特許第6381021号(P6381021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381021
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】パッケージおよびパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20180820BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01L23/02 Z
   H01L23/06 B
   H01L23/04 E
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-115548(P2014-115548)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-230937(P2015-230937A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】大内 利枝佳
(72)【発明者】
【氏名】石井 康博
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−207056(JP,A)
【文献】 特開昭48−015472(JP,A)
【文献】 特開2003−163300(JP,A)
【文献】 特開平07−202053(JP,A)
【文献】 特開平06−236934(JP,A)
【文献】 特開平08−125055(JP,A)
【文献】 特開2005−019897(JP,A)
【文献】 実開昭60−092839(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/04
H01L 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路を気密封止するパッケージであって、
上部が開いた金属製の筐体と蓋とを備え、
前記筐体は、壁面に複数のリード端子を封着するガラス部を有し、
前記ガラス部は、当該ガラス部の上側にある前記壁面の垂直方向の厚さが、前記筐体と前記蓋とのシール工程中における当該ガラス部を形成するガラスと前記壁面を形成する金属との温度差が、当該ガラスの熱伝導率および熱膨張係数をもとに算出された当該ガラスの耐熱衝撃温度を超えない厚さになるように、前記壁面に形成されている
ことを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
ガラス部の奥行は、筐体の内側に突き出たリード端子の長さに合わせて設定されている
請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
ガラス部は、当該ガラス部の垂直方向の中心より上側にリード端子が設置されるように形成されている
請求項1または請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
筐体の壁面とガラス部との界面が波型に形成されている
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項5】
筐体の内側の四隅に柱の形状を有する
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
上部が開いた金属製の筐体と蓋とにより集積回路を気密封止するパッケージの製造方法であって、
複数のリード端子を封着可能なガラス部を前記筐体の壁面に形成する際に、前記筐体と前記蓋とのシール工程中における当該ガラス部を形成するガラスと前記壁面を形成する金属との温度差が、当該ガラスの熱伝導率および熱膨張係数をもとに算出された当該ガラスの耐熱衝撃温度を超えないように、当該ガラス部の上側にある前記壁面の垂直方向の厚さを決定し、
当該ガラス部の上側にある前記壁面の垂直方向の厚さが決定した前記厚さになるように、当該ガラス部を前記壁面に形成する
ことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項7】
ガラス部の奥行を、筐体の内側に突き出たリード端子の長さに応じた長さにする
請求項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項8】
筐体の壁面に設けられた端子封着穴に、封着するリード端子の上側と下側とに分割して成形した予備形成ガラスを嵌め込んで前記筐体と共に焼成することにより、ガラス部を前記壁面に形成する
請求項6または請求項7に記載のパッケージの製造方法。
【請求項9】
分割された上側の予備形成ガラスの垂直方向の厚さを、下側の予備形成ガラスの垂直方向の厚さよりも薄く成形する
請求項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項10】
筐体の壁面とガラス部との界面を波型に形成する
