(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の駐車スペースを設け、それぞれの脇に充電器を設置することにより、複数台の車両に対して同時に充電する充電スタンドを実現することができる。しかしながら、充電スタンドは高価な電力変換器などの機器を必要とするため、多数の充電スタンドを設けることは、コスト面から望ましく無い。
【0006】
本願の発明者は、複数の駐車スペースを設けた充電スタンドにおいて、コストを削減するために、可動式のコネクタ収納部を設ける方法を検討している。
図1、
図2は、そうした技術を説明するための参考例である。充電スタンド101に設けられた複数の駐車スペース102−1〜102−3に対して、一台の充電器103が設置される。一方、充電器103に接続された可動式コネクタ収納部104が設けられる。可動式コネクタ収納部104は、複数の駐車スペース102−1〜102−3のうち所望のスペースの脇に移動することができる。
【0007】
図1において、車両108−1は駐車スペース102−1に停められている。この車両108−1に充電するために、可動式コネクタ収納部104が駐車スペース102−1の脇に移動される。可動式コネクタ収納部104からコネクタケーブル107を伸ばし、その先端のコネクタ(充電プラグ)を、車両108−1の充電ポートに接続する。接続した状態で所定の操作を行うことにより、充電器103からコネクタに電力が供給され、車両108−1への充電が開始される。
【0008】
ユーザは、車両に充電中に、他の用事を果たすために充電スタンドを離れることがある。そのような場合、充電が完了した後も車両が駐車スペースからすぐに移動しない可能性がある。
図2は、そのような場合を示す。駐車スペース102−1に停められた車両108−1は、既に充電が完了したものとする。このように駐車スペース102−1が埋まった状態で、新たな車両108−2が充電スタンド101に来た場合、空いている駐車スペース102−2に車両108−2が停められる。車両108−2のドライバーは、可動式コネクタ収納部104を駐車スペース102−2の脇に移動して、充電を行う。
【0009】
以上のようにして、可動式コネクタ収納部104を設けることにより、一台の充電器で複数の駐車スペース102−1〜102−2に対応することができ、充電器103の使用効率を上げることができる。
【0010】
このような充電スタンド101において、可動式コネクタ収納部104を移動しようとする際に、コネクタが車両108−1に接続された状態においては、コネクタケーブル107や車両108−1の充電ポートに不必要な張力が掛かり、好ましくない。更に、コネクタが地面に垂れた状態で引きずられることも好ましくない。
【0011】
従って、可動式のコネクタ収納部を備えた充電スタンドにおいて、コネクタや車両に不必要な負荷を掛けることを避ける技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面において、充電システムは、充電器本体と、充電器本体から電力を供給され、移動可能な可動式コネクタ収納部と、可動式コネクタ収納部から延長するケーブルの端部に設けられ、電力を車両に供給するコネクタとを備える。可動式コネクタ収納部は、コネクタが所定位置に返却されているか否かを検出する収納センサを備える。充電システムは更に、コネクタが所定位置に返却されていないことを収納センサが検出しているとき、可動式コネクタ収納部の移動を妨げるロック部を備える。
【0013】
また、本発明の一側面において、充電スタンドは、充電器本体と、前記充電器本体から電力を供給され、移動可能な可動式コネクタ収納部と、前記可動式コネクタ収納部から延長するケーブルの端部に設けられ、前記電力を車両に供給するコネクタとを具備し、前記可動式コネクタ収納部は、前記コネクタが所定位置に返却されているか否かを検出する収納センサを具備し、更に、前記コネクタが前記所定位置に返却されていないことを前記収納センサが検出しているとき、前記可動式コネクタ収納部の移動を妨げるロック部を具備する。
【0014】
また、本発明の一側面において、上述の充電スタンドは、前記可動式コネクタ収納部は更に、複数の駐車スペースのうちのいずれかを示す駐車スペース情報を取得する収納部コントローラと、前記駐車スペース情報に示された場所に前記可動式コネクタ収納部を移動する駆動部とを具備する。
【0015】
また、本発明の一側面において、上述の充電スタンドは、前記収納部コントローラが、前記可動式コネクタ収納部に設けられた入力装置によって前記駐車スペース情報を取得する。
【0016】
また、本発明の一側面において、上述の充電スタンドは、前記ロック部が解除されたとき、前記可動式コネクタ収納部が予め決められた軌道上を手動で移動することができる。
