(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性コーティング剤は、所定の導電性高分子/ポリアニオン錯体(A)(以下、(A)成分ともいう。)、所定の変性ポリアミド樹脂(B)(以下、(B)成分ともいう。)と、溶媒(C)(以下、(C)成分ともいう。)とを含む組成物である。
【0012】
(A)成分は、本発明のコーティング剤に導電性を付与する物質であり、導電性高分子であるポリチオフェン(a1)(以下、(a1)成分ともいう。)と、ドーパントであるスルホアニオン基含有ポリマー(a2)(以下、(a2)成分ともいう。)とから構成される。
【0013】
(a1)成分の具体例としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)やポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)及びポリ(3−ヨードチオフェン)等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。これらの中でも導電性の点で特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTともいう。)が好ましい。
【0014】
なお、本発明では必要に応じ、(A)成分とともに、(a1)成分以外の導電性高分子として、例えば(a1)成分以外のポリチオフェン類や、ポリチオフェンビニレン類、ポリピロール類、ポリフラン類、ポリアニリン類等その他のπ共役系導電性高分子を併用できる。
【0015】
ポリピロール類としては、例えば、ポリ(ピロール)や、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)等のアルコキシ基置換ポリ(ピロール)類、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)等のアルキル基置換ポリ(ピロール)類、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)等のカルボキシル基置換ポリ(ピロール)類、ポリ(3−ヒドロキシピロール)等のヒドロキシ基置換ポリ(ピロール)類等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0016】
ポリ(フラン)類としては例えば、ポリ(フラン)や、ポリ(3−メトキシフラン)、ポリ(3−エトキシフラン)、ポリ(3−ブトキシフラン)、ポリ(3−ヘキシルオキシフラン)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシフラン)等のアルコキシ基置換ポリ(フラン)類、ポリ(3−メチルフラン)、ポリ(3−エチルフラン)、ポリ(3−n−プロピルフラン)、ポリ(3−ブチルフラン)、ポリ(3−オクチルフラン)、ポリ(3−デシルフラン)、ポリ(3−ドデシルフラン)、ポリ(3,4−ジメチルフラン)、ポリ(3,4−ジブチルフラン)等のアルキル基置換ポリ(フラン)類、ポリ(3−カルボキシフラン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシフラン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルフラン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルフラン)等のカルボキシル基置換ポリ(フラン)類、ポリ(3−ヒドロキシフラン)等のヒドロキシ基置換ポリ(フラン)類等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0017】
ポリアニリン類としては、例えば、ポリ(アニリン)、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0018】
(a1)成分及びその他のπ共役系導電性高分子は、公知の化学的酸化重合法や電解重合法により得られる。前者の場合には、前駆体モノマー、ドーパント及び酸化剤を含む溶液中で導電性高分子を合成する方法が挙げられ、後者の場合には、前駆体モノマー及びドーパントを含む電解溶液中に支持電極を浸漬し、その上に導電性高分子を形成させる方法が挙げられる。なお、重合の際には後述する(C)成分を使用してもよい。
【0019】
酸化剤としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅、塩化アルミニウム等の金属塩系酸化剤や、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム、三フッ化ホウ素、オゾン、過酸化ベンゾイル、酸素等の非金属塩系酸化剤が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0020】
(a2)成分であるスルホアニオン基含有ポリマーは、(a1)成分に対するドーピング成分であり、具体的には、スルホン酸系重合性モノマーの単独重合物や、スルホン酸系重合性モノマーとスルホアニオン基を有しない重合性モノマーとの共重合物等、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。なお、「スルホアニオン基」とは、アニオン性官能基であるスルホ基又は一置換スルホエステル基を意味する。また、当該「一置換スルホエステル基」とは、スルホエステル基における水酸基上の水素がアルキル基(炭素数1〜20程度)で置換されたものをいう。
【0021】
スルホン酸系重合性モノマーとしては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸、イソプレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸エチルスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−SO
3H)、(メタ)アクリル酸プロピルスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
3−SO
3H)、(メタ)アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)、(メタ)アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
4−SO
3H)、(メタ)アクリル酸フェニレンスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−C
6H
4−SO
3H)、(メタ)アクリル酸ナフタレンスルホン酸(CH
