(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381042
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】平板瓦
(51)【国際特許分類】
E04D 1/30 20060101AFI20180820BHJP
E04D 1/12 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
E04D1/30 603B
E04D1/12 J
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-150245(P2015-150245)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-31586(P2017-31586A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】394022738
【氏名又は名称】株式会社請川窯業
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】請川 和英
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−154554(JP,A)
【文献】
特開2001−295417(JP,A)
【文献】
実開平04−122113(JP,U)
【文献】
実開昭62−007525(JP,U)
【文献】
特開2007−046401(JP,A)
【文献】
特開2009−062694(JP,A)
【文献】
特開2006−233650(JP,A)
【文献】
特開2008−019638(JP,A)
【文献】
特開2009−030371(JP,A)
【文献】
実開平05−042450(JP,U)
【文献】
特開2007−224540(JP,A)
【文献】
特開2006−233526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/30
E04D 1/16
E04D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦本体(1)の尻部(2)に表面側に隆起した尻部隆起部(11)を設け、且つ上記瓦本体(1)の中央部分を雨水流下部となる平坦な平板部(4)とし、さらに上記瓦本体(1)の尻部(2)付近を屋根板(6)上に固定した瓦桟(7)上に載せ掛けるとともに上記瓦本体(1)の頭部(3)を下段側瓦の尻部隆起部(11)上に載せた状態で上記屋根板(6)上に葺設するようにした平板瓦であって、
上記尻部隆起部(11)の裏面中央部に、上記尻部(2)付近を上記瓦桟(7)上に載せ掛けた瓦葺設状態で上記瓦本体(1)の尻部端面(2a)から上記瓦桟(7)の上面における軒先側端縁(7a)を軒先側に所定小長さ(La)だけ越える長さ(L)を有し且つ瓦幅方向の所定幅(W)の範囲で表面側に凹ませた凹み部(21)を設けている一方、
上記瓦本体(1)の上記頭部(3)付近の裏面に、上記瓦本体(1)の裏面から下向きに突出し且つ瓦葺設状態で上記屋根板(6)の軒先端部(6a)上に設けた軒先瓦桟(8)の上面に接触する下向き突起(31)と、上記頭部(3)付近の裏面を所定深さだけ凹ませた凹み部(32)とで、上記頭部(3)裏面と上記軒先瓦桟(8)上面との間に該軒先瓦桟(8)上面を迂回する空気通路(33)を形成している、
ことを特徴とする平板瓦。
【請求項2】
請求項1において、
上記尻部隆起部(11)側の上記凹み部(21)に、上記瓦葺設状態において該凹み部(21)の天井面(21b)から上記瓦桟(7)の上面に接触するまでの突出高さ(H)を有した細幅リブ(25)を瓦長さ方向に向けて適数本設けている、
ことを特徴とする平板瓦。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、瓦本体の中央部分(雨水流下部)を平坦な平板部とし、且つ瓦の尻部を屋根板上の瓦桟上に載せ掛けて屋根板上に葺設するようにした平板瓦に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根板上に葺設される平板瓦として、
