【実施例】
【0058】
実施例1:
事前にインフォームド・コンセントを得た被験者より採取した涙液におけるペリオスチン濃度の分析は、抗ペリオスチン抗体を用いるELISA法により以下のように行った。
【0059】
涙液中に存在する細胞や異物を除去する目的で速やかに遠心分離を行い、上清のみを新しいマイクロチューブに回収し、その後−80度(摂氏)で保存した。サンプルが集まったところで、ELISA法にて測定した。
【0060】
その際、涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml以上の場合と10 ng/ml未満の場合に分けて分析を行った。ここで、涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml以上の場合と10 ng/ml未満の場合とは、次のようにして分けた。まず、下記「涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml以上の場合」の方法を用いて涙液ペリオスチン濃度測定を行い、涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml未満の場合は、さらに高感度で測定できる、下記「涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml未満の場合(高感度法)」の方法を用いて、より正確に涙液ペリオスチン濃度を測定した。
【0061】
涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml以上の場合:
ELISA用96穴プレートのウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS) [137 mM 塩化ナトリウム、2.68 mM 塩化カリウム、1.47 mM リン酸二水素カリウム及び8.04 mM リン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH 7.4)]で2 μg/mlに希釈したSS18A(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100 μl注入し、25°Cで12時間以上静置して、SS18Aをウェル底に吸着させた。ウェルを洗浄液[0.05% Tween-20を含有するPBS]で3回洗浄した後、ブロッキング液[0.5% カゼイン、100 mM 塩化ナトリウム及び0.1% アジ化ナトリウムを含有する50 mM Tris緩衝液(pH8.0)]を250 μl注入し、4°Cで12時間以上静置した。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング液と同一組成の検体希釈溶液で201倍に希釈した涙液を100 μl注入し、25°Cで12時間以上静置して、涙液中のペリオスチンをウェルに吸着しているSS18Aに捕捉させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング液と同一組成の緩衝液で50 ng/mlに希釈したPODで標識されたSS17B(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100 μl注入し、25°Cで90分静置して、SS18Aに捕捉されたペリオスチンにPOD標識SS17Bを結合させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、HRPの基質液[0.8 mM TMBZ、2.5 mM 過酸化水素、30 mM リン酸水素二ナトリウム及び 20 mM クエン酸緩衝液]を100 μl注入し、25°Cで10分間反応させた後、0.7N 硫酸により反応を停止させた。その後、吸光度計を用いて450 nmの吸光度を測定した。また、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を同様に測定して、このELISA法におけるペリオスチン濃度−吸光度標準曲線を作成した。涙液を測定した吸光度を、作成した標準曲線に当てはめ、涙液中のペリオスチン濃度を算出した。
【0062】
涙液ペリオスチン濃度が10 ng/ml未満の場合(高感度法):
