(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0016】
ここで、本発明が解決しようとする課題を詳述する。まず、上述した非特許文献1にかかるSCPC(Single Cannel Per Carrier)通信システムにおいては、基地局の電波発信方式により2種に分類される。一つは基地局が常時電波を発信する「基地局常送システム」である。また、もう一つは指令台や移動局などの通信機器が、信号発信した場合のみ、電波を発する「基地局非常送システム」である。
【0017】
そして、非特許文献1にかかる基地局常送システムにおいては、移動局が信号発信を行うことなく、その地点での通信品質を認識することが可能である。一方で、基地局非常送システムでは、無線部が信号発信を行わない限り、その地点での通信品質を認識することができない。
【0018】
ここで、無線通信システムを導入する際には、基地局常送システム又は基地局非常送システムのいずれとするかを、総合通信局認可のもとで定めなければならない。ところが、常時電波を発信し続ける基地局常送システムは、電波の有効利用や干渉問題等の理由により、ほとんど認可されることがなく、大半は基地局非常送システムを導入しているという現状がある。
【0019】
そして、基地局非常送システムを導入したとしても、通信品質の劣化時における劣化回避方法は、必ず実装されているというものではない。通常は、通信品質の劣化が生じた場合、操作者が何度か信号発信を試みる必要がある。そして、何度か発信を試みた結果、相手局からの応答がないこと、または、相手局からの情報をもとにすることで、操作者が通信品質の劣化を認識することができる。
【0020】
仮に、通信品質の劣化を認識できたとしても、現時点で劣化を回避する方法が明確ではない。そのため、通信品質が正常に戻るまで何度か使用チャネルを切替え、信号発信を繰り返す、又は、しばらく経った後に、信号発信を行う、というような操作者の判断や、手動操作が必要であった。
【0021】
そして、基地局非常送システムでは、移動局において、基地局が発信している電波の受信状況に応じて、自局の信号発信出力を制御する「自律送信出力制御機能」が、基地局からの信号を受信していることを前提としている。そのため、移動局の発信信号の基地局受信状況に起因しておらず、適切な回線品質を維持するためには限界がある。
【0022】
ここで、移動局発信信号及び基地局折り返し信号の通信品質の組合せごとに応じた、自律送信出力制御機能の作動状況を
図17に示す。例えば、
図17の項2及び3の場合には、基地局常送システム及び基地局非常送システムのいずれも自律送信出力制御機能が動作する。一方で、
図17の項1の場合は、移動局の発信信号に対する基地局の受信状況が悪いが、基地局の発信信号に対する移動局の受信状況が良好な場合を示す。このような場合には、移動局には、基地局における悪い受信状況が伝わらず、自身における良好な受信状況のみが把握できるため、自律送信出力制御機能が作動しない。そのため、基地局における悪い受信状況を加味した送信出力制御を行うことができないという問題点がある。
【0023】
<発明の実施の形態1>
そこで、本発明の実施の形態1にかかる無線通信システムでは、以下の構成により、上記問題点を解決する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信システム1000の構成を示すブロック図である。無線通信システム1000は、基地局100と、移動局200とを備える。基地局100は、送信部110と、受信部120と、通信品質測定部130と、制御部140とを備える。受信部120は、移動局200から第1の信号を受信する。通信品質測定部130は、受信部120により受信した第1の信号に基づいて、移動局200との間の通信品質を測定して第1の通信品質情報を生成する。制御部140は、通信品質測定部130により生成された第1の通信品質情報を含めた第2の信号を生成する。送信部110は、第1の通信品質情報を含めた第2の信号を移動局200へ送信する。
【0025】
移動局200は、基地局100と無線通信を行うものである。また、本発明の実施の形態1にかかる無線通信システム1000では、移動局200は少なくとも1以上であればよい。移動局200は、送信部210と、受信部220と、抽出部230と、通信品質測定部240と、制御部250とを備える。送信部210は、基地局100へ第1の信号を送信する。受信部220は、基地局100から第2の信号を受信する。抽出部230は、受信部220により受信した第2の信号に含まれる第1の通信品質情報を抽出する。通信品質測定部240は、受信部220により受信した第2の信号に基づいて、基地局100との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する。制御部250は、第1の通信品質情報及び第2の通信品質情報に基づいて、基地局100への送信制御を行う。
【0026】
ここで、第1の信号とは、移動局200が基地局100と無線通信を行うために発信する信号である。特に、第1の信号には、移動局200と基地局100との間で非通信であった場合に、無線通信を開始するための信号や、その際の音声発信による信号を用いてもよい。また、第2の信号とは、第1の信号に対する折り返し信号である。また、第1の通信品質とは、例えば、基地局100が第1の信号の受信時に測定した電界強度、C/N比又は遅延など、無線通信の品質を表すものである。さらに、送信制御とは、移動局200から基地局100へ信号を送信する際の出力の制御であるか、チャネルの切り替え等である。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信処理の流れを示すシーケンス図である。まず、移動局200は、基地局100へ第1の信号を送信する(S11)。次に、基地局100は、移動局200から受信した第1の信号に基づいて、移動局200との間の通信品質を測定して第1の通信品質情報を生成する(S12)。そして、基地局100は、第1の通信品質情報を含めた第2の信号を移動局200へ送信する(S13)。