図1〜
図3に示すものが市販されているが、この公知の平板瓦T1は、平面視四角形の瓦本体1で構成されている。尚、この種の平板瓦T1としては、セラミックス製のものやセメント製のものがあるが、本願では何れの材料製のものにも適用できる。
【0003】
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1において、図面の上部側が尻部2であり、図面の下部側が頭部3である。この平板瓦T1の瓦本体1の表面(おもてめん)には、
図1に示すように、尻部2に尻部隆起部11と左右各側部にそれぞれ側部隆起部12,13を設けている一方、それらの各隆起部11,12,13で囲われた部分を平坦な雨水流下部14としている。この雨水流下部14は、ほぼ全面に亘ってほぼ同じ板厚さ(例えば15mm程度の板厚さ)の平板部4となっている。尚、以下の説明では、
図1及び
図2の平板瓦T1において、左右方向を瓦幅方向といい、上下方向(尻部2と頭部3を結ぶ方向)を瓦長さ方向ということがある。
【0004】
瓦本体1の裏面は、
図2及び
図3に示すように、上記雨水流下部14が対応する面積部分を平坦な(段差のない)平面部15としている一方、上記尻部隆起部11が対応する部分を上面側に凹んだ凹み部21Aとしている。
【0005】
上記凹み部21Aは、尻部隆起部11の厚さを削ぐ(薄くする)ために設けられたもので、該凹み部21Aの大きさは、
図2に示すように、瓦幅方向にかなりの幅W1(W1=200mm程度)を有している一方、瓦長さ方向に比較的小長さL1(L1=30mm程度)とされている。又、この凹み部21Aの幅方向両端部外側には、瓦裏面の上記平面部15と同一面となる瓦桟接触面16,16が設けられている。
【0006】
瓦本体1の尻部2側の端部には、瓦幅方向に間隔をもって下向きに(裏面側に)突出する2つの係止突部20,20が設けられている。この各係止突部20,20は、厚さ(瓦長さ方向の寸法)が10mm程度で、後述する瓦桟7に引っ掛けてこの平板瓦T1を係止するためのものである。
【0007】
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1は、
図4に示すように屋根板6上に千鳥状に葺設されるものである。そして、その葺設時には、
図5に示すように屋根板6上に固定した瓦桟7上に尻部2の係止突部20,20を引っ掛けて該瓦桟7上に瓦の尻部2を載せ掛けるが、該瓦桟7の屋根傾斜方向の幅D(
図1〜
図5参照)は30mm程度である。
【0008】
ところで、屋根板上に平板瓦を葺設した屋根構造(例えば
図4及び
図5)では、屋根板6の上面と各平板瓦T1,T1・・の下面との間の空間部S(
図5)は空気を流動させること(換気すること)が好ましい。即ち、屋根板6と平板瓦T1間の空間部Sは、夏季の日照時には瓦からの輻射熱で異常高温になる(延いては屋根板6及び天井裏を介して部屋内が暑くなる)一方、雨天時には高湿状態になる(夜間に冷却されると結露して屋根板6の腐食やカビの発生等の原因になる)が、該空間部Sの空気を換気すると上記高温状態や高湿状態を緩和できる。
【0009】
そして、屋根板上に平板瓦を葺設した屋根構造において、
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1を用いた屋根構造(
図4及び
図5)では、次のような背景がある。
【0010】
まず、
図5に示すように、強風雨時に瓦上面を雨水が遡上する(吹き上がる)のを防止するために、上段側瓦の頭部3の裏面と下段側瓦の尻部2付近の表面とを瓦幅の全幅に亘ってほぼ接触させている。尚、
図1〜
図3の平板瓦T1では、頭部3裏面の下向き小突起3a(
図2、
図3)の中央部に上向きの切欠3b(
図2)が形成されているが、この切欠3bは、この平板瓦T1を
