(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主面に沿う複数の導体部分を構成する複数の金属ピンにおいて前記コイル軸延在方向の一方側の金属ピンから他方側の金属ピンまでの距離が、前記裏面に沿う複数の導体部分において前記コイル軸延在方向の一方側の導体部分から他方側の導体部分までの距離に比べて短い、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイルデバイス。
前記裏面に沿う複数の導体部分において前記コイル軸延在方向両側の導体部分が前記裏面で前記素体の外部に露出し、その露出部分が前記裏面での前記接続端子を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイルデバイス。
前記主面に沿う複数の導体部分を構成する複数の金属ピンと前記裏面に沿う複数の導体部分とを接続する前記ヘリカル状コイルの導体部分が、前記素体の端面に形成された導電パターンで構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のコイルデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様のコイルデバイスは、主面、裏面、および端面を備える平板状の素体と、素体に設けられ、主面と裏面との間を延在するコイル軸を備えるヘリカル状コイルと、素体の裏面または端面に設けられ、ヘリカル状コイルに接続された接続端子と、を有し、ヘリカル状コイルを構成する導体において、主面に沿う複数の導体部分が、複数の金属ピンでそれぞれ構成されている。
【0013】
この態様によれば、コイルデバイスのヘリカル状コイルにおいて、平板状の素体の主面に沿う複数の導体部分、すなわちヘリカル状コイルにおいて大きな割合を占める複数の導体部分が、ワイヤに比べてリジッドな金属ピンで構成される。それにより、ヘリカル状コイル全体がワイヤで構成される場合に比べて、磁界分布のバラツキやインダクタンス値のバラツキを抑制することができる。
【0014】
ヘリカル状コイルの裏面に沿う複数の導体部分が、複数の金属ピンでそれぞれ構成されてもよい。これにより、素体の裏面に沿う複数の導体部分での信号減衰や電力損失を抑制することができる。また、ヘリカル状コイルを構成する導体の大半を金属ピンで構成することができ、ヘリカル状コイル全体の抵抗成分を最小化することができる。また、平面実装型コイルをアンテナとして使用する場合、伝送損失の低減や品質特性(Q値)の向上など、通信距離の向上等、通信特性をさらに改善することができる。
【0015】
ヘリカル状コイルの裏面に沿う複数の導体部分が、矩形断面を備えてもよい。これにより、コイルデバイスの製造の自由度が向上する。
【0016】
主面に沿う複数の導体部分を構成する複数の金属ピンのコイル軸延在方向の隙間は、裏面に沿う複数の導体部分のコイル軸延在方向の隙間に比べて狭い方が好ましい。これにより、各々の金属ピンの周囲を周回する磁界ループ(マイナーループ)の生成を抑制することができる。平面実装型コイルをアンテナとして使用する場合、通信距離の向上を図ることができる。
【0017】
主面に沿う複数の導体部分を構成する複数の金属ピンにおいてコイル軸延在方向の一方側の金属ピンから他方側の金属ピンまでの距離を、裏面に沿う複数の導体部分においてコイル軸延在方向の一方側の導体部分から他方側の導体部分までの距離に比べて短くしてもよい。これにより、ヘリカル状コイルのコイル開口面積を大きくすることができるとともに、そのコイル開口を主面側に向けることができる。平面実装型コイルをアンテナとして使用する場合、主面方向の通信距離を大きくすることができる。
【0018】
裏面に沿う複数の導体部分においてコイル軸延在方向両側の導体部分が、裏面で素体の外部に露出し、その露出部分が裏面での接続端子を構成してもよい。これにより、素体の裏面で露出する導体部分を介して、つまり、裏面で露出する導体部分を接続端子として、ヘリカル状コイルとプリント配線板等の基板上の端子とを容易に接続することができる。
【0019】
素体の外部に露出する接続端子が直方体の金属ブロックの切断体であって、接続端子が金属ブロックの切断面で構成されてもよい。これにより、バラツキが抑えられた一定の面積の接続端子を構成することができる。
【0020】
コイルデバイスが、ヘリカル状コイル内に配置された磁性体を有してもよい。これにより、ヘリカル状コイルのインダクタンス値を大きくすることができるとともに、ヘリカル状コイルに鎖交する磁界を増やすことができる。
【0021】
主面に沿う複数の導体部分を構成する複数の金属ピンと裏面に沿う複数の導体部分とを接続するヘリカル状コイルの導体部分が、素体の表面に形成された導電パターンで構成されてもよい。これにより、複数の金属ピンを他の導体部分に容易に接続することができる。
【0022】
コイルデバイスは、無線通信デバイスのアンテナとして、無線通信デバイスの回路基板に対して素体の裏面または端面で実装されてもよい。通信相手側のアンテナ素子に近く、通信に大きく寄与して実装面から遠い側、つまり主面に沿う複数の導体部分について、磁界分布のバラツキやインダクタンス値のバラツキを抑制することができる。その結果、特にアンテナ素子の共振周波数のバラツキを補正するためのチューニング用素子を用いなくても、通信可能距離や周波数特性のバラツキが小さく、信頼性に優れた無線通信デバイスを得ることができる。
【0023】
本発明の別態様の電子デバイスは、回路基板と、回路基板に実装されるコイルデバイスとを有し、コイルデバイスが、主面、裏面、および端面を備える平板状の素体と、素体に設けられ、主面と裏面との間を延在するコイル軸を備えるヘリカル状コイルと、素体の裏面または端面に設けられ、ヘリカル状コイルに接続された接続端子と、を有し、ヘリカル状コイルを構成する導体において、主面に沿う複数の導体部分が、複数の金属ピンでそれぞれ構成されている。
【0024】
本発明のさらに別の態様の電子デバイスは、並列する複数の導体を備える回路基板と、回路基板に実装され、回路基板と対向する実装面を備える平板状の表面実装型部品と、を有し、表面実装型部品が、回路基板の複数の導体の並列方向に並び、回路基板上の複数の導体と接続してヘリカル状コイルを備えるコイルデバイスを構成する複数の半環状の導体を備え、表面実装型部品の複数の半環状の導体それぞれにおいて、実装面から遠い側の部分が、金属ピンで構成されている。
【0025】
これらの態様によれば、ヘリカル状コイルにおいて、磁界分布のバラツキやインダクタンス値のバラツキを抑制することができる。それにより、電子デバイスにおいて、コイルに関連する特性のバラツキを抑制することができる。
【0026】
電子デバイスは、無線通信デバイスであって、コイルデバイスがアンテナとして使用され、コイルデバイスのヘリカル状コイルと磁気結合するように設けられたコイルアンテナを有してもよい。これにより、無線通信デバイスの通信可能距離が長くなる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る、コイルデバイスをアンテナとして有する電子デバイスの一例である無線通信デバイスを概略的に示している。また、
