(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
OLT(Optical Line Terminal)と、前記OLTと光分岐器を介して接続される2以上の複数のONU(Optical Network Unit)を備え、複数の前記ONUから時分割多重方式で前記OLTにデータが送信されるPON(Passive Optical Network)システムであって、
複数の前記ONUのうち少なくとも1つの第1ONUは、
前記第1ONUに接続される端末装置からの緊急通報要求を検出する緊急通報検出部と、
前記緊急通報検出部により前記緊急通報要求が検出された場合において、前記第1ONUの前記OLTに対する接続が確立されていない場合、前記光分岐器に前記第1ONU以外のONUと前記OLTとの接続遮断要求を出力する緊急発信制御部と、
を有し、
前記光分岐器は、
前記緊急発信制御部からの前記接続遮断要求に従って、前記第1ONU以外のONUと前記OLTとの接続を遮断する光回線制御部を有する、
PONシステム。
前記緊急発信制御部は、前記第1ONUの前記OLTに対する接続が確立されていない場合において、前記OLTから前記第1ONUへの下り信号を受信しているとき、前記接続遮断要求を出力する、
請求項1に記載のPONシステム。
前記光分岐器は、前記第1ONUからの上り信号を前記光回線制御部と、複数の前記スイッチのうち前記第1ONUに対応する第1スイッチとに分配する分岐部をさらに備え、
前記光回線制御部は、前記分岐部を介して前記接続遮断要求を受信する、
請求項3に記載のPONシステム。
OLT(Optical Line Terminal)と、前記OLTと光分岐器を介して接続される2以上の複数のONU(Optical Network Unit)を備え、複数の前記ONUから時分割多重方式で前記OLTにデータが送信されるPON(Passive Optical Network)システムの通信制御方法であって、
複数の前記ONUのうち少なくとも1つの第1ONUが、接続される端末装置からの緊急通報要求を検出し、
前記緊急通報要求が検出された場合において、前記第1ONUの前記OLTに対する接続が確立されていない場合、前記光分岐器に前記第1ONU以外のONUと前記OLTとの接続遮断要求を出力し、
前記光分岐器が前記接続遮断要求に従って、前記第1ONU以外のONUと前記OLTとの接続を遮断する、
通信制御方法。
前記第1ONUの前記OLTに対する接続が確立されていない場合において、前記第1ONUが前記OLTから前記第1ONUへの下り信号を受信しているとき、前記接続遮断要求を出力する、
請求項6に記載の通信制御方法。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)サービスを実現する光アクセスシステムの一例として、PON(Passive Optical Network)システムがある。PONシステムは、通信局舎に設けられる局側装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、加入者の宅内に設けられる宅側装置である複数のONU(Optical Network Unit)とを含む。
【0003】
PONシステムでは、一つのOLTに複数のONUが接続される。OLTから敷設された1本の光ファイバケーブルは、光信号を分岐・多重する光スプリッタを介して、複数のONUで共有される。
【0004】
PONシステムでは、OLTと光スプリッタ間の1本の光ファイバケーブルを複数のONUで共有するため、ONUからOLTに向かう上り方向において、各ONUが出力する光信号の衝突を回避する必要ある。このため、OLTが、時分割多重方式により各ONUの光信号の出力タイミングを制御している。
【0005】
PONシステムにおいて、任意のONUが故障等によって常時発光状態となると、この常時発光状態のONUからの光信号が他のONUからの光信号に重なり、他のONUの通信が困難になるという障害が発生する。そこで、ONUの常時発光による通信障害からの復旧を図る光通信システムが提案されている(特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1に記載の光通信システムでは、光分岐器によって分岐される、複数のONUに対応する複数の光伝送路に、それぞれ光スイッチが設けられている。光通信システムに通信障害が発生すると、光スイッチを順次切り替えながら、ONUと光分岐器とを遮断させ、通信障害が解消されたか否かを判定する。通信障害が解消されたと判定した時点で、遮断させている光スイッチの遮断状態が維持される。
【0007】
