【実施例1】
【0018】
以下、本発明に係るシート張設用型材及び同シート張設用型材を用いて構成するビニルハウスのシート止め付け構造を、
図1〜
図6に示した実施例に基づいて説明する。
図1及び2に示したシート張設用型材1は、金属製又は合成樹脂製であり、
図5に示したビニルハウス5の被覆材であるシート50を、ビニルハウス5の骨組材Pやドア枠、窓枠等へ固定する型材として用いる。
本発明に係るシート張設用型材1は、
図1及び
図2に示すように、横断面において開口部が幅狭に形成されたシート止着溝2の一側縁部に、シート50の内面に付着した結露等の水滴6を受け止めて一旦溜める水滴溜部3を備え、前記シート止着溝2の他側縁部には、シート50の内面を伝って流れてきた水滴6を更にシート50の内面に沿って伝い下らせる水滴誘導片部4を備えている。
【0019】
前記シート止着溝2は、横断面において、底面部20の両側に立ち上がる両側壁21、21を略ハ字形状に内方へ傾斜させて開口部が幅狭となる蟻溝形状の溝として形成されている。但し、前記シート止着溝2は、
図1及び
図2に示した蟻溝形状に限るものではない。
前記ビニルハウス5のシート50は、
図2及び
図3に示すように、鋼線を台形波が交互に逆向きとなる連続波形状に成形加工したバネ性の強い止め線51と共に前記シート止着溝2の中へ押し込んで止着される。
【0020】
前記水滴溜部3は、シート止着溝2の一側縁部から外方(上流側)へ向かってシート50の展張方向とほぼ同じ向きに例えば15mm程度延長させて形成したシート支持片30と、該シート支持片30から一定の段差で下がった段差面31と、該段差面31の下縁部からシート50の展張方向とほぼ同じ向きに延長した結露溜り面板部32とで構成されている。
【0021】
前記段差面31は、その中間部分から前記シート支持片30への屈曲部が滑らかに湾曲しており、溜まり水60の誘導が順調な誘導勾配31aに形成されている。つまり、前記水滴溜部3の段差面31へ辿り着いた水滴6は速やかに水滴溜部3へ誘導され、その溜まり水60が、
図2のようにシート内面へ接する高さになると、同溜まり水60は表面張力の作用でシート止着溝2へ向かってスムーズに誘導される構成とし、排水の処理能力を高めている。
前記結露溜り面板部32は、その先端部32aに肉盛りを形成し、受け止めた水滴6の溜まり水60が溢れて水滴溜部3から外方へ零れ落ちる不具合を防止している。
【0022】
前記シート止着溝2からシート支持片30への変曲部には、前記シート止着溝2の側壁21とシート50との間に空気隙間Sを形成する突起22が、前記シート止着溝2の内方(下流側)へ向かって設けられている。それ故に、前記シート50とシート支持片30との間から進入した水滴6は、前記空気隙間Sから重力作用によってシート止着溝2の側壁21から底部20へと効果的に流れ落ちることができ、シート50の裏面とシート張設用型材1との間隙に発生する表面張力の作用で下方側へ順次に流れ下らせることができる。
なお、前記突起22の大きさは、図示した大きさに限定されず、必要に応じて適宜変更して実施するものとする。
【0023】
図1及び
図2に示した前記水滴誘導片部4は、シート止着溝2の上端縁部から外方へ向かって例えば15mm程度、シート50の展張方向とほぼ同じ向きに延長させると共に、少し上方へ向かって傾斜させた形状で形成されており、同水滴誘導片部4から離れた水滴6が表面張力でシート50に伝い落ちる程度の傾斜角度で前記シート50を支持している。
但し、
図6(A)に示した水滴誘導片部4のように、例えば5mm程度の短い寸法で若干上向き角度に形成するほか、必要に応じて適宜長さに調整して実施することができる。また、
図6(B)に示した水滴誘導片部4のように、水平向きとする等、必要に応じて適宜角度を調整して実施するものとする。
【0024】
次に、上記シート張設用型材を用いて構成するビニルハウスのシート止め付け構造について説明する。
本発明に係るビニルハウスのシート止め付け構造は、
