(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コイル部品自体のばらつきによってコイルのインダクタンス値が変動し、共振回路が予め設定される仕様の範囲内とならなかった場合に、共振回路を仕様の範囲内とするための方法については十分に検討されていなかった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、コイルのインダクタンス値の変動を補償する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトナー量検出装置は、画像形成装置が有する現像部に格納されている磁性トナーの量を検出する。トナー量検出装置は、一定の周波数の源電気信号を生成する発振回路と、前記磁性トナーの量に応じてインダクタンスが変動するように配置されているコイルと、静電容量を調整可能なコンデンサ回路とを有し、前記源電気信号に共振して共振信号を生成する共振回路と、前記源電気信号と前記共振信号の位相差を検出し、前記検出された位相差に応じて位相差信号を生成する位相比較部と、前記位相差信号を積分して前記検出に使用される出力信号を生成する積分回路部とを備え、前記コンデンサ回路は、バリキャップを有し、前記バリキャップに印加される電位に応じて前記静電容量を所定の範囲で調整可能に構成されている。
【0007】
上記のトナー量検出装置において、さらに、前記バリキャップに印加される電位を制御して前記コンデンサ回路の静電容量を調整する制御部を備え、前記制御部は、前記所定の範囲における前記出力信号の最大値に対して予め設定されている係数を乗じて調整用の基準値を決定するようにしてもよい。
【0008】
上記のトナー量検出装置において、さらに、前記出力信号に応じた電圧のアナログ電圧信号を生成する増幅部と、前記バリキャップに印加される電位を制御して前記コンデンサ回路の静電容量を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記所定の範囲における前記アナログ電圧信号の最大値に対して予め設定されている係数を乗じて調整用の基準値を決定するようにしてもよい。
【0009】
本発明の画像形成装置は、上記のトナー量検出装置を有する。
【0010】
本発明の調整方法は、画像形成装置が有する現像部に格納されている磁性トナーの量を検出する。トナー量検出装置の調整方法は、前記トナー量検出装置は、一定の周波数の源電気信号を生成する発振回路と、前記磁性トナーの量に応じてインダクタンスが変動するように配置されているコイルと、静電容量を調整可能なコンデンサ回路とを有し、前記源電気信号に共振して共振信号を生成する共振回路と、前記源電気信号と前記共振信号の位相差を検出し、前記検出された位相差に応じて位相差信号を生成する位相比較部と、前記位相差信号を積分して前記検出に使用される出力信号を生成する積分回路部とを備え、前記コンデンサ回路は、バリキャップを有し、前記バリキャップに印加される電位に応じて前記静電容量を所定の範囲で調整可能に構成され、前記調整方法は、前記所定の範囲において前記出力信号が最大値になるように前記静電容量を設定する工程と、前記最大値に出力信号に対して予め設定されている係数を乗じた値を調整用の基準値に決定する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルのインダクタンス値の変動を補償することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
B.第2実施形態:
C.変形例:
【0014】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態に係るトナー量検出装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。トナー量検出装置1は、画像形成装置が有する現像部に格納されている磁性トナーの量を検出する。トナー量検出装置1は、源発振回路部10と、共振回路部20と、位相比較部30と、積分回路部40と、増幅部50と、周波数調整回路60と、制御部90とを備えている。源発振回路部10は、予め設定されている周波数と振幅の源矩形波Psを発振する。共振回路部20は、源矩形波Psに対して位相差Pdを有する共振矩形波Prを生成する。位相差Pdは、磁性トナーMTの量に応じて変化するが、その詳細については後述する。