特許文献2に記載のPONシステムでは、光カプラ部に光検出部が設けられている。光検出部は、各ONUからの光信号を検出し、常時発光異常が発生しているか否かを監視する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、PON(Passive Optical Network)システム及びその通信制御方法に関する。PONシステムは、通信局舎と加入者宅を光ファイバケーブルで接続する光アクセスシステムの1つである。PONシステムでは、光ファイバケーブルによる光伝送路の途中に、光信号を分岐・多重する光スプリッタが設置される。光伝送路を光スプリッタで分岐することで、通信局舎側の終端装置であるOLT(Optical Line Terminal)1台に対して、加入者側の終端装置であるONU(Optical Network Unit)を複数収容することが可能である。
【0016】
実施の形態について説明する前に、
図6を参照して比較例にかかるPONシステムの問題点について説明する。
図6では、1台のOLT100に3台のONU500〜502が接続された例を示している。
図6に示すように、PONシステム1は、OLT100、光ファイバケーブル200、光スプリッタ301、光ファイバケーブル400〜402、ONU500〜502、LAN(Local Area Network)ケーブル600〜602、VoIP−GW(Voice over Internet Protocol - gateway)700〜702、電話線800〜802、電話機端末900〜902を備える。
【0017】
通信局舎に設置されるOLT100は、光ファイバケーブル200を介して、電柱上などに設置される光スプリッタ301と接続される。光スプリッタ301は光回線を分岐させ、光ファイバケーブル400〜402を介して、加入者の宅内に設けられる宅側装置である複数のONU500〜502にそれぞれ接続される。
【0018】
ONU500〜502には、LANケーブル600〜602を介してVoIP(Voice over Internet protocol)機能を有するVoIP−GW700〜702がそれぞれ接続されている。各VoIP−GW700〜702は、さらに電話線800〜802を介して電話機端末900〜902にそれぞれ接続される。このようにPONシステムはP2MP(Point to Multi Point)システムであり、近隣の加入者の光回線を束ねて光伝送路やOLTを共有することによって、経済的優位性を確保している。
【0019】
各ONU500〜502から出力される光信号が、共有されている光ファイバケーブル200において衝突しないように、各ONU500〜502は、OLT100の指示に従って決められたタイミング、期間だけ光信号を出力する。これにより、同一PONシステム内のすべての回線は、安定した通信環境が保障されている。なお、
図6の例では、光回線が3回線の場合の一般的なサービスの形態を示しているが、回線数及び機器の構成はこれに限定されない。
【0020】
このようなPONシステムにおいて、ONU500〜502のいずれかが故障すると、OLT100の制御が及ばず、故障したONU500〜502のいずれかが自由に光信号を出力してしまうことがある。このように、特定のONUが常時発光状態となり、光信号の出力を制御できなくなると、光ファイバケーブル共有区間において他のONUが出力する光信号と衝突して通信障害が発生し、これらの回線のPONリンクが維持できなくなる。
【0021】
このような問題によりPONリンクが維持できなくなると、電話サービスが利用できなくなる。電話サービスが従来のアナログ回線から光回線に移行されている中で、特に、緊急事態が発生した際に、電話機端末900〜902から警察署や消防署などの機関に緊急通報することができないのは致命的な問題となる。
【0022】
実施の形態では、PONシステムを介した電話サービスにおいて、特定のONUが故障により常時発光状態となり、光ファイバケーブル共有区間における他のONUの通信が遮断された場合においても、通信が遮断された他のONUによる緊急通報を可能にするものである。
【0023】
PONシステムとしては、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.3ahに規定されたGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)-Passive Optical Network)や、10G−EPON(10Gigabit-Ethernet Passive Optical Network)等が採用可能である。これらのPONシステムの基本的な説明は省略し、本実施形態において特徴的な構成について説明する。
【0024】
実施の形態1
図1は、実施の形態1にかかるPONシステム10の構成を示す図である。
図1に示すように、PONシステム10は、OLT100、光ファイバケーブル200、光分岐器300、光ファイバケーブル400〜402、ONU500〜502、LANケーブル600〜602、VoIP−GW700〜702、電話線800〜802、電話機端末900〜902を備える。なお、
図1に示す例では、光回線が3回線の場合の一般的な電話及びデータ転送サービスの形態が示されるが、回線数、関連機器の構成及びサービス形態はこれに限定されない。
図1において、