ELISA用96穴プレートのウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS) [137 mM 塩化ナトリウム、2.68 mM 塩化カリウム、1.47 mM リン酸二水素カリウム及び8.04 mM リン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH 7.4)]で2 μg/mlに希釈したSS18A(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100 μl注入し、25°Cで12時間以上静置して、SS18Aをウェル底に吸着させた。ウェルを洗浄液[0.05% Tween-20を含有するPBS]で3回洗浄した後、ブロッキング液[0.5% カゼイン、100 mM 塩化ナトリウム及び0.1% アジ化ナトリウムを含有する50 mM Tris緩衝液(pH8.0)]を250 μl注入し、4°Cで12時間以上静置した。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング液と同一組成の検体希釈溶液で201倍に希釈した涙液を100 μl注入し、25°Cで12時間以上静置して、涙液中のペリオスチンをウェルに吸着しているSS18Aに捕捉させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング液と同一組成の緩衝液で50 ng/mlに希釈したビオチンで標識されたSS17B(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100 μl注入し、25°Cで90分静置して、SS18Aに補足されたペリオスチンにビオチン標識SS17Bを結合させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、15,000倍に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたストレプトアビジン[streptavidin-PolyHRP40 (Stereospecific Detection Technologies社)]を100 μl注入し、25°Cで60分静置して、ビオチン標識SS17Bと結合させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、HRPの基質液[0.8 mM TMBZ、2.5 mM 過酸化水素、30 mM リン酸水素二ナトリウム及び 20 mM クエン酸緩衝液]を100 μl注入し、25°Cで10分間反応させた後、0.7 N 硫酸により反応を停止させた。その後、吸光度計を用いて450 nm(主波長)、550 nm(副波長)の吸光度を測定した。また、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を同様に測定して、このELISA法におけるペリオスチン濃度−吸光度標準曲線を作成した。涙液を測定した吸光度を、作成した標準曲線に当てはめ、涙液中のペリオスチン濃度を算出した。
【0063】
ここで、上記SS18AおよびSS17Bは、次のように作製したものである。すなわち、ウィスターラット(日本チャールスリバー株式会社)の足底部にリコンビナントペリオスチンタンパク質を注入し、3日後膝窩、鼠径、腸骨リンパ節を取り出し、Sp2/Oミエローマ細胞と融合した。生育した融合細胞株の中から2つのクローンを確立し、SS18A、SS17Bと命名した。尚、リコンビナントペリオスチンタンパク質として、Journal of Allergy Clinical Immunology, vol.118, 98−104, 2006に記載の方法によって調製したものを用いた。
【0064】
上記方法により、従来法によりアトピー性角結膜炎に罹患していると診断された被験者(AKC)と、アトピー性角結膜炎の罹患が見られない健常人(control)及び他のアレルギー性結膜炎を罹患していると診断された被験者(VKC: 春季カタル及びSAC: 季節性アレルギー性結膜炎)について、涙液中のペリオスチン濃度(ng/ml)の測定を行った結果を
図1に示す。なお、今回の解析においてはタリムス点眼液を投与中の患者については除外した。
