(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381071
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】絞り成形金型の加熱装置および絞り成形方法
(51)【国際特許分類】
B21D 24/00 20060101AFI20180820BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20180820BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B21D24/00 M
B21D22/20 H
B21D37/16
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-152867(P2014-152867)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30267(P2016-30267A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】山本 正博
(72)【発明者】
【氏名】吉井 章
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−254115(JP,A)
【文献】
特開2010−194589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/00
B21D 22/20
B21D 37/16
B30B 15/34
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランクをブランク押さえによってダイ上面との間で押さえながら、ポンチをダイの成形孔に嵌合して絞り成形する絞り成形金型を加熱する装置であって、前記ブランクより面方向に沿う外寸が大きいプレートヒーターと、前記プレートヒーターを上下から挟持するとともに、前記プレートヒーターより面方向に沿う外寸が大きい上側ブロック及び下側ブロックと、前記上側ブロック又は前記下側ブロックの少なくともいずれか一方のブロックに形成した孔又は溝内に装着される温度センサーとを有し、前記上側ブロック又は前記下側ブロックのいずれかに脱着可能な取手を有することを特徴とする金型加熱装置。
【請求項2】
前記上側ブロック又は前記下側ブロックのいずれかにポンチを挿入可能な穴を有することを特徴とする請求項1記載の金型加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の金型加熱装置を用いた絞り成形方法であって、前記金型加熱装置をダイ上面とブランク押さえ間に挟み込んでポンチを下降することにより、ダイ上面とブランク押さえ下面及びポンチ下面を加熱した後、前記金型加熱装置を取り外し、加熱されたダイ上面とブランク押さえでブランクを挟持し加熱した後、絞り成形することを特徴とする絞り成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温間成形に使用する絞り成形金型の加熱装置および絞り成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温間成形に使用する絞り成形金型では、成形に先立って金型を加熱する必要がある。
従来、このような成形金型を加熱する方法や装置として、例えば、特許文献1に示される鍛造用金型を加熱するものがある。この加熱装置は、金型全体を囲むことができる大きさの筒体に誘電コイルが設けられており、金型をプレス機に設置する前に金型を囲って外側から金型を加熱するものである。更に、鍛造等のプレス成形金型以外の分野では、例えば、特許文献2に記載の高周波装置と金属ウールマットを使用して金型を加熱する装置や、特許文献3に記載の流体シリンダーを用いてブロー成形金型内に熱源を出し入れする装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−361353号公報
【特許文献2】特開2002−100463号公報
【特許文献3】特開平9−254244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至3記載の装置は大型であり高価なものである。またその取り扱いも大変である。更に、特許文献1記載の金型全体を外部より加熱する方法では、金型内部を加熱するまでに時間が掛かるという問題もあった。
【0005】
この場合、金型内に棒状ヒーターを設けた簡便な構造とすることも考えられるが、金型全体を均一の温度に設定する事が困難で、温度にバラツキが生じ、その制御が難しいという問題がある。又、棒状ヒーターを設置するために、金型に孔等を設ける必要があり強度上も問題である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、小型で簡単な構造でありながら、金型内部を効率良く加熱し、温度のバラツキが少なく制御も容易な温間成形に使用する絞り成形金型の加熱装置および絞り成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金型加熱装置は、ブランクをブランク押さえによってダイ上面との間で押さえながら、ポンチをダイの成形孔に嵌合して絞り成形する絞り成形金型を加熱する装置であって、ブランクより面方向に沿う外寸が大きいプレートヒーターと、プレートヒーターを上下から挟持するとともに、プレートヒーターより面方向に沿う外寸が大きい上側ブロック及び下側ブロックと、上側ブロック又は下側ブロックの少なくともいずれか一方のブロックに形成した孔又は溝内に装着される温度センサーとを有