【0028】
続いて、移動局200は、基地局100から受信した第2の信号に含まれる第1の通信品質情報を抽出する(S14)。また、移動局200は、第2の信号に基づいて、基地局100との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する(S15)。そして、移動局200は、第1の通信品質情報及び第2の通信品質情報に基づいて、基地局100への送信制御を行う(S16)。
【0029】
このように、基地局100は第1の信号に対する折り返し信号である第2の信号に、自身が第1の信号から測定した第1の通信品質情報を含めて発信を行う。そのため、移動局200は、受信した第2の信号から上り回線の品質情報(第1の通信品質情報)を取得できる。併せて、移動局200は、受信した第2の信号から下り回線の品質情報(第2の通信品質情報)を測定する。そのため、移動局200は、上り回線及び下り回線の双方の通信品質情報を考慮して適切な送信制御を行うことができる。そして、移動局200は自身が発信した第1の信号の測定結果を、自身が測定する対象の第2の信号から取得できるため、過剰な信号のやり取りがなく、効率的である。つまり、本発明の実施の形態1により、通信負荷を高めずに、移動局側で適切な無線通信品質を維持するための適切な制御を行うことができる。
【0030】
<発明の実施の形態2>
本発明の実施の形態2は、上述した実施の形態1の具体的な実施例である。
図3は、本発明の実施の形態2にかかる無線通信システム2000の構成を示すブロック図である。無線通信システム2000は、上位系装置1と、回線制御装置2と、基地局31及び32と、移動局41及び42とを備える。無線通信システム2000は、上述したSCPC通信システムに改良を加えたものであっても良い。そして、基地局31及び32は、移動局から受信した信号に対して、異なる周波数を用いて折り返し信号を発信する機能を実装しているものとする。
【0031】
上位系装置1は、基地局31又は32を介して移動局41及び42と通信を行う装置である。指令台11や遠隔制御装置12は、上位系装置1の一例である。回線制御装置2は、基地局31及び32並びに移動局41及び42の通信における回線を制御する装置である。尚、回線制御装置2は、上位系装置1に含めても構わない。
【0032】
基地局31及び32は、上述した基地局100の一例である。また、移動局41及び42は、上述した移動局200の一例である。基地局31は、自身の基地局エリア51内に存在する移動局41と無線通信が可能である。そして、移動局41は、基地局31に対して音声の発信信号611(第1の信号)を送信し、基地局31は、発信信号611に対して通信品質を測定し、折り返し信号612(第2の信号)に測定した通信品質のデータ(第1の通信品質情報)を付与して移動局41へ送信する。そして、移動局41は、受信した折り返し信号612に付与されている基地局31側での通信品質のデータと、折り返し信号612に対して測定した移動局41側での通信品質のデータ(第2の通信品質情報)と用いて、移動局41が信号を発信した地点での基地局31及び移動局41の双方の通信品質を即時に認識する。
【0033】
同様に、基地局32は、自身の基地局エリア52内に存在する移動局42と無線通信が可能である。そして、移動局42は、基地局32に対して発信信号621(第1の信号)を送信し、基地局32は、発信信号621に対する折り返し信号622(第2の信号)を移動局42へ送信する。移動局42は、受信した折り返し信号622に付与されている基地局32側での通信品質のデータと、折り返し信号622に対して測定した移動局42側での通信品質のデータ(第2の通信品質情報)と用いて、移動局42が信号を発信した地点での基地局32及び移動局42の双方の通信品質を即時に認識する。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる移動局41及び基地局31の構成を示すブロック図である。尚、移動局42及び基地局32の詳細な構成も
図4と同等であるため、図示及び説明を省略する。
【0035】
基地局31は、通信部311と、通信品質測定部312と、制御部313とを備える。通信部311は、
図1の送信部110及び受信部120に相当し、通信品質測定部312は、
図1の通信品質測定部130に相当し、制御部313は、
図1の制御部140に相当する。ここで、本実施の形態2にかかる通信品質測定部312は、発信信号611に基づく測定における測定値に応じたレベル値を第1の通信品質情報として生成する。そのため、測定値そのものに比べてサイズの小さい情報が第1の通信品質情報として、折り返し信号612に付与される。よって、折り返し信号612の送信に伴う通信負荷を軽減できる。
【0036】
また、通信部311は、移動局41から発信信号611を受信した周波数とは異なる周波数により、折り返し信号612を送信するものとする。また、折り返し信号612には、所定の無線フレームフォーマットの未定義領域に第1の通信品質情報が付与されているものとする。
【0037】
また、通信品質測定部312は、予め設定した間隔で、移動局41から受信した発信信号611の通信品質を測定するものとする。そして、制御部313は、測定の都度、その折り返し信号612の所定の無線フレームフォーマットの未定義領域に第1の通信品質情報を付与する。そのため、送信部110は、測定の度に折り返し信号を途絶えさせることなく発信する。
【0038】
移動局41は、無線部411と車両運用端末部412とを備える。無線部411は、通信部4111と、通信品質測定部4112とを備える。通信部4111は、
図1の送信部210及び受信部220に相当し、通信品質測定部4112は、
