特許第6380377号(P6380377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6380377-リチウムイオン二次電池 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380377
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20180820BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20180820BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180820BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20180820BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180820BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0525
   H01M10/0568
   H01M10/058
   H01M4/587
   H01M4/36 D
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-503065(P2015-503065)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2014055175
(87)【国際公開番号】WO2014133165
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-41324(P2013-41324)
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】莇 丈史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 登
(72)【発明者】
【氏名】島貫 伊紀子
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第11/096572(WO,A1)
【文献】 特開2004−281325(JP,A)
【文献】 特開2004−281368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、および易黒鉛化炭素からなる群から選ばれる一種以上の炭素を含む負極活物質を含む負極と、
下記式(1)で表される環状スルホン酸エステルを含む電解液と、
を備えたリチウムイオン二次電池;
【化1】
(式(1)中、R、R、一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜5のアルキル基である。Rフッ素で置換されていてもよいメチレン基を示す。)。
【請求項2】
前記負極活物質が、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、および易黒鉛化炭素からなる群から選ばれる二種以上の炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記天然黒鉛が球状であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記人造黒鉛が塊状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記難黒鉛化炭素が塊状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記易黒鉛化炭素がりん片状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記一般式(1)中、Rが水素原子であり、Rが−C2m+1(m=1〜3)であり、Rが−CH−であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記電解液が、さらに、一つ以上のスルホニル基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記一つ以上のスルホニル基を有する化合物が、下記式()で表されるスルトン化合物であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
【化2】
(ただし、上記一般式(4)において、nは0以上2以下の整数である。また、R〜Rは、水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上6以下のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基から独立に選択される。)
【請求項10】
前記式(1)で表される環状スルホン酸エステルが、電解液全体の0.005質量%以上10質量%以下含まれることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
前記電解液が、さらに、ビニレンカーボネートまたはその誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
前記電解液が、さらに、リチウム塩として、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、LiAlCl、およびLiN(C2n+1SO)(C2m+lSO)(n、mは自然数)、からなる群から選択される一以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
電極素子と非水電解液と外装体とを有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
正極と、負極活物質を含む負極と、を対向配置して電極素子を作製する工程と、
前記電極素子と、非水電解液と、を外装体の中に封入する工程と、
を含み、
前記非水電解液が式(1)で表される環状スルホン酸エステルを含み、
前記負極活物質が、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、および易黒鉛化炭素からなる群から選ばれる一種以上の炭素を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法;
【化3】
(式(1)中、R、R、一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜5のアルキル基である。Rフッ素で置換されていてもよいメチレン基を示す。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素を含む負極と添加剤を含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル型タブレット端末、スマートフォン、電気自動車、定置用蓄電システムなどの急速な市場拡大に伴い、安全で長寿命かつ高エネルギー密度の二次電池が求められている。その候補として、エネルギー密度が高く、メモリー効果のないリチウムイオン二次電池は有望な二次電池の一つとされている。特に、最近では、充電状態のまま待機していても、充電容量が減少しないという、いわゆる自己放電特性が電池の優劣のカギとして着目されている。安全で、長寿命かつ高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を達成する手段として、安全なリチウムマンガン複合酸化物系正極を用いる方法、比較的に安価なカーボン系負極を用いる方法、安定性に優れた非水電解液を使用する方法などが挙げられる。特に、優れた電解液と添加剤を用いる技術は、特に重要である。この理由を以下に説明する。
【0003】
リチウムイオン二次電池の充放電においては、リチウムイオンの脱挿入反応が電極と電解液の界面で起こる。その際、界面での反応以外に、電解液溶媒や支持塩が分解反応を起こす場合がある。その分解反応により、抵抗の高い皮膜が電極表面に形成され、本来起こるべきリチウムイオンの脱挿入反応が阻害される。その結果、放電容量の不可逆的な低下などが促進され、二次電池としての特性が劣化することが知られている。
