(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381029
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】クレーンのエコライザシーブの緩衝装置
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20180820BHJP
B66D 3/04 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B66C15/00 J
B66D3/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-203673(P2014-203673)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-69181(P2016-69181A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 厚
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓
(72)【発明者】
【氏名】神山 友希
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−155796(JP,U)
【文献】
特公昭45−024939(JP,B1)
【文献】
特開2000−205333(JP,A)
【文献】
特開昭61−010139(JP,A)
【文献】
特開2014−196161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 − 15/06
B66D 1/00 − 5/34
F16F 15/00 − 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのトロリに架設したビーム部材に、圧縮ばねを備えた緩衝機構を間隔をあけて並設し、該緩衝機構に架け渡した支持部材にエコライザシーブを軸支するようにしたクレーンのエコライザシーブの緩衝装置であって、圧縮ばねからなる緩衝機構の外周囲を、内外周面が摺接し、該摺接部に固体潤滑剤埋込軸受を配設した筒状の内外ケースからなる伸縮可能なカバー部材で覆ってなり、該カバー部材によって、緩衝機構の水平方向の偏倚を規制してなることを特徴とするクレーンのエコライザシーブの緩衝装置。
【請求項2】
エコライザシーブが、ヘッドシーブを兼ねることを特徴とする請求項1に記載のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのエコライザシーブの緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンに用いられるワイヤロープの寿命予測は、以下のニーマン(G.Niemann)式を用いて計算することが行われている。
N=170000(a・b(D/d−9/a)/(σ
t+4))
2
N:ワイヤロープが破断するまでのシーブ通過回数(シーブによるワイヤロープの曲げ回数)
a:シーブの形状係数(通常は1)
b:ロープの構成係数
D:シーブの径
d:ワイヤロープの径
σ
t:ワイヤロープの引張応力(W:使用荷重/A:ワイヤロープの断面積)
【0003】
ところで、実機におけるワイヤロープの寿命は、クレーンの使用状況によって変動し、例えば、スクラップ搬送用天井クレーンを定格荷重で使用した場合、地切り時にワイヤロープに衝撃的な荷重がかかってワイヤロープの磨損が進むため、ニーマン式で得た寿命予測数値より早い時期に、例えば、寿命予測数値の70〜90%程度でワイヤロープを交換する必要が生じることが多かった。
【0004】
このワイヤロープに衝撃的な荷重がかかってワイヤロープの磨損が進むという問題に対処するため、ワイヤロープの下端に取り付けた吊り具(フック)と吊荷(リフティングマグネット)との間に緩衝装置を設けることが提案され、実用化されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−162970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の緩衝装置は、吊り具と吊荷との間に設ける必要があること、また、緩衝装置の重量がワイヤロープにかかることから、その形状や性能に制約があり、重い吊荷が対象となるスクラップ搬送用天井クレーンにおいては、ワイヤロープにかかる衝撃的な荷重の低減効果に限界があった。
【0007】
