特許第6381015号(P6381015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381015
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】タイヤの構造
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20180820BHJP
   B60C 5/20 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B60C17/00 A
   B60C5/20
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-7339(P2014-7339)
(22)【出願日】2014年1月19日
(65)【公開番号】特開2015-134582(P2015-134582A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】599087888
【氏名又は名称】株式会社サンフロイント
(74)【代理人】
【識別番号】100103148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝美
(72)【発明者】
【氏名】上野 秀雄
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−39914(JP,A)
【文献】 実開昭60−100205(JP,U)
【文献】 特開2002−67610(JP,A)
【文献】 特開2006−264652(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139199(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3139255(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00− 5/24
B60C 17/00−17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤと同じゴム材料で構成され、該タイヤの内部を複数の空間に仕切る少なくとも1つの支柱が立設されると共に、
前記タイヤのトレット部に強度補強用のブレーカコードが介装され、前記タイヤのサイドウオール部に強度補強用のカーカスコードが使用され、
前記支柱は前記タイヤのリムとトレット部の内周面に立設され、前記リム側に位置する前記支柱の一端は、該支柱の一端と前記リムとの間に空気層を有するさら状に形成され、走行中の車に掛かる荷重に従ってフレキシブルに変形し、上下の過重を支えることを特徴とするタイヤの構造。
【請求項2】
前記タイヤ内部の複数の空間に空気を入れるリムバルブが該空間毎に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの構造。
【請求項3】
前記タイヤ内部の複数の空間に空気を入れる共通のリムバルブが配設されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの構造。
【請求項4】
前記タイヤの本体と前記支柱は一体成型によって製造されていることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のタイヤの構造。
【請求項5】
前記支柱の一端は前記タイヤのリムに設けられた凹部に嵌入していることを特徴とする請求項2、3、又は4に記載のタイヤの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は普通自動車、バス、トラック、更には自動二輪車等に使用されるタイヤの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のモータリゼーションの発達により、普通自動車、バス、トラック、更には自動二輪車等の各種車両が道路を行き交っている。このような状況において、タイヤの機能は重要であり、強度と安全性が強く求められている。例えば、空気漏れやパンクのみならず、高速道路を走行中のバースト等は大事故に繋がる重要な問題である。
【0003】
この為、従来タイヤの強度及び安全性を確保するため、例えば接地面の強度を増し、異物の貫通を防止するブレーカコードの改良や、側面のタイヤ構造を保持するカーカスコードの改良等行われている。