【0004】
そのような劣化を抑制するために、様々な工夫がなされている。その1つとして電極表面に保護膜を形成することにより上記分解反応を抑制する方法が挙げられ、その手段として電解液に皮膜形成能を有する電解液の添加剤として環状ジスルホン酸エステルを添加することが提案されている。
【0005】
上記を踏まえた中で、二次電池の特性の劣化を抑制する技術、特に、サイクル特性の改善や保存時の二次電池の内部抵抗を抑制する技術が幾つか開示されている。特許文献1、特許文献2、特許文献3では、電極表面に保護膜を形成することにより電解液の分解反応を抑制する方法として、スルホニル基を少なくとも2個有する環状スルホン酸エステルとを含む二次電池用電解液を用いる技術や、不飽和結合を有する環状または鎖状のジスルホン酸エステルを用いる技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、鎖状のジスルホン酸エステルと環状のジスルホン酸エステルとを含む電解液と、負極活物質として1種類の炭素を含む負極を有するリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献5には、負極活物質として非晶質炭素を用い、メチレンメタンジスルホン酸エステルを含む電解液を備えたリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献6には、環式スルホン酸エステルを含む電解液を備えたリチウムイオン二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−281368号公報
【特許文献2】特開2005−222846号公報
【特許文献3】特開2004−281325号公報
【特許文献4】特許4899341号公報
【特許文献5】特開2009−129747号公報
【特許文献6】特開2010−062113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無置換のジスルホン酸エステルを含む電解液を保管した場合、電解液の着色、電解液中への澱の発生、遊離酸濃度の増加などの劣化がおこり、これを用いた場合、容量劣化、保存特性等の電池特性への影響、特に自己放電に伴って残存容量が低下する問題があった。またこの無置換のジスルホン酸エステルを用いた場合に澱が発生することにより、電池製造時に、注液ノズルが詰まり、製造歩留まりが低いという問題があった。
【0009】
さらに、特定の炭素負極を含む場合のリチウムイオン二次電池としての改善検討は、未だ十分ではない。
【0010】
したがって、本発明は、保存特性に優れた、特に自己放電に伴う容量減少が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の一は、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、および易黒鉛化炭素からなる群から選ばれる一種以上の炭素を含む負極活物質を含む負極と、
下記式(1)で表される環状スルホン酸エステルを含む電解液と、
を備えたリチウムイオン二次電池に関する。
【0012】
【化1】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン基、またはアミノ基である。但し、R、Rの両方とも水素原子ということは無い。Rは炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキレン基、およびエーテル基を介してアルキレン単位またはフルオロアルキレン単位が結合した炭素数2〜6の2価の基からなる群の中から選ばれる連結基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保存特性、特に自己放電に伴う容量減少が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の非水電解液二次電池のラミネート外装型構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によれば、電解液が式(1)で表される化合物を含むことにより、支持塩の分解生成物とジスルホン酸エステルの反応性を低下させ、電解液からの遊離酸の発生を抑制することができる。さらにこの化合物を用いた場合、負極上へ形成される皮膜が低抵抗化し、かつ負極に強固な導電ネットワークを形成できるために、セルとして自己放電率の低減を向上させることができる。
【0016】
以下、本実施形態について説明する。
【0017】
本発明の非水電解液を用いた二次電池の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の非水電解液を用いた二次電池の概略構成図の一例である。本発明に係る電池は、たとえば図1のような構造を有する。正極は、正極活物質を含有する層1が正極集電体3上に成膜して成る。負極は、負極活物質を含有する層2が負極集電体4上に成膜して成る。これらの正極と負極は、多孔質セパレータ5を介して対向配置されている。多孔質セパレータ5は、負極活物質を含有する層2に対して略平行に配置されている。本発明の二次電池は、これら正極および負極が対向配置された電極素子と、電解液とが外装体6および7に内包されている。本実施形態に係る非水電解液二次電池の形状としては、特に制限はないが、例えば、ラミネート外装型、円筒型、角型、コイン型などがあげられる。
【0018】
<非水電解液>
本実施形態におけるリチウム二次電池の電解液(以下、「非水電解液」または単に「電解液」と記載することもある。)は、添加剤として、一般式(1)で表される環状スルホン酸エステル(以下、単に「式(1)の化合物」と記載することもある。)を含有する。
【0019】
【化2】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン基、またはアミノ基である。但し、R、Rの両方とも水素原子ということは無い。Rは炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキレン基、およびエーテル基を介してアルキレン単位またはフルオロアルキレン単位が結合した炭素数2〜6の2価の基からなる群の中から選ばれる連結基を示す。)
【0020】
非水電解液に含まれる式(1)で表される環状スルホン酸エステルは、充放電反応時の電気化学的酸化還元反応により分解して負極活物質表面に皮膜を形成し、電解液や支持塩の分解を抑制することができる。これにより、リチウムイオン二次電池の長寿命化に効果があると考えられる。本発明者らは、ジスルホン酸エステル化合物を含む非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池についてより詳細に鋭意検討した。その結果、式(1)の化合物を含有する電解液では、保管安定性が向上し、劣化が抑制され、またこの電解液を用いた場合にリチウムイオン二次電池の容量維持、保存特性、特に、自己放電に伴う残存容量の維持特性が格段に向上することを見出し本発明に至った。
【0021】
本実施形態において、非水電解液は、添加剤として、式(1)で表される環状スルホン酸エステルを含む。
【0022】
【化3】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン基、またはアミノ基である。但し、R、Rの両方とも水素原子ということは無い。Rは炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキレン基、およびエーテル基を介してアルキレン単位またはフルオロアルキレン単位が結合した炭素数2〜6の2価の基からなる群の中から選ばれる連結基を示す。)
【0023】
上記の式(1)で表される環状スルホン酸エステルは、R、Rの少なくともいずれか一方が置換されていることによりR、Rの両方が水素原子であるスルホン酸エステルに比べて負極表面上に形成される皮膜形成能が向上する。また、上記の式(1)で表される環状スルホン酸エステルは、R、Rの少なくともいずれか一方が置換されていることにより、R、Rの両方が水素原子であるスルホン酸エステルに比べて、電解液の安定性が向上し、これを用いたリチウムイオン二次電池は、保存特性、特に自己放電に伴う残存容量の維持特性が向上する。