し、前記上側ブロック又は前記下側ブロックのいずれかに脱着可能な取手を有することを特徴とする。
【0008】
一方、本発明の絞り成形方法は、本発明の金型加熱装置をダイ上面とブランク押さえ間に挟み込んでポンチを下降することにより、ダイ上面とブランク押さえ下面及びポンチ下面を加熱した後、金型加熱装置を取り外し、加熱されたダイ上面とブランク押さえでブランクを挟持し加熱した後、絞り成形する方法とした。
【0009】
上記のようなプレートヒーターを上側ブロック及び下側ブロックで挟んで固定するという、単純な構造とすることで、装置を小型化することができる。又、ブランクが接触するダイ上面とブランク押さえ及びポンチの下面とを直接加熱することができ、効率的である。この場合、ブランクより大きい外寸の板状のプレートヒーターを採用したことによって、ブランクが接触するダイ上面及びブランク押さえ下面の表面温度を均一で最適な温度に管理することができる。
また、取手が取付けられることで、加熱装置を絞り成形装置に取付け又は取外す作業が安全且つ容易となり、作業時間が短縮できる。
【0010】
本発明の絞り成形金型の加熱装置において、上側ブロック又は下側ブロックのいずれかに、ポンチを挿入可能な穴が形成されていることが望ましい。加熱装置をダイとブランク押さえとの間で挟持する際に、ポンチが穴に挿入することにより、ポンチとの干渉を回避できるので、加熱装置を十分強固に挟持することができる。これにより、ブランクが接触するダイ上面とブランク押さえ及びポンチの下面とを速やかに確実に加熱することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の温間成形に使用する絞り成形金型の加熱装置および絞り成形方法によれば、効率良く金型内部を加熱し、より精度の高い温度管理が可能となり、制御も容易な温間絞り成形ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における絞り成形金型の加熱装置の概略図である。
【
図4】取手を本発明の加熱装置へ嵌合させた状態の概略図である。
【
図6】本発明の加熱装置が適用される絞り成形装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の加熱装置が適用される絞り成形装置の一例を示す概略断面図である。絞り成形装置は、
図6に示すように、ポンチ9及びブランク押さえ10を有する上型20と、ダイ12及び受け部材13を有する下型21とを備える。この絞り成形装置ではダイ12の成形孔19の回りで円形のブランク11をブランク押さえ10によってダイ12上面との間で押さえながら、ポンチ9をダイ12の成形孔19に嵌合して絞り成形する。ブランク押さえ10には、これを上下移動自在に支持するガイドロッド17と、下方に向けて付勢するばね等の弾性部材18とが設けられる。
【0015】
図1は本発明の一実施形態における絞り成形金型の加熱装置の概略図である。
図2はプレートヒーターの概略図である。この絞り成形金型の加熱装置は、鋼板よりなる上側ブロック1及び下側ブロック3と円形のプレートヒーター2とを有し、上側ブロック1と下側ブロック3の間にプレートヒーター2が挟持され、上側ブロック1と下側ブロック3をボルトで固定することによって一体化されている。
【0016】
円形のプレートヒーター2は、ブランク11より面方向に沿う外寸が大きく形成されており、面方向の中心部に穴23が形成されているとともに、外周部の一部に電源用コード22が接続されている。
例えば、絞り加工用円形ブランクの直径がφ50mmからφ150mm以下である場合、円形プレートヒーター2の直径はφ150mm以上であればよい。
【0017】
上側ブロック1及び下側ブロック3は、円形のプレートヒーター2より面方向に沿う外寸が大きいものとし、外形は八角形に構成されている。下側ブロック3上面には、円形のプレートヒーター2が収まるスペースのくぼみ6と、プレートヒーター用電源コード22が外部へ引出せる溝24が設けられている。上側ブロック1下面には、下側ブロック3のくぼみ6に嵌合する凸部26が設けられている。くぼみ6は、深さが円形のプレートヒーターの厚さと凸部26の高さを加えたものと略同じで、外径は円形のプレートヒーター2と凸部26が略緊密に嵌まり込む外径とされる。
したがって、上側ブロック1と下側ブロック3で円形のプレートヒーター2を挟持すると、この上下面は上側ブロック1及び下側ブロック3に接した状態となる。
【0018】
上側ブロック1の左右には、脱着式の取手4を取付けるための嵌合ブロック16が設けられている。この嵌合ブロック16は、側面視逆L字型の角柱形状に形成され、上側ブロック1の左右に上側ブロック1との間に下方に向けた凹部27を形成するように固定されている。取手4はハンドル14の先端に、嵌合ブロック16と上側ブロック1との間の凹部27に嵌合可能な嵌合用板15をねじ止めした構造である。
図4の矢印にて示す通り、取手4を使用する時は、嵌合用板15を嵌合ブロック16下面先端部と上側ブロック1側面部との間の凹部27に下側より嵌合させて使用する。
【0019】
下側ブロック3には、温度センサー25が埋め込まれている。この温度センサー25は、例えば先端が棒状のもので熱電対タイプのものでよい。この温度センサー25を埋め込むための温度センサー取付け孔5は、温度センサー25と略同サイズとし、温度センサー25の先端棒状部分が、下側ブロック3と隙間無く装着できる寸法とされ、ブロック側面より中心部方向へ向け形成されている。