【0017】
また、本発明の一側面において、前記可動式コネクタ収納部は、複数の駐車スペースの各々に対応する位置に移動可能であり、上述の充電スタンドは、更に、前記複数の駐車スペースの各々に車両が駐車しているか否かを検出する車両検出部と、前記車両検出部の検出結果に応じて、前記充電システムに接近した車両に対して、空いている駐車スペースを案内する案内部とを具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、可動式のコネクタ収納部を備えた充電スタンドにおいて、コネクタや車両に不必要な負荷を掛けることを避ける技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図3は、本実施形態における充電システムの構成を示す機能ブロック図である。
図5は、充電システムが用いられる充電スタンド1の外観を示す。充電システムは、予約管理サーバ15を備える。予約管理サーバ15は、複数の充電スタンド1の各々が備える設備コントローラ5と、インターネット16を介して双方向に情報通信可能に接続される。設備コントローラ5は、充電スタンド1内の設備を制御するためのコンピュータであり、
図5の例では充電器4の筺体内部に設けられる。
【0023】
設備コントローラ5は、充電器4、可動式コネクタ収納部6、車両検知器3、及び路側アンテナ11に情報通信可能に接続され、これらの機器を制御する。充電器4は、電力源から供給される電力を電気自動車充電用の電力に変換する。そのために充電器は、商用の系統電源の交流電力を電気自動車10に供給するための直流電力に変換するAC/DCコンバータや、キャパシタ等の蓄電設備に蓄積された直流電力を電気自動車10に供給するための直流電力に変換するDC/DCコンバータ等を備える。
【0024】
充電スタンド1には、複数の駐車スペース2−1〜2−3が設けられる。
図5の例では自動車3台分の駐車スペース2−1〜2−3が描かれているが、駐車スペースの数は任意である。可動式コネクタ収納部6は、台車の上に載せられる等の手段によって、充電スタンド1内を移動することができる。可動式コネクタ収納部6は、電力変換装置などを備えた充電器4(充電器本体)に比べて軽量にすることができるため、移動が容易である。
図5の例では、複数の駐車スペース2−1〜2−3のうち、所望のスペースの脇に充電スタンド1が移動できるように、軌道7が敷設されている。
【0025】
可動式コネクタ収納部6には、充電器4が生成する直流電力が給電用のケーブル8を介して供給される。ケーブル8としては、可動式コネクタ収納部6の移動に追従できるように、例えばリンクチェーン式(特殊チェーン式)の給電装置に例示される可撓式のケーブルが用いられる。
【0026】
複数の駐車スペース2−1〜2−3の各々に、車両検知器3が設けられる。車両検知器3は、例えばループコイルを路面の下に設置し、そのインダクタンス変化を検出することによって、車両の有無を判定し、設備コントローラ5に通知する。路側アンテナ11は、専用狭域通信(DSRC、Dedicated Short Range Communication)のビーコンであり、充電スタンド1の入口などに設定された通信範囲12に位置する電気自動車10の車載器13と専用狭域通信によって双方向に通信可能である。路側アンテナ11は、電気自動車10が予約済みであるか否かを認証する予約認証部や、電気自動車10に空きスペースを案内する案内部として機能する。電気自動車10は、路側アンテナ11と通信することができ、更に、セルラ通信などの無線通信の機能を有する車載器13と、ナビ(カーナビゲーション装置)14とを搭載する。
【0027】
図4は、可動式コネクタ収納部6の構成を示す。可動式コネクタ収納部6は、収納部コントローラ21、タッチパネル22、カードリーダ23、スイッチ24、コネクタ収納部25、及び駆動部26を備える。
【0028】
タッチパネル22は、ユーザに対して様々な情報を表示し、入力を促す表示画面を表示する表示装置であり、且つユーザによる入力を受け付ける入力装置である。カードリーダ23は、充電スタンド1の会員証(ICカードや磁気カード等の情報記録媒体)からユーザID等の情報を読み取るための機器である。
【0029】
収納部コントローラ21は、スイッチ24として、任意のタイミングで充電を非常停止するための非常停止スイッチ等を備える。
【0030】
コネクタ収納部25は、電気自動車10の充電ポートに接続されるコネクタを、可動式コネクタ収納部6の筺体に安定的に保持するためのホルダである。コネクタ収納部25に、コネクタケーブル9の一方の端部が取り付けられる。コネクタケーブル9の他方の端部に、コネクタが設けられる。
【0031】