【0024】
この理由について、本発明者らは、ジスルホン酸エステルの特定の箇所に置換基を有すること、具体的には、上記一般式(1)において、RおよびRの少なくとも1つが水素原子ではないことにより、支持塩の分解生成物と環状スルホン酸エステルとの反応性が低下し、電解液からの遊離酸の発生を抑制することができると推定している。後述する実施例で示されるとおり、R、Rの両方が水素原子であるスルホン酸エステルに比べて、電解液の安定性が向上し、電池の高温保存特性が向上した。
【0025】
式(1)において、RおよびRは、少なくとも1つがアルキル基である化合物が好ましい。特に、1つがアルキル基で他方が水素原子であるか、2つともアルキル基である化合物が好ましい。中でも、1つがアルキル基で他方が水素原子である化合物が最も好ましい。
【0026】
およびRの1つがアルキル基で、他方が水素原子である化合物が最も好ましい理由を以下に述べる。RおよびRの少なくとも一方が水素原子でない(すなわちRおよびRの少なくとも一方が置換基である)ことにより、支持塩の分解生成物と環状スルホン酸エステルとの反応性が低下し、電解液からの遊離酸の発生を抑制することができると推定している。しかしながら、RおよびRの少なくとも一方が水素原子でない(すなわち、RおよびRの両方が置換基である)場合には、1つがアルキル基で他方が水素原子である場合と比較して電極活物質表面に形成される皮膜形成能が低下し、リチウムイオン二次電池の長寿命化の効果が低下してしまうと考えられる。
【0027】
およびRのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチルが挙げられ、これらは、直鎖でも分岐でもよい。特に、メチル、エチルおよびプロピルが好ましく、メチルおよびエチルがより好ましい。RおよびRのハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、中でもフッ素が好ましい。
【0028】
は、炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキレン基、およびエーテル基を介してアルキレン単位またはフルオロアルキレン単位が結合した炭素数2〜6の2価の基からなる群の中から選ばれる連結基を示す。なお、Rで表される連結基が非対称の場合、向きはどちらでもよい。
【0029】
式(1)のRにおいて、アルキレン基およびフルオロアルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖を有していてもよく、直鎖であることが好ましい。直鎖アルキレン基の場合、アルキレン基は−(CH−(nは、1〜5の整数)で表され、−(CH−(nは、1または2)であるメチレン基またはエチレン基であることがより好ましく、−CH−で表されるメチレン基であることがさらに好ましい。分岐アルキレン基は、−(CH−(nは1〜4の整数)で表されるアルキレン基の少なくともひとつの水素原子がアルキル基で置換されており、例えば、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CHCH−、−CH(C2m+1)−(mは1〜4の整数)、−CH−C(CH−、−CH−CH(CH)−、−CH(CH)−CH(CH)−、−CH(CH)CHCH−または−CH(CH)CHCHCH−等が挙げられ、−C(CH−または−CH(CH)−であることがより好ましく、−CH(CH)−であることがさらに好ましい。フルオロアルキレン基は、上記アルキレン基が有する水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されていることを意味し、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素の置換位置および置換数は任意であるフルオロアルキレン基は直鎖であっても分岐鎖を有していてもよく、直鎖であることが好ましい。直鎖のフルオロアルキレン基で、水素原子がすべてフッ素原子で置換されている場合、Rは−(CF−(nは1〜5の整数)で表される。フルオロアルキレン基として、具体的にはモノフルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、モノフルオロエチレン基、ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基またはテトラフルオロエチレン基が好ましい。
【0030】
式(1)のRにおいて、「エーテル基を介してアルキレン単位またはフルオロアルキレン単位が結合した炭素数2〜6の2価の基」として、例えば、−R−O−R−(RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基またはフルオロアルキレン基を表し、RおよびRの炭素数の合計が2〜6である)、または−R−O−R−O−R−(R、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基またはフルオロアルキレン基を表し、R、RおよびRの炭素数の合計が3〜6である)が挙げられる。RおよびRは、いずれもアルキレン基であってもよいし、いずれもフルオロアルキレン基であってもよいし、一方がアルキレン基でもう一方がフルオロアルキレン基であってもよい。R、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基であってもフルオロアルキレン基であってもよい。例えば、−CH−O−CH−、−CH−O−C−、−C−O−C−、−CH−O−CH−O−CH−、−CH−O−CHF−、−CH−O−CF−、−CF−O−CF−、−C−O−C−、−CF−O−CF−O−CF−、−CH−O−CF−O−CH−等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、Rは、アルキレン基、カルボニル基またはフルオロアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基またはフルオロアルキレン基であることがより好ましく、−(CH−(nは、1または2)、−C(CH−、−CH(CH)−、モノフルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、モノフルオロエチレン基、ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基またはテトラフルオロエチレン基であることがより好ましい。
【0032】
中でも、Rは、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−CHF−または−CF−であることが好ましく、−CH−または−CF−であることがさらに好ましい。この理由は明らかではないが、式(1)で表される化合物が6員環構造の化合物であると、7員環構造の化合物と比較して皮膜を形成する際の電気化学的な反応性が高いため、より抵抗が低く、より強固で良質な皮膜が形成されるからであると推定される。Rは、−CH−で表されるメチレン基であることが特に好ましい。
【0033】
式(1)の化合物のうち、下記式(1−1)で表される化合物が好ましく、下記式(2)または式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0034】
【化4】
(式(1−1)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲンまたはアミノ基を表し、但し、R、Rの両方とも水素原子ということはない。Rは、フッ素で置換されていてもよいメチレン基である。)
【0035】
【化5】
(一般式(2)中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルを表し、好ましくはメチルまたはエチルを表す。)
【0036】
【化6】
(一般式(3)中、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルを表し、好ましくはメチルまたはエチルを表す。)
【0037】