例えば、特許文献1は空気入りラジアルタイヤを組み立てる際、側面のカーカスに補強材を入れ、タイヤの強度と弾性力を増加させる構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−088506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の発明はタイヤ側面の強度及び弾性力を増す技術であり、確かにタイヤ側面の強度が増し、弾性力が改善されれば、タイヤ全体の強度も増加するとも考えられる。しかし、バースト等を確実に押さえる為には不十分である。また、ブレーカコードの改良や、カーカスコードの改良についても、バースト等を確実に押さえる為には不十分である。
【0006】
そこで、本発明はバースト等の発生を確実に防止し、タイヤの強度を増すと共に、走行の安全性を確保するタイヤの構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は第1の発明によれば、タイヤと同じゴム材料で構成され、該タイヤの内部を複数の空間に仕切る少なくとも1つの支柱が立設されると共に、前記タイヤのトレット部に強度補強用のブレーカコードが介装され、前記タイヤのサイドウオール部に強度補強用のカーカスコードが使用され、前記支柱は前記タイヤのリムとトレット部の内周面に立設され、前記リム側に位置する前記支柱の一端は、該支柱の一端と前記リムとの間に空気層を有するさら状に形成され、走行中の車に掛かる荷重に従ってフレキシブルに変形し、上下の過重を支えるタイヤの構造を提供することによって達成できる。
【0008】
上記課題は第2の発明によれば、前記支柱は前記タイヤのリムとトレット部の内面間に立設されているタイヤの構造を提供することによって達成できる。
【0009】
上記課題は第3の発明によれば、前記タイヤ内部の複数の空間に空気を入れるリムバルブが該空間毎に配設されているタイヤの構造を提供することによって達成できる。
【0010】
上記課題は第4の発明によれば、前記タイヤ内部の複数の空間に空気を入れる共通のリムバルブが配設されているタイヤの構造を提供することによって達成できる。
【0011】
上記課題は第5の発明によれば、前記タイヤの本体と前記支柱は一体成型によって製造されているタイヤの構造を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、釘等の異物がタイヤに刺さり、パンク状態になった場合でも、釘等の異物が刺さった1層のみの空気が漏れ、他の層の空気圧は正常に保たれ、バーストを確実に防止し、安全性の優れたタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の自動車に使用されるタイヤの全体構成を示す図である。
図2】タイヤの断面構造を説明する図である。
図3】別実施例のタイヤの断面構造を説明する図である。
図4】更に別実施例のタイヤの断面構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の自動車に使用されるタイヤの全体構成を示す図である。同図において、本例のタイヤ1は所謂チューブレスタイヤであり、チューブに代わり高気密性のゴムシートがタイヤの内周面に形成されている。また、タイヤ1のトレット部2(路面との接触部)には所謂トレッドパターンが刻まれ、トレッドゴムを路面に密着させ、駆動力や制動力を路面に伝える。
【0015】
タイヤの側面であるサイドウォール部3には、例えばタイヤの商品名や型番等が刻まれている。また、タイヤ1のビート部4にはスチールワイヤを束ねたリング状の補強部4aが設けられ、このビート部4が付図示のホイル(例えば、アルミホイル)に嵌入し、タイヤ1をホイルを取り付ける。
尚、タイヤ1は天然ゴム又は合成ゴムを基材として、カーボンブラックやシリカ等の補強剤を充填し、柔軟で結合力の高い材料が使用されている。
【0016】
図2は上記図1に示すタイヤ1の断面構造を説明する図であり、図1のA−A断面図である。同図に示すように、本例のタイヤ1の内部には2本の支柱5及び6が立設されている。この支柱5及び6も上記タイヤ本体と同じゴム材料で形成され、タイヤ本体と同時成型が可能である。この支柱5及び6はタイヤ1のトレット部2の内面2aからタイヤ内部のリム7に延設され、タイヤ1内部を3層の空間11a〜11cに分けている。
【0017】
リム7はビート部4をホイル8に嵌入する際、タイヤ1とホイル8間に介在し、タイヤ1(ビート部4)をホイルに固定する機能を有する。また、このリム7には補強の為、スチィールワイヤ7aが環状に配設されている。
【0018】
さらに、このリム7にはリムバルブ9が取り付けられている。このリムバルブ9は空気をタイヤ1に入れる際使用され、他端は付図示の空気吸入口に連通している。本例においては、上記のように支柱5及び6によってタイヤ1の内部が3層空間11a〜11cに分かれている為、3個のリムバルブ9a〜9cが使用され、それぞれリム7の対応する位置の取り付けられている。したがって、本例においてはタイヤ1に空気を入れる際にはそれぞれのリムバルブ9a〜9cに連通する空気吸入口から空気を入れる。
