特許第6380919号(P6380919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380919
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20180820BHJP
【FI】
   B60W30/09
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-170673(P2016-170673)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-34709(P2018-34709A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】大村 博志
(72)【発明者】
【氏名】立畑 哲也
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2013/021489(JP,A1)
【文献】 特開2012−118741(JP,A)
【文献】 特開2009−086788(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/024318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−50/16
G08G 1/00−99/00
B60T 7/12− 8/96
B60R 21/00−23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両の前方において前記車両が走行している走行路へ連結された連結路を検知する対象物検知部と、
前記車両の前方に位置する対象物周囲に、前記車両の速度の許容上限値の分布を規定する速度分布領域であって、前記対象物からの距離が小さいほど前記許容上限値が低下するように設定された前記速度分布領域を設定する速度分布領域設定部と、
前記速度分布領域内において前記車両の速度が前記許容上限値を超えないように前記車両の速度及び/又は操舵方向を変更する回避制御を実行する回避制御実行部と、
を備え、
前記速度分布領域設定部は、前記対象物検知部により連結路が検知されると、検知された前記連結路と走行路の連結部に対象物が存在すると仮定して前記速度分布領域を設定し、
前記走行路を横切る横断歩道上又はその近傍位置に前記連結路が検知された場合、横断歩道上又はその近傍位置ではない位置に検出された連結路と比べて、前記速度分布領域に設定される前記許容上限値が同じ横方向距離においてより小さく設定される、車両制御装置。
【請求項2】
前記速度分布領域設定部は、検知された前記連結路と走行路の連結部の少なくとも一部が前記車両の死角エリアであると判定すると、前記速度分布領域を設定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記死角エリアは、前記走行路又は前記連結路を画定する側壁によって形成される、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記対象物検知部は、地図情報及び車両現在位置情報に基づいて、又は、車載カメラにより撮像された画像データに基づいて、前記連結路を検知する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記連結路は、前記走行路へ連結された側道、又は、前記走行路に沿って配置された2つの構造体の間の空間である、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記2つの構造体は、2台の車両を含む、請求項5に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に係り、特に、車両の安全走行を支援する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車線を自車両で走行中、例えば、前方のT字路で右側の側道から他車両が左折してくるとき、この他車両が自車両の走行車線まで膨らんで旋回すると、自車両と他車両とが接触するおそれがある。このような危険を回避するため、自車両から前方の側道上の他車両が検出された場合、この他車両の旋回軌跡を予測し、自車両において自動で回避動作が実行される技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両では、例えば、側道が壁の間に設けられていると、この壁に遮られて他車両を自車両から視認することができないので、前方の側道上の他車両が検出されないため、上記自動回避動作が実行されなくなる。