特許第6380336号(P6380336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6380336-画像形成装置 図000003
  • 特許6380336-画像形成装置 図000004
  • 特許6380336-画像形成装置 図000005
  • 特許6380336-画像形成装置 図000006
  • 特許6380336-画像形成装置 図000007
  • 特許6380336-画像形成装置 図000008
  • 特許6380336-画像形成装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380336
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20180820BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20180820BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20180820BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20180820BHJP
   G03G 5/08 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G03G15/02 102
   G03G21/00 370
   G03G5/047
   G03G5/147
   G03G5/08 301
   G03G5/08 105
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-216778(P2015-216778)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-153875(P2016-153875A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2017年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-26067(P2015-26067)
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼上 愛
(72)【発明者】
【氏名】向▲高▼ 寿
(72)【発明者】
【氏名】門田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】池 麻希
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−337517(JP,A)
【文献】 特開2002−049225(JP,A)
【文献】 特開2001−337470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0068307(US,A1)
【文献】 特開2002−148838(JP,A)
【文献】 特開2008−107605(JP,A)
【文献】 特開2004−004654(JP,A)
【文献】 特開2004−258534(JP,A)
【文献】 特開2014−134720(JP,A)
【文献】 米国特許第06122460(US,A)
【文献】 特開2012−181467(JP,A)
【文献】 特開2009−192568(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135328(US,A1)
【文献】 特開平06−180520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 5/047
G03G 5/08
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面に接触するように配置され、前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に直流バイアスと交流バイアスとを重畳した帯電バイアスを印加するバイアス印加装置と、
前記バイアス印加装置から前記帯電部材に印加される帯電バイアスを制御する制御部と、
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記像担持体の使用開始から所定時間が経過するまでの第1の期間において前記帯電部材に印加される交流バイアスを第1交流バイアスとし、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記交流バイアスを前記第1交流バイアスよりも高い第2交流バイアスとし、
前記制御部は、前記バイアス印加装置から前記帯電部材に印加される交流バイアスを増加させたとき前記像担持体の表面電位が略一定となる交流バイアスを基準交流バイアスとし、前記基準交流バイアスに対する前記第1交流バイアスまたは前記第2交流バイアスの比をそれぞれ第1乗算値、第2乗算値として、前記第1乗算値および前記第2乗算値が所定の範囲となるように前記第1交流バイアス及び前記第2交流バイアスを設定し、