【0019】
また、本例のタイヤ1においてもトレット部2のトレットゴム内部にはコードを張りあわせたブレーカコード12が介装され、更にサイドウォール部3の内部にはカーカスコード13が使用され、タイヤの強度を確保している。
尚、支柱5及び6の両端は所謂さら状のゴムが形成され、支柱5及び6がリム7から外れ、又は支柱5及び6がトレッド部2の内面から外れることを防止している。
【0020】
このように構成することによって、支柱5及び6は車が走行中にはタイヤ1に掛かる荷重に従ってフレキシブルに変形し、特に上下の過重を支える。この場合、支柱5及び6によって仕切られた各層には所定の圧力の空気が吸入されており、支柱5及び6が大きく変形することはない。すなわち、各層内部の空気圧によって支柱5及び6の形状が保持され、タイヤ1に掛かる荷重を支える。
【0021】
一方、上記走行中、例えば釘等の異物がタイヤ1に刺さり、パンク状態になった場合でも本例のタイヤ1は釘等の異物が刺さった1層のみの空気が漏れ、他の層の空気圧は正常に保たれる。例えば、同図の右層11cに釘等の異物が刺さった場合、右層のみの空気が漏れ、他の中間層11b及び左層11aの空気圧は正常に保たれる。
【0022】
したがって、例えば高速道路を走行中であっても、バーストを確実に防止することができる。この場合、右層11cの空気の抜け具合によっては、そのままある程度の距離を走行することも可能である。したがって、本例のタイヤ1はバーストを確実に防止し、安全性の優れたタイヤである。尚、パンク修理についてもパンクした一層のみについて処置すればよく、タイヤ1の修理も容易となる。
【0023】
また、上記説明ではタイヤ1の右層11cに釘等の異物が刺さった場合について説明したが、右層11cに限らず中間層11b、又は左層11aに異物が刺さった場合も同様であり、異物が刺さった1層のみの空気が漏れ、他の層の空気圧は正常に保たれ、バーストを確実に防止することができる。
【0024】
次に、本発明の他の実施例を説明する。図3は他の実施例を説明する図であり、先に説明したタイヤ1とはリムバルブの数が異なる。すなわち、リムバルブは共通のリムバルブ10を使用してタイヤ14の各層に空気を供給する構成である。以下、具体的に説明する。
【0025】
図3において、本例で使用するリムバルブ10は3層に共通して空気を送るバルブであり、先端において、10a〜10cの3本に分かれ、それぞれ対応する左層11a、中間層11b、右層11cに空気を供給する。したがって、本例によればリムバルブ10の他端の空気吸入口からの1回の処理によってタイヤ1の各層に空気を入れることができる。
【0026】
尚、本例のタイヤ14の他の構成は前述のタイヤ1と同様であり、トレット部2のトレットゴム内部にはコードを張りあわせたブレーカコード12が介装され、サイドウォール部3の内部にはカーカスコード13が使用され、タイヤの強度を確保している。
【0027】
したがって、本例のタイヤ14においても、釘等の異物がタイヤ14に刺さり、パンク状態になった場合、前述と同様釘等の異物が刺さった1層のみの空気が漏れ、他の層の空気圧は正常に保たれ、バーストを確実に防止し、安全性の優れたタイヤである。
【0028】
尚、タイヤ1及び14の上記説明では、タイヤ1又は14の内部に立設した支柱は、5及び6の2本であったが、例えば1本でもよく、また3本以上であってもよい。
【0029】
また、上記説明では、支柱5及び6の両端は所謂さら状のゴムが形成され、支柱5及び6がリム7からの外れを防止しているが、例えば支柱5及び6とリム7との取り付けを、リム7に形成した凹部に支柱5及び6の一端を嵌入する構成としてもよい。
【0030】
図4はこの構成を説明する図であり、支柱5の一端5aはタイヤのリム7に設けられた凹部7bに嵌入し、支柱6の一端6aもタイヤのリム7に設けられた凹部7bに嵌入している。このように構成することによって、支柱5及び6の破損を防止し、より安全性の優れたタイヤとすることができる。
【0031】
さらに、本例のタイヤ1又は14を装着する車両は、普通自動車に限らず、バス、トラック、自動二輪車等の各種車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・タイヤ
2・・・トレット部
2a・・内面
3・・・サイドウォール部
4・・・ビート部
5、6・・支柱
5a、6a・・支柱の一端
7・・・リム
7b・・溝8・・・ホイル
9・・・リムバルブ
9a〜9c・・リムバルブ
10・・リムバルブ
10a〜10c・・リムバルブ
11a・・左層
11b・・中間層
11c・・右層
12・・ブレーカコード
13・・カーカスコード
14・・タイヤ
図1
図2
図3
図4