(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380898
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】天然義歯吸着シート
(51)【国際特許分類】
A61C 13/23 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
A61C13/23
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-138019(P2016-138019)
(22)【出願日】2016年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-23725(P2017-23725A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592247322
【氏名又は名称】八木 啓介
(73)【特許権者】
【識別番号】592247311
【氏名又は名称】八木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】八木 邦夫
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04632880(US,A)
【文献】
米国特許第02392513(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0190140(US,A1)
【文献】
実開昭55−056611(JP,U)
【文献】
実開昭59−172413(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3093209(JP,U)
【文献】
特開2012−005582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維であるオーガニックコットンを未晒のまま綾織りにしてその両面に起毛加工を施した布であって、義歯と口腔の空隙を埋めるための前記布と、天然繊維である楮を未晒のまま漉いた和紙と、を有し、前記布と前記和紙が、咀嚼に耐える剛性と吸着力を備えるように本蕨粉に水を加えた天然のゲルを用いて接合されている、義歯を口腔内に安定させるシート。
【請求項2】
口腔内での雑菌の繁殖を抑えるため、前記ゲルに天然の抗菌剤である柿タンニンが加えられている請求項1のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯を口腔内に安定させる義歯安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から様々な義歯安定剤が市販されている。従来の義歯安定剤には化学物質が用いられ、その粘着力によって義歯を口腔内に安定させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
義歯安定剤の主たる使用者である高齢者等にとって化学物質の名称は難解であるため、その化学物質を含む義歯安定剤を使用することによって身体に影響を受けるのではないかという不安感が拭えない。
【0004】
また従来の義歯安定剤は粘着力によって義歯を安定させているため、義歯に粘着した安定剤を洗浄によって完全に除去することが難しい、そのため義歯に残留した安定剤に雑菌が繁殖して口腔内が不衛生になり、様々な感染症の原因となる危険性がある。
【0005】
さらに従来の義歯安定剤を完全に除去するには専用の洗剤等を用いて洗浄を行う必要があるため、専用洗浄剤等を常時携帯するなどしない限り、水洗しかできない環境では十分な洗浄を行うことができない。
【0006】
加えて従来の義歯安定剤は専用の洗剤等を用いても洗浄に長時間を要するため、公共の洗面所など人目がある場所での洗浄は、周囲に不快感を与えるのではないかと危惧したり義歯を外した状態を見られたくないと感じるなど心理的負担が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
化学物質を含む義歯安定剤を使用することの不安を払拭するため、天然の素材であるオーガニックコットン・楮・本蕨粉・柿タンニン・水のみを用いた義歯安定剤を作成する。
【0008】
まず義歯と口腔の間に生じる空隙を埋めるための素材として、オーガニックコットンを未晒のまま綾織りにしその両面に起毛加工を施した布(以下、単に布という)を用いる。ここで用いられているオーガニックコットンは、日本オーガニックコットン流通機構の定めにより化学肥料・殺虫剤・除草剤等の農薬を3年以上使用していない農地において栽培されており、さらに漂白剤を用いることなく未晒のまま織り上げられているため使用に不安感がない、また綾織りであることにより、それによって得られる厚みが義歯と口腔の空隙を適切に埋める役割を果たすとともに、布の端からの糸のほつれを抑えることができる。さらにこれに両面起毛加工が施されていることにより、一方は口腔に接する面として快適な柔軟さを備え、他方は後述する和紙との接合強度を高める機能をもつ。
【0009】
この布に咀嚼に耐える剛性を加えるため、楮の繊維を未晒のまま漉いた和紙(以下、単に和紙という)を接合する。ここで用いられている楮は和紙の素材のなかで最も長く強靭な繊維をもつことから、これを漉いた和紙を布に接合することで咀嚼に耐える剛性を与えることができる。また楮もオーガニックコットンと同様に未晒のまま漉かれているため、その使用に不安感がない。
【0010】
これらの布と和紙の接合には、本蕨粉を水で溶いた天然のゲル(以下、単にゲルという)を用いる。本蕨粉は蕨餅など食用にも広く用いられていることから、その使用に不安感がない。このゲルを布に塗布して和紙を接合することにより、布と和紙の両面に吸着力をもち咀嚼に耐える剛性を備えたシート(以下、単にシートという)を得ることができる。
【0011】
このシートを乾燥させたのち義歯の形状にあわせて裁断する。裁断したシートを浸水させたのち、和紙面を義歯に吸着させ、布面を口蓋に吸着させることで義歯を口腔内に安定させることができる。
【0012】
また本蕨粉をはじめ天然の素材は化学物質に比べて雑菌が繁殖しやすいことからそれらを抑えるため、本蕨粉に加える水にあらかじめ柿タンニンを混合しておく。柿タンニンはうがい薬としても使われるなどその抗菌作用は広く知られており、天然の抗菌剤としてその使用に不安感がない。
【発明の効果】
【0013】
天然の素材だけを用いて口腔内に義歯を安定させることができる。
【0014】
本シートを構成するオーガニックコットン・楮・本蕨粉・柿タンニンはいずれも伝統的に用いられてきた天然素材であるため、本シートを使用することによって身体に影響を受けるのではないかという不安感を払拭することができる。
【0015】
シートの吸着力だけで義歯を安定させているため、シートを義歯から剥がし、残留するゲルを水洗いするだけで容易に完全除去することができる。これにより残留した義歯安定剤に雑菌が繁殖して口腔内が不衛生になるという課題を解決することができる。
【0016】
さらに水洗ができる環境さえあれば、洗浄をして残留するゲルを完全に除去することができる。
【0017】
また短時間で洗浄できるため、公共の洗面所などでも心理的負担を感じることなく洗浄が行える。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
水に柿タンニンをくわえて柿タンニン液を作成する。
【0019】
この柿タンニン液で本蕨粉を溶き、本蕨粉ゲルを作成する。本蕨粉に加える柿タンニン液の分量は、本蕨粉ゲルを布の片面に塗布した際、布に浸透しかつゲルを塗布していない裏面の起毛が失われない濃度に調整する。これは調整を行う環境の温度・湿度によって変化する。
【0020】
布の片面にゲルを塗布し、そこに和紙を重ねあわせて乾燥させることで布と和紙を接合する。
【0021】
布と和紙を接合したシートを義歯の形状にあわせて裁断したのちに浸水させ、和紙面を義歯に吸着させ、布面を口蓋に吸着させることで義歯を口腔内に安定させる。
【符号の説明】
【0023】
1 オーガニックコットンを未晒のまま綾織りにしその両面に起毛加工を施した布
2 上記の布の起毛部
3 柿タンニンを加えた水で溶いた本蕨粉ゲル
4 楮を未晒のまま漉いた和紙