表1に一般式(1)で示される化合物の代表例を具体的に例示するが、本発明はこれらに限定されるものはない。
【0038】
【表1】
【0039】
上記式(1)の好ましい化合物としては、例えば、式(1)中、Rがメチル基またはエチル基、Rが水素、Rがメチレン基またはエチレン基である化合物が挙げられる。中でも、式(1)中、Rがメチル基またはエチル基、Rが水素、Rがメチレン基である化合物が好ましく、Rがメチル基、Rが水素、Rがメチレン基である化合物がより好ましい。
【0040】
上記の式(1)の化合物は、一種を単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0041】
一般式(1)の化合物は、例えば、米国特許第49050768号、特開昭61−501089号公報、特開平5−44946号公報、特開2005−336155号公報などに記載されている製造方法を用いて得ることができる。
【0042】
式(1)で示される化合物の電解液に占める割合は特に限定されないが、電解液全体の0.005〜10wt%で含まれることが好ましい。一般式(1)で示される化合物の濃度を0.005wt%以上とすることにより、低抵抗な皮膜を得ることができる。より好ましくは0.01wt%以上添加されると電池特性をさらに向上させることができる。また、10wt%以下とすることにより、電解液の粘性の上昇、およびそれに伴う抵抗の増加を抑制することができる。より好ましくは5wt%以下添加され、こうすることにより、電池特性をさらに向上させることができる。
【0043】
非水電解液としては特に限定されないが、例えばリチウム塩を非水溶媒に溶解した溶液に上記添加剤を加えて用いることができる。
【0044】
リチウム塩としては、LiPF、リチウムイミド塩、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF等が挙げられる。リチウムイミド塩としては、LiN(C2k+1SO)(C2m+1SO)(kおよびmは、それぞれ独立して自然数、好ましくは1または2である)が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0045】
非水電解液中のリチウム塩の濃度としては、0.7mol/L以上、2.0mol/L以下であることが好ましい。リチウム塩の濃度を0.7mol/L以上とすることにより、十分なイオン導電性が得られる。また、リチウム塩の濃度を2.0mol/L以下とすることにより、粘度を低くすることができ、リチウムイオンの移動が妨げられない。
【0046】
非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、γ−ラクトン、環状エーテルおよび鎖状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用いることができる。環状カーボネートとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびこれらの誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、およびこれらの誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、およびこれらの誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。γ−ラクトンとしては、γ−ブチロラクトンおよびその誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびその誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。鎖状エーテルとしては、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、エチルエーテル、ジエチルエーテル、およびこれらの誘導体(フッ素化物を含む)が挙げられる。非水溶媒としては、これら以外にも、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、およびこれらの誘導体(フッ素化物を含む)を用いることもできる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0047】
本実施形態の電解液は、少なくとも1個のスルホニル基を有する化合物をさらに含むことができる。ここで、少なくとも1個のスルホニル基を有する化合物(以下、スルホニル基含有化合物ともいう。)は、前記一般式(1)で表される環状スルホン酸エステルとは異なる化合物である。尚、スルホニル基含有化合物としては、上記の非水溶媒と重複する化合物もあるが、「スルホニル基含有化合物」は、通常、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類およびこれらの化合物のフッ素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の非水溶媒とともに使用される。
【0048】
前記スルホニル基含有化合物として、下記一般式(4)で示されるスルトン化合物が好ましい。
【0049】
【化7】
【0050】
一般式(4)中、nは0〜2の整数を表し、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。
【0051】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば1,3−プロパンスルトン(PS)、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパ−2−エンスルトン等の環状スルホン酸エステル類が挙げられる。
【0052】
スルホニル基含有化合物は、電解液全体の0.005〜10wt%で使用される。
【0053】
また、本実施形態の電解液は、ビニレンカーボネートまたはその誘導体をさらに含むことができる。ビニレンカーボネートまたはその誘導体としては、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネートおよび4,5−ジフェニルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート類;並びにビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等のビニルアルキレンカーボネート類を挙げることができる。
【0054】
ビニレンカーボネートまたはその誘導体は、電解液全体の0.005〜10wt%で使用される。
【0055】
また、本実施形態において、電解液には、必要に応じて、上記化合物以外のその他の添加剤も含めることができる。その他の添加剤としては、例えば、過充電防止剤、界面活性剤、が挙げられる。
【0056】
<負極>
負極は、負極集電体上に、負極活物質と負極用結着剤を含む負極活物質層を形成することで作製することができる。図1の非水電解液二次電池において、負極活物質を含有する層2に用いる負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などリチウムを吸蔵、放出できる炭素材料からなる群から選択される一種以上の物質を用いることができ、二種以上の炭素を混合して負極活物質として用いることが好ましい。負極活物質として炭素を一種のみ用いる場合より、二種以上の炭素を混合して用いると、電解液の負極活物質層への浸み込み性、さらには補液性が向上するため、好ましい。また、負極活物質として炭素を2種以上用いると、自己放電に伴う容量減少が抑制されたリチウムイオン二次電池を得ることができる。負極活物質としての炭素のうち、黒鉛を20質量%含むことがより好ましく、黒鉛を60質量%以上含むことがさらに好ましい。さらにまた、黒鉛とシリコン系酸化物を混合して用いてもよい。なお、本明細書において、天然黒鉛を第一炭素、人造黒鉛を第二炭素、難黒鉛化炭素を第三炭素、易黒鉛化炭素を第四炭素と記載することもある。
【0057】