前記第2乗算値を前記第1乗算値よりも高くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の期間に続く第3の期間において前記帯電部材に印加される交流バイアスを第3交流バイアスとし、前記基準交流バイアスに対する前記第3交流バイアスの比を第3乗算値とするとき、前記第3乗算値の最大値を、前記第1乗算値の最大値よりも高く、且つ前記第2乗算値の最大値よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3乗算値の最小値を、前記第1乗算値の最小値と等しく、且つ前記第2乗算値の最小値よりも低くすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体の使用開始からの累積印字枚数をカウントする印字枚数カウント部を備え、
前記制御部は、前記印字枚数カウント部によりカウントされた累積印字枚数に基づいて前記第1の期間及び前記第2の期間を決定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体の使用初期における前記像担持体の表面の算術平均粗さRaが20nm以上100nm以下、十点平均粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下、表面硬度がDUH硬度で500kgf/mm2以上1200kgf/mm2以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体の表面にはアモルファスシリコン感光層が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙上に画像を形成する画像形成装置に関し、特に、表面にトナー像が形成される像担持体を帯電する帯電バイアスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機、ファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置においては、電子写真感光体の一例である感光体ドラムと、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電ローラー等の帯電部材と、感光体ドラム表面に接触して配置され且つ感光体ドラム表面に残留するトナーや外添剤を除去するクリーニングブレードとを備えたものが知られている。
【0003】
このような帯電部材は、像担持体に接触又は近接して配置されており、帯電部材からの放電により生成した放電生成物が像担持体表面に付着する。すると、像担持体表面とクリーニングブレードとの間の摩擦抵抗が上昇し、クリーニングブレードのビビリや欠損、スティックスリップが引き起こされやすくなり、クリーニングブレードのクリーニング能力が低下する。その結果、トナーや外添剤のすり抜け量が増加し、帯電部材が汚染されたり、クリーニングされずに残されたトナーや外添剤が像担持体表面に固着して、画質低下や画像形成不良が発生したりする原因となる。
【0004】
特に感光層として表面にアモルファスシリコン層が形成された像担持体を用いた場合、使用開始初期は、アモルファスシリコン層の形成時に生じる結晶粒の凹凸により像担持体表面とクリーニングブレードとの接触面積が小さいため摩擦抵抗も小さいが、使用されているうちに像担持体表面の凹凸が摩耗して平滑化され、像担持体表面とクリーニングブレードとの間の摩擦抵抗が上昇し、上記の問題が生じやすくなる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、表面粗さの大きなアルミ素管にアモルファスシリコン層を形成し、予めアモルファスシリコン層の表面粗さを大きくしておくことにより、摩擦抵抗の上昇を抑制し、クリーニングブレードのクリーニング能力の低下を抑制する構成が開示されている。また、特許文献2には、像担持体の駆動電流を監視し、駆動電流が所定の値よりも大きくなると帯電デバイスに印加する交流電圧を低下させて放電生成物の発生を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−337470号公報
【特許文献2】特開2009−192568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の構成の場合、像担持体の初期の表面粗さを大きくしすぎると、クリーニングブレードと像担持体表面との間の隙間から外添剤のすり抜けが起こりやすくなり、帯電デバイスの汚染が引き起こされるという問題がある。また、すり抜けた外添剤が像坦持体表面に固着すると、画質低下や画像形成不良が発生することとなる。また、特許文献2の構成の場合、像担持体の表面粗さが大きい使用初期の段階では、像担持体表面とクリーニングブレードとの間の摩擦抵抗が小さく、像担持体の駆動電流を低く抑えることができるが、上記のような使用初期における外添剤のすり抜けの問題に対応することができない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、像担持体表面の表面粗さが大きい使用初期の段階における外添剤のすり抜けを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体と、クリーニング部材と、帯電部材と、バイアス印加装置と、制御部と、を有する画像形成装置である。像担持体は、表面にトナー像が形成される。クリーニング部材は、像担持体の表面に接触するように配置され、像担持体の表面をクリーニングする。帯電部材は、像担持体を帯電させる。バイアス印加装置は、帯電部材に直流バイアスと交流バイアスとを重畳した帯電バイアスを印加する。制御部は、バイアス印加装置から帯電部材に印加される帯電バイアスを制御する。制御部は、像担持体の使用開始から所定時間が経過するまでの第1の期間において帯電部材に印加される交流バイアスを第1交流バイアスとし、第1の期間に続く第2の期間において、交流バイアスを第1交流バイアスよりも高い第2交流バイアスとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の構成によれば、使用開始から所定時間が経過するまでの第1の期間では、その後に続く第2の期間において帯電部材に印加する第2交流バイアスよりも低い第1交流バイアスを帯電部材に印加するため、第1の期間においては放電生成物の発生が抑制される。これにより、像担持体の表面とクリーニング部材との摩擦抵抗を小さくできる。従って、クリーニング部材のエッジが像担持体の回転方向に引き込まれることによるスティックスリップの発生が抑制され、外添剤のすり抜けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置11としてのタンデム方式のカラープリンターの概略構成を示す摸式断面図