2=C(CH
3)−COO−C
10H
8−SO
3H)、アリル酸エチルスルホン酸(CH
2=CHCH
2−COO−(CH
2)
2−SO
3H)、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CH
2=CHCH
2−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
2−SO
3H)、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
3−SO
3H)、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
4−SO
3H)、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−C
6H
4−SO
3H)、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CH
2=CH(CH
2)
2−COO−C
10H
8−SO
3H)、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、シクロブテン−3−スルホン酸、それらの塩類(ナトリウム塩等)が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0022】
スルホアニオン基を有しない重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、ビニルフェノール、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン等の芳香族系モノマーや、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等の非脂環式ジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン等の非脂環式モノエン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン等の脂環式モノエン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル等のイミダゾール系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、Nビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸等のアクリルアミド類、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール等のアミン系モノマー、ビニルアセテート、アクロレイン、メタクロレイン、アクリロニトリル、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0023】
(a2)成分としては、ドーピング性能が良好であり、かつ本発明のコーティング剤の保存安定性に寄与する点で、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、及びポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸、並びにそれらの塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種が、特にポリスチレンスルホン酸及び/又はその塩(特にナトリウム塩)(以下、PSSと総称することがある。)が好ましい。
【0024】
(a1)成分を(a2)成分によりドープする方法は特に限定されず、例えば、(a1)成分に(a2)成分を添加して各種公知の手段で撹拌混合したり、(a1)成分の製造時(前駆体モノマーの重合時)、反応系に(a2)成分を共存させたりする方法等が挙げられる。また、(a1)成分及び(a2)成分の使用量は特に限定されないが、通常(a1)成分100重量部に対し、(a2)成分が100〜250重量部程度である。
【0025】
(A)成分が水溶液ないし水分散液として用意される場合には、各種公知の方法(特開2008−045116号公報、特開2008−156452号公報、特開2008−222850号公報、特開2011−208016号公報等)に従い有機溶媒分散体となすことができる。具体的には、例えば、(A)成分としてPEDOT/PSSの水溶液ないし水分散液を用いる場合には、これを各種公知の乾燥手段(スプレードライヤー等)で乾燥させることにより、PEDOT/PSSの青色固体を得ることができ、これを(A)成分として使用できる。
【0026】
(A)成分としては、本発明の導電性コーティング剤の貯蔵安定性や、その導電層の導電性及び透明性等の点より、特にPEDOTとPSSからなる錯体(以下、PEDOT/PSSともいう。)が好ましい。PEDOT/PSSは、例えば「Clevios P」(商品名;Heraeus社製)、「Orgacon」(商品名;日本アグファ・ゲバルト(株)製)等の市販品を使用できる。
【0027】
(B)成分は、アミノエチルピペラジン及び/又はビス(アミノプロピル)ポリエチレングリコールとジカルボン酸とから構成されるアミド結合単位(b1)(以下、単位(b1)ともいう。)並びにεカプロラクタムの残基で構成されるアミド結合単位(b2)(以下、単位(b2)ともいう。)を含む水溶性のポリアミドである。
【0028】
単位(b1)を構成するビス(アミノプロピル)ポリアルキレングリコールとしては、ビス(アミノプロピル)ポリエチレングリコール(エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノプロピル)ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0029】
単位(b1)を構成するジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、o−フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、並びにこれらのジクロリド等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。
【0030】
単位(b2)は、εカプロラクタムを開環させた場合に生じる残基を意味し、ナイロン6の基本単位に相当する。
【0031】
