(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記換算温度補正部は、前記基板温度値及び前記レンズ温度値の差分を算出し、前記差分と所定の第1補正乗数との乗算結果から所定の補正係数を減算して補正値を算出し、前記換算温度から前記補正値を減算して前記換算温度を補正することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
前記換算温度補正部は、前記赤外線検出素子で検出された前記起電力から、前記傾きと所定の第2補正乗数との乗算結果を減算して前記起電力を補正することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにサーモパイル(赤外線検出素子)を備えた定着装置では、画像形成装置での印字や駆動停止の際にオーバーシュート等が発生すると、加熱体からの対流熱によりレンズが温まってしまう。その結果、レンズからの輻射熱を余分にサーモパイルが検知してしまい、加熱体の温度を誤検知してしまう場合がある。なお、環境温度センサー等でレンズの温度上昇を検知してその上昇度合いに応じてサーモパイルでの検出温度を減少する構成では、レンズの急激な温度変化に対して環境温度センサーでの温度検知にタイムラグが発生する。その結果、レンズに急激な温度変化が生じても、サーモパイルでの検出温度を減少することができず、加熱体の実際の温度とサーモパイルでの検出温度との間に温度差が生じる。
【0007】
このように、加熱体の熱を適切に検知できなくなると、加熱体が高温になったことを検知できずに、加熱体を過剰に加熱するおそれがあり、発火してしまう可能性もある。
【0008】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、レンズの温度上昇に拘らず、赤外線検出素子の温度検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定着装置は、熱源によって表面が加熱される加熱体と、前記加熱体に圧接して定着ニップを形成する加圧体と、前記加熱体に対して非接触で設けられ、前記加熱体の表面から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子が取り付けられる基板と、前記赤外線を前記赤外線検出素子へと集光するレンズと、を有し、当該赤外線検出素子の検出結果に基づいて前記加熱体の表面温度に対応する換算温度を検出する換算温度検出部と、前記基板の基板温度値を検出する基板温度検出部と、前記レンズのレンズ温度値を検出するレンズ温度検出部と、前記基板温度値及び前記レンズ温度値に基づいて前記換算温度を補正する換算温度補正部と、を備え、前記換算温度が所定の定着制御温度となるように前記熱源を制御することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、レンズの急峻な温度上昇等によって換算温度検出部の基板(環境温度センサー)とレンズとの間に温度差が生じて、サーモパイル等の赤外線検出素子での検出温度と実測温度との間にずれが生じた場合でも、換算温度検出部はその温度差に基づいて換算温度を補正する。そのため、換算温度検出部は、加熱体の定着ベルトの表面温度に相当する適切な換算温度を検出することができる。
【0011】
前記換算温度補正部は、前記基板温度値及び前記レンズ温度値の差分を算出し、前記差分と所定の第1補正乗数との乗算結果から所定の補正係数を減算して補正値を算出し、前記換算温度から前記補正値を減算して前記換算温度を補正するとよい。
【0012】
このような構成を採用することで、換算温度補正部は、レンズ温度と基板温度との差分がなくなるように換算温度検出部の換算温度を補正するので、加熱体(定着ベルト等)の表面温度に相当する、より適切な換算温度を検出することができる。
【0013】
上記した定着装置は、当該定着装置が設置される装置の機内温度を検出する機内温度検出部を更に備え、前記赤外線検出素子は、前記赤外線が入射する温接点と、複数の熱電対を介して前記温接点に接続される冷接点と、を備え、前記温接点と前記冷接点との間の温度差によって生じる起電力を前記検出結果として検出し、前記換算温度補正部は、前記レンズ温度と前記機内温度とが等しい場合に、所定期間が経過するまで、前記赤外線検出素子の前記起電力の所定の時間単位の傾きを算出し、前記傾きに基づいて前記起電力を補正するとよい。
【0014】
このような構成を採用することで、定着装置を備えるプリンター等の画像形成装置の起動直後(冷えた状態)から印字を開始してレンズ温度検出部で検知遅延が生じた場合でも、機内温度検出部での機内温度とレンズ温度検出部でのレンズ温度とに基づいて、画像形成装置が起動直後(冷えた状態)であるか否かを判定することができる。そして、画像形成装置の起動直後(冷えた状態)にレンズ温度検出部の検知遅延が生じた場合でも、サーモパイル等の赤外線検出素子での起電力の傾きに基づいて起電力を補正することで、換算温度検出部は、加熱体(定着ベルト)の表面温度に相当する適切な換算温度を検出することができる。
