(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記カメラ異常検出手段は、車両が予め設定しておいた車速以上で走行している場合に上記カメラの異常を検出することを特徴とする請求項1記載の車両のレーンキープ制御装置。
上記カメラ異常検出手段は、上記カメラの異常を検出した場合はカメラ異常であることをメモリ手段に記録することとカメラ調整の実行を指示することの少なくとも一方を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のレーンキープ制御装置。
上記レーンキープ制御手段における、上記予め設定しておいた制御実行条件は、少なくとも、車両に所定のヨーモーメントを付加する横滑り防止制御装置が非作動状態で、ターンシグナルスイッチがOFF状態で、上記走行路の外側への逸脱を防止する車載の逸脱防止制御装置から逸脱走行状態との信号が出力されていない場合に制御実行条件が成立するものとすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両のレーンキープ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は操舵角をドライバ入力と独立して設定自在な電動パワーステアリング装置を示し、この電動パワーステアリング装置1は、ステアリング軸2が、図示しない車体フレームにステアリングコラム3を介して回動自在に支持されており、その一端が運転席側へ延出され、他端がエンジンルーム側へ延出されている。ステアリング軸2の運転席側端部には、ステアリングホイール4が固設され、また、エンジンルーム側へ延出する端部には、ピニオン軸5が連設されている。
【0010】
エンジンルームには、車幅方向へ延出するステアリングギヤボックス6が配設されており、このステアリングギヤボックス6にラック軸7が往復移動自在に挿通支持されている。このラック軸7に形成されたラック(図示せず)に、ピニオン軸5に形成されたピニオンが噛合されて、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤ機構が形成されている。
【0011】
また、ラック軸7の左右両端はステアリングギヤボックス6の端部から各々突出されており、その端部に、タイロッド8を介してフロントナックル9が連設されている。このフロントナックル9は、操舵輪としての左右輪10L,10Rを回動自在に支持すると共に、車体フレームに転舵自在に支持されている。従って、ステアリングホイール4を操作し、ステアリング軸2、ピニオン軸5を回転させると、このピニオン軸5の回転によりラック軸7が左右方向へ移動し、その移動によりフロントナックル9がキングピン軸(図示せず)を中心に回動して、左右輪10L,10Rが左右方向へ転舵される。
【0012】
また、ピニオン軸5にアシスト伝達機構11を介して、電動パワーステアリングモータ(電動モータ)12が連設されており、この電動モータ12にてステアリングホイール4に加える操舵トルクのアシスト、及び、設定された操舵角(目標操舵角)となるような操舵トルクの付加が行われる。電動モータ12は、後述する制御ユニット20から制御電流Icmdがモータ駆動部21に出力されてモータ駆動部21により駆動される。
【0013】
制御ユニット20には、走行路の形状としてカメラからの画像情報を基に前方の左右白線を認識して白線位置情報を取得し、前方の道路情報を認識する前方情報認識手段としての前方認識装置31が接続され、また、車速Vを検出する車速センサ32、操舵角(実舵角)θpを検出する操舵角センサ33、操舵トルクTdを検出する操舵トルクセンサ34、レーンキープ制御をドライバが選択的にON−OFFするレーンキープスイッチ35が接続されている。更に、制御ユニット20には、ターンシグナルスイッチ36の作動信号、車両に所定のヨーモーメントを付加する横滑り防止制御装置等の車載の車両挙動制御装置(本実施の形態では走行路からの逸脱を防止する逸脱防止制御装置等の運転支援装置も含む)37の作動信号が接続されている。また、制御ユニット20は、故障診断装置40が接続自在に構成され、後述の如く制御ユニット20内に記録したエラー信号(エラーコード)が読み出し自在になっている。