図6と同様の構成要素には同一の符号を付している。
【0025】
OLT100は、PONシステム10における通信事業者側の終端装置である。ONU500〜502は、PONシステム10において、加入者側の宅内に設置される終端装置である。光回線は、光ファイバケーブル200、光ファイバケーブル400により構成される。加入者は契約により通信事業者が提供する光回線を利用することができる。
【0026】
光分岐器300は、上位側に1つの光IF(interface)を、下位側に複数の光IFを有している。光分岐器300は、光回線を複数に分岐する機能を持つ。光分岐器300の上位側の光IFには、光ファイバケーブル200を介して、通信事業者側の終端装置であり、PONシステム10の全体を制御するOLT100が接続されている。また、光分岐器300の下位側の複数の光IFには、それぞれ光ファイバケーブル400〜402を介して、ONU500〜502が接続されている。
【0027】
ONU500〜502は、光回線を終端し、光信号と電気信号を相互に変換する。ONU500〜502は、上位側に光IFを、下位側に電気IFを有している。ONU500〜502の上位側の光IFには、それぞれ光ファイバケーブル400〜402を介して光分岐器300が接続されている。
【0028】
OLT100から送信された光信号は、光ファイバケーブル200を通って、光分岐器300によりONU500〜502へと分岐される。一方、ONU500〜502から送信された光信号は、光分岐器300によって合流され、光ファイバケーブル200を通ってOLT100に送信される。
【0029】
ONU500〜502には、それぞれLANケーブル600〜602を介してVoIP−GW700〜702が接続されている。VoIP−GW700〜702は、IP(Internet Protocol)パケットをルーティングする機能やIPパケットと音声データを相互に変換する機能を有している。VoIP−GW700〜702は、上位側に電気IFを、下位側に電話線IFを有している。LANケーブル600〜602は、VoIP−GW700〜702の上位側の電気IFに接続される。VoIP−GW700〜702の下位側の電話線IFには、電話線800〜802を介して電話機端末900〜902が接続されている。
【0030】
VoIP−GW700〜702は、電話網とIPネットワークの境界に配置される。VoIP−GW700〜702は、電話線800〜802から入力されるアナログ音声データをデジタル音声データに変換し、IPパケットに分割してLANケーブル600〜602を介してONU500〜502にそれぞれ送信する。また、VoIP−GW700〜702は、ONU500〜502側から受け取ったIPパケットをアナログ音声データに復元し、電話線800〜802を介して電話機端末900〜902へそれぞれ送出する。デジタル音声データの圧縮及び伸張は、VoIP−GW700〜702により行われる。
【0031】
ここで、光分岐器300の構成及び機能について詳細に説明する。光分岐器300は、光スプリッタ301、光回線スイッチ部310〜312、上り信号分岐部320〜322、光回線制御部330を有する多機能スプリッタである。光スプリッタ301の上位側IFは光ファイバケーブル200を介してOLT100と接続され、下位側の複数のIFはそれぞれ光回線スイッチ部310〜312と接続されている。
【0032】
光スプリッタ301は、光ファイバケーブル200による光伝送路を3つの光伝送路へと分岐する。すなわち、光スプリッタ301は、3つの光回線を形成する。光回線スイッチ部310〜312は、光スプリッタ301により分岐された3つの光伝送路にそれぞれ接続されている。光スプリッタ301は、OLT100からの下り信号を分配して複数の光回線スイッチ部310〜312に転送する。
【0033】
また、光スプリッタ301は、各ONU500〜502からの上り信号を合流させてOLT100に転送する。各ONU500〜502からの上り信号が光スプリッタ301で合流した後に衝突しないように、OLT100は、ONU500〜502から送信された制御フレームに基づいて、ONU500〜502内のバッファに蓄積されているデータの送信開始時刻及び送信許可量を演算する。OLT100は、指示信号を挿入した制御フレームを、光ファイバケーブル200及び光分岐器300を介してONU500〜502に送信する。
【0034】
光回線スイッチ部310〜312は、3つの光回線の接続/遮断をそれぞれ切り替える。光回線スイッチ部310〜312の上位側IFは光スプリッタ301と接続されており、下位側IFはそれぞれ上り信号分岐部320〜322と接続されている。
【0035】
上り信号分岐部320〜322は、2つの上位側IFと、1つの下位側IFを有している。上り信号分岐部320〜322の一方の上位側IFは光回線制御部330と接続されており、他方の上位側IFはそれぞれ光回線スイッチ部310〜312と接続されている。上り信号分岐部320〜322の下位側IFは、光ファイバケーブル400〜402を介してそれぞれONU500〜502と接続されている。