また、壁の死角エリアから二輪車や歩行者等が走行路上に進入してくるような場合には、運転者による回避動作が遅れるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、車両前方の死角エリアの移動体を検出できない状況において、移動体の万一の出現に備えて車両に回避動作を実行させることが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両に搭載される車両制御装置であって、車両の前方において車両が走行している走行路へ連結された連結路を検知する対象物検知部と、車両の前方に位置する対象物周囲に、車両の速度の許容上限値の分布を規定する速度分布領域であって、対象物からの距離が小さいほど許容上限値が低下するように設定された速度分布領域を設定する速度分布領域設定部と、速度分布領域内において車両の速度が許容上限値を超えないように車両の速度及び/又は操舵方向を変更する回避制御を実行する回避制御実行部と、を備え、速度分布領域設定部は、対象物検知部により連結路が検知されると、検知された連結路と走行路の連結部に対象物が存在すると仮定して速度分布領域を設定し、走行路を横切る横断歩道上又はその近傍位置に連結路が検知された場合、横断歩道上又はその近傍位置ではない位置に検出された連結路と比べて、速度分布領域に設定される許容上限値が同じ横方向距離においてより小さく設定されることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明によれば、車両走行中に、前方に走行路に連結する連結路が検知されると、この連結路と走行路の連結部に仮想対象物が存在すると仮定され、この仮想対象物に対して速度分布領域が設定される。このため、本発明では、車両の速度は、連結路が連結するエリアにおいて、設定された速度分布領域の許容上限値によって制限され、及び/又は、車速が許容上限値を超えないように操舵方向が制御される。これにより、本発明では、連結路が走行路に連結するエリアにおいて、他車両や歩行者等の不意な進入があった場合でも確実に、進入物との接触を回避することができる。また、横断歩道付近の連結路では、横断歩道付近以外の連結路と比べて、歩行者が走行路に進入してくる可能性が高い。このため、本発明では、横断歩道付近の連結路においては、車両の速度がより低速に制限されるように速度分布領域を設定することにより、安全性を高めることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、速度分布領域設定部は、検知された連結路と走行路の連結部の少なくとも一部が車両の死角エリアであると判定すると、速度分布領域を設定する。
このように構成された本発明によれば、連結路と走行路との連結部の死角エリアに存在する車両、歩行者、自転車等を検知することができなかったとしても、これらが存在するとして、速度分布領域が設定される。これにより、本発明では、検知することができなかった潜在的な対象物が走行路へ進入してきた場合であっても、これら進入物との接触を回避することができる。
具体的には、死角エリアは、走行路又は連結路を画定する側壁によって形成される。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、対象物検知部は、地図情報及び車両現在位置情報に基づいて、又は、車載カメラにより撮像された画像データに基づいて、連結路を検知する。
【0010】
本発明において、好ましくは、連結路は、走行路へ連結された側道、又は、走行路に沿って配置された2つの構造体の間の空間である。
このように構成された本発明によれば、連結路は、走行路へ連結された側道だけではなく、移動し得る又は固定された2つの構造体の間の空間も含み得る。したがって、このような一般的には道路と認識されない連結路を含むことにより、このような連結路から走行路へ歩行者等が進入することに備えて、回避制御を行うことが可能となる。
具体的には、2つの構造体は、2台の車両を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全運転支援のための車両制御を効率的に実行可能な車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による車両制御システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態によるすれ違い速度制御を説明する説明図である。
図3】本発明の実施形態による対象物の横方向位置におけるすれ違い速度の許容上限値とクリアランスとの関係を示す説明図である。
図4】車両がT字路交差点に差し掛かった状況を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態による仮想対象物に対して設定される速度分布領域の説明図である。
図6】本発明の実施形態による仮想対象物に対して設定される速度分布領域の説明図である。
図7】本発明の実施形態による運転支援制御の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両制御システムについて説明する。先ず、図1を参照して、車両制御システムの構成について説明する。図1は、車両制御システムの構成図である。
【0015】
図1に示すように、車両制御システム100は、車両1(図2参照)に搭載されており、車両制御装置(ECU)10と、複数のセンサと、複数の制御システムとを備えている。複数のセンサには、車載カメラ21,ミリ波レーダ22,車速センサ23,測位システム24,ナビゲーションシステム25が含まれる。また、複数の制御システムには、エンジン制御システム31,ブレーキ制御システム32,ステアリング制御システム33が含まれる。