図2】本実施形態の画像形成装置11の画像形成処理部15を含む要部の概略構成を示す図
図3】スキューネスRskが0より大きいときの凹凸形状を示す図
図4】スキューネスRskが0より小さいときの凹凸形状を示す図
図5】感光体ドラム20の表面電位と帯電ローラー26に印加する交流電圧との関係を示すグラフ
図6】本実施形態の画像形成装置11において帯電ローラー26に印加する交流バイアスと感光体ドラム20の使用開始からの期間との関係を示すグラフ
図7】本実施形態の画像形成装置11において実行される交流バイアス設定制御の処理内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置11の概略構成を示す摸式断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置11の画像形成処理部15を含む要部の概略構成を示す図である。
【0013】
1.画像形成装置11の構成
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置11は、タンデム方式のカラープリンターである。画像形成装置11は、プリンター本体12の内部に、記録紙(不図示)を収納する給紙カセット13と、給紙カセット13から記録紙を一枚ずつ給送する給紙部14と、給紙カセット13又は手差しトレイ(不図示)から供給された記録紙に画像形成処理を行う画像形成処理部15と、給紙カセット13又は手差しトレイから供給された記録紙を搬送する記録紙搬送経路16と、画像形成処理部15において形成されたトナー像を記録紙搬送経路16に沿って搬送される記録紙に転写する二次転写部17と、二次転写部17において転写されたトナー像を記録紙に定着する定着部18と、を備える。
【0014】
(画像形成処理部15の構成)
画像形成処理部15は、例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を用いて画像形成処理を行うタンデム方式が採用されている。なお、以下の説明では、特に色指定に関する場合にのみ、各算用数字の符号に括弧書きで(Y,M,C,K)の色を付し、共通の場合には算用数字のみの符号を付して説明する。
【0015】
画像形成処理部15は、各色(Y,M,C,K)に対応して、補給用トナーを収納した複数のトナーコンテナ19と、パーソナルコンピューター等の外部接続機器から送信された印字データ(画像データ)に基づいて各色のトナー像を形成するための複数の感光体ドラム20と、各感光体ドラム20にトナーを供給する複数の現像装置21と、各感光体ドラム20に形成されたトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルト22と、中間転写ベルト22の回動移動方向最上流側の感光体ドラム20の上流側に配置されて中間転写ベルト22の表面に付着した残トナー等を除去するベルトクリーニング装置24と、各感光体ドラム20にビーム光を出射する露光ユニット25と、を備えている。
【0016】
(感光体ドラム20の構成)
感光体ドラム20は、支持体(基体)の表面に感光層が形成されてなる。ここでは、感光体ドラム20は、金属製の円筒状の素管と、素管表面に形成された感光層とからなる。なお、素管が本発明の「支持体」の一例に相当する。素管を形成する金属としては、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム等が挙げられる。感光層としては、有機光伝導体を利用した有機感光層や無機光電体を利用した無機感光層等を利用できるが、耐久性の高さからシランガス等の蒸着等により製膜されたアモルファスシリコン感光層が好ましい。各感光体ドラム20は、その表面に露光ユニット25から出射されたビーム光に基づいて各色のトナー像を担持して中間転写ベルト22にトナー像を転写するためのものであり、図1に示すように、現像装置21と共に中間転写ベルト22の下方に配置されている。なお、感光体ドラム20の使用初期における表面状態については後述する。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、感光体ドラム20の周囲には帯電ローラー(帯電部材)26、露光ユニット25、現像装置21、クリーニング装置28、除電装置29が配置されており、中間転写ベルト22を挟んで一次転写ローラー27が感光体ドラム20に対向配置されている。
【0018】
感光体ドラム20と一次転写ローラー27との協働によって構成された各一次転写部で中間転写ベルト22上に転写されたトナー像は、給紙カセット13又は手差トレイから記録紙搬送経路16を通って搬送されてきた記録紙に対し二次転写部17で転写される。
【0019】
(現像装置21の構成)
