【0008】
次に、本発明に係る内燃機関用点火装置の一実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すのは、本発明の実施形態に係る内燃機関用点火装置1であり、内燃機関の気筒毎に設けられる1つの点火プラグ2に放電火花を発生させるものである。この内燃機関用点火装置1は、例えば、主点火コイル11、副点火コイル12、主IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)14a、副IGBT14b、点火制御手段13を所要形状のケースに収納した一体構造である。
主点火コイル11は、一次コイル11aの一端が車両バッテリー等の直流電源(VB+)に接続され、二次コイル11bの一端が点火プラグ2の非接地側に接続される。
副点火コイル12は、一次コイル12aの一端が車両バッテリー等の直流電源(VB+)に接続され、二次コイル12bの一端側は二次コイル11bの他端側と直列に接続され、二次コイル12bの他端側は整流手段(二次コイル11bから接地点に向かって順方向)を介して接地される。
主IGBT14aは、主点火コイル11の一次コイル11aの他端側と接地点との間に設けられ、点火制御手段13からの主点火信号S1に基づいて、一次コイル11aへの通電・遮断を切り替える主一次電流スイッチ手段として機能する。
副IGBT14bは、副点火コイル12の一次コイル12aの他端側と接地点との間に設けられ、点火制御手段13からの副点火信号S2に基づいて、一次コイル12aへの通電・遮断を切り替える副一次電流スイッチ手段として機能する。
本実施形態における点火制御手段13には、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置としてのエンジンコントロールユニット3から出力される点火信号(以下、点火指示信号S0という)が入力され、この点火指示信号S0のオン・オフ(信号電位のレベル変化)タイミングと一致するパルス信号を主点火信号S1として主IGBT14aへ出力し、車両の運転状況に応じて生成した副点火信号S2を副IGBT14bへ出力するものである。
このように、主点火信号S1と副点火信号S2を生成・出力するための点火制御手段13を内燃機関用点火装置1に設ければ、主点火信号S1と副点火信号S2を生成・出力する機能をエンジンコントロールユニット3に付加する必要が無いので、既存のエンジンコントロールユニット3に改変を加えることなく、内燃機関用点火装置1を適用できるという利点がある。無論、点火制御手段13の機能をエンジンコントロールユニット3に設けることで、点火信号S1と点火信号S2をエンジンコントロールユニット3で生成し、主IGBT14aおよび副IGBT14bへそれぞれ送出するようにしても構わない。
上記のように構成した内燃機関用点火装置1において、主点火信号S1によって主IGBT14aがオンになると、主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ、副点火信号S2によって副IGBT14bがオンになると、副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bが流れる。
その後、主点火信号S1によって主IGBT14aがオフになると、主一次電流I1aが遮断されて二次コイル11bに起電力(主放電電圧)が生じる。
この主一次電流I1aを遮断するのと同時期に、副点火信号S2によって副IGBT14bをオフにし、副一次電流I1bを遮断すると、副点火コイル12の二次コイル12bにも起電力(副放電電圧)が生じるので、主点火コイル11の二次側に生じた主放電電圧に副点火コイル12の二次側に生じた副放電電圧が重畳された高い二次電圧が点火プラグ2の放電ギャップに印加され、点火プラグ2の非接地側から主点火コイル11を経て副点火コイル12へ二次電流I2が流れることとなる。
すなわち、本実施形態のように、第1点火コイル11と第2点火コイル12を直列接続する構造を採用し、且つ主一次電流I1aと副一次電流I1bの遮断タイミングを合わせるように制御すれば、副点火コイル12の二次側に発生する副放電電圧が主点火コイル11の二次側に発生する主放電電圧に重畳され、点火プラグ2の放電開始時における絶縁破壊電圧が高まるので、燃焼室での火炎核形成初期に高い電圧が点火プラグ2の放電ギャップに印加され、強固な火炎核が生成されて燃焼速度が速くなり、着火性・燃焼安定性を向上させることができる。