【0016】
ECU10は、CPU,各種プログラムを記憶するメモリ,入出力装置等を備えたコンピュータにより構成される。ECU10は、複数のセンサから受け取った信号に基づき、エンジン制御システム31,ブレーキ制御システム32,ステアリング制御システム33に対して、それぞれエンジンシステム,ブレーキシステム,ステアリングシステムを適宜に作動させるための要求信号を出力可能に構成されている。ECU10は、機能的には、対象物検知部11と、速度分布領域設定部12と、速度算出部13と、経路算出部14と、回避制御実行部15と、を備えている。
【0017】
車載カメラ21は、車両1の周囲を撮像し、撮像した画像データを出力する。ECU10は、画像データに基づいて対象物(例えば、車両、歩行者、道路、交差点等)を特定する。
【0018】
ミリ波レーダ22は、対象物の位置及び速度を測定する測定装置であり、車両1の前方へ向けて電波(送信波)を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、ミリ波レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、ミリ波レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定するように構成してもよい。また、複数のセンサを用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。
【0019】
車速センサ23は、車両1の絶対速度を算出する。
測位システム24は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を算出する。
ナビゲーションシステム25は、内部に地図情報を格納しており、ECU10へ地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向前方)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。
【0020】
エンジン制御システム31は、車両1のエンジンを制御するコントローラである。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御システム31に対して、エンジン出力の変更を要求するエンジン出力変更要求信号を出力する。
【0021】
ブレーキ制御システム32は、車両1のブレーキ装置を制御するためのコントローラである。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御システム32に対して、車両1への制動力の発生を要求するブレーキ要求信号を出力する。
【0022】
ステアリング制御システム33は、車両1のステアリング装置を制御するコントローラである。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御システム33に対して、操舵方向の変更を要求する操舵方向変更要求信号を出力する。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態のすれ違い速度制御の概要について説明する。図2は、すれ違い速度制御を説明する説明図であり、図3は、対象物の横方向位置におけるすれ違い速度の許容上限値とクリアランスとの関係を示す説明図である。
図2は、車両1が走行路2上を走行し、前方のT字路交差点3に接近している状況を示している。T字路交差点3では、側道4が走行路2に連結されている。T字路交差点3では、側道4上で他の車両51が一旦停止している。
【0024】
一般に、交差点等で道路上又は道路付近の対象物(例えば、歩行者、自転車、車両等)とすれ違うとき(又は追い抜くとき)、走行車の運転者は、進行方向に対して直交する横方向において、走行車と対象物との間に所定のクリアランス又は間隔(横方向距離)を保ち、且つ、減速する。具体的には、歩行者が走行路を横断しようとしり、自転車や車両が急に走行路に向けて発進したりするといった危険を回避するため、クリアランスが小さいほど、対象物に対する相対速度は小さくされる。
【0025】
このように、運転者は、対象物と車両との間の距離(横方向距離及び縦方向距離を含む)と相対速度との関係を考慮しながら、危険を回避するように車両を運転している。
【0026】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、車両1は、車両1から検知される対象物(例えば、車両51)に対して、対象物の周囲に(横方向領域、後方領域、及び前方領域にわたって)、車両1の進行方向における相対速度についての許容上限値を規定する2次元分布(速度分布領域40)を設定するように構成されている。速度分布領域40では、対象物の周囲の各点において、相対速度の許容上限値Vlimが設定されている。車両1は、運転支援システムの作動時において、この速度分布領域40内の許容上限値Vlimによって、対象物に対する相対速度が制限される。
【0027】