コネクタ収納部25は、収納センサ27と、ロック機構28とを備える。収納センサ27は、コネクタがコネクタ収納部25に正常に収納されているか否かを検知し、その検知結果を、コネクタ収納信号として設備コントローラ5に出力する。収納センサ27は、例えばコネクタが所定の収納位置に返却されたときにコネクタがコネクタ収納部25に設けられた検知用ボタンを押下することに応じて、コネクタ収納信号を生成する。
【0032】
設備コントローラ5は、コネクタが返却されていないことがコネクタ収納信号に示されていた場合、ロック信号をロック機構28に送信する。設備コントローラ5は、コネクタが返却されていることがコネクタ収納信号に示されていた場合、解除信号をロック機構28に送信する。
【0033】
ロック機構28は、ロック信号を受信した場合、可動式コネクタ収納部6をロック状態にする。ロック状態において、可動式コネクタ収納部6は、移動できないように軌道上の現在位置に固定される。ロック機構28は、解除信号を受信した場合、可動式コネクタ収納部6を解除状態にする。解除状態において、可動式コネクタ収納部6は、軌道上を移動することができる。
【0034】
駆動部26は、可動式コネクタ収納部6を軌道上で移動するための機構である。例えば、可動式コネクタ収納部6が搭載された台車の車輪が電動モータで駆動されることにより、可動式コネクタ収納部6は軌道上を移動して、任意の駐車スペース2−1〜2−3に対応する位置で停止することができる。
【0035】
図6は、以上の構成を備えた充電スタンド1の動作を示す。電気自動車10のドライバーは、充電スタンド1を利用するとき、車載器13やナビ14を用いて、利用する予定の充電スタンド1を示す充電スタンドIDと、利用予定時間(開始時刻と終了時刻)とを入力する。その充電スタンドID及び利用予定時間と、電気自動車10を示す車両IDとは、インターネット16やセルラ通信網などの通信回線を介して、予約管理サーバ15に登録される(ステップS1)。
【0036】
ドライバーは、利用予定時間に、充電スタンド1に到着する。充電スタンド1の敷地内に進入した電気自動車10−2は、路側アンテナ11の通信範囲12に入る。ドライバーは、電気自動車10−2が搭載する車載器13に会員証を挿入しておく。路側アンテナ11は、電気自動車10−2の車載器13と通信し、会員証の情報を読み取ることにより、電気自動車10−2を示す車両IDを受信して設備コントローラ5に送信する(ステップS2)。
【0037】
設備コントローラ5は、予約管理サーバ15に問い合わせて、充電スタンド1を訪れた電気自動車10−2の車両IDに対応する予約に関する情報を取得する。電気自動車10が充電スタンド1を訪れた時刻に対応する予約(車両ID、充電スタンドID、利用予定時間によって示される)が予約管理サーバ15に登録されていない場合は(ステップS3NO)、路側アンテナ11から電気自動車10−2に対して、予約が必要であることを通知する(ステップS4)。
【0038】
通信範囲12に入って来た電気自動車10−2に対応する予約がなされていた場合(ステップS3YES)、設備コントローラ5は、各駐車スペース2−1〜2−3の車両検知器3から、駐車中の車両の有無を示す情報を取得することにより、空きスペースを認識する(ステップS5)。
図5の場合、駐車スペース2−1に電気自動車10−1が駐車しているため、駐車スペース2−2、2−3が空きスペースである。設備コントローラ5は、空きスペースのうちのいずれか、例えば駐車スペース2−2を選択する。設備コントローラ5は、路側アンテナ11から電気自動車10−2の車載器13に通信を行うなどの手段によって、駐車スペース2−2をドライバーに案内する。車載器13が駐車スペース2−2の案内情報を受信すると、カーナビ14が画像又は音声により駐車スペース2−2への案内を行う(ステップS6)。ドライバーは、電気自動車10−2を移動して、案内された駐車スペース2−2に停める。
【0039】
図7は、電気自動車10−2を駐車スペース2−2に駐車した後の充電スタンド1の動作を示す。
図8は、可動式コネクタ収納部6のタッチパネル22の表示画面の状態遷移図である。
【0040】
ドライバーが駐車スペース2−2に電気自動車10−2を停めたときに、可動式コネクタ収納部6が他の駐車スペース2−1の脇に配置されていたとする。ドライバーは、充電スタンド1を利用するために予め発行手続を行って、会員証を所持している。ドライバーが会員証をカードリーダ23に提示すると、タッチパネル22に、初期画面として、移動ボタン31と充電ボタン32とを表示した表示画面30−1が表示される。
【0041】
ドライバーが可動式コネクタ収納部6を移動させるために移動ボタン31を押下したとする。収納部コントローラ21は、コネクタが返却されているか否かをコネクタ収納部25に問い合わせる。コネクタ収納部25は、収納センサ27の検出結果に応じて、コネクタが返却されているか否かを示すコネクタ返却情報を収納部コントローラ21に送信する。コネクタが返却されていない場合(ステップS11NO)、移動ボタンは無効となる。