(B)成分は、各種公知のポリアミド合成法に従い製造することができる。具体的には、例えば、前記εカプロラクタム並びにアミノエチルピペラジン及び/又はビスアミノプロピルポリアルキレングリコールと前記ジカルボン酸とを150〜300℃程度の温度で2〜24時間程度脱水縮合させるワンポット方法が挙げられる。他にも、前記ジカルボン酸と前記ε−カプロラクタムを150〜300℃程度の温度で2〜24時間程度反応させて両末端にカルボキシル基を有するポリアミドオリゴマーを合成し、これと前記アミノエチルピペラジン及び/又はビスアミノプロピルポリアルキレングリコールとを脱水縮合させる二段階法が挙げられる。なお、反応の際には後述の(C)成分反応溶媒として使用できる。また、チタンテトラアルコキシド、ジルコニウムテトラアルコキシド、ハフニウムテトラアルコキシド、酸化アンチモン、ピロリン酸、トリリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらのエステル、並びに亜リン酸及び亜リン酸エステル等の脱水縮合剤や、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシシンナミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシブチル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシブチル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール類、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の酸化防止剤も使用できる。
【0032】
(B)成分は市販品であってよく、例えば、東レ(株)製のAQ−ナイロンPS−95やAQナイロンT−70等が挙げられる。
【0033】
(C)成分としては、導電性コーティング剤に使用できる溶媒であれば各種公知のものを特に制限なく使用することができる。具体的には、水(c1)(以下、(c1)成分ともいう。)、アルコール類(c2)(以下、(c2)成分ともいう。)及びその他の有機溶剤(c3)(以下、(c3)成分ともいう。)が挙げられる。(C)成分には、(A)成分及び(B)成分の溶解性ないし分散性、及び導電層の平滑性等の点より、(c1)成分及び/又は(c2)成分を含めるのが好ましい。
【0034】
(c1)成分としては、例えば、蒸留水、脱イオン水及び超純水等を使用できる。また、(c1)成分は、前記(A)成分を水分散体として用いる場合や、前記(A)成分及び(B)成分を市販品として使用する場合には、それらに由来するものであってよい。
【0035】
(c2)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5程度の非エーテル系モノアルコール類や、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコール等の非エーテル系ジオール類
、プロピレングリコールモノメチルエーテ
ル等のエーテル系アルコール類等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
(c3)成分としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類や、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及びベンゾニトリル等の非プロトン性極性溶媒、並びにヘキサン及びトルエン等の非極性炭化水素類が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、本発明のコーティング剤の保存安定性の観点より、特にケトン類、エステル類及び非プロトン性極性溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0037】
なお、本発明の導電性コーティング剤には、各種顔料、着色剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、分散剤、導電助剤等の添加剤を配合できる。
【0038】
本発明の導電性コーティング剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分並びに必要に応じて用いる他の成分を各種公知の手段により分散・混合したものである。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段としては、各種公知の分散装置(乳化分散機、超音波分散装置等)を用いることができる。
【0039】
本発明の導電性コーティング剤における(A)成分、(B)成分及び(C)成分及び水の使用量も特に限定されないが、保存安定性、レベリング性及び耐熱黄変性のバランスを考慮すると、通常は以下の通りである。
(A)成分:通常0.1〜1重量%程度、好ましくは0.3〜0.8重量%程度
(B)成分:通常0.1〜10重量%程度、好ましくは0.1〜0.7重量%程度
(C)成分:通常99.8〜89重量%程度、好ましくは99.6〜98.5重量%程度
【0040】
また、(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分を含む場合、両者の使用量比は特に限定されないが、保存安定性やレベリング性等の点より、通常99/1〜1/99程度、好ましくは80/20〜40/60程度である。
【0041】
本発明の導電層は、本発明の導電性コーティング剤を各種基材に塗工することにより得られる。
【0042】
基材は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。具体的には、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、エポキシフィルム、メラミンフィルム、ABSフィルム、ASフィルム及びノルボルネン樹脂系フィルム等が挙げられる。また、これら基材は、易接着処理等各種処理が施されていてもよい。
【0043】
塗工方法は特に限定されないが、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷及びスクリーン印刷法等が挙げられる。また、塗工(印刷)パターンも特に限定されず、面状、メッシュ状、ドット状等いかなる形態であってよい。
【0044】
導電層の厚みは特に限定されないが、通常、乾燥後の厚みが0.05〜10μm程度であればよい。また、導電層を乾燥させる時の温度も特に限定されないが、通常、室温〜150℃程度である。
【0045】
本発明の導電層を備える基材は各種用途に供し得る。特に全光線透過率が70%以上であるものは透明電極として好適であり、例えば、有機ELや太陽電池等の電子デバイスの正孔注入層ないし正極として利用できる。また、タッチパネルや電子ペーパー等の電子デバイスの電極としても有用である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を詳細に説明するが、それらが本発明の技術的範囲を限定することはない。