【0015】
前記換算温度補正部は、前記赤外線検出素子で検出された前記起電力から、前記傾きと所定の第2補正乗数との乗算結果を減算して前記起電力を補正するとよい。
【0016】
このような構成を採用することで、換算温度検出部は、定着装置を備えるプリンター等の画像形成装置の起動直後(冷えた状態)のサーモパイル等の赤外線検出素子の起電力を正確に検出することができるので、レンズ温度検出部の検知遅延に拘らず、加熱体(定着ベルト)の表面温度に相当する、より適切な換算温度を検出することができる。
【0017】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レンズの温度上昇に拘らず、赤外線検出素子の温度検出精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、
図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、R、U、Loは、それぞれプリンター1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を示している。
【0021】
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(記録媒体)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の側方に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
【0022】
プリンター本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が排紙トレイ4の下方に配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(
図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0023】
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送経路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送経路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙部20が設けられている。搬送経路15の下方には、両面印刷用の反転経路21が形成されている。
【0024】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0025】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0026】
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(
図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
【0027】
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部20から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残留したトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
【0028】
次に、定着装置18について、
図2〜
図7を用いて説明する。
【0029】
図2等に示されるように、定着装置18は、搬送経路15を挟んで上側及び下側にそれぞれ配置される加熱体23と加圧体24とを備える。また、定着装置18は、加熱体23の上方に遮熱部材25を備えると共に、加熱体23の表面温度に相当する換算温度を検出する換算温度検出部26を備える。
【0030】
加熱体23は、略円筒状の定着ベルト30と、定着ベルト30の内周面の下側に沿って配置される押圧部材31と、定着ベルト30の内側で押圧部材31の上方に配置される支持部材32と、定着ベルト30の内側で支持部材32の上方に配置される熱源33と、を備える。
【0031】
定着ベルト30は、用紙の搬送方向(左右方向)と直交(交差)する用紙の幅方向(前後方向)に長い形状を有し、定着装置18の本体フレーム(図示せず)に対して回転可能に取り付けられる。
【0032】
定着ベルト30は、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成され、可撓性を有する。定着ベルト30の基材層は、例えば、ニッケル電鋳によって形成されている。定着ベルト30の弾性層は、例えば、シリコンゴムによって形成される。定着ベルト30の離型層は、例えば、PFAによって形成される。なお、各図において、定着ベルト30の各層(基材層、弾性層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。
