(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381012
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】チョコレートの製造方法およびその方法により製造されるチョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/00 20060101AFI20180820BHJP
A23G 1/54 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G1/54
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-168645(P2013-168645)
(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-35983(P2015-35983A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 壮志
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝美
【審査官】
市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/064747(WO,A1)
【文献】
特開2002−335863(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第01392703(GB,A)
【文献】
英国特許出願公告第00758613(GB,A)
【文献】
特開2002−199845(JP,A)
【文献】
特開平06−153799(JP,A)
【文献】
“ドライフルーツのホワイトチョコ”, [online], 2012.12.23, 小麦の贈り物, [2017.11.29 検索], インターネット<URL: http://s.webry.info/sp/17606463.at.webry.info/201212/article_2.html>
【文献】
“簡単☆手作りバレンタインチョコレート♪「ドライフルーツのメダイヨン(メダルチョコ)」”, [online], 2009.2.9, クーピー 30分クッキング〜楽しい簡単料理〜, [2017.11.29 検索], インターネット<URL: http://coopie.seesaa.net/article/113931390.html>
【文献】
“チョコレート祭り”, [online], 2012.2.19, noriのイタリア私史, [2017.11.29 検索], インターネット<URL: http://19680212.at.webry.info/201202/article_3.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
Food Science and Tech Abst(FSTA)(ProQuest Dialog)
Foodline Science(ProQuest Dialog)
CAplus/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートの製造方法であって、
モールドに液状のチョコレートを充填する充填工程、
可食固形素材をモールド内のチョコレートの上に振りかける振りかけ工程、
モールドに振動を与え、モールド内のチョコレートの上に振りかけられた可食固形素材の中の一部の素材をチョコレートに結着させる第1結着工程、
製造するチョコレートの平面形状に対応した押さえ面を用いて、チョコレートの上に振りかけられた可食固形素材を押さえ、当該可食固形素材の中の他の一部をチョコレートに結着させる第2結着工程、および
前記第2結着工程の後に、モールド内のチョコレートの上に振りかけられた可食固形素材であって、チョコレートに結着していない余剰の可食固形素材を吸い取って除去する除去工程、
を常温下において実行し、その後、
モールドごと冷却してモールド内のチョコレートを固化させ、固化後モールドから可食固形素材が結着されたチョコレートを取り出す工程、を実行することを含む、チョコレートの製造方法。
【請求項2】
前記充填工程は、20〜30℃の常温下において、溶かしてから約30℃に温度調整した液状のチョコレートをモールドに流し入れる工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のチョコレートの製造方法。
【請求項3】
前記可食固形素材は、4℃の水を比重1とした場合に、比重が0.05〜0.35の比重の軽い可食固形素材および比重が0.35〜1.50の比重の重い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のチョコレートの製造方法。
【請求項4】
前記比重の軽い可食固形素材と比重の重い可食固形素材とは、別々に振りかけることを特徴とする、請求項3に記載のチョコレートの製造方法。
【請求項5】
