特許第6380557号(P6380557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380557
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】タイヤの洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   B08B 7/00 20060101AFI20180820BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B08B7/00
   B29D30/00
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-566832(P2016-566832)
(86)(22)【出願日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2016082778
(87)【国際公開番号】WO2017082162
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2016年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-221378(P2015-221378)
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−178025(JP,A)
【文献】 特開2005−161150(JP,A)
【文献】 特開2001−293729(JP,A)
【文献】 特開2002−225041(JP,A)
【文献】 特表2002−503551(JP,A)
【文献】 特開平09−327832(JP,A)
【文献】 特開2015−214065(JP,A)
【文献】 特開2000−237701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 7/00
B29D 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とするタイヤの洗浄システム。
【請求項2】
前記アームが前記レーザヘッドを3次元に自在移動させるアームであり、このアームにより前記レーザヘッドを移動させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項3】
前記タイヤを所定位置に維持したまま回転させる回転機構を備え、この回転機構により前記タイヤを回転させながら前記レーザ光を照射する構成にした請求項1または2に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項4】
前記タイヤのそれぞれのビード部を保持するビード保持機構を備え、このビード保持機構により、前記それぞれのビード部どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にして前記レーザ光を照射する構成にした請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項5】
前記タイヤの仕様情報が前記制御装置に入力されていて、前記仕様情報に基づいて、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させる構成にした請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項6】
前記タイヤに付されている識別タグの情報を検知する検知器を備え、この検知器により、前記識別タグに記憶されている前記タイヤの仕様情報が検知されて前記制御装置に入力される構成にした請求項5に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項7】
前記タイヤの内面の画像データを取得するカメラを備え、このカメラにより取得された洗浄後の前記タイヤの内面の画像データに基づいてその内面の洗浄状態を把握し、この把握した洗浄状態およびその内面の位置情報を前記制御装置に記憶し、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面の位置に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行なう構成にした請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項8】
洗浄される前記タイヤが順次搬送される搬入コンベヤ装置と、洗浄された後の前記タイヤが順次搬送される搬出コンベヤ装置とを備え、前記搬入コンベヤ装置と前記搬出コンベヤ装置との間に位置する洗浄エリアにおいて前記タイヤの内面に前記レーザ光を照射して洗浄を行い、前記洗浄エリアに隣接する検査エリアにおいて前記洗浄状態の把握を行い、前記洗浄状態を把握したタイヤは前記洗浄エリアを通過させて前記搬出コンベヤ装置に移動させ、前記把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤは、前記検査エリアから前記搬出コンベヤ装置に移動する過程で前記洗浄エリアに留まって、そのタイヤの内面に対して、再度、前記レーザヘッドから前記レーザ光を照射して洗浄を行う構成にした請求項7に記載のタイヤの洗浄システム。