【0033】
押圧部材31は、前後方向に長い形状を有する。押圧部材31は、例えば、LCP(液晶ポリマー)等の耐熱性樹脂によって形成される。押圧部材31は、その下面が定着ベルト30の内周面下側を下方(加圧体24側)に向かって押圧するように配置される。
【0034】
支持部材32は、前後方向に長い略四角筒状に形成される。支持部材32は、例えば、SUS等の金属によって形成される。支持部材32の下面は、押圧部材31の上面と当接している。
【0035】
熱源33は、前後方向に長い形状を有し、例えば、ハロゲンランプやセラミックヒーター等で構成される。
【0036】
加圧体24は、前後方向に長い略円柱状に形成され、定着装置18の本体フレーム(図示せず)に対して回転可能に取り付けられる。加圧体24は、例えば、加圧ローラー等で構成される。加圧体22は、定着ベルト30に対して圧接されることで、定着ベルト30と加圧体24との間には定着ニップNが形成される。加圧体24の後端部には、駆動ギア53(
図4参照)が同軸に固定される。
【0037】
加圧体24は、例えば、円柱状の芯材と、この芯材に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成される。加圧体24の芯材は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成される。加圧体24の弾性層は、例えば、シリコンスポンジゴムによって形成される。加圧体24の離型層は、例えば、PFAチューブによって形成される。なお、各図において、加圧体24の各層(芯材、弾性層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。
【0038】
遮熱部材25は、前後方向に長い形状を有し、例えば、断面逆U字状に形成される。遮熱部材25は、加熱体23を上方から覆うように、加熱体23の上方に配置される。遮熱部材25には、加熱体23から放射された赤外線を換算温度検出部26のサーモパイル40(赤外線検出素子)へと通過させるための開口部34が形成される。なお、開口部34は、最も小さいサイズの用紙が定着装置18を通過する位置、即ち、前後方向(用紙幅方向)の略中央に形成されるとよい。
【0039】
換算温度検出部26は、保持部材36の内部に取り付けられ、ケース37と、基板38と、サーモパイル40(赤外線検出素子)と、環境温度センサー41と、レンズ42と、を備える(
図3参照)。更に、換算温度検出部26は、基板温度検出部43と、レンズ温度検出部44と、を備える。
【0040】
保持部材36は、遮熱部材25の上方において、プリンター本体2の本体フレーム(図示せず)又は定着装置18の本体フレーム(図示せず)等に取り付けられ、換算温度検出部26を加熱体23の定着ベルト30に対して非接触で配置する。保持部材36は、略箱型形状を有し、下面の略中央に保持部材開口45が形成されている。
【0041】
ケース37は、略筒型形状を有し、下面の略中央にケース開口46が形成されている。基板38は、ケース37の上端を塞ぐように配置されていて、配線(図示せず)を介して制御部50(
図4参照)に接続される。
【0042】
サーモパイル40は、ケース37の内部で基板38の下面に取り付けられる。サーモパイル40は、冷接点47と、温接点48と、複数の熱電対49とからなる。冷接点47は、サーモパイル40の上部に設けられ、温接点48は、所定間隔を空けて冷接点47の下方に設けられる。各熱電対49は、冷接点47と温接点48とを電気接続するように設けられる。温接点48には、ケース開口46からレンズ42を介して侵入する赤外線、例えば、加熱体23の定着ベルト30の表面からの赤外線が入射し、サーモパイル40は、冷接点47及び温接点48の温度差によって熱電対49で生じる起電力に基づいて定着ベルト30の表面温度(換算温度)を検出する。
【0043】
環境温度センサー41は、基板38の下面に取り付けられ、例えば、バンドギャップ型のダイオードセンサーで構成され、サーモパイル40自身の温度を検出する。
【0044】
レンズ42は、ケース37の内部でサーモパイル40の下方に設けられ、ケース開口46を介してケース37内に進入する赤外線をサーモパイル40の温接点48へと集光するように配置される。
【0045】
基板温度検出部43は、ケース37の外側で基板38に取り付けられ、例えば、接触型のサーミスタ等で構成され、基板38付近の温度を検出する。基板温度検出部43は、基板38と電気的に接続していて、検出した基板38付近の温度(以下、基板温度と称する)を基板38を介して制御部50へと送信する。
【0046】