【0015】
位相比較部30は、源矩形波Psと共振矩形波Prの真偽値(ここでは、高電位を真、低電位を偽とする値)の論理的排他和としての位相差パルスPcを出力する。具体的には、位相差パルスPcは、源矩形波Psと共振矩形波Prのいずれか一方のみが真の場合(相互に真偽が相違する場合)に真(高電位)となり、源矩形波Psと共振矩形波Prの双方が真あるいは偽の場合(相互に真偽が一致する場合)に偽(低電位)となる。源矩形波Psは、源電気信号とも呼ばれる。位相差パルスPcは、位相差信号とも呼ばれる。共振矩形波Prは、共振信号のとも呼ばれる。
【0016】
積分回路部40は、位相差パルスPcの高電位の時間を積算(積分)して検出可能な信号にする。増幅部50は、トナー量の検出における後段の処理に適した電圧レベルに変換する。周波数調整回路60は、共振回路部20の特性を調整する。
【0017】
制御部90は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部90は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他バードウェア等のインターフェイスに関連するコントローラ機能を備え、トナー量検出装置1全体を制御する。制御部90は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部90が実行する処理の制御プログラムやデータを記憶する記憶部(図示せず)を備えている。
【0018】
図2は、第1実施形態に係るトナー量検出装置1の回路図である。
図2は、特に共振回路部20と周波数調整回路60の回路構成を詳細に図示している。共振回路部20は、インバータVと、2個のコンデンサC1,C2と、磁気的に結合された2個のコイルL1,L2とを備えている。2個のコイルL1,L2は、磁性トナーMTの量に応じて、その近傍の透磁率が変化してインダクタンスが変動するように配置されている。
【0019】
インバータVは、源矩形波Psの位相を反転(180度シフト)する。2個のコンデンサC1,C2は、それぞれ電圧の位相を90度進めて逆位相とする。インバータVは、源矩形波Psの位相を反転(180度シフト)するので、2個のコンデンサC1,C2による位相の変化を相殺することができる。
【0020】
コイルL1は、インバータVとコンデンサC1と第1共振回路(LC回路)を構成している。第1共振回路では、源発振回路部10がインバータVの入力に接続され、インバータVの出力がコンデンサC1の一方の電極に接続され、コンデンサC1の他方の電極にコイルL1の一方の電極に接続され、コイルL1の他方の電極が接地されている。すなわち、インバータVと、コンデンサC1と、コイルL1とで直列回路が構成されている。
【0021】
コイルL2は、コイルL1と磁気的に結合され、コンデンサC2と周波数調整回路60とで第2共振回路(LC回路)を構成している。コイルL2の一方の電極は接地され、コイルL2の他方の電極はコンデンサC2の一方の電極と周波数調整回路60の一方の電極とに接続されている。コンデンサC2の他方の電極は、位相比較部30の入力に接続されている。周波数調整回路60の他方の電極は、接地されている。コイルL2は、周波数調整回路60の静電容量とコンデンサC2の静電容量の和に相当する合成容量とLC回路を構成していることになる。なお、周波数調整回路60の静電容量とコンデンサC2の並列回路は、コンデンサ回路とも呼ばれる。
【0022】
周波数調整回路60は、バリキャップ61と、第1コンデンサ62と、第2コンデンサ63とを備えている。バリキャップ61の一方の電極と第1コンデンサ62の一方の電極は、いずれも接地されている。バリキャップ61の他方の電極と第1コンデンサ62の他方の電極は、いずれも第2コンデンサ63の一方の電極に接続されている。第2コンデンサ63の他方の電極は、コンデンサC2とともにコイルL2に接続されている。すなわち、バリキャップ61は、第1コンデンサ62と並列に接続されている。バリキャップ61と第1コンデンサ62とで構成される並列回路は、第2コンデンサ63と直列回路を構成している。
【0023】
