特許第6380718号(P6380718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380718
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】アンテナ装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20180820BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01Q1/24 C
   H01Q7/00
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-524906(P2018-524906)
(86)(22)【出願日】2017年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2017015270
(87)【国際公開番号】WO2018003239
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-127369(P2016-127369)
(32)【優先日】2016年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏充
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−162195(JP,A)
【文献】 特開2014−232904(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115148(WO,A1)
【文献】 特開2013−168756(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/163295(WO,A1)
【文献】 特開2015−43567(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0268925(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/041066(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104993216(CN,A)
【文献】 特開2017−187670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H04N 5/225
G06K 19/077
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きが開いている高磁束密度部分と交差しない方向である、アンテナ装置。
【請求項2】
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きの縁と交差する方向である、アンテナ装置。
【請求項3】
前記面状導体は前記回路基板に形成されたグランド導体である、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記引き出し部とが重なる部分に磁性体をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記コイル導体は、前記磁性体を介さずに前記面状導体と対向する部分を有する、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記引き出し部とが重なる部分に、前記面状導体よりも小面積の導電性部材を備える、請求項1からのいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記引き出し部とが重なる部分に、前記面状導体よりも小面積の導電性部材および磁性体を備え、
前記導電性部材は、前記磁性体と前記面状導体との間に配置された、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記機能部品は光学部品である、請求項1からのいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記機能部品は操作部品である、請求項1からのいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
筐体に収納されるアンテナ装置を備える電子機器であり、
前記アンテナ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きが開いている高磁束密度部分と交差しない方向である、ことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
筐体に収納されるアンテナ装置を備える電子機器であり、