請求項から請求項のうちのいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高集積回路をハーメチックシールするパッケージおよびパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージの一例として、特許文献1には、金属容器の底部または側壁部に複数のリード端子封着穴(以下、単に端子封着穴という)を設け、このリード端子封着穴にガラス材を用いてリード端子を気密封着する方式が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された方式は、リード端子毎に端子封着穴を設ける。この方式では、IC(Integrated Circuit)等の金属パッケージを設計する際に一度に収容できるリード端子の本数に限界がある。例えば、サイズが□50mmである、コバールの金属パッケージでは、パッケージの壁面に空けられた端子封着穴を必要リード端子の本数に応じて開口した場合、1辺あたりのリード端子の本数は38本が限界である。パッケージは4辺からリード端子を出す構造であるため、例えば、ピン総数が352ピンの場合は、1穴に対して88(=352/4)本のリード端子を入れる必要がある。金属パッケージで外部端子を増やすためには、1つの端子封着穴に複数本のリード端子を入れる必要がある。
【0004】
特許文献2には、1つの端子封着穴に導体を複数本封着できる金属パッケージの構造が記載されている。しかし、特許文献2に記載された金属パッケージでは、導体はリードの形状ではなくセラミック上にメタライズされている。従って、例えば、IC等の金属パッケージなどのようにパッケージの壁面にガラス封止の枠を設け、その中に導体がメタライズされたセラミック基板を通した場合、その金属パッケージを搭載するマザーボードへの接続手段がない、またはマザーボードへの接続が非常に不便である。その理由は、セラミック基板の配線では、はんだ付けによるマザーボードへの搭載ができず、また、ワイヤボンディングする場合は表面処理を変更しなければならないからである。パッケージ内側の配線接続をワイヤボンディングとした場合には、パッケージの内側に庇のように水平に突き出たセラミック基板にボンディングする必要がある。しかし、この場合、1つのセラミック基板に対して複数本のワイヤを接続するため、ボンディング荷重や超音波などによるセラミック基板の破損が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−163300号公報
【特許文献2】特開2007−242379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端子封着穴を拡げてリード端子を複数本配置できるようにガラスで封止することは可能である。しかし、サイズが□50mmであるような大型パッケージでは、パッケージ全体の熱容量が大きくなる。そのため、そのような大型パッケージでは、筐体の壁上面と蓋とをシールする際に、パッケージ内部の部品の温度を耐熱温度以下に抑えたまま壁上面を加熱することが難しく、はんだ付けシール工法を採用できない。従って、そのようなパッケージでは、壁上面と蓋との接合には局所加熱のシール方法を採用せざるを得ない。
【0007】
金属の熱伝導率とガラスの熱伝導率に大きな差があるため、リード端子をガラス(以下、封着用ガラスという)で封着するパッケージでは、局所加熱のシール工程において、金属の膨張に封着用ガラスが追随せず、封着用ガラスが破損したり、封着用ガラスと金属との界面が剥離したりする可能性がある。また、そのようなパッケージは、シール工程で破損や剥離が発生しなくとも、真空引きや、加圧試験などに耐えることが難しい。
【0008】
そこで、本発明は、高集積回路を気密封止する場合でも耐圧性をより高く維持できるパッケージおよびパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるパッケージは、集積回路を気密封止するパッケージであって、上部が開いた金属製の筐体と蓋とを備え、筐体は、壁面に複数のリード端子を封着するガラス部を有し、ガラス部は、当該ガラス部の上側にある壁面の垂直方向の厚さが、筐体と蓋とのシール工程中における当該ガラス部を形成するガラスと壁面を形成する金属との温度差が、当該ガラスの熱伝導率および熱膨張係数をもとに算出された当該ガラスの耐熱衝撃温度を超えない厚さになるように、壁面に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によるパッケージの製造方法は、上部が開いた金属製の筐体と蓋とにより集積回路を気密封止するパッケージの製造方法であって、複数のリード端子を封着可能なガラス部を筐体の壁面に形成する際に、筐体と蓋とのシール工程中における当該ガラス部を形成するガラスと壁面を形成する金属との温度差が、当該ガラスの熱伝導率および熱膨張係数をもとに算出された当該ガラスの耐熱衝撃温度を超えないように、当該ガラス部の上側にある壁面の垂直方向の厚さを決定し、当該ガラス部の上側にある壁面の垂直方向の厚さが決定した厚さになるように、当該ガラス部を壁面に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高集積回路を気密封止する場合でも耐圧性をより高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるパッケージの第1の実施形態の構成を示す説明図である。
図2】本発明によるパッケージの断面図である。
図3】金属部とガラス部との界面の形状の例を示す説明図である。
図4】ガラス部の設置位置の例を示す説明図である。
図5】シール工程中における、金属部とガラス部の温度の測定結果の一例を示す説明図である。
図6】本発明によるパッケージの主要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態1.