【0014】
前方認識装置31は、例えば、車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像する1組のCCDカメラと、このCCDカメラからの画像データを処理するステレオ画像処理装置とから構成されている。
【0015】
前方認識装置31のステレオ画像処理装置における、CCDカメラからの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、CCDカメラで撮像した自車両の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め、距離画像を生成する。
【0016】
白線データの認識では、白線は道路面と比較して高輝度であるという知得に基づき、道路の幅方向の輝度変化を評価して、画像平面における左右の白線の位置を画像平面上で特定する。この白線の実空間上の位置(x,y,z)は、画像平面上の位置(i,j)とこの位置に関して算出された視差とに基づいて、すなわち、距離情報に基づいて、周知の座標変換式より算出される。自車両の位置を基準に設定された実空間の座標系は、本実施の形態では、例えば、
図6に示すように、ステレオカメラの中央真下の道路面を原点として、車幅方向をx軸、車高方向をy軸、車長方向(距離方向)をz軸とする。このとき、x−z平面(y=0)は、道路が平坦な場合、道路面と一致する。道路モデルは、道路上の自車両の走行レーンを距離方向に複数区間に分割し、各区間における左右の白線を所定に近似して連結することによって表現される。尚、本実施の形態では、走行路の形状を1組のCCDカメラからの画像を基に認識する例で説明したが、他に、単眼カメラ、カラーカメラからの画像情報を基に求めるものであっても良い。
【0017】
また、前方認識装置31は、光軸ずれの再調整機能(カメラ自動調整機能)を有しており、この光軸ずれの再調整機能では、アフィン変換による一組のカメラ間の相対光軸ずれに対する補正処理を行うものとなっている。このアフィン変換による相対光軸ズレの補正は、基本的には、一組のカメラの一方のメインカメラによる基準画像を固定し、他方のサブカメラによる比較画像を回転・平行移動等して幾何学的に画像変換することにより、基準画像と比較画像との2つの画像における認識処理領域が視差検出方向(水平方向)にのみずれた位置関係となるよう補正する処理である。アフィン変換による光軸調整は、本出願人による特開平11−259632号公報に詳述されている。
【0018】
一方、車両挙動制御装置37の上述した横滑り防止制御装置は、例えば、車両モデルに基づく目標ヨーレートを算出し、実際に車両に生じているヨーレートを検出して、目標ヨーレートと実ヨーレートとのヨーレート偏差に基づき車両がオーバステア傾向にある場合は旋回外輪にヨーレート偏差に応じた制動力を付加し、車両がアンダステア傾向にある場合は旋回内輪にヨーレート偏差に応じた制動力を付加することで車両にヨーモーメントを付加するものとなっている。
【0019】
また、車両挙動制御装置37の上述した逸脱防止制御装置は、例えば、本出願人が特開2012−185562号公報等で開示したもので、より具体的には、自車進行路を推定し、白線を基準とする前方設定距離における(左右の)警報点を設定し、自車進行路を基準とする前方設定距離における(左右の)閾値を設定して、左右のそれぞれの側で閾値が、警報点から走行路の外側へ逸脱する場合に自車両が白線を逸脱すると判定する。
【0020】