図1の抽出部230及び通信品質測定部240に相当する。ここで、本実施の形態2にかかる通信品質測定部4112は、折り返し信号612から第1の通信品質情報が抽出できた場合に、折り返し信号612に基づいて基地局31との間の通信品質の測定を行ってもよい。これにより、不要な測定を行う必要がなく、処理を効率化できる。尚、車両運用端末部412は、信号発信時、通信終了時にも通信品質を測定してもよい。
【0039】
また、通信品質測定部4112は、折り返し信号612に基づく測定における測定値に応じたレベル値を第2の通信品質情報として生成する。そして、通信品質測定部4112は、抽出した第1の通信品質情報及び生成した第2の通信品質情報を車両運用端末部412へ通知する。
【0040】
車両運用端末部412は、制御部4121と、記憶部4122とを備える。制御部4121は、
図1の移動局200の制御部250に相当する。記憶部4122は、基地局通信品質情報71と移動局通信品質情報72とを記憶する。基地局通信品質情報71は第1の通信品質情報に相当し、移動局通信品質情報72は第2の通信品質情報に相当する。制御部4121は、通信品質測定部4112から受け付けた第1の通信品質情報及び第2の通信品質情報をそれぞれ、基地局通信品質情報71及び移動局通信品質情報72として記憶部4122に格納する。そして、制御部4121は、基地局通信品質情報71に基づき基地局31との間の上り方向の通信品質の高さの度合いを判定する。また、制御部4121は、移動局通信品質情報72に基づき基地局31との間の下り方向の通信品質の高さの度合いを判定する。そして、制御部4121は、上り方向及び下り方向の通信品質の高さの度合いの組合せに応じて、送信制御を行う。これにより、上り方向及び下り方向の通信品質を考慮した柔軟な制御を行うことができる。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる移動局41の送信制御処理の流れを説明するためのフローチャートである。まず、移動局41の通信部4111は、基地局31へ発信信号611を送信する(S21)。
【0042】
ここで、基地局31における通信品質情報生成処理の流れを
図6のフローチャートを用いて説明する。基地局31の通信部311は、移動局41から発信信号611を受信し、通信品質測定部312は、発信信号611を受信した際の通信品質を測定する(S31)。ここでは、通信品質として電界強度を測定するものとする。そして、通信品質測定部312は、測定値である電界強度から通信品質のレベル値を特定して、通信品質情報を生成する(S32)。
【0043】
図7は、本発明の実施の形態2にかかる測定した通信品質の値を、その値に応じて段階分けすることを示した図である。すなわち、通信品質測定部312は、測定値である電界強度の数値を強弱に応じた任意の段階(レベル)に区分けする。例えば、通信品質測定部312は、電界強度が低い場合にはレベル値を“1”と特定し、電界強度が高い場合にはレベル値を“3”と特定する。ここで、通信品質の区分けは、予め閾値により定められるものとする。
【0044】
そして、制御部313は、区分けされたレベル値を折り返し信号612における所定の無線フレームフォーマットの未定義領域に付与する。その後、通信部311は、折り返し信号612を移動局41へ送信する。
【0045】
図5に戻り説明を続ける。通信部4111は、基地局31から折り返し信号612を受信する(S22)。そして、通信品質測定部4112は、折り返し信号612から基地局通信品質情報71を抽出し(S23)、車両運用端末部412へ通知する。これに応じて、制御部4121は、受け付けた基地局通信品質情報71を記憶部4122に格納し、基地局通信品質情報71に基づいて上り方向の通信品質を判定する(S24)。つまり、制御部4121は、基地局31側で発信信号611が受信された際に測定された通信品質のレベル値を判定する。
【0046】
一方、通信品質測定部4112は、基地局31から受信した折り返し信号612に基づき、基地局31との間の通信品質を測定、及び、移動局通信品質情報72を生成する(S25)。ステップS25の処理は、
図6と同等であるため詳細な説明を省略する。そして、通信品質測定部4112は、移動局通信品質情報72を車両運用端末部412へ通知する。
【0047】
これに応じて、制御部4121は、受け付けた移動局通信品質情報72を記憶部4122に格納し、移動局通信品質情報72に基づいて下り方向の通信品質を判定する(S26)。つまり、制御部4121は、移動局41側で折り返し信号612が受信された際に測定された通信品質のレベル値を判定する。
【0048】
その後、制御部4121は、上り方向及び下り方向の通信品質のレベル値の組合せに基づいて、信号発信出力を制御する(S27)。
図8は、本発明の実施の形態2にかかる移動局において認識した基地局、移動局双方の通信品質に応じて、発信出力を制御することを示す図である。すなわち、制御部4121は、例えば、
図8に示す表に基づいて信号発信出力を制御する。
【0049】
図8の特徴は以下の通りである。まず、制御部4121は、下り方向の通信品質の度合いが高くても、上り方向の通信品質の度合いが低い場合には、移動局41における信号送信の出力を高くして送信制御を行う。例えば、
図8では、移動局通信品質情報72のレベル値が“3”であっても、基地局通信品質情報71のレベル値が“1”であれば、「高出力」とする。これは、
図17の項1の場合に相当し、これまでは自律送信出力制御機能が作動しなかったために、通信品質を維持することができなかったケースである。本実施の形態では、上り方向の通信品質が低いことを考慮できるため、高出力に制御することで、適切な回線品質を維持することが可能となる。
【0050】
また、制御部4121は、下り方向の通信品質の度合いが低くても、上り方向の通信品質の度合いが高い場合には、移動局41における信号送信の出力を抑制して送信制御を行う。例えば、
図8では、移動局通信品質情報72のレベル値が“1”であっても、基地局通信品質情報71のレベル値が“3”であれば、「中出力」とする。これは、
図17の項2の場合に相当し、これまでは、