各現像装置21は、基本的に同一構成のものが中間転写ベルト22の下方に回動移動方向に沿って列設されている。現像装置21は、酸化チタン等の金属粒子からなるトナー外添剤(研磨粒子)を含むトナーを付着させて感光体ドラム20の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。なお、現像装置21は従来公知のものを使用することができる。
【0020】
(中間転写ベルト22の構成)
中間転写ベルト22は、プリンター本体12内で駆動ローラーと従動ローラーとに水平方向に張架された無端ベルトであり、ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラーの回転に伴い画像形成動作に伴って循環駆動される。
【0021】
(トナー濃度検知センサー23の構成)
トナー濃度検知センサー23は、中間転写ベルト22のトナー像の反射濃度を測定し、その検知値を制御回路30(図2参照)に出力する。なお、トナー濃度検知センサー23は、中間転写ベルト22の回動移動方向並びに回動移動方向と直交する幅方向のそれぞれに沿った複数箇所に設けることができる。この際、トナー濃度検知センサー23は、中間転写ベルト22の幅方向片側だけのトナー濃度を検知したのでは、例えば、中間転写ベルト22の幅方向両端側で濃度差が生ずる現象(片焼け現象)が発生した場合に対応できないため、幅方向両端付近に配置するのが好ましい。
【0022】
(帯電ローラー26の構成)
帯電ローラー26は、例えば導電性ゴムで形成されており、感光体ドラム20に当接するように配置されている。そして、図2に示すように、感光体ドラム20が時計回り方向に回転すると、感光体ドラム20の表面に接触する帯電ローラー26が反時計回り方向に従動回転する。このとき、帯電ローラー26に所定の電圧を印加することにより、感光体ドラム20の表面が一様に帯電されることとなる。また、帯電ローラー26の回転に伴い、帯電ローラー26に接触する帯電クリーニングローラー(図示せず)が時計回り方向に従動回転して帯電ローラー26の表面に付着した異物を除去する。
【0023】
(クリーニング装置28の構成)
クリーニング装置28は、記録紙幅方向(記録紙搬送方向に直交する方向)に奥行きのあるクリーニングハウジング40と、クリーニングハウジング40の内部下方寄りに配置されて図2において時計回り方向に回転することで記録紙幅方向の一方に回収トナーを搬送して廃トナー容器(図示せず)へと送り出す回収スパイラル41と、クリーニングハウジング40の外部下方寄りに取り付けられたクリーニングブレード42と、クリーニングハウジング40の内部上方寄りに配置されて感光体ドラム20の表面と接触する摺擦ローラー(クリーニングローラー)43と、摺擦ローラー43の上方に配置されて摺擦ローラー43の表面と接触するスクレーパー44とを備えている。
【0024】
クリーニングブレード42は、ウレタンゴム等から構成されている。クリーニングブレード42は、感光体ドラム20の回転軸よりも下方から感光体ドラム20の表面に先端が当接するように配置されている。この際、クリーニングブレード42の先端は、感光体ドラム20の回転方向(図2の矢印参照)に対してカウンター方向に当接している。
【0025】
摺擦ローラー43は、感光体ドラム20の表面から廃トナーを回収すると共に、摺擦ローラー43の表面に付着した廃トナーによって感光体ドラム20の表面を研磨する。このため、摺擦ローラー43は、廃トナーの保持性を高く維持するために発泡ゴム(例えば、カーボン含有導電性発泡EPDM)を用いて記録紙幅方向に延びる円筒形状に構成され、クリーニングブレード42の先端よりも感光体ドラム20の回転方向上流側に配置される。また、摺擦ローラー43の回転方向は感光体ドラム20の回転方向とは逆方向である。スクレーパー44は、耐久性を確保した薄肉板金製のものが用いられており、摺擦ローラー43の表面付着トナーの付着量を均一にするために、摺擦ローラー43の回転方向下流側にカウンター方向で先端が当接している。
【0026】
(除電装置29の構成)
除電装置29は、感光体ドラム20の回転方向に沿って、クリーニング装置28の下流側に配置されている。除電装置29にはLED(発光ダイオード)が用いられ、必要に応じて反射板が設けられる。除電装置29は、除電光(イレース光)を感光体ドラム20に照射することにより、その表面の帯電電荷を除去し、次回の画像形成動作時における帯電工程のための準備を整える。
【0027】
(制御回路30の構成)
制御回路30は、ROM31に格納した画像形成処理全般に係わる各種制御プログラムに基づいて画像形成処理(プリントジョブ)を実行すると共に、その画像形成処理の際に、帯電ローラー26に帯電バイアスとして直流バイアスと交流バイアスの重畳バイアスを印加する高圧電源34を制御する。
【0028】
バイアス回路34の印加電圧は、画像形成処理枚数をカウントするカウンター39のカウント値(累積印字枚数、本発明の「累積値」に相当する)Nに基づいて設定された乗算値Gを用いて制御される。乗算値Gは、バイアス電圧の交流成分の電圧を規定する。なお、カウンター39の累積カウント数Nは、感光体ドラム20が交換される毎にリセットされる。
【0029】
また、制御回路30は、モーター駆動ドライバー35を介して感光体ドラム20を回転させる駆動モーター(駆動装置)36を制御する。さらに、制御回路30には、累積の画像形成処理枚数(累積印字枚数)をカウントするカウンター39のカウント値が入力される。
【0030】
ROM31には、本発明の画像形成処理補正に係わる制御プログラムも格納されており、この画像形成処理制御プログラムを実行する制御回路30とでマイクロコンピューターを構成している。尚、画像形成処理を実行する際の画像データ等は、RAM32又はHDD33に一時的に記憶される。また、制御回路30は、トナー濃度検知センサー23からの検知結果をRAM32又はHDD33に記憶する。