【請求項9】
前記レーザ光が照射されている前記タイヤの内面の温度を逐次検知する温度センサを備え、この温度センサによる検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、前記レーザ光の照射を中断する構成にした請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤの洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの洗浄システムに関し、さらに詳しくは、タイヤの内面に付着している離型剤等を効率よく除去することができ、洗浄の後処理に要する時間を抑制できるタイヤの洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、加硫したタイヤを加硫ブラダから剥がし易くする等の目的で離型剤が使用されている。そのため、タイヤの内面には離型剤が付着している。
【0003】
近年、タイヤの走行騒音を低減させるために、タイヤの内面に吸音材を設置したタイヤが開発されている。このような吸音材等の付属物を接着剤等によってタイヤの内面に接合しようとする場合、タイヤの内面に離型剤等が付着していると接合できない、或いは、強固に接合できないという問題がある。
【0004】
従来、タイヤの内面に付着した離型剤を除去するために、高温、高圧の洗浄水を吹き付ける方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、水分を使用してタイヤの内面を洗浄すると、水分が乾燥するまで吸音材等の付属物をタイヤの内面に接合できないという問題がある。特に、タイヤの内面は水分を外部に排出し難い部位なので、乾燥するまでに要する時間が長くなる。即ち、この方法では、洗浄の後処理に要する時間が長くなり、タイヤの内面に付属物を接合したタイヤの生産性を向上させるには不利になる。また、水分をタイヤの内面から外部に排出させる装置を設けると設備が大掛かりになるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2000−237701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤの内面に付着している離型剤等を効率よく除去することができ、洗浄の後処理に要する時間を抑制できるタイヤの洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの洗浄システムは、レーザ発振器と、このレーザ発振器から供給されるレーザ光をタイヤの内面に照射するレーザヘッドと、このレーザヘッドを保持するアームと、前記タイヤと前記レーザヘッドの少なくとも一方の動きを制御して、前記タイヤと前記レーザヘッドの相対位置を変化させる制御装置とを備え、前記レーザヘッドを前記タイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射して前記タイヤの内面に付着している汚れを照射した前記レーザ光によって除去して前記タイヤの内面を洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御装置によってレーザヘッドをタイヤの内面に沿って相対移動させつつ、レーザ光を照射してその内面を洗浄するので、様々な仕様(形状、大きさ)のタイヤであっても、人手をかけることなく、内面に付着している離型剤等の汚れを効率よく除去することが可能になる。そして、汚れの除去にはレーザ光を使用するため、水分の使用する従来の洗浄方法のように、水分を乾燥させる等の後処理が不要になる。即ち、本発明では、洗浄後の後処理に要する時間が実質的に不要になり、洗浄の直後であってもタイヤの内面に吸音材等の付属物を接合することができる。これに伴い、内面に付属物を接合したタイヤの生産性を向上するには有利になる。また、水分をタイヤの内面から外部に排出させる装置が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明のタイヤの洗浄システムを平面視で例示する説明図である。
図2図2はタイヤの内面を洗浄している工程を断面視で例示する説明図である。
図3図3図2のタイヤの内部を平面視で例示する説明図である。
図4図4はタイヤの内面の洗浄状態を把握している工程を断面視で例示する説明図である。
図5図5図4のタイヤの内部を平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のタイヤの洗浄システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図5に例示する本発明のタイヤの洗浄システム1は、レーザ発振器2と、レーザ光Lを照射するレーザヘッド4と、レーザヘッド4を保持するアーム6と、アーム6の動きを制御する制御装置7とを備えている。この実施形態では、さらに、カメラ3と、温度センサ8と、タイヤ14を回転させる回転機構9と、タイヤ14のビード部16を保持するビード保持機構10と、洗浄対象となるタイヤ14に付されている識別タグ14aを検知する検知器11とを備えている。