バリキャップ61と第2コンデンサ63との接続点Jには、制御部90の出力端子が接続されている。バリキャップ61は、制御部90が接続点Jに印加する制御電圧によって静電容量が変化する。具体的には、バリキャップ61の静電容量は、制御電圧の平方根に反比例する。このように、周波数調整回路60は、制御部90から制御電圧によって操作可能な可変の静電容量を有している。これにより、第2共振回路(LC回路)は、制御部90によって特性を調整できることになる。
【0024】
2個のコイルL1,L2は、近傍に配置されている磁性トナーMTの量に応じて源矩形波Psと共振矩形波Prとの間に位相差Pdを生じさせる。位相差Pdは、積分回路部40で積算され、さらに、増幅部50において、トナー量の検出における後段の処理に適した電圧レベルに増幅される。このようにして、トナー量検出装置1は、位相差Pdに応じて変動する電圧を出力する(出力電圧)。出力電圧は、出力信号とも呼ばれる。
【0025】
図3は、比較例と第1実施形態に係るトナー量検出装置1の出力特性を示すグラフである。
図3(a)は、比較例は基準値電圧の調整を行わなかった場合の出力特性を示すグラフである。
図3(b)は、第1実施形態は基準値電圧の調整を行った場合の出力特性を示すグラフである。横軸は、バリキャップ61の静電容量Cvを示し、縦軸は、トナー量検出装置1の出力電圧を示している。本実施形態では、バリキャップ61の静電容量を変化させることによって、曲線CH及び曲線CLの特性カーブにおいて横軸の任意の点が利用できることになる。
【0026】
曲線CHは、コイルL2のインダクタンスLとコンデンサC2の静電容量Cの積が個体ばらつきで過大な場合の特性を示している。曲線CLは、コイルL2のインダクタンスLとコンデンサC2の静電容量Cの積が個体ばらつきで過小な場合の特性を示している。
【0027】
図3(a)において、曲線CHの領域R1に着目する。領域R1では、調整のための基準電圧Vrefの近傍において調整感度S1(接線S1の傾斜)が過度に大きいことが分かる。すなわち、バリキャップ61の静電容量Cv1近傍における静電容量Cvの微少な変化によって出力電圧が基準電圧Vrefの近傍において過度に大きく変化するため調整が困難である。
【0028】
図3(a)において、曲線CLの領域R2に着目する。領域R2では、バリキャップ61の静電容量Cvの調整によって出力電圧を基準電圧Vrefに到達させることができない。すなわち、曲線CLは、基準電圧Vrefに調整できないことを意味している。
【0029】
図3(b)において、曲線CHの領域R1Aに着目する。領域R1Aでは、調整のための基準電圧VrefAが基準電圧Vrefよりも高く設定されているので、基準電圧VrefAの近傍において調整感度S1A(接線S1Aの傾斜)が適切であることが分かる。すなわち、バリキャップ61の静電容量Cvの変化によって出力電圧が基準電圧VrefAの近傍において適切に変化するので、調整が容易である。
【0030】
図3(b)において、曲線CLの領域R2Bに着目する。領域R2Bでは、調整のための基準電圧VrefBが基準電圧Vrefよりも低く設定されているので、バリキャップ61の静電容量Cvの調整によって出力電圧を基準電圧VrefBに到達させることがでる。すなわち、曲線CLは、基準電圧VrefBに調整可能となっていることを意味している。さらに、基準電圧VrefBの近傍において調整感度S1B(接線S1Aの傾斜)が適切であることも分かる。すなわち、バリキャップ61の静電容量Cvの変化によって出力電圧が基準電圧VrefBの近傍において適切に変化するので、調整が容易である。
【0031】
図4は、第1実施形態に係るトナー量検出装置1の調整手順を示すフローチャートである。ステップS11では、トナー量検出装置1の出力電圧を最大とする。トナー量検出装置1の最大出力電圧は、バリキャップ61の静電容量Cvを最小(制御電圧=0V)とすることによって、あるいは掃引で探索することによって得られる。ステップS12では、最大出力電圧を取得する。ステップS13では、最大出力電圧の所定の係数(たとえば80%)を乗じる。所定の係数は、
図3に示される出力特性のグラフの形状によって予め設定することができる。ステップS14では、絶対値補正が行われる。絶対値補正は、所定の係数を乗じて得られた電圧に基づいて行われる。
【0032】