【0031】
制御回路30は、上記制御の他、各現像装置21へのトナー補給や現像装置21に印加するバイアス電圧等の現像条件、露光ユニット25から出射されるレーザー光P(図1参照)のレーザーパワー等の露光条件、除電装置29の除電光量等のキャリブレーションを実行する。
【0032】
2.画像形成手順
次に、画像形成装置11の画像形成手順について説明する。パーソナルコンピューター等の外部接続機器から画像データが入力されると、先ず、帯電ローラー26によって感光体ドラム20の表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット25によって感光体ドラム20の表面にレーザー光Pを照射し、各感光体ドラム20上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置21には、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置21内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ19から各現像装置21にトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置21により感光体ドラム20上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット25からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0033】
一方、画像形成処理部15でのトナー像の形成タイミングに合わせて給紙カセット13(又は手差しトレイ)から記録紙が給送され、記録紙搬送経路16を通ってレジストローラー対30aに搬送される。
【0034】
そして、一次転写ローラー27により一次転写ローラー27と感光体ドラム20との間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム20上のイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのトナー像が中間転写ベルト22上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム20の表面に残留したトナー等がクリーニング装置28により除去される。また、感光体ドラム20表面の残留電荷が除電装置29により除去される。
【0035】
中間転写ベルト22が図1の反時計回り方向に回転を開始すると、記録紙がレジストローラー対30aから中間転写ベルト22に隣接して設けられた二次転写部17へ所定のタイミングで搬送され、中間転写ベルト22上のフルカラー画像が記録紙上に二次転写される。トナー像が二次転写された記録紙は定着部18へと搬送される。なお、中間転写ベルト22の表面に付着した残トナー等はベルトクリーニング装置24により除去される。
【0036】
定着部18に搬送された記録紙は、加熱及び加圧されてトナー像が記録紙の表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された記録紙は記録紙搬送経路16の終端部へと案内され、排出ローラー対30bによってプリンター本体12の上面を兼ねる排出トレイ12a上に排出される。
【0037】
3.感光体ドラム20の使用初期における表面状態
本実施形態の画像形成装置11に用いられる感光体ドラム20は、使用初期における感光層表面の算術平均粗さRaが20[nm]以上100[nm]以下の範囲内にあり、十点平均粗さRzが0.2[μm]以上1.0[μm]以下の範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが20[μm]以下であり、凹凸の平均間隔Sm[μm]に対する算術平均粗さRa[nm]の比(Ra[nm]/Sm[μm])が3以上、スキューネスRskが0.3以上である表面粗さを有することが好ましい。なお、本明細書において、感光体ドラム20の使用初期とは、耐久印字前の新品の状態をいう。また、上記の表面状態は、少なくとも感光体ドラム20の使用初期(使用開始時の状態であり、換言すると、工場出荷後の状態である。)に有していればよい。算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、平均間隔Smは触針式2次元粗さ測定器を用いて1994年版のJISB0601で規定されている表面粗さ測定法により測定される。
【0038】
(1)算術平均粗さRa
算術平均粗さRaが20[nm]より小さい場合、長期間の使用によりクリーニングブレード42が摩耗し、画像不良に至る外添剤のすり抜け量が多くなる。算術平均粗さRaが100[nm]より大きい場合、耐久印字の比較的早い段階から帯電ローラー26の汚染が始まってしまい、長期間の使用が困難となる。つまり、感光体ドラム20の表面の凹凸が大きくなると、トナーの外添剤のすり抜けが使用初期の段階で生じてしまう。従って、使用初期における感光層表面の算術平均粗さRaは、20[nm]以上100[nm]以下の範囲内にあることが好ましい。
【0039】
(2)十点平均粗さRz
感光体ドラム20の使用初期における感光層表面の算術平均粗さRaが、20[nm]以上100[nm]以下の範囲にある場合、感光体ドラム20の使用初期における感光層表面の十点平均粗さRzは、0.2[μm]以上1.0[μm]以下の範囲にあることが好ましい。