そして、制御ユニット20は、上述の各入力信号を基に、予め設定しておいた制御実行条件が成立する際に、認識した道路情報を基に目標コース(本実施の形態においては左白線と右白線の中間)を設定し、該目標コースに沿って走行するようにモータ駆動部21に信号出力して電動パワーステアリングモータ12を制御し、予め設定した時間内におけるレーンキープ制御の作動割合RLを算出し、レーンキープ制御の作動割合RLが予め設定しておいた閾値RLC以下の場合に、ドライバが左旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κとドライバが右旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κとの比率(旋回曲率ゲイン比率RG)を検出し、旋回曲率ゲイン比率RGと予め設定しておいた閾値RGCとを比較してカメラの異常を検出し、異常を検出した場合はカメラ異常であることを記録し、また、カメラ調整の実行を前方認識装置31に指示する。
【0021】
このため、制御ユニット20は、
図2に示すように、モータ基本電流設定部20a、実行判定部20b、レーンキープ制御部20c、電動パワーステアリングモータ電流値算出部20d、レーンキープ制御作動割合算出部20e、旋回曲率ゲイン比率算出部20f、異常判定部20g、メモリ部20hから主要に構成されている。
【0022】
モータ基本電流設定部20aは、車速センサ32から車速Vが入力され、操舵トルクセンサ34から操舵トルクTdが入力される。そして、例えば、予め設定しておいた
図4に示すような、操舵トルクTd−電動モータ基本電流値Ipsbの特性マップを参照して電動モータ基本電流値Ipsbを設定し、電動パワーステアリングモータ電流値算出部20dに出力する。
【0023】
実行判定部20bは、前方認識装置31から認識された画像情報が入力され、操舵トルクセンサ34から操舵トルクTdが入力され、レーンキープスイッチ35からドライバが選択したレーンキープ制御のON−OFF信号が入力される。また、ターンシグナルスイッチ36の作動信号が入力され、横滑り防止制御装置、逸脱防止制御装置等の車両挙動制御装置37の作動信号が入力され、レーンキープ制御部20cから後述するレーンキープ制御電流ILKの信号が入力される。そして、少なくとも、横滑り防止制御装置が非作動状態で、ターンシグナルスイッチ36がOFF状態で、走行路からの逸脱を防止する車載の逸脱防止制御装置から逸脱走行状態との信号が出力されていない場合にレーンキープ制御の実行条件が成立していると判定し(横滑り防止制御装置が作動、ターンシグナルスイッチ36がON状態、逸脱走行状態との信号が出力されている状態の何れか一つでも成立する場合にレーンキープ制御の実行条件が否成立と判定し)、判定結果をレーンキープ制御部20c、レーンキープ制御作動割合算出部20eに出力する。
【0024】
尚、レーンキープ制御の実行条件としては、他に、例えば、電動パワーステアリングモータ12の熱保護装置の作動・非作動(保護装置が作動している場合はレーンキープ制御の実行条件が否成立と判定・保護装置が非作動の場合はレーンキープ制御実行条件成立と判定する)、また、操舵トルクセンサ34で検出した操舵トルクTdとレーンキープ制御部20cで設定される制御量をトルク値に換算した値との差(差が所定値以下の場合にレーンキープ制御実行条件成立と判定・所定値を超える場合にレーンキープ制御実行条件が否成立と判定する)等の条件を加えても良い。
【0025】
レーンキープ制御部20cは、前方認識装置31から認識された画像情報が入力され、車速センサ32から車速Vが入力され、操舵角センサ33から操舵角θpが入力され、レーンキープスイッチ35からドライバによるレーンキープ制御のON−OFF信号が入力され、実行判定部20bからレーンキープ制御の実行条件の判定結果が入力される。そして、レーンキープスイッチ35によりレーンキープ制御のONが選択され、且つ、実行判定部20bからレーンキープ制御の実行条件成立の信号が入力されている場合に、例えば、以下の(1)式により、レーンキープ制御電流ILKを算出して実行判定部20b、電動パワーステアリングモータ電流値算出部20dに出力する。
ILK=Iff+Ifb+Ifby …(1)
