【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1〜
15、参考例1〜5、比較例1〜8)
過金属酸、砥粒、pH調節剤、及び純水を混合して撹拌し、表1に示す組成からなる研磨用組成物を得た。なお、ここで使用する過金属酸は下記の調製例によって調製されたものである。
【0054】
(調製例1)
モリブデン酸2000g、35%過酸化水素水2400gを5Lガラスビーカーに入れ、室温下で約5時間、攪拌・混合した。過モリブデン酸の黄色の透明液体を得た。
【0055】
(調製例2)
タングステン酸2000g、35%過酸化水素水1560gを5Lガラスビーカーに入れ、室温下で約5時間、攪拌・混合した。過タグステン酸の透明な液体を得た。
【0056】
(調製例3)
バナジン酸100g、35%過酸化水素水180gを5Lガラスビーカーに入れ、室温下で約5時間、攪拌・混合した。過バナジン酸を得た。
【0057】
(調製例4)
クロム酸400g、35%過酸化水素水440gを5Lガラスビーカーに入れ、室温下で約5時間、攪拌・混合した。過クロム酸を得た。
【0058】
(調製例5)
二酸化セレン200g、35%過酸化水素水310gを5Lガラスビーカーに入れ、室温下で約5時間、攪拌・混合した。過セレン酸を得た。
【0059】
(実施例1)
調製例1で得られた過モリブデン酸198g、コロイダルシリカ(濃度:50%)900g、イオン交換水402gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを1.5に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。なお、表1に示すように、実施例1の砥粒は、Aであり、これは表2に示すAのコロイダルシリカ(平均粒子径80nm)を用いたという意味である。また、「コロイダルシリカ(濃度:50%)900g」とは、原液で50%のコロイダルシリカを900g使用したという意味で、表1に示すように、調整された実施例1のコロイダルシリカの濃度(砥粒の濃度)が30%である。
【0060】
(実施例2〜5)
実施例1に準じて、調製し研磨試験に用いた。
【0061】
(実施例6)
調製例2で得られた過タングステン酸134g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水766gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを2.7に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0062】
(実施例7)
実施例6に準じて、調製し、該調製液を研磨試験に用いた。
【0063】
(実施例8)
調製例2で得られた過タングステン酸53.4g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、ヒュームドシリカ75g、イオン交換水1222gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを3.9に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0064】
(実施例9)
実施例8に準じて、調製し、該調製液を研磨試験に用いた。
【0065】
(
参考例1)
調製例3で得られた過バナジン酸252g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水648gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを4.7に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0066】
(
参考例2〜4)
参考例1に準じて、調製し、該調製液を研磨試験に用いた。
【0067】
(
参考例5)
調製例3で得られた過バナジン酸21g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、ヒュームドシリカ75g、イオン交換水1254gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを4.7に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0068】
(実施例
10)
調製例5で得られた過セレン酸306g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、ヒュームドシリカ30g、イオン交換水564gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを3.7に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0069】
(実施例
11)
実施例
10に準じて、調製し、該調製液を研磨試験に用いた。
【0070】
(実施例
12)
調製例4で得られた過クロム酸158g、コロイダルシリカ(濃度:50%)750g、イオン交換水592gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを3.0に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0071】
(実施例
13)
実施例
12に準じて、調製し、該調製液を研磨試験に用いた。
【0072】
(実施例
14)
調製例4で得られた過クロム酸22g、ヒュームドシリカ75g、イオン交換水1403gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを2.5に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0073】
(実施例
15)