図2はコイルデバイスの内部を示す斜視図である。さらに、
図3は
図2におけるQ−Q線図に沿った断面図である。なお、図面においてX−Y−Z直交座標系、s−t−u直交座標系が示されているが、これは発明の実施の形態の理解を容易にするためのものであって発明を限定するものではない。
【0029】
図1に示す無線通信デバイス10は、回路基板12と、回路基板12の主面12a上に実装されたアンテナとしてのコイルデバイス14とを有する。なお、コイルデバイス14は、図面においては見やすさを考慮して直方体形状(ブロック状)であるが、可能な限り薄い平板状、すなわち、実装面におけるコイル軸CA方向の寸法をL、コイル軸CAに直交する方向の寸法をW、厚さ方向の寸法をTとすると、厚さ方向の寸法Tが、寸法L、Wに比べて小さいチップ状である。本実施の形態において、コイルデバイス14はHF帯をキャリア周波数とするアンテナ素子であり、たとえばNFC(Near Field Communication)システムに利用される。
【0030】
回路基板12は、プリント配線板等のマザー基板であって、コイルデバイス14が実装される主面12a上に、導電性材料(例えば銅材料)から作製された配線パターン(図示せず)を備える。また、回路基板12の主面12a上には、RFICチップや表面実装型コンデンサを備え、これらの部品は、配線パターンを介して、コイルデバイス14に接続される。また、
図3に示すように、回路基板12は、その内部に、導電性材料から作製されたグランド層12bを備える。なお、グランド層12bは、グランドパターンとして、回路基板12の裏面12cに設けられてもよい。グランド層12bは回路基板12のほぼ全面に設けられている。
【0031】
図2に示すように、コイルデバイス14は、ヘリカル状コイル16と、回路基板12の主面12aと対向する実装面(裏面)18aを備える平板状のバインダー部材(素体)18とを有する。
【0032】
素体18は、直方体状をなしており、実装面(裏面)18a、実装面18aに対向する天面(主面)18d、ヘリカル状コイル16のコイル軸CAと交差する2つの端面18eおよび18f、ならびに、コイル軸CAに沿う端面18bおよび18cを有している。実装面18aは、コイルデバイスをマザー基板に実装する際の実装面になる。実装面18aと天面18dの面積は、端面18bおよび18c、端面18eおよび18fの面積よりも大きい。つまり、素体18は、Z軸方向の長さ(厚さ)がX軸方向およびY軸方向の長さよりも短い平板状(薄板状)に形成されている。なお、本実施の形態では、端面18bおよび18cの面積が端面18eおよび18fよりも大面積に形成されているが、端面18eおよび18fの面積が端面18bおよび18cより大面積に形成されていてもよい。
【0033】
ヘリカル状コイル16は、
図1に示すように、実装面18aと天面18dとの間、すなわち回路基板12(その主面12a)に沿うように延在する、例えば回路基板12に対して平行に(X軸方向に)延在するコイル軸CAを備える。すなわち、ヘリカル状コイル16を構成する導体が、コイル軸CAを中心としてヘリカル状に延在している。なお、本実施の形態においてコイル軸CAは実装面18aと平行となっているが、必ずしも平行である必要は無い。
【0034】
図2に示すように、そのヘリカル状コイル16は、複数の第1〜第4の導体16a〜16dから構成されている。
【0035】
具体的には、
図2に示すように、複数の第1の導体16aは、素体18の実装面18a側に(すなわち実装面18aに沿って)コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に等間隔に並べられている。本実施の形態1の場合、複数の第1の導体16aそれぞれは、互いに平行であって、実装面18a(すなわち回路基板12)に対して平行(Y軸方向)に延在して円形断面を備える金属ピンである。金属ピンは、例えば銅材料から作製された円柱状の金属柱体である。また、金属ピンの円形断面の直径は、例えば30μm〜1mmである。
【0036】
複数の第2の導体16bは、複数の第1の導体16aに比べて回路基板12の主面12aから離れた位置で、すなわち回路基板12に対向する素体18の実装面18aから離れた位置で、素体18の天面18d側に(すなわち天面18dに沿うように)コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に等間隔に並べられている。本実施の形態1の場合、複数の第2の導体16bそれぞれは、互いに平行であって、実装面18a(すなわち回路基板12)に対して平行(Y軸方向)に延在して円形断面を備える金属ピンである。金属ピンは例えば銅材料から作製された円柱状の金属柱体である。また、金属ピンの円形断面の直径は、例えば30μm〜1mmである。なお、本実施の形態1の場合、複数の第1の導体16aと複数の第2の導体16bは、同一の金属ピンである。そのため、第1の導体16aと第2の導体16bが異なる金属ピンである場合に比べて、コイルデバイス14の製造コストを低く抑えることができる。
【0037】
複数の第3の導体16cそれぞれは、実装面18a(すなわち回路基板12の主面12a)と直交する方向(Z軸方向)視でコイル軸CAに対する一方側において(Y軸方向プラス側において)、第1の導体16aの端と第2の導体16bとの端とを接続する。
【0038】
複数の第4の導体16dそれぞれは、実装面18a(すなわち回路基板12の主面12a)と直交する方向視でコイル軸CAに対する一方側において(Y軸方向マイナス側において)、第1の導体16aの端と第2の導体16bとの端とを接続する。
【0039】
ヘリカル状コイル16の複数の第1の導体16aと複数の第2の導体16bは、素体18内に内包されている。素体18は、平板状であって、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料から作製されている。このような素体18に内包されることにより、複数の第1の導体16aそれぞれは、コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に等間隔に並んだ状態で維持される。同様に、複数の第2の導体16bそれぞれも、コイル軸CAの延在方向に等間隔に並んだ状態で維持される。
【0040】
これに対して、平板状の素体18の端面18b、18c(Y軸方向の端面)上に、複数の第3および第4の導体16c、16dが設けられている。複数の第3および第4の導体16c、16dは、例えば、素体18の端面18b、18c上に形成された導電パターンで構成されている。
【0041】
なお、素体18の端面18b、18cには、回路基板12の主面12a上の端子12dに対して、例えばはんだ等の導電性接合材22を介して電気的に接続される接続端子20がそれぞれ設けられている。接続端子20は、複数の第1の導体16aにおいてコイル軸CAの延在方向(X軸方向)両側の第1の導体16a’の一端(第3の導体16cまたは第4の導体16dに接続されていない端)に接続されている。つまり、一方の接続端子20がヘリカル状コイル16の一方端子、他方の接続端子20がヘリカル状コイル16の他方端子に接続されている。