本発明は、上記従来の吊り具と吊荷との間に設けられる緩衝装置の有する問題点に鑑み、ワイヤロープにかかる衝撃的な荷重に対して大きな低減効果を得ることができるクレーンのエコライザシーブの緩衝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置は、クレーンのトロリに架設したビーム部材に、圧縮ばねを備えた緩衝機構を間隔をあけて並設し、該緩衝機構に架け渡した支持部材にエコライザシーブを軸支するようにしたクレーンのエコライザシーブの緩衝装置であって、圧縮ばねからなる緩衝機構の外周囲を、内外周面が摺接し、該摺接部に
固体潤滑剤埋込軸受を配設した筒状の内外ケースからなる伸縮可能なカバー部材で覆ってなり、該カバー部材によって、緩衝機構の水平方向の偏倚を規制してなることを特徴とする。
【0011】
また、エコライザシーブが、ヘッドシーブを兼ねるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置によれば、クレーンのトロリに架設したビーム部材に、圧縮ばねを備えた緩衝機構を間隔をあけて並設し、該緩衝機構に架け渡した支持部材にエコライザシーブを軸支してなるようにすることにより、従来の緩衝装置のような設置場所や重量がワイヤロープにかかることに伴う緩衝装置の形状や性能の制約がないため、ワイヤロープにかかる衝撃的な荷重に対して、それに適応した大きな低減効果を得ることができる。
【0013】
また、緩衝機構が、圧縮ばねの外周囲を内外周面が摺接する筒状の内外ケースからなる伸縮可能なカバー部材で覆ってなるようにすることにより、粉塵等によって緩衝機構が汚染されることを防止することができる。
【0014】
また、カバー部材によって、緩衝機構の水平方向の偏倚を規制するようにすることにより、緩衝機構の構造を簡略化することができる。
【0015】
また、エコライザシーブが、ヘッドシーブを兼ねるようにすることにより、定格荷重の異なる各種クレーンに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置を適用したスクラップ搬送用天井クレーンを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】同ワイヤロープの掛け要領を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図4】本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置の上部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置の作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜
図4に、本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置をスクラップ搬送用天井クレーンに適用した例を示す。
【0019】
クレーン1は、特に限定されるものではないが、通常のスクラップ搬送用天井クレーン(一般の天井クレーン)と同様、建屋対向壁のそれぞれに沿って略水平に配置される一対の架台上に敷設された走行レールに沿って走行可能に設けられた一対のガーダ11と、ガーダ11に沿って敷設された横行レール12とを備え、この横行レール12上を横行可能にトロリ2を設けるようにしている。
【0020】
トロリ2には、ワイヤロープ巻き上げドラム21と、このワイヤロープ巻き上げドラム21によって巻き上げられるワイヤロープ22と、ワイヤロープ22の下端に取り付けられたフックシーブ23と、フックシーブ23に吊り下げられた吊り具(吊り環)24と、吊り具(吊り環)24に吊り下げられた吊荷(リフティングマグネット)25とを備えるようにしている。
【0021】
そして、トロリ2には、クレーンのエコライザシーブの緩衝装置として、トロリ2に架設したビーム部材3に、圧縮ばね41を備えた緩衝機構4を間隔をあけて並設し、この緩衝機構4に架け渡した支持部材5にエコライザシーブ6を軸支するようにしている。
【0022】
ここで、本実施例においては、通常、ヘッドシーブが設置される位置に緩衝機構4を介してエコライザシーブ6を配設し、エコライザシーブ6がヘッドシーブを兼ねる(ヘッドシーブを省略する)ようにしているが、クレーンの定格荷重等に応じて、ヘッドシーブをエコライザシーブとは別に設けるようにすることもできる。
【0023】
ビーム部材3は、エコライザシーブ6の下方が開放されるように、トロリ2の幅方向に架設した一対の第1ビーム部材31と、この第1ビーム部材31の下面に架設した一対の第2ビーム部材32とで、井桁状に構成するようにし、第2ビーム部材32の中央部に、それぞれ緩衝機構4を立設するようにしている。
【0024】