このように、第1実施形態では、バリキャップ61の静電容量Cvを変化と、基準電圧の設定によってトナー量検出装置1の出力特性の任意の点を利用することができる。これにより、2個のコイルL1,L2のインダクタンスの個体ばらつきを吸収するとともに、調整作業を行いやすい傾斜を有する部分を有効利用して調整作業の負担を軽減し、2個のコイルL1,L2のインダクタンスの個体ばらつきに起因する不良を低減して歩留まりを向上させることもできる。
【0033】
B.第2実施形態:
図5は、本発明の第2実施形態に係るトナー量検出装置1aの機能構成を示すブロックダイアグラムである。
図6は、第2実施形態に係るトナー量検出装置1aの回路図である。第2実施形態に係るトナー量検出装置1aは、切替スイッチ70を有する点で第1実施形態に係るトナー量検出装置1と相違し、他の構成で共通する。切替スイッチ70は、共振矩形波Prの出力先を位相比較部30と制御部90とのいずれかに切り替えることができる。
【0034】
図7は、第2実施形態に係るトナー量検出装置1aの処理内容を示すフローチャートである。ステップS21では、トナー量検出装置1aを備える画像形成装置の電源が投入される。ステップS22では、制御部90は、切替スイッチ70を操作して共振回路部20を制御部90に接続する。これにより、制御部90は、共振回路部20の共振矩形波Prと源矩形波Psとを入力可能な状態となる。
【0035】
ステップS23では、制御部90は、共振矩形波Prの周波数である共振周波数(f)を測定する。共振周波数(f)の測定は、たとえば予め設定された時間内のパルス数をカウントすることによって行うことができる。源矩形波Psの周波数である源発振周波数(F)についても同様に計測される。
【0036】
ステップS24では、制御部90は、源矩形波Psの周波数である源発振周波数(F)と共振矩形波Prの周波数である共振周波数(f)とを比較する。源発振周波数(F)と共振周波数(f)とが一致しない場合には、処理がステップS25に進められる。ここで、「一致」とは、必ずしも厳密に一致することを意味せず、予め想定されている誤差(公差)の範囲内であることを意味する。
【0037】
ステップS25では、制御部90は、バリキャップ61の静電容量Cvを調整し、処理をステップS23に戻す。この処理を繰り返すことにより、共振周波数(f)と源発振周波数(F)とを一致させることができる。共振周波数(f)と源発振周波数(F)とが一致すると、処理がステップS26に進められる。
【0038】
ステップS26では、制御部90は、切替スイッチ70を操作して共振回路部20を位相比較部30に接続する。これにより、トナー量検出装置1aは、第1実施例と同様にトナー量に応じた出力電圧を出力して、トナー量の計測を可能とすることができる。ステップS27では、制御部90は、一定の環境変化(たとえば温度変化)を検出したとき、及び経時的な変化に基づいて処理をステップS23に戻す。このように、ステップS23は、予め設定されている条件に基づいて処理をステップS23に戻す。
【0039】
このように、第2実施形態では、共振矩形波Prの周波数である共振周波数(f)を源矩形波Psの周波数である源発振周波数(F)に自動的に一致させることができるので、出力電圧を調整する場合よりも部品や回路の特性ばらつきを排除してトナー量検出の精度をさらに向上させることができる。さらに、CPUで構成可能な制御部90によって、バリキャップ61の静電容量Cvを調整して共振周波数(f)を制御することができるので、簡易な構成で実現可能である。
【0040】
本発明は、上記各実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0041】
C.変形例:
変形例1:上記各実施形態では、第1実施例と第2実施例は、単独で構成されているが、組み合わせることも可能である。第1実施例及び第2実施例は、それぞれ単独でも組み合わせても構成可能である。
【0042】
変形例2:上記各実施形態では、増幅部50で増幅したアナログ電圧値を使用して磁性トナーの量を検出しているが、たとえば増幅部50を使用することなく、デジタル処理のみで磁性トナーの量を検出するようにしてもよい。
【0043】
変形例3:上記各実施形態では、電気信号として矩形波を使用しているが、他の波形、たとえば正弦波を使用してもよい。ただし、矩形波を使用すれば、位相差の検知等を簡易に実装することができるという利点がある。