(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定着ベルトの内径側に設けられていて、前記第1リード線を、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延ばすと共に前記一端部から外側へと引き出して配線し、前記第2リード線を、前記軸方向の他端側に延ばした後、前記軸方向の一端側に向けて曲げ、更に、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延ばすと共に前記一端部から外側へと引き出して配線するホルダーを更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、定着ベルト内部に電気部品を配置する場合、定着ベルト内部の温度やコイルから発生した磁束が、電気部品に影響しないように対策する必要がある。コイルで発生した磁束は、定着ベルトと、この定着ベルトを支持するベルトガイドとで殆どが吸収されて熱に変換されるが、一部が漏れ磁束として定着ベルトとベルトガイドとを透過することがある。コイルで発生した磁束は、定着ベルトのベルト基材で80%程度吸収されて渦電流に変換され、残りの磁束は定着ベルトを透過してベルトガイドで略吸収されて渦電流に変換される。摺動ベルトIH方式では、定着ベルトを可撓性を維持できる厚み以下にする必要があり、ベルトガイドも定着ベルトのバネ性と熱容量をできるだけ低減するために0.2mm前後の厚みが望ましい。すると、ベルトガイド内部への漏れ磁束が完全に0になるわけではなく、わずかではあるがベルトガイド内部への漏れ磁束が存在する。そして、漏れ磁束により電磁ノイズが発生して、定着ベルト内部に配置された電気部品から引き出されるリード線の配線に影響を与える場合がある。
【0008】
電気部品には、例えば、定着ベルトに内接するサーミスター等の温度センサーや、定着ベルトに内接する温度ヒューズ等の安全素子がある。上記したように、電気部品の配線を、漏れ磁束の影響が少ない領域に配置することで、電磁ノイズの影響を低減する構成が提案されている。
【0009】
ところで、摺動ベルトIH方式において、安全素子としてサーモスタットが用いられる場合がある。サーモスタットは、一般的に、バイメタル等の温度検知部の両側からリード線を引き出して配線される。サーモスタットを定着ベルトの内部に配置すると、リード線が定着ベルトの両端から引き出された後、ベルトユニットを囲むように引き回されて大きなループを構成する。このような大きなループを有するリード線の配線は、コイルからの漏れ磁束が鎖交し易く、即ち、漏れ磁束によって発生する電磁ノイズの影響を受け易く、電磁ノイズが相対的に大きくなってしまう。
【0010】
本発明では、定着ベルトの内部の漏れ磁束によって過昇温防止装置の配線に誘起される電磁ノイズを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の定着装置は、回転軸を中心に回転可能に設けられる定着ベルトと、前記定着ベルトに内接して回転軌道を補助するベルトガイドと、前記定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、前記定着ベルトを挟んで前記加圧部材とは反対側で、前記定着ベルトから外側に離間して配置され、前記定着ベルトを誘導加熱するコイルからなる熱源と、前記ベルトガイドの内側で前記ベルトガイドに非接触で設けられ、前記軸方向の一端側及び他端側のそれぞれに接続される第1リード線及び第2リード線を有し、前記ベルトガイドの過昇温を防止する過昇温防止装置と、を備え、前記第1リード線は、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延びると共に前記一端部から外側へと引き出されて配線され、前記第2リード線は、前記軸方向の他端側に延びた後、前記軸方向の一端側に向けて曲げられ、更に、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延びると共に前記一端部から外側へと引き出されて配線されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、定着装置では、定着ベルト及びベルトガイドの内部に過昇温防止装置(例えば、サーモスタット)等の電気部品を設ける場合に、この電気部品の配線で構成されるループの面積を小さくすることができる。そのため、定着ベルト及びベルトガイドの内部に侵入する漏れ磁束によって配線に誘起される電磁ノイズの影響を簡易な構成で低減、抑制することができる。
【0013】
上記した定着装置は、少なくとも前記第2リード線の曲げ部分を前記ベルトガイド側から覆う遮蔽部材を更に備える。
【0014】