ここで、Iffは、レーンキープ制御のフィードフォワード制御量(電流値)であり、以下の(2)式で算出され、この(2)式において、κは、例えば、以下の(3)式で示すような、車線曲率を示す。
Iff=Giff・κ …(2)
κ=(κl+κr)/2 …(3)
この(3)式において、κlは左白線による曲率成分であり、κrは右白線による曲率成分である。これら、左右白線の曲率成分κl,κrは、具体的には、
図5に示すような、左右白線のそれぞれを構成する点に関して、二次の最小自乗法によって計算された二次項の係数を用いることによって定められる。例えば、x=A・z
2+B・z+Cの二次式で白線を近似した場合、2・Aの値が曲率成分として用いられる。尚、これら白線の曲率成分κl、κrは、それぞれの白線の曲率そのものでも良い。また、(2)式におけるGiffは、予め実験・演算等により設定しておいたフィードフォワードゲインを示す。
【0026】
また、上述の(1)式において、Ifbは、横位置フィードバック制御量(電流値)であり、以下の(4)式で算出される。
Ifb=Gifb・Δx …(4)
この(4)式において、Δxは、
図6に示すように、後述する前方注視点(0,zv)における、目標コース(本実施の形態においては左白線と右白線の中間)と推定車両軌跡との位置のずれ量を示し、以下の(5)式により算出され、また、Gifbは、予め実験・演算等により設定しておいたゲインである。
Δx=(xl+xr)/2−xv …(5)
この(5)式において、xvは車両の前方注視点(0,zv)のz座標における推定車両軌跡のx座標であり、前方注視点(0,zv)の前方注視距離(z座標)であるzvは、本実施の形態では、zv=T・Vで算出される。ここで、Tは予め設定しておいた予見時間であり、例えば、1.2secに設定されている。
【0027】
従って、xvは、車両の走行状態に基づいて車両の諸元や車両固有のスタビリティファクタAs等を用いる場合には、例えば、以下の(6)式で算出することができる。
xv=(1/2)・(1/(1+As・V
2))・(θp/Lw)・(T・V)
2
…(6)
ここで、Lwはホイールベースである。また、(5)式における、xlは前方注視点(0,zv)のz座標における左白線のx座標であり、xrは前方注視点(0,zv)のz座標における右白線のx座標である。
【0028】
尚、上述のxvは、車速Vやヨーレート(dθ/dt)を用いて、以下の(7)式で算出することもでき、或いは、画像情報を基に、以下の(8)式で算出することもできる。
xv=(1/2)・((dθ/dt)/V)・(V・T)
2 …(7)
xv=(1/2)・κ・(V・T)
2 …(8)
また、上述の(1)式において、Ifbyは、車両のヨー角を目標コースに沿ったヨー角にフィードバック制御するヨー角フィードバック制御量(電流値)Ifbyであり、以下の(9)式で算出される。
Ifby=Gifby・(θtl+θtr)/2 …(9)
ここで、Gifbyは、予め実験・演算等により設定しておいたゲインで、θtlは前方認識装置31からの画像情報による左白線に対する自車両の傾き、θtrは前方認識装置31からの画像情報による右白線に対する自車両の傾きである(
図7参照)。尚、これら、θtl、θtrは、例えば、画像情報で得られる白線の各点に対して、二次の最小二乗法によって計算された、一次項の係数(すなわち、白線を、x=A・z
2+B・z+Cの式で近似した際のBの値)を用いても良い。このように、レーンキープ制御部20cは、レーンキープ制御手段として設けられている。
【0029】
電動パワーステアリングモータ電流値算出部20dは、モータ基本電流設定部20aから電動モータ基本電流値Ipsbが入力され、レーンキープ制御部20cからレーンキープ制御電流ILKが入力される。そして、例えば、以下の(10)式により、制御電流Icmdを算出し、モータ駆動部21に出力して電動パワーステアリングモータ12を制御する。
Icmd=Ipsb+ILK …(10)
尚、レーンキープ制御部20cからレーンキープ制御電流ILKの出力が無い場合は、Icmd=Ipsbとなる。
【0030】
