0055】
ここで、S19における感光体42a〜42dの表面粗さの導出について、詳細に説明する。
図7は、第一のパッチ画像形成時において、交流バイアス電圧Vppが1.0kVの場合の感光体42a〜42dの表面粗さRaと感光体42a〜42dの動摩擦係数との関係を示すグラフである。
図8は、第二のパッチ画像形成時において、交流バイアス電圧Vppが1.2kVの場合の感光体42a〜42dの表面粗さRaと感光体42a〜42dの動摩擦係数との関係を示すグラフである。
図7および
図8において、縦軸は、感光体42a〜42dの動摩擦係数を示し、横軸は、感光体42a〜42dの表面粗さRa(nm)を示す。ここでいう表面粗さRaについては、いわゆるJIS B0601(2001)に規定されている算術平均粗さを示す。
【0056】
まず、
図7を参照して、感光体42a〜42dの表面粗さRaが小さくなるに従い、感光体42a〜42dの動摩擦係数が大きくなる。ここで、
図7に示すように、交流バイアス電圧Vppが1.0kVの場合、感光体42a〜42dの表面粗さRaの値がある程度大きいと、感光体42a〜42dの動摩擦係数は、ほとんど変わらない。そして、感光体42a〜42dの表面粗さRaが小さくても、例えば、10nm以下のレベルであっても、感光体42a〜42dの動摩擦係数は、約0.48から約0.55に亘って小さくなる程度であり、その差はほとんどない。
【0057】
次に、
図8を参照して、感光体42a〜42dの表面粗さRaが小さくなるに従い、感光体42a〜42dの動摩擦係数が大きくなる。この傾向については、
図7に示す場合と同様である。また、
図8に示すように、交流バイアス電圧Vppが1.2kVの場合、感光体42a〜42dの表面粗さRaの相違に起因して変化する感光体42a〜42dの動摩擦係数の差が、交流バイアス電圧Vppが1.0kVの場合と比較して大きくなる。特に、感光体42a〜42dの表面粗さRaが小さくなるほど、感光体42a〜42dの動摩擦係数の増加分が大きくなる。
【0058】
ここで、色ずれ量の差と感光体42a〜42dの動摩擦係数との関係を示す。
図9は、色ずれ量の差と感光体42a〜42dの動摩擦係数との関係を示すグラフである。
図9において、縦軸は、色ずれ量の差(画素数)を示し、横軸は、感光体42a〜42dの動摩擦係数を示す。
【0059】
図9を参照して、例えば、色ずれ量の差が2画素であった場合、感光体42a〜42dの動摩擦係数は、0.75程度となり、
図8から、その時の感光体42a〜42dの表面粗さRaは、約7nmと導出することができる。また、色ずれ量の差が6画素であった場合、感光体42a〜42dの動摩擦係数は、0.9程度となり、
図8から、その時の感光体42a〜42dの表面粗さRaは、約3.5nmと導出することができる。
【0060】
これについては、以下のように考えられる。
図10は、初期の感光体42aの表面の一部を示す概略断面図である。
図11は、耐久後の感光体42aの表面の一部を示す概略断面図である。初期の感光体42aとブレードとの接触領域を領域71で示す。耐久後の感光体42aとブレードとの接触領域を領域72で示す。
【0061】
図10および
図11を参照して、初期と比較して、耐久後の感光体42a〜42dの表面に設けられた凸部73が削れて、感光体42a〜42dとブレードとの接触領域が多くなる。そうすると、感光体42a〜42dの動摩擦係数は高くなる。そして、感光体42a〜42dに印加する交流の帯電バイアスの値を大きくすると、放電生成物の発生量が多くなり、感光体42a〜42dの表面に放電生成物が付着して、さらに感光体42a〜42dの動摩擦係数が高くなる。この感光体42a〜42dの動摩擦係数の高さに起因して、感光体42a〜42dと転写ベルト33とのグリップ力が大きくなり、転写ベルト33の回転速度が変化することとなる。この回転速度の変化に応じて、パッチ画像が形成される位置がずれることとなる。この位置のずれ、ひいては色ずれ量の差から、感光体42a〜42dの表面粗さRaを導出しようとするものである。
【0062】
また、上記した場合、第二のパッチ画像形成部63は、各色の感光体42a〜42d毎に第二のパッチ画像を形成しているため、より正確に各感光体42a〜42dの表面粗さRaを導出することができる。すなわち、各色の感光体42a〜42dのそれぞれの動摩擦係数の影響で生じたグリップ力に応じて、転写ベルト33の回転速度が変化することとなり、引いては、パッチ画像の位置のずれが生じることとなる。したがって、
各感光体42a〜42dの表面粗さRaを正確に導出することができる。
【0063】
なお、上記の実施の形態においては、ブラックのパッチ画像を基準位置として、これに対するイエローのパッチ画像、マゼンタのパッチ画像、およびシアンのパッチ画像の
色ずれ量を検出したが、これに限らず、他の位置を基準位置として、各パッチ画像の
色ずれ量を検出するようにしてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態においては、第二のパッチ画像形成部63は、全ての感光体42a〜42dで同時に第二のパッチ画像を形成することにしてもよい。こうすることにより、時間の短縮を図って、感光体42a〜42dの表面粗さの導出の効率化を図ることができる。
【0065】
なお、この発明の他の実施形態に係る画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法は、以下の通りである。すなわち、画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法は、画像形成装置用感光体と、画像形成装置用感光体の表面に静電潜像を形成する際に感光体に露光する露光部と、画像形成装置用感光体上に形成された静電潜像にトナーを供給してトナーによる可視画像を形成する現像装置と、現像装置によって形成された可視画像を一次転写される中間転写体と、中間転写体上に一次転写された可視画像を用紙に二次転写する二次転写ローラーと、中間転写体上に一次転写された画像のトナー濃度を検出するトナー濃度検出部とを備える画像形成装置に備えられる画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法である。画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法は、第一の帯電バイアスを感光体に印加してトナーの濃度を調整するための第一のパッチ画像を形成する工程と、形成された第一のパッチ画像の
色ずれ量を検出する工程と、第一の帯電バイアスよりも大きい第二の帯電バイアスを感光体に印加してトナーの濃度を調整するための第二のパッチ画像を形成する工程と、形成された第二のパッチ画像の
色ずれ量を検出する工程と、検出された第一のパッチ画像の
色ずれ量と検出された第二のパッチ画像の
色ずれ量の差分を算出する工程と、算出された差分に基づいて、感光体の表面粗さを導出する工程とを備える。
【0066】
このような画像形成装置用感光体の表面粗さの導出方法によると、導出される感光体の表面粗さの精度を高くすることができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態においては、四連タンデム形式の画像形成部15を備える複合機11に適用する場合について説明したが、これに限らず、一つの感光体を含む画像形成部15を備える複合機11についても、もちろん適用される。また、他の形式のフルカラー画像を形成する画像形成部15を備える複合機11についても、もちろん適用される。
【0068】
また、上記の実施の形態においては、感光体42a〜42dの材質について、アモルファスシリコン製とすることとしたが、これに限らず、感光体42a〜42dについては、OPC(Organic Photo Conductor(有機感光体))であってもよい。
【0069】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。