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明によるパッケージの第1の実施形態の構成を示す説明図である。図1には、パッケージの正面図が示されている。
【0015】
図2は、本発明によるパッケージの断面図である。図2には、リード端子の長手方向に切断したパッケージの断面図が示されている。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明によるパッケージは、筐体10と、蓋7とを備える。筐体10は、金属部1、ガラス部2およびリード端子3を有する。筐体10は、上部が開いている。
【0017】
金属部1は、筐体10の底面および壁面を形成する。なお、本実施形態では、金属部1の材料としてコバールを用いるが、耐食性を有する金属であればその他の金属であってもよい。
【0018】
筐体10の壁面には、予め、リード端子3を複数挿貫するための横長の穴(図1に示す端子封着穴11)が空けられている。図1には、横長の長方形の穴が示されているが、金属部1とガラス部2との界面が連続した波型(例えば、図3(a)に示すような、半円が連続したような形状)になっていてもよい。このように界面を波型にすることにより、シール工程における金属部1の膨張による圧力が各山(または各谷)に分散され、金属部1とガラス部2との界面がより剥離しづらくなる。なお、図3(b)に示すように、金属部1とガラス部2との界面のうち上側の界面のみが連続した波型になっていてもよい。
【0019】
なお、金属部1からガラス部2への熱伝達が悪い場合や、金属部1およびガラス部2のそれぞれの熱伝導率に差がある場合には、金属部1とガラス部2との間に温度差が生じる。そのため、金属部1とガラス部2との熱膨張係数がほぼ同じであっても、金属部1とガラス部2との間に温度差が生じ、その温度差が限界値(以下、限界温度差という)を超えると、ガラス部2が、熱衝撃により破損したり、剥離したりする可能性がある。そこで、本実施形態では、局所加熱によるシール工程において金属部1とガラス部2との温度差が限界温度差を越えないように、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離を設定する。
【0020】
ガラス部2は、封着用ガラスであって、リード端子3を封着するために端子封着穴11の内部に固着される(図2参照)。ガラス部2の材料として、Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2等の粉末ガラスが使用される。図2に示すように、リード端子3の下側のガラス部2の奥行(図2における水平方向の長さ)は、リード端子3の筐体10の内部に突き出た部分を支えることができるように、当該突き出た部分の長さに合わせて設定される。本実施形態では、ガラス部2の奥行は、リード端子3の筐体10の内部に突き出た部分と同じ長さに設定される。
【0021】
ここで、ガラス部2の形成方法を説明する。ここでは、ガラス部2を、特許文献1に示されるような一般的な封着用ガラスのように円筒状ではなく、図3(a)に示すような形状に形成する方法を説明する。
【0022】
まず、端子封着穴11に対応する形状が形成できる金型に押し込まれた粉末ガラスに、圧力(例えば、数キログラム)を掛けることにより成形されたガラス(以下、予備形成ガラスという)を準備する。
【0023】
このとき、例えば、蓋側と底側(リード端子3より上側と下側)で分割された予備形成ガラスを準備し、この予備形成ガラスを半円を連続させた形状とする。なお、このとき、リード端子のピッチが焼成時にずれにくいように、蓋側と底側の界面を形成してもよい。例えば、蓋側と底側との界面が直線である場合には、焼成時に、蓋側と底側との間に設置されたリード端子間の隙間に流れ込んだガラスがピッチをずらしてしまう可能性がある。そこで、例えば、リード端子間の隙間を埋めるように、予備形成ガラスの蓋側と底側の界面を波型にしてもよい。それにより、各リード端子を確実に位置決めすることができる。また、予備形成ガラスを蓋側と底側で分割することにより、上述した、リード端子3より下側のガラス部2の奥行の設定を、容易に行うことが可能となる。
【0024】
次に、端子封着穴11に予備形成ガラスを嵌め込み、筐体10と共に焼成する。
【0025】
なお、焼成は、粉末ガラスが溶ける温度まで上昇できるならバッチ炉で行ってもリフロー炉で行っても構わない。また、焼成時に溶融したガラスが流れ落ちてしまわないように、ガラスを抑える治具を用いてもよい。
【0026】
焼成後、ガラス全体にめっき処理が施される。一般的に、このめっき処理では、電解Niで2マイクロメートル(以下、umと表記する)〜6umめっきされた後に、電解Auで2um〜6umめっきされる。
【0027】
このようにして、図3(a)に示すようなガラス部2が形成される。
【0028】
リード端子3は、パッケージの内部に設置された搭載部品5と、ワイヤ4を介して接続される。
【0029】
パッケージ内部への部品搭載は、次のようにして行われる。
【0030】