図2から分かるように、速度分布領域40は、対象物からの横方向距離及び縦方向距離が小さくなるほど(対象物に近づくほど)、相対速度の許容上限値が小さくなるように設定される。また、図2では、理解の容易のため、同じ許容上限値を有する点を連結した等相対速度線が示されている。等相対速度線a,b,c,dは、それぞれ許容上限値Vlimが0km/h,20km/h,40km/h,60km/hに相当する。
【0028】
なお、速度分布領域40は、必ずしも対象物の全周にわたって設定されなくてもよく、少なくとも車両1が存在する対象物の横方向の一方側(図2では、車両51の右側領域)に設定されればよい。また、図2では、車両1が走行しない領域(走行路2の外部)にも速度分布領域40が示されているが、走行路2上のみに速度分布領域40を設定してもよい。更に、図2では、許容上限値が60km/hまでの速度分布領域40が示されているが、更に大きな相対速度まで速度分布領域40を設定することができる。
【0029】
図3に示すように、車両1がある絶対速度で走行するときにおいて、対象物の横方向に設定される許容上限値Vlimは、クリアランスXがD0(安全距離)までは0(ゼロ)km/hであり、D0以上で2次関数的に増加する(Vlim=k(X−D02。ただし、X≧D0)。即ち、安全確保のため、クリアランスXがD0以下では車両1は相対速度がゼロとなる。一方、クリアランスXがD0以上では、クリアランスが大きくなるほど、車両1は大きな相対速度ですれ違うことが可能となる。
【0030】
図3の例では、対象物の横方向における許容上限値は、Vlim=f(X)=k(X−D02で定義されている。なお、kは、Xに対するVlimの変化度合いに関連するゲイン係数であり、対象物の種類等に依存して設定される。また、D0も対象物の種類等に依存して設定される。
【0031】
なお、本実施形態では、Vlimが安全距離を含み、且つ、Xの2次関数となるように定義されているが、これに限らず、Vlimが安全距離を含まなくてもよいし、他の関数(例えば、一次関数等)で定義されてもよい。また、図3を参照して、対象物の横方向の許容上限値Vlimについて説明したが、対象物の縦方向を含むすべての径方向について同様に設定することができる。その際、係数k、安全距離D0は、対象物からの方向に応じて設定することができる。
【0032】
図2の状況において、車両1は、例えば、直進経路である経路R1や、迂回経路である経路R2を走行することができる。本実施形態では、状況に応じて、これらの経路が算出される。
【0033】
直進経路R1は、速度分布領域40の等相対速度線d,c,c,dを順に横切っている。したがって、車両1が経路R1上を走行する際には、許容上限値Vlimは徐々に低下した後、再び徐々に増大していく。よって、例えば、60km/hで走行していた車両1は、車両51の真横に到達するまでに速度が40km/h以下まで低下し、車両51とすれ違った後は速度が増速可能となる。本実施形態では、ECU10の速度算出部13が車両1の現在の車速を算出し、回避制御実行部15が、経路R1上の許容上限値を上限として、車両1の速度をアクセルの踏み込み量に応じた車速となるように制御する。
【0034】
迂回経路R2は、速度分布領域40の等相対速度線dの外側を通過する経路である。したがって、車両1は相対速度60km/h以上の速度で走行可能となる。よって、例えば、60km/hで走行していた車両1は、車速を低下させることなく、車両51とすれ違うことができる。本実施形態では、ECU10の速度算出部13が車両1の現在の車速を算出し、回避制御実行部15が、経路R2上の許容上限値を上限として、車両1の速度をアクセルの踏み込み量に応じた車速となるように制御する。また、回避制御実行部15は、経路R2を走行するように車両1の操舵方向の制御を実行する。
【0035】
次に、図4図6を参照して、本実施形態の運転支援制御について説明する。図4は、車両がT字路交差点に差し掛かった状況を示す説明図であり、図5及び図6は、仮想対象物に対して設定される速度分布領域の説明図である。
【0036】
図4は、片側2車線の走行路2において、車両1が車線2a上を走行している状況を示している。車両1の前方のT字路交差点3では、連結路である側道4が走行路2と連結されている。走行路2の左側と側道4の両側には、側壁Wが設けられている。
【0037】
車両1では、車載カメラ21により撮像範囲R内の対象物が撮像され、得られた画像データに基づいて対象物が検知され、その種類(歩行者、自転車、車両等)が特定される。対象物が検知されれば、検知された対象物に対して、速度分布領域40が設定される。
【0038】
ところが、撮像範囲Rのうち、側壁Wで遮蔽された車線部分Rbは、車両1からは死角エリアとなる。側道4と走行路2との連結部6を走行中又は連結部6で停車中の車両53は、この死角エリアに含まれる。このため、車両1では、停車中の車両53を対象物として検知することができない。したがって、死角エリアに存在するため対象物として検知されなかった車両53に対して、速度分布領域40は設定されない。なお、連結路と走行路との連結部とは、連結路の走行路側の端部付近であり、例えば、連結路の端部から走行路から離れる側に所定距離(例えば、3〜10m)だけ奥まった範囲であり、又、走行路の一部を含んでもよい。