【0012】
洗浄対象となるタイヤ14の内面15には、洗浄後に、様々な付属物が接着剤によって接合される。付属物としては、スポンジ等の吸音材、タイヤ内圧を検知する圧力センサ等を例示できる。
【0013】
本発明は、このような付属物をタイヤ14の内面15に接合するため、或いは、より強固に接合するために、タイヤ14の内面15に付着している汚れXを除去する。例えば、内面15におけるタイヤ幅方向所定寸法でタイヤ周方向に連続した範囲の汚れXを除去する。除去対象となる汚れXとしては、タイヤの製造工程で使用されている離型剤や付属物の接合を阻害する不要物を例示できる。
【0014】
カメラ3は、後述する検査エリアに配置されていて、タイヤ14の内面15の画像データを取得する。温度センサ8は、レーザ光Lが照射されている内面15の温度を逐次検知する。温度センサ8はアーム6の先端部に取り付けられている。カメラ3が取得した画像データおよび温度センサ8が検知した温度データは制御装置7に入力される。
【0015】
回転機構9およびビード保持機構10は、後述する洗浄エリアに配置されている。ビード保持機構10は、図2に例示するように、タイヤ14のぞれぞれのビード部16を保持する。そして、保持したビード部16を互いのタイヤ幅方向間隔を広げる方向に移動させて保持する。回転機構9はビード保持機構10により保持されているタイヤ14をその位置に維持したまま、タイヤ中心軸を中心として回転させる。
【0016】
検知器11は、タイヤ14を洗浄する前に、そのタイヤ14に付されている識別タグ14aの情報を検知する。識別タグ14aには、そのタイヤ14の仕様(タイヤ幅、リム径、外径、洗浄する範囲など)の情報が記憶されている。検知器11が検知したタイヤ14の仕様情報は制御装置7に入力される。
【0017】
レーザ発振器2と検知器11を除いて洗浄システム1の主な構成要素は、閉空間となる洗浄ブース12の内部に配置されている。洗浄ブース12には入口扉12aと出口扉12bとが設けられていて、入口扉12aおよび出口扉12bが閉じられると閉空間になり、レーザ光Lを遮蔽できる構造になっている。
【0018】
入口扉12aには搬入コンベヤ装置13aが接続され、出口扉12bには搬出コンベヤ装置13cが接続されている。搬入コンベヤ装置13aと搬出コンベヤ装置13cとの間は洗浄ブース12の内部空間になり、この位置には洗浄用コンベヤ装置13cが配置されている。搬入コンベヤ装置13aには洗浄されるタイヤ14が載置され、搬出コンベヤ装置13cには洗浄されたタイヤ14が載置される。洗浄用コンベヤ装置13bはタイヤ14を洗浄する際の洗浄エリアとなる。
【0019】
洗浄用コンベヤ装置13cに隣接して検査用コンベヤ装置13dが配置されている。この実施形態では、洗浄用コンベヤ装置13cを分割するように、検査用コンベヤ装置13dが配置されている。カメラ3は、図4に例示するように、検査用コンベヤ装置13dの上面に対して出没可能に設けられている。検査用コンベヤ装置13dの上面に突出したカメラ3は図5に例示するように、360°旋回可能になっている。
【0020】
レーザ発振器2とレーザヘッド4とは光ファイバーケーブル2aによって接続されている。レーザ発振器2により供給されたレーザ光Lは光ファイバーケーブル2aを通じてレーザヘッド4に送られる。本発明で使用するレーザ光LとしてはYAGレーザ光が好ましい。
【0021】
レーザヘッド4により、レーザ光Lがタイヤ14の内面15に照射される。アーム6はアームベース5に回転自在に取り付けられていて、複数のアーム部6a、6b、6cを回転自在に接続して構成されている。アーム6の先端部にレーザヘッド4が着脱自在に装着される。したがって、アーム6の動きを制御することにより、レーザヘッド4を3次元に自在移動させることができ、レーザ光Lの照射方向を任意の向きにすることが可能になっている。
【0022】
この実施形態では、レーザヘッド4が1つだけ設けられている。このレーザヘッド4は、ガルバノミラーを内蔵していてレーザ光Lを幅方向にスキャンして幅広に照射できる構成になっている。そのレーザ照射幅は例えば4mm以上70mm以下程度の範囲で可変になっている。レーザ発振器2の発振周波数は例えば、10kHz以上40kHz以下である。レーザヘッド4からレーザ光Lを幅方向にスキャンする周波数は例えば20Hz以上150Hz以下である。レーザヘッド4のレーザ照射幅を不変(所定幅に固定)した仕様にすることもできる。
【0023】
次に、この洗浄システム1を用いてタイヤ14の内面15を洗浄する手順を説明する。
【0024】
まず、洗浄するタイヤ14を横置きにして、搬入コンベヤ装置13aに載置する。次いで、入口扉12aを開き、搬入コンベヤ装置13aおよび洗浄用コンベヤ装置13bを稼働して洗浄するタイヤ14を洗浄用コンベヤ装置13bの上に移動させる。ここで、図2に例示するように、ビード保持機構10によってタイヤ14のそれぞれのビード部16を保持してタイヤ14を所定位置に位置決めする。入口扉12aは閉じて洗浄ブース12を閉空間にする。洗浄ブース12が閉空間にならなければレーザ発振器2が作動しないインターロック構造になっている。
【0025】