図17の項3の場合と区別がつかなかったケースである。本実施の形態では、上り方向の通信品質が高いことを考慮できるため、中出力に制御することで、これまで過剰に出力していたものを適切な回線品質を維持することが可能となる。
【0051】
また、制御部4121は、上り方向及び下り方向の通信品質の度合いの一方が中程度である場合、他方の通信品質の度合いに応じて送信制御を行う。例えば、
図8では、基地局通信品質情報71又は移動局通信品質情報72のいずれか一方のレベル値が“2”である場合には、他方のレベル値が“1”か“3”であれば、それぞれ「高出力」又は「低出力」とする。このように、本実施の形態では、上り方向及び下り方向の通信品質の度合いの組合せに応じて最適な制御を行うことができる。
【0052】
以上のことから、本実施の形態では、通信品質の劣化を移動局が判断し、発信出力の制御やチャネル切替など、通信品質劣化を回避する動作を、即時かつ自動的に行うことが可能となる。つまり、通信負荷を高めずに、移動局側で適切な無線通信品質を維持するための制御を行うことができる。
【0053】
<発明の実施の形態3>
本発明の実施の形態3は、上述した実施の形態2の改良例である。ここで、本発明の実施の形態3が上述した課題に加えてさらに解決する課題について説明する。例えば、上述した
図17の項4〜6の場合には、移動局が基地局から信号が受信できないため、上述した自律送信出力制御機能は作動しない。そのため、事前にエリア通信品質データを作成しておく、という手法がある。すなわち、事前に通信エリアの通信品質を調査してデータベース化し、当該データベースを反映したエリア通信品質データを手動で作成しておくものである。そして、移動局は、当該エリア通信品質データに従い、自動的に使用チャネルを切り替えるものである。
【0054】
しかしながら、この手法の場合、周辺の環境が変化した際には、データベースを手動で更新する必要がある。そのため、非通信時から移動局が信号発信を開始した際には動作させることができない。よって、即時性や正確性に欠けるため、最大限通信品質劣化を回避することが出来ないという問題点がある。
【0055】
すなわち、上記エリア通信品質データが事前調査によるものであるため、ビル建設による影響など、環境の変化に即時対応することができない。つまり、環境が変化する度に人手を介して、手動でデータベースを更新する必要があり、保守に手間がかかっていた。
【0056】
そこで、本発明の実施の形態3では、各移動局が取得した通信品質情報を上位系装置が収集し、データベースを作成し、それをもとに統計処理したエリア通信品質データを各移動局に配信するものである。当該エリア通信品質データは、各移動局が普段実施している信号のやり取りにおける通信品質情報を収集し、都度自動的に更新、及び移動局へ配信されるものである。そのため、環境の変化による通信状況の変化に即時、自動的に対応することが可能となり、保守の手間がかからないため、上述した問題点が解消する。
【0057】
図9は、本発明の実施の形態3にかかる無線通信システム3000の概要を説明するための図である。無線通信システム3000は、回線制御装置2と、公衆網基地局33と、移動局41及び42とを備える。尚、無線通信システム3000は、上位系装置の一例として回線制御装置2を用いているが、
図3に示した指令台11又は遠隔制御装置12にその役割をさせても構わない。
【0058】
移動局41及び42のそれぞれは、第1の通信品質情報及び第2の通信品質情報を含めた個別通信品質情報を回線制御装置2へ送信する。具体的には、車両運用端末部412及び422のそれぞれは、無線公衆網53を介して公衆網基地局33へ個別通信品質情報631及び632を送信する。そして、公衆網基地局33は、受信した個別通信品質情報群641を回線制御装置2へ転送する。
【0059】
そして、回線制御装置2は、各移動局から収集した個別通信品質情報からDB21を作成する。回線制御装置2は、DB21に基づいて統計処理を行い、各基地局の通信領域におけるエリア通信品質情報22を生成する(65)。そして、回線制御装置2は、エリア通信品質情報22を移動局のそれぞれへ配信する。具体的には、回線制御装置2は、公衆網基地局33へエリア通信品質情報642を送信し、公衆網基地局33は、無線公衆網53を介してエリア通信品質情報633及び634を移動局41及び42へ送信する。
【0060】
移動局41及び42のそれぞれは、回線制御装置2から受信したエリア通信品質情報及び個別通信品質情報に基づいて、基地局への送信制御を行う。これにより、環境変化に即時に対応し、最新のエリア通信品質データに基づき送信制御ができる。また、エリア通信品質データを人手でメンテナンスする煩雑さも解消できる。
【0061】
図10は、本発明の実施の形態3にかかる無線通信システム3001の構成を示すブロック図である。無線通信システム3001は、無線通信システム3000を別観点から示し、1台の移動局43が無線網54と無線公衆網53の2経路により回線制御装置2と通信を行う例を示す。そして、無線通信システム3001では、移動局43から信号を発信し、回線制御装置2においてDB21が作成され、エリア通信品質情報が配信される流れを示す。すなわち、無線通信システム3001は、回線制御装置2と、基地局31と、エリア通信品質情報22と、移動局43とを備える。尚、移動局43を1台としているのは、説明の容易化のためであり、実際には、2台以上存在するものとし、同様に、基地局31及び公衆網基地局33も複数存在するものとする。
【0062】
基地局31は、移動局43から無線網54を介して発信信号9を受信し、通信品質測定部312により第1の通信品質情報を生成する。ここで、回線制御装置2におけるDB21を作成する際、各通信における情報を時系列に整列することが効率的である。そこで、本実施の形態にかかる基地局31は、通信品質測定部312に移動局41との通信回数に応じた識別情報をさらに含めた第2の信号(折り返し信号13)を、無線網54を介して移動局41へ送信する。つまり、基地局31は、1通信ごとにユニークな番号を折り返し信号13に付与して発信する。例えば、基地局31は、信号発信を行う度に、発信信号の所定の無線フレームフォーマットに、「1」から始まる連番を付与し、発信する。そして、基地局31は、発信する度に当該連番を「1」ずつ加算し、任意の契機でリセットする。そして、リセット後は再び「1」から始めるものとする。