図1に示す通り、アトピー性角結膜炎患者(AKC)( 30例)の涙液中のペリオスチン濃度の中央値は、451.0ng/mLであった。一方、健常人(control)(18例)、春季カタル(VKC)患者(6例)及び季節性アレルギー性結膜炎(SAC)患者(18例)の涙液中のペリオスチン濃度の中央値は、それぞれ、0.2ng/mL、46.1ng/mL及び10.9ng/mLであった。アトピー性角結膜炎(AKC)において、健常人(control)、春季カタル(VKC)患者および季節性アレルギー性結膜炎(SAC)患者それぞれと比較して涙液中のペリオスチン濃度が有意に高いことが確認できた(Kruskal-Wallis検定(p<0.001)後、各群をMann-Whitney検定(p<0.05))。
【0065】
上記により測定された涙液中のペリオスチン濃度に関して、母集団(涙液中ペリオスチン濃度を測定した全例(72例))からアトピー性角結膜炎を抽出しうる至適閾値(cut−off値)を探すためにReceiver−Operating−Characteristics(ROC)曲線を用いて検討を行った。すなわち、以下のようにcut−off値の設定と、設定したcut−off値を用いた場合の診断精度の測定を行った。
【0066】
先ず、涙液中ペリオスチン濃度の測定結果に基づき、ROC解析を行った。その結果、ROC曲線下面積(area under curve [AUC])は0.917(95%CI, 0.855−0.980)で統計学的に有意であり(P < 0.001、t検定)、cut−off値の候補として、87 ng/mLが設定できた。
【0067】
尚、アトピー性角結膜炎患者群(n=30)について平均値の95%信頼区間の上限値を求めたところ、上限値は1968 ng/mlであった。
【0068】
涙液中のペリオスチンタンパク質濃度のcut-off値を87 ng/mlに設定した場合、感度83.3 %、特異度88.1 %である。このことから、cut-off値を 87 ng/mlに設定した場合には、アトピー性角結膜炎を比較的高い精度で検出できることが分かった。
【0069】
本実施例においては、上記設定したcut−off値を「所定タンパク質濃度」に設定することにより、アトピー性角結膜炎を高精度で検出できることが示唆された。
【0070】
実施例2:涙液中ペリオスチン濃度とアトピー性角結膜炎の重症度との関係
本実施例においては、アトピー性角結膜炎患者由来の涙液中ペリオスチン濃度とアトピー性角結膜炎の重症度との関係を検討した。
アトピー性角結膜炎の症状の重症度と関連する指標としては、結膜増殖の程度(増殖スコア)、角膜上皮障害の有無などが挙げられる。そして、増殖スコアがより高い場合、あるいは角膜上皮障害がある場合、アトピー性角結膜炎の症状がより重症であると考えられる。
【0071】
(1) 涙液中ペリオスチン濃度と増殖スコアとの関係
図2に、実施例1に記載の方法に従って測定した下記3群の患者おける涙液中ペリオスチン(POSTN)濃度(ng/ml)を示す。
【0072】
(a) 増殖スコア(proliferation score)1-0のアトピー性角結膜炎患者 (score =1-0、7例)
(b) 増殖スコア3-2のアトピー性角結膜炎患者 (score =3-2、23例)
【0073】
ここで、増殖スコアは、次のように求めた。増殖スコアは直径1mm以上の結膜巨大乳頭がどれほどの範囲に認められたかで判断した。直径1mm以上の結膜乳頭が上眼瞼結膜の1/3以下に認められたものをScore=1とし、それ以下はScore=0とした。また、直径1mm以上の結膜乳頭が上眼瞼結膜の1/2以下に認められたものをScore=2とし、それ以上認められたものをScore=3とした。(Wakamatsu TH, Satake Y, Igarashi A, Dogru M, Ibrahim OM, Okada N, Fukagawa K, Shimazaki J, Fujishima H: IgE and eosinophil cationic protein (ECP) as markers of severity in the diagnosis of atopic keratoconjunctivitis, Br J Ophthalmol, 96:581-586, 2012)。
【0074】
したがって、「増殖スコア1-0」とは、直径1mm以上の結膜乳頭が上眼瞼結膜の1/3以下に認められたものであることを指し、「増殖スコア3-2」とは直径1mm以上の結膜乳頭が上眼瞼結膜の1/3以上に認められたものであることを指す。増殖スコアが高いことは、症状がより重いことを示す。
増殖スコア1-0の患者の涙液中ペリオスチン濃度の中央値は27.9ng/mlであり、増殖スコア3-2の患者の涙液中ペリオスチン濃度の中央値は678.8ng/mlであった。増殖スコア3-2の患者の涙液中ペリオスチン濃度は増殖スコア1-0の患者と比較して有意に高かった(p<0.001、Mann-Whitney検定)。