【0042】
このようなヘリカル状コイル16を備えるコイルデバイス14は、回路基板12の主面12aの端部に、ヘリカル状コイル16の一方のコイル開口が回路基板12の内側を向き、他方のコイル開口が回路基板12の外側を向くように実装するのが好ましい。本実施の形態1の場合、ヘリカル状コイル16のコイル軸CAが、回路基板12の主面12aと端面12e(X軸方向の端面)との間の辺と交差するように、コイルデバイス14は回路基板12の主面12aに実装されている。
【0043】
このように配置されたコイルデバイス14によれば、
図4に示すように、ヘリカル状コイル16から発生した磁界(破線)は、コイルデバイス14が実装されている回路基板12の主面12aの上方に広がる。それとともに、磁界は、端面12e側にも広がる。また、ヘリカル状コイル16による磁界がグランド層12bによって打ち消されにくくなる。これにより、回路基板12の主面12aの中央側にコイルデバイス14を設ける場合に比べて、無線通信デバイス10の通信可能範囲が広がるとともに、通信距離が大きくなる。
【0044】
なお、
図4に示すように、コイルデバイス14のヘリカル状コイル16から発生した磁界は、回路基板12内のグランド層12bや主面12a上の配線パターン(図示せず)にさえぎられ、回路基板12の裏面12c側にはほとんど広がることができない。つまり、回路基板12に設けられたグランド層等の金属体を利用して、通信距離を大きくすることができる。
【0045】
ここからは、本実施の形態1のコイルデバイス14の一例の作製方法について説明する。
【0046】
まず、
図5Aに示すように、同一形状の複数の金属ピン50が、その長手方向(u軸方向)と直交する方向(t軸方向)に複数列で並ぶようにピン支持台52上に立てられる。金属ピン50の支持台52への固定は、例えばエポキシ樹脂等の接着剤を利用すればよい。
【0047】
次に、
図5Bに示すように、複数の金属ピン50を内包する樹脂ブロック54がピン支持台52上に形成される。樹脂ブロック54は、例えばピン支持台52に未硬化樹脂を流し、これを加熱により硬化させることによって作製される。
【0048】
続いて、
図5Cに示すように、複数の金属ピン50の長手方向(u軸方向)の両端が樹脂ブロック54から露出するように、樹脂ブロック54の図中上側および下側を研磨する。これにより、上下面が平坦化されるとともに、金属ピンの頭出しが行われ、樹脂ブロック54に内包された複数の第1の導体16aおよび複数の第2の導体16bが作製される。なお、
図5Cにおいては、簡略化のため、金属ピン50そのものは図示せず、その露出端面のみを図示した。
【0049】
続いて、
図5Dに示すように、複数の第1の導体16aの一方の端面および複数の第2の導体16bの一方の端面が露出する樹脂ブロック54の一方の研磨面54a上に、複数の第3の導体16cと接続端子20とをパターン形成する。同様に、複数の第1の導体16aの他方の端面および複数の第2の導体16bの他方の端面が露出する樹脂ブロック54の他方の研磨面54b上に、複数の第4の導体16dと接続端子20とをパターン形成する。例えば、第3の導体16c、第4の導体16d、および接続端子20は、樹脂ブロック54の研磨面54a、54b上に金属層(例えば銅層)を形成した後、その金属層をフォトエッチングすることによって作製される。あるいは、導電性ペーストを所定パターンにスクリーン印刷し、これを熱処理することによって作製される。パターニング後の金属層の表面には、ニッケル−金や錫等のめっき膜を形成してもよい。
【0050】
そして、
図5Eに示すように、第3の導体16c、第4の導体16d、および接続端子20が形成された樹脂ブロック54を複数に切断することにより、複数のコイルデバイス14が作製される。
【0051】
このような本実施の形態1によれば、コイルデバイス14のヘリカル状コイル16において、平板状の素体18の実装面18aおよび天面18dに沿う複数の導体部分、すなわちヘリカル状コイルにおいて大半を占める複数の導体部分が、ワイヤに比べてリジッドな金属ピンで構成される。それにより、ヘリカル状コイル全体がワイヤで構成される場合に比べて、磁界分布のバラツキやインダクタンス値のバラツキを抑制することができる。このようなコイルデバイス14をアンテナとして使用することにより、無線通信デバイス10に対して以下に示す効果がもたらされる。
【0052】
まず、コイルデバイス14のヘリカル状コイル16において通信に寄与して実装面18aから遠い側の複数の第2の導体16bについて、表皮効果を原因とする純抵抗(直流抵抗;Rdc)の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。その結果、アンテナとして機能するコイルデバイス14の通信可能距離のバラツキを抑制することができる。
【0053】
具体的に説明すると、コイルデバイス14がアンテナとして高周波信号を送受信するとき、そのコイルデバイス14のヘリカル状コイル16に表皮効果が発生する。
【0054】
表皮効果は、導体を交流が流れるとき、その導体全体に一様に電流が流れずに、表面に集中的に電流が流れることを言う。具体的には、表面から所定の深さ(表皮深さ)までの導体の部分を電流が流れる。
【0055】
表皮深さは、導体の材料と電流の周波数とによって異なる。周波数が高くなればなるほど、表皮深さは浅くなる(すなわち導体の純抵抗が高くなる)。導体の材料は、例えば、銀よりは銅の方が表皮深さが深く(純抵抗が小さく)、また銅よりは金の方が表皮深さが深い(純抵抗が小さい)。
【0056】
また、導体の断面形状のアスペクト比(縦横比)が1に近いほど、また断面形状が角が少ない形状であるほど、電流は導体の表面全体を流れることができる。例えば、導体の断面が矩形状である場合、短辺側の表面に集中して電流が流れる。また例えば、断面が角を備える形状である場合(例えば三角形である場合)、その角に集中して電流が流れる。したがって、導体の表面全体に電流が流れるためには、すなわち表皮効果を原因とする導体の純抵抗の増加を抑制するためには、導体の断面は円形状が好ましい。
【0057】
このような表皮効果を考慮して、本実施の形態1に係るコイルデバイス14のヘリカル状コイル16において実装面18a(すなわち回路基板12)から遠い側の複数の導体部分は、すなわち通信に大きく寄与する複数の第2の導体16bは、円形断面を備える複数の金属ピンで構成されている。
【0058】
コイルデバイス14は、
図4に示すように、回路基板12の主面12aの上方に磁界を分布する。このとき、他の導体に比べて実装面18a(すなわち回路基板12)から遠い第2の導体16bがこの磁界分布に大きく寄与する。
【0059】
この磁界分布に大きく寄与する第2の導体16bが効率よく磁界を発生することができるように、すなわち表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制して第2の導体16bでの信号減衰や電力損失を抑制するために、第2の導体16bは、円形断面を備える金属ピンで構成されている。