前記アンテナ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きの縁と交差する方向である、ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体内に収納される、または電子機器の筐体を一部に含む、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の金属部等の、開口を有する面状導体と、コイルアンテナとを備え、面状導体にコイル開口を重ねることで、コイルアンテナと面状導体とを結合させ、面状導体をブースターとして利用したアンテナ装置が特許文献1に示されている。また、特許文献1には、上記開口の位置にカメラモジュールを配置することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/122685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルアンテナと結合する面状導体は、回路基板に形成されたグランド導体や回路基板に固定されたシールドケース等であってもよい。しかし、カメラモジュールから引き出されているケーブルが回路基板に接続される場合、面状導体の主面の法線方向において、ケーブルがコイルアンテナと面状導体との間に位置するため、そのケーブルが面状導体やコイル導体から発生する磁束の干渉を受けやすい。このカメラモジュールのケーブルが受ける干渉は、例えば、画像信号にノイズ成分が重畳される等、カメラモジュールの動作上の障害となる場合があることを本発明の発明者は見出した。このような動作上の障害はカメラモジュールに限らず、コイルアンテナと面状導体とを含み、機能部品と共に構成されるアンテナ装置に共通の解決すべき課題である。
【0005】
本発明の目的は、コイルアンテナと面状導体とを含み、機能部品と共に構成されるアンテナ装置において、上記機能部品のケーブルが受ける干渉の問題を解消したアンテナ装置およびそれを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のアンテナ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きが開いている高磁束密度部分と交差しない方向であることを特徴とする。
【0007】
(2)本発明のアンテナ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きの縁と交差する方向であることを特徴とする。
【0008】
記構成により、機能部品の引き出し部は上記磁束密度の高い部分を避ける方向に引き出されているので、その引き出し部は面状導体やコイル導体から発生する磁束の干渉を受け難い。
【0009】
)例えば、前記面状導体は前記回路基板に形成されたグランド導体である。そのことにより、アンテナ装置専用の面状導体を形成する必要がなく、小型の電子機器でありながら、実効的なアンテナ面積の大きなアンテナ装置を設けることができる。
【0010】
)前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記引き出し部とが重なる部分に磁性体をさらに備えることが好ましい。これにより、コイル導体と機能部品の引き出し部との不要な磁界結合が抑制される。
【0011】
)前記コイル導体は、前記磁性体を介さずに前記面状導体と対向する部分を有することが好ましい。これにより、コイルアンテナと面状導体との必要な結合が確保され、面状導体が存在することによる放射特性向上効果が維持される。
【0012】
)前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記ケーブルとが重なる部分に、前記面状導体よりも小面積の導電性部材を備えることが好ましい。これにより、コイル導体と機能部品のケーブルとの不要な電磁界結合が抑制される。
【0013】
)前記コイルアンテナと前記面状導体との間に配置され、前記面状導体の平面視で、少なくとも前記コイル導体と前記引き出し部とが重なる部分に、前記面状導体よりも小面積の導電性部材および磁性体を備え、前記導電性部材が前記磁性体と前記面状導体との間に配置されることが好ましい。このことにより、導電性部材に起因する、コイル導体に鎖交する磁束の低下を抑制しつつ、コイル導体に鎖交する磁束を介してコイル導体と引き出し部とが電磁界結合することを抑制する。
【0014】
)前記機能部品は、例えば、カメラモジュール、フラッシュ、赤外センサ、ディスプレイ等の光学部品であってもよい。
【0015】
)前記機能部品は押圧操作のスイッチ等の操作部品であってもよい。
【0016】
10)本発明の電子機器は、筐体に収納されるアンテナ装置を備え、
前記アンテナ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に設けられ、切り欠きが形成された面状導体と、
本体、および当該本体から引き出され前記回路基板に接続される引き出し部を有し、前記面状導体の平面視で前記本体が前記切り欠きに重なる、機能部品と、
前記機能部品の前記本体の周囲に巻回されたコイル導体で構成されるコイルアンテナと、
を備え、
前記引き出し部は前記コイルアンテナと前記面状導体との間に位置し、
前記機能部品の前記本体からの前記引き出し部の引き出し方向は、前記面状導体の平面視で前記切り欠きが開いている高磁束密度部分と交差しない方向である、ことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、機能部品のケーブルが面状導体やコイル導体から発生する磁束の干渉を受け難く、機能部品の動作上の障害が抑制されるので、機能部品とともにアンテナ装置が筐体内に高密度に実装される電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、機能部品のケーブルが受ける干渉の問題を解消したアンテナ装置およびそれを備える電子機器が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板10、コイルアンテナモジュール20およびカメラモジュール50の平面図であり、図1(B)は、そのアンテナ装置101の平面図であり、図1(C)は、アンテナ装置101を備える電子機器201の断面図である。