【0040】
これは、算術平均粗さRaが上記範囲内にあっても、大きな凹凸が存在する場合、クリーニングブレード42はある程度変形するものの感光ドラム20表面に追従できず、感光体ドラム20とクリーニングブレード42との間に生じる隙間が大きくなる傾向にあり、これを防ぐための規定である。なお、感光体ドラム20とクリーニングブレード42との間隔が大きくなると、外添剤等のすり抜けが発生する。
【0041】
換言すると、大きな凸部分が感光体ドラム20の表面に存在して、この凸部分の先端がクリーニングブレード42に接触してしまうと、大きな凸部分の間に位置する凹部分がクリーニングブレード42と接触しないことになり、算術平均粗さRaの大きさを規定した意味がなくなるからである。つまり、感光体ドラム20の表面は、突飛的な凹凸が存在せず、微小な凹凸が存在するのが好ましく、この条件を十点平均粗さRzと算術平均粗さRaとで規定している。なお、突飛的な凹凸が存在しないことを十点平均粗さRzで規定している。
【0042】
(3)凹凸の平均間隔Sm
算術平均粗さRaや十点平均粗さRzが上記範囲内にあったとしても、大きな凸部分が離れて存在する場合、クリーニングブレード42は大きな凸部分に接触する(支持される)ことになる。ここでは、大きな凸部分が離れているか否かの判断に凹凸の平均間隔Smを利用している。
【0043】
クリーニングブレード42は、弾性変形可能であり、大きな凸(部分)間では感光体ドラム20に接触するように変形する。特に、凸部分の間隔が広い場合はクリーニングブレード42と感光体ドラム20との接触面積が増大することとなる。接触面積が増大すると、クリーニングブレード42との摩擦により感光体ドラム20の駆動トルクが増大すると共に、クリーニングブレード42の摩耗がひどくなり、やがて、クリーニングブレード42のスティックスリップを生じ、外添剤のすり抜けが生じたり、クリーニングブレード42のエッジが欠損したりする。なお、クリーニングブレード42のエッジが欠損すると、良好な画像が得られないのは言うまでもない。
【0044】
また、平均間隔Smが大きくなると、凸部分(山)が大きく(山の裾が広く)なり、長期使用により凸部分の頂部が摩耗すると、頂部に広い平坦部分が生じ、クリーニングブレード42との接触面積が増大してしまう。従って、感光体ドラム20の使用初期における感光層表面の算術平均粗さRaが20[nm]以上100[nm]以下の範囲であり、十点平均粗さRzが0.2[μm]以上1.0[μm]以下の範囲にある場合、凹凸の平均間隔Smは20[μm]以下であることが好ましい。
【0045】
表面粗さが上記範囲を満たすような凹凸を、感光層表面に感光体ドラム20の軸方向及び周方向に不規則的に形成することで、感光体ドラム20とクリーニングブレード42との摩擦を低減し、感光体ドラム20の駆動トルク及びクリーニングブレード42のエッジの摩耗の低減を達成することができる。特に、Ra[nm]/Sm[μm]≧3を満たすことで、平均間隔Smに対して3倍以上の高さ(深さ)を有する凹凸形状となるため、感光体ドラム20とクリーニングブレード42との接触面積が減少し、摩擦が効果的に低減される。上記範囲を満たすような感光層表面の凹凸は、例えば、支持体としてのアルミ等の金属筒(アルミ素管等)の外周面に、ブラスト加工等により粗面化処理を行った後、その表面にアモルファスシリコン層(感光層)を形成することにより調整することができる。
【0046】
(4)スキューネスRsk
また、スキューネスRsk≧0.3を満たすことで、感光体ドラム20とクリーニングブレード42との接触面積が減少し、摩擦が効果的に低減される。スキューネスRskが0.3以上である表面粗さを有する。算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、平均間隔Smの測定方法は第1、第2実施形態と同様である。
【0047】
ここで、スキューネスRskとは表面粗さの強弱を表すパラメーターの一つであり、平均線を中心としたときの山部と谷部の対称性(凹凸のゆがみ度)を表し、以下の式(1)のように二乗平均平方根高さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の三乗平均で表される。
・・・(1)
【0048】
Rskが0より大きいときは、図3に示すように凹凸は平均線Lに対して下側に偏った形状となる 。一方、Rskが0より小さいときは、図4に示すように凹凸は平均線に対して上側に偏った形状となる。つまり、感光層のスキューネスRskが0より大きい方がクリーニングブレード42に対してより点接触となるため、接触面積が減少すると考えられる。
【0049】
(5)DUH硬度
感光体ドラム20の使用初期における感光層のDUH硬度が500[kgf/mm2]以上1200[kgf/mm2]以下の範囲にあることが好ましい。DUH硬度が500[kgf/mm2]より小になると、クリーニングブレード42や摺擦ローラー43との接触により、感光体ドラム20の感光層が摩耗しやすく、長期間の使用ができないからである。この観点からは、DUH硬度が高い方が好ましい。このため、DUH硬度の上限は、現在使用することができる最も硬度の高い感光層の硬度で規定されている。なお、DUH硬度とは、ダイナミック超微小硬度計(DUHシリーズ、島津製作所社製)により測定された押しこみ硬度(マルテンス硬度)を指す。
【0050】
(6)凹凸の形態
ドラム表面の凹凸は、感光体ドラム20の軸方向及び周方向に不規則的に存在するのが好ましい。不規則的とは、ある面内の任意の一方向で凹凸を見たときに、凹凸の存在に一定の規則性がないことをいう。