第2リード線の配線作業上、曲げ部分のループ面積をある程度確保する必要があるので、曲げ部分の小さなループを鎖交する漏れ磁束が少し残る場合がある。これに対して、遮蔽部材をベルトガイドと第2リード線の曲げ部分との間に挿入して配置することにより、曲げ部分のループを鎖交する漏れ磁束を低減し、電磁ノイズの誘起を抑制することができる。なお、ベルトガイドの内部にはスペースにあまり余裕がないし、遮蔽面積としては、配線のループを覆うことができれば問題ないので、スペース、コスト及びノイズ低減効果を考慮して、第2リード線の曲げ部分の周辺のみに遮蔽部材が配置される。
【0015】
前記遮蔽部材は、前記第2リード線の曲げ部分に加えて、前記過昇温防止装置及びその周辺部を、前記ベルトガイド側から覆うように構成され、前記過昇温防止装置に対応する位置に開口部を有する。
【0016】
このような構成を採用することで、遮蔽部材の遮蔽面積を広げて、漏れ磁束による電磁ノイズの影響をより抑制する場合でも、過昇温防止装置の温度検知部分(例えば、サーモスタット等の感熱部材)が開口部から露出される。このため、過昇温防止装置の検知性能に影響を与えない構成を実現することができ、過昇温防止装置は、ベルトガイドの温度を応答性よく、直接検知することができる。
【0017】
前記遮蔽部材は、0.2〜0.4mmの厚さを有すると共に、導電性を有していて磁気を遮蔽する非磁性SUS板で形成される。
【0018】
このような構成を採用することで、非磁性SUS板からなる遮蔽部材は、定着ベルトやベルトガイドの発熱性能に影響を与えることなく、漏れ磁束を遮蔽することができる。また、遮蔽部材は、0.2〜0.4mmの厚さを有することにより、バネ性(弾性)と磁気遮蔽性能とを適度なバランスで両立している。
【0019】
前記定着ベルトの内径側に設けられていて、前記第1リード線を、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延ばすと共に前記一端部から外側へと引き出して配線し、前記第2リード線を、前記軸方向の他端側に延ばした後、前記軸方向の一端側に向けて曲げ、更に、前記定着ベルトの軸方向一端部へと延ばすと共に前記一端部から外側へと引き出して配線するホルダーを更に備える。
【0020】
このような構成を採用することで、第2リード線の曲げ部分を配線するのに、作業がし易く且つ配線形状を保持することを簡易な構成で実現することができる。
【0021】
前記遮蔽部材及び前記ホルダーは、スナップフィット機構を備え、前記遮蔽部材は、バネ性を有していて、前記スナップフィット機構によって前記ホルダーに取り付けられる。
【0022】
このような構成を採用することで、遮蔽部材のバネ性を利用する簡易なスナップフィット機構によって、遮蔽部材をホルダーに取り付けることができることができる。
【0023】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、定着ベルトの内部の漏れ磁束によって過昇温防止装置の配線に誘起される電磁ノイズを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、
図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。以下、説明の便宜上、
図1における紙面手前側をプリンター1の前側(正面側)とする。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、R、U、Loは、それぞれプリンター1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を示している。
【0027】
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(記録媒体)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の側方に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
【0028】
プリンター本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が排紙トレイ4の下方に配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(
図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0029】
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送経路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送経路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙部20が設けられている。搬送経路15の下方には、両面印刷用の反転経路21が形成されている。