図2図2(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置が有するコイルアンテナモジュールの平面図であり、図2(B)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102Aの平面図であり、図2(C)は、アンテナ装置102Aを備える電子機器202Aの断面図である。
図3図3(A)は第2の実施形態に係る別のアンテナ装置102Bの平面図であり、図3(B)はアンテナ装置102Bを備える電子機器202Bの断面図である。
図4図4(A)は第3の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板10の平面図であり、図4(B)は、そのアンテナ装置103Aの平面図である。
図5図5(A)は第3の実施形態に係る別のアンテナ装置が有する回路基板10の平面図であり、図5(B)は、そのアンテナ装置103Bの平面図である。
図6図6(A)は第3の実施形態に係る更に別のアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図6(B)はそのアンテナ装置103Cの平面図である。
図7図7(A)は第3の実施形態に係る更に別のアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図7(B)はそのアンテナ装置103Dの平面図である。
図8図8は第4の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図である。
図9図9(A)は第5の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図9(B)はそのアンテナ装置105の平面図である。
図10図10(A)は第6の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図10(B)はそのアンテナ装置106の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0021】
各実施形態に示す「アンテナ装置」は、信号(または電力)の送信(送電)側、受信(受電)側のいずれにも適用できる。この「アンテナ装置」を、磁束を放射するアンテナとして説明する場合でも、そのアンテナ装置が磁束の発生源であることに限るものではない。伝送相手側アンテナ装置が発生した磁束を受ける(鎖交する)場合にも、すなわち送受の関係が逆であっても、同様の作用効果を奏する。
【0022】
以降の各実施形態に示す「アンテナ装置」は、通信相手側アンテナ装置と磁界結合を用いた近傍界通信のために用いられるアンテナ装置、または電力伝送相手側アンテナ装置と磁界結合を用いた近傍界での電力伝送のために用いられるアンテナ装置である。通信の場合には、例えばNFC(Near field communication)等の通信システムに適用される。電力伝送の場合には、例えば電磁誘導方式や磁界共鳴方式等の電力伝送システムに適用される。つまり、各実施形態に示す「アンテナ装置」は、少なくとも磁界結合を利用した通信や電力伝送等の無線伝送システムで用いられる。なお、各実施形態に示す「アンテナ装置」は、実質的に伝送相手側アンテナ装置と電磁界結合(磁界結合および電界結合)により無線伝送しているものも含む。
【0023】
各実施形態に示す「アンテナ装置」は、例えばHF帯、特に13.56MHz、6.78MHzまたはそれらの近傍の周波数帯が利用される。
【0024】
ここで、各周波数帯の数値範囲は例えば次のように表すことができる。
【0025】
・HF帯:3MHz以上30MHz以下
・UHF帯:300MHz以上3GHz以下
・SHF帯:3GHz以上30GHz以下
アンテナ装置の大きさ(典型的には、アンテナ装置が備えるコイルアンテナが有するコイル導体パターンの一端から他端までコイル導体に沿った長さ)は、使用する周波数における波長λに比べて十分に小さく、使用周波数帯においては電磁波の放射効率は低い。より具体的には、アンテナ装置の電流経路の長さはλ/10以下である。このように、使用周波数帯での波長に比較して十分に短いと、コイル導体に生じる電流の、コイル導体に沿った座標軸での分布はほとんど生じず、ほぼ一定の大きさの電流が流れる。なお、ここでいう波長とは、コイル導体パターンが形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長である。
【0026】
コイルアンテナが有するコイル導体パターンの両端には、上記使用周波数帯の信号(電力)を操作する給電回路が接続される。なお、コイルアンテナが有するコイル導体パターンと給電回路とは、給電コイルやトランス(バラン含む)を介して磁界結合により接続されてもよい。その場合は、給電コイルやトランスが有するコイル導体の両端が給電回路に接続され、コイルアンテナが有するコイル導体の両端が互いに直接またはキャパシタを介して接続される。
【0027】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板10、コイルアンテナモジュール20およびカメラモジュール50の平面図であり、図1(B)は、そのアンテナ装置101の平面図であり、図1(C)は、アンテナ装置101を備える電子機器201の断面図である。図1(B)では筐体部分を除いた状態で表している。図1(C)は、図1(B)におけるX−X部分での電子機器の断面図である。電子機器201は例えばスマートフォンや携帯電話端末である。
【0028】
このアンテナ装置101を備える電子機器201は、図1(C)に表れているように、背面側の筐体61およびディスプレイ側の筐体62を含む筐体内に回路基板10を備える。
【0029】