まず、セラミック基板などに部品(搭載部品5)が搭載され、当該セラミック基板が導電性接着剤6によりパッケージ内部に固定される。そして、セラミック基板と、筐体10の内側に突き出たリード端子3とがワイヤボンディングなどで電気的に接続される。最後に、ヘリウムなどの不活性ガスが充填されながら、蓋7がレーザシールによって溶接される。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態では、パッケージは、端子封着穴11を横長に設計し、1つの端子封着穴11に対し複数のリード端子3を挿貫できるように設計されている。従って、狭ピッチを実現でき、パッケージのピン総数を増やすことができる。また、蓋7とシールされる金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離を、局所加熱によるシール工程において金属部1とガラス部2との温度差が限界温度差を越えないように設定する。それにより、局所加熱によるガラス部2の破損や剥離を回避することができる。つまり、高集積回路を気密封止でき、かつ耐圧構造を有するパッケージを実現することができる。
【0032】
また、本実施形態では、パッケージ内部に突き出たリード端子3の長さに合わせて、リード端子3の下側のガラス部2の奥行が設定される。それにより、パッケージ内部に突き出たリード端子3を下側から支えることができるので、1つのリード端子3に対して複数本のワイヤを接続した場合でも、ボンディング荷重などによる破損を回避することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離は、金属部1とガラス部2との限界温度差を考慮して設定されているが、ガラス部2のクラックも考慮するようにしてもよい。例えば、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離について、金属部1がガラス部2を潰す方向に撓みづらい高さを求め、求めた高さを採用するようにしてもよい。そのような形態によれば、ガラス部2の上側にある金属部1が外圧等により撓むことを回避することができ、ガラス部2にクラックが入りづらくなる。つまり、真空引きや、加圧試験などに耐え得るパッケージを実現することができる。
【0034】
また、リード端子3を、ガラス部2の厚み方向(図2における垂直方向)の中心線より上側に設置するようにすることが望ましい。その理由は、ガラスは熱伝導率が低いので、リード端子3の上側のガラス部2の厚みを小さくすることにより、シール部分からの熱がリード端子3に伝わりやすくなる。つまり、金属部1の温度上昇を抑えることができ、局所加熱によるシール工程において金属部1とガラス部2との温度差が限界温度差を越えにくくなる。
【0035】
実施例1.
次に、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0036】
ここでは、ガラス部2のガラスの構造がNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2であるときの、コバールで形成された金属部1の厚み(具体的には、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離)の策定方法を、以下の参考文献1〜6に記載されたデータを参照して説明する。また、ここでは、全体の厚みが5mm、大きさが□50mmのパッケージを例にする。
【0037】
[参考文献1]
“ガラス板 技術資料”、[online]、[平成26年5月16日検索]、インターネット<URL:http://www.sekiyarika.com/ita/ita_05.html>
[参考文献2]
“板ガラスの組成と一般的性質”、[online]、[平成26年5月16日検索]、インターネット<URL:http://glass-catalog.jp/pdf/g01-010.pdf>
[参考文献3]
“ホウケイ酸ガラスの熱特性”、[online]、英興株式会社、[平成26年5月16日検索]、インターネット<URL:http://www.duran-glass.com/feature/heat.html>
[参考文献4]
“ホウケイ酸ガラス関連製品 表3 物理的性質 IWAKI TE-32”、[online]、明城科学工業株式会社、[平成26年5月16日検索]、インターネット<URL:http://www.meijo-glass.co.jp/seihin/seihin_2.html>
[参考文献5]
“ガラスQ&A”、[online]、日電理化硝子株式会社、[平成26年5月16日検索]、インターネット<URL:http://www.nichiden-rika.com/data/qa>
[参考文献6]
“電子部品用ガラス 第25版 カタログ”、日本電気硝子株式会社
【0038】
構造がNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2であるガラス(以下、単にNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2という)は、一般的な耐熱ホウケイ酸ガラス(以下、単にホウケイ酸ガラスという)より熱膨張係数が大きく、平均熱膨張係数は、42.5×10^-7/℃(30-380℃)である(参考文献1参照)。
【0039】
参考文献2には、板ガラスの一般的性質として、熱伝導率および線膨張率が次のように示されている。
【0040】