図4に示すように千鳥状に配置したときに下段側の2つの瓦T1,T1における側部隆起部12,13の合体部分を跨ぐ(嵌入させる)ためのもので、瓦葺設状態では該切欠3b部分と下段側瓦との間にはほとんど隙間ができない。従って、各平板瓦T1,T1・・の頭部3側から風が吹き上げても、その空気流は
図5に矢印A1で示すように各平板瓦T1と屋根板6間の空間部Sにはほとんど侵入しない。
【0011】
他方、
図4及び
図5に示すように、屋根板6の軒先端部6aに設置される最下段の軒先瓦(平板瓦)T1は、軒先瓦桟8の上面に対して雨水流下部14の下面が全幅に亘ってほぼ接触している。従って、
図5に矢印A2で示すように、軒先瓦T1の頭部3側から風が吹き上げても、その空気流A2は軒先瓦T1と軒先瓦桟8との間を通って上記空間部Sには侵入しない。
【0012】
さらに、瓦桟7上に平板瓦T1の尻部2を載せ掛けた状態では、瓦裏面の上記凹み部21Aの面積が瓦桟7の上面で塞がれるようになる。特に、
図3及び
図5に示すように、瓦裏面の平面部15の尻側端部15a(凹み部21Aの頭側端部21Aaと同じ)と瓦桟7上面の軒先側端縁7aとの間には、凹み部21Aの全幅に亘ってほとんど隙間ができない。従って、平板瓦T1と屋根板6間の空間部Sにある空気が瓦桟7を乗り越えて上方に抜け出しにくいようになっている(矢印A3参照)。
【0013】
他方、
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1には、上記した各空気流A1,A2,A3に関する背景とは別に、瓦の尻部裏面の凹み部21Aに関して次の背景がある。即ち、該凹み部21Aは、
図2に示すように瓦幅方向にかなりの幅W1を有しており、しかも瓦の尻部2を瓦桟7上に載せ掛けた瓦葺設状態では、
図6に示すように瓦の尻部2は凹み部21Aの左右両端部にある各瓦桟接触面16,16でのみ瓦桟7上に支持されるようになる。即ち、瓦の尻部隆起部11は、
図6に示すように、その裏面側にある凹み部21Aの幅W1(W1=200mm程度)の範囲で下方から支持するものは何もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1では、
図5に示す瓦葺設状態において、各平板瓦T1,T1・・の頭部3側や軒先前方から風が吹き上げても、その空気流は
図5に矢印A1及びA2で示すように各平板瓦T1と屋根板6間の空間部Sにはほとんど侵入しない。又、
図5に示す瓦葺設状態において、上記空間部S内の空気は、矢印A3で示すように瓦桟7を乗り越えて上方に抜け出しにくいようになっている。
【0015】
従って、
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1を用いた屋根構造では、各平板瓦T1と屋根板6間の空間部Sの空気の換気機能が非常に乏しくなり、上記弊害(空間部S内が異常高温になったり高湿状態になったりすること)が発生し易くなるという問題があった。
【0016】
他方、
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1を用いた屋根構造(
図4及び
図5)では、各平板瓦T1の尻部隆起部11の裏面にある凹み部21Aが、
図6に示すように全幅W1(200mm程度の広幅)に亘って空間のままであるので(下方からの支えがないので)、瓦の葺設作業時に作業員が尻部隆起部11上面の中央付近を踏んだときに、作業員の体重(
図6の符号G)で該尻部隆起部11が割れる(いわゆる踏み割れする)おそれがあった。
【0017】
そこで、本願発明は、瓦の尻部を屋根板上の瓦桟上に載せ掛けて屋根板上に葺設するようにした平板瓦において、上記各課題(上記空間部が換気できないこと、及び瓦の尻部隆起部が踏み割れし易いこと)を解決し得るようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0019】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、
図7〜