背面側の筐体61の内面にはコイルアンテナモジュール20が貼付されている。また、背面側の筐体61にカメラモジュール50の本体50Bが取り付けられている。カメラモジュール50の一部は回路基板10の切り欠き内に収まっている。カメラモジュール50は本発明に係る「機能部品」の一例である。
【0030】
図1(A)に表れているように、回路基板10には、面状に拡がるグランド導体パターン11が形成されている。このグランド導体パターン11は本発明に係る「面状導体」に相当する。グランド導体パターン11には、外縁EEを有する切り欠き12が形成されている。また、回路基板10にはカメラモジュール50を接続するコネクタ13が実装されている。回路基板10に実装される各種部品については、図1(A)においては図示を省略している。
【0031】
また、図1(A)に表れているように、コイルアンテナモジュール20は、コイルアンテナ基板22とコイル導体パターン21とで構成されている。コイルアンテナ基板22は矩形環状のフレキシブル基板であり、このコイルアンテナ基板22に、矩形スパイラル状のコイル導体パターン21が形成されている。このコイル導体パターン21は本発明に係る「コイルアンテナ」に相当する。
【0032】
さらに、図1(A)に表れているように、カメラモジュール50は本体50Bとこの本体50Bから引き出されたケーブル50Cを備えている。この例では、ケーブル50Cは、グランド導体パターン11の平面視で、−X方向に本体50Bから引き出されている。
【0033】
図1(B)に表れているように、コイル導体パターン21のコイル開口CAは、グランド導体パターン11の平面視で、切り欠き12に重なる。この例では、矩形スパイラル状のコイル導体パターン21の3辺がグランド導体パターン11の切り欠き12の縁に沿っている。また、グランド導体パターン11の平面視で、カメラモジュール50の本体50Bも切り欠き12に重なる。したがって、コイル導体パターン21はカメラモジュール50の本体50Bの周囲に巻回された構造である。カメラモジュール50のケーブル50Cはコネクタ13に差し込まれることにより電気的に接続される。
【0034】
グランド導体パターン11はコイルアンテナモジュール20のコイル導体パターン21と電磁界結合(電界結合および磁界結合)、特に磁界結合する。このことにより、グランド導体パターン11に電流が誘導されるが、電流密度はグランド導体パターン11の位置により異なる。切り欠き12近傍の磁束密度は高い。
【0035】
上記構成により、カメラモジュール50のケーブル50Cは上記磁束密度の高い部分を交差しないように引き出されているので、そのケーブル50Cはグランド導体パターン11やコイル導体パターン21から発生する磁束の干渉を受け難い。特に、切り欠き12が開いている箇所は高磁束密度部分HDであるので、ケーブル50Cがこの高磁束密度部分HDから遠ざかる方向(−X方向)に本体50Bから引き出されていることはより好ましい。
【0036】
上述の作用により、本実施形態によればカメラモジュールの動作上の障害は抑制される。また、コイル導体パターン21とケーブル50Cとの不要結合も抑制されるので、コイルアンテナの特性についてもカメラモジュール50の影響を受けにくい。
【0037】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、コイルアンテナモジュールの構成が、第1の実施形態で示したものと異なるアンテナ装置および電子機器について示す。
【0038】
図2(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置が有するコイルアンテナモジュールの平面図であり、図2(B)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102Aの平面図であり、図2(C)は、アンテナ装置102Aを備える電子機器202Aの断面図である。図2(B)では筐体部分を除いた状態で表している。図2(C)は、図2(B)におけるX−X部分での電子機器の断面図である。電子機器202Aは例えばスマートフォンや携帯電話端末である。
【0039】
本実施形態のアンテナ装置102Aにおいては、コイルアンテナモジュール20のコイル導体パターン21とグランド導体パターン11との間に、グランド導体パターン11の平面視で、コイル導体パターン21とケーブル50Cとの重なる部分に、磁性体23を有する。その他の構成は第1の実施形態で示したアンテナ装置101と同じである。
【0040】
上記磁性体23は例えばフェライトシートであり、コイルアンテナモジュール20の下面のうち、ケーブル50Cが引き出される辺に沿う位置に、粘着シートを介して貼付されている。
【0041】
上記アンテナ装置102Aにおいては、コイル導体パターン21とカメラモジュール50のケーブル50Cとの不要な磁界結合が、磁性体23によって抑制される。また、コイル導体パターン21は、磁性体23を介さずにグランド導体パターン11と対向する部分を有する。これにより、コイル導体パターン21とグランド導体パターン11との必要な結合が確保され、グランド導体パターン11による放射特性向上効果が維持される。
【0042】
図3(A)は第2の実施形態に係る別のアンテナ装置102Bの平面図であり、図3(B)はアンテナ装置102Bを備える電子機器202Bの断面図である。本実施形態のアンテナ装置102Bにおいては、コイル導体パターン21とグランド導体パターン11との間に、グランド導体パターン11の平面視で、少なくともコイル導体パターン21とケーブル50Cとが重なる部分に、グランド導体パターン11よりも小面積の導電性部材24を備える。