タイヤ14は必要に応じて、それぞれのビード部16どうしのタイヤ幅方向間隔をビード保持機構10によって広げた状態にして保持される。例えば、タイヤ幅が所定寸法よりも小さいタイヤ14は、洗浄する際に、それぞれのビード部16どうしのタイヤ幅方向間隔を広げた状態にする。
【0026】
次いで、制御装置7に入力されているそのタイヤ14の仕様情報に基づいて、レーザヘッド4をタイヤ14の内面15に沿って相対移動させる。この実施形態では、タイヤ14が搬入コンベヤ装置13aに載置されている時に、その識別タグ14aの情報が検知器11により検知されて、そのタイヤ14の仕様情報が制御装置7に入力されている。タイヤ14の仕様情報は別の方法で予め制御装置7に入力しておくことできる。
【0027】
この実施形態では、タイヤ14を横置きした状態で所定位置に維持したままにして回転させずに、アーム6の動きを制御して、図2図3に例示するようにレーザヘッド4を内面15に沿って移動させる。このようにレーザヘッド4を移動させつつ、レーザ発振器2から供給されたレーザ光Lを内面15に照射する。照射したレーザ光Lによって内面15に付着している汚れXは除去されて洗浄される。
【0028】
ここで、レーザ光Lの照射ムラを抑えるために、レーザヘッド4の先端と、これに対向する内面15との間隔がなるべく一定になるように維持しつつ、レーザヘッド4の移動方向およびレーザ光Lの照射方向を制御する。レーザヘッド4の移動速度はなるべく一定の速度にして洗浄対象範囲を網羅するように移動させる。
【0029】
回転機構9によりタイヤ14を所定の位置に維持して回転させながらレーザ光Lを内面15に照射することもできる。即ち、レーザヘッド4を移動させずに固定した状態にして、タイヤ14を回転機構9により回転させて両者の相対位置の変化させることもできる。或いは、レーザヘッド4を移動させるとともに、タイヤ14を回転させて両者の相対位置を変化させることもできる。
【0030】
汚れXを除去して洗浄されたタイヤ14は、検査用コンベヤ装置13dによって、洗浄エリアから、カメラ3が配置されている検査エリアに搬送される。検査エリアにタイヤ14が搬送されると、図4に例示するように、検査用コンベヤ装置13dの上面よりも下方で待機していたカメラ3が、その上面よりも上方に突出する。
【0031】
次いで、このカメラ3が図5に例示するように、360°旋回しつつタイヤ14の内面15の画像データを取得する。尚、カメラ3を旋回させずに固定して、タイヤ14をタイヤ軸を中心にして360°回転させることにより、タイヤ14の内面15の画像データを取得することもできる。
【0032】
この取得した画像データに基づいてその内面15の洗浄状態を把握する。把握した洗浄状態およびその内面15の位置情報は制御装置7に入力される。把握した洗浄状態が予め設定されている基準に満たない内面15の位置に対しては、この検査工程後で後述するように、再度、レーザヘッド4をその位置に移動させてレーザ光Lを照射して洗浄を行なう。
【0033】
制御装置7には洗浄状態が適切(汚れXが除去されている)か不適切(汚れXが残っている)かを判断する基準が予め入力、設定されている。そこで、制御装置7により、把握した洗浄状態が予め設定されている基準を満たしているか否かを判断する。
【0034】
洗浄状態を判断する基準は、例えば、カメラ3により取得した内面15の画像データの色の濃淡に基づいて設定される。ある一定以上の濃度の場合は汚れXが残っていると設定する。或いは、レーザ光Lが照射される直前と照射された直後の内面15の画像データを取得し、両画像データを比較して色の濃淡の変化に基づいて基準を設定することもできる。色の濃淡が変化していない、または変化の度合いが小さい場合は、汚れXが残っていると設定する。このような設定にすると、特に汚れている位置(範囲)だけを後から再洗浄するので、汚れXを効率よく綺麗に除去するには有利になる。
【0035】
照射したレーザ光Lによって汚れXを除去している最中は、レーザ光Lと汚れXとが反応して反応光が発生し、汚れXが除去されて無くなると反応光が発生しなくなる。そこで、内面15の洗浄状態を判断するには上述した方法の他に、この反応光を利用することもできる。
【0036】
例えばアーム6またはレーザヘッド4に、レーザ光Lと汚れXとが反応して発生する反応光を撮影する反応光検知用カメラを設置する。そして、レーザ光Lを内面15に照射して洗浄する工程において、レーザ光Lを照射している範囲の内面15の画像データを反応光検知用カメラにより逐次取得する。反応光検知用カメラにより取得した画像データは制御装置7に入力する。制御装置7には、例えば、反応光が発生している場合と発生していない場合における内面15の照度のデータ(両場合の境界となる基準値データ)を予め入力、記憶しておく。制御装置7では、反応光検知用カメラにより取得した画像データの照度を算出し、その算出結果と、予め入力されている照度の基準値データとを比較する。取得した画像データの照度が基準値データ以上の照度であれば、レーザ光Lを照射しているその範囲には汚れXが残っていると判断する。一方、取得した画像データの照度が基準値データ未満の照度であれば、レーザ光Lを照射しているその範囲には汚れXが残っていないと判断する。このように、レーザ光Lを照射している内面15の範囲における反応光の有無に基づいて洗浄状態を把握することもできる。
【0037】