【0030】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0031】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0032】
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(
図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
【0033】
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部20から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残留したトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
【0034】
次に、定着装置18について、
図2〜
図11を用いて説明する。
【0035】
図2等に示されるように、定着装置18は、略箱型形状のフレーム23と、定着ベルト24と、加圧ローラー25(加圧部材)と、熱源26と、支持ステー27(支持部材)と、押圧パッド28(押圧部材)と、摺動シート30と、ベルトガイド31と、電気部品ホルダー32(ホルダー)と、第1サーミスター33(温度検知装置)と、第2サーミスター34(温度検知装置)と、第3サーミスター35(温度検知装置)と、サーモスタット36(過昇温防止装置)と、導電性磁気遮蔽部材37(遮蔽部材)と、を備えている。
【0036】
定着ベルト24及び加圧ローラー25は、
図3及び
図4に示されるように、搬送経路15を挟んで上側及び下側にそれぞれ配置される。
【0037】
定着ベルト24は、用紙の搬送方向(左右方向)と直交(交差)する用紙の幅方向(前後方向)に長く、周方向には無端状の略円筒形状を有する。定着ベルト24は、例えば、約30mmの直径を有する。定着ベルト24は、前後方向に延びる回転軸Aの周りを回転可能に設けられている。本実施形態では、前後方向が定着ベルト24の回転軸方向である。なお、定着ベルト24は、加圧ローラー25の回転に伴って摺動して回転する摺動ベルトである。また、定着ベルト24は、熱源26によって下記のように誘導加熱される発熱用ベルトも兼ねる。
【0038】
定着ベルト24は、可撓性を有していて、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成される。定着ベルト24の基材層は、例えばニッケル(ニッケル電鋳)やSUS等の金属によって形成され、約30〜50μmの厚さを有する。定着ベルト24の基材層の内周面には、PIやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂コートが施されて、摺動磨耗を抑制するように構成される。定着ベルト24の弾性層は、例えばシリコンゴムによって形成され、約200〜500μmの厚さを有する。定着ベルト24の離型層は、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)によって形成される。なお、各図において、定着ベルト24の各層(基材層、弾性層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。
【0039】
加圧ローラー25は、前後方向に長い略円柱状に形成されると共に回転可能に取り付けられる。加圧ローラー25は、定着ベルト24の外周面に対して圧接されることで、定着ベルト24と加圧ローラー25との間には定着ニップNが形成される。加圧ローラー25の後端部には、駆動ギア38が同軸に固定される。加圧ローラー25は、この駆動ギア38を介してモーター等の駆動源(図示せず)に接続されていて、この駆動源によって回転駆動される。
【0040】
加圧ローラー25は、例えば、円柱状の芯材40と、この芯材40に周設される弾性層41と、この弾性層41を被覆する離型層42と、によって構成される。加圧ローラー25の芯材40は、例えば、SUSやアルミニウム等の金属によって形成され、この芯材40が加圧ローラー25の回転軸となる。加圧ローラー25の弾性層41は、例えば、シリコンゴム等によって形成され、約3〜5mmの厚さを有する。加圧ローラー25の離型層42は、例えば、PFA等によって形成される。
【0041】
熱源26は、定着ベルト24を上方から覆うような外包形状を有し、定着ベルト24の上側(外側)に配置される。換言すれば、熱源26は、定着ベルト24を挟んで加圧ローラー25とは反対側で、定着ベルト24から外側に所定間隔を空けて離間して配置される。熱源26は、ボビン44と、コイル45と、センターコア46と、アーチコア47と、2つのサイドコア48と、を備えている。熱源26は、コイル45に電流を流すことで磁束を生成し、この磁束を定着ベルト24に作用させることで定着ベルト24を誘導加熱(IH:Induction Heating)させるIH定着ユニットである。
【0042】