【0043】
この例では、上記導電性部材24は磁性体23と同サイズの金属シートであり、磁性体23に重なるように貼付されている。その他の構成は図2(A)(B)に示したアンテナ装置102Aと同じである。
【0044】
アンテナ装置102Bによれば、コイル導体パターン21とグランド導体パターン11との間に、コイル導体パターン21とケーブル50Cとが重なる部分に導電性部材24を備えるので、コイル導体パターン21とカメラモジュール50のケーブル50Cとの不要な電磁界結合が抑制される。
【0045】
また、図3(A)(B)に示した例では、磁性体23を備え、且つ、コイル導体パターン21からグランド導体パターン11までの間に、磁性体23、導電性部材24の順に配置されている。そのため、導電性部材24に起因する、コイル導体パターン21に鎖交する磁束の低下を抑制しつつ、コイル導体パターン21に鎖交する磁束を介してコイル導体パターン21とケーブル50Cとが電磁界結合することを抑制する。
【0046】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、グランド導体パターンの切り欠きの形状およびコイルアンテナモジュールの配置位置が、第1の実施形態で示したものと異なるアンテナ装置について示す。
【0047】
図4(A)は第3の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板10の平面図であり、図4(B)は、そのアンテナ装置103Aの平面図である。図1(A)に示したアンテナ装置101と比べると、グランド導体パターン11の切り欠き12は切り欠き方向(−X方向)に深い。また、カメラモジュール50を挿通させるための、回路基板開口9が形成されている。
【0048】
図5(A)は第3の実施形態に係る別のアンテナ装置が有する回路基板10の平面図であり、図5(B)は、そのアンテナ装置103Bの平面図である。図4(B)に示したアンテナ装置103Aとは異なり、グランド導体パターン11に、開口12APおよびスリット12SLで切り欠き12が形成されている。矩形スパイラル状のコイル導体パターン21の4辺がグランド導体パターン11の開口12APの外縁EEに沿っている。そのため、コイル導体パターン21とグランド導体パターン11とは、より強く電磁界結合(特に磁界結合)する。
【0049】
図6(A)は第3の実施形態に係る更に別のアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図6(B)はそのアンテナ装置103Cの平面図である。
【0050】
図6(A)に表れているように、グランド導体パターン11の角部に切り欠き12が形成されている。図6(A)において、グランド導体パターン11には、外縁EEを有する切り欠き12が形成されている。図6(B)に表れているように、コイルアンテナモジュール20は、矩形スパイラル状のコイル導体パターン21の2辺がグランド導体パターン11の切り欠き12の外縁EEに沿うように配置されている。
【0051】
この例では、カメラモジュール50のケーブル50Cは、グランド導体パターン11の平面視で、−X方向に本体50Bから引き出されている。したがって、ケーブル50Cはグランド導体パターン11やコイル導体パターン21から発生する磁束の干渉を受け難い。
【0052】
このように、コイル導体パターン21をグランド導体パターン11の角部に配置してもよい。
【0053】
図7(A)は第3の実施形態に係る更に別のアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図7(B)はそのアンテナ装置103Dの平面図である。
【0054】
図7(A)に表れているように、回路基板10の1つの角部に回路基板の切り欠き12Aが形成されて、グランド導体パターン11の角部に切り欠き12が形成されている。また、図6(A)に示した例とは異なり、別の角部に回路基板10の切り欠き12Bが形成されている。その他の構成は図6(A)(B)に示したアンテナ装置103Cと同じである。
【0055】
図7(A)(B)に示したように、回路基板10の隣接する2つの角部に切り欠きがあってもよい。
【0056】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、カメラモジュールのケーブル引出方向が、これまでに示した実施形態とは異なる例について示す。
【0057】
図8は第4の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図である。図1(A)に示したアンテナ装置101とは異なり、カメラモジュール50のケーブル50Cは−Y方向に引き出されている。グランド導体パターン11の切り欠き12の形状は第1の実施形態で示したものと同じである
【0058】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、回路基板と面状導体の形状がこれまでに示した実施形態とは異なる例について示す。
【0059】
図9(A)は第5の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図9(B)はそのアンテナ装置105の平面図である。
【0060】
図9(A)に表れているように、グランド導体パターン11は回路基板10の一部に形成されている。また、カメラモジュール50を挿通させるための、回路基板開口9が形成されている。グランド導体パターン11には、外縁EEを有する切り欠き12が、回路基板開口9に沿って形成されている。図9(B)に表れているように、コイルアンテナモジュール20は、矩形スパイラル状のコイル導体パターン21の2辺がグランド導体パターン11の切り欠き12の外縁EEに沿うように配置されている。