前記第1結着工程でチョコレートに結着させる一部の素材は、前記比重の重い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項3または4に記載のチョコレートの製造方法。
【請求項6】
前記第2結着工程でチョコレートに結着させる他の一部の可食固形素材は、主として前記比重の軽い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載のチョコレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チョコレートの製造方法に関し、特に、新規なチョコレート製品の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連するチョコレートの製造方法として、たとえば特許文献1に記載のチョコレートの製造方法がある。特許文献1に記載のチョコレートの製造方法では、冷却した押型をモールド内に挿入して具材をチョコレート生地内に押し込む工程を含んでいる。このため、製造時に冷却した押型を準備しなければならず、製造装置が複雑になる。
また、特許文献2には、チョコレートの製造方法として、低粘度チョコレートを使用した製造方法が開示されている。特許文献2に開示の製造方法では、低粘度チョコレートで固形物を挟むようにしており、製造工数が多くなる。
【0003】
さらに、特許文献3には、チョコレート表面へ熱風を吹き付けてチョコレート表面を溶かし、そこに粉体をまぶして付着させるという製造方法が紹介されている。特許文献3に開示の製造方法は、チョコレートの表層のみを溶融するように熱風の吹き付けを行わなければならない点で、製造品質の安定性に欠ける恐れがある。
特許文献4には、別の製造方法として、チョコレートに粉体を固着させるのに、水分を付着材として使用する製造方法が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4132659号公報
【特許文献2】特許第2770117号公報
【特許文献3】特許第4405104号公報
【特許文献4】特許第3094209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術の項で紹介した特許文献1〜4にかかる製造方法によって可食固形素材を加えたチョコレートを製造しようとした場合、可食固形素材をチョコレートに良好に組み付けることが困難で、その製造方法には種々の改良の余地がある。
本願発明者は、従来のチョコレートの製造方法ではない新たな製造方法によって、可食固形素材をチョコレート表面に振りかけて結着させることで、新規な食感、味わい、および、見た目を有するチョコレートおよびその製造方法を得ることを課題として、この発明を完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、チョコレートの製造方法であって、モールドに液状のチョコレートを充填する充填工程、可食固形素材をモールド内のチョコレートの上に振りかける振りかけ工程、モールドに振動を与え、モールド内のチョコレートの上に振りかけられた可食固形素材の中の
一部の素材をチョコレートに結着させる第1結着工程、製造するチョコレートの平面形状に対応した押さえ面を用いて、チョコレートの上に振りかけられた可食固形素材を押さえ、当該可食固形素材
の中の他の一部をチョコレートに結着させる第2結着工程、および
前記第2結着工程の後に、モールド内のチョコレートの上に振りかけられた可食固形素材であって、チョコレートに結着していない余剰の可食固形素材を吸い取って除去する除去工程、を常温下において実行し、その後、モールドごと冷却してモールド内のチョコレートを固化させ、固化後モールドから可食固形素材が結着されたチョコレートを取り出す工程、
を実行することを含
む、チョコレートの製造方法である。
【0007】
請求項
2記載の発明は、前記充填工程は、20〜30℃の常温下において、溶かしてから約30℃に温度調整した液状のチョコレートをモールドに流し入れる工程を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のチョコレートの製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記可食固形素材は、
4℃の水を比重1とした場合に、比重が0.05〜0.35の比重の軽い可食固形素材および
比重が0.35〜1.50の比重の重い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のチョコレートの製造方法である。
請求項4記載の発明は、前記比重の軽い可食固形素材と比重の重い可食固形素材とは、別々に振りかけることを特徴とする、請求項3に記載のチョコレートの製造方法である。
【0009】
請求項
5記載の発明は、前記第1結着工程でチョコレートに結着させる
一部の素材は、前記比重の重い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項
3または
4に記載のチョコレートの製造方法である。
請求項
6記載の発明は、前記第2結着工程でチョコレートに結着させる