なお、主点火コイル11の二次側に放電電圧を発生させるタイミングと、副点火コイル12の二次側に放電電圧を発生させるタイミングは、ほぼ同時であることが望ましい。しかしながら、燃焼室内に強固な火炎核が生成され得るように、火炎核形成初期の段階で副点火コイル12による副放電電圧が重畳されていれば、副放電電圧の発生に多少の遅れが生じていてもかまわない。
また、複数の副点火コイル12…を主点火コイル11に対して直列に接続しておけば、より高い絶縁破壊電圧が必要な場合などに、複数の副点火コイル12…による副放電電圧を主放電電圧に重畳させて対応することも可能である。
上述した内燃機関用点火装置1では、主点火コイル11と副点火コイル12の二次側が直列に接続されていることから、主点火コイル11のみによって点火プラグ2に点火する場合(副点火コイル12による副放電電圧を重畳させない場合)、副点火コイル12の抵抗分で放電電圧・放電電流が消費されてしまい、点火プラグ2の着火性を阻害しかねない。そこで、このような事態を回避するべく、本実施形態の内燃機関用点火装置1では、単独放電用バイパス手段15を設けた。
単独放電用バイパス手段15は、主点火コイル11の二次コイル11bと副点火コイル12の二次コイル12bとが接続される直列接続点から接地点に至る接地線路15aに整流素子15b(直列接続点から接地点に向かって順方向となるように、直列接続点側にアノードを、接地点側にカソードをそれぞれ接続する)を設けた構成である。この単独放電用バイパス手段15を設けておけば、副点火コイル12を用いずに、主点火コイル11のみの放電で点火プラグ2を点火するとき、副点火コイル12の抵抗分で放電電圧・放電電流が消費されるのを回避できる。
このように、主点火コイル11と副点火コイル12を備える内燃機関用点火装置1においては、副点火コイル12を用いずに主点火コイル11単独で点火プラグ2を放電させること(単独放電)ができるので、高い放電電圧が必要とされない運転状況においては、副点火コイル12を用いた副放電電圧の重畳を行わないことで、消費電力を低減できる。
主点火コイル11のみを用いた単独点火制御を具体的に説明する。
まず、エンジンコントロールユニット3から点火制御手段13へ送出された点火指示信号S0と同じタイミングでオン・オフする主点火信号S1が、点火制御手段13内の主点火信号送出手段13aより主点火コイル11に送出されると、主点火信号S1がオンになるタイミング(例えば、LレベルからHレベルに立ち上がるタイミング)で主IGBT14aがオンとなり、主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始める(
図2に示す各波形の前段を参照)。なお、エンジンコントロールユニット3からの点火指示信号S0をそのまま主点火信号S1として用いる場合、主点火信号送出手段13aは、単に点火指示信号S0を通過させる機能のみで構成することができる。
また、上記のようにして主点火信号送出手段13aから送出される主点火信号S1は、副点火信号送出手段13bにも供給され、この副点火信号送出手段13bが副点火信号S2を生成して副IGBT14bへ送出されるのであるが、単独放電の場合は、副点火コイル12による副放電電圧の重畳を行わないので、副点火信号S2はオフのまま(例えば、Lレベルのまま)であり、副IGBT14bもオフのままであるから、副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bは流れない。
主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始めた後、点火指示信号S0により指示される主一次電流通電時間T1が経過すると、主点火信号送出手段13aから送出される主点火信号S1はオフとなり(例えば、HレベルからLレベルに下がり)、主IGBT14aがオフとなって主一次電流I1aが遮断され、古典的な電流遮断原理により主点火コイル11の二次コイル11bに誘起される起電力により二次電流I2が流れ、点火プラグ2の放電ギャップに二次電圧が印加され、点火プラグ2に放電を行わせる。