レンズ温度検出部44は、ケース37の外側でレンズ42付近に取り付けられ、例えば、接触型のサーミスタ等で構成され、
レンズ42付近の温度を検出する。レンズ温度検出部44は、基板38と電気的に接続していて、検出したレンズ42付近の温度(以下、レンズ温度と称する)を基板38を介して制御部50へと送信する。
【0047】
なお、換算温度検出部26及び保持部材36は、保持部材36の保持部材開口45及びケース37のケース開口46が遮熱部材25の開口部34と対応するように配置される。即ち、換算温度検出部26は、加熱体23の定着ベルト30の表面から遮熱部材25の開口部34を介して放出される赤外線を、保持部材開口45及びケース開口46を介して入射できる位置に配置される。換算温度検出部26は、サーモパイル40で検出される温度と、環境温度センサー41で検出される温度とに基づいて、定着ベルト30の表面温度(換算温度)を検出する。
【0048】
次に、定着装置18の制御システムについて、
図4を用いて説明する。
【0049】
定着装置18には、CPU等で構成される制御部50が設けられている。制御部50は、ROM、RAM等の記憶装置で構成される記憶部51と接続されていて、記憶部51に格納された制御プログラムや制御用データに基づいて、制御部50が定着装置18の各部を制御するように構成されている。なお、定着装置18の制御システムは、制御部50及び記憶部51に代えて、プリンター1の制御システムを構成する制御部(図示せず)及び記憶部(図示せず)を利用してもよい。
【0050】
制御部50は、モーター等で構成される駆動源52に接続されていて、駆動源52は駆動ギア53を介して加圧体24に接続されている。そして、駆動源52は、制御部50からの信号に基づいて加圧体24を回転させる。このように加圧体24が回転すると、加圧体24に圧接する加熱体23の定着ベルト30が加圧体24とは逆方向に従動回転する。このとき、加熱体23と加圧体24との間に定着ニップNが形成される。
【0051】
制御部50は、熱源33に接続されている。そして、制御部50からの信号に基づいて熱源33に電力が供給されることで熱源33が発熱する。
【0052】
制御部70は、換算温度検出部28のサーモパイル60に接続されている。サーモパイル60では、加熱体23の定着ベルト30の表面から放出される赤外線が、遮熱部材34の開口部37、保持部材56の保持部材開口45及びケース57のケース開口46を介して入射される。換算温度検出部28は、上記したように、定着ベルト30から入射した赤外線に応じて定着ベルト30の表面温度(換算温度)を検出する。なお、換算温度検出部28で検出された換算温度は、換算温度補正部54によって補正される。換算温度検出部28で検出された換算温度の換算温度補正部54による補正については後述する。
【0053】
換算温度検出部28は、検出した定着ベルト30の表面温度値を制御部70へと出力する。あるいは、換算温度検出部28は、定着ベルト30の表面温度(換算温度)に対応する電気信号(電流値や電圧値)を制御部70へと出力し、制御部70がこの電気信号に基づいて定着ベルト30の表面温度(換算温度)を算出してもよい。
【0054】
制御部70は、上記のような換算温度検出部28での検出結果に基づいて、熱源33の加熱を制御し、加熱体23を所望の定着温度に設定することができる。このとき、未定着のトナー像が形成された用紙が定着ニップNを通過すると、トナー像が加熱されて溶融し、用紙にトナー像が定着される。
【0055】
次に、換算温度検出部28で検出された換算温度の補正について説明する。制御部50は、基板温度検出部43と、レンズ温度検出部44と、換算温度補正部54と、に接続されている。なお、換算温度補正部54は、記憶部51に記憶されて制御部50によって実行されるプログラムで構成されてよい。
【0056】
上記したように、換算温度検出部28で検出された換算温度が制御部50へと送信され、更に、基板温度検出部43で検出された基板温度と、レンズ温度検出部44で検出されたレンズ温度とが、制御部50へと送信される。そして、制御部50によって制御される換算温度補正部54が、基板温度とレンズ温度とに基づいて換算温度を補正する。
【0057】
換算温度と、基板温度及びレンズ温度との関係について図を参照して説明する。プリンター1での印字や駆動停止の際にオーバーシュート等が発生すると、加熱体23からの対流熱により換算温度検出部26のレンズ42が温まってしまう。その結果、レンズ42からの輻射熱を余分にサーモパイル40が検知してしまい、加熱体23の定着ベルト30の表面温度を誤検知してしまう場合がある。なお、環境温度センサー41でレンズ42の温度上昇を検知してその上昇度合いに応じて換算温度検出部26の換算温度を減少する構成では、環境温度センサー41とレンズ42とが離間しているために、レンズ42の急激な温度変化に対して環境温度センサー41での温度検知にタイムラグが発生する。その結果、レンズ42に急激な温度変化が生じても、換算温度検出部26の換算温度を減少することができず、定着ベルト30の実際の表面温度(以下、実測温度と称する)と換算温度検出部26の換算温度との間に温度差が生じる。