【0020】
上側ブロック1及び下側ブロック3の面方向の中心部に、ポンチ9を挿入可能な穴7が設けられている。図示例ではポンチ9が角柱状に形成されているため、ポンチ9を挿入可能な穴7は角穴状に形成されている。また、ポンチ9を挿入可能な穴7は、上側ブロック1及び下側ブロック3を貫通して設けられているが必ずしも貫通することまでは要求されず、加熱装置8を挟み込むために必要な型締め力を作用した時のポンチ9の干渉を避けられる程度の深さの穴が形成されていればよい。なお、プレートヒーター2の面方向の中心部に設けられている穴23は、
図2に示すように円形であるが、後述するように上型20と下型21との間に加熱装置8を挟持したときに、ポンチ9がプレートヒーター2に到達するまで下降することはないので、ポンチ9が穴7に挿入するときの空気抜きのために設けられている。
【0021】
上側ブロック1及び下側ブロック3の厚みは、円形のプレートヒーター2の熱容量に合わせて調整することで、使用する円形ブランクサイズがφ50mmを使用する場合と、円形ブランクサイズφ150mmを使用する場合の金型の温度や昇温時間を、上側ブロック1及び下側ブロック3の厚さを変更することで揃えることができる。
例えば、円形のプレートヒーター2の厚さが4mm以下であって、上側ブロック1及び下側ブロック3の厚さが円形のプレートヒーター2の5倍未満で、外径が円形のプレートヒーター2の1.2倍以下としても良い。
【0022】
次に、以上の絞り成形金型の加熱装置8を用いて絞り成形する方法について説明する。
この絞り成形方法は、加熱装置8をダイ12の上面にのせ、その上からブランク押さえ10下面によって強固に挟持することで加熱装置8をダイ12の上面とブランク押さえ10下面に接触させ、ダイ12上面及びブランク押さえ10下面の表面温度を均一で最適な温度に管理する加熱工程と、加熱装置8を取り外し、ブランク11をダイ12上面とブランク押さえ10で挟持しブランク11を加熱した後、絞り成形する絞り工程とを有する。本発明の絞り成形金型の加熱装置8は、脱着式の取手4を有することで、絞り成形装置への脱着作業が安全且つ容易となり、作業時間が短縮できる。
【0023】
使用する円形のプレートヒーター2を、ブランク11より面方向に沿う外寸が大きいものとしたことで、ブランク11が接触するダイ12上面及びブランク押さえ10下面の表面温度を均一に加熱することができる。下側ブロック3上面のくぼみ6内にプレートヒーター2が収められていることにより、加熱装置8をダイ12とブランク押さえ10との間で強固に挟持する際にプレートヒーター2に過大な加重が掛かるのを防止でき、プレートヒーター2を保護することができる。
【0024】
上側ブロック1及び下側ブロック3にポンチ9を挿入可能な穴7が設けられていることで、ダイ12の上面とブランク押さえ10下面との間で加熱装置8を強固に挟持することができる。ポンチ9を挿入する穴7がないとポンチ9が加熱装置8に当たって破損するおそれがあるが、本発明の金型加熱装置8においては、面方向の中心部にポンチ9を挿入可能な穴7が形成されているので金型加熱装置8を強固に挟持することができる。
これにより、加熱装置8の上下面にダイ12の上面とブランク押さえ10下面を確実に接触させることができ、ブランク11が接触するダイ12上面とブランク押さえ10の下面とを速やかに加熱することができる。又、ポンチ9の先端部も加熱装置8内に入り込むので、ポンチ9の下面も効率的に加熱することができる。
ポンチ9を挿入可能な穴7が下側ブロック3にも設けられていることから、
図1に示された実施例である下向き絞り成形装置と逆の、上向き絞り用成形装置にも使用可能である。
【0025】
温度センサー25を金型に装着する場合と異なり、加熱装置8に装着したので、温度センサー取付け用孔5を加熱装置8の最内部へ設定できる。
温度センサー25の先端棒状部分取付け位置を加熱装置8の最内部とし、温度センサー25の先端棒状部分と下側ブロック3とを隙間無く装着することで、ブランク11が接触する部分で、特にダイ12上面のブランク11が流動する付近の表面温度がより精度高く測定できる。
このような絞り方法であれば、効率良く金型内部を加熱しより精度の高い温度管理が可能となり、制御も容易な温間絞り成形ができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
実施形態では、上側ブロック1の左右に脱着式の取手用嵌合ブロック16を設けたが、下側ブロック3の左右に設けてもよい。
実施形態では、ポンチ9を挿入可能な穴7は上面視略正方形の形状で図示されているが、ポンチ9が回避できる形状及び大きさであればよく、上面視円形やその他多角形でもよい。
実施形態では、上側ブロック1及び下側ブロック3の外形は八角形で図示されているが、それ以外の多角形もしくは円形でもよい。
実施形態では、円形のプレートヒーター2が略収まるスペースのくぼみ6を下側ブロック3上面に設けたが、上側ブロック1下面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…上側ブロック
2…プレートヒーター
3…下側ブロック
4…取手
5…温度センサー取付け用孔
6…くぼみ
7…穴
8…加熱装置
9…ポンチ
10…ブランク押さえ
11…ブランク
12…ダイ
13…受け部材
19…成形孔
20…上型
21…下型
25…温度センサー
26…凸部
27…凹部