【0060】
また、第2の導体16bは、ワイヤのような可撓性をもった金属材ではなく、リジッドな金属ピンで構成されている。したがって、ワイヤで構成される場合に比べて、変形しにくい。したがって、第2の導体16b間の隙間のバラツキが小さく、そのため、ヘリカル状コイル16の磁界分布や自己共振周波数にバラツキが生じにくい。その結果、このような第2の導体16bを備えるヘリカル状コイル16は、すなわちアンテナとしてのコイルデバイス14は、通信可能距離や周波数特性についてバラツキが小さい。
【0061】
さらに、第2の導体16bが素体18内に内包されている。そのため、第2の導体16bの変形がさらに抑制されるとともに、第2の導体16b間の隙間が一定に維持される。それにより、ヘリカル状コイル16の磁界分布についてさらにバラツキが小さくされている。ちなみに、ワイヤを使ったコイルを樹脂で封止しようとすると、封止時の樹脂の流動により、線間距離にバラツキが生じやすく、場合によっては、断線することがある。
【0062】
さらに、第1の導体16aも、第2の導体16bと同様に、円形断面を備える金属ピンで構成されている。そのため、第1の導体16aについても、表皮効果を原因とする純抵抗の増加が抑制される。したがって、第1の導体16aにおいても、信号減衰や電力損失が抑制される。
【0063】
また、素体18は平板状の直方体であって、第1の導体16aや第2の導体16bは、ヘリカル状コイル16を構成する第1〜第4の導体16a〜16dのうち最も長い導体である。そのため、コイルの大半を金属ピンで構成することができ、コイルデバイスは、損失が少なく通信距離が大きいアンテナとして機能する。
【0064】
また、
図3に示すように、第2の導体部分16bを構成する複数の金属ピンにおいてコイル軸延在方向の一方側の金属ピンから他方側の金属ピンまでの距離D2が、第1の導体部分16aを構成する複数の金属ピンにおいてコイル軸延在方向の一方側の金属ピンから他方側の金属ピンまでの距離D1に比べて短く構成されている。したがって、これらの距離D1、D2が等しい場合に比べて、ヘリカル状コイル16のコイル開口面積を大きくすることができるとともに、そのコイル開口を天面側に向けることができ、天面方向の通信距離を大きくすることができる。
【0065】
(実施の形態2)
本実施の形態2の無線通信デバイスと上述の実施の形態1の無線通信デバイスとの違いは、コイルデバイスのヘリカル状コイルにおける第2の導体である。この異なる点を中心に、本実施の形態2の無線通信デバイスについて説明する。
【0066】
図6は、本実施の形態2に係る、コイルデバイスをアンテナとして有する無線通信デバイスの一部の断面図である。
【0067】
図6に示すように、本実施の形態2に係るコイルデバイス114のヘリカル状コイル116は、上述の実施の形態1のヘリカル状コイル16と同様に、素体118に内包された複数の第1の導体116aと複数の第2の導体116bとを備える。
【0068】
ヘリカル状コイル116の複数の第1の導体116aは、コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に等間隔に、具体的には所定のピッチ間隔p1で並んでいる。一方、複数の第2の導体116bは、複数の第1の導体116aに比べて回路基板112の主面112a(すなわち主面112aに対向する素体118の表面(実装面))から離れた位置で、コイル軸CAの延在方向に等間隔に、具体的には所定のピッチ間隔p2で並んでいる。本実施の形態2の場合、複数の第1の導体116aのピッチ間隔p1と複数の第2の導体116bのピッチ間隔p2は同一である。
【0069】
ピッチ間隔p1、p2は同一であるが、コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に隣接し合う第1の導体116aの間の距離(隙間)g1と、コイル軸CAの延在方向に隣接し合う第2の導体116bの距離(隙間)g2は異なる。具体的には、第2の導体116bの隙間g2が、第1の導体116aの隙間g1に比べて狭い。
【0070】
第2の導体116bの隙間g2を第1の導体116aの隙間g1に比べて狭くするために、第2の導体116bの断面のコイル軸CAの延在方向(X軸方向)の長さ(すなわち直径d2)は、第1の導体116aのコイル軸CAの延在方向の長さ(直径d1)に比べて大きい。すなわち、第2の導体116bに使用される金属ピンは、第1の導体116aに使用される金属ピンに比べて太い。
【0071】
このように、回路基板12の主面12aの上方への磁界分布に大きく寄与する複数の第2の導体116bの隙間g2を狭くすることにより、ヘリカル状コイル116の磁界を大きく広げることができる。
【0072】
すなわち、隙間g2をより狭くすることにより、隙間g2を介在して隣接し合う第2の導体116bの一方によって発生して隙間g2を通過する磁束が、他方によって発生して隙間g2を通過する磁束によって打ち消されることが抑制される。これにより、通信相手側コイル(アンテナ)との磁界結合に主に寄与する部分におけるマイナーループの発生量を低減することができ、ヘリカル状コイル116に供給される電力が、無線通信のための磁界の形成に有効に使用される。その結果、このようなヘリカル状コイル116を備えるコイルデバイス114は、エネルギ効率が高い。
【0073】
このような本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、コイルデバイス114のヘリカル状コイル116において通信に寄与して実装面(回路基板112の主面112a)から遠い側の複数の第2の導体116bについて、表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。また、コイルデバイス114は、エネルギ的に効率よく、無線通信のための磁界を形成することができる。
【0074】
(実施の形態3)
本実施の形態3の無線通信デバイスと上述の実施の形態1の無線通信デバイスとの違いは、コイルデバイスの第2の導体である。この異なる点を中心に、本実施の形態3の無線通信デバイスについて説明する。
【0075】
図7に示すように、本実施の形態3に係るコイルデバイス214のヘリカル状コイル216は、上述の実施の形態1のヘリカル状コイル16と同様に、素体218に内包された複数の第1の導体216aと複数の第2の導体216bとを備える。
【0076】
ヘリカル状コイル216の複数の第1の導体216aは、コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に等間隔に、具体的には所定のピッチ間隔p1’で並んでいる。一方、複数の第2の導体216bは、複数の第1の導体216aに比べて回路基板212の主面212a(すなわち主面212aに対向する素体218の表面(実装面))から離れた位置で、コイル軸CAの延在方向に等間隔に、具体的には所定のピッチ間隔p2’で並んでいる。
【0077】