一方、主点火コイル11による主放電電圧に、副点火コイル12による副放電電圧を重畳させ、点火プラグ2に印加する二次電圧を高める場合(同時放電の場合)、副点火コイル12による副放電電圧は、副一次電流I1bの通電時間によって調整できる。
そこで、本実施形態における点火制御手段13は、内燃機関の運転状況に応じて副IGBT14bへの副点火信号S2を変化(一次コイル12aへの通電開始タイミングを変化)させ、副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bを流す通電時間を調整することで、副点火コイル12の二次側に発生させる副放電電圧を調整するようにした。
なお、内燃機関の運転状況、すなわち、エンジンにかかる負荷の軽重は、エンジンの回転数、或いは主点火コイル11や副点火コイル12の発熱量によって推測できるので、エンジンの回転数情報を含むエンジン回転数信号、主点火コイル11や副点火コイル12の近傍に設けられた温度センサの検出した温度情報を含むコイル温度信号を点火制御手段13へ供給することで、点火制御手段13が独自に運転状況を判定できるようにした。
このような運転状況に応じた副点火コイル12の制御を行うために、本実施形態の点火制御手段13には、運転状況判定手段13cと、副一次電流通電時間調整手段13dを設けるものとした。
運転状況判定手段13cは、予め定めた運転状況判定基準に基づいて、内燃機関の現在の運転状況を、例えば複数のレベルに分けて良好か悪化かを判定するもので、前述したエンジン回転数信号もしくはコイル温度信号によって得られる諸情報から運転状況のレベル判定を行う。例えば、エンジン回転数が低く(或いはコイル温度が低く)、副点火コイル12による副放電電圧を主放電電圧に重畳させる必要が無い程度の軽負荷の場合を判定レベル0とし、この判定レベル0を超える負荷から所定範囲を判定レベル1とし、更に負荷が所定範囲だけ増える毎に判定レベルの数値を上げるように定めておき、この負荷範囲と判定レベルとの対応表あるいは対応演算式を運転状況判定手段13cに記憶させておけば、運転状況判定手段13cはエンジン回転数信号やコイル温度信号から判定レベルを特定できる。なお、エンジンコントロールユニット3からの点火指示信号S0を監視することで気筒の点火周期が分かるので、この点火指示信号S0を運転状況判定手段13cに供給し(
図1中、破線で示す)、この点火指示信号S0から運転状況判定手段13cがエンジン回転数を判断するようにしても良い。
副一次電流通電時間調整手段13dは、運転状況判定手段13cが判定した判定レベルが良好な場合(例えば、判定レベルの数値が低い場合)には通電時間が短くなり、判定レベルが悪化の場合(例えば、判定レベルの数値が高い場合)には通電時間が長くなるように、判定レベルと副一次電流通電時間とを対応付けた対応表、或いは対応演算式を記憶しており、運転状況判定手段13cの判定結果に基づいて副一次電流通電時間を決定し、決定した副一次電流通電時間を副点火信号送出手段13bへ供給する。
そして、副一次電流通電時間調整手段13dによって決定された副一次電流通電時間だけ副一次電流I1bを流すための副点火信号を副点火信号送出手段13bにより生成して副IGBT14bへ送出することで、副点火コイル12の二次側に発生する副放電電圧を適切に調整するのである。
すなわち、運転状況が比較的良好な場合には、副点火コイル12の副放電電圧を低く調整することにより、点火プラグ2の絶縁破壊電圧を低く抑えて消費電力を低減し、逆に運転状況が悪化している場合には、副点火コイル12の副放電電圧を高く調整することにより、点火プラグ2の絶縁破壊電圧を高くして着火性・燃焼安定性を向上させるのである。
例えば、運転状況が非常に悪化している場合(例えば、運転状況判定手段13cによる判定レベルの数値がMAXの場合)、点火指示信号S0により指示される主一次電流通電時間T1と副一次電流通電時間T2(副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bを流す時間)とがほぼ一致するように調整することで、最大の副放電電圧を主放電電圧に重畳することができる。なお、T1=T2としたときに副放電電圧が最大となり、放電プラグ2の放電ギャップに印加できる二次電圧を最大(同時放電MAX)にできるのは、主一次電流通電時間T1を超えない範囲で副一次電流通電時間T2を調整しなければならないという制限のためである。仮に、点火制御手段13の諸機能をエンジンコントロールユニット3に設けた場合は、主一次電流I1aを流し始めるタイミングよりも早く副一次電流I1bを流し始める制御も可能である。