【0036】
上り信号分岐部320〜322は、光回線スイッチ部310〜312からの下り信号をONU500〜502にそれぞれ転送する。また、上り信号分岐部320〜322は、ONU500〜502からの上り信号を、光回線制御部330と光回線スイッチ部310〜312とに分岐して転送する。すなわち、上り信号分岐部320〜322は、ONU500〜502からの上り信号をそれぞれ光回線制御部330、光スプリッタ301へと分配する。
【0037】
光回線制御部330は、上り信号分岐部320〜322からの上り信号から、光回線制御に関する要求を検出し、その要求に基づいて光回線スイッチ部310〜312を制御することで各光回線を接続又は遮断させる。
【0038】
次に、ONU500〜502の構成及び機能について詳細に説明する。ONU500〜502は、それぞれ同一の構成を有している。ここでは、代表としてONU500について説明する。ONU500は、光送受信部510、光回線終端部520、パケット転送部530、緊急通報検出部540、緊急発信制御部550を有している。
【0039】
光送受信部510は、光ファイバケーブル400を介して光分岐器300の上り信号分岐部320に接続されている。また、光送受信部510は、光回線終端部520、緊急発信制御部550にそれぞれ接続されている。光送受信部510は、OLT100から受信する光信号を電気信号に変換してデータを復調する。また、光送受信部510は、光回線終端部520から入力されるデータを光信号に変調する。
【0040】
光回線終端部520は、光送受信部510、パケット転送部530、緊急発信制御部550にそれぞれ接続されている。光回線終端部520は、OLT100とのPONリンクを維持し、OLT100からの指示に従って上りパケットを光送受信部510に送信し、光送受信部510の発光タイミングの制御を行う。
【0041】
パケット転送部530は、光回線終端部520、緊急通報検出部540に接続されている。また、パケット転送部530は、LANケーブル600を介してVoIP−GW700と接続されている。パケット転送部530は、下りパケットをVoIP−GW700へ転送する。また、パケット転送部530は、上りパケットを光回線終端部520へ転送する。
【0042】
電話機端末900から送信され、VoIP−GW700にてIP化された音声データの上りパケットは発信先情報を含む。パケット転送部530は、さらに、上りパケットのうち、音声データの発信先情報を含むパケットのみを複製し、緊急通報検出部540へ転送する。
【0043】
緊急通報検出部540は、パケット転送部530と緊急発信制御部550とに接続されている。緊急通報検出部540は、パケット転送部530から音声データの発信先情報を含むパケットを受信する。緊急通報検出部540は、当該パケットを解析し、発信先情報を検出する。緊急通報検出部540は、例えば、発信先情報として、発信先のダイヤル番号を検出することができる。そして、緊急通報検出部540は、発信先情報が警察署や消防署などの機関に対する緊急通報(110番や119番等)であるか否かを判定する。発信先情報が緊急通報である場合、緊急通報検出部540は緊急発信制御部550へエンドユーザが緊急通報の発信を必要としていること示す緊急通報要求を通知する。
【0044】
緊急発信制御部550は、光送受信部510、光回線終端部520と緊急通報検出部540とに接続されている。緊急発信制御部550は、光回線終端部520からPONリンクに関する情報を取得する。また、緊急発信制御部550は、緊急通報検出部540から緊急通報の発信を示す緊急通報要求を受信する。
【0045】
緊急発信制御部550は、緊急通報検出部540から緊急通報の発信を示す緊急通報要求を受信した場合、光回線終端部520から光回線の情報を取得する。ここで、他のONU501、502のいずれかが常時発光状態である場合、下り信号を受信しているにも関わらず、PONリンクが確立されない。緊急発信制御部550は、このように下り信号を受信しているにも関わらずPONリンクが確立されていないことを検出した場合、光分岐器300に対して他の光回線を遮断することを要求する。
【0046】
すなわち、緊急発信制御部550は、ONU500に対する下り信号を受信している場合において、ONU500のPONリンクが遮断されているときに、ONU500以外のONU501、502のOLT100との接続遮断要求を出力する。この際、緊急発信制御部550は、OLT100からの制御に従い上り信号を送信させるPONシステムのプロトコルに従うことなく、光送受信部510に対して光送信を一時的に許可し、自発的に接続遮断要求を光回線制御部330に送信する。
【0047】
光分岐器300の光回線制御部330は、上り信号分岐部320を介して受信した上り信号から送信元の光回線以外の光回線を遮断する接続遮断要求を検出すると、送信元の光回線以外の光回線を遮断する。すなわち、光回線制御部330は、緊急通報を発信するONU500以外のONU501、502をOLT100へ接続する光回線スイッチ部311、312を開状態とする。これにより、ONU500とOLT100との間に、P2P(Pint to Point)接続を一時的に確立させることができる。