【0051】
(7)領域
算術平均粗さRa、十点平均粗さRz及び平均間隔Smは、感光体ドラム20の表面における画像形成領域の全域において、上記範囲であることが好ましい。
【0052】
(8)トナー外添剤
トナーには外添剤として導電性研磨微粒子である酸化チタンやシリカが外添されているが、感光層表面の算術平均粗さRaが大きい場合は、クリーニングブレード42が追従できない凹凸の隙間から外添剤がすり抜けていく。そのため、本実施形態の感光体ドラム20に用いるトナーの外添剤は平均一次粒子径が10nm以上であることが好ましい。
【0053】
4.帯電ローラー26に印加する交流バイアスの設定
以下、本発明の画像形成装置11の特徴部分について説明する。本発明の画像形成装置11においては、感光体ドラム20の使用初期からの累積印字枚数に応じて帯電ローラー26に印加する交流バイアスを設定する。なお、帯電ローラー26には直流バイアスと交流バイアスの重畳バイアスが印加されるが、直流バイアスは適正な値とする。
【0054】
図5は、感光体ドラム20の表面電位とバイアス回路34から帯電ローラー26に印加される交流バイアスのピークツーピーク値との関係を示すグラフである。図5に示すように、交流バイアスのピークツーピーク値を増加させると、感光体ドラム20の表面電位は直線的に上昇していくが、ある交流バイアス値を境に感光体ドラム20の表面電位は略一定となる。この境の交流バイアス値(基準交流バイアス)を基準とした交流バイアスの比が乗算値Gである。
【0055】
感光体ドラム20を帯電させるために必要な交流バイアスは、設計条件や環境条件によって異なり、どの場合においても適正な値が存在するが、一般に乗算値Gが1以上であれば感光体ドラム20の表面電位は安定する。また、G=1となる境の交流バイアス値は、一般に、直流バイアスの放電開始電圧の2倍である。直流バイアスだけでも放電は起こるが、交流バイアスを重畳することで安定した表面電位を得ることができる。
【0056】
図5では、常温環境スタート時、常温環境連続印字中、および低温環境スタート時の3つの場合について感光体ドラム20の表面電位とバイアス回路34が印加する交流バイアスとの関係を示している。画像形成処理を続けていると、感光体ドラム20や帯電ローラー26が温まり、耐久の進んでない新品に近い帯電ローラー26の場合は感光体ドラム20の帯電に必要な交流バイアスは小さくて済むようになる。その結果、交流バイアスが必要以上に印加されることになり、感光体ドラム20の表面に放電生成物が発生し易くなる。例えば、画像形成装置11本体の機内温度が常温環境下(例えば、機内温度23℃)の場合、画像形成処理開始時は交流バイアス1000(V)付近が適正な値であるが、連続した画像形成処理中においては900(V)付近の交流バイアスが適正な値になることもある。また、画像形成処理開始時の機内環境が低温環境下(例えば、機内温度10℃)であった場合、交流バイアス1500(V)付近が適正な値である。
【0057】
本実施形態の画像形成装置11における感光体ドラム20の使用開始からの期間Tとバイアス回路34から帯電ローラー26に印加される交流バイアスVの関係の一例を表1に示す。使用開始からの期間Tは、感光体ドラム20の使用開始からの印字枚数の累積値(累積印字枚数)を示すカウンター39の累積カウント数Nで表わされる。交流バイアスVは乗算値Gで表わされる。
【0058】
【表1】
【0059】
図6は、表1に示す累積カウント数Nと乗算値Gとの関係の一例をグラフに示したものである。表1および図6に示すように、累積カウント数Nが10,000枚未満である第1の期間T1においては、0.97≦G<1.00を満たす乗算値Gの第1交流バイアスV1を印加する。累積カウント数Nが10,000枚以上で300,000枚未満である第2の期間T2においては、1.00≦G<1.20を満たす乗算値Gの第2交流バイアスV2を印加する。累積カウント数Nが300,000枚以上である第3の期間T3においては、0.97≦G<1.10を満たす乗算値Gの第3交流バイアスV3を印加する。
【0060】
5.帯電ローラー26に印加する交流バイアスの設定制御
図7は、本実施形態に係る画像形成装置11において制御回路30がバイアス回路34を介して帯電ローラー26に印加する交流バイアスの設定を行うバイアス設定制御の処理内容を示すフローチャートである。なお、画像形成装置11全体を制御する不図示のメインルーチンがあり、図7に示すフローは当該メインルーチンのサブルーチンである。図7に示す画質低下抑制制御のサブルーチンは、画像形成装置11の電源がオンになるとスタートする。
【0061】
制御回路30は、先ず、プリントジョブを受け付けたかどうかを監視する(ステップS1)。プリントジョブの受け付けは、画像形成装置11の操作パネルを介したユーザーからの入力や、LANやインターネット等の通信回線を介して接続されたPC等からの入力により行われる。プリントジョブを受け付けていない場合には(ステップS1でNo)、制御回路30はそのまま監視を継続する。
【0062】
プリントジョブを受け付けた場合には(ステップS1でYes)、制御回路30は、カウンター55によりカウントされた累積カウント数(感光体ドラム20の使用初期からの累積印字枚数)Nが10,000枚未満であるかどうかを判定する(ステップS2)。累積カウント数Nが10,000枚未満である(第1の期間T1である)場合(ステップS2でYes)、制御回路30は、バイアス回路34から帯電ローラー26に0.97≦G<1.00の範囲内の乗算値Gで第1交流バイアスV1を印加させる(ステップS3)。
【0063】