本実施の形態3の場合、第1の導体216aの直径d1’と第2の導体216bの直径d2’は同一である。しかし、コイル軸CAの延在方向(X軸方向)に隣接し合う第1の導体216aの間の距離(隙間)g1’と、コイル軸CAの延在方向に隣接し合う第2の導体216bの距離(隙間)g2’は異なる。具体的には、第2の導体216bの隙間g2’が、第1の導体216aの隙間g1’に比べて狭い。
【0078】
第2の導体216bの隙間g2’を第1の導体116aの隙間g1’に比べて狭くするために、複数の第2の導体116bのピッチ間隔p2’が、複数の第1の導体216aのピッチ間隔p1’に比べて狭い。
【0079】
このように、回路基板212の主面212aの上方への磁界分布に大きく寄与する複数の第2の導体216bの隙間g2’を狭くすることにより、ヘリカル状コイル216の磁界を大きく広げることができる。
【0080】
すなわち、隙間g2’をより狭くすることにより、実施の形態2と同様、隙間g2’を介在して隣接し合う第2の導体216bの一方によって発生して隙間g2’を通過する磁束が、他方によって発生して隙間g2’を通過する磁束によって打ち消されることが抑制される。これにより、ヘリカル状コイル216に供給される電力が、無線通信のための磁界の形成に有効に使用される。その結果、このようなヘリカル状コイル216を備えるコイルデバイス214は、エネルギ効率が高い。
【0081】
このような本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、コイルデバイス214のヘリカル状コイル216において通信に寄与して実装面(回路基板212の主面212a)から遠い側の複数の第2の導体216bについて、表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。また、コイルデバイス214は、エネルギ的に効率よく、無線通信のための磁界を形成することができる。
【0082】
(実施の形態4)
本実施の形態4の無線通信デバイスと上述の実施の形態1の無線通信デバイスとの違いは、磁性体の有無である。この異なる点を中心に、本実施の形態4の無線通信デバイスについて説明する。
【0083】
図8に示すように、本実施の形態4に係るコイルデバイス314は、上述の実施の形態1のコイルデバイス14と異なり、磁性体330を備える。磁性体330は、例えばフェライトセラミックからなる磁性体や樹脂中にフェライト粉末を分散してなる磁性体であって平板状である。磁性体330はまた、ヘリカル状コイル316内に配置された状態で素体318に内包されている。すなわち、ヘリカル状コイル316の複数の第1の導体316aと複数の第2の導体316bとの間に、磁性体330が配置されていて、複数の第1の導体316aと複数の第2の導体316bにて保持されている。
【0084】
このような磁性体330をヘリカル状コイル316内に配置することにより、ヘリカル状コイル316の磁界が広範囲に広がる。その結果、このようなコイルデバイス314をアンテナとして備える無線通信デバイス310の通信可能距離が長くなる。
【0085】
このような本実施の形態4によれば、実施の形態1と同様に、コイルデバイス314のヘリカル状コイル316において通信に寄与して実装面(回路基板312の主面312a)から遠い側の複数の第2の導体部分316bについて、表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。また、無線通信デバイス310は、長い通信可能距離を備えることができる。
【0086】
また、平板状の磁性体330は複数の第1の導体316aと複数の第2の導体316bとで保持されているため、素体318を形成するために樹脂を流動させた際に磁性体330が動きにくく、製造バラツキの少ないコイルデバイスを構成できる。
【0087】
(実施の形態5)
本実施の形態5の無線通信デバイスと上述の実施の形態1の無線通信デバイスとの違いは、コイルデバイスと回路基板上の端子との間の接続である。この異なる点を中心に、本実施の形態5の無線通信デバイスについて説明する。
【0088】
上述の実施の形態1の場合、
図1に示すように、そのコイルデバイス14は、回路基板12の主面12aと対向しない端面18b、18c(Y軸方向の端面)に、ヘリカル状コイル16と回路基板12上の端子12dとを電気的に接続するための接続端子20を備える。その接続端子20は、例えばはんだ等の導電性接合材22を介して回路基板12の端子12dに電気的に接続されている。
【0089】
これに対して、
図9に示すように、本実施の形態5に係るコイルデバイス414は、回路基板412の主面412aに対向する実装面418aに、接続端子420を備える。
【0090】
具体的には、2つの接続端子420は、複数の第1の導体416aにおいてコイル軸CAの延在方向(X軸方向)両側の第1の導体416a’によってそれぞれ構成されている。
【0091】
コイル軸CAの延在方向(X軸方向)の両側の第1の導体416a’は、例えば、他の第1の導体416aに比べて太い金属ピンであり、概半円状の断面、すなわち平面を備える。その平面は、素体418の実装面418aで該素体318の外部に露出し、コイルデバイス414の接続端子420として機能する。接続端子420の表面にもめっき膜が形成されていることが好ましい。
【0092】
一方、回路基板412の主面412a上には、コイルデバイス414の接続端子420(第1の導体416a’の平面)に対向するように、端子412dが設けられている。
【0093】
したがって、コイルデバイス414が回路基板412の主面412a上に実装されると、コイルデバイス414の接続端子420と回路基板412の端子412dとが接触する。その結果、いわゆるLGA型の端子電極を形成することができ、コイルデバイス414のヘリカル状コイル416と回路基板412の端子412dとをはんだ等の導電性接合材を介して接続することができる。
【0094】
このような第1の導体416a’の平面で構成される接続端子420は、例えば、
図10に示すように、第1の導体416a(416a’)と第2の導体416bとを内包する樹脂ブロック454を、第1の導体416a’を交差するように切断することによって作製される。つまり、樹脂ブロック454の切断面が素体418の実装面418aになり、金属ピンの切断面が端子面になる。
【0095】
このような本実施の形態5によれば、実施の形態1と同様に、コイルデバイス410のヘリカル状コイル416において通信に寄与して実装面418aから遠い側の複数の第2の導体416bについて、表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。また、コイルデバイス414のヘリカル状コイル416と回路基板412上の端子412dとを容易に接続することができる。
【0096】
なお、本実施の形態では、第1の導体416a’を構成する金属ピンとして他の第1の導体416aを構成する金属ピンよりも大径のものを用いたが、同径のものを用いてもよい。
【0097】
(実施の形態6)
本実施の形態6の無線通信デバイスと上述の実施の形態1の無線通信デバイスとの違いは、コイルデバイスの第1の導体である。この異なる点を中心に、本実施の形態6の無線通信デバイスについて説明する。