ボビン44は、定着ベルト24の回転軸方向に長く、定着ベルト24の曲面(外周面上側)形状に沿うような断面円弧形状を有する板部材である。コイル45は、定着ベルト24の回転軸方向に沿って、ボビン44の円弧形状の外径側の面(外周面)上に巻き回されている。即ち、コイル45は、定着ベルト24の曲面(外周面上側)形状に沿うように成形された外包型コイルである。コイル45は、上記したように電流を流すことで磁束を生成するIH用コイルである。
【0043】
センターコア46、アーチコア47及びサイドコア48は、コイル45で発生した磁束を定着ベルト24へと案内するフェライト部材を構成する。なお、ボビン44、センターコア46、アーチコア47及び2つのサイドコア48は、コイル45を収納するケースも兼ねる。
【0044】
センターコア46は、定着ベルト24の回転軸方向に長い形状を有し、ボビン44の外周面上で左右方向の中央に配置される。アーチコア47は、定着ベルト24の回転軸方向に長く、ボビン44及びコイル45を上方から覆うように、ボビン44よりも外径が大きい断面円弧形状を有する板部材である。アーチコア47は、ボビン44及びコイル45の上側(外側)に配置され、換言すれば、コイル45を挟んで定着ベルト24とは反対側に配置される。各サイドコア48は、定着ベルト24の回転軸方向に長い形状を有する。2つのサイドコア48は、ボビン44の両端側(アーチコア47の両端側)に配置され、各サイドコア48は、ボビン44の各端部とアーチコア47の各端部とに渡って、ボビン44とアーチコア47との間の隙間を塞ぐように配置されている。
【0045】
なお、熱源26では、センターコア46と2つのサイドコア
48とがボビン44に対して所定位置に配置されるようなコイルボビンを構成している。また、アーチコア47は、アーチコアホルダー(図示せず)の所定位置に配置される。更に、このアーチコアホルダー(図示せず)を覆うようにアルミニウムカバー(図示せず)が配置される。
【0046】
支持ステー27は、前後方向に長い略四角筒状に形成され、例えば、SUS等の金属によって形成される。支持ステー27は、定着ベルト24の内側で略中央に配置される。支持ステー27の両端には、フランジ50が設けられ、フランジ50がフレーム23に固定されることで、支持ステー27がフレーム23に固定される。支持ステー27は、押圧パッド28を支持する部材であり、摺動シート30、ベルトガイド31及び電気部品ホルダー32を取り付けるベース部材も兼ねる。
【0047】
押圧パッド28は、前後方向に長い略角柱状に形成され、LCP(液晶ポリマー)等の耐熱性樹脂によって形成される。押圧パッド28は、定着ベルト24の内側で支持ステー27の下側に設けられて、その上面が支持ステー27によって支持され、また、その下面が定着ベルト24の内周面下側を下方(加圧ローラー25側)に向かって押圧するように配置される。換言すれば、押圧パッド28は、定着ベルト24を介して加圧ローラー25を押圧することで、定着ニップNを形成し、加圧ローラー25と共に定着ベルト24を挟持搬送する部材である。
【0048】
摺動シート30は、押圧パッド28よりも摩擦係数が低く滑り性の良好な前後方向に長いシートであり、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂によって形成される。定着ベルト24の内側で支持ステー27の側面(右側面)から下方に延びて、定着ベルト24の内周面と押圧パッド28との間に挿入されるように配置される。摺動シート30は、支持ステー27の側面(右側面)に対して支持板51によって押さえられると共にビス52によって締結される。摺動シート30は、定着ベルト24の内周面と押圧パッド28の摺動面との摺動抵抗を低減すると共に、定着ベルト24の内周面と押圧パッド28の摺動面との磨耗も抑制する部材である。
【0049】
ベルトガイド31は、例えば、コイル45が発生させる磁束によって発熱するFe−Ni合金等の整磁金属等の材料で、前後方向に長形で約0.2mmの厚さを有する略半円筒状に形成され、定着ベルト24の内周面上側に沿うような断面円弧形状を有する。ベルトガイド31は、下面中央で前後方向に亘る開口を有し、この開口は、支持ステー27を挿入可能な面積を有する。ベルトガイド31の開口の左右両側の縁部には、下方に突出する突出部
53が形成されている。
【0050】
ベルトガイド31は、定着ベルト24の内側且つ支持ステー27の上側で、ベルトガイド31の円弧形状の外周面が定着ベルト24の内周面上側に沿うように配置され、定着ベルト24の回転軌道を補助すると共に安定させるために定着ベルト24に内接される。ベルトガイド31は、右側の突出部
53が摺動シート30と共に支持板51及びビス52によって締結されることで、支持ステー27に取り付けられる。また、ベルトガイド31は、定着ベルト24を透過した漏洩磁束を吸収して発熱を補助する機能を有すると共に、ベルトガイド31の内部への漏洩磁束を低減する機能も有する。
【0051】