本実施形態において、負極活物質としての炭素材料は、リチウムを吸蔵・放出する天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、あるいはこれら炭素とシリコンを含む複合酸化物を用いることができる。特に、黒鉛材料(天然黒鉛または人造黒鉛)は、電子伝導性が高く、銅などの金属からなる集電体との接着性と電圧平坦性が優れており、高い処理温度によって形成されるため含有不純物が少なく、負極性能の向上に有利であり、好ましい。
【0058】
本実施形態において、負極活物質は、天然黒鉛からなる群、人造黒鉛からなる群、難黒鉛化炭素からなる群、および易黒鉛化炭素からなる群のうちの少なくとも2つの異なる群から選ばれる炭素を2種以上含むことが好ましい。
【0059】
天然黒鉛としては、形状は特に限定されないが、りん片状天然黒鉛、球状天然黒鉛、塊状天然黒鉛、土状天然黒鉛が挙げられ、これらのうち球状天然黒鉛が好ましい。人造黒鉛としては、形状は特に限定されないが、塊状人造黒鉛、りん片状人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズ マイクロ ビーズ)等球状の人造黒鉛が挙げられ、これらのうち塊状人造黒鉛が好ましい。難黒鉛化炭素の形状としては、形状は特に限定されないが、塊状、フレーク状、りん片状の形状が挙げられ、これらのうち塊状が好ましい。易黒鉛化炭素の形状としては、形状は特に限定されないが、塊状、フレーク状、りん片状が挙げられ、これらのうちりん片状が好ましい。
【0060】
本実施形態においては、負極活物質として、天然黒鉛と人造黒鉛、天然黒鉛と難黒鉛化炭素、または、人造黒鉛と難黒鉛化炭素を少なくとも含むことが好ましく、天然黒鉛と人造黒鉛と難黒鉛化炭素を含むことがより好ましく、天然黒鉛と人造黒鉛と難黒鉛化炭素と易黒鉛化炭素とを含むことがさらに好ましい。さらに、本実施形態においては、球状天然黒鉛、塊状人造黒鉛、塊状難黒鉛化炭素およびりん片状易黒鉛化炭素から選ばれる2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、これらを混合した負極活物質を含む負極と、表1の式Iで表される化合物を含む電解液との組合せが特に好ましい。
【0061】
負極活物質に含まれる炭素の形状が球状または塊状であることは、SEM(走査型顕微鏡)観察により確認することができる。
【0062】
負極活物質のSEM画像においては、その短軸方向(長さが最も短い方向の長さ)と長軸方向(長さが最も長い方向の長さ)の長さの比である(短軸)/(長軸)が0.2よりも大きい場合は球状または塊状の形状と判断することができる。なお、球状黒鉛の(短軸)/(長軸)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であるのが良い。
【0063】
球状の黒鉛は、鱗片状の黒鉛を原料として製造され、鱗片状黒鉛が折り畳まれて球形化した構造を有している。このため、球状の黒鉛には片理が観察され、片理が種々の方向に向かうキャベツ状の外観を有している。また、球状の黒鉛の破断面には、空隙が観察される。負極活物質として球状の黒鉛を含むことにより、電極作製時の圧延工程後も結晶の配向がいろいろな方向を向くため、電極間のリチウムイオンの移動がスムーズに行われやすくなる。さらに、球状黒鉛を用いることにより、負極活物質間に電解液の保持に適した空隙を得ることができるので、高出力特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【0064】
塊状の黒鉛においては、上記球状の黒鉛で観察されるような片理は観察されず、均質な形状を有している。
【0065】
天然黒鉛の平均粒子径D50mは、特に限定されないが、例えば、5〜80μmであることが好ましく、塊状の人造黒鉛および塊状の難黒鉛化炭素の平均粒子径D50vは、例えば、5〜40μmであることが好ましい。
【0066】
天然黒鉛は、負極合剤(負極活物質と負極結着剤と導電材の合計質量、以下同様)中0質量%であってもよいが、5〜97質量%含まれることが好ましく、10〜70質量%含まれることがより好ましい。
【0067】
人造黒鉛は、負極合剤中0質量%であってもよいが、5〜97質量%含まれることが好ましく、10〜70質量%含まれることがより好ましい。
【0068】
難黒鉛化炭素は、負極合剤中、0質量%であってもよいが、1〜50質量%であることが好ましく、3から30質量%であることがより好ましい。
【0069】
易黒鉛化炭素は、負極合剤中、0質量%であってもよいが、1〜50質量%であることが好ましく、3から30質量%であることがより好ましい。
【0070】
負極活物質として含まれる2種以上の炭素の混合比率は、適宜調整することができる。例えば、天然黒鉛と難黒鉛化炭素とを混合して用いる場合、天然黒鉛:難黒鉛化炭素の混合比が、10:90〜90:10であることが好ましい。
【0071】
負極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある十分な結着力と高エネルギー化の観点から、負極活物質100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。上記の負極用結着剤は、単独で用いても電池性能にはほとんど影響しないので混合して用いていることができる。
【0072】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0073】
負極活物質層の形成方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法などが挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成して、負極集電体としてもよい。
【0074】
<正極>
図1の二次電池において、正極活物質を含有する層1に用いる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnなどのリチウム含有複合酸化物があげられる。また、これらのリチウム含有複合酸化物の遷移金属部分を他元素で置き換えたものでもよい。また、金属リチウム対極電位で4.2V以上にプラトーを有するリチウム含有複合酸化物を用いることもできる。リチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が例示される。リチウム含有複合酸化物は、例えば下記の式で表される化合物とすることができる。
【0075】
Li(MMn2−x)O
(ただし、上記の式において、0<x<2であり、また、0<a<1.2である。また、Mは、Ni、Co、Fe、CrおよびCuよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。)
【0076】
正極は、これらの活物質を、カーボンブラック、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)等の結着剤とともにN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤中に分散混練し、これをアルミニウム箔等の正極集電体上に塗布することにより得ることができる。
【0077】
正極用集電体としては、アルミニウム、ニッケル、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0078】
<二次電池の製造方法>
二次電池の製造方法として、図1の二次電池の製造方法を一例として説明する。図1の非水電解液二次電池は、乾燥空気または不活性ガス雰囲気において、負極および正極を、多孔質セパレータ5を介して積層、あるいは積層したものを捲回した後に、電池缶や、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等の外装体に収容し、添加剤として式(1)の化合物を含む非水電解液を含浸させる。そして、外装体を封止前または封止後に、非水電解液二次電池の充電を行うことにより、負極上に良好な皮膜を形成させることができる。なお、多孔質セパレータ5としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂等の多孔性フィルムが用いられる。外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、積層ラミネート型の二次電池の場合、外装体としては、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。特に、体積膨張を抑制する観点から、アルミニウムラミネートフィルムを用いることが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<実施例1>