【0098】
図11に示すように、本実施の形態6に係るコイルデバイス514において、ヘリカル状コイル516の第1の導体516aは、実施の形態1と異なり、また、第2の導体516bと異なり、矩形断面を備える金属部材で構成されている。また、第1の導体516aは、素体518の内部ではなく、回路基板512の主面512aに対向する素体518の実装面518a上に設けられている。このような第1の導体516aは、例えば、素体518の実装面518a上に形成された導電パターンである。
【0099】
回路基板512の主面512aの上方への磁界の分布は、回路基板512から離れた位置でコイル軸CAの延在方向(X軸方向)に並んで円形断面を備える第2の導体516bが大きく寄与する。そのため、回路基板512近傍でコイル軸CAの延在方向に並ぶ複数の第1の導体516aそれぞれが、その断面形状が円形状に比べて純抵抗が高い矩形状であっても、また素体518の外部にあっても大きな影響はない。
【0100】
本実施の形態6のように、複数の第1の導体516aが素体518の外部にあって且つ矩形状の断面を備える場合、コイルデバイスの製造方法について自由度が高い。
【0101】
例えば、ヘリカル状コイル516の複数の第1の導体516aが、コイルデバイス514の素体518上ではなく、回路基板512の主面512a上に形成されてもよい。
【0102】
この場合、回路基板512が、その主面512a上で(X軸方向に)並列する複数の第1の導体516aを備える。一方、素体518が、複数の第2の導体516b、複数の第3の導体516c、および複数の第4の導体を備える。すなわち、第2の導体516b、第3の導体516c、および複数の第4の導体からなる、実装面518a側が開いた半環状の導体が複数あって、その複数の半環状の導体が第1の導体516aの並列方向(X軸方向)に並んでいる。
【0103】
素体518上の複数の第3の導体516cおよび複数の第4の導体が回路基板512上の複数の第1の導体516aに接続するように、素体518が回路基板512に実装される。これにより、ヘリカル状コイル516を備えるコイルデバイス514が構成される。すなわち、複数の半環状の導体を備える素体518は、コイルデバイス514の一部として回路基板512に実装される表面実装型部品である。このような素体518と回路基板512とにより、無線通信デバイス510が構成される。なお、回路基板512上の複数の第1の導体516aと素体518上の複数の第3の導体516cおよび複数の第4の導体は、はんだ等の導電性接合材によって接続される。
【0104】
このような本実施の形態6によれば、実施の形態1と同様に、コイルデバイス514のヘリカル状コイル516において通信に寄与して実装面518aから遠い側の複数の第2の導体516bについて、表皮効果を原因とする純抵抗の増加を抑制しつつ、磁界分布のバラツキを抑制することができる。また、コイルデバイスの製造方法について自由度が高い。
【0105】
なお、複数の第1の導体516aを素体518の実装面側に形成してもよい。この場合、例えば導電性ペーストのスクリーン印刷によってパターニングしてもよいし、全面金属膜のエッチング等によりパターニングしてもよい。
【0106】
(実施の形態7)
本実施の形態7は、実施の形態1の無線通信デバイスと異なる無線通信デバイスである。したがって、コイルデバイスの詳細な構成については、その説明を省略する。
【0107】
図12は、実施の形態1に係るコイルデバイス14をアンテナとして有する、例えば携帯端末などの無線通信デバイス600を示している。また、
図13は、無線通信デバイス600の断面図を示している。
【0108】
図12に示すように、無線通信デバイス600は筐体602を有し、その筐体602内にコイルデバイス14および回路基板604が収納されている。
【0109】
なお、
図13に示すように、回路基板604上には、コイルデバイス14とともに、無線通信デバイス600を駆動するためのバッテリ605、コイルデバイス14を介してHF帯の周波数の信号を送受信する素子606などが実装されている。
【0110】
また、筐体602内には、HF帯の共振周波数を備えるブースターアンテナ(コイルアンテナ)608が収納されている。
【0111】
ブースターアンテナ608は、
図14に示すように、第1のコイルパターン610と、第2のコイルパターン612と、これらの間に介在してこれらを支持する絶縁板614とを備える。第1のコイルパターン610と第2のコイルパターン612は、矩形の渦巻き状であって、例えば、絶縁板614上にパターン形成される。また、第1および第2のコイルパターン610、612の開口は、コイルデバイス14内のヘリカル状コイルの開口に比べて大きい。
【0112】
さらに、同一方向に電流が流れたとき、例えば絶縁板614と直交する方向(Z軸方向)に見て時計回り方向に電流が流れたときに容量結合するように、第1および第2のコイルパターン610、612が構成されている。したがって、第1のコイルパターン610と第2のコイルパターン612との間には浮遊容量が形成される。そのため、
図15に示すように、第1のコイルパターン610のインダクタンスL1と、第2のコイルパターン612のインダクタンスL2と、第1および第2のコイルパターン610、612の端子間の浮遊容量C1、C2によって共振回路が構成される。この共振回路の共振周波数がコイルデバイス14が送受信する信号のHF帯の周波数、例えば13.56MHzとなるように、ブースターアンテナ608は構成されている。
【0113】
ブースターアンテナ608はまた、バッテリ605にオーバーラップしないように、且つ、コイルデバイス14から発生した磁界(破線)内に第1および第2のコイルパターン610、612の一部に位置するように、筐体602内に収納されている。これにより、コイルデバイス14(その内部のヘリカル状コイル)とブースターアンテナ608との間で磁気結合が生じ、ブースターアンテナ608の回路に電流が流れる。ブースターアンテナ608の第1および第2のコイルパターン610、612の開口がコイルデバイス14内のヘリカル状コイルの開口に比べて大きいため、コイルデバイス14単独の場合に比べて、広い磁界が形成される。その結果、無線通信デバイス600の通信可能距離が長くなる。
【0114】
(実施の形態8)
本実施の形態8は、上述の実施の形態5の改良形態である。したがって、実施の形態5と異なる点を中心に、本実施の形態8を説明する。
【0115】
図9および
図10に示すように、上述の実施の形態5のコイルデバイス414の場合、円形断面を備える金属ピンである第1の導体416a’を該金属ピンの中心軸を含む平面で切断し、その矩形状の切断面が接続端子420として使用される。
【0116】
しかしながら、第1の導体416’が円形断面を備える金属ピンであるために、その切断面(接続端子420の端子面)の大きさについてバラツキが生じる可能性がある。すなわち、金属ピンの中心軸から外れて該金属ピンが切断されると、その中心軸からの距離に応じてその切断面の大きさが変わる。切断面(接続端子420の端子面)の大きさにバラツキが生じると、この接続端子420でのインピーダンスにバラツキが生じ、その結果として、無線通信デバイスの通信特性にもバラツキが生じる。