【0039】
一般に、車両の運転者は、このような死角エリアのある交差点を通過する際には、通常の注意力に基づいて、側道からの対象物(車両、歩行者、自転車等)の進入に備えて、車速を低下して安全確認しながら交差点を通過する。ところが、運転者の注意力が低下しているような場合には、交差点において車速が十分に低下されず、側道上の対象物と大きなすれ違い速度ですれ違うことがおこり得る。
【0040】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、画像データや地図情報等から連結路が検知された場合には、死角エリアに存在する可能性のある対象物が画像データに基づいて検知されなかったとしても、死角エリアに仮想対象物52が存在すると仮定して、その仮想対象物52に対して速度分布領域40が設定される。仮想対象物52は、車線2aと側道4との連結部6のいずれかの位置(例えば、側道4の中央であって、車線2aとの合流点)に存在すると仮定することができる。本実施形態では、交差点における仮想対象物52を、例えば、車両とすることができる。
【0041】
なお、図5の例では、側壁Wによって死角エリアが形成されているが、これに限らず、駐車車両、公共構造物、並木等によっても死角エリアが形成され得る。
【0042】
車両1では、仮想対象物52に設定された速度分布領域40を考慮して経路が算出される。本実施形態では、対向車線2b上の対向車両の存在も経路の算出において考慮されるように構成することができる。車載カメラ21による画像データ及びミリ波レーダ22による測定データに基づいて、対向車線2b上の対向車両が車両1の前方の所定車間距離内に存在すると判断される場合、直進する経路R1が算出される。一方、対向車両が所定車間距離内に存在しないと判断される場合、対向車線2bにはみ出ない範囲で、速度低下を抑制するように迂回する経路R2が算出される。そして、算出された経路に応じて、車両1では速度及び/又は操舵の制御が実行される。
【0043】
また、図6は、車両1が車線2a上を走行中に、対向車線2b上に複数の車両54〜57が交通渋滞等で停止している状況を示している。このような場合、2台の車両の間から歩行者や自転車等が車線2a上に進入してくるおそれがある。このため、本実施形態では、車載カメラ21による画像データから所定間隔以下で連続して位置する2台の車両が検知されると、2台の車両の間の空間が仮想的な連結路として検知される。これにより、画像データからは2台の車両の間(即ち、仮想的な連結路上)に対象物が検知されなかったとしても、仮想的な連結路に仮想対象物が存在すると仮定して、その仮想対象物に対して速度分布領域が設定される。
【0044】
図6では、車両54と車両55の間の空間が仮想的な連結路4aとして検知され、この連結路4aから走行車線2aへの連結部6aに仮想対象物7a(例えば、歩行者)が存在すると仮定され、速度分布領域40aが設定される。また、同様に、車両55と車両56との間及び車両56と車両57との間にも、それぞれ仮想的な連結路4b,4cが検知され、連結部6b,6cに仮想対象物7b,7cの存在が仮定され、速度分布領域40b,40cが設定される。本実施形態では、2台の車両間の仮想対象物は歩行者とすることができる。なお、図6では、速度分布領域において等相対速度線dのみが示されている。
【0045】
また、画像データに基づいて走行路2を横切る横断歩道8が検知され、かつ、この横断歩道8上又はその近傍位置に仮想的な連結路4cが検知される場合、仮想的な連結部6c上の仮想対象物7cに対して、速度分布領域40b,40cとは異なる速度分布領域40cが設定される。即ち、速度分布領域40cでは、速度分布領域40b,40cと比べて、仮想対象物からの同じ離間距離における許容上限値がより小さく設定される。したがって、例えば、速度分布領域40cの等相対速度線dの範囲は、速度分布領域40b,40cの等相対速度線dの範囲よりも広くなる。これは、仮想的な連結路4cが横断歩道8上に設定されているため、歩行者や自転車が連結路4cを通って車線2aに進入する可能性が、他の連結路4a,4bを通って車線2aに進入する可能性よりも高いからである。
【0046】
なお、仮想的な連結路を2台の車両の間に想定したが、これに限らず、走行路2の道路脇に配置された2つの構造体(車両、構造物、並木等)の間を仮想的な連結路として想定することができる。
【0047】
図7の場合においても、図6の場合と同様に、仮想対象物7a,7b,7cにそれぞれ設定された速度分布領域40a,40b,40cを考慮して経路が算出される。図7では、対向車線2bに対向車両が存在するので、直進する経路R1が算出される。そして、算出された経路に応じて、車両1の速度の制御が実行される。
【0048】
次に、図7を参照して、本実施形態における運転支援制御の処理フローについて説明する。図7は、運転支援制御の処理フローである。
図2図5及び図6に示すように、車両1が走行路2上を走行しているとき、車両1のECU10は、複数のセンサから種々のデータを取得する(S10)。具体的には、ECU10は、車載カメラ21から車両1の前方を撮像した画像データを受け取り、ミリ波レーダ22から測定データを受け取り、車速センサ23から車速データを受け取る。