【0047】
<導電性コーティング剤の調成>
実施例1
ビーカーに(A)成分として市販のPEDOT/PSS水分散液(商品名「Orgacon」、固形分濃度1.0%)を45.0g、(B)成分としてAQナイロンP−95(東レ(株)製、固形分濃度50%)を1.1g、(C)成分としてエチレングリコールを4.9部入れ、よく撹拌した。次いで、水を49.0g加え、よく撹拌することにより導電性コーティング剤を得た。
【0048】
実施例2
ビーカーにOrgaconを45.0g、(B)成分としてAQナイロンT−70(東レ(株)製、固形分濃度50%)を1.1g、エチレングリコールを4.9部入れ、よく撹拌した。次いで、水を49.0g入れ、よく撹拌することにより導電性コーティング剤を得た。
【0049】
実施例3
ビーカーにOrgaconを45.0g、AQナイロンP−95を1.1g、(C)成分として工業用エタノール(商品名「ソルミックスAP−1」、日本アルコール販売(株)製)を34.7g、エチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌した。次いで、水を14.3g加え、更に撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0050】
実施例4
ビーカーにOrgaconを80.0g、AQナイロンP−95を0.4g、ソルミックスAP−1を34.7g、エチレングリコールを4.9g、ソルミックスAP−1を34.7g入れ、よく撹拌することにより導電性コーティング剤を得た。
【0051】
実施例5
ビーカーにOrgaconを30.0g、AQナイロンP−95を1.4g、ソルミックスAP−1を39.6g、エチレングリコールを4.9g、ソルミックスAP−1を34.7g入れ、よく撹拌した。次いで、水を19.1g入れ、よく撹拌することにより導電性コーティング剤を得た。
【0052】
実施例6
ビーカーにOrgaconを45.0g、AQナイロンP−95を1.1g、(C)成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(商品名「PM」、KHネオケム(株)製)を34.7g及びエチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌した。次いで、水を14.3g加え、更に撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0053】
実施例7
ビーカーにPEDOT/PSSのソルミックスAP−1分散液(荒川化学工業(株)製、PEDOT/PSS濃度1.0重量%)を45.0g、AQナイロンP−95を1.1g、ソルミックスAP−1を34.7g及びエチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0054】
比較例1
ビーカーにOrgaconを80.0g、(B)成分に代えて市販のポリビニルアルコール(商品名「ニチゴーGポリマー」、日本合成化学工業(株)製)を0.2g、ソルミックスAP−1を34.6g及びエチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0055】
比較例2
ビーカーにOrgaconを55.0g、(B)成分に代えて市販のポリビニルアルコール(商品名「ニチゴーGポリマー」、日本合成化学工業(株)製)を0.5g、ソルミックスAP−1を19.8g及びエチレングリコールを9.9g入れ、よく撹拌した。次いで、水を14.8g加え、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0056】
比較例3
ビーカーにOrgaconを45.0g、(B)成分に代えて市販のポリビニルアルコール(商品名「ニチゴーGポリマー」、日本合成化学工業(株)製)を0.5g、エチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌した。次いで、水を49.6g加え、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0057】
比較例4
ビーカーにOrgaconを80.0g、(B)成分に代えて市販のポリビニルピロリドン(商品名「ポリビニルピロリドンK−90」、(株)日本触媒製)を0.2g、ソルミックスAP−1を34.6g及びエチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0058】
比較例5
ビーカーにOrgaconを80.0g、(B)成分に代えて市販の水溶性ポリウレタン(商品名「ユリアーノW302」、荒川化学工業(株)製)を0.2g、ソルミックスAP−1を34.6g及びエチレングリコールを4.9g入れ、よく撹拌することにより、導電性コーティング剤を得た。
【0059】
<保存安定性>
実施例及び比較例の各コーティング剤について、4℃、3ヶ月経過後の外観を以下の規準で目視判断した。結果を表1に示す。
○:外観変化なし
×:不溶物の発生、増粘によるゲル化。
【0060】
<導電層付基材の作製>
実施例1の導電性コーティング剤を、易接着処理PETフィルム上に、#12バーコーターを用いて塗布し(計算値:膜厚0.1μm)、80℃で3分乾燥させることにより、試験フィルム(導電層付基材)を作製した。他の実施例及び比較例の導電性コーティング剤についても同様にして試験フィルムを作製した。
【0061】
<レベリング性>
実施例及び比較例の各試験フィルムについて、導電性被膜の平滑性を以下の規準で目視判断した。結果を表1に示す。
○:凝集物なし。はじきなし。
△:凝集物あり。はじきあり。
×:凝集物多数。はじきあり。
【0062】
<表面抵抗率>
実施例及び比較例の各試験フィルムについて、導電性被膜の表面抵抗率(Ω/□)を、市販の表面抵抗率計(製品名「ロレスタEP MCP−T360」、三菱化学(株)製)を用い、常温で測定した。結果を表1に示す。
【0063】
<耐熱黄変性>
実施例及び比較例の試験フィルムを恒温器に入れ、90℃で300時間放置した後の導電性被膜の黄変有無を目視判断した。結果を表1に示す。
【0064】
<全光線透過率/ヘイズ>
実施例及び比較例の各試験フィルムについて、導電性被膜全光線透過率およびヘイズを市販のヘイズメーター(製品名「HM−150」(株)村上色彩技術研究所製)を用い測定した。なお、良好な塗工面状態を得られなかった場合、適切な測定が不可であるため、評価を「評価不能」とした。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】