(リチウムイオン二次電池の作製)
本実施例1の電池の作製について説明する。正極集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を用い、正極活物質としてLiMnを用いた。また、負極集電体として厚み10μmの銅箔を用い、この銅箔上に負極活物質として球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm、)を95質量%用いた。なお、平均粒径は、レーザの光散乱から粒子径を検出するレーザ回折・散乱方式の粒子径・粒度分布装置にて、体積基準の粒度分布測定から求めた。そして、負極と正極とをポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、二次電池を作製した。なお、負極の製造においては、バインダ(結着剤)は、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)を2質量%、増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5質量%、導電材は、カーボンブラックを1.5質量%用いた。また、正極の製造においては、正極用結着剤としてPVdF(株式会社クレハ製KFポリマー)を用い、導電付与材としてアセチレンブラック(ティムカル・グラファイト・アンド・カーボン社製)を用いた。
【0081】
(非水電解液の作製)
非水電解液の溶媒としてECとDECの混合溶媒(体積比:EC/DEC=30/70)を用い、支持電解質としてLiPFを非水電解液中1Mとなるように溶解した。
【0082】
添加剤として、上記表1に記載の化合物Aを非水電解液中に0.1mol/L含まれるように加えた。この非水電解液を用いて非水二次電池を作製し、残存容量試験を行った。
【0083】
(残存容量試験)
まず、室温にて充電および放電を1回ずつ行った。この時の条件は設計値から求められるCCCV充電レート1.0C、CC放電レート1.0C、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.5Vとした。
【0084】
その後、各電池をCCCV充電レート1.0C、充電終止電圧4.2Vまで2.5時間、充電し、45℃の恒温槽中で4週間放置した。放置後に室温においてCC放電レート1.0Cにて放電を行い残存容量とした。100×(残存容量)/(放置前の充電容量)(%)を残存容量率(%)とした。結果を表2に示す。なお、表2〜表7中、負極活物質の混合比率は、負極活物質、結着剤、増粘剤および導電材の合計質量に対する各負極活物質(炭素)の質量比率を表す。
【0085】
<実施例2>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を95質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0086】
<実施例3>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を95質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0087】
<実施例4>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を95質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0088】
<実施例5>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を68質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を27質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0089】
<実施例6>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を27質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0090】
<実施例7>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0091】
<実施例8>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を22質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を63質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0092】
<実施例9>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を5質量%、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を5質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0093】
<実施例10>
負極活物質として、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を27質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0094】
<実施例11>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを電解液中0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0095】
<実施例12>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0096】
<実施例13>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0097】
<実施例14>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0098】
<実施例15>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を68質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0099】
<実施例16>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を27質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0100】
<実施例17>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0101】
<実施例18>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を22質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を63質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0102】
<実施例19>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を5質量%、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を5質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを電解液中0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0103】
<実施例20>