【0049】
ECU10(対象物検知部11)は、対象物及び連結路を検出する処理を実行する(S11)。この対象物及び連結路検出処理では、ECU10は、画像データの画像処理を実行して、図2では車両51を対象物として検知し、図5及び図6では側道4や2台の車両の間(連結路4a,4b,4c)を連結路として検知する。このとき、対象物の種類(図2では車両)が特定される。なお、同じ領域に対象物と連結路が検出される場合は、対象物が優先される。このため、図2では、側道4と走行路2との連結部に車両51が検出されるので、側道4を連結路として検出せずに、車両51が対象物として検出される。また、ECU10は、地図情報から連結路の存在を検知することができる。
【0050】
引き続き、ECU10(対象物検知部11)は、連結路が検出された場合には、検出された連結路に対象物を遮蔽するような死角エリアが存在するか否かを判定する死角エリア検出処理を実行する(S12)。この死角エリア検出処理では、ECU10は、画像データに基づいて、連結部の少なくとも一部が路面から所定の高さ(例えば、0m〜3m)までの範囲で且つ少なくとも所定の大きさだけ(例えば、子供が占める面積分)、手前の構造物等により遮蔽されていると、死角エリアが存在すると判定する。
【0051】
そして、死角エリアが存在する場合には、ECU10は、この死角エリアが存在する連結部に特定の種類の仮想対象物が存在すると仮定する。図5では、連結部6に仮想対象物52(車両)が存在すると仮定される。また、図6では、連結部6a,6b,6cにそれぞれ仮想対象物7a,7b,7c(歩行者)が存在すると仮定される。特定される仮想対象物の種類は、連結路が検出された場所に応じて設定することができる。例えば、交差点での仮想対象物は車両であり、構造物の間の連結路での仮想対象物は歩行者である。
【0052】
引き続き、ECU10(速度分布領域設定部12)は、対象物及び/又は仮想対象物に対して、速度分布領域を設定する(S13)。図2では、車両51に対して速度分布領域40が設定される。図5では、仮想対象物52に対して速度分布領域40が設定される。また、図6では、仮想対象物7a,7b,7cに対して速度分布領域40a,40b,40cが設定される。なお、上述のように、横断歩道付近に連結路が検出された場合には、設定される速度分布領域は、横断歩道付近以外に連結路が検出された場合に比べて、仮想対象物からの同じ離間距離における許容上限値がより小さく設定される。
【0053】
引き続き、ECU10(経路算出部14)は、設定された速度分布領域に基づいて、状況に応じて、車両1の走行可能な経路及びこの経路上の各位置における設定車速又は目標速度を算出する。なお、この設定車速は、経路上の各点において、対象物及び仮想対象物に対する相対速度が速度分布領域の許容上限値Vlim以下となるように算出され、かつ、経路に沿った速度変化が滑らかになるように調整される。
【0054】
具体的には、ECU10は、車載カメラ21からの画像データ及びミリ波レーダ22からの測定データに基づいて、車両1の前方の所定距離範囲内において、対向車線上に対向車等が存在するか否かを判定する(S14)。対向車が存在する場合(S14;Yes)、ECU10は、直進経路を算出する(S15)。一方、対向車が存在しない場合(S14;No)、ECU10は、迂回経路を算出する(S17)。なお、迂回経路は、車両1の走行車線2aをはみ出ない範囲で、現在車速を維持するように算出される。また、図7の処理フローは、所定時間(例えば、0.1秒)毎に繰り返し実行されるため、算出される経路及びこの経路上の設定速度は、時間経過と共に変化する。
【0055】
例えば、図2及び図5では、対向車線に対向車が存在する場合は、経路R1が算出され、対向車が存在しない場合は、経路R2が算出される。また、図6では、対向車線に対向車が存在するので、経路R1が算出される。
【0056】
直進経路が算出された場合、ECU10(回避制御実行部15)は、算出された経路を走行するように、車速を制御する(S16)。例えば、図5では、経路R1は、速度分布領域40の等相対速度線d,c,c,dを順に横切っている。したがって、車両1が経路R1を走行する場合には、経路1上で進行方向の相対速度の許容上限値が変化する。具体的には、許容上限値は、一旦小さくなった後に大きくなる。なお、車両1の車速は、車速センサ23から受け取った車速データに基づいて、速度算出部13により算出される。
【0057】
本実施形態における回避制御では、車両1が経路R1に進入すると、運転者が同じアクセルの踏み込み量を維持していても、車両1の相対速度がアクセルの踏み込み量に応じた速度を上限として、速度分布領域40内の各地点において許容上限値に維持される。このため、例えば、車両1が相対速度60km/hで経路R1(図5)に進入すると、仮想対象物52に接近するにつれて車両1は自動的に減速され、仮想対象物52とすれ違った後はアクセルの踏み込み量に応じた速度まで車両1は加速される。
【0058】