図11に例示するように、瓦本体1の尻部2に表面側に隆起した尻部隆起部11を設け、且つ瓦本体1の中央部分を雨水流下部14となる平坦な平板部4とし、さらに瓦本体1の尻部2付近を屋根板6上に固定した瓦桟7上に載せ掛けるとともに瓦本体1の頭部3を下段側瓦の尻部隆起部11上に載せた状態で屋根板6上に葺設するようにした平板瓦Tを対象にしている。
【0020】
尚、本願発明の平板瓦Tにおいて、以下に示す各寸法は、理解し易くするために記載したものであって、特に限定するものではなく許容される範囲で変更可能なものである。
【0021】
そして、本願発明の平板瓦Tは、
図7〜
図11に例示するように、上記尻部隆起部11の裏面中央部に、尻部2付近を瓦桟7上に載せ掛けた瓦葺設状態で瓦本体1の尻部端面2aから瓦桟7の上面における軒先側端縁7aを軒先側に所定小長さLa(例えばLa=10〜15mm程度)だけ越える長さL(例えばL=50〜55mm程度)を有し且つ瓦幅方向の所定幅W(例えばW=200mm程度)の範囲で上面側に凹ませた凹み部21を設けている。即ち、本願発明の平板瓦Tでは、上記凹み部21の瓦長さ方向の長さL(L=50〜55mm程度)が、
図2の公知の凹み部21Aの瓦長さ方向の長さL1(L1=30mm程度)より上記所定小長さLa(La=20〜25mm程度)だけ長くなっている。
【0022】
他方、本願発明の平板瓦Tには、瓦本体1の頭部3付近の裏面に、
瓦本体1の裏面から下向きに突出し且つ瓦葺設状態(
図10)で屋根板6の軒先端部6a上に設けた軒先瓦桟8の上面に接触する下向き突起31と、上記頭部3付近の裏面を
所定深さだけ凹ませた凹み部32とで、上記頭部3裏面と上記軒先瓦桟8上面との間に該軒先瓦桟8上面を迂回する空気通路33を形成している。尚、図示例では、
図8に示すように、下向き突起31として瓦長さ方向に向く細幅リブを瓦幅方向に間隔をもって3本設けている一方、凹み部32を各下向き突起31の設置部分の両側部(合計4箇所)に設けている。
【0023】
そして、
図10に示すように、本願発明の平板瓦Tで屋根板6上を葺くと、軒先端部6aに設置した軒先瓦(平板瓦)Tの頭部3付近の下面と軒先端部6a上に設けた軒先瓦桟8の上面との間に、上記下向き突起31の突出高さと上記凹み部32の凹み深さとからなる上下幅を有した空気通路33が形成されることになる。
【0024】
従って、本願の平板瓦Tを用いた瓦葺設状態では、
図10に例示するように、外気が軒先の前方から矢印A4で示すように軒先瓦Tの頭部3下面と軒先瓦桟8上面との間の空気通路33を通って屋根板6と軒先瓦T間の空間部Sに吹き込み、さらに該空間部Sに侵入した外気(矢印A4)は、当該空間部Sから瓦の尻部裏面の各空気通路26,26を通って(瓦桟7の上面を迂回して)矢印A5で示すように上部側の空間部S側に移動することができる。
【0025】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の平板瓦Tにおいて、上記尻部隆起部11側の上記凹み部21に、
図10に例示する瓦葺設状態において該凹み部21の天井面21b(
図9参照)から瓦桟7の上面に接触するまでの突出高さH(
図9参照)を有した細幅リブ25を瓦長さ方向に向けて適数本設けている。
【発明の効果】
【0026】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の平板瓦Tでは、瓦本体1の頭部3付近の裏面に下向き突起31と凹み部32とを設けて、瓦葺設状態(
図10)において軒先端部6a位置にある軒先瓦(平板瓦)Tの頭部3付近の裏面と軒先端部6a上に設けた軒先瓦桟8の上面との間に空気通路33となる隙間が形成されるようにしているので、外気が矢印A4で示すように屋根板上面と軒先瓦下面との間の空間部Sに侵入し得るとともに、尻部裏面の凹み部21を上記のように瓦長さ方向に長く(長さL)していることにより、尻部裏面側の上記凹み部21が瓦桟7の上面を迂回して瓦長さ方向に連続する空気通路26となるので、上記軒先瓦と屋根板間の空間部Sに侵入した空気(矢印A4)が上記凹み部21の空気通路26を通って上方側の空間部S内に移動できるようになる。