負極活物質として、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Eを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表3に示す。
【0104】
<実施例21>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0105】
<実施例22>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を95質量%、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0106】
<実施例23>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を95質量%、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0107】
<実施例24>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0108】
<実施例25>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を68質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0109】
<実施例26>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を27質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0110】
<実施例27>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0111】
<実施例28>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を22質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を63質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを2質量%用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0112】
<実施例29>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を5質量%、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を5質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0113】
<実施例30>
負極活物質として、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Gを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表4に示す。
【0114】
<実施例31>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0115】
<実施例32>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0116】
<実施例33>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0117】
<実施例34>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0118】
<実施例35>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を68質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0119】
<実施例36>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を27質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0120】
<実施例37>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0121】
<実施例38>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を22質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を63質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0122】
<実施例39>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を5質量%、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を5質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0123】
<実施例40>
負極活物質として、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Hを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表5に示す。
【0124】
<実施例41>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0125】
<実施例42>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0126】
<実施例43>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0127】
<実施例44>
負極活物質を球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)の代わりに、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を95質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0128】
<実施例45>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を68質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0129】
<実施例46>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を27質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0130】
<実施例47>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0131】
<実施例48>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を22質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を63質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を10質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0132】
<実施例49>
負極活物質として、球状天然黒鉛A(平均粒径D50=20μm)を63質量%、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を22質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を5質量%、りん片状易黒鉛化炭素A(平均粒径D50=12μm)を5質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0133】
<実施例50>