このような回避制御を実行するため、ECU10は、経路R1上でアクセルの踏み込み量に応じた車速を上限として許容上限値に追従し、許容上限値を超えることを抑制するように、エンジン制御システム31,ブレーキ制御システム32に、それぞれエンジン出力変更要求信号,ブレーキ要求信号を出力する。
【0059】
また、迂回経路が算出された場合、ECU10(回避制御実行部15)は、算出された経路を走行するように、操舵方向(必要に応じて車速)を制御する(S18)。例えば、図5では、経路R2は、速度分布領域40の等相対速度線dの外側を通過している。このため、車両1が経路R2を走行する場合には、少なくとも60km/hを維持することができる。
【0060】
したがって、例えば、車両1が60km/hで経路R2に進入すると、同じ車速を維持したまま、自動操舵により経路R2上を走行する。このような回避制御を実行するため、ECU10は、経路R2上を走行するようにステアリング制御システム33に操舵方向変更要求信号を出力する。ただし、このとき、アクセルの踏み込み量に応じた車速が維持されるので、エンジン出力変更要求信号やブレーキ要求信号は出力されない。
【0061】
なお、例えば、走行車線をはみ出ないようにするため、速度分布領域内で経路R2上の設定速度が現在車速よりも低速となるように設定される場合には、アクセルの踏み込み量に応じた速度を上限として、車両1の車速が設定速度(即ち、許容上限値)を超えないように、ECU10は、エンジン出力変更要求信号やブレーキ要求信号を出力する。
【0062】
なお、本実施形態では、連結路に死角エリアが検出された場合に、仮想対象物が存在すると仮定して速度分布領域を設定しているが、これに限らず、連結路が検出された時点で、死角エリアの有無に限らず、仮想対象物の存在を仮定して速度分布領域を設定するように構成してもよい。
【0063】
このように構成された本実施形態では、車両1の走行中に、前方に走行路2に連結する連結路4,4a〜4cが検知されると、この連結路と走行路の連結部6,6a〜6cに仮想対象物52,7a〜7cが存在すると仮定され、この仮想対象物に対して速度分布領域40,40a〜40cが設定される。このため、本実施形態では、車両1の速度は、連結路が連結するエリアにおいて、設定された速度分布領域の許容上限値Vlimによって制限され、及び/又は、車速が許容上限値Vlimを超えないように操舵方向が制御される。これにより、本実施形態では、連結路が走行路に連結するエリアにおいて、他車両や歩行者等の不意な進入があった場合でも確実に、進入物との接触を回避することができる。
【0064】
また、本実施形態では、速度分布領域設定部12は、検知された連結路と走行路の連結部の少なくとも一部が車両の死角エリアであると判定すると、速度分布領域を設定するので、対象物検知部11が連結路と走行路との連結部の死角エリアに存在する車両、歩行者、自転車等を検知することができなかったとしても、これらが存在するとして、速度分布領域が設定される。これにより、本実施形態では、検知することができなかった潜在的な対象物が走行路へ進入してきた場合であっても、これら進入物との接触を回避することができる。
【0065】
また、本実施形態では、連結路は、走行路2へ連結された側道4、又は、走行路2に沿って配置された2つの構造体(例えば、車両54〜57)の間の空間であるので、連結路は、走行路2へ連結された側道4だけではなく、移動し得る又は固定された2つの構造体の間の空間も含み得る。したがって、このような一般的には道路と認識されない連結路を含むことにより、このような連結路から走行路へ歩行者等が進入することに備えて、回避制御を行うことが可能となる。
【0066】
また、横断歩道8付近の連結路4cでは、横断歩道8付近以外の連結路4a,4bと比べて、歩行者が走行路2に進入してくる可能性が高い。このため、本実施形態では、走行路2を横切る横断歩道8上又はその近傍位置に連結路4cが検知された場合、横断歩道8上又はその近傍位置ではない位置に検出された連結路4a,4bと比べて、速度分布領域40cに設定される許容上限値Vlimが同じ横方向距離においてより小さく設定される。これにより、本実施形態では、横断歩道8付近の連結路4cにおいては、車両の速度がより低速に制限されるように速度分布領域40cを設定することにより、安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
2 走行路
2a 走行車線
2b 対向車線
3 T字路交差点
4 側道
4a,4b,4c 連結路
6,6a,6b,6c 連結部
7a,7b,7c 仮想対象物
8 横断歩道
11 対象物検知部
12 速度分布領域設定部
13 速度算出部
14 経路算出部
15 回避制御実行部
21 車載カメラ
22 ミリ波レーダ
23 車速センサ
24 測位システム
25 ナビゲーションシステム
31 エンジン制御システム
32 ブレーキ制御システム
33 ステアリング制御システム
40,40a,40b,40c 速度分布領域
51 車両
52 仮想対象物
53〜57 車両
100 車両制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7