すなわち、移動ボタン31が押下されても、可動式コネクタ収納部6はロックされて移動せず、表示画面30−1は変化しない。
【0042】
コネクタが返却されていない場合、コネクタが他の電気自動車10−1の充電ポートに接続されていたり、コネクタが路面などに放置されている可能性がある。そのような場合に可動式コネクタ収納部6を移動することは好ましくない。上記のステップS11の処理により、コネクタが返却されていない場合に可動式コネクタ収納部6の移動を防止することができる。
【0043】
コネクタが返却されていた場合、収納部コントローラ21は、可動式コネクタ収納部6を移動してもよいと判断する(ステップS11YES)。表示画面30−2には移動ボタン31と充電ボタン32が表示される。このときロック機構28はロックを解除し、移動ボタン31は有効となる。ドライバーは、移動ボタン31と充電ボタン32のいずれかを選択する。
図5の例では、電気自動車10−2のドライバーは可動式コネクタ収納部6をNo.1(駐車スペース2−1)からNo.2(駐車スペース2−2)へ移動する必要があるため、ドライバーは移動ボタン31を押下する(ステップS13移動)。
【0044】
移動ボタン31が押下されると、表示画面30−4に、各駐車スペース2−1〜2−3に対応する移動ボタン35−1〜35−3と、キャンセルボタン36が表示される。移動ボタン35−1〜35−3への押下操作によって、収納部コントローラ21は、駐車スペース2−1〜2−3のいずれかを示す駐車スペース情報を取得し、その駐車スペース情報によって示される場所に可動式コネクタ収納部6を移動する。
【0045】
図5の例では、ドライバーは、No.2の駐車スペース2−2を示す移動先ボタン32−2を押下する(ステップS15)。収納部コントローラ21は、移動先ボタン32−2の押下に応じて駆動部26を駆動し、可動式コネクタ収納部6を駐車スペース2−2の脇に移動する。移動が完了するまでの期間、タッチパネル22には、No.2の駐車スペース2−2へ移動中であることを示す表示画面30−6が表示される(ステップS16)。
移動が完了すると、ステップS11の処理に戻り、表示画面30−1が表示される。
【0046】
可動式コネクタ収納部6が駐車スペース2−2の脇に移動を完了すると、この時点で、コネクタはコネクタ収納部25に返却されているため(ステップS11YES)、収納部コントローラ21は、ステップS11からステップS13の処理に移行する。
【0047】
ドライバーはタッチパネル22の充電ボタン32を押下する。充電ボタン32の押下に応答して、充電開始ボタン33とキャンセルボタン34を表示した表示画面30−3が表示される(ステップS13充電)。
【0048】
ドライバーは、コネクタ収納部25からコネクタを外して、電気自動車10−2の充電ポートに接続する。その後、ドライバーが充電開始ボタン33を押下すると、充電器4が生成した直流電力がコネクタから電気自動車10−2に供給される。充電中、タッチパネル22には充電中であることを示す表示画面30−5が表示される。但し、予約された利用予定時間の終了時刻となった場合には、充電は途中でも終了される(ステップS14)。
【0049】
以上の動作により、コネクタが返却されている場合にのみ可動式コネクタ収納部6を移動することができ、車両やコネクタに不必要な負荷を掛けることが防止される。
【0050】
上記説明では、ドライバーがタッチパネル22に対して操作を行った。これに代えて、充電スタンド1のオペレータがドライバーから依頼を受けてタッチパネル22を操作して充電を行ってもよい。ドライバーはオペレータに電気自動車10−2の鍵を渡し、充電の依頼を行う。オペレータはその鍵を用いて電気自動車10−2の充電ポートを開け、
図7のフローに従って充電を行う。充電が完了した場合は、電気自動車10−2からコネクタを抜き、他の電気自動車10の充電に使用できるようにする。
【0051】
上記実施形態の変形例として、ドライバーやオペレータが可動式コネクタ収納部6を手動で移動するようにしてもよい。その場合、
図4に示した電動モータ等によって実現される駆動部26は無くてもよい。ロック機構28がロック状態となったとき、可動式コネクタ収納部6は移動できないように軌道上の現在位置に固定される。ロック機構28が解除状態となったとき、可動式コネクタ収納部6は、人力で押すことによって軌道7に沿って移動することができる。このような実施形態においても、コネクタがコネクタ収納部25に返却されていない場合、ドライバーやオペレータが誤って可動式コネクタ収納部6を押しても、ロックされて移動できないため、高い安全性が得られる。