累積カウント数Nが10,000未満でない場合、即ち、累積カウント数Nが10,000以上である(第2の期間T2又は第3の期間T3である)場合は(ステップS2でNo)、次に累積カウント数Nが300,000枚未満であるかどうかを判定する(ステップS4)。
【0064】
累積カウント数Nが300,000枚未満である(第2の期間T2である)場合は(ステップS4でYes)、制御回路30は、バイアス回路34から帯電ローラー26に1.00≦G≦1.20の範囲内の乗算値Gで第2交流バイアスV2を印加させる(ステップS5)。
【0065】
累積カウント数Nが300,000枚未満でない場合、即ち、累積カウント数Nが300,000枚以上である(第3の期間T3である)場合は(ステップS4でNo)、制御回路30は、バイアス回路34から帯電ローラー26に0.97≦G≦1.10の範囲内の乗算値Gで第3交流バイアスV3を印加させる(ステップS6)。その後、ステップS1に戻り、制御回路30はプリントジョブを受け付けたかどうかを監視し、以下同様の手順を繰り返す(ステップS1〜S6)。
【0066】
本実施形態の画像形成装置11では、感光体ドラム20の使用初期である第1の期間T1(N<10,000)において、第2の期間T2(10,000≦N≦300,000)の場合よりも乗算値Gを低く設定しており、V1<V2となっている。これにより、第1の期間T1において放電生成物の発生を抑制し、スティックスリップによる外添剤のすり抜けを抑制することができる。感光体ドラム20の使用初期の第1の期間T1においては、感光体ドラム20や帯電ローラー26も比較的きれいな状態なので、乗算値Gを低く設定して交流バイアスVを低くしても画質劣化は無視できる程度であると考えられる。
【0067】
さらには、交流バイアスVを比較的低くすることにより、帯電された感光体ドラム20の表面電位が比較的低くなり、感光体ドラム20の表面に対するトナー及び外添剤の付着力が小さくなる。その結果、除電装置29による除電やクリーニングブレード42、摺擦ローラー43によるクリーニングでトナー及び外添剤が除去されやすくなり、感光体ドラム20の表面とクリーニングブレード42との間をすり抜ける外添剤の量も少なくなる。
【0068】
これにより、感光体ドラム20の使用初期である第1の期間T1における第1交流バイアスV1を、第2の期間T2における第2交流バイアスV2よりも低くすることで、画質を犠牲にすることなく外添剤のすり抜けを抑制することができる。
【0069】
一方、累積カウント数Nが300,000<Nである第3の期間T3においては、それまでの使用により既に放電生成物が感光体ドラム20の表面に付着し、また感光体ドラム20表面の凹凸も摩耗して表面粗さが小さくなっているため、スティックスリップが発生しやすくなっている。従って、乗算値Gを第2の期間T2よりも低めに設定して、放電生成物の発生を抑制する。ここで、使用初期の場合と異なり、帯電ローラー26は既にある程度汚れているので、交流バイアスVを低くし過ぎると画質劣化が顕著に表れるおそれがある。そのため、第3の期間T3に印加される第3交流バイアスV3においては、乗算値Gの上限を第1の期間T1よりも高く設定している。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置11によると、感光体ドラム20表面の表面粗さが大きい使用初期の段階における外添剤のすり抜けを抑制することができる。
【0071】
<変形例>
以上、本発明の画像形成装置11について実施形態を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例、変形例同士を組み合わせたものであってもよい。また、実施形態に記載していていない例や、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0072】
(変形例1)乗算値Gは、それぞれの範囲内において予め所定の値が設定されていてもよい。
(変形例2)乗算値の基準となるG=1の電圧は、画像形成装置11が設置されている環境(気温や湿度等)や帯電ローラー26のゴムの基材の抵抗によって異なる。従って、乗算値Gは、それぞれの範囲におけるその時の環境に基づいて決定される最適値であってもよい。
(変形例3)累積印字枚数を計数する方法は、カウンター55による計数に限られるものではなく、例えば、RAM53等でその回数を記憶するようにしてもよい。
(変形例4)上記実施形態では第1の期間T1〜第3の期間T3をカウンター39の累積カウント数Nで表しているが、これに限らず、感光体ドラム20の累積駆動時間で表してもよい。
(変形例5)第3の期間T3において、乗算値Gの範囲を第2の期間T2と同じにしてもよい。即ち、V2=V3であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、表面にトナー像が形成される像担持体を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、像担持体表面の表面粗さが大きい使用初期の段階における外添剤のすり抜けを抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
11 画像形成装置
20 感光体ドラム(像担持体)
21 現像装置
26 帯電ローラー(帯電部材)
30 制御回路(制御部)
31 ROM
33 HDD
34 バイアス回路(バイアス印加装置)
36 駆動モーター
39 カウンター(印字枚数カウント部)
42 クリーニングブレード(クリーニング部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7