副放電電圧を最大にするときの制御を具体的に説明する。
まず、主点火信号送出手段13aより主点火コイル11に送出される主点火信号S1がオンになるタイミング(例えば、LレベルからHレベルに立ち上がるタイミング)と同時期に、副点火信号送出手段13bより副点火コイル12に送出される副点火信号S2もオンとする(例えば、LレベルからHレベルに立ち上がる)。これにより、主IGBT14aと副IGBT14bが同時にオンとなり、主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始めると同時に、副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bが流れ始める(
図2に示す各波形の中段を参照)。
主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始めた後、点火指示信号S0により指示される主一次電流通電時間T1が経過するとき、副一次電流通電時間T2も経過するので、主点火信号送出手段13aから送出される主点火信号S1および副点火信号送出手段13bから送出される副点火信号S2は同時にオフとなり(例えば、HレベルからLレベルに下がり)、主IGBT14aおよび副IGBT14bが同時にオフとなって、主一次電流I1aおよび副一次電流I1bが同時に遮断され、古典的な電流遮断原理により主点火コイル11の二次コイル11bおよび副点火コイル12の二次コイル12bに誘起される起電力により二次電流I2が流れ、点火プラグ2の放電ギャップに非常に高い二次電圧が印加され、点火プラグ2の放電が行われる。
なお、運転状況判定手段13cによる判定レベルの数値が0の場合、副一次電流通電時間調整手段13dでは副一次電流通電時間T2=0に決定することで、この点火周期においては、副点火信号送出手段13bより出力される副点火信号S2にオン時間がなくなり、主点火コイル11のみで点火プラグ2を放電させる単独放電となる。
また、運転状況判定手段13cによる判定レベルの数値が0でもMAXでもない場合、すなわち、主点火コイル11のみの単独放電による二次電圧では足りず、同時放電MAXほどの二次電圧も必要ない場合は、運転状況の判定レベルに応じて、「T1>T2>0」の範囲で副一次電流通電時間T2を調整した副点火信号S2を副IGBT14bに供給することで、着火性・燃焼安定性を向上させつつ、必要以上に副一次電流I1bを流すことを抑制し、トータル的な燃費向上を実現できる。
例えば、運転状況が悪化しているとき(運転状況判定手段13cにより判定レベルが1以上と判定された場合)、運転状況判定手段13cによる判定レベルに応じて副一次電流通電時間調整手段13dが副一次電流通電時間T2(但し、T2<T1)を決定し、この副一次電流通電時間T2だけ副一次電流I1bを流し、適宜な副放電電圧を主放電電圧に重畳させることで、必要十分な絶縁破壊電圧を得るのである。
ここで、判定レベルに応じて副放電電圧を調整し、必要十分な絶縁破壊電圧を得るときの制御を具体的に説明する。
まず、主点火信号送出手段13aより主点火コイル11に送出される主点火信号S1がオンになるタイミング(例えば、LレベルからHレベルに立ち上がるタイミング)から遅延時間Δt(Δt=T1−T2)が経過したとき、副点火信号送出手段13bより副点火コイル12に送出される副点火信号S2をオンにする(例えば、LレベルからHレベルに立ち上げる)。これにより、主IGBT14aよりもΔtだけ遅れて副IGBT14bがオンとなり、主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始めてからΔtが経過したとき、副点火コイル12の一次コイル12aに副一次電流I1bが流れ始める(
図2に示す各波形の後段を参照)。