熱伝導率 1W(/m・K){0.86Kcal/mh℃}(0℃)
線膨張率 8.5×10−6/℃(常温〜350℃)
【0041】
参考文献3には、ホウケイ酸ガラスの熱特性が次のように示されている。
【0042】
熱線膨張係数 α(20-300℃) 3.25×10-6K-1
熱伝導率 λ(90℃) 1.2 W/mk
【0043】
参考文献4には、ホウケイ酸ガラスの物理的性質が次のように示されている。
【0044】
熱伝導率(25℃) (cal/cm・sec・℃) 0.0026
熱伝導率(100℃) (cal/cm・sec・℃) 0.0030
線膨張係数(0〜300℃) 32.5×10-7/℃
【0045】
参考文献1〜4に示された上記データ、およびNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2とホウケイ酸ガラスとの組成がほぼ同じであることから、Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2の熱伝導率を、ホウケイ酸ガラスとほぼ同じ(1.2W/m/k)と推定した。
【0046】
次に、Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2の耐熱衝撃温度を一般情報より推定する。一般的に、熱膨張係数が小さいガラスほど、急激な温度変化に耐えられる、つまり耐熱衝撃温度が高い(参考文献5参照)。つまり、熱膨張係数から耐熱衝撃温度を推定することができる。ここで、Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2とホウケイ酸ガラスとは、熱伝導率がほぼ同じで、熱膨張係数のみが異なるため、熱膨張係数の比からNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2の耐熱衝撃温度を推定することができる。
【0047】
Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2より熱膨張係数が低く、熱伝導率が高いテンパックスフロート(登録商標)の、板厚3.8mm以下の場合の耐熱衝撃温度は175℃である(参考文献6参照)。
【0048】
参考文献6に記載されたテンパックスフロートのデータから、リード端子3の上側のガラス部2の厚みと同じ板厚のテンパックスフロートの耐熱衝撃温度は、175℃と推定できる。なお、リード端子3の上側のガラス部2の厚みは、後述するように0.9mmである。
【0049】
Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2とホウケイ酸ガラスとの耐熱衝撃温度の熱膨張係数比は、
【0050】
テンパックス/Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2=32.5/42.5
【0051】
である。
【0052】
上記熱膨張係数比から、Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2の耐熱衝撃温度を約135℃と推定した。そして、この耐熱衝撃温度をコバールとNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2の限界温度差と仮定した。
【0053】
次に、この限界温度差を考慮して、蓋7と筐体10とがシールされる金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離を設定する。例えば、当該距離を長く設定することにより、金属部1の体積が大きくなり(熱容量が大きくなり)、金属部1とガラス部2との温度差を開きにくくすることができる。
【0054】
本実施例では、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離を1.2mmとした。図4は、ガラス部2の設置位置の例を示す説明図である。図4(a)には、本発明を適用する前のパッケージの正面図が示されている。図4(b)には、本発明を適用したパッケージの正面図が示されている。なお、図4に示す白抜き矢印は、金属部1とガラス部2との界面に発生する熱による応力を示す。また、矢印の長さは、応力の強さを表す。図4に示すように、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離(図4に示す距離e)を1.2mmと設定することにより、金属部1とガラス部2との温度差が開きにくくなり、金属部1とガラス部2との界面に発生する熱による応力が小さくなる。
【0055】
リード端子3の、パッケージの厚み方向(図4における垂直方向)の設置位置は、一般的にパッケージの厚み方向の中心に設定される。そのため、金属部1の壁上面からガラス部2の界面までの距離を0.8mmから1.2mmにすると、リード端子3の上側のガラス部2の厚み(図4に示す距離a)が、1.0mmから0.9mmへと薄くなる。つまり、リード端子3は、ガラス部2の厚み方向の中心線より上側に配置されることになる。これにより、上述したように、シール部分からの熱がリード端子3に伝わりやすくなり、金属部1とガラス部2との温度差がより開きにくくなる。このようなリード端子3の配置は、リード端子3より蓋側と底側で分割した予備形成ガラスを用いることにより、より容易に実現される。例えば、蓋側の厚みが底側の厚みより薄く分割された予備形成ガラスを準備すればよい。