レーンキープ制御作動割合算出部20eは、車速センサ32から車速Vが入力され、レーンキープスイッチ35からドライバによるレーンキープ制御のON−OFF信号が入力され、実行判定部20bからレーンキープ制御の実行条件の判定結果が入力される。そして、ドライバによりレーンキープ制御のONが選択されており、且つ、予め設定しておいた車速VHC(例えば、高速道路を走行中と判断できる80km/h)以上(V≧VHC)の場合に、予め実験・演算等により設定しておいた時間(例えば、30分)内におけるレーンキープ制御の実行条件成立時間の割合(レーンキープ制御作動割合)RLを算出し、予め実験・演算等により設定しておいた閾値RLC(例えば、60%)と比較し、比較結果を旋回曲率ゲイン比率算出部20f、異常判定部20gに出力する。
【0031】
すなわち、ドライバがレーンキープスイッチ35をONにした状態で高速道路を走行中(80km/h以上)の場合、レーンキープ制御が実行される可能性が高くなり、横滑り防止制御装置、逸脱防止制御装置等の車両挙動制御装置37の作動、ターンシグナルスイッチ36のON等によりレーンキープ制御の作動割合RLが低下したとしても、通常、レーンキープ制御作動割合RLは閾値RLCを超える(RL>RLC)。従って、レーンキープ制御作動割合RLが閾値RLC以下となる(RL≦RLC)場合は、レーンキープ制御を妨げる他の要因、すなわち、レーンキープ制御の基となる前方認識装置31の認識異常(無限遠点ずれや回転ずれの光軸ずれ等のカメラの調整値異常によるカメラ認識異常)があると推定し、上述の閾値RLCによる比較を実行するのである。このように、レーンキープ制御作動割合算出部20eは、レーンキープ制御作動割合算出手段として設けられている。
【0032】
旋回曲率ゲイン比率算出部20fは、前方認識装置31から認識された画像情報が入力され、操舵角センサ33から操舵角θpが入力され、レーンキープ制御作動割合算出部20eからレーンキープ制御作動割合RLの閾値RLCとの比較結果が入力される。そして、レーンキープ制御作動割合RLが閾値RLC以下となる(RL≦RLC)場合、ドライバが左旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κとドライバが右旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κの差を以下のように比較する。
【0033】
すなわち、旋回曲率κと操舵角θpの関係は、前述の(6)式からも明らかなように、以下の(11)式の関係が成り立つ。
κ/θp=(1/(1+As・V
2))・(1/Lw) …(11)
ここで、車速Vが一定で、(11)式の右辺を、旋回曲率ゲインGとおくと、左旋回(θpの符号は「+」)であっても、右旋回(θpの符号は「−」)であっても、
κ/θp=G=GL=GR …(12)
となる。GLは左旋回時における旋回曲率ゲイン(左旋回曲率ゲイン)、GRは右旋回時における旋回曲率ゲイン(右旋回曲率ゲイン)である。
【0034】
従って、左旋回曲率ゲインGLと、右旋回曲率ゲインGRとに差異がある場合は、前方認識装置31による旋回曲率κの認識異常があり、カメラ認識異常があると判断できる。このことを利用し、左旋回曲率ゲインGLと右旋回曲率ゲインGRを、
図8に示すように、所定サンプル数の平均を算出することにより求め、これら左旋回曲率ゲインGLと右旋回曲率ゲインGRの比率(但し、小さい方の値を分母とする)を旋回曲率ゲイン比率RGとして時々刻々算出し、異常判定部20gに出力する。このように、旋回曲率ゲイン比率算出部20fは、特性差異検出手段として設けられている。
【0035】