主点火コイル11の一次コイル11aに主一次電流I1aが流れ始めた後、点火指示信号S0により指示される主一次電流通電時間T1が経過するとき、副一次電流通電時間T2も経過することとなるため、主点火信号送出手段13aから送出される主点火信号S1および副点火信号送出手段13bから送出される副点火信号S2は同時期にオフとなり(例えば、HレベルからLレベルに下がり)、主IGBT14aおよび副IGBT14bが同時にオフとなって主一次電流I1aおよび副一次電流I1bが遮断され、古典的な電流遮断原理により主点火コイル11の二次コイル11bおよび副点火コイル12の二次コイル12bに誘起される起電力により二次電流I2が流れ、点火プラグ2の放電ギャップに高い二次電圧が印加され、点火プラグ2の放電が行われる。
ただし、副一次電流通電時間T2は、主一次電流通電時間T1よりもΔtだけ短いので、副点火コイル12の二次側に誘起される副放電電圧は、同時放電MAXの場合(前述したT1=T2となる副点火信号S2を送出した場合)よりも低くなるため、点火プラグ2の放電ギャップに印加される二次電圧は同時放電MAXの場合よりも低くなる。すなわち、遅延時間Δtを0に近づけるほど副一次電流通電時間T2は主一次電流通電時間T1に近づいて副放電電圧を高くすることができ、逆に遅延時間ΔtをT1に近づけるほど副一次電流通電時間T2は0に近づいて副放電電圧を低くできる。
したがって、運転状況に応じて判断された副放電電圧が得られるように副一次電流通電時間T2を調整すれば、必要以上に副一次電流I1bを消費することなく、点火プラグ2の絶縁破壊電圧として必要十分な二次電圧を得ることができ、着火性・燃焼安定性を維持しつつ、消費電力を抑制できる。
なお、主点火信号S1および副点火信号S2の生成・送出に必要な点火制御手段13の諸機能をエンジンコントロールユニット3に持たせれば、主一次電流I1aおよび副一次電流I2bの通電開始タイミングおよび遮断タイミングを正確に制御できるが、本実施形態のように、点火制御手段13をエンジンコントロールユニット3とは独立した機能として設ける構成においては、副一次電流通電時間T2の厳密な制御を行えない可能性がある。
例えば、運転状況によって主点火コイル11による主放電電圧を高くしたり低くしたり調整するように、エンジンコントロールユニット3からの点火指示信号S0によって指示される主一次電流通電時間T1が運転状況によって短くなったり長くなったりする場合、副一次電流通電時間調整手段13dによって決定された遅延時間Δtおよび副一次電流通電時間T2によって副IGBT14bのオン・オフ制御を行っていると、主一次電流I1aの遮断タイミングと副一次電流I1bの遮断タイミングにズレが生じて、点火プラグ2の放電開始時における絶縁破壊電圧を効果的に高めることができない可能性がある。
このような主一次電流I1aの遮断タイミングと副一次電流I1bの遮断タイミングのズレを防止するためには、主点火信号S1のOFFタイミングと同期させて副点火信号S2もOFFにする制御を行えばよい。しかしながら、主点火信号S1のOFFタイミングと同期させて副点火信号S2もOFFにする制御を行っていると、運転状況の判定レベルに対応した副一次電流通電時間T2よりも実際の副一次電流通電時間が無視できないほど長くなったり短くなったりする可能性があり、運転状況に応じた適切な副放電電圧を得られず、着火性・燃焼安定性が損なわれたり、逆に必要以上に高い副放電電圧となって、無駄に電力を消費してしまうかもしれない。
そこで、点火指示信号S0を副一次電流通電時間調整手段13dに供給して(
図1中、破線で示す)、前回の燃焼サイクルにおける主一次電流通電時間T1を副一次電流通電時間調整手段13dが記憶できるようにしておき、この記憶している前回の主一次電流通電時間T1を基準として、運転状況の判定レベルに基づき決定した副一次電流通電時間T2を実現するための遅延時間Δtを副一次電流通電時間調整手段13dが求めるのである。この遅延時間Δtが副一次電流通電時間調整手段13dより供給されると、副点火信号送出手段13bは、最新の燃焼サイクルにおいて主点火信号S1がONになってから遅延時間Δtが経過したタイミングで副点火信号S2がONとなるように制御し、主点火信号S1がOFFになるタイミングと同期させて副点火信号S2もOFFにするように制御すれば良い。
このように副点火信号S2を生成して副一次電流I1bの通電・遮断を制御すれば、運転状況の判定レベルに対応した副一次電流通電時間T2と実際の副一次電流通電時間との誤差を抑えることができ、運転状況に応じた適切な副放電電圧を得ることができる。
以上、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。