【0063】
図11は、本発明の実施の形態3にかかる移動局43の構成を示すブロック図である。移動局43は、無線部431と、車両運用端末部432とを備える。無線部431は、プレス設定部4311と、通信品質測定部4312と、記憶部4313とを含む。プレス設定部4311は、通信部4111の一例であり、プレスONに設定することで、送信制御された出力により発信信号9を、無線網54を介して基地局31へ送信する。
【0064】
また、通信品質測定部4312は、基地局31から折り返し信号13を受信する度に、折り返し信号13から基地局通信品質情報71を抽出し、かつ、移動局通信品質情報72を生成する。このとき、通信品質測定部4312は、折り返し信号13に含まれる識別情報をさらに抽出する。そして、通信品質測定部4312は、基地局通信品質情報71、移動局通信品質情報72、通信に使用しているチャネル、抽出した識別情報、折り返し信号13を発信した基地局の個別番号、及び、位置情報取得要求信号を車両運用端末部432へ送信する。
【0065】
尚、記憶部4313は、応答待ち時間閾値4314を記憶する。応答待ち時間閾値4314は、プレス設定部4311が発信信号9を送信後、基地局31から折り返し信号13を受信するまでの応答の待ち時間の閾値である。応答待ち時間閾値4314は、予め記憶部4313に設定されており、後述するようにエリア通信品質情報80に応じて更新される。
【0066】
車両運用端末部432は、制御部4321と、位置情報取得部4322と、記憶部4323とを備える。位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことに応じてGPSを用いて位置情報73を取得する。そして、制御部4321は、無線部431から受信した各種情報(基地局通信品質情報71、移動局通信品質情報72、チャネル、識別情報、個別番号等)と、取得した位置情報73とを含めて個別通信品質情報70として記憶部4323に格納する。
【0067】
その後、車両運用端末部432の制御部4321は、定期的、又は、予め定めたタイミングで、個別通信品質情報70を例えば無線公衆網53を介して公衆網基地局33へ送信する(17)。そして、公衆網基地局33は、受信した個別通信品質情報18を回線制御装置2へ転送する。つまり、車両運用端末部432は、基地局31との無線通信を行うための通信網(無線網54)以外の通信網(無線公衆網53)を介して回線制御装置2へ個別通信品質情報を送信する。これにより、通信負荷を分散できる。また、車両運用端末部432は、記憶部4323に蓄積された複数の個別通信品質情報70を、任意のタイミングで一括して回線制御装置2へ送信してもよい。
【0068】
図12は、本発明の実施の形態3にかかる回線制御装置2の構成を示すブロック図である。回線制御装置2は、収集部23と、登録部24と、統計処理部25と、配信部26と、DB21と、エリア通信品質情報22とを備える。収集部23は、複数の移動局のそれぞれから個別通信品質情報18を収集する。具体的には、収集部23は、公衆網基地局33や他の基地局(不図示)から個別通信品質情報18を受信する。登録部24は、収集した個別通信品質情報18を統合して収集情報211としてDB21に登録する。このとき、登録部24は、個別通信品質情報に含まれる識別情報に基づいて、各移動局から受信した個別通信品質情報を時系列に従って分類して登録する。この登録処理をDB21の作成処理ということもできる。また、回線制御装置2は、基地局31で付与された識別情報を用いることで、各移動局から通信品質データを収集した際、時刻同期されていない各移動局及び基地局の通信情報を時系列に整理することを可能といえる。そして、統計処理部25は、DB21に登録された収集情報211について統計処理65を行うことで、エリア通信品質情報22を生成する。
【0069】
言い換えると、登録部24は、収集した個別通信品質情報18を、基地局及びチャネルごとに時系列に整理して、これをデータベースとする。そして、統計処理部25は、DB21内に登録されている、通信品質の値に応じて区分けした段階を示す値の平均値を算出し、その値を測定地点での通信品質を示す値として、エリア通信品質データ22を作成する。
【0070】
その後、配信部26は、生成されたもののうち最新のエリア通信品質情報19を公衆網基地局33へ送信する。このとき、配信部26は、任意のタイミングでエリア通信品質情報19を配信するものとする。そして、公衆網基地局33は、受信したエリア通信品質情報19(20)を各移動局へ配信する。これにより、各移動局で最新のエリア通信品質データを保持できる。
【0071】
図11に戻り説明を続ける。移動局41の車両運用端末部432の制御部4321は、公衆網基地局33から無線公衆網53を介して受信したエリア通信品質情報20をエリア通信品質情報80として記憶部4323に格納する。そして、制御部4321は、エリア通信品質情報80、基地局通信品質情報71及び移動局通信品質情報72に基づいて出力の制御を行う。まず、制御部4321は、基地局通信品質情報71及び移動局通信品質情報72に基づいて基地局又は移動局のいずれかの通信品質が、予め設定した閾値を下回っていると判定した場合、通信品質が劣化したと判断し、
図8基づいて発信出力の制御を行う。または、通信品質が劣化したと判断し他場合に、制御部4321は、エリア通信品質情報80を参照し、現地点で通信品質が良好なチャネルが存在する場合に、自律的にそのチャネルへ切り替える。
【0072】
さらに、制御部4321は、エリア通信品質情報における通信品質の高さの度合いに応じて地図データ上に表示を行う。例えば、予め設定した色やその濃淡により、地図データ上に通信品質を視覚的に確認できるよう表示する。これにより、通信品質の状況が視覚的に容易に把握できる。