緩衝機構4は、中心に圧縮ばね41を配置し、その外周囲を内外周面が摺接する筒状の内ケース43及び外ケース44からなる伸縮可能なカバー部材42で覆ってなるようにするとともに、緩衝機構4の内ケース43を第2ビーム部材32の中央部に固定することによって、この内ケース43と摺接する外ケース44の水平方向の偏倚を規制するようにしている。
内ケース43と外ケース44の摺接部には、
固体潤滑剤埋込軸受(具体的には、オイレス工業社製「オイレス(登録商標)ベアリング(メタル)」)44aを配設するようにしている。
これにより、緩衝機構4が、粉塵等によって汚染されることを防止するとともに、カバー部材42によって、緩衝機構4の水平方向の偏倚を規制するようにすることにより、緩衝機構4の構造を簡略化することができるようにしている。
【0025】
緩衝機構4の圧縮ばね41は、クレーンの定格荷重がかかったときに、全撓み量(本実施例においては、210mm(圧縮ばね41の全長:420mm))の65〜75%程度の撓み量となる圧縮ばねを用いるようにしている。
【0026】
緩衝機構4の外ケース44の上部には、ブラケット45を形成し、このブラケット45に架け渡した支持軸46を介して、間隔をあけて並設した緩衝機構4に架け渡すように支持部材5を配設し、この支持部材5にエコライザシーブ6を軸支するようにする。
【0027】
次に、このクレーンのエコライザシーブの緩衝装置の作用を確認するため、ワイヤロープ22の歪量を測定した。
ワイヤロープ22の歪量は、吊り具(吊り環)24に吊荷(リフティングマグネット)25を吊り下げた搬送荷(スクラップ)なしの荷重条件で、巻き上げ速度:0.16m/secで地切りしたときのワイヤロープ22に衝撃的な荷重がかかってワイヤロープ22が伸縮する状態を、エコライザシーブ6の近傍位置において、ワイヤロープ22にクリップボルトにより固定した鋼板に貼付したロードセルの出力を、ヘッドシーブが設置される位置に緩衝機構4を介して配設したエコライザシーブ6にワイヤロープ22を支持するようにした場合と、従来の緩衝機構4を設けないエコライザシーブにワイヤロープを支持するようにした場合とについて測定した。
【0028】
ワイヤロープ22の歪量を測定した結果を示す
図5から明らかなように、緩衝機構4によって、ワイヤロープ22にかかる衝撃的な荷重(衝撃ピーク荷重及び振幅)に対する大きな低減効果を得ることができることを確認した。
【0029】
次に、定格荷重の80%の負荷で行う実機による長期間の使用試験により、ワイヤロープ22の寿命(ワイヤロープ22が破断するまでのシーブ通過回数(シーブによるワイヤロープの曲げ回数))を、ヘッドシーブが設置される位置に緩衝機構4を介して配設したエコライザシーブ6にワイヤロープ22を支持するようにした場合と、緩衝機構4を設けずにヘッドシーブにワイヤロープを支持するようにした場合とについて比較した。
まず、緩衝機構4を設けずにエコライザシーブにワイヤロープを支持するようにした場合のニーマン式の寿命予測数値は、約34万回となる。
一方、過去の経験則から、ワイヤロープの交換は、実際には、ニーマン式で得た寿命予測数値より早い時期、具体的には、寿命予測数値の70〜90%程度の約24〜31万回程度でワイヤロープを交換する必要が生じることが一般的であった。
これに対して、ヘッドシーブが設置される位置に緩衝機構4を介して配設したエコライザシーブ6にワイヤロープ22を支持するようにした場合、シーブ通過回数(シーブによるワイヤロープの曲げ回数)が34万回に達しても、ワイヤロープの交換が必要な状態とならず、さらに継続して使用可能な状態であった。これにより、緩衝機構4を設けることによって、ワイヤロープの寿命を、ニーマン式の寿命予測数値以上に延ばすことができることを確認した。
【0030】
このように、本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置は、従来の緩衝装置のような設置場所や重量がワイヤロープ22にかかることに伴う緩衝装置の形状や性能の制約がないため、ワイヤロープにかかる衝撃的な荷重に対して、それに適応した大きな低減効果を得ることができる。
【0031】
以上、本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のクレーンのエコライザシーブの緩衝装置は、ワイヤロープにかかる衝撃的な荷重に対して大きな低減効果を得ることができることから、スクラップ搬送用天井クレーン等のワイヤロープに衝撃的な荷重がかかるクレーンの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 クレーン
2 トロリ
21 ワイヤロープ巻き上げドラム
22 ワイヤロープ
23 フックシーブ
24 吊り具(吊り環)
25 吊荷(リフティングマグネット)
3 ビーム部材
4 緩衝機構
41 圧縮ばね
42 カバー部材
43 内ケース
44 外ケース
5 支持部材
6 エコライザシーブ