【0027】
従って、本願請求項1の平板瓦Tを使用すると、屋根板上面と各平板瓦下面との間の各空間部S内の空気を自然に換気することができるので、上記各空間部Sが異常高温になったり高湿状態になったりするのを緩和できる。即ち、夏季の日照時には瓦の輻射熱で上記空間部S内が異常高温になったり(延いては屋根板6及び天井裏を介して部屋内が暑くなる)、雨天時には高湿状態になったり(夜間に冷却されると結露して屋根板6の腐食やカビの発生等の原因になる)するが、該空間部Sの空気を換気すると上記高温状態や高湿状態を緩和できるという効果がある。
【0028】
又、軒先瓦Tの頭部3下面に形成した空気通路33は、下向き突起31の突出高さと凹み部32の凹み深さとの合計上下幅を有しているので、該空気通路33の通路断面積を大きくすることができる。
【0029】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明の平板瓦Tでは、上記尻部隆起部11側の上記凹み部21に、上記瓦葺設状態において上記瓦桟7の上面に接触するまでの突出高さHを有した細幅リブ25を設けているので、尻部隆起部11の裏面側に広幅Wの凹み部21を有したものであっても、細幅リブ25で尻部隆起部11を下支えできる。
【0030】
従って、この請求項2の平板瓦Tでは、瓦の葺設作業時に作業員が尻部隆起部11上面の中央付近を踏んでも(作業員の体重が尻部隆起部11に集中する)、該尻部隆起部11が細幅リブ25で下支えされていることにより、尻部隆起部11が不用意に割れることがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図4】
図1の平板瓦を屋根板上に千鳥状に葺設した状態の平面図である。
【
図5】公知(
図3)の平板瓦を用いた瓦葺設状態の断面図(
図4のV−V断面相当図)である。
【
図7】本願実施例の平板瓦を表側から見た平面図である。
【
図10】本願実施例(
図9)の平板瓦を用いた瓦葺設状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施例]
以下、
図7〜
図11を参照して本願実施例の平板瓦を説明する。
【0033】
図7〜
図9に示す本願実施例の平板瓦Tと、
図1〜
図3に示す公知の平板瓦T1とは、尻部隆起部11の裏面構造と頭部3の裏面構造とが異なっているが、その他はほぼ同構造である。そして、本願実施例(
図7〜
図11)の平板瓦Tの説明は、上記背景技術の項で説明した公知(
図1〜
図5)の平板瓦T1のものと重複する部分があるが、以下に再掲する。
【0034】
即ち、本願実施例の平板瓦Tも、
図7に示す表面(おもてめん)は、尻部2に尻部隆起部11と左右各側部にそれぞれ側部隆起部12,13を設けている一方、それらの各隆起部11,12,13で囲われた部分を平坦な雨水流下部14としている。この雨水流下部14は、ほぼ全面に亘ってほぼ同じ板厚さ(例えば15mm程度の厚さ)の平板部4となっている。尚、以下の説明でも、
図7及び
図8の平板瓦Tにおいて、左右方向を瓦幅方向といい、上下方向(尻部2と頭部3を結ぶ方向)を瓦長さ方向ということがある。
【0035】
瓦本体1の裏面は、
図8及び
図9に示すように、上記雨水流下部14が対応する面積部分を平坦な(段差のない)平面部15としている一方、上記尻部隆起部11が対応する部分を上面側に凹んだ凹み部21としている。
【0036】
本願実施例の平板瓦Tにおける上記凹み部21も尻部隆起部11の厚さを削ぐ(薄くする)ために設けられたものであるが、この実施例で採用している凹み部21の大きさは、瓦幅方向の幅W(
図8、
図11)が公知の凹み部21Aの幅W1(
図2)と同じで、瓦長さ方向の長さL(
図8)が公知の凹み部21Aの長さL1(
図2)より所定長さだけ長くしている。尚、この凹み部21における瓦長さ方向の長さLを長くした理由については後述する。
【0037】
この凹み部21の深さは、瓦裏面の平面部15から凹み部天井面21b(