【0075】
このことは、涙液中ぺリオスチン濃度が高い群では、結膜に増殖性変化が見られる重症のアトピー性角結膜炎患者が多いことを示す。
【0076】
(2) 涙液中ペリオスチン濃度と角膜上皮障害の有無との関係
図3に、実施例1に記載の方法に従って測定した下記2群の患者おける涙液中ペリオスチン(POSTN)濃度(ng/ml)を示す。
【0077】
(a) 角膜上皮障害の無いアトピー性角結膜炎患者(SPK(-)、7例)
(b) 角膜上皮障害の有るアトピー性角結膜炎患者(SPK(+)、19例)
【0078】
ここで、角膜上皮障害の有無は、通常の方法に従って医師が確認した。具体的には、眼科専門医によるフルオレセイン染色を用いた細障灯顕微鏡検査によって角膜上皮障害の有無を確認した。
【0079】
角膜上皮障害の無い患者(SPK(-))の涙液中ペリオスチン濃度の中央値は130.3 ng/mlであり、角膜上皮障害の有る患者(SPK(+))の患者の涙液中ペリオスチン濃度の中央値は629.3ng/mlであった。SPK(+)の患者の涙液中ペリオスチン濃度はSPK(-)の患者と比較して有意に高かった(p<0.01、Mann-Whitney検定)。
【0080】
このことは、涙液中のぺリオスチン濃度が高い場合には、角膜上皮障害を有する重症のアトピー性角結膜炎である可能性が高いことを示す。
【0081】
上記結果を総合して検討すると、症状がより重症であるほど、アトピー性角結膜炎患者由来の涙液における涙液中ペリオスチン濃度がより高くなる傾向にあることが分かった。
【0082】
参考例1:結膜組織におけるペリオスチン発現
(1) 免疫染色
結膜組織におけるペリオスチンの発現レベルを確認するため、健常人及びアトピー性角結膜炎患者におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルを、組織染色により確認した。組織染色は、具体的には、次のように行った。
アトピー性角結膜炎患者由来の結膜巨大乳頭組織および正常結膜組織を、それぞれ文書による同意説明を行った上で外科的切除により採取した。各組織片を生理食塩水で軽く洗った後、速やかにOCTコンパウンドを用いて凍結標本ブロックを作成し、超低温冷凍庫(マイナス80度(摂氏))で保存した。これらの染色凍結標本ブロックをクリオスタットにて5μmの厚さで薄切し、スライドグラスに貼付し、標本切片を作成した。標本切片を冷アセトン液中に浸して固定した後、内因性のペルオキシダーゼの除去のため3%過酸化水素を添加したメタノール液を湿潤箱の中で10分反応させた。標本切片をPBSで5分間洗浄した後、Vectastain universal Elite ABCキット(ベクターラボラトリーズ社)に添付のブロッキング用正常血清を用いて、30分間反応させ、さらにブロッキング用正常血清を用いて3000倍に希釈した抗ペリオスチン抗体(ab14041、アブカム社)を一晩反応させた。標本切片をPBSで5分間ずつ2回洗浄した後、ビオチン化2次抗体(キット添付)を規定のとおり希釈し、30分間反応させた。標本切片を同様に洗浄し、規定通り希釈したVECTORSTAIN ABC Reagent(キット添付)を、30分間反応させた。さらに標本切片を同様に洗浄した後、発色基質(DAB substrate kit for peroxidase、ベクターラボラトリーズ社)を用いてペリオスチンタンパク質の検出を行った。対比染色としては、ヘマトキシリン液を用いた。
【0083】
図4は、結膜組織における免疫組織染色の結果を示す写真である。具体的には、アトピー性角結膜炎患者(Patient 1及びPatient 2)由来の結膜巨大乳頭組織、及び健常人(control)由来の正常結膜組織における免疫染色の結果を示す。
図4中、上段は、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の結果を示し、下段は、抗ペリオスチン (Anti-periostin) 抗体を用いた染色の結果を示す。
【0084】
上記組織免疫染色により、ペリオスチンの発現部位が茶色に染まる(
図4の下段)。染色の結果、アトピー性角結膜炎患者由来の結膜巨大乳頭においてペリオスチンタンパク質量が高いことが分かった。例えば、
図4のPatient 1及びPatient 2の下段の写真を見ると、アトピー性角結膜炎患者ではペリオスチンが強く発現していることが分かる。