【0056】
シール工程中に、金属部1とガラス部2との界面付近に熱電対を貼り付けて、金属部1とガラス部2の温度を測定したところ、図5に示すように、ガラス部2の温度が135℃以下であることが確認できた。図5は、シール工程中における、金属部1とガラス部2の温度の測定結果の一例を示す説明図である。図5には、ガラス部2の上側にある金属部1の右端、中央右、中央左、左端(図4(b)における右端、中央右、中央左、左端)、およびガラス部2の中央左、中央右(図4(b)における中央左、中央右)における温度の測定結果を表すグラフが示されている。この温度測定では、予めシールされた蓋7と筐体10のシール部分と、ガラス部2とに熱電対を貼り付け、シール工程の条件でYag(Yttrium Aluminum Garnet)レーザをシール部分に照射して直接温度を測定した。
【0057】
最後に、当該パッケージをリークテストに供したが、問題なく合格した。
【0058】
なお、本実施例では、ガラス部2の構造がNa2O-Al2O3-B2O3-SiO2である場合を例にしたが、ガラス部2にその他のガラスを採用してもよい。その場合は、採用したガラスの熱伝導率および熱膨張係数から当該ガラスの耐熱衝撃温度を求めればよい。
【0059】
また、本実施例では、パッケージの全体の厚みが5mm、大きさが□50mmである場合を例にしたが、局所加熱のシール方法を採用するパッケージであれば、パッケージの厚み、大きさはそれ以外のサイズであってもよい。また、リード端子のピッチはいくつであってもよい。つまり、1つの端子封着穴に封着するリード端子の本数はいくつあってもよい。
【0060】
また、金属部1の熱伝導率とガラスの熱伝導率との差をより小さくするために、金属部1の熱容量をより大きくする(体積をより大きくする)ことが望ましい。例えば、切削でパッケージの形状を製作する場合には、金属部1の熱容量を大きくするために、筐体10の内側の四隅に柱の形状を残しておくことが望ましい。それにより、ガラス部2が破損したり、金属部1とガラス部2との界面が剥離したりすることをより回避しやすくなる。
【0061】
本発明は、特により多くのピンの搭載を要求される高集積回路における分野に適する。
【0062】
図6は、本発明によるパッケージの主要部を示す説明図である。図6に示すように、本発明によるパッケージは、集積回路を気密封止するパッケージであって、上部が開いた金属製の筐体10と蓋7とを備え、筐体10は、壁面に複数のリード端子(図1に示すリード端子3に相当)を封着するガラス部2を有し、ガラス部2は、当該ガラス部2の上側にある壁面の垂直方向の厚さが、当該ガラス部2を形成するガラスと壁面を形成する金属(図2に示す金属部1に相当)との温度差の限界値に応じて決定された厚さになるように、壁面に形成されている。
【0063】
そのような構成によれば、狭ピッチを実現でき、パッケージのピン総数を増やすことができるとともに、シール工程における局所加熱によるガラス部2の破損や剥離を回避することができる。つまり、高集積回路を気密封止でき、かつ耐圧構造を有するパッケージを実現することができる。
【0064】
また、ガラス部2の上側にある壁面の垂直方向の厚さは、筐体10と蓋7とのシール工程中における当該ガラス部2を形成するガラスと壁面を形成する金属との温度差が、当該ガラスの熱伝導率および熱膨張係数をもとに算出された当該ガラスの耐熱衝撃温度を超えない厚さに設定されていてもよい。そのような構成によれば、ガラス部2と金属部1との温度差の限界値を正確に求めることができ、シール工程における局所加熱によるガラス部2の破損や剥離を確実に回避することができる。
【0065】
また、ガラス部2の奥行は、筐体10の内側に突き出たリード端子の長さに合わせて設定されていてもよい。そのような構成によれば、筐体10の内部に突き出たリード端子3を下側から支えることができるので、1つのリード端子3に対して複数本のワイヤを接続した場合でも、ボンディング荷重などによる破損を回避することができる。
【0066】
また、ガラス部2が、当該ガラス部2の垂直方向の中心より上側にリード端子3が設置されるように形成されていてもよい。そのような構成によれば、シール部分からの熱がリード端子3に伝わりやすくなる。つまり、金属部1の温度上昇を抑えることができ、局所加熱によるシール工程において金属部1とガラス部2との温度差が限界温度差を越えにくくなる。
【0067】
また、筐体10の壁面とガラス部2との界面が波型に形成されていてもよい。そのような構成によれば、筐体10の壁面を形成する金属の膨張による圧力が各山(または各谷)に分散され、壁面を形成する金属とガラス部2との界面がより剥離しづらくなる。
【0068】
また、筐体10の内側の四隅に柱の形状を有してもよい。そのような構成によれば、ガラス部2が破損したり、筐体10の壁面とガラス部2との界面が剥離したりすることをより回避しやすくなる。
【符号の説明】
【0069】
1 金属部
2 ガラス部
3 リード端子
4 ワイヤ
5 搭載部品
6 導電性接着剤
7 蓋
10 筐体
11 端子封着穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6