図9)までの垂直距離であるが、この深さは、後述する細幅リブ25の突出高さH(
図9)と同じであって、該寸法Hは15〜18mm程度ある。
【0038】
この凹み部21の幅方向両端部外側には、瓦裏面の上記平面部15と同一面となる瓦桟接触面16,16が設けられている(
図2の公知
例と同じ)。
【0039】
瓦本体1の尻部2側の端部には、瓦幅方向に間隔をもって下向きに(裏面側に)突出する2つの係止突部20,20が設けられている。この各係止突部20,20は、厚さ(瓦長さ方向の寸法)が10mm程度で、後述する瓦桟7に引っ掛けてこの平板瓦T1を係止するためのものである(
図2、
図3の公知
例と同じ)。
【0040】
この実施例の平板瓦Tも、葺設時には
図10に示すように屋根板6上に固定した瓦桟7上に尻部2の係止突部20,20を引っ掛けて該瓦桟7上に瓦の尻部2を載せ掛けるが、瓦桟7における屋根傾斜方向の幅D(
図8〜
図10参照)は一般に30mm程度である(
図2〜
図3の公知例と同じ)。
【0041】
ところで、本願実施例の平板瓦Tにおいて、尻部隆起部11の裏面に設けた凹み部21は、
図8〜
図10に例示するように、尻部2付近を瓦桟7上に載せ掛けた瓦葺設状態で瓦本体1の尻部端面2aから瓦桟7の上面における軒先側端縁7aを軒先側に所定小長さLa(例えばLa=10〜15mm程度)だけ越える長さL(例えばL=50〜55mm程度)を有している。即ち、本願実施例の平板瓦Tでは、上記凹み部21の瓦長さ方向の長さL(L=50〜55mm程度)が、
図2の公知の凹み部21Aの瓦長さ方向の長さL1(L1=30mm程度)より上記所定長さ(20〜25mm程度)だけ長くなっている。従って、上記瓦葺設状態において、凹み部21の頭側端部21aと瓦桟7上面の軒先側端縁7aとの間の所定小長さLa(
図8及び
図8のLa=15〜20mm程度)範囲が上記空間部Sに開口するようになる。
【0042】
又、本願実施例の平板瓦Tは、上記凹み部21に、瓦長さ方向に向け且つ上記瓦葺設状態において該凹み部21の天井面21b(
図9参照)から瓦桟7の上面に接触するまでの突出高さH(
図9参照)を有した細幅リブ25を適数本設けている。尚、この細幅リブ25の設置本数は、1〜5本程度のうちの適当な本数を採用できるが、この実施例では
図8及び
図11に示すように瓦幅方向に等間隔をもって3本設けている。
【0043】
細幅リブ25の突出高さH(
図9)は、図示例のものでは凹み部21の深さと同じであって、該突出高さHは15〜18mm程度である。
【0044】
そして、上記凹み部21は、各細幅リブ25(3本)で瓦幅方向に複数箇所(4箇所)に分割されるが、その各分割凹み部は、後述するようにそれぞれ瓦桟7の上面側を迂回して瓦長さ方向に連続する空気通路26となるものである。即ち、この実施例の平板瓦Tも、
図10に例示するように、屋根板6上に固定している各瓦桟7,7・・に尻部2の裏面を載せ掛けて葺設するが、その瓦葺設状態において瓦の尻部裏面にある凹み部21の頭側端部21a(平面部15の尻側端部15aと同じ)が瓦桟7の軒先側端縁7aより所定小長さLaだけ軒先側に位置しているので、瓦桟7に載せ掛けた瓦の尻部裏面には、瓦桟7の上面を迂回して瓦長さ方向に連続する複数条(4条)の空気通路26,26・・が形成されることになる。そして、この各空気通路26は、
図9に示すように、上記所定小長さLaの範囲部分が空気入口26aとなる一方、空気通路26の尻側端部が空気出口26bとなる。
【0045】
他方、この実施例の平板瓦Tには、瓦本体1の頭部3付近の裏面に、
瓦本体1の裏面から下向きに突出し且つ瓦葺設状態(
図10)で屋根板6の軒先端部6a上に設けた軒先瓦桟8の上面に接触して該頭部3裏面と該軒先瓦桟8上面との間に空気通路33となる隙間を形成するための所定小高さの下向き突起31を設けている。図示例では、
図8に示すように、下向き突起31として瓦長さ方向に向く細幅リブを瓦幅方向に間隔をもって3本設けている。
【0046】
又、この実施例では、上記各下向き突起(細幅リブ)31,31,31の設置部分には、頭部3付近の裏面を