調製例4で得られた過クロム酸126g、コロイダルシリカ(濃度:40%)1125g、イオン交換水249gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを2.8に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0074】
(比較例1)
コロイダルシリカ(濃度:50%)900g、35%過酸化水素水129g、イオン交換水471gを攪拌、混合した。10%硝酸水溶液でpHを2.0に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0075】
(比較例2)
ヒュームドシリカ300g、35%過酸化水素水86g、イオン交換水1200gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを2.5に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0076】
(比較例3)
コロイダルシリカ(濃度:50%)750g、35%過酸化水素水214g、イオン交換水536gを攪拌、混合した。10%硝酸水溶液でpHを2.5に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0077】
(比較例4)
バナジン酸ソーダ45g、35%過酸化水素水86g、コロイダルシリカ(濃度:50%)750g、イオン交換水705gを攪拌、混合した。pHは5.8であった。該調製液を研磨試験に使用した。
【0078】
(比較例5)
オルト過ヨウ素酸45g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水855gを攪拌、混合した。10%硝酸水溶液でpHを1.5に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0079】
(比較例6)
過硫酸ソーダ45g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水855gを攪拌、混合した。10%硝酸水溶液でpHを2.0に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0080】
(比較例7)
5%次亜塩素酸ソーダ71g、35%過酸化水素30g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水826gを攪拌、混合した。pHは10.0であった。泡を発生して、過酸化水素が分解した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0081】
(比較例8)
モリブデン酸30g、35%過酸化水素36g、コロイダルシリカ(濃度:50%)600g、イオン交換水834gを攪拌、混合した。10%苛性ソーダ水溶液でpHを3.0に調製した。該調製液を研磨試験に使用した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
得られた炭化ケイ素基板研磨用組成物を用い、以下の条件で片面研磨加工機を用いて炭化ケイ素基板を研磨した。
【0085】
(研磨条件)
研磨加工機:不二越機械(株)製SLM−100 片面研磨加工機
研磨圧力:500g/cm
2
研磨パッド:SUBA−800(ローデルニッタ(株)製)
定盤回転数:100rpm
研磨用組成物の供給量:100ml/min
研磨時間:5時間
【0086】
被研磨面の特性評価で、研磨速度は、下式(数1)により求めた。スクラッチ、キズの状態は、光学顕微鏡を用い、倍率200倍で調べた。表面にスクラッチ、キズがない状態を「○」、ほとんど認められない状態を「△」、認められるものを「×」、研磨試験未実施もしくは表面の観察を行っていないものを「−」とした。
【0087】
研磨速度(nm/hr)=(炭化ケイ素基板の研磨前質量−炭化ケイ素基板の研磨後質量)÷炭化ケイ素基板の研磨面積(cm
2)÷炭化ケイ素基板の密度(g/cm
3)÷研磨時間(hr)×10
7 (数1)
【0088】
実施例1〜
15、参考例1〜5、比較例1〜8の研磨速度、研磨状態の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3の試験結果から、実施例と比較例を比較すると本発明の過金属酸の酸化力は、従来の酸化剤として使用されている過酸化水素、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸、過硫酸ソーダ等のペルオキソ硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤、バナジン酸ソーダ等のバナジン酸塩に比較し、極めて大きい。従って、炭化ケイ素ウェハのケイ素面(0001)、炭素面(000−1)の研磨レートが従来の酸化剤を使用した研磨用組成物に比較し大きく、研磨被表面の状態も良好である。例えば、実施例1と比較例1を比較すると約5倍である。炭化ケイ素基板研磨用組成物に過金属酸が応用された事はない。新規な発明である。
【0091】
また、同じコロイダルシリカ濃度とpHである実施例3と比較例8を比較すると、モリブデン酸と過酸化水素を添加して研磨した場合に比べ、あらかじめモリブデン酸と過酸化水素から過モリブデン酸を調製し、得られた過モリブデン酸を添加して研磨した場合の方が、酸化力が大きく、研磨レートが優れていることがわかる。
【0092】
同様に、
参考例2と比較例4を比較すると、バナジン酸ソーダと過酸化水素を添加して研磨した場合に比べ、あらかじめバナジン酸と過酸化水素から過バナジン酸を調製し、得られた過バナジン酸を添加して研磨した場合の方が、酸化力が大きく、研磨レートが優れていることがわかる。
【0093】
本発明の炭化ケイ素基板研磨用組成物は、過金属酸と、砥粒及び水を含有してなるもので(0001)ケイ素面、(000−1)炭素面を効率良く研磨することができる。