【0117】
そのために、本実施の形態8のコイルデバイス714の場合、
図16および
図17に示すように、樹脂ブロック754内の直方体形状の金属ブロック756を半分に切断して2つの第1の導体716a’を作製する。これにより、切断面、すなわち接続端子720が形成される。このように、直方体形状の金属ブロック756を切断した場合、切断箇所にバラツキが生じても、その切断面の大きさは一定である。したがって、接続端子720の端子面は、バラツキが生じることなく、一定の大きさを備えることができる。その結果、通信特性のバラツキが抑制された無線通信デバイスを実現することができる。
【0118】
(実施の形態9)
上述の複数の実施の形態の場合、例えば実施の形態1を例に挙げると、コイルデバイス14は、
図1に示すように、コイルデバイス14に比べてより大きい回路基板12に実装されている。それにより、相対的に大きい無線通信デバイス10が構成されている。
【0119】
一方、本実施の形態9の場合、コイルデバイスが、同一またはそれ以下の大きさの回路基板に実装されている。言い換えると、コイルデバイスに回路基板が実装され、それにより相対的に小さい無線通信デバイスが構成されている。
【0120】
図18は、実施の形態9に係る無線通信デバイス810を示している。この無線通信デバイス810は、RFID(Radio Frequency Identification)タグである。
【0121】
図18に示すように、無線通信デバイス810は、上述の実施の形態5のコイルデバイス414と、それに搭載される回路基板830とを有する。
【0122】
図18に示すように、回路基板830は、例えば可撓性を備えて熱可塑性樹脂から作製された基板832と、基板832の主面832aに実装されたRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)素子834と、同様に基板832の主面832aに実装された2つのコンデンサ素子836、838とを有する。
図19に示すように、RFIC素子834、コンデンサ素子836、コンデンサ素子838、およびコイルデバイス414のヘリカル状コイル416がRFID回路を構成する。
【0123】
また、
図18に示すように、コイルデバイス414の実装面418a(素体418の裏面)に、基板832の裏面832bが接合される。このとき、コイルデバイス414の実装面418a上の接続端子420と、基板832の裏面832b上の接続端子832cとが電気的に接続される。これらの接続端子832cは、
図19に示すようにRFIC素子834に接続されている。
【0124】
なお、コンデンサ素子836、838に代わって、コンデンサパターンを基板832に設けてもよい。
【0125】
(実施の形態10)
本実施の形態10の無線通信デバイスは、実施の形態9と同様に、RFIDタグである。したがって、実施の形態9と異なる点を中心に説明する。
【0126】
図20に示すように、本実施の形態10に係る無線通信デバイス910は、上述の実施の形態5のコイルデバイス414と、それに搭載される回路基板930とを有する。
【0127】
図20に示すように、回路基板930は、例えば可撓性を備えて熱可塑性樹脂から作製された基板932と、基板932に内蔵されたRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)素子934と、同様に基板932に内蔵された2つのコンデンサ素子936、938とを有する。
図21に示すように、RFIC素子934、コンデンサ素子036、コンデンサ素子938、およびコイルデバイス414のヘリカル状コイル416がRFID回路を構成する。
【0128】
また、回路基板930は、RFIC素子934に外部の制御回路、電源回路等を電気的に接続するための複数の接続端子932d〜932gを有する。これらの複数の接続端子932d〜932gは、基板32の主面932a上に設けられている。
【0129】
また、
図20に示すように、コイルデバイス414の実装面418a(素体418の裏面)に、基板932の裏面932bが接合される。このとき、コイルデバイス414の実装面418a上の接続端子420と、基板932の裏面932b上の接続端子932cとが電気的に接続される。これらの接続端子932cは、
図21に示すようにRFIC素子934に接続されている。
【0130】
なお、コンデンサ素子936、938に代わって、コンデンサパターンを基板932に設けてもよい。
【0131】
(実施の形態11)
上述の複数の実施の形態の場合、本発明の実施の形態に係るコイルデバイスは、アンテナとして無線通信デバイスに使用されている。それに対して、本実施の形態11は、コイルデバイスを、アンテナ以外の用途に使用する電子デバイスである。
【0132】
図22は、本発明の実施の形態11に係る電子デバイスの一例であるDC−DCコンバータモジュールを示している。
【0133】
図22に示すように、本発明の実施の形態11に係るDC−DCコンバータモジュール1010は、上述の実施の形態5のコイルデバイス414と、それに搭載される回路基板1030とを有する。
【0134】
図22に示すように、回路基板1030は、例えば可撓性を備えて熱可塑性樹脂から作製された基板1032と、基板1032に内蔵されたスイッチングIC素子1034と、同様に基板1032に内蔵された2つのコンデンサ素子1036、1038とを有する。
図23に示すように、スイッチングIC素子1034、コンデンサ素子1036、コンデンサ素子1038、およびコイルデバイス414のヘリカル状コイル416が、DC−DCコンバータ回路を構成する。ヘリカル状コイル416は、チョークコイルとして機能する。
【0135】
また、回路基板1030は、スイッチングIC素子1034を接地するための、また外部の制御回路、電源回路等に接続するための複数の接続端子1032d〜1032jを有する。これらの複数の接続端子1032d〜1032jは、基板1032の主面1032a上に設けられている。
【0136】
また、
図22に示すように、コイルデバイス414の実装面418a(素体418の裏面)に、基板1032の裏面1032bが接合される。このとき、コイルデバイス414の実装面418a上の接続端子420と、基板1032の裏面1032b上の接続端子1032cとが電気的に接続される。これらの接続端子1032cは、
図23に示すようにスイッチングIC素子1034に接続されている。
【0137】
なお、コンデンサ素子1036、1038に代わって、コンデンサパターンを基板1032に設けてもよい。
【0138】
(実施の形態12)
上述の複数の実施の形態の場合、コイルデバイスは、その裏面で回路基板に実装されている。すなわち、平板状の素体において相対的に大きい表面(端面に比べて)を介して、コイルデバイスは回路基板に実装されている。
【0139】
これと異なり、本実施の形態12においては、コイルデバイスは、その端面で回路基板に実装される(接合される)。すなわち、平板状の素体の端面がコイルデバイスの実装面として使用される。