【0058】
図5は、レンズ42のレンズ温度と基板38の基板温度との差分を横軸に示し、定着ベルト30の実測温度と換算温度検出部26の換算温度との差分を縦軸に示したグラフである。
図5に示すように、レンズ温度と基板温度との差分が大きくなるほど、換算温度検出部26で検出される換算温度と実測温度との間のずれが大きくなることが分かる。そこで、換算温度補正部54は、レンズ温度と基板温度との差分がなくなるように換算温度検出部26の換算温度を補正する。
【0059】
例えば、レンズ温度と基板温度との差分が10℃のときに、換算温度と実測温度との間に6℃のずれが生じている(
図5参照)。例えば、換算温度と実測温度との間のずれBと、レンズ温度と基板温度との差分Aとの関係は、所定の第1補正乗数(0.7036)と、所定の補正係数とを用いた一次方程式(B=0.7036×A−0.7182)で表される。
【0060】
従って、換算温度補正部54は、レンズ温度と基板温度との差分Aと所定の第1補正乗数との乗算結果から所定の補正係数を減算して補正値を算出することができる。また、換算温度補正部54は、換算温度検出部26の換算温度からこの補正値を減算することで換算温度を補正することができる。
【0061】
次に、プリンター1の起動直後(冷えた状態)から印字を開始してレンズ温度検出部44で検知遅延が生じた場合に、換算温度検出部28で検出された換算温度の補正について説明する。
【0062】
制御部50は、定着装置18が設置される装置(プリンター1)の機内温度を検出する機内温度検出部55に接続されている。機内温度検出部55によって検出された機内温度に基づいて、プリンター1が起動直後(冷えた状態)であるか否かを判定することができる。
【0063】
レンズ温度検出部44の検知遅延について
図6を参照して説明する。
図6は、プリンター1が起動してからの経過時間を横軸に示し、レンズ温度検出部44で検出されたレンズ温度とレンズ42の実際の温度とを縦軸に示したグラフである。
図6によれば、プリンター1の起動直後に印字を開始すると、レンズ42の温度上昇に対して、レンズ42の温度を検出するレンズ温度検出部44がレンズ42の温度上昇に追従しきれずに、レンズ42の正確な温度を測定するできないことが分かる。このような遅延は、レンズ温度検出部44が熱容量を持っているためにタイムラグが生じていることに起因する。なお、プリンター1が起動してから所定期間(追従期間、例えば、20sec)を経過すると、レンズ温度検出部44は、レンズ42の温度上昇に追従できるようになり、正確な温度を測定可能となる。
【0064】
そこで、換算温度補正部54は、プリンター1が冷えた状態から、所定期間(追従期間)を経過するまで、サーモパイル40で検出される起電力の所定の時間単位(例えば、100msec)の傾きに基づいて、起電力を補正し、これにより換算温度を補正する。このような起電力の傾きに基づく換算温度の補正について、以下に具体的に説明する。なお、起電力の傾きに基づく換算温度の補正を行う所定期間(追従期間)の間は、上記の換算温度補正部54による基板温度とレンズ温度とに基づく換算温度の補正は行わない。
【0065】
換算温度補正部54は、例えば、機内温度検出部55で検出された機内温度とレンズ温度検出部44で検出されたレンズ温度とを比較することで、プリンター1が起動直後(冷えた状態)であるか否かを判定する。換算温度補正部54は、機内温度とレンズ温度とが等しい(あるいは略等しい)場合に、プリンター1が起動直後(冷えた状態)であると判定する。このとき、換算温度補正部54は、機内温度とレンズ温度との差異がある場合でも、その差異がある程度の範囲内(機内温度検出部55やレンズ温度検出部44のセンサの検知ばらつき範囲内)であれば、プリンター1が起動直後(冷えた状態)であると判定してよい。なお、プリンター1が起動及び印字を開始すると、加熱体23はプリンター1の他の構成部品に比べて高温であるため、加熱体23の温度上昇が干渉するレンズ42のレンズ温度は、機内温度に比べてより高温になる。即ち、換算温度補正部54は、レンズ温度が機内温度より高く(例えば、3℃以上高く)なると、プリンター1が起動直後(冷えた状態)ではないと判定する。
【0066】
サーモパイル40で検出される起電力について
図7を参照して説明する。
図7は、プリンター1が起動してからの経過時間を横軸に示し、サーモパイル40で検出される起電力(検知電圧)を縦軸に示したグラフである。サーモパイル40では、上記したように、冷接点47及び温接点48の温度差によって熱電対49で起電力が生じる。
図7によれば、サーモパイル40で検出される起電力は、時間変化に比例していることが分かる。この起電力の傾きが急であるほどレンズ42の温度上昇が大きくなっている。