他の一部の可食固形素材は、主として前記比重の軽い可食固形素材を含むことを特徴とする、請求項
3〜
5のいずれか一項に記載のチョコレートの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、製造時において、チョコレートへの熱風処理や使用機械の冷却を必要とせず、常温下において、可食固形素材をチョコレートに結着させることができる。その結果、従来にない食感、味わい、および、見た目を有するチョコレートを製造することができる。
更に、これまでは量産化が困難であった、可食固形素材を結着させたチョコレートを、簡便な設備にて低コスト且つ安全に、また、大量かつ安定的に製造することができ、流通菓子として広く市場に導入することができる。
【0013】
特に、チョコレートを、板チョコ形状とすることにより、いわゆる「板チョコ」のカテゴリーの中により秀でた「プレミアム系板チョコ」という新たなジャンルを創出することができ、板チョコ市場全体の活性化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る製造工程を、工程毎に図解的に示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施形態について詳細に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る製造工程を、工程毎に図解的に示した工程図である。
図1を参照して説明すると、この発明に係るチョコレートの製造方法は、
S1:モールドを準備する工程、
S2:モールドにチョコレートを充填する工程、
S3:トッピング工程(可食固形素材を振りかける工程)、
S4:第1結着工程、
S5:第2結着工程、
S6:余剰素材除去工程、
が含まれている。
【0016】
この実施形態の特徴の1つは、上述のステップS1〜ステップS6の全ての工程(ステップS6後の冷却工程を除く)を、20〜30℃の常温下において行うことである。このため、製造設備を加熱したり、冷却したり、製造素材に熱風を吹き付ける等の設備が不要であり、常温下で安全かつ安定した製造を行えるという利点がある。
以下、各工程別に、具体的に説明をする。
【0017】
S1:モールド準備工程
この工程では、チョコレートを製造するモールド(型)10を準備する。モールド10には、液状のチョコレートを収容する収容凹部11が形成されている。収容凹部11は、たとえば平面視が略パスポートサイズの板状チョコレートを形成するために必要な凹部とされている。
【0018】
S2:充填工程
この工程では、モールド10の収容凹部11へ液状のチョコレート12を充填する。
充填するチョコレート12は、一度40℃以上に温めて溶かしてから約30℃に温度調整した液状のチョコレート12を用いる。
S3:振りかけ工程
この工程では、例えば複数の可食固形素材21,22をモールド10の収容凹部11に充填されたチョコレート12の上に振りかける。なお、本発明の可食固形素材は、20〜30℃の常温下において固体である可食素材であり、形状は長辺が0.025mm〜20mmの小片状の塊である。
【0019】
複数の可食固形素材21,22は、比重の軽い可食固形素材22および比重の重い可食固形素材21を含んでいるのが好ましい。これら可食固形素材21,22の振りかけは、比重の軽い可食固形素材22と比重の重い可食固形素材21とで、別々に振りかけを行うのが好ましい。あるいは、種類の異なる可食固形素材は、それぞれ、別々に振りかけるのが好ましい。
【0020】
なお、本発明で使用する比重の軽い可食固形素材22の比重は、4℃の水を1とした場合、0.05〜0.35であり、比重の重い可食固形素材21の比重は0.35〜1.50である。
そして、各種類の可食固形素材21,22が、チョコレート12の表面12F上に万遍なく振りかけられる(トッピングされる)ようにする。
【0021】
比重の軽い可食固形素材22としては、一例として、ストロベリーフリーズドライ品等のフリーズドライ食品(果実・野菜・菓子・肉・魚介類など)、またパフなどの膨化食品、マンゴークランチ、ワッフルクランチ等を例示することができる。
比重の重い可食固形素材21としては、一例として、クッキークランチ、オレンジピールダイスカット品、アーモンドクランチ、コーヒー豆クランチ、ヘーゼルナッツクランチ、グレープパウダー、ドライレーズン、マカダミアダイスカット品、アーモンドプラリネ、岩塩、ドライストロベリーダイスカット品、パインダイスカット品、ドライクランベリー1/8カット品、グリーンペッパー、ミルクチップ、マロンチップ、ビスケットクランチ、ドライアップルダイスカット品、クレープクランチ、チョコレートチップ、各種の乾燥果実、乾燥野菜、菓子(キャンディ、グミ、錠菓、チョコレート、焼き菓子、チューインガムなど)豆類、肉類加工品、魚介類の加工品、豆類の加工品、サプリメント、カプセル食品等を例示することができる。
【0022】
なお、一例を挙げると、ストロベリーフリーズドライ品の比重は0.088、マンゴークランチは0.33、オレンジピールダイスカット品は0.72、アーモンドクランチは0.49〜0.63、チョコレートチップは1.50である。