【0048】
このように、特定のONUの常時発光により同一PONシステム内の他の光回線の通信が遮断されていても、緊急通報を発信する光回線を除いた他の光回線を物理的に遮断させることによって、当該光回線の通信環境を復旧させ、緊急通報が可能となる。
【0049】
また、ONU500だけでなく、ONU501、502もまた、それぞれ緊急通報検出部、緊急発信制御部を備えている。このため、ONU501に接続される電話機端末901やONU502に接続される電話機端末902から続けて2以上の緊急発信要求が発生した場合でも、同様に緊急通報を発信する光回線を除いた光回線を一時的に遮断させ、ONU501とOLT100との間、ONU502とOLT100との間に接続を確立させることができる。
【0050】
次に、
図2、3、4を参照して、実施の形態1にかかるPONシステム10の通信制御方法について説明する。ここでは、ONU500により緊急通報を発信する例が示される。まず、
図2を参照して、ONU500の緊急通報検出部540の動作について説明する。
図2は、緊急通報検出部540の動作を説明するフローチャートである。
【0051】
図2に示すように、緊急通報検出部540は、VoIP−GW700からパケット転送部530を介して受信した音声データの発信先情報を含むパケットを解析し、発信先情報を検出する(ステップS101)。発信先情報としては、例えば、発信先のダイヤル番号が検出される。
【0052】
そして、緊急通報検出部540は、発信先情報が緊急通報か否かを判断する(ステップS102)。発信先情報が緊急通報でない場合(ステップS102NO)、緊急通報検出部540は処理を終了する。発信先情報が緊急通報である場合(ステップS102YES)、緊急通報検出部540は緊急発信制御部550へ緊急通報の発信が必要なことを示す緊急通報要求を通知する(ステップS103)。
【0053】
次に、
図3を参照して、ONU500の緊急発信制御部550の動作について説明する。
図3は、緊急発信制御部550の動作を説明するフローチャートである。
図3に示すように、緊急発信制御部550は、緊急通報検出部540から緊急通報要求を受信すると(ステップS201)、光回線終端部520を介して光回線の情報を収集し(ステップS202)、光回線の状況を調査する。緊急発信制御部550は、光回線情報に基づいて、PONリンクが遮断されているか否かを判断する(ステップS203)。
【0054】
PONリンクが確立されている場合は、正常にONU500による通信が可能である。PONリンクが遮断されていない場合(ステップS203NO)、緊急発信制御部550は処理を終了する。一方、PONリンクが確立されていない場合、この時点ではONU500による通信が不能である。PONリンクが遮断されている場合(ステップS203YES)、下り信号の有無が確認される(ステップS204)。
【0055】
下り信号が受信されていない場合(ステップS204NO)、OLT100の異常又はOLT100とONU500間の光伝送路に異常があると判断され、処理が終了する。下り信号が受信されている場合(ステップS204YES)、OLT100やOLT100とONU500間の光伝送路自体は正常である。この場合、他のONU501、502のいずれかが常時発光状態となり、規定の時間外に光信号を送信していることによって、光ファイバケーブル200区間において上り信号の衝突が発生していることが考えられる。これにより、ONU500から送信された光信号がOLT100に到達できない。したがって、この場合、緊急発信制御部550はPONリンクが遮断されていると判定する(ステップS205)。
【0056】
このような場合において、緊急発信制御部550は、緊急通報が発信できるように、光分岐器300の制御を行う。具体的には、まず、緊急発信制御部550が光送受信部510に対して自発的な光送信を一時的に許可し(ステップS206)、光送信が可能な状態とする。また、緊急発信制御部550は、ONU500を接続する光回線以外の光回線を遮断することを要求する接続遮断要求を生成し、OLT100からの制御に従い上り信号を送信させるPONシステムのプロトコルに従うことなく、自発的に光分岐器300の光回線制御部330に対して送信する(ステップS207)。
【0057】
最後に、
図4を参照して、光分岐器300の動作について説明する。
図4は、光分岐器300の動作を説明するフローチャートである。
図4に示すように、光回線制御部330は、上り信号分岐部320を介して受信する信号のうち、光回線制御に関する情報を収集する(ステップS301)。そして、ONU500の緊急発信制御部550が送信した接続遮断要求を受信したか否かが判断される(ステップS302)。接続遮断要求を検出した場合(ステップS302YES)、光回線スイッチ部310だけを接続状態とし、他のONU501〜502へ接続される光回線スイッチ部311〜312が遮断される(ステップS303)。以上の動作により、ONU500のPONリンクが確立され、通信可能な状態となり、電話機端末900からの緊急通報の発信、通話が可能となる。