【0073】
さらに、制御部4321は、記憶部4323に格納されたエリア通信品質情報80に応じて応答待ち時間閾値4314を更新してもよい。例えば、制御部4321は、エリア通信品質情報80に基づき通信品質が良好とされている地点については応答待ち時間閾値4314を小さい値、また、通信品質が不良とされている地点については応答待ち時間閾値4314を大きい値にするなど、任意に設定することができる。これにより、エリアの通信状況に応じて最適な待ち時間の間隔を維持できる。
【0074】
続いて、本発明の実施の形態3にかかる各種処理を以下のシーケンス図を用いて説明する。
図13は、本発明の実施の形態3にかかる移動局により信号発信から折り返し信号の受信までの流れと、個別通信品質情報70内の各種データの格納タイミングとの関係を説明するシーケンス図である。
【0075】
まず、移動局43のプレス設定部4311は、プレスONの設定を行う(S101)ことにより、発信信号9を基地局31へ送信する。そして、通信品質測定部4312は、車両運用端末部432に対して、通信に使用しているチャネル情報の通知と、位置情報取得要求信号を発信する(S102)。
【0076】
次に、車両運用端末部432の位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことにより、位置情報Iの取得を行う(S103)。そして、制御部4321は、無線部431からの通知に含まれる使用チャネル情報74を、取得した位置情報I731と併せて、一時的に記憶部4323に個別通信品質情報70として格納する(S104)。
【0077】
その後、無線部431は、連番75、基地局ID76及び基地局受信電界強度71aを含めた折り返し信号13を基地局31から受信し、通信品質測定部4312はその際に折り返し信号13における受信電界強度(移動局受信電界強度72a)を測定する(S105)。併せて、通信品質測定部4312は、折り返し信号13から連番75、基地局ID76及び基地局受信電界強度71aを抽出し、測定した移動局受信電界強度72aを含めて、車両運用端末部432へ通知する(S106)。
【0078】
そして、車両運用端末部432の制御部4321は、無線部431からの通知に含まれる連番75、基地局ID76、基地局受信電界強度71a及び移動局受信電界強度72aを、既に格納済みの個別通信品質情報70に追加して記憶部4323に格納する(S107)。
【0079】
その後、プレス設定部4311は、プレスOFFの設定を行う(S108)。これに伴い、通信品質測定部4312は、車両運用端末部432に対して、位置情報取得要求信号と信号発信完了通知を発信する(S109)。そして、車両運用端末部432の位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことにより、位置情報IIの取得を行う(S110)。そして、制御部4321は、取得した位置情報II732を、既に格納済みの個別通信品質情報70に追加して記憶部4323に格納する(S111)。
【0080】
図14は、本発明の実施の形態3にかかる基地局からの折り返し信号が所定時間以上受信できなかった場合における処理と、個別通信品質情報70内の各種データの格納タイミングとの関係を説明するシーケンス図である。
【0081】
まず、ステップS201〜S204では、
図13のステップS101〜S104と同様に、処理される。ここで、プレス設定部4311は、プレスONに伴う信号発信後に、タイマーを開始し、応答待ち時間閾値4314が経過するまで、基地局31からの折り返し信号13の受信を待つ。そして、折り返し信号13を受信しないまま応答待ち時間閾値4314が経過した場合に、無線部431は、基地局31との間で無線通信が付加であると判断する(S205)。そして、無線部431は、通信不可通知を車両運用端末部432へ送信する(S206)。そして、車両運用端末部432の制御部4321は、受信した通信不可通知に基づき、通信不可77の旨を個別通信品質情報70に追加して記憶部4323に格納する(S207)。
【0082】
その後、プレス設定部4311は、プレスOFFの設定を行う(S208)。これに伴い、通信品質測定部4312は、車両運用端末部432に対して、位置情報取得要求信号を発信する(S209)。そして、車両運用端末部432の位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことにより、位置情報IIの取得を行う(S210)。そして、制御部4321は、取得した位置情報II732を、既に格納済みの個別通信品質情報70に追加して記憶部4323に格納する(S211)。
【0083】
また、基地局においては、移動局から受信した信号の折返しだけではなく、指令台ほか、上位系装置からの受信した信号に基づく信号発信も行う。
図15は、本発明の実施の形態3にかかる基地局からの信号発信時において移動局が保持する通信品質に関する各種データとその取得タイミングとの関係を説明するシーケンス図である。
【0084】
ここでは、まず、無線部431は、基地局31が発信した信号(基地局ID76及び連番75を含む)の通信品質(移動局受信電界強度72a)を測定する(S301)。そして、通信品質測定部4312は、車両運用端末部432に対して、位置情報取得要求信号、通信に使用しているチャネル情報、連番75、基地局ID76及び移動局受信電界強度72aを含めて、通知する(S302)。
【0085】
そして、車両運用端末部432の位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことにより、位置情報Iの取得を行う(S303)。制御部4321は、無線部431からの通知に含まれる使用チャネル情報74、連番75、基地局ID76及び移動局受信電界強度72aを、取得した位置情報I731と併せて、一時的に記憶部4323に個別通信品質情報70として格納する(S304)。
【0086】