異常判定部20gは、車速センサ32から車速Vが入力され、レーンキープスイッチ35からドライバによるレーンキープ制御のON−OFF信号が入力され、レーンキープ制御作動割合算出部20eからレーンキープ制御作動割合RLの閾値RLCとの比較結果が入力され、旋回曲率ゲイン比率算出部20fから旋回曲率ゲイン比率RGが入力される。そして、ドライバによりレーンキープ制御のONが選択されており、予め設定しておいた車速VHC(例えば、高速道路を走行中と判断できる80km/h)以上(V≧VHC)の場合で、且つ、レーンキープ制御作動割合RLが閾値RLC以下となる(RL≦RLC)場合に、旋回曲率ゲイン比率RGと予め実験・演算等により設定しておいた閾値RGC(例えば、1.3)とを比較する。この比較の結果、旋回曲率ゲイン比率RGが閾値RGC以上(RG≧RGC)の場合に、前方認識装置31のカメラ認識異常があると判断してメモリ部20hに記録し、また、カメラ調整の実行を前方認識装置31に指示する。尚、前方認識装置31がカメラ自動調整機能を有しない装置の場合には、メモリ部20hへの記録のみ行う。このように、異常判定部20gは、カメラ異常検出手段として設けられている。
【0036】
メモリ部20hは、メモリ手段として設けられており、異常判定部20gから前方認識装置31のカメラ認識異常があると判断された場合に、その旨が、予め設定しておいたエラーコード等により書き込みが実行される。そして、メモリ部20hは、故障診断装置40が接続自在に構成されて、上述の異常判定部20gにより記録されたエラーコードが読み出し自在になっている。
【0037】
次に、上述の制御ユニット20で実行されるレーンキープ制御を、
図3のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、必要パラメータ、すなわち、前方認識装置31から認識された画像情報、車速V、操舵角θp、操舵トルクTd、ドライバが選択したレーンキープ制御のON−OFF信号、ターンシグナルスイッチ36の作動信号、横滑り防止制御装置、逸脱防止制御装置等の車両挙動制御装置37の作動信号が入力される。
【0038】
次いで、S102に進み、モータ基本電流設定部20aで、予め設定しておいた
図4に示すような、操舵トルクTd−電動モータ基本電流値Ipsbの特性マップを参照して電動モータ基本電流値Ipsbを設定する。
【0039】
次に、S103に進み、レーンキープスイッチ35がONか否か判定し、OFFの場合は、S106に進み、レーンキープ制御をOFF(すなわち、Icmd=Ipsb)としてプログラムを抜ける。
【0040】
一方、レーンキープスイッチ35がONの場合は、S104に進み、実行判定部20bでレーンキープ制御の実行条件の判定を行う。具体的には、前述したように、少なくとも、横滑り防止制御装置が非作動状態で、ターンシグナルスイッチ36がOFF状態で、走行路からの逸脱を防止する車載の逸脱防止制御装置から逸脱走行状態との信号が出力されていない場合にレーンキープ制御の実行条件が成立していると判定し、実行判定フラグFLをセット(FL=1)し、逆に、横滑り防止制御装置が作動、ターンシグナルスイッチ36がON状態、逸脱走行状態との信号が出力されている状態の何れか一つでも成立する場合にレーンキープ制御の実行条件が否成立と判定し、実行判定フラグFLをクリア(FL=0)する。尚、レーンキープ制御の実行条件としては、他に、例えば、電動パワーステアリングモータ12の熱保護装置の作動・非作動(保護装置が作動している場合はレーンキープ制御の実行条件が否成立と判定(FL=0)・保護装置が非作動の場合はレーンキープ制御実行条件成立と判定する(FL=1))、また、操舵トルクセンサ34で検出した操舵トルクTdとレーンキープ制御部20cで設定される制御量をトルク値に換算した値との差(差が所定値以下の場合にレーンキープ制御実行条件成立と判定(FL=1)・所定値を超える場合にレーンキープ制御実行条件が否成立と判定する(FL=0))等の条件を加えても良い。
【0041】
次いで、S105に進み、実行判定フラグFLを参照し、レーンキープ制御の実行条件が否成立(FL=0)の場合は、S107に進み、レーンキープ制御をOFF(すなわち、Icmd=Ipsb)としてS110にジャンプする。逆に、レーンキープ制御の実行条件が成立(FL=1)している場合は、S108に進み、レーンキープ制御部20cでレーンキープ制御を実行してレーンキープ制御電流ILKを、前述の(1)式により算出し、電動パワーステアリングモータ電流値算出部20dで、前述の(10)式により制御電流Icmdを算出し、モータ駆動部21に出力して電動パワーステアリングモータ12を制御する。