【0058】
以上説明したように、実施の形態によれば、下位にあるVoIP−GWから受信する音声パケットを解析することで、エンドユーザからの緊急通報の発信をONU自体が認識することができる。ONUが緊急通報の発信を認識した場合、他のONUの常時発光によって自回線の通信ができない場合でも、該ONUの回線を強制的に遮断することで、自回線を復旧することができ緊急通報の発信を確保することが可能となる。
【0059】
このように、緊急通報が必要な回線にあるONUが、自回線の状況を判断して、自回線を一時的に復旧させる処理が実行されるため、他のONUの状況を取得したり、OLTや他のONUによる動作が省略可能である。
【0060】
実施の形態2
図5を参照して、実施の形態2にかかる通信制御方法について説明する。
図5は、緊急発信制御部550の動作を説明するフローチャートである。実施の形態2では、ONU500が定期的に光回線の状況を監視し、常時発光によりPONリンクが遮断されているか否かをあらかじめ判定する。緊急通報の発信を示す緊急通報要求を緊急発信制御部550が受信すると、即座に他の回線の遮断を光分岐器300に要求する。
【0061】
なお、実施の形態2の通信制御方法を実行するPONシステムの構成は、
図1に示すPONシステム10と同一であるため、説明を省略する。また、緊急通報検出部540、光分岐器300の動作は、実施の形態1と同様である。
【0062】
緊急通報検出部540は、実施の形態1と同様に、パケット転送部530を介して受信した音声データの発信先情報を含むパケットを解析し、発信先情報を検出する。そして、緊急通報検出部540は、発信先情報が緊急通報である場合には、緊急発信制御部550へ緊急通報の発信が必要なことを示す緊急通報要求を通知する。
【0063】
図5に示すように、緊急発信制御部550は、緊急通報検出部540からの通知に関係なく、光回線終端部520を介して光回線の情報を収集し(ステップS401)、定期的に光回線終端部520を監視する。そして、緊急発信制御部550は、光回線情報に基づいて、PONリンクが遮断されているか否かを判断する(ステップS402)。
【0064】
PONリンクが確立されている場合(ステップS203NO)、緊急発信制御部550はステップS401に戻り、光回線の状態監視を継続する。一方、PONリンクが確立されていない場合(ステップS402YES)、下り信号の有無が確認される(ステップS403)。
【0065】
下り信号が受信されていない場合(ステップS403NO)、緊急発信制御部550は、OLT100の異常又はOLT100とONU500間の光伝送路に異常があると判断し、ステップS401に戻り、光回線の状態監視を継続する。下り信号が受信されている場合(ステップS403YES)、緊急発信制御部550は他のONU501、502の常時発光によりPONリンク遮断されていると判定する(ステップS404)。
【0066】
他のONU501、502の常時発光による光回線異常と判定した後、緊急発信制御部550は、緊急通報検出部540からの緊急通報要求の有無を確認する(ステップS405)。緊急通報要求を受信していない場合(ステップS405NO)、緊急発信制御部550は光回線の状態監視を継続する。
【0067】
一方、緊急通報要求を受信している場合(ステップS405YES)、緊急発信制御部550は、光送受信部510に対して、自発的な光送信を一時的に許可し、光送信が可能な状態とする(ステップS406)。また、緊急発信制御部550は、ONU500を接続する光回線以外の光回線を遮断することを要求する接続遮断要求を生成し、光分岐器300の光回線制御部330に対して送信する(ステップS407)。
【0068】
以上説明したように、実施の形態によれば、特定のONUが常時発光による故障を発生し、同一PONシステム内の他の回線の通信が遮断されていても、緊急通報が必要な回線を除いたすべての回線を一時的に遮断させることによって、当該回線の通信環境を復旧させ、緊急通報が可能となる。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【解決手段】PONシステム10は、OLT100と光分岐器300を介して接続される複数のONU500〜502を備え、時分割多重方式でOLT100にデータが送信される。ONU500は、電話機端末900からの緊急通報要求を検出する緊急通報検出部540と、緊急通報要求が検出された場合において、ONU500のOLT100に対する接続が確立されていない場合、光分岐器300にONU501、502とOLT100との接続遮断要求を出力する緊急発信制御部550とを有する。光分岐器300は、接続遮断要求に従って、ONU501、502とOLT100との接続を遮断する光回線制御部330を有する。