その後、無線部431は、基地局からの信号受信を完了(S305)し、通信品質測定部4312は、車両運用端末部432に対して、位置情報取得要求信号と通信完了通知を発信する(S306)。そして、車両運用端末部432の位置情報取得部4322は、位置情報取得要求信号を受信したことにより、位置情報IIの取得を行う(S307)。そして、制御部4321は、取得した位置情報II732を、既に格納済みの個別通信品質情報70に追加して記憶部4323に格納する(S308)。
【0087】
図16は、本発明の実施の形態3にかかる回線制御装置における移動局からのデータ取得からデータベース配信までの流れを示したシーケンス図である。ここでは、
図13〜
図15の動作により、移動局41及び42はそれぞれ、記憶部4323に個別通信品質情報70を一時的に保持しているものとする。
【0088】
ここで、移動局41は、特定の動態発信(S401)を契機に、無線公衆網53を介して公衆網基地局33を経由して個別通信品質情報70を送信する(S403)。これにより、回線制御装置2は、移動局41から受信した個別通信品質情報70を収集情報211aとしてDB21に登録する。そして、回線制御装置2は、無線公衆網53又は無線網54を介して移動局41に対して受信完了通知を送信する(S405)。
【0089】
同様に、移動局42は、特定の動態発信(S402)を契機に、無線公衆網53を介して公衆網基地局33を経由して個別通信品質情報70を送信する(S404)。これにより、回線制御装置2は、移動局42から受信した個別通信品質情報70を収集情報211bとしてDB21に登録する。そして、回線制御装置2は、無線公衆網53又は無線網54を介して移動局42に対して受信完了通知を送信する(S406)。
【0090】
また、回線制御装置2は、各移動局から受信した個別通信品質情報70に基づいてDB21に登録し、収集情報211a及び211bに基づいて統計処理を行い、エリア通信品質情報22を生成する(S407)。その後、回線制御装置2は、移動局41及び42へエリア通信品質情報22を配信する(S4081及びS4082)。尚、各移動局の車両運用端末部432が個別通信品質情報70を発信するタイミングについては、動態と同時だけでなく、タイマー満了によっても発信しても構わない。
【0091】
このように、本実施の形態により、通信品質の劣化を移動局が判断し、発信出力の制御やチャネル切替など、通信品質劣化を回避する動作を、即時、自動的に行うことが可能となることに加え、地図上に表示される、その地点での通信品質を視覚的に確認することが可能となる。そのため、通信品質劣化による現場の混乱を、最大限回避することが可能となる。
【0092】
また、各移動局が保持するエリア通信品質情報は自動的に更新されるため、環境の変化が生じた場合においても、データベースの更新、配信といった保守作業が必要でなくなる。
【0093】
さらに、従来は基地局からの信号を受信している状況のみ動作することが可能であった自律発信制御機能に相当する処理を、エリア通信品質情報を参照することで、非通信時から移動局が発信する場合においても、動作させることが可能となる。
【0094】
<その他の発明の実施の形態>
上述した移動局が備える車両運用端末部は、「車両」に限定されないものとする。つまり、本発明の実施の形態にかかる移動局は、任意の携帯端末等に適用可能であるものとする。
【0095】
また、各基地局や移動局が測定する通信品質については、電界強度を例示したが、これに限定されない。例えば、通信品質としては、C/N比や遅延など、無線通信の品質を表すものであってもよい。さらに、その種別を問わず、これらの複数の種別を指標とすることで、より精度を向上することもできる。
【0096】
また、上記の実施の形態において、基地局は通信負荷軽減のため測定値に応じて段階を分け、その値を折り返し信号に付与していたが、測定した値そのものを、付与することも可能とする。
【0097】
次に、車両運用端末部にて保持していたデータを、回線制御装置に発信する際に使用する公衆網については、種別は問わず、通信にかかる負荷を許容できるのであれば、無線網にて発信することも可能とする。そして、公衆網又は無線網のいずれの通信にも負荷を与えたくない場合には、USBメモリやSDカードなどの記録媒体によるデータの持ち運びも可能とする。
【0098】
また、上記の実施の形態において、移動局の物理的な構成として無線部及び車両運用端末部を示したが、装置として分かれていても、又は、それぞれの機能を具備した一つの装置でも可能とする。また、回線制御装置のそれぞれの物理的な構成としてDB21を示したが、専用のパッケージ、既存パッケージのソフトウェア回収、あるいはデータベース作成専用の装置でも可能とする。さらに、エリア通信品質情報を作成するうえで、収集したデータの平均値をその地点での通信品質としていたが、平均値ではなく、最大値、最小値でも可能とする。
【0099】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0100】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0101】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
基地局と、当該基地局と無線通信を行う1以上の移動局と、を備え、
前記移動局は、前記基地局へ第1の信号を送信し、
前記基地局は、
前記移動局から受信した第1の信号に基づいて、当該移動局との間の通信品質を測定して第1の通信品質情報を生成し、
前記第1の通信品質情報を含めた第2の信号を前記移動局へ送信し、
前記移動局は、
前記基地局から受信した第2の信号に含まれる前記第1の通信品質情報を抽出し、
前記第2の信号に基づいて、前記基地局との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成し、
前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報に基づいて、前記基地局への送信制御を行う