振りかけ工程においては、素材が均一に近い状態に散らばるような振りかけ設備を用いて、可食固形素材21,22をチョコレート12の表面12F上に振りかける。
【0023】
これにより、チョコレート12の表面12Fには、複数種類の可食固形素材が、万遍なくほぼ均一に振りかけられた状態となる。
なお、この実施形態では、可食固形素材は、複数種類が振りかけられる例を説明しているが、単一の可食固形素材を振りかけるようにしてもかまわない。
S4:第1結着工程
この工程では、モールド10に振動を与え、モールド10内のチョコレート12の上に振りかけられた可食固形素材21,22の中の特定の素材、より具体的には比重が重く、形状的にチョコレート12に沈み込みやすい可食固形素材21を振動によりチョコレート表面12Fに付着させてチョコレート表面12Fに結着させる。
【0024】
モールド10に振動を与えたとき、振りかけられた比重の軽い可食固形素材22は、比重が軽いため振動によって下方へ沈まず、チョコレート表面12Fに付着して結着することは少ない。
なお、本工程におけるモールドの振動を行わないと、大きさの比較的小さな可食固形素材21,22をチョコレート表面12Fに充分に結着させることができない。
【0025】
S5:第2結着工程
この工程は、比重の軽い可食固形素材22をチョコレート表面12Fに結着する工程である。この工程は、スタンピング工程とも称される。
この工程では、製造するチョコレート12の平面形状に対応した形状(平面視矩形)の押さえ面19を有するスタンピング機20で、チョコレート12の上に振りかけられた可食固形素材21,22を押さえる。これにより、押さえ面19で軽く押さえられた可食固形素材21,22は、チョコレート表面12Fに付着して結着する。
【0026】
なお、本工程におけるスタンピングを行わないと、比重の軽い可食固形素材22をチョコレート表面12Fに充分に結着させることができない。
S6:除去工程
第2結着工程が行われた後、振りかけられた全ての可食固形素材がチョコレート12に結着するわけではなく、チョコレート12に結着していない余剰の可食固形素材21,22も存在する。
【0027】
そこで、除去工程では、負圧吸引装置(バキューム装置)25を用いて、チョコレート12およびモールド10上に残った余分な可食固形素材21,22を吸い取って除去する。
その後、モールド10およびその収容凹部11内に収容された可食固形素材21,22が結着したチョコレート12は、冷却クーラーへ搬送され、モールド10ごと冷却されて、可食固形素材21,22が結着したチョコレート12が固化される。そしてチョコレート固化後、モールド10から可食固形素材21,22が結着したチョコレート12が取り出され、製品となる。
【0028】
なお、この実施形態で使用したチョコレート12は、一般的な原材料を、表1に示す範囲で配合したチョコレートを使用した。表1における単位は重量%である。また、チョコレートはセピアチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートなど、あらゆる形態をとることができる。
【実施例】
【0030】
次に、具体的な実施例の配合素材等について、以下説明する。
チョコレートは、上述の表1に表示した配合のチョコレートを使用した。
一方、振りかける可食固形素材としては、製品毎に、下記表2に示す素材を、表中に示す配合範囲で結着させた。なお、表2における単位は重量%である。
【0031】
【表2】
【0032】
チョコレートの形状としては、表1に示す配合範囲内のチョコレートを、35〜45gの板状チョコレートに成形し、それに対して、表2の各素材を振りかけて、9種類の製品を製造した。
なお、チョコレートの形状は板状に限られず、モールドの形状に応じて例えばブロック状などに適宜変更しても良い。またチョコレートの重量も35〜45gに限らず、例えば5〜60gとすることもできる。更に、振りかける可食固形素材は比重の軽いものと重いものが混在していた方が、噛み応えなどの食感に変化が生まれて面白いが、ほぼ同じ比重の可食固形素材を複数含む形態としても、また一種類のみの可食固形素材を用いる形態としても構わない。また、比重の軽い可食固形素材22と比重の重い可食固形素材21の振りかけを別々に行わず、同時に行っても良い。
【0033】
この発明は、以上説明した実施形態および実施例の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明によれば、可食固形素材を結着させたチョコレートを、簡便な設備にて低コスト且つ安全に、また、大量かつ安定的に製造することができ、流通菓子として広く市場に導入することができる。その結果、板チョコのカテゴリーの中に「プレミアム系板チョコ」という新たなジャンルを創出することができ、板チョコ市場全体を活性化させることができ、産業上の利用可能性が大である。
【符号の説明】
【0035】
10 モールド
11 収容凹部
12 チョコレート
12F チョコレート表面
19 押さえ面
20 スタンピング機
21 (比重の重い)可食固形素材
22 (比重の軽い)可食固形素材
25 バキューム装置