【0042】
次に、S109に進み、レーンキープ制御作動割合算出部20eで、車速Vが予め設定しておいた車速VHC(例えば、高速道路を走行中と判断できる80km/h)以上(V≧VHC)か否か判定する。
【0043】
このS109の判定の結果、車速Vが予め設定しておいた車速VHC未満(V<VHC)の場合は、プログラムを抜け、車速Vが予め設定しておいた車速VHC以上(V≧VHC)の場合は、S110に進む。
【0044】
S110に進むと、レーンキープ制御作動割合算出部20eで、予め実験・演算等により設定しておいた時間(例えば、30分)内におけるレーンキープ制御の実行条件成立時間の割合(レーンキープ制御作動割合)RLを算出する。
【0045】
次いで、S111に進み、レーンキープ制御作動割合算出部20eで、レーンキープ制御作動割合RLと予め実験・演算等により設定しておいた閾値RLCとを比較し、レーンキープ制御作動割合RLが閾値RLCを超える(RL>RLC)場合は、そのままプログラムを抜け、レーンキープ制御作動割合RLが閾値RLC以下となる(RL≦RLC)場合は、レーンキープ制御の基となる前方認識装置31の認識異常(無限遠点ずれや回転ずれの光軸ずれ等のカメラの調整値異常によるカメラ認識異常)があると推定し、S112に進む。
【0046】
S112に進むと、旋回曲率ゲイン比率算出部20fで、前方認識装置31からの画像情報を基に、旋回曲率κを算出し、S113に進んで、左旋回曲率ゲインGLと右旋回曲率ゲインGRを、
図8に示すように、所定サンプル数の平均を算出することにより求める。
【0047】
次いで、S114に進み、左旋回曲率ゲインGLと右旋回曲率ゲインGRの比率(但し、小さい方の値を分母とする)を旋回曲率ゲイン比率RGとして算出する。
【0048】
次に、S115に進み、異常判定部20gで、旋回曲率ゲイン比率RGと予め実験・演算等により設定しておいた閾値RGCとを比較し、この比較の結果、旋回曲率ゲイン比率RGが閾値RGC以上(RG≧RGC)の場合に、前方認識装置31のカメラ認識異常があると判断し、S116に進んでメモリ部20hに記録し、更に、S117に進み、カメラ調整の実行を前方認識装置31に指示してプログラムを抜ける。
【0049】
逆に、旋回曲率ゲイン比率RGが閾値RGC未満(RG<RGC)の場合は、前方認識装置31のカメラ認識異常は無いと判断して、そのままプログラムを抜ける。
【0050】
このように、本発明の実施の形態によれば、予め設定しておいた制御実行条件が成立する際に、認識した道路情報を基に目標コースを設定し、該目標コースに沿って走行するようにモータ駆動部21に信号出力して電動パワーステアリングモータ12を制御し、予め設定した時間内におけるレーンキープ制御の作動割合RLを算出し、レーンキープ制御の作動割合RLが予め設定しておいた閾値RLC以下の場合に、ドライバが左旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κとドライバが右旋回する場合に前方認識装置31で認識した旋回曲率κとの比率(旋回曲率ゲイン比率RG)を検出し、旋回曲率ゲイン比率RGと予め設定しておいた閾値RGCとを比較してカメラの異常を検出し、異常を検出した場合はカメラ異常であることを記録し、また、カメラ調整の実行を前方認識装置31に指示する。このため、たとえ無限遠点ずれや回転ずれの光軸ずれ等のカメラの調整値異常であっても適切に検出し、カメラからの画像情報を用いて精度良く安定したレーンキープ制御を行うことが可能となる。また、前方認識装置31のカメラ認識異常は、レーンキープ制御とは分けて、発生の都度、メモリ部20hに記録されるので、過去のカメラ認識異常の傾向からディーラにおける前方認識装置31の再調整等の効率向上に資するという効果を奏する。