【0067】
そこで、換算温度補正部54は、この起電力の傾き分を起電力から差し引くことで、レンズ42の温度上昇分を補正する。例えば、換算温度補正部54は、所定の時間単位(例えば、100msec)毎にサーモパイル40の起電力の傾きを算出する。換算温度補正部54は、この起電力の傾き(Δ検知電圧)と所定の第2補正乗数(α)との乗算結果(Δ検知電圧×α)を減算して起電力を補正する。なお、所定の第2補正乗数は、サーモパイル40の機種毎に特有の係数であるので、換算温度補正部54は、サーモパイル40の機種毎に所定の第2補正乗数を設定する。
【0068】
本実施形態によれば、上述のように、プリンター1(画像形成装置)の定着装置18は、加熱体23と、加圧体24と、換算温度検出部26と、基板温度検出部43と、レンズ温度検出部44と、換算温度補正部54と、を備える。加熱体23は、熱源33によって表面が加熱される。加圧体24は、加熱体23に圧接して定着ニップNを形成する。換算温度検出部26は、加熱体23に対して非接触で設けられ、加熱体23の表面から放射される赤外線を検出するサーモパイル40(赤外線検出素子)と、サーモパイル40が取り付けられる基板38と、赤外線をサーモパイル40へと集光するレンズ42と、を有し、サーモパイル40の検出結果に基づいて加熱体23の表面温度に対応する換算温度を検出する。基板温度検出部43は、基板38の基板温度値を検出する。レンズ温度検出部44は、レンズ42のレンズ温度値を検出する。換算温度補正部54は、基板温度値及びレンズ温度値に基づいて換算温度を補正する。定着装置18の制御部50は、換算温度が所定の定着制御温度となるように熱源33を制御する。
【0069】
これにより、レンズ42の急峻な温度上昇等によって換算温度検出部26の基板38(環境温度センサー41)とレンズ42との間に温度差が生じて、サーモパイル40での検出温度と実測温度との間にずれが生じた場合でも、換算温度検出部26はその温度差に基づいて換算温度を補正する。そのため、換算温度検出部26は、加熱体23の定着ベルト30の表面温度に相当する適切な換算温度を検出することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、換算温度補正部54は、基板温度値及びレンズ温度値の差分を算出し、差分と所定の第1補正乗数との乗算結果から所定の補正係数を減算して補正値を算出し、換算温度から補正値を減算して換算温度を補正する。これにより、換算温度補正部54は、レンズ温度と基板温度との差分がなくなるように換算温度検出部26の換算温度を補正するので、加熱体23の定着ベルト30の表面温度に相当する、より適切な換算温度を検出することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、プリンター1(定着装置18)は、定着装置18が設置される装置(プリンター1)の機内温度を検出する機内温度検出部55を更に備える。サーモパイル40は、赤外線が入射する温接点48と、複数の熱電対49を介して温接点48に接続される冷接点47と、を備え、温接点48と冷接点47との間の温度差によって生じる起電力を検出結果として検出する。換算温度補正部54は、レンズ温度と機内温度とが等しい場合に、所定期間が経過するまで、サーモパイル40の起電力の所定の時間単位の傾きを算出し、傾きに基づいて起電力を補正する。これにより、プリンター1の起動直後(冷えた状態)から印字を開始してレンズ温度検出部44で検知遅延が生じた場合でも、機内温度検出部55での機内温度とレンズ温度検出部44でのレンズ温度とに基づいて、プリンター1が起動直後(冷えた状態)であるか否かを判定することができる。そして、プリンター1の起動直後(冷えた状態)にレンズ温度検出部44の検知遅延が生じた場合でも、サーモパイル40での起電力の傾きに基づいて起電力を補正することで、換算温度検出部28は、加熱体23の定着ベルト30の表面温度に相当する適切な換算温度を検出することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、換算温度補正部54は、サーモパイル40で検出された起電力から、傾きと所定の第2補正乗数との乗算結果を減算して起電力を補正する。これにより、換算温度検出部28は、プリンター1の起動直後(冷えた状態)のサーモパイル40の起電力を正確に検出することができるので、レンズ温度検出部44の検知遅延に拘らず、加熱体23の定着ベルト30の表面温度に相当する、より適切な換算温度を検出することができる。
【0073】
本実施形態では、加熱体23を定着ベルト30で構成する場合について説明したが、他の実施形態では、加熱体23を加熱ローラーで構成しても良い。
【0074】
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。