検査エリアでの検査が終了したタイヤ14は、検査用コンベヤ装置13dによって、検査エリアから洗浄用コンベヤ装置13bに搬送される。ここで、検査工程において把握された洗浄状態が予め設定されている基準を満たしていると判断されたタイヤ14の場合は、出口扉12bを開き、洗浄用コンベヤベルト13bおよび搬出コンベヤベルト10cを稼働させて洗浄が完了したタイヤ14を洗浄ブース12の内部から外部に移動させる。この際に、入口扉12aを開き、搬入コンベヤベルト10aを稼働させて順次、洗浄するタイヤ14を洗浄ブース12の外部から内部に移動させて、洗浄用コンベヤ13b上の所定位置に位置決めする。このようにして、連続的にタイヤ14の内面15を洗浄する。
【0038】
検査工程において把握された洗浄状態が予め設定されている基準に満たないと判断されたタイヤ14は、検査エリア(検査用コンベヤ装置13d)から搬出コンベヤ装置13cに移動する過程で洗浄エリアとなる洗浄用コンベヤ装置13bの上に一時的に留まる。そして、この洗浄用コンベヤ装置13bの上で、そのタイヤ14の内面15に対して、再度、レーザヘッド4からレーザ光Lを照射して洗浄を行う。
【0039】
再度、タイヤ14の内面15の洗浄を行っている間には、例えば、このタイヤ14の直後に搬送られてきた別のタイヤ14が、洗浄エリアでの洗浄が終了して検査エリアに搬送されて検査される。このような構成にすると、1本のタイヤの再洗浄の間、もう1本の別のタイヤ14の検査工程を行うことができるので、工程の無駄時間を無くすことができる。
【0040】
上述したように、本発明によれば、制御装置7によってレーザヘッド4をタイヤ14の内面15に沿って相対移動させつつ、レーザ光Lを照射して内面15に付着している汚れXを除去するので、様々な仕様のタイヤ14であっても、人手をかけることなく、汚れXを効率よく除去することが可能になる。何よりも、汚れXの除去にはレーザ光Lを使用するので、水分の使用する従来の洗浄方法のような水分を乾燥させる等の後処理が不要になる。
【0041】
それ故、汚れXを除去した洗浄の直後であっても、その内面15に吸音材等の付属物を接合することができる。したがって、内面に付属物を接合したタイヤ14の生産性を向上するには有利になる。また、従来方法のような水分をタイヤ14の内面15から外部に排出させる装置も不要になる。
【0042】
この実施形態では、制御装置7に入力された洗浄対象のタイヤ14の仕様情報に基づいて、レーザ照射幅が予め設定された適切な幅に設定される。例えば、内面15の洗浄範囲が比較的狭い場合は、小さいレーザ照射幅に設定され、洗浄範囲が比較的広い場合は、大きいレーザ照射幅に設定される。
【0043】
このように、1つのレーザヘッド4であっても、洗浄範囲の広さ等に応じて適切なレーザ照射幅に切り換えることにより、内面15に付着している汚れXを短時間で効率よく除去できる。また、様々な仕様のタイヤ14に対応できるので汎用性が高くなる。
【0044】
また、この実施形態では、レーザ光Lが照射されている内面15の温度を温度センサ8によって逐次検知する。制御装置7には許容温度が予め入力されている。この許容温度は、タイヤ14の内面15の溶融温度に満たない所定温度にする。温度センサ8による検知温度が予め設定されている許容温度を超えた場合には、レーザ光Lの照射を中断する。例えば、意図しない要因によってレーザヘッド4の移動速度が遅くなる、停止する等の不具合があった場合であっても、この構成によれば、照射するレーザ光Lによって内面15が過度に加熱されることがなくなる。即ち、内面15がレーザ光Lによって熱変形や損傷する不具合を防止できる。
【0045】
レーザヘッド4は複数を設けることもできる。この場合、それぞれのレーザヘッド4のレーザ照射幅を不変(所定幅に固定)した仕様にすることも、いずれかのレーザヘッド4のレーザ照射幅を可変にした仕様にすることも、それぞれのレーザヘッド4のレーザ照射幅を可変にした仕様にすることもできる。
【0046】
また、それぞれのレーザヘッド4のヘッドの大きさ(体積)を異ならせることもでき、同じにすることもできる。それぞれのレーザヘッド4のレーザ照射幅を異ならせることもでき、同じにすることもできる。
【0047】
洗浄システム1は複数本のアーム6を有する仕様にすることも1本のアーム6を有する仕様にすることもできる。1本のアーム6を有する仕様において、複数のレーザヘッド4を備えた場合は、洗浄するタイヤTに最適なレーザヘッド4を1つ選択して洗浄を行う。独立に稼働する複数本のアーム6を有する仕様では複数のレーザヘッド4を同時に使用して1つのタイヤ14を洗浄することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 洗浄システム
2 レーザ発振器
2a 光ファイバーケーブル
3 カメラ
4 レーザヘッド
5 アームベース
6 アーム
6a、6b、6c アーム部
7 制御装置
8 温度センサ
9 回転機構
10 ビード保持機構
11 検知器
12 洗浄ブース
12a 入口扉
12b 出口扉
13a 搬入コンベヤ装置
13b 洗浄用コンベヤ装置(洗浄エリア)
13c 搬出コンベヤ装置
13d 検査用コンベヤ装置(検査エリア)
14 タイヤ
14a 識別タグ
15 内面
16 ビード部
L レーザ光
X 汚れ
図1
図2
図3
図4
図5