電気部品ホルダー32は、前後方向に長い形状を有し、支持ステー27の上面に取り付けられると共に、ベルトガイド31の内部に配置される。電気部品ホルダー32は、第1サーミスター33、第2サーミスター34、第3サーミスター35及びサーモスタット36や、これらの配線等の電気部品を取り付け、保持する部材である。また、電気部品ホルダー32におけるサーモスタット36の取付位置、例えば、前後方向において第1サーミスター33と第3サーミスター35との間には、取付板54が設けられていて、取付板54の左側面には、係合突起部55が形成されている。
【0052】
図5等に示されるように、第1サーミスター33は、定着ベルト24を通過する用紙の幅方向の中央付近(前後方向の中央付近)で電気部品ホルダー32の上面に取り付けられる。第1サーミスター33は、定着ベルト24のベルト温度のメイン制御用の温度センサーである。
【0053】
第2サーミスター34は、用紙(例えば、A4サイズの用紙)が縦方向を搬送方向として定着ベルト24を通過する際に用紙の幅方向の外側(非通紙領域)に対応する位置で、電気部品ホルダー32の上面に取り付けられる。第2サーミスター34は、縦サイズの用紙を通紙する際の定着ベルト24の非通紙領域の温度を監視して過昇温を防止するための温度センサーである。
【0054】
第3サーミスター35は、プリンター1で取り扱い得る最大サイズの用紙が定着ベルト24を通過する際に用紙の幅方向の外側(非通紙領域)に対応する位置で、電気部品ホルダー32の上面に取り付けられる。第3サーミスター35は、最大サイズの用紙を通紙する際の定着ベルト24の非通紙領域の温度を監視して過昇温を防止するための温度センサーである。
【0055】
第1サーミスター33は、
図5、
図6及び
図7等に示すように、ハウジング60と、2枚の板バネ61と、サーミスターチップ62と、保護テープ63と、リード線64と、コネクタ65と、を備える。
【0056】
ハウジング60は、例えば、樹脂等でモールド形成され、電気部品ホルダー32上の所定の位置にビス等(図示せず)で固定される。各板バネ61は、例えば、バネ性(弾性)を有するSUS等の金属で形成され、先端が僅かに折り曲げられている。2枚の板バネ61の基端は、ハウジング60の右端に所定間隔を空けて取り付けられ、ハウジング60の右端から右下方向に延びている。サーミスターチップ62は、2枚の板バネ61の先端の間に配置され、各板バネ61と電気的に接続されている。保護テープ63は、例えば、PIテープであり、2枚の板バネ61の先端とサーミスターチップ62とを挟むように貼付される。
【0057】
リード線64は、2本1組で構成されていて、ハウジング60に取り付けられ、ハウジング60から延びて電気部品ホルダー32上に配線される。リード線64は、ハウジング60の内部にも配線されて2枚の板バネ61と電気的に接続されている。コネクタ65は、リード線64の先端に電気的に接続されている。
【0058】
上記のような構成の第1サーミスター33は、2枚の板バネ61の先端が定着ベルト24の内周面に接触するように配置されていて、2枚の板バネ61の先端に取り付けられたサーミスターチップ62が定着ベルト24のベルト温度を検知する。2枚の板バネ61は、定着ベルト24の内周面に向けて付勢されるバネ性を有するので、定着ベルト24の内周面に対して安定して接触される。2枚の板バネ61の先端には、保護テープ63が貼付されているので、各板バネ61やサーミスターチップ62の接触磨耗を低減している。
【0059】
第2サーミスター34及び第3サーミスター35は、第1サーミスター33と同様の構成を有するので、それらの説明は省略する。
【0060】
サーモスタット36は、定着ベルト24やベルトガイド31に過昇温(異常加熱)が生じた場合に安全素子として機能する。定着ベルト24とベルトガイド31とは、接触しているので、非通紙飽和状態では、温度レベルは略同等となる。但し、昇温過渡状態や通紙状態では定着ベルト24の表面の熱は紙や外気によって奪われるのに対し、ベルトガイド31の内面からベルトガイド31の内部では、熱がこもることにより、奪われる熱量が小さくなる。そのため、定着ベルト24表面温度<ベルトガイド31内面温度の温度関係になり、例えば、定着ベルト24表面温度とベルトガイド31内面温度の温度差は、10〜20℃程度になる。
【0061】
また、定着ベルト24は薄肉の基材をベースにしているため、基材の欠陥や異物による傷、蛇行ストレス、金属疲労等によって破損する可能性がある。定着ベルト24が破損した場合、定着ベルト24が存在しなくなった部分では、コイル45よって発生した磁束はベルトガイド31のみを加熱することになる。
【0062】
そこで、定着ベルト24表面温度とベルトガイド31内面温度の温度差や、定着ベルト24の破損時の安全性を考慮して、サーモスタット36は、ベルトガイド31内面温度を検知して、ベルトガイド31の異常加熱を検出すると共に、定着ベルト24の異常加熱を検出する。