【0061】
本実施形態においても、カメラモジュール50のケーブル50Cは、−X方向に本体50Bから引き出されている。したがって、ケーブル50Cはグランド導体パターン11やコイル導体パターン21から発生する磁束の干渉を受け難い。
【0062】
図9(A)、図9(B)に示した例では、回路基板開口9が回路基板10の下辺寄りの位置に形成されているが、回路基板開口9が回路基板10の中央付近に形成されている場合にも同様に適用できる。
【0063】
このように、面状導体(グランド導体パターン11)が回路基板10の外縁に達していない構造においても、本発明は適用できる。すなわち、機能部品(カメラモジュール50)の周辺に面状導体(グランド導体パターン)形成領域と非形成領域とがある場合に、カメラモジュール50のケーブル50Cは面状導体の非形成領域から形成領域へ引き出されていればよい。
【0064】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、回路基板と面状導体の形状がこれまでに示した実施形態とは異なる例について示す。
【0065】
図10(A)は第6の実施形態に係るアンテナ装置が有する回路基板の平面図であり、図10(B)はそのアンテナ装置106の平面図である。
【0066】
図10(A)に表れているように、回路基板10の1つの角部に回路基板10の切り欠き12Aが形成されていて、回路基板10の別の角部付近に回路基板10の切り欠き12Bが形成されている。回路基板10の平面視で、回路基板10の切り欠き12Bの面積は、切り欠き12Aの面積よりも小さい。
【0067】
図10(B)において、カメラモジュール50は2つの光学部品および撮像部を備えるデュアルカメラのモジュールである。コイルアンテナモジュール20のコイル導体パターン21およびコイルアンテナ基板22の縦横の寸法は、カメラモジュール50の本体50Bのサイズに応じた寸法となっている。
【0068】
なお、回路基板10の切り欠き12Bの位置に、筐体または筐体の内側に設けられている例えばジャックやコネクタが配置されて、ジャックやコネクタと回路基板10とが構造上干渉しないように構成されている。
【0069】
以上に示した各実施形態では機能部品の例としてカメラモジュールを挙げたが、例えば、カメラモジュール、フラッシュ、赤外センサ、ディスプレイ等の光学部品であってもよい。また、機能部品は押圧操作のスイッチ等の操作部品であってもよい。更には、スピーカー、マイク、振動モーター、アクチュエータ、コネクタ等の入出力部品であってもよい。
【0070】
以上に示した各実施形態では、回路基板に形成されたグランド導体パターン11を面状導体の一例として示したが、回路基板に取り付けられたシールドケース等を「面状導体」に利用してもよい。
【0071】
また、以上に示した各実施形態では、平面状の面状導体(グランド導体パターン11)を示したが、この面状導体の形状は平面状に限らず、曲面状であってもよいし、一部が曲面状であってもよい。
【0072】
また、切り欠きの形状は、カメラモジュール等の機能部品を挿入する位置に設けられていればよく、以上に示した各実施形態のような形状に限られず、円形、楕円形、台形等の他の形状であってもよい。
【0073】
なお、以上に示した各実施形態では、主にNFC等の磁界結合を利用した通信システムにおけるアンテナ装置および電子機器について説明したが、上述の実施形態におけるアンテナ装置および電子機器は、磁界結合を利用した非接触電力伝送システム(電磁誘導方式、磁界共鳴方式等)でも同様に用いることができる。例えば、上述の実施形態におけるアンテナ装置は、HF帯、特に6.78MHzまたは6.78MHz近傍の周波数で使用される磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムの受電装置に受電アンテナ装置として適用できる。この場合でも、アンテナ装置は受電アンテナ装置として機能する。非接触電力伝送システムにおいては、上述の実施形態で示した「給電回路」は受電回路または送電回路に相当する。受電回路である場合は、受電アンテナ装置に接続され、負荷(例えば、二次電池)に電力を給電する。また、送電回路である場合は、送電アンテナ装置に接続され、送電アンテナ装置に電力を給電する。
【0074】
上記受電回路には、コイルアンテナおよび負荷に接続されてコイルアンテナからの電力を直流に変換して負荷に供給する整流回路が含まれる。また、平滑回路やDC−DCコンバータ回路等を更に含んでもよい。また、送電回路はコイルアンテナに電力を供給するインバータ回路を含む。
【0075】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0076】
CA…コイル開口
EE…外縁
HD…高磁束密度部分
9…回路基板の開口
10…回路基板
11…グランド導体パターン
12…切り欠き
12AP…開口
12SL…スリット
12A,12B…回路基板の切り欠き
13…コネクタ
20…コイルアンテナモジュール
21…コイル導体パターン
22…コイルアンテナ基板
23…磁性体
24…導電性部材
50…カメラモジュール
50B…カメラモジュールの本体
50C…カメラモジュールのケーブル
61,62…筐体
101…アンテナ装置
102A,102B…アンテナ装置
103A,103B,103C…アンテナ装置
104,105…アンテナ装置
201,202A,202B…電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10