負極活物質として、塊状人造黒鉛A(平均粒径D50=10μm)を68質量%、塊状難黒鉛化炭素A(平均粒径D50=9μm)を27質量%と、表1に示す添加剤の化合物Iを0.1mol/L用いる他は実施例1と同様に二次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の特性を調べた。結果を表6に示す。
【0134】
<比較例1>
実施例1において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0135】
<比較例2>
実施例2において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例2と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0136】
<比較例3>
実施例3において、化合物Aの変わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例3と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0137】
<比較例4>
実施例4において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例4と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0138】
<比較例5>
実施例5において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例5と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0139】
<比較例6>
実施例6において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例6と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0140】
<比較例7>
実施例7において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例7と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0141】
<比較例8>
実施例9において、化合物Aの代わりにメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた以外は実施例9と同様に二次電池を作製し、実施例1と同様に電池の特性を測定した。結果を表7に示す。
【0142】
<比較例9>
実施例1において、負極にチタン酸リチウムを用い、表1に示す「化合物A」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0143】
<比較例10>
実施例1において、負極にチタン酸リチウムを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物E」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0144】
<比較例11>
実施例1において、負極にチタン酸リチウムを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物G」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0145】
<比較例12>
実施例1において、負極にチタン酸リチウムを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物H」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0146】
<比較例13>
実施例1において、負極にチタン酸リチウムを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物I」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0147】
<比較例14>
実施例1において、負極にシリコンを用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0148】
<比較例15>
実施例1において、シリコンを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物E」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0149】
<比較例16>
実施例1において、シリコンを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物G」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0150】
<比較例17>
実施例1において、シリコンを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物H」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0151】
<比較例18>
実施例1において、シリコンを用い、且つ化合物Aの代わりに表1に示す「化合物I」を用いた。その他は実施例1と同様に次電池を作製した。以下、実施例1と同様に電池の残存容量特性を調べた。結果を表7に示す。
【0152】
表2〜表7において、化合物(添加剤)それぞれの電解液中への添加量をmol/Lで示した。なお、各実施例および比較例において、溶媒はEC/DEC=3/7(体積比)、支持塩はLiPF(電解液中1Mの濃度)を用いた。
【0153】
各実施例および比較例において用いた負極活物質の種類、含有量(質量%)、添加剤の種類、含有量および、容量残存率を表2〜7に示す。なお、各負極活物質の含有量は、負極活物質、結着剤、増粘剤、および導電材の合計に対する質量割合を示す。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
【0159】
【表7】
【0160】
表2〜7に示したように実施例1〜50に示した電池は、比較例1〜18と比較し、容量残存率が大幅に向上していることが確認された。特に、本案の添加剤である化合物種の中では化合物Iを用いると最も高く容量残存率が向上した。この理由は、比較例に用いたメチレンメタンジスルホン酸エステルを用いた場合よりも、第一炭素、第二炭素、第三炭素もしくは第四炭素の負極上に、低抵抗で良質な皮膜を形成できる機能を有するためと考えられる。このため、容量残存率(自己放電特性)をより改善することができることを見出した。
【0161】
第一炭素、第二炭素、第三炭素もしくは第四炭素を少なくとも一種類以上混合し、且つ本案の添加剤A〜Iを適用することで、負極に低抵抗なSEI皮膜形成しつつ、活物質間の導電パスを低抵抗な状態で保持できた。これにより、容量残存率(自己放電特性)を改善することが示された。
【0162】
さらにまた、本案に用いた表1に示す添加剤の化合物において、RおよびRの1つがアルキル基で他方が水素原子である化合物が最も好ましい理由としては、RおよびRの少なくとも一方が水素電子でないことにより、支持塩の分解生成物との反応性が低下することにあることに起因するという仮説を考えている。そのため、特に炭素を含む負極の表面に形成される皮膜の安定性に関わっていることから、容量残存率(自己放電特性)を大幅に改善できたと考えている。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の活用例として、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車、電動バイク、電動アシスト自転車などの駆動用機器、電動工具などの工具類、携帯端末やノートパソコンなどの電子機器、家庭用蓄電システムや太陽光発電システムなどの蓄電池などが挙げられる。
【符号の説明】
【0164】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 多孔質セパレータ
6 ラミネート外装体
7 ラミネート外装体
8 負極タブ
9 正極タブ
図1