【0063】
サーモスタット36は、
図5、
図8及び
図9等に示されるように、ハウジング70と、温度検知部材71と、2つのリード端子72、73(第1リード端子及び前記第2リード端子)と、2つのリード線74、75(第1リード線及び第2リード線)と、を備えている。サーモスタット36は、温度検知部材71がベルトガイド31から所定間隔、例えば、1〜3mmの間隔を空けるように、上記したように電気部品ホルダー32の取付板54上に配置される。
【0064】
ハウジング70は、例えば、樹脂等でモールド形成され、電気部品ホルダー32の取付板54上にビス等(図示せず)で固定される。温度検知部材71は、例えば、バイメタル等の感熱部材でからなり、ハウジング70の略中央でベルトガイド31の温度を検知できるように取り付けられる。2つのリード端子72、73は、ハウジング70の前後両端(定着ベルト24の軸方向一端部及び他端部)にそれぞれ取り付けられ、ハウジング70の内部で温度検知部材71と電気的に接続されている。2つのリード線74、75は、かしめ付け等で2つのリード端子72、73に固定されると共に電気的に接続されている。
【0065】
前側のリード線74(第1リード線)は、前方(定着ベルト24の軸方向一端部)へと延びると共に定着ベルト24の内部から前側(一端部)を介して外側へと引き出されて配線される。後側のリード線75(第2リード線)は、後方(定着ベルト24の軸方向の他端側)に延びた後、前方(軸方向の一端側)に向けて曲げられ、即ち、途中で折り返して(Uターンして)配線されている。更に、後側のリード線75は、上記の曲げ部分76(Uターン部分)から前方(定着ベルト24の軸方向一端部)へと延びると共に定着ベルト24の内部から前側(一端部)を介して外側へと引き出されて配線される。なお、後側のリード線75の曲げ部分76は、鋭角的な折り返しではなく、所定のループ面積を有するように構成され、配線作業や線材へのストレスが軽減されている。
【0066】
2つのリード線74、75は、電気部品ホルダー32に設けられる配線ガイドによって配線される。例えば、電気部品ホルダー32は、前側のリード線74を、前方へと延ばすと共に定着ベルト24の前側から外側へと引き出して配線する配線ガイドと、後側のリード線75を、後方に延ばした後、前方に向けて曲げ、更に、前方へと延ばすと共に定着ベルト24の前側から外側へと引き出して配線する配線ガイドとを有する。電気部品ホルダー32は、上記のような後側のリード線75の曲げ部分76を配線するのに、作業がし易く且つ配線形状の保持機能を有する。
【0067】
導電性磁気遮蔽部材37は、
図10や
図11等に示されるように、前後方向において電気部品ホルダー32よりも短く、断面逆U字形状を有する板部材である。導電性磁気遮蔽部材37は、例えば、バネ性(弾性)を有する非磁性SUS(SUS304等)等で0.2〜0.4mm程度の厚さを有する板材で形成される。導電性磁気遮蔽部材37の左壁部分には、係合穴80が形成されている。導電性磁気遮蔽部材37は、少なくともサーモスタット36の後側のリード線
75の曲げ部分
76に対応する位置で、この曲げ部分
76を電気部品ホルダー32と共に、上側及び左右両側(ベルトガイド31側)から覆うように、電気部品ホルダー32に取り付けられる。
【0068】
導電性磁気遮蔽部材37がサーモスタット36の温度検知部材71も覆う場合には、導電性磁気遮蔽部材37の上部には、温度検知部材71に対応する位置に開口部81が形成される。導電性磁気遮蔽部材37の係合穴80は、電気部品ホルダー32の取付板54の係合突起部55と共に、スナップフィット機構
82を構成する。係合突起部55と係合穴80とを係合させると共に、導電性磁気遮蔽部材37のバネ性を利用することで、導電性磁気遮蔽部材37が電気部品ホルダー32に対してスナップフィットで取り付けられる。
【0069】
本実施形態によれば、上述のように、プリンター1(画像形成装置)の定着装置18は、回転軸Aを中心に回転可能に設けられる定着ベルト24と、定着ベルト24に内接して回転軌道を補助するベルトガイド31と、定着ベルト24に圧接して定着ニップNを形成し、回転可能に設けられる加圧ローラー25(加圧部材)と、定着ベルト24を挟んで加圧ローラー25とは反対側で、定着ベルト24から外側に離間して配置され、定着ベルト24を誘導加熱するコイル45からなる熱源26と、ベルトガイド31の内側でベルトガイド31に非接触で設けられ、前側及び後側(定着ベルト24の回転軸方向の一端側及び他端側)のそれぞれに接続されるリード線74、75(第1リード線及び第2リード線)を有し、ベルトガイド31の過昇温を防止するサーモスタット36(過昇温防止装置)と、を備える。前側のリード線74は、前方(定着ベルト24の軸方向一端部)へと延びると共に定着ベルト24の内部から前側(一端部)を介して外側へと引き出されて配線される。後側のリード線75(第2リード線)は、後方(定着ベルト24の軸方向の他端側)に延びた後、前方(軸方向の一端側)に向けて曲げられ、更に、曲げ部分76(Uターン部分)から前方(定着ベルト24の軸方向一端部)へと延びると共に定着ベルト24の内部から前側(一端部)を介して外側へと引き出されて配線される。