無線通信システム。
(付記2)
前記基地局は、前記第1の信号に基づく測定における測定値に応じたレベル値を前記第1の通信品質情報として生成する
付記1に記載の無線通信システム。
(付記3)
前記移動局は、
前記第1の通信品質情報に基づき前記基地局との間の上り方向の通信品質の高さの度合いを判定し、
前記第2の通信品質情報に基づき前記基地局との間の下り方向の通信品質の高さの度合いを判定し、
前記上り方向及び前記下り方向の通信品質の高さの度合いの組合せに応じて、前記送信制御を行う
付記1又は2に記載の無線通信システム。
(付記4)
前記無線通信システムは、2以上の前記移動局及び前記基地局を管理するための上位系装置をさらに備え、
前記移動局のそれぞれは、
前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を含めた個別通信品質情報を前記上位系装置へ送信し、
前記上位系装置は、
前記移動局から受信した前記個別通信品質情報に基づいて、前記基地局の通信領域におけるエリア通信品質情報を生成し、
前記エリア通信品質情報を前記移動局のそれぞれへ配信し、
前記移動局のそれぞれは、
前記上位系装置から受信した前記エリア通信品質情報及び前記個別通信品質情報に基づいて、前記基地局への送信制御を行う
付記1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
(付記5)
前記基地局は、
前記移動局との通信回数に応じた識別情報をさらに含めた前記第2の信号を、当該移動局へ送信し、
前記移動局は、
前記第2の信号に含まれる前記識別情報をさらに抽出し、
前記抽出した識別情報をさらに含めた前記個別通信品質情報を、前記上位系装置へ送信し、
前記上位系装置は、
前記個別通信品質情報に含まれる前記識別情報に基づいて、各移動局から受信した当該個別通信品質情報を時系列に従って分類し、前記エリア通信品質情報を生成し、
前記エリア通信品質情報のうち最新のものを前記移動局のそれぞれへ配信する
付記4に記載の無線通信システム。
(付記6)
前記移動局は、
前記第1の信号の送信後、前記第2の信号を受信するまでの待ち時間の閾値を予め設定し、
前記エリア通信品質情報に応じて前記閾値を更新する
付記4又は5に記載の無線通信システム。
(付記7)
前記移動局は、
前記エリア通信品質情報における通信品質の高さの度合いに応じて地図データ上に表示を行う
付記4乃至6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
(付記8)
前記移動局は、前記下り方向の通信品質の度合いが高くても、前記上り方向の通信品質の度合いが低い場合には、当該移動局における信号送信の出力を高くして前記送信制御を行う
付記3に記載の無線通信システム。
(付記9)
前記移動局は、前記下り方向の通信品質の度合いが低くても、前記上り方向の通信品質の度合いが高い場合には、当該移動局における信号送信の出力を抑制して前記送信制御を行う
付記3又は8に記載の無線通信システム。
(付記10)
前記移動局は、前記上り方向及び前記下り方向の通信品質の度合いの一方が中程度である場合、他方の通信品質の度合いに応じて前記送信制御を行う
付記3、8又は9のいずれか1項に記載の無線通信システム。
(付記11)
前記移動局は、
前記基地局との前記無線通信を行うための通信網以外の通信網を介して前記上位系装置へ前記個別通信品質情報を送信する
付記4乃至又は7のいずれか1項に記載の無線通信システム。
(付記12)
前記移動局は、前記第2の信号から前記第1の通信品質情報が抽出できた場合に、前記第2の信号に基づいて前記基地局との間の通信品質の測定を行う、
前記第2の通信品質情報を測定する
付記1乃至11のいずれか1項に記載の無線通信システム。
(付記B1)
無線通信を行うための第1の信号を基地局へ送信し、
前記基地局において受信された前記第1の信号に基づいて測定された第1の通信品質情報を含めた第2の信号を当該基地局から受信し、
前記第2の信号に含まれる前記第1の通信品質情報を抽出し、
前記第2の信号に基づいて、前記基地局との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成し、
前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報に基づいて、前記基地局への送信制御を行う
移動局装置。
(付記C1)
基地局と、当該基地局と無線通信を行う1以上の移動局との間の無線通信方法であって、
前記移動局が、前記基地局へ第1の信号を送信し、
前記基地局が、
前記移動局から受信した第1の信号に基づいて、当該移動局との間の通信品質を測定して第1の通信品質情報を生成し、
前記第1の通信品質情報を含めた第2の信号を前記移動局へ送信し、
前記移動局が、
前記基地局から受信した第2の信号に含まれる前記第1の通信品質情報を抽出し、
前記第2の信号に基づいて、前記基地局との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成し、
前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報に基づいて、前記基地局への送信制御を行う
無線通信方法。
(付記D1)
無線通信を行うための第1の信号を基地局へ送信する処理と、
前記基地局において受信された前記第1の信号に基づいて測定された第1の通信品質情報を含めた第2の信号を当該基地局から受信する処理と、
前記第2の信号に含まれる前記第1の通信品質情報を抽出する処理と、
前記第2の信号に基づいて、前記基地局との間の通信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する処理と、
前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報に基づいて、前記基地局への送信制御を行う処理と、
を移動局装置に実行させる無線通信プログラム。