図3に示したように、上記シート張設用型材1を、ビニルハウス5の屋根の流れ勾配(一例として35度以上の勾配)の傾斜面等において母屋材方向に配置し、前記ビニルハウス5の骨材Pの外周部であって流れ勾配が形成された部位に、前記シート張設用型材1の横断面における前記水滴溜部3を上流側へ向けて配置し、同シート張設用型材1の水滴誘導片部4を下流側へ向けて、且つシート50を水滴の伝い下りに適切な角度(例えば35度程度)に支持する配置に取り付ける。
【0025】
前記シート張設用型材1をビニルハウス5の骨材Pへ取り付ける手段として、
図2に示した公知の楔式連結具7を用いる。
図2に示した楔式連結具7は、既に知られているとおり、連結具本体7Aと楔7Bとで構成されている。前記連結具本体7Aは、ビニルハウス5の骨材Pを跨ぐコ字形状とされ、切り欠き70により形成された両先端部70a、70aが、前記シート止着溝2の横断面形状における両側壁21、21の外面を挟み持つ構成とされている。同連結具本体7Aが前記骨材Pを跨いで、前記シート止着溝2の両側壁21、21を挟み持った姿勢で、前記骨材Pよりも背後側となる位置に、前記骨材Pと直交する方向に楔7Bを貫通させる楔孔71が設けられている。
つまり、前記連結具本体7Aの楔孔71へ楔7Bを差し通すと、楔7Bによる迫り作用で、シート張設用型材1のシート止着溝2が前記骨材Pへ引き付けられて強固に連結、固定の目的が達成される。逆に、前記楔7Bを楔孔71から引き抜くことにより、前記連結は簡単に解除できる構成である。
【0026】
なお、ビニルハウス5の長手方向に一連に設置した複数のシート張設用型材1は、
図8に示したように、その端部同士を継手部材9で相互に接続される。前記継手部材9には、集水口90とこれに繋がるホース91が設けられており、前記シート張設用型材1の水滴溜部3で受け止めた結露水6を集めて地上の所定位置へ導き排除する。
【0027】
上述したビニルハウスのシート止め付け構造は、
図2に示すように、シート50の内面に発生した結露、或いは外部から漏れ込んできた雨水などの水滴6がシート50の内面を伝い下るのをシート張設用型材1の水滴溜部3に受け止めて一旦溜める。前記水滴6による溜まり水60は、シート50の裏面とシート張設用型材1との間隙に発生する表面張力作用で下方側へ順次に流れ下らせ、下流側の水滴誘導片部4の終端に至らせる。このとき、前記水滴溜部3の段差面31に形成した誘導勾配31aで、水滴60をシート止着溝2へ向かってスムーズに誘導させることができる。また、前記シート止着溝2からシート支持片30への変曲部に設けた突起22で、前記シート50とシート止着溝2との間に空気隙間Sを形成するので、前記水滴溜部3からビニルシート50とシート支持片22との間に進入した水滴6は、重力作用により前記シート止着溝2の底部20へ向かって効果的に流れ落ちる。
そして、前記水滴誘導片部4との間の表面張力が解消した部位で、水分は逐次重力が作用するに適度な大きさの水滴61…に成長する。前記水滴61…の成長がシート50への付着力の限界を超えて流れ下る大きさに達すると、前記水滴誘導片部4の角度と同方向に張設された被覆シート50の下面に沿って前記水滴61は伝い下ることになる。
【0028】
なお、例えば
図3及び
図4に示したように、直径3mm程度の複数の通気孔50a…を設けた多孔シート50を使用したビニルハウス5においては、雨水が前記通気孔50aからシート50の内面に漏れ込み水滴6として水滴溜部3に溜まる問題がある。しかし、本発明に係るビニルハウスのシート止め付け構造では、上記構成であるから、前記通気孔50a…からシート50の内面に漏れ込んだ水滴6をシート50の下面に沿って効果的に伝い下らせることができる。
【0029】
したがって、ビニルハウス5の被覆シート50の内面に発生する結露或いは雨水の漏れ込み水滴6をシート50の内面に沿って流下させるので、ポタ落ちによる室内作業者の不快感を解消すると共に、室内作物の成長、阻害、病気発生の防止をすることができる。
【0030】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。当業者が必要に応じて通常行う設計変更や、変形応用等の範囲内で様々に実施することが可能であることを申し添える。