【0070】
これにより、定着装置18では、定着ベルト24及びベルトガイド31の内部にサーモスタット36等の電気部品を設ける場合に、この電気部品の配線で構成されるループの面積を小さくすることができる。そのため、定着ベルト24及びベルトガイド31の内部に侵入する漏れ磁束によって配線に誘起される電磁ノイズの影響を簡易な構成で低減、抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、定着装置18は、少なくとも後側のリード線75(第2リード線)の曲げ部分76をベルトガイド31側から覆う導電性磁気遮蔽部材37(遮蔽部材)を更に備える。
【0072】
後側のリード線75の配線作業上、曲げ部分76のループ面積をある程度確保する必要があるので、曲げ部分76の小さなループを鎖交する漏れ磁束が少し残る場合がある。これに対して、導電性磁気遮蔽部材37をベルトガイド31と後側のリード線75の曲げ部分76との間に挿入して配置することにより、曲げ部分76のループを鎖交する漏れ磁束を低減し、電磁ノイズの誘起を抑制することができる。なお、導電性磁気遮蔽部材37は、定着ベルト24の軸方向全長に亘って形成されてもよいが、ベルトガイド31の内部にはスペースにあまり余裕がないし、遮蔽面積としては、配線のループを覆うことができれば問題ない。
【0073】
そこで、スペース、コスト及びノイズ低減効果を考慮して、後側のリード線75の曲げ部分76の周辺のみに導電性磁気遮蔽部材37が配置される。なお、導電性磁気遮蔽部材37で覆われない部分では、2つのリード線75、76の配線は略近接並行状態であれば、漏れ磁束で発生する電磁ノイズの影響はさほど受けない。これは、第1サーミスター33、第2サーミスター34及び第3サーミスター35(温度検知装置)の配線についても同様である。
【0074】
また、本実施形態によれば、導電性磁気遮蔽部材37は、後側のリード線75の曲げ部分76に加えて、サーモスタット36(過昇温防止装置)及びその周辺部を、ベルトガイド31側から覆うように構成され、サーモスタット36に対応する位置に開口部81を有する。
【0075】
これにより、導電性磁気遮蔽部材37の遮蔽面積を広げて、漏れ磁束による電磁ノイズの影響をより抑制する場合でも、サーモスタット36のバイメタル等の感熱部材が開口部81から露出される。このため、サーモスタット36の検知性能に影響を与えない構成を実現することができ、サーモスタット36は、ベルトガイド31の温度を応答性よく、直接検知することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、導電性磁気遮蔽部材37は、0.2〜0.4mmの厚さを有すると共に、導電性を有していて磁気を遮蔽する非磁性SUS板で形成される。
【0077】
遮蔽部材として、仮に、銅やアルミニウム等の材料が採用されると、導電性が良過ぎるため反磁性効果によってベルトガイド31を透過した漏れ磁束をキャンセルするような磁束が発生し、定着ベルト24やベルトガイド31の発熱性能に影響を与え、温度分布が不均一になることがある。これに対して、非磁性SUS板からなる導電性磁気遮蔽部材37は、定着ベルト24やベルトガイド31の発熱性能に影響を与えることなく、漏れ磁束を遮蔽することができる。また、導電性磁気遮蔽部材37は、0.2〜0.4mmの厚さを有することにより、バネ性(弾性)と磁気遮蔽性能とを適度なバランスで両立している。
【0078】
また、本実施形態によれば、定着装置18は、定着ベルト24の内径側に設けられていて、前側のリード線74を、前方へと延ばすと共に定着ベルト24の前側から外側へと引き出して配線し、後側のリード線75を、後方に延ばした後、前方に向けて曲げ、更に、前方へと延ばすと共に定着ベルト24の前側から外側へと引き出して配線する電気部品ホルダー32(ホルダー)を、更に備える。
【0079】
これにより、後側のリード線75の曲げ部分76を配線するのに、作業がし易く且つ配線形状を保持することを簡易な構成で実現することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、導電性磁気遮蔽部材37及び電気部品ホルダー32は、スナップフィット機構82を備え、導電性磁気遮蔽部材37は、バネ性を有していて、スナップフィット機構82によって電気部品ホルダー32に取り付けられる。
【0081】
これにより、導電性磁気遮蔽部材37のバネ性を利用する簡易なスナップフィット機構82によって、導電性磁気遮蔽部材37を電気部品ホルダー32に取り付けることができる。
【0082】
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。