【0140】
図24に示す本発明の実施の形態12に係る無線通信デバイス1110は、具体的には実施の形態9と同様のRFID回路(
図19参照)を備えるRFIDタグである。
【0141】
図24に示すように、本発明の実施の形態12に係る無線通信デバイス1110は、ヘリカル状コイルを備えるコイルデバイス1114と、それに搭載される回路基板1130とを有する。
【0142】
図24に示すように、コイルデバイス1114は、平板状の素体1118の裏面1118aではなく、また主面1118dではなく、端面1118bに、そのヘリカル状コイルの両端それぞれに接続する接続端子1120を備える。
【0143】
回路基板1130は、例えば可撓性を備えて熱可塑性樹脂から作製された基板1132と、基板1132の主面1132aに実装されたRFIC素子1134と、同様に基板1132の主面1132aに実装された2つのコンデンサ素子1136、1138とを有する。
【0144】
また、
図24に示すように、コイルデバイス1114の実装面1118b(素体1118の端面1118b)に、基板1132の裏面1132bが接合される。このとき、コイルデバイス1114の実装面1118b上の接続端子1120と、基板1132の裏面1132b上の接続端子1132cとが電気的に接続される。これらの接続端子1132cは、RFIC素子1134に接続されている。
【0145】
(実施の形態13)
本実施の形態13の無線通信デバイスは、実施の形態10と同様のRFID回路(
図21参照)を備えるRFIDタグである。しかし、コイルデバイスが、実施の形態12と同様に、その端面で回路基板に接合している。
【0146】
図25に示すように、本実施の形態13に係る無線通信デバイス1210は、コイルデバイス1214と、それに搭載される回路基板1230とを有する。
【0147】
図25に示すように、コイルデバイス1214は、その実装面1218b(素体1218の端面)に、そのヘリカル状コイルの両端それぞれに接続する接続端子1220を備える。
【0148】
回路基板1230は、例えば可撓性を備えて熱可塑性樹脂から作製された基板1232と、基板1232の主面1232aに実装されたRFIC素子1234と、同様に基板1232の主面1232aに実装された2つのコンデンサ素子1236、1238とを有する。
【0149】
また、
図25に示すように、コイルデバイス1214の実装面1218b(素体1218の端面)に、基板1232の裏面1232bが接合される。このとき、コイルデバイス1214の実装面1218b上の接続端子1220と、基板1232の裏面1232b上の接続端子1232cとが電気的に接続される。これらの接続端子1232cは、RFIC素子1234に接続されている。
【0150】
また、本実施の形態13の場合、RFIC素子1234に外部の制御回路、電源回路等を電気的に接続するための複数の接続端子1232d〜1232gは、基板1232の裏面1232bに設けられている。この接続端子1232d〜1232gにそれぞれ接続する複数の導体1222がコイルデバイス1214に設けられている。
【0151】
これらの複数の導体1222は、例えば、素体1218の裏面1218aから端面1218bにわたって形成された導体層である。また例えば、複数の導体1222は、素体1218内に内包され、素体1218の裏面1218aおよび端面1218bで外部に露出する金属ピンである。
【0152】
この本実施の形態13は、コイルデバイス1214の端面1218bが非常に小さい場合、すなわち、RFIC素子1234などが実装された基板1232の主面1232aに外部との接続用の接続端子を設けるスペースがない場合に有益である。
【0153】
以上、上述の複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれらそれぞれに限らない。
【0154】
例えば、上述の複数の実施の形態の場合、コイルデバイスのヘリカル状コイルは、第1〜第4の導体によって構成されている。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。広義には、本発明の実施の形態は、主面、裏面、および端面を備える平板状の素体と、素体に設けられ、主面と裏面との間を延在するコイル軸を備えるヘリカル状コイルと、素体の裏面または端面に設けられ、ヘリカル状コイルに接続された接続端子と、を有し、ヘリカル状コイルを構成する導体において、主面に沿う複数の導体部分が、複数の金属ピンでそれぞれ構成されているコイルデバイスである。
【0155】
また例えば、上述の複数の実施の形態の場合、電子デバイスの一例である無線通信デバイスにおいて、アンテナとしてのコイルデバイスは、回路基板の主面の端に実装されている。これに代わって、他の場所、例えば回路基板の主面の中央に実装されてもよい。
【0156】
さらに、コイルデバイスのヘリカル状コイルの第1〜第4の導体は、同一の材料であってもよいし、また異なる材料であってもよい。例えば、磁界の分布に大きく寄与する第2の導体の純抵抗の増加を抑制するために、表皮深さが深い材料で第2の導体の金属ピンを作製してもよい。例えば、第2の導体の金属ピンを金で作製し、他の導体を銅で作製すれば、第2の導体の純抵抗の増加を抑制しつつ、ヘリカル状コイルを安価に作製することができる(ヘリカル状コイルの導体全てを金で作製する場合に比べて)。
【0157】
また、例えば
図2に示すように、第1の導体と第2の導体を共通の金属ピンで作製する場合、複数の第1および第2の導体それぞれは、互いに平行であるのが好ましい。その理由は、
図5Aに示すように、コイルデバイスを作製するときに複数の金属ピンを容易にセッティングすることができるからである。
【0158】
第1および第2の導体に関連して言えば、上述の複数の実施の形態の場合、例えば
図3に示すように、実装面(回路基板)から近い位置でコイル軸の延在方向(X軸方向)に並ぶ第1の導体と、実装面(回路基板)から遠い位置でコイル軸の延在方向に並ぶ第2の導体は、その回路基板と直交する方向(Z軸方向)に対向していない。これに代わって、第1の導体と第2導体が回路基板と直交する方向に対向するようにヘリカル状コイルを構成してもよい。
【0159】
さらに、アンテナとしての本発明の実施の形態に係るコイルデバイスは、HF帯の周波数の信号の送受信に使用されることに限定されるものではなく、様々な帯域の周波数の信号を送受信するために使用可能である。アンテナとしての本発明の実施の形態に係るコイルデバイスは、例えば、UHF帯の周波数の信号の送受信のために使用されてもよい。
【0160】
最後に、上述の複数の実施の形態のいずれかの特徴の少なくとも一部を、他の実施の形態に組み込むことによって新たな実施の形態を実現することが可能である。例えば、実施の形態4のコイルデバイス314の磁性体330を実施の形態1のコイルデバイス14内に配置することにより、新たな実施の形態を実現することが可能である。また、実施の形態2のコイルデバイス114を実施の形態7の無線通信デバイス600に適用することにより、新たな実施の形態を実現することが可能である。