所定深さ(例えば4〜5mm程度の深さ)だけ凹ませた凹み部32が形成されている。そして、この頭部3側の空気通路33は、下向き突起31の突出高さ(頭部3裏面から突起先端までの突出高さ)と凹み部32の凹み深さ(頭部3裏面から凹み部天井面までの深さ)との合計上下幅を有することとなり、従って該空気通路33の通路断面積を大きくすることができる。因みに、凹み部32の天井面から下向き突起(細幅リブ)31の先端までの突出高さは例えば10〜15mm程度である。
【0047】
図7〜
図9に示す本願実施例の平板瓦Tは、
図10に示す瓦葺設状態において次のように機能する。
【0048】
即ち、各平板瓦Tは、
図10に示すように、屋根板6上に固定した瓦桟7に尻部端部の係止突部20を引っ掛けて順次葺設されているが、この瓦葺設状態では瓦本体1の尻部2(尻部隆起部11)の裏面が瓦桟7上に載せ掛けられている。尚、この実施例の各平板瓦Tも、
図4に示すように千鳥状に配設することができる。
【0049】
そして、
図10の瓦葺設状態では、軒先端部6aに設置した軒先瓦(平板瓦)Tの頭部3付近の下面部分に上記下向き突起31及び凹み部32からなる空気通路33(軒先瓦桟8の上面を迂回するもの)が形成されている一方、各平板瓦Tの尻部裏面部分に上記凹み部21からなる空気通路26(瓦桟7の上面を迂回するもの)が形成されている。
【0050】
従って、本願実施例の平板瓦Tを用いた瓦葺設状態では、外気が軒先の前方から矢印A4(
図10)で示すように軒先瓦Tの頭部3下面と軒先瓦桟8上面との間の空気通路33を通って屋根板6と軒先瓦T間の空間部Sに吹き込み、さらに該空間部Sに侵入した外気(矢印A4)は、当該空間部Sから瓦の尻部裏面の空気通路26を通って矢印A5で示すように順次上部側の空間部S側に移動することができる(各空間部S内の空気が換気される)。
【0051】
このように、上記各空間部S内の空気が移動する(換気される)と、夏季の日照による瓦の輻射熱で上記空間部Sが高温状態になる(部屋内が暑くなる)のを緩和できる一方、雨天時に上記空間部Sが高湿状態になる(夜間に温度が低下すると結露する)のを緩和できるという効果を達成できる。
【0052】
このように、上記各空間部S内の空気が移動する(換気される)と、夏季の日照による瓦の輻射熱で上記空間部Sが高温状態になる(部屋内が暑くなる)のを緩和できる一方、雨天時に上記空間部Sが高湿状態になる(夜間に温度が低下すると結露する)のを緩和できるという効果を達成できる。
【0053】
尚、軒先瓦Tの頭部3下面と軒先瓦桟8上面との間に形成された空気通路33は、下向き突起31の突出高さと凹み部32の凹み深さとの合計上下幅を有しているので、頭部3下面に単に下向き突起31だけを設けたものより該空気通路33の通路断面積を大きくすることができる。
【0054】
他方、尻部2裏面の上記凹み部21には、瓦長さ方向に向けて複数条(3条)の細幅リブ25,25,25が設けられていて、該各細幅リブ25,25,25で広幅Wの凹み部21を瓦幅方向に複数の空気通路26,26・・に分割している。そして、各細幅リブ25,25,25は、瓦葺設状態において、
図11に示すように各細幅リブ25の下端面25aがそれぞれ瓦桟7の上面に接触しているので、尻部隆起部11の上面に作業員の体重Gが加わったときに、各細幅リブ25,25,25で尻部隆起部11を下支えする機能がある。
【0055】
従って、瓦の葺設作業時に作業員が尻部隆起部11上面の中央付近を踏んでも(作業員の体重が尻部隆起部11に集中する)、該尻部隆起部11が細幅リブ25で下支えされていることにより、尻部隆起部11が不用意に割れることがないという効果を達成できる。
【符号の説明】
【0056】
1は瓦本体、2は尻部、2aは尻側端部、3は頭部、4は平板部、6は屋根板、6aは軒先端部、7は瓦桟、7aは軒先側端縁、8は軒先瓦桟、11は尻部隆起部、14は雨水流下部、15は平面部、20は係止突部、21は凹み部、21bは天井面、25は細幅リブ、26は尻部側の空気通路、31は下向き突起、32は凹み部、33は頭部側の空気通路である。