一方、対照群として用いた健常人では、ペリオスチンタンパク質量がきわめて低かった(
図4のcontrolの下段)。
【0085】
(2) mRNA量
結膜組織におけるペリオスチンの発現レベルを確認するため、健常人及びアトピー性角結膜炎患者におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルを、mRNA量を測定することにより確認した。mRNA量の測定は、具体的には次のようにして行った。
【0086】
アトピー性角結膜炎患者由来の結膜巨大乳頭組織および正常結膜組織片を、1.5mLのマイクロチューブに回収し、RNA抽出用組織保存専用液(RNA later、キアゲン社)を入れて冷蔵(4度(摂氏))で一晩浸潤させた後、抽出を行うまで超低温冷凍庫(マイナス80度(摂氏))で保存した。Total RNA抽出の際、組織を専用のペッスルを用いて十分に破砕した後、1mLのISOGEN(ニッポンジーン社)で溶解し、ボルテックスにより撹拌させた。200μLのクロロホルムを加え、さらによく撹拌させた後、4度(摂氏)に冷却した遠心機で15分間、15,000rpmの条件で遠心分離を行った。この時、水層を新しい1.5mLのマイクロチューブに回収し、500μLの2-プロパノールおよび2μLグリコーゲン溶液(10mg/ml)を入れてボルテックスにより撹拌させた後、同様に10分間、15,000rpmの条件で遠心分離した。この時形成されたペレットを、上清を除去後500μLの80%エタノール溶液で洗浄し、SpeedVac(減圧濃縮装置、サーモサイエンティフィック社)を用いて完全に乾燥させた。さらにペレットを滅菌蒸留水にて溶解後、RNeasy mini kit(QIAGEN社)を用いて規定のとおりにtotal RNAのclean upおよびDNase処理を行った。滅菌蒸留水にて溶出させた各組織由来のtotal RNAは、濃度測定後、一定量(〜1μg)をiScript cDNA Synthesis Kit (バイオラッド社)を用いてcDNA合成した。これらをSYBR Green Realtime PCR Master Mix (東洋紡社)試薬およびヒトペリオスチン遺伝子(mRNA)を特異的に認識させるように設計したプライマーを用い、Bio-Rad CFX96にて各組織における遺伝子発現を定量解析した。PCRプログラムは初期活性化(95℃、1分)と、2ステップのサイクリング(変性;95℃、5秒、アニーリング/エクステンション;60℃、15秒)を組み合わせた方法を用い、サイクル数は40で設定した。この際、内標準コントロール遺伝子としてGAPDHを用い、ペリオスチン遺伝子の発現量を補正した。本検討に用いたペリオスチン遺伝子のプライマーの配列は以下のとおりである。
ペリオスチン
プライマー1:GATGGAGTGCCTGTGGAAAT (配列番号7)
プライマー2:AACTTCCTCACGGGTGTGTC (配列番号8)
【0087】
図5は、結膜組織におけるペリオスチン発現量(mRNA量)を測定した結果を示すグラフである。
図5中、AKCは、アトピー性角結膜炎の結膜巨大乳頭であり、controlは、健常人由来の正常結膜粘膜組織である。
【0088】
上記mRNA量の測定の結果、アトピー性角結膜炎患者由来の結膜巨大乳頭において、正常結膜粘膜組織と比較して、ペリオスチン遺伝子の発現レベルが亢進していることを確認できた。
【0089】
以上、実施例に示した通り、アトピー性角結膜炎の患者由来の涙液においてペリオスチンタンパク質の濃度が増加していることが見出され、被験者由来の涙液におけるペリオスチンタンパク質の濃度を分析することにより、アトピー性角結膜炎についての診断に有用な情報とすることができる。特に、アトピー性角結膜炎患者では、涙液中のペリオスチン濃度が他のアレルギー性結膜炎に比しても高値であることから、涙液中のペリオスチンタンパク質の分析値は、アトピー性角結膜炎と他のアレルギー性結膜炎を分離して検出する際に有用であることが示された。また、涙液中のペリオスチンタンパク質の濃度は、アトピー性角結膜炎の重症度に応じて増加することから、涙液中のペリオスチンタンパク質の分析値は、アトピー性角結膜炎の重症度を測定するのにも有用であることが示されたことも示された。
【0090】
さらに、参考例1における免疫組織染色及びmRNA量の測定する方法と比較して、涙液においてペリオスチンタンパク質の濃度を分析し、アトピー性角結膜炎を検出する方法は、簡便に行えることが確認できた。